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参考論文目次

銀河系内星種族 銀河系内恒星分布 銀河系内恒星運動 メタル量 星間減光
太陽近傍 円盤 バルジ ハロー 銀河中心
銀河系星形成史        
LMC/SMC 星種族 LMC/SMC 構造 LMC/SMC 星形成史 LMC/SMC 星団
M31 の星種族 M31 の構造 M31 の星形成史
近傍銀河の星種族 近傍銀河の構造 近傍銀河の星形成史
種族合成
恒星晩期進化 マスロス 初期最終質量関係 初期質量関数 輻射補正
恒星分類 大気モデル メタル量の決定法
セファイド RR Lyr レッドクランプ ミラ 炭素星
メーザー R CrB post-AGB PN
YSO 早期型星 赤色超巨星 電離領域
星間雲 星団 反射星雲
サーベイ
論文抄訳

銀河系種族

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著者 内容

Andrae et al. (2023)
GAIA DR3:GSP-Phot を用いた BP/RP スペクトルの解析  
 GSP-Phot = General Stellar Parametrizer from Photometry は Apsis = astrophysical parameters inference system の一部で、天体距離、測光、BP/RP 分光に基づいて、数億の星のパラメター= Teff, log g, [Fe/H], MG, Rs, D, AG をカタログにする。その為に Bayesian forward-modeling を採用して、 BP/RP スペクトル、視差、G を同時にフィットする。  GP-Phot は G < 19 の 471 M 天体を解析した。結果の精度は視差に影響 される。ω/σω > 20 つまり大体 2 kpc 以内 の天体の信頼度は高い。文献値と較べるとメタル量には大きなバイアスが認めら れ、定性的な意味合いしか持たない。我々は経験的な補正を加え、その結果 バイアスは大幅に下がった。

Matsunaga + ? (2021)
太陽近傍にある円盤軌道を持つ低メタル RR Lyr 星  
 スケール高 1 kpc の厚い円盤内にあり、軌道が厚い円盤の運動と整合する RR Lyrae を発見した。この RRL 星は太陽から 1 kpc のところにあり、V = 11.3 mag で、これまでに知られた最も明るい 100 個の RRLs に入るが、 銀河面の真ん中 b = -1° にあるためこれまで殆ど調べられてこなかった。  その 0.91 - 1.32 μ スペクトルにはパッシェン系列以外の吸収線が殆ど ない。これは [Fe/H] < -2.5 を意味する。これは軌道が厚い円盤に属する RRLs のなかでは最も低メタルである。これは内側銀河における星形成に 重要な手掛かりを与える。

Haywood, Snaith, Lehnert, Di Matteo, Khoperskov (2019)
昔からの天の川銀河問題再訪:外側円盤としての太陽近傍 
 広い範囲での拘束条件を考慮して、G-矮星問題を解決する、太陽近傍化学進 化の筋書きを提案する。 R < 10 kpc の円盤は巨大乱流ガス円盤から形成 された厚い円盤で、大質量星により太陽メタルまでメタル量増加が進んだ。R ≤ 6 kpc の内側円盤は宇宙年齢(?)7 - 10 Gyr での星形成停止期の後に メタル量増加が続いた。より遠方の領域では、厚い円盤の星形成活動後に残さ れたガスを、7 - 8 Gyr 昔に、動径方向のガス流(降着?)が希釈する。こう して、別々の化学進化を経ることにより、円盤は内側円盤と外側円盤とに分か れた。キーとなる考えは、厚い円盤によるメタル量の事前増加は、以前の内側 から外側モデルで想定されているような太陽半径におけるこの成分の比率に関 連しているだけではなく、形成期に存在した活発なガスの混合による完全な厚 い円盤にかんけいしているということである。だから、厚い円盤種族が表面密 度の 15 - 25 %, または太陽近傍での 5 - 10 % を占めるということでは G- 矮星問題を解くには不適切である。  この筋書きが上手く働くには、乱流ガス円盤から動径方向に一様なメタル分 布を持つ厚い円盤が形成され、太陽円付近が太陽メタル量になったことを認め る必要がある。太陽円では厚い円盤形成後に残された太陽メタル量のガスに、 外側円盤から流れ込んできたガスが一体となり、G-型矮星問題を解くのに必要 なメタル量の薄い円盤を形成した。 R > 6 kpc、特に太陽円を超えた向こう 側での化学進化は同じシナリオで説明される。外側からのガス流はバーの形成 とそれに伴う外側リンドブラッド共鳴が外側円盤の低メタルガスを R = 6 kpc (損頃の共鳴点位置)まで内側に流し込んだためにメタル量希釈が生じたので あろう。この共鳴は同時に内側円盤を外側から隔てて孤立させた。これらの結 果は太陽近傍のメタル量分布は天の川銀河のガス降着史と結びつかないことを 意味する。最後に、太陽は希釈を経験した 6 kpc より外側円盤に典型的な星で あり、内側円盤の特性は備えていない。
Noguchi (2018)
天の川銀河の低温降着流と化学的二分性 
 α 元素と鉄との存在比 [α/Fe] は、それらが異なる種類の超新 星を起源とするために、銀河形成の診断に有用である。太陽近傍の星に二種類 の元素比、一つは高 [α/Fe], 一つは低 [α/Fe], が存在すること はそれらが異なる起源を持つ事を示唆する。しかし、この双峰性が何に起因す るかは不明である。形成途上銀河に始原ガスが降着するという説が最近提案さ れている。我々は、この低温降着流仮説によると 6 - 7 Gyr 昔を境として、 二つの星形成活動があり、自然に元素の双峰性が説明されることを示す。  第1星形成活動は元々の冷たい始原ガスが銀河円盤に自由落下することで引き起 こされる。この時期の星は高 [α/Fe] を持つ。 第2星形成活動は第1星形成活動で一度加熱されたガスが、放射冷却 でユックリと冷えるにつれて第1期よりずっと遅い降着流となることが原因であり、 低 :α/Fe] が特徴である。低温流仮説はまた、銀河系における元素存在比の 場所による大規模変化を降着の歴史の差として説明する。

Hayden et al 2015
APOGEE による化学地図学:天の川円盤のメタル量分布関数化学構造
 SDSS-III/APOGEE DR12 からの 69,919 赤色巨星を用い、 R = [3, 15] kpc, |z| < 2 kpc 銀河面内かってない体積での, [α/Fe] - [Fe/H] 面上 分布とメタル量分布関数を測った。内側円盤(R < 5 kpc) の星は、高アル ファ低メタルから始まり [α/Fe] = 0, [Fe/H] = 0.4 で終わる一本の [α/Fe] - [Fe/H] 系列をなす。より大きな半径では、[α/Fe] - [Fe/H] 空間に二本の系列が現れる:一本はほぼ太陽アルファでメタル量は一桁 の広がりを示し、もう一本は高アルファ系列で超太陽 [Fe/H] で低アルファ系 列と合体する。  高アルファ系列の位置は円盤全体で一定である。しかし、R > 11 kpc に は高アルファ星が殆どない。円盤中央面 MDF のピークは R が大きくなると、 銀河系メタル量勾配を反映して、低メタル側に移動する。最も驚くべきは、 中央面 MDF の形が R と共に系統的に変わって行くことである: R = [3, 7] kpc では負方向に片寄った分布だが、太陽円環付近ではガウシャン型となり、 外側円盤で正方向に片寄った分布となる。|z| > 1 kpc または [α/Fe] > 0.18 では、MDF は R に依らず一定である。外側円盤 MDF が正方向に片 寄るのは動径移行 (migration) の標しかも知れない。軌道離心率は星種族のぼ やけを」説明するには不十分であるが、動径移行の単純なモデルで説明できる ことが判った。

Hopkins 2018
恒星質量関数を測る
 IMF を測る様々な方法を紹介し、比較する。  特にそれが普遍的であるかどうかに注意を払った。

Minchev, Chiappini, Martig (2014)
天の川円盤の化学動力学進化2.銀河半径と高度による変化
 Minchev13 では太陽近傍を中心に研究した。今回はさまざまな R での化学 進化を調べ、現在進行中および将来の観測で発見されるべき特徴を求める。 運動学的加熱と動径移行の効果を分離して、移行の方が重要であることを示 した。星誕生のガイド半径と最終ガイド半径の分布は古い星ほど広がる。 その結果年齢-メタル関係は太陽より外側では著しく平坦になる。色々な半径 でのメタル分布はどこでも -0.15 dex がピークになる。低メタル端は -1.3 dex までのびる。これに反し、高メタル端は半径と共に下がって行き、平均 メタル量が半径と共に下がる原因となる。  同様に、[Mg/Fe] 分布はどこでも 0.15 dex がピークとなる。その低値端は R が大きくなると消える。逆に高端は 0.45 dex で消える。 R-[Fe/H]、R-[Mg/Fe] 関係は円盤高度 Z により大きく変化する。R-[Fe/H] 勾配は負から僅かな正へ( R = 10 kpc で)と、R-[Mg/Fe] 勾配は正から負へと 銀河面高度と共に転換する。これは(i)円盤面近くで若い星が、離れると古い星 が多く、(ii)古い星ほど集中度が高く, (iii) フレアリングとエラーの効果である。 動径移行は「内から外」円盤形成には勝てない。

Minchev、Chiappini, Martig (2013)
銀河系円盤の化学動力学進化 I. 太陽近傍
 円盤の化学進化モデルと銀河円盤のシミュレイションを合わせるという新し い方法で円盤の化学動力学進化を研究する。この方法はシミュレイションで起 きる星形成と化学組成増加の問題を避けることができる。ここでは、宇宙論的 な枠組みの中で、銀河系を扱う。その場での元素生成と動径移行が太陽近傍に もたらす影響を調べた。高 z 時代のマージャーからの動径移行と後期のバー の影響の結果、低メタル高アルファの星が多数太陽近傍に来たことが判った。 これは最近の観測を自然に説明する。  強い動径混合が生じるが年齢-メタル関係の勾配は分散以外ではあまり影響を 受けない。Ro = 8 kpc として、太陽は R = [4.4, 7.7] kpc で生まれた可能性 が強い。厚い円盤の新しい統一モデルを提案する。そこではマージャーと動径 移行が大きな役割を担う。初期に強いマージャーがなかったら、最古星の垂直 速度散布度は観測の半分となってしまう。従って、厚い円盤が静かな円盤進化 から生まれることはなさそうである。

Adibekyan + 7 (2012)
HARPS GTO 惑星探査プログラムからの 1111 FGK 矮星の化学組成
 1111 FGK 矮星の Na,Mg, AL, Si, Ca, Ti, Cr, Ni, Co, Sc, Mn, V 組成を解析 した。サンプルは HARPS GTO 惑星探査プログラムから採った。109/1111 は巨大 惑星を宿し、26 はnptunian と super-Earth を宿す。論文の目的は、(1)星種 族が異なった時に元素組成の傾向に差が生じるのか、(2)それらの [X/H] により 惑星宿主星と非宿主星を特性付けることである。  HARPS スペクトルの等値巾はARES コードにより自動的に測定される。スペク トル解析プログラムMOOG と ATLAS9 大気グリッドにより [X/H] を定めた。星種族 の分離には運動学的方法と化学的方法を使用した。Mg, Si, Ti により化学的に薄 い円盤と厚い円盤を分離した結果は Na, V, Ni, Mn でも同じ結果をもたらすことが 判った。 Na, V, Ni, Mn ははっきりしない。

Wright et al 2010
WISE: ミッションの記述
WISE は 2009 12 月 14 日の打ち上げ、全天サーベイ開始 2010 年 1 月 14 日で、第1 回の全天走査を 7 月 17 日に終えた。5σ観測限界は混んでいない領域で 0.08 mJy(3.4 μm)、 0.11 mJy(4.6μm)、1mJy(12μm)、6mJy(22μm) である。空間分解能は 6".1(3.4μm)、 6".4(4.6μm)、 6".5(12μm)、 12".(22μm)で、S/N 比がよい天体の位置精度は 0".15 よりよい。

Churchwell et al 2009
GLIMPSE: 新しい銀河系
 GLIMPLSE の主な成果を述べ、将来可能な応用を示唆する。特に、星の形成と初期進化、 星間媒質、銀河系構造、晩期巨星について議論する。赤外暗黒雲、YSO,赤外バブル/HIIR は詳しく述べる。膨張赤外バブルに触発されたと思われる星形成についても簡単に触れる。 ダストとPAHの分布と形態も論じる。大規模星形成領域における、バウショック、 象の鼻、不安定性のGLIMPSE 画像を示す。赤外減光則を論じる。
 銀河系大規模構造を GLIMPSE 点光源カタログのレッドクランプ星を 用いて追跡した。中心バーの半径と傾き、恒星分布の動径スケール長、Scutum-Centaurus 腕の端点方向での星計数の増加、それに反して、Sagittarius 腕の端点方向での星計数 増加が見られないこと、バルジ方向での星計数の急激な増加が示される。2008 年末までに GLIMPSE データを用いて、70以上の論文が書かれた。

Freeman, Bland-Hawthornr 2002
新しい銀河系
 銀河の階層的な形成の枠組みないで、我々は自身の銀河が如何に現在に至ったかと 同様、銀河形成の粗い描像を持っているだけである。個々の星種族が原始銀河雲のどの 要素に結び付くかを描く詳細な筋書きは理解の彼方にある。  銀河系=近傍宇宙論と高赤方偏移宇宙=遠方宇宙論の両方から重要な手掛かりが 現れてきている。ここでは銀河系に見つかる過去の化石資料に重点を置く。 銀河系の詳細な研究は "baryon dissipation" に含まれる複雑な過程」を理解する 核心である。

Lumsden, Hoare, Oudmaijer, Richards 2002
MSX が見た銀河面内の種族
 MSX の MIR, 地上の NIR データを結合し カラー選択から銀河系中心領域を除き、 MYSO 候補 3071 個が選ばれた。

Feast, Whitelock 2000
ヒッパルコスデータによるミラの運動:太陽円周を越えるバー 
視線速度、ヒッパルコス固有運動、周期光度関係に基づいて、ミラ型星の 空間運動を導いた。 P = 145 ? 200 日の太陽近傍ミラは銀河系中心 からの実質外向き平均速度75+-18 km/s を有する。これは軌道が細長く、 主軸が銀経17°の方向に伸びていると解釈される。

Arendt + 14 (1994)
銀河系赤化と星種族の COBE/DIRBE 観測
 COBE/DIRBE を用い、銀河系星種族のカラーと銀河系減光を調べた。 DIRBE で決めた NIR 減光は Rieke, Lebofsky 1985 の減光則と一致した。第1、第4象限のダストと星の分布は、最高 A(1.25μm) = 4 mag に及ぶ減光膜を隔てて臨む背景星種族と看做せる。  赤化補正した銀河円盤のカラーは晩期 K-型 から M-型の巨星のカラーと 似ている。銀河系バルジは 2.2 - 3.5 μm でそれより僅かに青い。これは Terdrup et al 1991 の結果と一致する。星形成域は 900 K の連続光の存在 を示すが、これは熱いダストか PAH が 3.5 μm という短波長にまで 影響することを示す。

Thronson, Latter, Black, Bally 1987
マスロス星の性質と星間ダスト構成の変化
 IRAS PSC からフラックスリミッテッドサンプルを調べた。IR 炭素星は 5.2 kpc-2、炭素星全体では 38 kpc-2となった。炭素星の 総数は 28,000(R/15kpc)2, R=銀河円盤半径 である。炭素星の数は 銀河中心距離に依存しない。一方 赤外 M-星は 47 kpc-2 である。 マスロス O-リッチ星は銀河系全体で 48,000 個である。進化した O-リッチ星 の数密度はスケール長 4 kpc の指数関数型の変化を示す。C-星と M-星の密度 分布のこの差は銀河面上での [C]/[O] 比の勾配が原因である。マスロス星の 種族構成が銀河中心距離により変化するため、星間空間に注入されるダストの 性質が変わり、その結果分子雲の加熱、化学、減光、初期質量関数など全てが 場所により変化する。  中間質量星からの総質量放出は 0.35 Mo/yr で、その内炭素星からの寄与は 10 - 50 % である。この値は銀河系のサイズによる。総マスロスは少数の 極端に激しいマスロスを行う星からの寄与が大きい。それらの星の多くは O- リッチである。サンプル中の炭素星の寿命は 2 105 yr である。 M-星も似たような値であろう。これは太陽近傍での炭素星誕生率= 5 10 -13 pc-3yr-1 を意味する。これは 3 - 5 Mo 星が主系列を離れる割合に等しい。それらの星が炭素星の母星であろう。 銀河系全体で炭素星が生まれる割合は 0.14 (R/15kpc)2yr -1 である。現存の mm-波輝線サーベイから得られる炭素星の 赤外二色図は炭素星全体からは偏っている。
( IRAS 2色図から(不思議なことに)隔離シェル炭素星ボックスを赤外炭素星領域として定め、そこにある 星のCO観測(KnappMorris 1985)を使って、炭素星の分布とマスロスを出して、銀河系全体の総数、マス ロス総量、炭素星寿命...と話を広げている。どうも不思議な論文。 吹きすぎ? )

Humphreys 1978
銀河系内の O 型星と超巨星
 銀河系内の最も明るい星について、 HR 図、光度、赤色超巨星と青色超巨星の比 を調べた。アソシエーションと星団に属する超巨星と O 型星のカタログを付けた。 モデル HR 図では Mbol = -10 ∼ -12 の非常に明るい O 型星のグループは存在 するが、進化した超巨星ではそれほど明るい星はない。 B5 より晩期では超巨星の 最大光度は Mbol = -9.5 である。  最も明るい赤色超巨星の観測値は Mv = -8 で、Sandage, Tammann は距離指標に 使う提案をした。特に明るい Cyg OB 2 No.12 (Mv = -9.9 ) を除くと、青い星の 最大光度は Mv = -8.5 である。



銀河系分布

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著者 内容

Drimmel et al. (2023)
GAIA DR3:天の川円盤の非対称構造をマップ化する  
 ガイアにより 33 M 星の位置と速度、470 M 星の物理量が、11 M 星の変光 が見つかった。物理量と変光情報から星をグループ分けし、天の川銀河円盤の 非軸対称な特徴を位置速度空間に見出す。高温 OB 星 580,000 個と 100 Ma より若い 988 の既知散開星団を用いて、 太陽から 4 - 5 kpc の位置にある 星形成を伴う渦状構造をマップ化した。年齢が 200 Ma より若い古典的セファ イド 2800 個の分布は外側円盤太陽から 10 kpc にある渦状構造を現わす。8.7 M の赤色巨星(RGBs)が見出されたが、その内 5.7 M 星は視線速度が得られて いる。それらから太陽から 8 kpc まで MW の速度場マップがえられた。  若い種族によって明らかになった渦状構造は EDR3 の距離測定と赤外測光 からの天体リストからの最近の結果と一致し、オリオン腕が少なくとも 8 kpc の長さを持つ事を示す。外側腕は HIIRs からの結果に合う。それはペルセウ ス腕の第3象限への延長のように見える。速度の得られた RGBs は内側円盤に おけるバーの運動学的特徴を明らかにした。また外側円盤の星流運動は渦状腕 かバーの力学共鳴かも知れない。近傍 OB 星の速度場を比較した結果は RGB サンプルと一致する点、異なる点を明らかにした。

Iwanek, Poleski, Kozlowski, Soszynski, Pietrukowicz, Ban, Skowron, Mroz, Wrona 2023
66,000 ミラを使った銀河系3次元マップ 
 OGLE で発見された 65,981 ミラ型星の空間分布を、 X−型ボックス成分を 含む3成分バーと非軸対称円盤から成るモデルで解析した。距離不定性は 階層的ベイズ推定法で考慮した。銀河中心までの 距離は Ro = 7.66 ±0.01(stat.)±0.39(sys.) kpc、 バルジ主軸と太陽-GC 視線方向との角度は 20.2°±0.7° である。  若い種族と中間年齢種族から成る銀河系の3次元マップを初めて提示する。 バルジの X-型成分とフレアリング円盤の独立な証拠も示す。ここに使用した ミラ型星の完全なカタログも示した。距離精度中間値は 6.6 % である。 ( 実際はバルジモデル )

Matsunaga + ? (2021)
太陽近傍にある円盤軌道を持つ低メタル RR Lyr 星  
 スケール高 1 kpc の厚い円盤内にあり、軌道が厚い円盤の運動と整合する RR Lyrae を発見した。この RRL 星は太陽から 1 kpc のところにあり、V = 11.3 mag で、これまでに知られた最も明るい 100 個の RRLs に入るが、 銀河面の真ん中 b = -1° にあるためこれまで殆ど調べられてこなかった。  その 0.91 - 1.32 μ スペクトルにはパッシェン系列以外の吸収線が殆ど ない。これは [Fe/H] < -2.5 を意味する。これは軌道が厚い円盤に属する RRLs のなかでは最も低メタルである。これは内側銀河における星形成に 重要な手掛かりを与える。

Hayden et al 2015
APOGEE による化学地図学:天の川円盤のメタル量分布関数化学構造
 SDSS-III/APOGEE DR12 からの 69,919 赤色巨星を用い、 R = [3, 15] kpc, |z| < 2 kpc 銀河面内かってない体積での, [α/Fe] - [Fe/H] 面上 分布とメタル量分布関数を測った。内側円盤(R < 5 kpc) の星は、高アル ファ低メタルから始まり [α/Fe] = 0, [Fe/H] = 0.4 で終わる一本の [α/Fe] - [Fe/H] 系列をなす。より大きな半径では、[α/Fe] - [Fe/H] 空間に二本の系列が現れる:一本はほぼ太陽アルファでメタル量は一桁 の広がりを示し、もう一本は高アルファ系列で超太陽 [Fe/H] で低アルファ系 列と合体する。  高アルファ系列の位置は円盤全体で一定である。しかし、R > 11 kpc に は高アルファ星が殆どない。円盤中央面 MDF のピークは R が大きくなると、 銀河系メタル量勾配を反映して、低メタル側に移動する。最も驚くべきは、 中央面 MDF の形が R と共に系統的に変わって行くことである: R = [3, 7] kpc では負方向に片寄った分布だが、太陽円環付近ではガウシャン型となり、 外側円盤で正方向に片寄った分布となる。|z| > 1 kpc または [α/Fe] > 0.18 では、MDF は R に依らず一定である。外側円盤 MDF が正方向に片 寄るのは動径移行 (migration) の標しかも知れない。軌道離心率は星種族のぼ やけを」説明するには不十分であるが、動径移行の単純なモデルで説明できる ことが判った。

Minchev, Chiappini, Martig (2014)
天の川円盤の化学動力学進化2.銀河半径と高度による変化
 Minchev13 では太陽近傍を中心に研究した。今回はさまざまな R での化学 進化を調べ、現在進行中および将来の観測で発見されるべき特徴を求める。 運動学的加熱と動径移行の効果を分離して、移行の方が重要であることを示 した。星誕生のガイド半径と最終ガイド半径の分布は古い星ほど広がる。 その結果年齢-メタル関係は太陽より外側では著しく平坦になる。色々な半径 でのメタル分布はどこでも -0.15 dex がピークになる。低メタル端は -1.3 dex までのびる。これに反し、高メタル端は半径と共に下がって行き、平均 メタル量が半径と共に下がる原因となる。  同様に、[Mg/Fe] 分布はどこでも 0.15 dex がピークとなる。その低値端は R が大きくなると消える。逆に高端は 0.45 dex で消える。 R-[Fe/H]、R-[Mg/Fe] 関係は円盤高度 Z により大きく変化する。R-[Fe/H] 勾配は負から僅かな正へ( R = 10 kpc で)と、R-[Mg/Fe] 勾配は正から負へと 銀河面高度と共に転換する。これは(i)円盤面近くで若い星が、離れると古い星 が多く、(ii)古い星ほど集中度が高く, (iii) フレアリングとエラーの効果である。 動径移行は「内から外」円盤形成には勝てない。

Lehnert, Di Matteo, Haywood, Snaith (2014)
高 z 銀河としての天の川:銀河における厚い円盤形成の重要性
 天の川銀河の星形成史を遠方の円盤銀河と比較した。進化の初期 4 - 5 Gyr の間に天の川は星形成率 ΣSFR = 0.6 Mo yr-1 kpc-2 という激しい星形成を行い、その結果星間空間に流れと強 い乱流を作り出した。この強い星形成期が厚い円盤の形成に対応し、 z = 1 までに全星質量の約半分を作り出した。これは組成マッチから選びだされた 「MW 前駆銀河」と似た状況である。  この一致から、厚い円盤の形成は円盤銀河一般の進化段階と考えられる。1 次元速度散布度と星形成強度の間に単純な注入エネルギー - 運動エネルギー 関係を適用すると、天の川の垂直方向速度散布度の時間変化を導き出せる。 この関係から推測される進化は z = 0 -3 の銀河での観測に一致する。強い星 形成活動が生み出す乱流が、厚い円盤、化学的に一様な星間物質を産み出す。


Haywood, Di Matteo, Lehnert, Katz, Gomez (2013)
天の川の2相星形成史の手がかり
 太陽近傍にあり、元素組成が良く決まっている星を調べた。[α/Fe]- 年齢面上に二つのはっきり分かれる分布を示す。それらは厚い円盤と薄い円盤 の種族である。[Fe/H] および [α/Fe] と年齢とのきつい相関が厚い円 盤星に認められる。これはよく混ぜられた星間ガスこの種族が 4 - 5 Gyr か けて形成、初期には爆発的星形成その後はより静かに、されたことを意味する。 厚い円盤星の最も若いグループは円盤種族と同じくらいの小さなスケール高を 示す。この二つから導かれる自然な結論は、厚い円盤星には垂直方向のメタル量 勾配があることである。我々の考えでは、厚い円盤の最も若い星たちは、8 Gyr 昔に、内側薄い円盤の形成が始まる初期条件を用意したのである。その時の [Fe/H] は (-0.1, +0.1) の範囲であり、[α/Fe] = 0.1 dex であった。 この考えはまた、薄い円盤のメタル量が R = 7 - 10 kpc で階段状に変化する 事実と、厚い円盤が R < 10 kpc に限られる事との一致を説明する。  我々の考えでは、外側薄い円盤は厚い円盤の影響が及ぶ半径の外側で発達し、 独立な構造を持つのであるが、同時に、厚い円盤が形成される際に放出された ガスによって始原ガスが汚染された結果高い [α/Fe] を持つようになった。 太陽近傍の低メタル薄い円盤星 ([Fe/H] < -0.4) はそれらが外側円盤で生 まれたと考えると最もうまく説明されるのだが、それらの年齢は最も若い厚い円 盤星の 9 - 10 Gyr と同じである。これは、外側薄い円盤が形成し始めた時に、 厚い円盤はまだ内側円盤で星形成を継続していたことを意味する。 このように、内側厚い+薄い円盤は異なるスケール高を持つ二つの成分からなり、 その結合は内側から外側への形成過程を示すかのように見えるのだが、薄い円盤 自身は多分その最初の星を外側部で作った。その上、指摘したいのは、厚い円 盤のきつい [Fe/H], {α/Fe] − 年齢関係を考えると、内側から外側形成 モデルは厚い円盤において α 元素とメタル量の銀河系中心距離による 勾配を生む。しかしこれは観測されていない。最後に、我々の結果からは動径 方向の星の移住による太陽近傍星の汚染は考えられない。

Churchwell, Benjamin (2013)
星計数と銀河系の構造
 銀河系円盤面では最近の赤外サーベイにより以前は知られていなかった数千万の天体が カタログ化された。この劇的増加の原因は、感度増加、分解能向上、減光低下の3つが 考えられる。それらの制限に応じ、異なる観測は異なる要素、バルジ、円盤、バー等 に敏感になる。  それらの観測の拘束とモデルを理解して、銀河系パラメタ―の解釈に必要である。 様々な探査観測を探り、最近の成果を議論する

Cheng + 10 (2012)
天の川銀河内の高 α 厚い円盤の短いスケール長
 SEGUE = Sloan Extension for Galactic Understanding and Exploration によって観測された、 R = 6 - 16 kpc, |Z| = 0.15 - 1.5 kpc の 5620 星 の [α/Fe] を調べた。その結果、高 α 厚い円盤種族は短いスケ ール長 1.8 kpc を有すことが判った。内側円盤中での高 α 星の比率は |Z| 大領域で増加する。高 α 星は低 α 星と較べ回転速度が小 さい。  反対に外側円盤では高 α 星の比率は全ての |Z| で低く、高 α 星と低 α 星は |Z| < 1.5 kpc では同じ回転速度を持つ。この結果は 高 α 星は内側円盤と外側円盤とで異なる形成作用を経てきたことを示す。 内側円盤の高 α 星は短いスケール長と大きなスケール高を有す。これは 厚い円盤は初期のガスに富んだ降着期に形成されたというシナリオに合う。外 側円盤の高い Z を持つ星はマイナーマージャーの加熱によりそこに運ばれたの であろう。R と |Z| の大きな領域に高 α 星がないことは渦状腕による 移行(migration) に制限をつける。

Ivezic, Beers, Juric 2012
SDSS や他の大型探査時代の銀河系恒星種族
星の種族 空間、力学、化学、年齢などで共有する分布を持つ集団 研究が過去10年間で再び活気づいてきた 広範囲の空の探査観測の出現 SDSS - Sloan Digitized Sky Survey 2MASS - Two-Micron All Sky Survey RAVE - Radial Velocity Experiment など これらの最新の結果について示す 銀河系と銀河の形成、進化の理解の進歩 観測量空間(位置、運動、金属量)内には豊富な構造 銀河進化における混成物(merger)の影響であることは明確 新しいデータは、簡単なモデルとは異なる、たくさんの不規則な構造を示す Sagittarius dwarf 潮汐流 おとめ座、うお座ハロー密度超過 銀河面付近のいっかくじゅう座流 銀河系は複雑で活動的な構造を持つことを示した 近傍のより小さい銀河との混合により、今なお形成が進む 次世代の広域探査を議論 SkyMapper Pan-STARRS - Panoramic Survey Telescope & Rapid Response System GAIA - Galactic Astrometric Interferometer for Astrophysics LSST - the Large Synoptic Survey Telescope 測定精度が何倍も向上 10億もの星を含む 巨大なゴール 銀河系およぶ銀河系のような巨大渦巻き銀河における 進化の歴史 集合体の連続的で詳細な物語 手の届くところにきた

Minniti, Saito, Alonso-Garcia, Lucas, Hempel 2011
レッドクランプ星を用いた銀河系恒星円盤の縁の検出
 ヒッパルコスで較正したクランプ巨星の絶対光度を用いて、UKIDSS-GPS と VISTA Variables in the Via Lactea (VVV) の二つのサーヴェイにより、これら の星のマップを作った。クランプ星の選択範囲をいくつか試して結果を比べた。  銀河面の上下でも分布を調べて、ワープの効果も考慮した。その結果、 銀河系の恒星円盤には R = 13.9±0.5 kpc に縁が存在することを見出した。 恒星円盤の縁をマップできるので、いくつかの銀河系モデルをテストすることが 可能となった。

石原, 金田、尾中、板、松浦、松永 2011
AKARI MIR 全天探査による C-, O-リッチ AGB 星の銀河系内分布
 あかりの IRC 全天サーベイデータを用いて AGB 星を分類した。二色図上で 既知天体の占拠する領域を定めた。次に、マスロスー光度関係を用いて、C-リッチ 星と O-リッチ星の空間配置を定めた。O-リッチ星は銀河中心に集中していることが 分かった。一方、C-リッチ星は太陽から 8 kpc 以内では一様な分布を示した。

Marton, Toth, 上野、Zahorecz. 河村、田村 2010
AKARI FIS BSC の予備解析
 AKARI FIS BSC の予備解析の結果を報告する。サンプル数は 63370 個。 異なるフラックス・クオリティ Q での銀河系分布を調べた。表面密度は 既知の赤外で明るい銀河系内領域との相関が高い。Qの違いによる分布の 差は認められなかった。

Juric + 25, 2008
SDSS による天の川銀河の断層映像 I. 星の密度分布
 SDSS |b| > 25 の 6500 deg2, 48 M 星の測光観測から、それ らの星、 100 pc - 20 kpc の距離を決めた。その星密度マップは、関数形を 仮定せずに、銀河構造を直接表す。
 データは、銀河系がオブレート形状のハロー、円盤成分、数個の密度超過から なることを示す。M-矮星を追跡子とした D < 2 kpc の密度分布は、連星率を 35 % として補正を加えた後、スケール高とスケール長が H1 = 300 pc, L = 2600 pc の薄い円盤と H2 = 900 pc, L = 3600 pc の厚い円盤の二つの重ね合わせで表される。太陽近傍での両者の密度 比は、ρo, thicko, thin = 12 % である。
 主系列ターンオフ付近の星を用いて調べたハローの形はオブレート形状を支持 した。ベストフィット軸比は c/a = 0.64, ρ ∝ r-2.8 で あった。ρo, haloo, thin = 0.5 % である。  モンテカルロ計算から円盤スケール長エラーは 20 %, 局所密度は 10 % である。 エラーの原因は測光視差の較正と連星の割合の不確定性が大きい。
 一角獣座星流のような既知の密度超過に加え、厚い円盤領域に二つの密度 超過を発見した。それらは銀河中心円筒座標系で (R, Z) = (6.5, 1.5) kpc, と (9.5, 0.6) kpc である。さらにおとめ座方向 1000 deg2、D = 6 - 20 kpc で大きな密度超過がある。l = 0 面に対して鏡映な位置と較べると、 おとめ座方向の密度は2倍である。これは近傍の潮汐流か銀河系に融合する途中 の矮小銀河なのではないか。この超過に関与する星の (u - g) カラー分布は 厚い円盤より低いメタル量を示唆し、ハローメタル量と合う。以上の密度超過 を除くと、残りのハロー密度分布は平滑である。それら以外には、円盤で 50 pc, ハローで 1 - 2 kpc を越える大きさの副構造はない。

Robitaille + 10 2008
Spitzer による銀河面沿いの固有カラーが赤い星の検出
 GLIMPSE I, II 274 deg2 から選んだフラックスリミテッドの 18,949 天体を調べた。その多くは YSO と AGB 星である。場所による感度 変化、サチュレーション、込み混じりに気を付けて二つの分離基準を定めた。 天球上、色等級図、二色図上での分布を議論した。
 YSO と AGB は単純な色等級図を用いて分離可能で、YSO が 50 - 70 %, AGB が 30 - 50 % であることが判った。 PNe と galaxies は 2 - 3 % である。 GLIMPSE II の 1004 天体は 4.5, 8 μm で > 0.3 mag の変光を示す。 11,000 の YSO, 7000 の AGB と加えこれはこれまで最大の一様なセンサスである。

Lucas + 30 2008
UKIDSS 銀河面サーベイ
 UKIDSS Galactic Plane Survey (GPS) は UKIDSS コンソーシアムが行っている 5つの公開サーベイの一つである。これは b = [-5, 5] の 1868 deg2 を J, H, K フィルターで、牡牛座ー御者座ーペルセウス座分子雲複合体の 200 deg2 を J, H, K と 2.12 μm H2O (1-0) 線 で撮った。その総計は 2 109 天体となる。ここではデータセットの 性質とユーザーのためにその応用を述べる。 また、DR2 を用いた科学成果も 簡単に述べる。
(1)GPS-GLIMPSE クロス対象から星形成域 G28.983-0.603 の YSO 同定。
(2)M17 の広域像に減光マップを提供。星混同が光度関数に及ぼす効果。
(3)ρ Oph 暗黒雲の H2 放射。ジェットの根元に原始星。
(4)中心バルジ核の X-線源。近傍の主系列星軟X源とバルジ巨星硬X源。
(5)排除帯における銀河。l > 90 で星と明確に区別できる。
(6)(i-J, J-H) 二色図で A-F 矮星、G-矮星、K-矮星区別

Benjamin + 沢山 2005
GLIMPSE による銀河系構造の第1レポート
 GLIMPSE の |l| = [10, 65], |b| < 約 三千万の星カタログを用いて、 銀河系 (l, b, m) 分布を調べた。計数対銀経関係はモディファイドベッセル 関数 N = No(l/lo)K1(l/lo) で近似した。ここに lo は限界等級、 バンド、銀河中心のどちら側かにあまり依らない。 4.5 μm で lo = 17 - 30, ベストフィットで lo = 24±4 である。天体分布を指数関数円盤 でフィットした結果、スケール長 H* = 3.9±0.6 kpc を得た。
 |l| < 30 には南北非対称が存在し、北側が 25 % 多い。l = [10, 30] では m = [11.5, 13.5] mag に強い個数超過が認められる。軸半径 Rbar = 4.4±0.5 kpc、 太陽・銀河中心線に対する角度 φ = 44±10 の バーが最も単純な解釈である。天体数超過、l = [26, 28], [31.5, 34], [306, 309] が渦状腕に関係するかどうかを調べた。赤い天体 [K-8.0] > 3 の数が多い 所では星計数が減る。これらの領域では減光により星計数が減る。

Girardi, Groenewegen, Hatziminaoglou, da Costa 2005
銀河系の星計数:非常に深いのから浅い測光サーベイに基づくシミュレーション
 TRILEGAL = 銀河系のあらゆる方向での測光をシミュレートする種族合成コード を説明する。このコードはスターカウントモデルの幾つかの技術的な点を改良した。 それらは、 (1)星の進化経路ライブラリーを完全なものとした。 (2)あらゆる測光バンドに対応する星のスペクトルライブラリー。
 Groenewegen et al 2002 ではこのコードを始めて応用して CDFS 星カタログ を解析した。ここでは、 EIS の深い探査、 DMS 星計数に初めて応用する。これら はハローと大きなスケール高を持つ円盤成分を含んでいる。これにより得た、 もっと広い測光データを扱うために必要な較正の変化を示す。  新しい較正に基づき、やや浅い 2MASS カタログを上手く解釈できることを 示す。このカタログは主に中間年齢円盤を探査している。また太陽近傍を調べた ヒッパルコスの絶対等級対カラー図を解釈した。この図には深いサーベイに較べ 高い割合で若い星種族が含まれている。
 同じモデル較正が上述の全てのデータセットにうまく応用できた。それらは 非常に深い CDFS (16<R<23) から、非常に浅いヒッパルコス (V<8) にまで及んでいる。ただし、銀河中心方向に対しては 50 % 以上のずれが生じた。 これはバルジ成分を含めていないためである。それと銀河面 及び銀河南極方向でも良く合わない。TRILEGAL コードは可視ー赤外の広範囲サーベイ に使える形で提供されるであろう。

Nordstrom, Mayor, Andersen, Holmberg, Pont, Jorgensen, Olsen, Udry, Nowlavi 2004
太陽近傍ジュネーブ・コペンハーゲンサーベイ:14,000 F-, G-型矮星の年齢、 メタル量、運動学。
 太陽近傍の F-, G-型矮星の等級限界完全サンプル 16,682 星のメタル量、 回転速度、年齢、運動学と銀河系内軌道を定めた。約 13,500 星に対する 63,000 回の視線速度観測から連星の大部分が検出された。それに合わせた uvbyβ 測光、ヒッパルコス視差、Tycho-2 固有運動観測から 14,139 星の運動学情報を得た。それに最近の較正を適用して有効温度とメタル量を 定めた。当時線年齢を可能な全ての星に与えた。特に統計的バイアスとエラー の評価には注意した。と言うのは通常の手法だと、それらを過小評価し、その 結果、年齢分布に偽の特徴が現れるからである。我々の結果は Edvardsson et al. 1993 と一致した。  太陽近傍星に対する、G 型矮星の年齢分布、年齢・メタル量、年齢・速度、 メタル量・速度関係を再調査した。まず、閉箱モデル(closed box) モデル予想 に比べ低メタル G-型矮星が欠乏している(G-dwarf 問題)ことを再確認した。 銀河中心動径方向にメタル量勾配が存在し、薄い円盤ではその形成時以来 平均メタル量の変化が少ない事、全ての年齢でメタル量の分散が大きいこと、 渦状腕と分子雲により薄い円盤の運動学的加熱が連続的に起きていることが 判った。空間運動の V 成分に見られる特徴は年齢とメタル量にわたって広が っている。これは渦状腕のストカスティックな効果で、古典的な運動群に 対応しない。さらにこれは厚い円盤の星を運動学的基準で見分けることを 面倒にする。

Rocha-Pinto, Majewski, Skrutskie, Crane, Patterson 2004
一角獣ーアンドロメダ座方向で銀河系を廻る潮汐デブリまたは薄い星の雲。
 2MASS から 0.85 < J-K < 1.2 で選んだ M 型巨星が、少なくとも 100° < l < 150°, -20° > b > -40° で一角獣座とアンドロ メダ座を覆う広い範囲で、密度超過を示した。この構造ははっきりした中心の周り に広がっているわけではなく数十 kpc 向こうで薄い雲のように漂っている。
 整約した固有運動図と一部のサンプル星のスペクトルからそれらは矮星を含まない 真の巨星であることが判明した。視線速度の測定はそれらの間に σ < 17 km/s の運動学的に揃った構造を見出した。これは天の川銀河の周りの拡散した 構造を確認するもので、中心核がなく、拡散した構造はそれが新しい種類の衛星銀河 の潮汐ストリームであるという考えを支持する。

Rocha-Pinto, Majewski, Skrutskie, Crane 2003
銀河系反中心方向ストリームを 2MASS M-巨星で追う。
 最近一角獣座方向に発見された、天の川銀河円盤の外側にあるリング状構造を 2MASS M 型巨星で追跡した。視線方向の星に対して、距離の確率密度関数から この構造を再構築する方法を開発した。この方法を応用して、 +36° < b < +12° (?), 100° < l < 270° に渡り、銀河系中心距離 18 ±2 kpc の所に M-型巨星が集積していることが判った。
 このストリームが銀緯が負の領域におおきく広がっている証拠も見つかった。 構造に M 型巨星が含まれていることは、この系に対し以前報告された平均メタル量 [Fe/H] = -1.6 よりも少なくとも一桁は上のメタル量を持つ種族が含まれる ことを意味する。(?)M-型星で追跡したストリームの構造はこれが一様に厚い リングという解釈よりは、サジタリウス銀河のように潮汐腕を持つ融合しつつある 矮小銀河という解釈を支持する。

Robin, Reyle, Derriere, Picaud 2003
銀河系の総合的なモデル
 ヒッパルコスやその他の大規模サーベイにより」銀河系の構造と進化には新たな 制約が課された。それらのデータを解釈し、銀河系の進化シナリオと較べるには 種族合成法が有効である。ここに、可視、赤外星計数の解析とブザンソン種族合成 モデルから得られる進化パラメタ―への新しい制約を述べる。
 ヒッパルコスの結果と回転曲線に合わせて、銀河系ポテンシャルを与える。外側 バルジ構造、ワープし、広がった円盤、厚い円盤、楕円体成分に対する整約が与え られる。モデルを調整して、 U から K バンドの信頼できる星計数が与えられるように した。最後に、シミュレイション、ベイジアン確率評価に基づく新しい分類、 などに関する応用を述べる。

Siegel, M.H., Majewski, Reid, Thompson, Soneira 2002
スターカウント再生 IV. 測光視差から出した密度則
カプタイン選択領域7箇所で R = 21.5 等までの測光 13 万星から 0.4 ≥ R - I ≥ 1.5 の 7 万星の測光視差を解析した。 マルムキストバイアス、巨星・準巨星の混入などの影響を調べた。連星の効果が最大で 連星率が50 % だと、求めたスケールが実際の 80 % になる。
スターカウントの反応の鈍さのため、構造パラメターは収束しなかった。ハローを仮定して 薄い円盤と厚い円盤のパラメターを決めた。しかし、銀河系内側に対し密度過大予想、 外側は過小予想を与える。ズレの解消には内側は平坦、外側は星流の重なり合いの球状 という二重ハロー、それに厚い円盤のフレアリングが良い。内側ハローはELS風崩落 起源、外側ハローは降着星流、厚い円盤はマージャーの潮汐効果による加熱が原因らしい。

Chabrier 2001
銀河面の質量差し引き I. 恒星質量関数と恒星密度
 最近進展した低質量星の構造と進化の一般論を用い、近傍の観測光度関数 から水素燃焼限界質量付近までの銀河円盤恒星質量関数を導いた。理論の 質量等級関係は最近の M 矮星の観測と比較して調べた。質量関数は 1 Mo 以下で平坦になるが、主系列の底まで上昇し続ける。1 Mo 以下での今回の 決定を Scalo による大質量側の質量関数とつなげて、0.1 - 100 Mo まで を 3 つの関数形で表現できた。それらは二つのべき乗則と一つのログノーマル 型である。この質量関数を積分して円盤種族の質量センサスが得られる。

Dame,Hartman, Thadeus 2001
銀河系分子雲: 新しい CO サーベイ
 CfA 1.2 m 望遠鏡による第1、第2象限とオリオン、タウルスでの CO サーベイに この望遠鏡の過去の観測及び Cerro Tololo での観測、計 31 サーベイ観測を加えて、 銀河全体の合成マップを作った。観測は (1/8)° 間隔、銀緯 4 - 10° 巾、 ビーム幅は(1/4)° で行われた。  マップから銀河系の骨組み構造が見える。平均コラム密度は, |b| = 5° での 3 1020 cm-2 から |b| = 30° での 0.1 1020 cm-2 まで低下する。これは平面近似からの予想値 に較べると 6 倍も急である。しかし、この値はより高緯度での観測と一致する。 NH2/WCO = (1.8±0.3) 1020 cm-2 K-1 km-1 s である。

Majewski et al 2000
巨星を用いたハロー副構造の探求 I.巨星・矮星分離
 銀河系や他の銀河のハロー構造を赤色巨星で調べるプロジェクトを開始した。 ワシントンシステム (M-T2, M-DDO51) 二色図で巨星と矮星が 分離することを利用するため、まず較正を行う。

Yanny,B. + 23 2000
SDSS による A 型星カラー星の同定と 銀河系ハロー内副構造
 SDSS 開始観測が赤道に沿った巾 2°.5 の帯で行われ、 15 > g > 22 で主系列 A 型星のカラーを持つ 4208 星 が選ばれた。これらの星の分布はハロー中に円弧状の副構造を示すことが判った。  測光カラーから低表面重力星は青い水平枝星、高表面重力 のブルーストラグラーを分離した。 南側A型星超過の場所には F 型星も見つかった。北側はF型星検出には遠過ぎた。
検出された BHB 星の数から導かれた円弧質量の下限は 6 × 106 Mo と 2 × 106 Mo である。ただし空間的広がりの全体はまだ 不明である。全天の 1 % を見ただけでこんな大きな副構造が見つかったということは ハロー中にこの様な副構造が稀ではないことを意味する。
 簡単な楕円体分布を BHB 星に当てはめて、 c/a = 0.65, 密度低下の指数 α = -3.2 を得た。

Dutra, Bica 2000

銀河系中心方向の新しい赤外星団
 銀河系中心 5°×5° の星団を 2MASS を用いて系統的に 探索した。同時に |l| < 4° の HIIR と暗黒雲も調べた。58 個の 赤外星団とその候補のリストを得た。それらの位置、サイズ、 100 μm 放射から決めた赤化量を示す。以前にカタログ化されている天体と合わせた 星団の角度分布と、星形成複合との関連を議論する。

Alves 2000
レッドクランプ星 K 等級の較正
 ヒッパルコスのレッドクランプ238星のK等級を導き、銀河中心までの 距離 (m-M)o = 14.58+-0.11, R=8.24+-0.42 kpc を求めた。

Paczynski,Stanek 1998
 ヒッパルコスレッドクランプの平均 I 絶対等級 を出し、OGLE バーデ窓レッドクランプ の平均 I 等級から銀河系中心距離を求めた。

Twarog, Ashman, Anthony-Twarog 1997
銀河系円盤の形成と進化の改訂観測
 DDO 測光と中間分散分光により組成が与えられた 76 散開星団を統一した メタル量表示に変換し、銀河系円盤の局所構造と進化の研究を行った。Ro = 8.5 kpc. 星団メタル量の分布は二つのはっきり区別されるゾーンで記述される。一つは RGC = 6.5 - 10 kpc でメタル分布は平均 [Fe/H] = 0.0 で散布度 = 0.1 dex。そこではあるにしても精々弱いメタル量勾配の証拠しかない。 R > 10 kpc ではメタル量散布度は 0.10 - 0.15 dex、平均 [Fe/H] = -0.3 でメタル量には R = 10 kpc で鋭い断絶があることが予想される。この断絶を 補正した後には、面に垂直な方向のメタル量勾配の証拠は認められない。
 R < 10 kpc の星団を過去 7 Gyr の円盤を代表すると、星団メタル量の 巾はフィールド星での分布の半分である。この結果を先のメタル量分布の断絶 と結びつけると、低メタルの R > 10 kpc フィールド星が内側へと拡散で 流入してきていると解釈可能である。これはまた、太陽は太陽円上で 4.6 Gyr 昔にできた普通の星ではないという解釈も含む。メタル量断絶は円盤球状星団 と所謂厚い円盤とで定義される銀河系の初期円盤の縁を反映していると考えら れる。断絶線の両側での化学進化の差によって生み出された [Fe/H] の初期の ずれは銀河進化を生き延びて現在の状態にまで至っている。そうであるなら、 組成勾配ゼロでの拡散は銀河中心距離に基づくフィールド星の分離を困難に する。

Binney, Gerhard, Spergel 1997
内側銀河系の測光構造
 内側銀河系の放射分布を、ダスト減光補正した COBE/DIRBE 表面輝度マップ からノンパラメトリックに、求めた。ベストフィットは太陽を銀河面の上方 14±4 pc に置いた時に得られた。得られた密度分布は細長い3次元 バルジが高度に非軸対称な円盤内に埋め込まれていることを示した。バルジの 軸比は 1 : 0.6 : 0.4 で長軸半径 2 kpc であった。長軸の近い側頂点は第1 象限にある。バルジを囲む楕円円盤は短軸 2 kpc, 長軸 3.5 kpc である。
 どのモデルにも短軸方向 2.2 kpc の所に密度極小がある。それに続く、極大 は 3 kpc の所にあり、l = -22°, +17° の方向にある。この点は L4 に対応するのかもしれない。そう考えて、バルジバーの長さを 使うと、バーのパターンスピードとして Ωb = 60 - 70 km/s/kpc を得る。
 渦状腕を持つ銀河モデルを使った数値実験によると、COBE データから回復された 高度に非対称な円盤は、もし密度コントラスト > 3 ならば渦状構造を反映する はずである。これらの実験はバルジの方向角が 20° 付近であることを示唆している。

Paczynski,Stanek,Udalski+3 (1994)
バーデの窓での円盤星分布
 バーデ窓方向の色等級図に驚くほど細い主系列星が見えた。これは我々と 距離 d ∼ 2.5 kpc の間で円盤星が倍になっていて、その先でファクター 10程度低下することが原因である。  細い主系列は Mv ≈ 7 まで続く。これは 古い種族である。この様な特徴は通常の円盤モデルでは予想されていない。しかし、 古い種族星が腕付近に集まることは他の銀河、M 51 でも注意されている。  レッドクランプ星と赤色巨星の比率はバルジ内に若い種族が存在することを 示唆する。色等級図上バルジレッドクランプから上方に尾が伸びている。円盤の レッドクランプらしい。

Reid,N., Majewski 1993
スターカウント再生 I.
暫定モデル
北銀極方向 V = 23 等までのスターカウントを「標準」モデルで解析した。 標準モデルでは、
ハロー:ドボークルー回転楕円体 c/a=0.85, Re=2.7kpc,規格値0.15%,Mv<4.5で光度 関数は近傍星型。M3 CMD
E/T 円盤:スケール高1.2kpc, 規格値=2%,近傍星型光度関数。47 Tuc CMD.
古い円盤:スケール高325pc、近傍星 CMD
等級分布は予想と合うが、 V > 20 でのカラー分布は,モデルと観測で大きな差があることが判った。 これまでの標準モデルはハロー星が 多過ぎ、円盤星が少なすぎるが、実際には V = 21 では円盤星が多い。矛盾を解消 するために、ハローの暫定モデルを提案する。
ハロー:ドボークルー回転楕円体 c/a=0.85, Re=2.7kpc,規格値0.15%,Mv<4.5で光度 関数は球状星団型。
E/T 円盤:スケール高1.4kpc, 規格値=2.5%,近傍星型光度関数。古い円盤と47 Tuc の 中間CMD.
古い円盤:スケール高400pc、近傍星 CMD

Wainscoat, Cohen, Volk, Walker, Schwartz 1992
8 - 25 ミクロン赤外の空のモデル
 赤外点源の分布モデルを作った。モデルは円盤、バルジ、渦状腕、ハロー (局所腕を含む)、分子リングを含む。銀河系内天体 87 種類の夫々に 特有のスケール高、密度、絶対等級を与えた。  我々は天体の V および K 累積および微分星計数を再現できた。我々は星の 星計数を IRAS LRS の波長範囲 7.7 - 22.7 μm で任意の方向で得ることが 出来る。

Weinberg 1992
銀河系の大規模恒星バーの発見
 AGB 星を探索子に使い、太陽円の内側の恒星円盤の構造を調べた。銀河中心の 周りの恒星分布の最低調和関数項を決定することから出発し、長半径 5 kpc, 位置角 -36±10 のバーが存在する証拠を発見した。  バーの存在は、輻射補正の不確定性、減光強度、AGB 星の光度分散に対して 確実に言える結論のようである。また、マップはバーの端末から渦状腕が発生している 様子を示す。この方法はもっと広範なサーベイに適用可能である。

Kent, Mink, Fazio, Koch, Melnick, Tardiff, Maxson 1992
スペースラボ赤外望遠鏡 IRT による銀河系構造I. 2.4 μm マップ
Infrared Telescope (IRT) は スペースシャトルに搭載され、2.4 μm で空の大半を観測した。分解能は約 1° である。この論文では l = [-20, 120], b = [-30, 30] の較正マップを示す。  測光精度は 20.0 mag arcsec-2 である。ゼロ点を除くと、データは 気球による以前の観測と良く合う。ただし、高銀経で系統的なズレがある。 これらのデータはよりシステマティックな銀河系 2.4 μm 放射密度を与える。

Kent, Dame, Fazio 1991
スペースラボ赤外望遠鏡 IRT による銀河系構造II. 銀河系の光放射モデル
 銀河系の3次元放射密度分布を北側銀河系 2.4 μm マップから決めた。 円盤の動軸方向の表面輝度分布はスケール長 3.0 kpc (Ro = 8 kpc 仮定)を 持つ。垂直方向分布は伝統的な sech2 型より exp(-|z|/h) の 方が良くフィットする。太陽近傍ではスケール高 h = 247 pc で、星計数から の値と合う。スケール高は一定ではなく、 R = 5 kpc では h = 165 pc である。
 バルジは潰れた回転楕円体で近似され、その軸比は b/a = 0.61 である。その 密度分布は指数関数型である。バルジの 2.2 μm/12 μm 強度比は他のダスト なし回転楕円体天体と一致する。銀河面に沿っての輝度の揺らぎは減光効果である ことが判った。この揺らぎはダスト分布により再現可能であり、ダスト/ガス比の 決定に使える。

Jura, Joyce, Kleinmann (1989)
銀河系反中心方向の明るい炭素星
 銀河系反中心方向の 211 炭素星の K 等級を測った。炭素星の K 等級と I-K カラーがほぼ一定という仮定を用いて、表面密度、見かけ等級とカラーの分布は、 (1) 反中心方向では K バンド星間減光は 0.15 - 0.3 mag/kpc, (2) 高光度炭素 星の密度は反中心方向 3 kpc でも、太陽近傍とあまり変わらない。  通常の円盤星は太陽円を超すと急速に密度が低下するので、炭素星の密度変化は 異常である。その説明としては、(1) 反中心方向でメタル量が低下し、(2) 太陽近 傍での炭素星寿命 105 年より長い 2-3 105 年となるの ではないか?反中心方向炭素星の平均マスロス率 1.2 10-7 Mo/yr は 太陽近傍の 1/1.7 で低い。
(何だ?暗黒雲に降参? )

Habing 1988

IRAS が見た我々の銀河系 I.
 IRAS PSC から F12 ∼ F25 の天体を選んで、銀河系の横向き像を得た。 そのほぼ全ては、大きな質量放出率を持つ長周期変光星である。星の数を銀経、 銀緯、フラックスの区分毎に数えた。どの方向でも、星の数はフラックスに対して 極めて平坦であった。星の数を、空間分布と光度関数の畳み込みとして解釈する。
 その結果、二つの種族が含まれていることが判った。同じ光度関数を持つが異なる 空間分布をする二つの種族か、同じ平均光度を持つが空間分布が異なる二つか。 私が好むのは後者で、4/5 は薄い円盤に属す。その厚みは FWHM = 440 pc、動径 方向のスケール長 = 4.5 kpc, カットオフ = 9.5 kpc である。そのピーク光度は 4000 Lo である。  残りの 1/5 はもっと厚い成分で、厚みは 1.2 - 2.8 kpc, スケール長 6.5 kpc, カットオフ = 18 kpc である。この成分も平均光度 = 4000 Lo である。この厚い 種族はおそらく Gilmore, Reid 1983 が提唱した厚い円盤に属する。
 この他の結論は
(i)薄い円盤種族の光度分布はバルジと似ている。
(ii)光度から導いた星のコア質量分布は白色矮星のそれとよく似ている。

IAU Coll.88 1985
A New Halo Survey (B.Carney, D.Latham)
Largescale Problems of Galactic Structure and Dynamics (K.Freeman)
Current Programs of Local Galactic Structure and Evolution (Anderson,Nordstrom)

Yoshii, Ishida, Stobie 1987
北銀極方向 UBV 測光に基づく銀河系構造
 NGP 方向 21.46 deg2 V = 19 より明るい 18,000 星の UBV スター カウントを報告する。メタル量グループ毎に光度関数、色等級関係、二色関係 を適用して、円盤、楕円体、中間種族の銀河系モデルを構築した。  見かけ等級区間ごとの B-V, U-B カラー分布をフィットする  モデルから規格値 2 % で、スケール高 1 kpc の中間種族の存在が明らかと なった。この成分は V = 15 - 17 では約 20 % を占めている。メタル勾配は d[Fe/H]/dx = -0.5 ±0.1 kpc-1 (z ≤ 2 kpc) である。

Dame, Ungerechts, Cohen, de Geus, Grenier, May, Murphy, Nyman, Thadeus 1987
全銀河面 CO 合成サーベイ
 銀河系分子雲の大規模 CO サーベイが 1.2 m 望遠鏡を用いて北半球 NY で、南半球 セロトロロで行われた。これによる5つの大きなサーベイと、特定の星形成域 に対する 11 の小サーベイとを加え合わせ、各分解能 0.5° のマップができた。
   銀河系の内側渦状腕は、分子リングとも呼ばれるが、銀緯 2° 厚みで銀河中心 の両側 60° に広がっている。l, v ダイアグラムは分子リングでも他の場所でも 軸対称からの大きなズレを示している。最も大きなそれはカリーナとペルセウスの 渦状腕である。近傍の CO 放射は主にグールドベルトに沿っている。Lupus, Ophiuchus, Aquila がベルトの正銀経成分、Taurus, Orion が負銀経成分を代表している。
 今回のまとめで初めて太陽周囲の分子雲の分布が明らかになった。長い間、 暗黒雲の分布とリフトの位置とから近傍分子雲は北側銀河系の方が南側銀河系 より多いのではないかと疑われてきた。

Thronson, Latter, Black, Bally 1987
マスロス星の性質と星間ダスト構成の変化
 IRAS PSC からフラックスリミッテッドサンプルを調べた。IR 炭素星は 5.2 kpc-2、炭素星全体では 38 kpc-2となった。炭素星の 総数は 28,000(R/15kpc)2, R=銀河円盤半径 である。炭素星の数は 銀河中心距離に依存しない。一方 赤外 M-星は 47 kpc-2 である。 マスロス O-リッチ星は銀河系全体で 48,000 個である。進化した O-リッチ星 の数密度はスケール長 4 kpc の指数関数型の変化を示す。C-星と M-星の密度 分布のこの差は銀河面上での [C]/[O] 比の勾配が原因である。マスロス星の 種族構成が銀河中心距離により変化するため、星間空間に注入されるダストの 性質が変わり、その結果分子雲の加熱、化学、減光、初期質量関数など全てが 場所により変化する。  中間質量星からの総質量放出は 0.35 Mo/yr で、その内炭素星からの寄与は 10 - 50 % である。この値は銀河系のサイズによる。総マスロスは少数の 極端に激しいマスロスを行う星からの寄与が大きい。それらの星の多くは O- リッチである。サンプル中の炭素星の寿命は 2 105 yr である。 M-星も似たような値であろう。これは太陽近傍での炭素星誕生率= 5 10 -13 pc-3yr-1 を意味する。これは 3 - 5 Mo 星が主系列を離れる割合に等しい。それらの星が炭素星の母星であろう。 銀河系全体で炭素星が生まれる割合は 0.14 (R/15kpc)2yr -1 である。現存の mm-波輝線サーベイから得られる炭素星の 赤外二色図は炭素星全体からは偏っている。
( IRAS 2色図から(不思議なことに)隔離シェル炭素星ボックスを赤外炭素星領域として定め、そこにある 星のCO観測(KnappMorris 1985)を使って、炭素星の分布とマスロスを出して、銀河系全体の総数、マス ロス総量、炭素星寿命...と話を広げている。どうも不思議な論文。 吹きすぎ? )

Ratnatunga, Freeman 1985
ハロー外辺部での K 型巨星の運動
4つの高銀緯20平方度領域で対物プリズム探査を行い、遠方ハロー巨星を150個 発見した。これらの星の分光観測から、次のことが分かった。
外部ハローは回転していないかしていても遅い。視線速度分散は太陽からの距離に 寄らない。SGP 方向の速度分散は小さい。この結果は速度楕円体の筒型モデルと よく合う。

Bahcall, Ratnatunga (1985)
2領域での恒星観測と銀河系標準モデルとの比較
Gilmore, Reid, Hewett 1985 は彼らの観測した2領域で標準モデルが合わないと 述べたが、Bahcall, Soneira 1984 と同じパラメターの標準モデルの計算結果は 彼らの観測値に良くフィットする。差が生じた原因は、彼らが楕円体光度関数に GCF = 球状星団模様を加えていなかったからかも知れない。

Gilmore, Reid, Hewett 1985
暗い星への新しい光 VII 高銀緯二領域の光度と質量分布 
 南銀極 11.5 deg2 の 10,000 星と (l, b) = (37°, -51°) の 水がめ座 17 deg2 の 28,000 星 の V, B-V データを求めた。水がめ座の V - I カラーもここで論じる。  光度関数は Mv = +13 付近に広い極大を持つ。暗い方で下がるのは我々の以前の 結果と一致する。普通の星ではミッシングマスは説明されない。
 銀河系楕円体の古い低メタル星は遠方ほど球に近い扁平楕円体の分布をしている。 V = 17 - 18 の星の B-V カラー分布を二成分モデルでフィットすると、B-V = 0.6 - 1.0 部分をカバーしきれない。ここを埋めるために、赤いターンオフを持つ、 比較的高メタルの古い種族が必要である。この種族の空間分布は明確には定義され ていない。しかしそれは「厚い円盤」と矛盾しない。厚い円盤の運動学観測が進行中。

Gilmore (1984)
暗い星に光をーVI. 銀河系楕円体の構造と進化
 銀河系楕円体の最近の結果を解析し、非常に平坦な成分の存在を確認した。 この成分は太陽近傍で 2 % を占める。しかし、高速度星とは一致しない。そ れらの星は軸比 1;4 の楕円体か、スケール高 1.5 kpc の指数関数円盤としてか の形で分布する。 z = 1.5 kpc で密度分布が急変することで測光的には銀河系 古い円盤、スケール高= 300 pc とは、明確に区別される。この種族は従って、 円盤ではなく楕円体種族である。しかしその運動学的特性は高速度星のそれとは 違う。系外銀河の内側楕円体は運動学的にはスムーズに楕円体から円盤へと移行 する。そのモデルはスターカウントデータとよく合う。

Bahcall, Soneira (1984)
5領域での恒星観測と銀河系標準モデルとの比較
標準銀河モデル=指数関数型円盤+ドヴォークルー楕円体という簡単なモデル で、銀河系5方向のスターカウントとカラー分布を十分に説明できる。モデル では両成分にWielen 1974 の光度関数を採用し、楕円体の軸比を0.8と求めた。 Gilmore, Reid の「厚い円盤」は彼らが全ての星に主系列星のカラー光度関係を 適用したために生じたまやかしである。

Bahcall,Soneira (1983)
銀河系楕円体巨星の色等級図に対する束縛条件
 楕円体の巨星の色等級図は B = 19 より明るい等級域でのカラー分布を 決めるのに重要である。水がめ座領域 l = 36°.5, b = -51°.1 での 391 星の観測と標準モデルのカラー分布を比べてこの重要性を示した。この 等級帯では楕円体の 80 % 以上、全ての星の 40 % 以上が巨星と考えられる。
 観測からは楕円体水平枝の青い端はあまり星がいない。楕円体の水平枝星 の数は、M 3, M 13, M 92, 47 Tuc の水平枝星の数の1/10 以下である。
カラー分布のピーク巾は巨星枝の勾配に対応するので将来カラーを高精度で 観測できれば、楕円体巨星枝の勾配を決めることができる。

Bahcall,Schmidt,Soneira (1983)
銀河系楕円体
 楕円体成分の星計数を解析的近似とシミュレーションで導いた。楕円体成分 銀河中心距離 4 - 12 kpc の光度関数に関する情報を b > 30° の星計 数から導く事ができる。
 高速度星の観測と星計数から独立に導いた近傍星密度は一致している。楕円 体成分の近傍密度を異なる光度関数を適用して導いた。質量密度の多くと 光度の大部分は現在の観測から外れている。
 銀河系の回転曲線は4成分モデルで合わせられる。それは、(1)指数関数型 円盤、(2)ドボークルー楕円体、(3)重いハロー、(4)中心成分。 これらを指定するパラメターは銀河観測値と合う。
 Mv = 5 - 8 での中間種族存在量に対する上限を求めた。もしそれらが スケール高 3 kpc の厚い円盤か楕円軸比 0.5 の楕円体であるとしてもその 近傍密度は楕円体成分の 1.8 倍より小さい。

Gilmore, Reid 1983
暗い星への新しい光 III 南銀極方向の銀河系構造と「厚い円盤」
 南銀極方向 18.24 deg2, I = 18 mag. より明るい星 12,500 個の 絶対等級を測光視差から求めた。それらから、太陽近傍星に対する絶対可視等級、 絶対輻射等級の光度関数と質量を導いた。 太陽近傍での星質量密度は 0.083 Mo pc-3, 質量光度比は 1.2 (Mo/Lv,o) である。
 銀河面からの高さに応じた密度変化を、各絶対等級毎に求めた。 光度関数は高さにより規則的に変化する。 Mv < +4 の星は暗い星に比べ 銀河面への集中度が著しい。Mv ≥ +4 の星の密度則は、 100 ≤ z ≤ 1000 pc ではスケール高 300 pc の指数関数則、1000 pc ≤ z ≤ 5000 pc ではスケール高 1450 pc の指数関数則に従う。この第2のグループ星は太陽近傍で 2 % を占める。  スケール高 300 pc 成分は古い円盤であり、1350 pc 成分は「厚い円盤」と考える。 「厚い円盤」の光度関数と密度則は楕円体等密度面が銀河系円盤の重力で平坦化した と考えられる。

Reid, Gilmore 1982
暗い星への新しい光 II. 低光度主系列星の測光
南銀極方向 18.24 deg2 の V, R, I シュミット乾板の COSMOS 測定 を行った。三角視差と測光等級の揃った近傍星から得た Mv/V-I および、 Mv/I-K 関係を使って、南銀極星の測光視差を求めた。それから、+9 ≤ Mv ≤ +19 範囲の主系列光度関数を得た。Mv = +9 の限界は赤色巨星の混入 を避けて G, K 型星を除いたためである。暗い星の超過は見られない。 太陽近傍のミッシングマスは Mv = 17 より明るい星にはない。

Reid 1982
暗い星への新しい光 I. 太陽近傍の光度関数
 Smethells が 1720 deg2 の対物プリズム探査で見つけた赤色矮星 の光電測光を行った。三角視差のある星の等級を Kron - Cousins システムで観測し、 円盤主系列星の可視絶対等級 - カラー関係を導いた。この関係から上記サンプルの 星の測光視差を求め、その空間密度を Mv = +7 からMv = +12 に渡って求めた。 結果として得られた光度関数は Luyten や Wielen の光度関数と合致した。運動学を 解析した結果、局所慣性系に対し低速度の M 矮星(ミッシングマス候補となっていた 固有運動で見つからない M 矮星)が多い証拠はなかった。

Yoshii 1982
北銀極方向微光星の密度分布
 van Rhijn 光度関数を円盤星に、 M 92、M 3 の光度関数をハロー星に適用し、 円盤と楕円体の双方に指数型密度則を仮定して、(B-V) = 0.55 - 0.95, V = 12 - 18 の星計数にフィットして円盤、ハロースケール高と両者の比の3パラメター を決めた。銀極方向の dlogD(z)/dz は円盤で -1.4, 楕円体で -0.2 であった。 z(kpc) ≥ 2 でハロー質量密度が円盤を上まわる。 ハロー質量密度は太陽近傍で (3-5) 10-4 Mo pc-3 である。

Ratnatunga 1982
銀河系ハロー外辺部の研究
13 < V < 18 でハロー巨星を探そうとしても手前の矮星が被る。そこで、 SGP 方向 2.8 平方度の 128 星の分光観測を行い、 Clark, McClire 1979 に習い、MgH+Mgb 帯強度から低メタルハロー巨星を選んだ。 ハロー巨星として 23 星が見つかり、等級分布から距離分布が得られた。 しかし、より効率的な選択法が必要である。

Garmany, Conti, Chiosi 1982
大質量星の初期質量関数
 カタログから 750 個の 銀河系 O-型星をまとめた。このカタログはおそらく 2.5 kpc まで完全である。この体積限界データから 20 Mo 以上の IMF を作った。その形は dN/dM = 2.3 10-3 M-3 である。この形は Miller and Scalo や Lequeux と異なる。  我々の IMF では質量の増加と共に急激な数の低下は起きない。サンプルを 太陽円の外側と内側に分けると、 IMF に大きな違いがあることが分かる。銀河中心 方向では大質量星の割合が大きい。IMF の傾きは WR 星の空間密度と 関係しているだろう。
http://heasarc.gsfc.nasa.gov/W3Browse/star-catalog/ostars.html

Bahcall, Soneira (1981b)
選択領域における星計数の予想: 銀河系構造、円盤光度関数、
マッシブハローの検出への応用
 B&S モデルで計算した 17 方向、B, V, R, I バンドでの星計数を表にして 示す。うち、8方向は銀河系構造、円盤光度関数の暗い端、マッシブハロー検出 に有用と考えて選んだ。残り9方向は観測がなされた領域である。  他のバンドへの変換は容易である。論文ではIバンドの重要性が強調されている。 変換法を簡単に示した。
 MI = 19 までの星計数から、円盤光度関数を水素燃焼質量まで 定めることが可能である。銀極方向での MI = 22 までの星計数は マッシブハローに星がどれくらい寄与しているかを決めることになる。  ハロー黒色矮星は現在の地上望遠鏡、 ST, 赤外衛星のどれも検出できるとは 考えられない。

Bahcall, Soneira (1981)
北銀極での 16 等までの星の分布
 北銀極近くでの V = 16 より明るい星の分布を論じる。最も重要なデータは Weistrop のものである。全てのデータは、もし巨星を矮星と別に扱えば、我々の 標準銀河モデルの予想と合致する。  色々な測光バンド間の変換が与えられる。
 スターカウントはそこに出てきたバンドに対し、16等まで予言した。  2点相関関数を用いて星のクラスタリングを調べた。15 % の星は連星か3重星 に属している。

Bahcall, Soneira (1980b)
銀河系構造を探るための星計数
標準銀河モデルとスターカウントを比較して、銀河系パラメターをどう決めるかを 論じる。結論はBahcall 1980b と同じだが、こちらはずっと詳しく長い。
楕円体の形状を決めるため観測すべき領域を示し、また mV = 20 - 22 の地上観測の重要性を強調した。

Bahcall, Soneira (1980a)
銀河系構造を探るための星計数
標準銀河モデル=指数関数型円盤+ドヴォークルー楕円体という簡単なモデル でスターカウント、カラー分布がどうなるかを簡単に図示する。銀極では、m = 17 より明るいと円盤、暗いと楕円体星と交代する。カラー分布は楕円体の青い ピークと円盤星の赤いピークの双耳峰型分布を示す。2成分モデルでは回転曲線 が 200 km/s に達しない。遠方で平坦な回転曲線には重いハローが必要である。

Cohen, Cong, Dame, Thadeus 1980
分子雲と銀河系の渦状構造
 CO 2.6 mm サーベイ、一つは l = [12, 60], b = [-1, +1]、もう一つは l = [105, 139], b = [-3, +3]、から以前の見解に反し、渦状腕をよく再現 することが分かった。分子雲から、ペルセウス腕、局所腕(Lindblad の 局所膨張リングを含む)、サジタリウス腕、盾座腕、 4 kpc 腕が同定された。
 局所腕とペルセウス腕の間の空間には分子雲がない。内側銀河の腕間領域の 大部分にも分子雲が存在しない。CO が渦状構造を示していることからその寿命が 108 yr をそう大きくは超えないことが分かる。この時間スケールは 星間物質が腕を横切る時間である。すると、質量保存則から R = 4 - 12 kpc での 星間物質中で分子雲に含まれる割合は 1/2 を越えられないことが導出される。

Chiu, L-T. (1980b)
SA 51, 57, 68 での円盤とハロー種族の光度関数
 V/Vmax 法を用いて、 SA 51, 57, 68 における種族 I 主系列星、種族 白色矮星、種族 II 準矮星の光度関数を調べた。種族 I 主系列星の光度関数はスケール 高 z0 の取り方で変化する。  V/Vmax 法から許される z0 の範囲は 300 - 500 pc である。運動学の考察から適当な値は z0 = 500 pc である。種族 I 白色矮星の空間密度は 2 × 10 -2pc-3、スケール高は 400 - 500 pc である。近傍での 種族 II 天体の密度は 3 × 10-4Mo pc-3 である。

Cahn, Hyatt (1976)
惑星状星雲の誕生率
新しい減光分布に基づき、1971年のPN距離を改訂(未公開) して、PN空間密度は 80 kpc-3, 誕生率は 4-6 × 10-3 kpc-3 yr-1、 銀河系内総数は、 3.8 × 104 を得た。星形成史モデルから、1 - 5 M 星は太陽近傍で 2 - 3 × 10-3 kpc-3 yr-1 で、 白色矮星の形成率は 2 - 5 × 10-3 kpc-3 yr-1 であった。値の類似は進化上の関連を示唆する。ハローPNは太陽近傍で 0.003 kpc-3 (サンプル数=1.5!)で、それから推定される ハロー質量は2 - 5 × 109 Mである。

Schmidt (1975)
高速度星の光度関数から導いた銀河系ハローの質量
 固有運動が大きく、三角視差も得られている星の完全サンプルに基づき、近傍 光度関数を求めた。低メタル RR Lyr 星の空間運動に基づき、その内で楕円体成分 に属する星の割合を決めた。ハロー星の局所密度は 1.7 × 10-4 Mo pc-3 で、質量比としては 6 % である。これは Ostriker, Peebles が提案したマッシブハローの一桁下である。

Wielen, R. (1974)
グリーゼカタログ星の運動と年齢
  グリーゼカタログから以下の星を選んで、 光度関数 φ を作った。
  Mv < 7.5        r ≤ 20 pc
  Mv = 7.5 - 9.5,    r ≤ 20 pc, δ > -30°
  Mv = 9.5 - 11.5   r ≤ 10 pc, δ > -30°
  Mv > 11.5       r ≤ 5 pc, δ > -30°
光度関数は Mv = 5 - 9 で平坦となるがそこ以外は Luyten の光度関数とよく 一致する。色等級図上の B-V で分けたグループの速度分散はグループ近似 年齢と相関する。マコ―ミック K + M 矮星の HK 輝線強度と速度分散の間には 強い相関があり、輝線強度が K, M 矮星の年齢指標であることが確認された。

Jones,E.M. 1972
 ブライトスターカタログ星の整約固有運動ダイアグラムを作り、その解釈をした。

Strand, K.Al 1971
白色矮星の年周視差 
海軍天文台で1964年から始まった年周視差観測の結果、主系列下部の HR図が作られた。主系列の下に白色矮星の系列が見える。最も赤い所で B - V = 1.0 まで伸びている。

Cahn, Kaler (1971) 
惑星状星雲の距離と分布
惑星状星雲半径 R と表面輝度 S を結ぶSeaton の式、R = K S-1/5 、を使い、約600のPNまでの距離 と減光を決めた。約100の星雲に関しては、減光を Hβ, Hα, 10 cm フリー フリー強度比から定めた。全ての星雲の減光は減光分布モデルを使い、Seaton 式と並列 させて距離と減光を決めた。PN空間密度は 50 kpc-3, 銀河系内総数は、 3 × 105 である。

McCuskey (1969) 
銀河系反中心方向の M-型巨星 
 反中心方向 (l, b) = (186, +1) 8 平方度の領域で M0 - M1, M2 - M4, M5 - M8 巨星の空間密度を距離の関数として見積もった。493 星の赤領域対物プリ ズム、赤外と V 等級が使用データである。
 反中心方向での距離による数密度の低下は、  M0 - M1 星では、r = [1, 5] kpc で D(r) = 9.5 から 2.5 ×10-6pc-3、  M2 - M4 星では、r = [1, 5] kpc で D(r) = 4 から 2.5 ×10-6pc-3、  M5 - M8 星では、r = [2, 5] kpc で D(r) = 1.0 から 0.25 ×10-6pc-3 である。

Burbidge, Sandage (1958) 
銀河間空間2球状星団の性質 
 二つの非常に遠方にある球状星団のデータを与えた。水平枝の平均 Mv 等級 を 0.00 と仮定すると、その一つ 11h 星団 RA(1950)=11h26.6m, Dec(1950) = +29°15' (Pal 4 のこと)  は、距離 120 kpc, 直径 90 pc, 積分等級 Mv = -6.3, M = 1.8 104 Mo, 星総数 4.3 104 である。 もう一つ 10h 星団 RA(1950)=10h03.0m, Dec(1950) = +0°18' (Pal 3 のこと) は、距離 130 kpc, 直径 80 pc, 積分等級 Mv = -5.9, M = 1.1 104 Mo, 星 総数 2.7 104 である。  M3, M13 のように少なくとも星の数では10倍以上大きい星団 と比べると、量星団の直径は異常に大きい。潮汐力が小さいためかもしれない。 もし、過去に銀河中心から 9 kpc 以内に接近したことがないなら、この大きさは 理解できる。両星団が銀河中心に対し放物軌道であると仮定すると現在位置まで に 1Gyr で到達可能である。もし、それらが M31 からの脱出星団とすると、 銀河系の影響を無視して、10 Gyr で到達可能である。



銀河系運動

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著者 内容

Drimmel et al. (2023)
GAIA DR3:天の川円盤の非対称構造をマップ化する  
 ガイアにより 33 M 星の位置と速度、470 M 星の物理量が、11 M 星の変光 が見つかった。物理量と変光情報から星をグループ分けし、天の川銀河円盤の 非軸対称な特徴を位置速度空間に見出す。高温 OB 星 580,000 個と 100 Ma より若い 988 の既知散開星団を用いて、 太陽から 4 - 5 kpc の位置にある 星形成を伴う渦状構造をマップ化した。年齢が 200 Ma より若い古典的セファ イド 2800 個の分布は外側円盤太陽から 10 kpc にある渦状構造を現わす。8.7 M の赤色巨星(RGBs)が見出されたが、その内 5.7 M 星は視線速度が得られて いる。それらから太陽から 8 kpc まで MW の速度場マップがえられた。  若い種族によって明らかになった渦状構造は EDR3 の距離測定と赤外測光 からの天体リストからの最近の結果と一致し、オリオン腕が少なくとも 8 kpc の長さを持つ事を示す。外側腕は HIIRs からの結果に合う。それはペルセウ ス腕の第3象限への延長のように見える。速度の得られた RGBs は内側円盤に おけるバーの運動学的特徴を明らかにした。また外側円盤の星流運動は渦状腕 かバーの力学共鳴かも知れない。近傍 OB 星の速度場を比較した結果は RGB サンプルと一致する点、異なる点を明らかにした。

Nordstrom, Mayor, Andersen, Holmberg, Pont, Jorgensen, Olsen, Udry, Nowlavi 2004
太陽近傍ジュネーブ・コペンハーゲンサーベイ:14,000 F-, G-型矮星の年齢、 メタル量、運動学。
 太陽近傍の F-, G-型矮星の等級限界完全サンプル 16,682 星のメタル量、 回転速度、年齢、運動学と銀河系内軌道を定めた。約 13,500 星に対する 63,000 回の視線速度観測から連星の大部分が検出された。それに合わせた uvbyβ 測光、ヒッパルコス視差、Tycho-2 固有運動観測から 14,139 星の運動学情報を得た。それに最近の較正を適用して有効温度とメタル量を 定めた。当時線年齢を可能な全ての星に与えた。特に統計的バイアスとエラー の評価には注意した。と言うのは通常の手法だと、それらを過小評価し、その 結果、年齢分布に偽の特徴が現れるからである。我々の結果は Edvardsson et al. 1993 と一致した。  太陽近傍星に対する、G 型矮星の年齢分布、年齢・メタル量、年齢・速度、 メタル量・速度関係を再調査した。まず、閉箱モデル(closed box) モデル予想 に比べ低メタル G-型矮星が欠乏している(G-dwarf 問題)ことを再確認した。 銀河中心動径方向にメタル量勾配が存在し、薄い円盤ではその形成時以来 平均メタル量の変化が少ない事、全ての年齢でメタル量の分散が大きいこと、 渦状腕と分子雲により薄い円盤の運動学的加熱が連続的に起きていることが 判った。空間運動の V 成分に見られる特徴は年齢とメタル量にわたって広が っている。これは渦状腕のストカスティックな効果で、古典的な運動群に 対応しない。さらにこれは厚い円盤の星を運動学的基準で見分けることを 面倒にする。

Feast, Whitelock 2000
ヒッパルコスデータによるミラの運動:太陽円周を越えるバー 
視線速度、ヒッパルコス固有運動、周期光度関係に基づいて、ミラ型星の 空間運動を導いた。以前から言われていたミラの運動特性が周期に依存する ことが確立された。さらに、 P = 145 ? 200 日の太陽近傍ミラは銀河系中心 からの実質外向き平均速度75+-18 km/s を有する。銀河回転円運動に対する 遅れ 98+-19 km/s と合わせると、これは軌道が細長く、主軸が銀経17°の 方向に伸びていると解釈される。この先意味不明部分: This concentration seems to be a continuation to the Solar circle and beyond of the bar-like structure of the Galactic bulge, with the orbit of some local Miras probably penetrating into the bulge.

ed. Humphreys 1998
Proper Motions and Galactic
Astronomy
ASP Conf. 127
Proper Motion Surveys (W.F. Van Altena et al.)
The Lick Northern Proper Motion (NPM) Catalogs (R.B.Hanson)
The Proper Method of Measuring Luminosity Functions (I.N.Reid)
Pursuing Luyten's Discoveries: The Quest for Cooler and Nearer Dwarfs (J.D.Kirkpatrick)

ed. D.Philip, D.Latham 1985
Stellar Radial Velocities
A New Halo Survey (B.Carney)
Large Scale Problems of Galactic Structure and Dynamics (K.Freeman)
Internal Dynamics of Globular Clusters (K.Freeman)

Chiu 1980a
固有運動に基づく星種族と光度クラスの分類 
 SA 51, 57, 68 における V < 20.5 の星の固有運動が 25 年の間隔で測られた。 写真乾板からの V, B - V と固有運動を用いて、整約固有運動ダイアグラムを作った。 このダイアグラムに基づき、星を確率論的に種族と等級クラスに分類する方法を提示する。 理論尾根線をフィットして、種族I主系列は太陽近傍に比べて、大きな速度分散と 低メタルを有することが判った。組成勾配が導かれた。

Schmidt 1975
 年周視差が判っている高速度星サンプルからハロー星の光度関数を決めた。

Wielen 1974
 グリーゼカタログ星の年齢と運動特性、マコ―ミック K, M 矮星の HK 強度と運送特性の間に強い関係がある。

Jones, E.M. 1972
整約固有運動ダイアグラム 
 ブライトスターカタログ星と、 固有運動のある星の測光データと視差データを用いて、 H-R 図と似たダイアグラム を作った。図上に4つのグループが現れた。それぞれは、クラスIII, クラスV, クラス sd、 と白色矮星である。この図から赤い縮退星の位置が予言された。準矮星と 分類されていた星が 0.1 Mo の縮退星である可能性がある。それらは "Eggenities" として分類されていたかもしれない。

Giclas et al 1968
固有運動サーベイ XII
時間間隔 30年の 13 インチ望遠鏡乾板を用いて固有運動を測る研究が 1957 年から 進んでいる。これまでに μ ≥ 0".27 /yr の 12709 星のリストがローウェル 天文台ブレティン 89, 102, 112, 120, 122, 124, 129, 132, 136, 138, 140 で公表 された。公表ポリシーは 10 領域毎に行うであり、ここでは G 226 - G 235 の成果 を示す。 8 等より暗く、 μ ≥ 0".27 /yr の 549 星が載 せられている。

Woolley 1958
太陽から 20 pc 以内 743 星の速度分布
 太陽から 20 pc 以内の 743 星の視線速度を Gliese のカタログから採り、 様々に解析した。それらの星の太陽に対する平均速度は u0 = 11 km/s, v0 = -17 km/s, w0 = -7 km/s である。 スペクトル型 M, K では、メディアン接線方向速度が視線速度のメディアンと較べると、 ランダムサンプリングで許される値より大きい。また接線方向速度分布は ガウス分布から外れていて、サンプルの重みが固有運動の大きな星に片寄って いることを指し示している。  星は銀河系公転軌道の離心率で分類された。離心率の小さな星の群れでは、 速度楕円体の頂角の方向は銀河中心方向から大きく外れていない。オールト 定数 A, B から求まる (B-A)/B = 3.1 である。銀河面に垂直な方向の速度分散 は銀河面上の離心率と明白な相関を示す。 星を質量毎にグループ分けした時、 (w-w0) の分散は一定である。つまり、エネルギー等分配は全く 存在しない。



メタル量分布

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著者 内容

Kobayashi, Karakas, Lugaror 2020
元素の起源: 炭素からウラニウムまで 
 C(A=12) から U(A=238) までの安定元素全ての銀河系化学進化モデルを作っ た。その結果、元素の起源とその時間経過が分かった。太陽近傍では、もし 20 - 50 Mo のハイパーノバ(HNe)からの寄与が大きければ M > 30 Mo の 星は超新星にならない。低質量スーパー AGB 星からのハイブリッド WDs  が所謂タイプ Iax 型超新星として爆発しない、またはスーパー AGB 星が 電子捕獲型超新星 (ECSNe) として爆発しないなら、スーパーAGB星 (太陽 近傍では 8 - 10 Mo) からの銀河系化学進化への寄与は無視できる程度である。  第一ピーク元素 Sr, Y, Zr は ECSNe と AGBs で十分な量が作られる。 中性子星マージャーは急速中性子捕縛(r-過程)によって Th - U までの元素 を作ることができるが、低メタル量星での観測量を説明するにはタイムスケー ルが長すぎる。Eu に見られるような進化傾向はもし 25 - 50 Mo ハイパーノバ の 3 % が磁場ー回転型超新星となって r-過程元素を作るなら説明可能である。 太陽近傍の他にもハロー、バルジ、厚い円盤における進化傾向を予言し、将来 の観測との比較に備えた。

Hayden et al 2015
APOGEE による化学地図学:天の川円盤のメタル量分布関数化学構造
 SDSS-III/APOGEE DR12 からの 69,919 赤色巨星を用い、 R = [3, 15] kpc, |z| < 2 kpc 銀河面内かってない体積での, [α/Fe] - [Fe/H] 面上 分布とメタル量分布関数を測った。内側円盤(R < 5 kpc) の星は、高アル ファ低メタルから始まり [α/Fe] = 0, [Fe/H] = 0.4 で終わる一本の [α/Fe] - [Fe/H] 系列をなす。より大きな半径では、[α/Fe] - [Fe/H] 空間に二本の系列が現れる:一本はほぼ太陽アルファでメタル量は一桁 の広がりを示し、もう一本は高アルファ系列で超太陽 [Fe/H] で低アルファ系 列と合体する。  高アルファ系列の位置は円盤全体で一定である。しかし、R > 11 kpc に は高アルファ星が殆どない。円盤中央面 MDF のピークは R が大きくなると、 銀河系メタル量勾配を反映して、低メタル側に移動する。最も驚くべきは、 中央面 MDF の形が R と共に系統的に変わって行くことである: R = [3, 7] kpc では負方向に片寄った分布だが、太陽円環付近ではガウシャン型となり、 外側円盤で正方向に片寄った分布となる。|z| > 1 kpc または [α/Fe] > 0.18 では、MDF は R に依らず一定である。外側円盤 MDF が正方向に片 寄るのは動径移行 (migration) の標しかも知れない。軌道離心率は星種族のぼ やけを」説明するには不十分であるが、動径移行の単純なモデルで説明できる ことが判った。

Minchev, Chiappini, Martig (2014)
天の川円盤の化学動力学進化2.銀河半径と高度による変化
 Minchev13 では太陽近傍を中心に研究した。今回はさまざまな R での化学 進化を調べ、現在進行中および将来の観測で発見されるべき特徴を求める。 運動学的加熱と動径移行の効果を分離して、移行の方が重要であることを示 した。星誕生のガイド半径と最終ガイド半径の分布は古い星ほど広がる。 その結果年齢-メタル関係は太陽より外側では著しく平坦になる。色々な半径 でのメタル分布はどこでも -0.15 dex がピークになる。低メタル端は -1.3 dex までのびる。これに反し、高メタル端は半径と共に下がって行き、平均 メタル量が半径と共に下がる原因となる。  同様に、[Mg/Fe] 分布はどこでも 0.15 dex がピークとなる。その低値端は R が大きくなると消える。逆に高端は 0.45 dex で消える。 R-[Fe/H]、R-[Mg/Fe] 関係は円盤高度 Z により大きく変化する。R-[Fe/H] 勾配は負から僅かな正へ( R = 10 kpc で)と、R-[Mg/Fe] 勾配は正から負へと 銀河面高度と共に転換する。これは(i)円盤面近くで若い星が、離れると古い星 が多く、(ii)古い星ほど集中度が高く, (iii) フレアリングとエラーの効果である。 動径移行は「内から外」円盤形成には勝てない。

Nordstrom, Mayor, Andersen, Holmberg, Pont, Jorgensen, Olsen, Udry, Nowlavi 2004
太陽近傍ジュネーブ・コペンハーゲンサーベイ:14,000 F-, G-型矮星の年齢、 メタル量、運動学。
 太陽近傍の F-, G-型矮星の等級限界完全サンプル 16,682 星のメタル量、 回転速度、年齢、運動学と銀河系内軌道を定めた。約 13,500 星に対する 63,000 回の視線速度観測から連星の大部分が検出された。それに合わせた uvbyβ 測光、ヒッパルコス視差、Tycho-2 固有運動観測から 14,139 星の運動学情報を得た。それに最近の較正を適用して有効温度とメタル量を 定めた。当時線年齢を可能な全ての星に与えた。特に統計的バイアスとエラー の評価には注意した。と言うのは通常の手法だと、それらを過小評価し、その 結果、年齢分布に偽の特徴が現れるからである。我々の結果は Edvardsson et al. 1993 と一致した。  太陽近傍星に対する、G 型矮星の年齢分布、年齢・メタル量、年齢・速度、 メタル量・速度関係を再調査した。まず、閉箱モデル(closed box) モデル予想 に比べ低メタル G-型矮星が欠乏している(G-dwarf 問題)ことを再確認した。 銀河中心動径方向にメタル量勾配が存在し、薄い円盤ではその形成時以来 平均メタル量の変化が少ない事、全ての年齢でメタル量の分散が大きいこと、 渦状腕と分子雲により薄い円盤の運動学的加熱が連続的に起きていることが 判った。空間運動の V 成分に見られる特徴は年齢とメタル量にわたって広が っている。これは渦状腕のストカスティックな効果で、古典的な運動群に 対応しない。さらにこれは厚い円盤の星を運動学的基準で見分けることを 面倒にする。

Hasegawa et al. 2004
散開星団の新しい測光データ
反中心方向14個の古い銀河星団を測光し、等時線フィットから 年齢、メタル量、距離、赤化を求めた。
4星団のメタル量はメタル量-銀河中心距離関係の上にあるがギリギリ関係を 満たす。しかし、Twarog 1997 のメタル量ステップ説とは合わない。。

Freeman, Bland-Hawthornr 2002
新しい銀河系
 銀河の階層的な形成の枠組みないで、我々は自身の銀河が如何に現在に至ったかと 同様、銀河形成の粗い描像を持っているだけである。個々の星種族が原始銀河雲のどの 要素に結び付くかを描く詳細な筋書きは理解の彼方にある。  銀河系=近傍宇宙論と高赤方偏移宇宙=遠方宇宙論の両方から重要な手掛かりが 現れてきている。ここでは銀河系に見つかる過去の化石資料に重点を置く。 銀河系の詳細な研究は "baryon dissipation" に含まれる複雑な過程」を理解する 核心である。

メタルについて 1999
星のメタル量決定法の比較、銀河系ハロー、円盤でのメタル分布の研究の 簡単なまとめ。

Frogel, Tiede, Kuchinski 1999
内側バルジのメタル量と赤化
 -2.8° ≤ l ≤ +0.1° 銀河系短軸沿いの7箇所で K, J-K 色等級図を調べた。上部 RGB の傾きから -2.8° ≤ b ≤ -0.8° で ⟨[Fe/H]⟩ の銀緯による変化は -0.085±0.033 dex/deg と分かった。Tiede et al のデータを合わせると、 -10.3° ≤ b ≤ -0.8° では、傾きは -0.064±0.012 dex/deg である。この関係を 銀河中心まで外挿すると、[Fe/H] = +0.034±0.053 dex となる。
 調査した内側バルジでは AK = 0.27 - 2.15 であった。これは E(B-V) = 0.44 - 3.46 に相当する。平均減光強度とそこでの星ごとの減光の 分散との間には線形の関係があり、
σK = 0.056(±0.005) ⟨AK⟩ + 0.043(±0.005) であった。これはフィールドの大きさ(約90") よりも吸収雲のサイズが小さいためと解釈される。
 最後に、明るい巨星の光度関数から、銀河中心から離れると若い種族 は他よりも急激に数を減らし、1° 以上離れると実際上検知されなく なることが分かった。

Paczynski,Stanek 1998
 OGLE バーデ窓レッドクランプ (V-I) はヒッパルコスレッドクランプ(V-I)より赤く、 高メタルを示唆する。分光では同じくらいのメタル量が示唆されており矛盾する。

Twarog, Ashman, Anthony-Twarog 1997
銀河系円盤の形成と進化の改訂に関する観測
 DDO 測光と中間分散分光により組成が与えられた 76 散開星団を統一した メタル量表示に変換し、銀河系円盤の局所構造と進化の研究を行った。Ro = 8.5 kpc. 星団メタル量の分布は二つのはっきり区別されるゾーンで記述される。一つは RGC = 6.5 - 10 kpc でメタル分布は平均 [Fe/H] = 0.0 で散布度 = 0.1 dex。そこではあるにしても精々弱いメタル量勾配の証拠しかない。 R > 10 kpc ではメタル量散布度は 0.10 - 0.15 dex、平均 [Fe/H] = -0.3 でメタル量には R = 10 kpc で鋭い断絶があることが予想される。この断絶を 補正した後には、面に垂直な方向のメタル量勾配の証拠は認められない。
 R < 10 kpc の星団を過去 7 Gyr の円盤を代表すると、星団メタル量の 巾はフィールド星での分布の半分である。この結果を先のメタル量分布の断絶 と結びつけると、低メタルの R > 10 kpc フィールド星が内側へと拡散で 流入してきていると解釈可能である。これはまた、太陽は太陽円上で 4.6 Gyr 昔にできた普通の星ではないという解釈も含む。メタル量断絶は円盤球状星団 と所謂厚い円盤とで定義される銀河系の初期円盤の縁を反映していると考えら れる。断絶線の両側での化学進化の差によって生み出された [Fe/H] の初期の ずれは銀河進化を生き延びて現在の状態にまで至っている。そうであるなら、 組成勾配ゼロでの拡散は銀河中心距離に基づくフィールド星の分離を困難に する。

Tiede, Martini, Frogel 1997
散開、球状星団の巨星枝はメタル量指標か?観測とモデルの比較
 Kuchinski et al 1995 の導いた 巨星枝勾配 (Δ(J-K)/ΔK) - [Fe/H] 関係を散開星団に 適用した。散開星団でも高メタル球状星団と同様に、K-(J-K) 色等級図での 巨星枝勾配 が [Fe/H] と相関することがわかった。ただし、同じ [Fe/H] で 見ると、散開星団の勾配は系統的により負ではない方向にシフトする ことが分かった。
( 立つの?寝るの?どっち?)
 モデル等時線を用いてこの関係の基礎を調べた。ある [Fe/H] に対して、 関係の傾きは年齢が若くなっても一定であるが、関係は年齢が若くなると より負でない巨星枝の勾配にうつることが分かった。
( 全くわかんない。)
モデルが予言するこの二つはデータにも合致する。最後に、3つの星種族、 高メタル球状星団、バルジ星、散開星団に対して、巨星枝勾配 - [Fe/H] 関係 の新しい係数を決めた。

Twarog, Ashman, Anthony-Twarog 1997
銀河系円盤の形成と進化の改訂に関するある観測
 DDO 測光と中間分散分光により組成が与えられた 76 散開星団を統一した メタル量表示に変換し、銀河系円盤の局所構造と進化の研究を行った。Ro = 8.5 kpc. 星団メタル量の分布は二つのはっきり区別されるゾーンで記述される。一つは RGC = 6.5 - 10 kpc でメタル分布は平均 [Fe/H] = 0.0 で散布度 = 0.1 dex。そこではあるにしても精々弱いメタル量勾配の証拠しかない。 R > 10 kpc ではメタル量散布度は 0.10 - 0.15 dex、平均 [Fe/H] = -0.3 でメタル量には R = 10 kpc で鋭い断絶があることが予想される。この断絶を 補正した後には、面に垂直な方向のメタル量勾配の証拠は認められない。

Hipparcos97 1997
Hipparcos97 収録。

Andersen, Nordstrom 1995
Non-Standard Abundance Patterns
in Disk Stars
太陽近傍の数千の G-, F- 型星の年齢、組成、運動を定める。未完了。

Kuchinski, frogel, Terndrup 1995
高メタル球状星団の赤外測光
 球状星団 NGC5927, NGC6712, NGC6838(M71), Tewrzan 2 の JHK カラーと 等級を示す。データは TRGB から 6 等、水平枝の下までに及ぶ。 このほか以前に発表された 47 Tuc と M69 も使う。これらを用い、 色等級図からメタル量と距離を決めるテクニックを開発した。
 水平枝より先の巨星枝の勾配から -1.0 から -0.3 の範囲でメタル量を ±0.25 dex 精度で予想できることを示した。その他のパラメタ―、 例えば水平枝の巾、巨星枝と水平枝の分離、などは [Fe/H] と相関しない。
他の方法で距離が定まっている球状星団のデータから、⟨MKo ⟩ = -1.15±0.10 となった。これから Terzan 2 の距離指数は 14.37±0.2 となり、この星団が銀河中心から数百 pc 以内にあること が分かった。(J-H, H-K) 図上で Terzan 2 巨星枝は他の球状星団 巨星よりもバーデの窓巨星と近い。Terzan 2 周囲の巨星の巨星枝勾配から 求めたメタル量は [Fe/H] = +0.1 でバーデ窓に近い。

Janes 1995
銀河系円盤の金属量分布
ELS 以来の年齢、メタル量、運動の相関に最近疑問符が付いている。
最近の成果のレビューに基づき、銀河系のメタル量ヒストリーを提案。

Feast, Whitelock, Carter 1990
M 型巨星の種族と銀河系構造
太陽近傍, SGP のM型巨星、SR星のJHKL測光を行った。(J-H)o - (H-K)o 図上でそれらをバーデの窓のM型巨星と比べた。 SGP,SR星は 銀河バルジの高メタル成分星と同じ領域を占め、太陽近傍M型星とずれている。 二色図上で異なるメタル量モデル位置を参考にするとズレは [Z/Zo]∼+0.2 である。

Shaver, McGee, Newton, Danks, Pottasch 1983

銀河系の元素組成勾配
 可視・電波分光を合わせて、広い銀河中心距離 RG に渡る HIIR の 元素組成を測った。電波再結合線を用い、 3.5 kpc < RG < 13.7 kpc の 67 HIIR に対して正確な電子温度を定めた。この温度は用い、次に 33 HIIR の可視スペクトルから O, N, S, Ne, Ar, He+ の存在量 を定めた。
 電子温度の精度は 5 % である。電子温度と ([OIII]+[OII])/Hβ との間には 強い相関がある。異常に狭い再結合線が何本か検出され、そのライン巾のみから 出した電子温度の上限は 4000 - 5000 K である。これは低温度 HIIR の存在を明らか にした。
 温度勾配 (433±40) K/kpc が見出された。これは温度勾配が メタル量効果であるという仮説と合致する。しかし、同じ銀河中心距離でも 電子温度に 2000 K のばらつきがある。これは電子密度が HIIR 毎に異なる ためと、励起星の有効温度の違いによるのであろう。
 酸素の組成勾配は -0.07±0.015 dex/kpc である。窒素の方はそれより うんと急ではなく、-0.09±0.015 dex/kpc で、硫黄は それよりずっと平坦な -0.01±0.015 dex/kpc であった。ネオンも同様に 平坦らしいが、アルゴンは酸素と似た勾配を持つ。銀河中心距離の等しいところでの 組成のばらつきは小さく 20 % 以下である。He+/H+ 比 の勾配は認められなかった。

Claria, Lapasset 1983

ヒアデスより高齢の3星団内巨星の物理的性質
 高齢散開星団 NGC 2482, NGC 3680, IC 4651 の 広帯域 CMT1T2, 中帯域 DDO 測光を行った。独立な二つの測光 規準を用いて、フィールド星と星団星を分離した。また、赤化、距離指数、 金属量、有効温度、表面重力を導いた。質量も粗い見積もりを出した。 NGC 2482 と IC 4651 の巨星はヒアデス巨星とほぼ同じ CN 強度を有する。 NGC 3680 の方は近傍 K 型巨星よりもわずかに強い CN 強度を示す。 CMT1T2 から NGC 2482 と NGC 3680 は鉄ラインから 導かれた値として、 [Fe/H]MT = -0.1±0.1、一方 CNO-混入のある (C-M)指数は 0.4dex 高い。 CMT1T2, DDO 双方が IC 4651 は [Fe/H] = +0.2±0.1 で中間年齢、高齢星団の 金属量分布の高金属量側に位置することを支持する。NGC 3680 と IC 4651 の クランプ星はその位置でヘリウムコア燃焼を開始する以前にマスロスを受けて いたようだ。

Arp 1965
 NGC 6522 周辺星の色等級図からバルジのメタル量は 47 Tuc と太陽の間。



星間減光

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著者 内容

Agundez, Martinez, de Andre, Cernicharo, Martin-Gago (2020)
AGB 星大気内の化学平衡  
 M-, S-, C-AGB 星大気の化学平衡を計算した。一般的に、化学平衡の結果は 星周外層中の組成観測結果をよく説明する。しかし、平衡予測に比べ数桁も多く 観測される分子もある。例えば、M-型星では HCN, CS, NH3, SO2, S-型星で H2O, NH3, C-型星で H2O, NH3, SiH4, PH3 などで ある。
以前の研究と同じく、C-星大気で最初に現れる凝結物質は C, TiC, SiC であり、 O-リッチ流出流中では Al2O3 である。C ダストのガス 前駆分子はアセチレン C2H2 と C 原子、それに/または、 C3 である。  SiC ダストの前駆分子は SiC2, Si2C である。TiC (タイタニウムカーバイド)ダストに関しては、大気内部で最も豊富 な原子 Ti が TiC ダストに対する主要供給源であろう。しかし、化学平衡計算は TiC 凝結が予想される領域では、原子 Ti の代わりに Ti8C12 や Ti13C22 のような タイタニウム・カーボンクラスターが Ti の貯留体となることを予想する。これは 大きな TixCy の集合が TiC ダストの最初の凝結核の 形成と関係することを示唆する。
(隕石で見つかったプレソーラー物質で ある TiC になぜか入れ込んでいる。 天体観測例は?波長は?)
Al2O3 ダストに関し ては、原子 Al と Al-O 結合を含む AlOH, AiO, Al2O が最有望な ガス前駆体である。

Chen, Wang, Deng, de Grijs (2018)
銀河中心方向の極度に低い中間赤外減光と 55 セファイドの距離  
  GC 方向の古典セファイド 55 個から NIR - MIR 減光則を3つの方法で導い た。我々の MIR 減光則は 極めて低く、急勾配である。7バンド最適距離の方法を用い、我々の 55 セファイドサンプル星の平均距離精度を 4 % に改善した。銀河中心セファイド 4つを用いて、銀河中心距離 Ro = 8.10±0.19±0.22 kpc とした。
(筋が怪しい気がする。最後の方で 論理を整理した。)

Shan, Zhu, Tian, Zhang, Wu, Yang (2018)
レッドクランプ星から求めた SNRs 距離  
 銀河系第1象限の SNRs 距離を測定した。レッドクランプ星を標準光源と減光 探索子に用いて、個々の SNR 方向で Av - D 関係を導出した。15個の SNRs 距離が導かれた。今回求まった距離の殆どは以前の距離推定値と矛盾しない。

Rezaei, Bailer-Jones, Hogg, Schultheis (2017)
ダスト 3D マッピングから検出される天の川の渦状腕  
 測光と分光データに星距離を組み合わせると3Dダストマップが作れる。 SDSS と APOGEE DR14 を用いて、太陽から 7 kpc, 銀河面から 100 pc 以内の ダスト分布を求めた。累積物理量でなく局所物理量であるダスト分布を導く 方法にはガウシャンプロセスに基づいたノンパラメトリック法を採用した。  この方法は、3D 空間内の点の間でダスト相関(?) をモデル化し、事前に定 める関数形に拘束されず任意の形の変化を捉える。結果として得たマップは 渦状腕らしき特徴が見られた。これは何の仮定も置かずに、ダスト分布に腕 構造を見出した最初の例である。マップには既知の大きな分子雲が見え、 それらの幾つかは距離が不定であった。

Liu, Jiang (2017)
進化した星におけるシリケイトと SiO メーザーの関係  
 SiO 分子は星周エンベロープ中でのシリケイトダストの種候補の一つである。 しかしこの考えには疑問が持たれている。ここでは SiO メーザー強度とシリケ イト放射強度の関係を調べる。PMO/Delingha 13.7 m 望遠鏡での観測と文献 データから、 SiO v = 1, J = 2 - 1 の 21 天体と SiO v = 1, J = 1 - 0 28 天体のサンプルを集めた。  それらの天体は ISO/SWS の SiO 放射も示している。SiO メーザーとシリケ イト放射の間には明白な相関があった。これは SiO 分子がシリケイトダストの 種であるという仮説に反しない。一方、 SiO メーザーとシリケイト結晶性の 間には相関がみられない。これは結晶性が質量放出率と関係ないことを 意味するのかも知れない。

Messineo, Zhu, Menten, Ivanov, Figer, Kudrizki, Chen (2016)
内側銀河における異常に多数の赤色超巨星の発見
 Q1 と Q2 を使い、2MASS と GLIMPSE North カタログから選んだ RSG 候補 94 個の H-, K-バンド R/1000 赤外分光観測を行った。水吸収が強くなく、 EW(CO) が大きい 58 個 = 61 % の RSGs を同定した。   47 個の距離をレッドクランプ法で決定した。
Mohr-Smith, Drew, Barentsen, Wright, Napiwotzki, Corradi, Wisloffel, Groot, Kawari, Parker, Sale, Uhruh Vink, Wesson (2013)
カリーナ腕 Wd 2 とその周囲の新しい OB-型星候補の発見
 O-, 早期 B- 型星は銀河系でまだあまり多く登録されていない。南銀河系で g = 20 等まで OB-星候補を探した。探査領域はカリーナ腕の方向、若い大 質量星団 Westerlund 2 の周り 2 平方度である。この星団内にある OB 星を 我々の手法の確認に用いた。この方法は (u-g, g-r) 図を用いる。  マルコフ鎖モンテカルロ法により VPHAS+ u,g,r,i 等級と公表されている J, H, K 等級を組み合わせ、星のパラメタ― log Teff, DM と減光パラメタ― Ao, Rv を導いた。
 星のパラメタ―は OB 星を確定するに十分であり、一方減光パラメターの 誤差は σ(Ao)≈0.09, σ(Rv)≈0.08 の精度であった。 B2 より早期と判定された星が 489 個見つかった。この中には大質量 O-型星と 考えられる星が 74 個、青色超巨星候補が 5 個、赤化を受けた準矮星が 32 個 含まれる。この結果、領域内の OB 星及び候補星の数が 10 倍に増えた。新候補 星の大部分は 3 - 6 kpc にある。また以前から指摘されていた、弧の視線方向 では赤化則が Rv = [3.5, 4] で非標準的であるという事実が再確認された。

Schultheis + 21 (2015)
GAIA-ESO サーベイ:星間減光の追跡  
 Gaia-ESO 高分散分光サーベイ第2データ公表と十分に精度の高い距離と組み合わせて 星間減光とその銀河系内での位置による依存性を調べることである。   5000 以上の星の大気パラメタ―を使い、SDSS, VISTA、理論モデルと組み合わせて、 距離と減光量を求める。減光係数を文献値と比較して星の性質と銀河系内位置に対する 依存度を論じる。  減光係数が大気パラメタ―や銀河系中心距離に依存する証拠はなかった。これは SDSS ugroz バンド、NIR JHKs バンドでは減光則が一様であることを意味する。従って 平均色超過に一定の減光係数を適用して求めた減光マップは付加的な系統誤差を考慮 せずに使用できる。

Jones, Kemper, Srinivasan, McDonald, Sloan, Zijlstra (2014)
LMC O-リッチ進化した星のアルミナ量  
 O-リッチ AGBs の星周外層中ダストの成分を決めるために、ダスト成分、 マスロス率、シェル内径、星パラメターのグリッド上で MODUST 輻射輸達モデ ルを作った。モデルのカラーを SAGEーSpec LMC サンプルと比較して、良い一 致を得た。5 - 37 &mu:m Spitzer IRS スペクトルと 可視 - MIR の測光が与 えられた 37 O-リッチ AGB 星をフィットした。  モデルフィットから得たマスロス率は 8 10-8 - 5 10-6 Mo/yr である。観測スペクトルに合うダスト組成は 非晶質シリケイトが主成分 で、それに非晶質アルミナ、金属鉄が加わる。AKARI の[11-15]-[3.2-7] 二色図 からアルミナの割合を決めることも出来る。

Schultheis + 15 (2014)
バルジ方向減光マップ:APOGEE による 2D, 3D マップのテスト  
 銀河系マップは重要であるのでその精度をテストする必要がある。 バルジ方向の大規模分光サンプルによる減光測定を用い、測光法で求められた 2D, 3D の様々な減光マップを調べた。高分解能 H-バンド APOGEE スペクトル から星の大気パラメタ―を決めた。  恒星の等時線モデルと組み合わせて、バルジ方向 2400 巨星の距離と減光を 定めた。それらを近赤外、中間赤外測光観測から求まったバルジの 2D, 3D マップと較べた。波長間隔の長い NIR + MIR カラーは平均すると APOGEE の減光と良く合う。

Lallement, Vergely, Valette, Eyer, Casagrande (2014)
個々星の色超過を逆変換して求めた局所星間空間の3Dマップ 
 銀河系青函物質の 3Dマップを得るために、距離限界の星間物質 量の個々の測定を逆変換することである。この方法を星の可視超過 に適用する。
 2.5 kpc 以内の視差や測光距離が分かる 23,000 個の星の色超過データ をカタログ化した。regularized Basian 法に基づいた逆変換をこの データベースに応用した。これは以前もっと近距離の星に使用されたこと がある。
 ダストの空間分布を様々な方向の平面カットで表した。マップには太陽 近傍の濃い雲が現れている。その空間分解能は太陽近傍で 10 pc, 1 kpc より遠方で 100 pc である。
近距離で弱い減光の星にバイアスがかかって いるこのデータセットは近くの空洞構造や薄い星間雲の位置を決めるのに特に 有用である。それらは他の手法では扱いにくい対象である。新しいマップには 第3象限に局所泡 (Local Cavity) の CMa トンネルの延長として、 1 kpc 巾の 空虚な空間が現れた。局所泡自体はわれわれはスーパーバブル GSH238+00+09 として、電波マップ上に同定し、オリオンとヴェラの雲で区切られたものと している。ダストマップにはその反対側 l = 70 方向にも狭いトンネルが伸びて 局所泡を引き延ばしていることが示された。
これらは一体として見ると、Lup, Sco, Oph, Aql, Lac, Tau 雲と OB アソシ エイションで限られたはっきりした空洞を形成している。この空洞の連鎖と 周囲の濃い領域は良く知られたグールドベルト=リンドブラッドリングの 計算機による表現である。最後に、 2D マップの高銀緯に現れた銀河面から 離れた構造は全て 3D マップに対応物が現れた。それらは近傍の薄い雲に 付随するダスト分布を与える。

Wang, Jiang (2015)
赤外減光のモデル化  
 星間空間におけるダスト散乱と減光の性質は星間ダストの大きさと組成に対し 重要な情報を含んでいる。紫外、可視星間減光は良く研究され、様々な種類の ダスト混合モデルでよく合わせられている。しかし、赤外減光の性質はそれほど よく理解されていない。特に中間赤外 3 - 8 μm 帯で減光曲線が平坦になる 減少は、 Mathis-Rumpl-Nordsieck (MRN) の標準モデルと一致しない。我々は この平坦部を再現するために、非晶質シリケイト、グラファイト、非晶質炭素、 鉄の様々なサイズのダストの混成を調べた。
 マイクロンサイズの非晶質炭素が 100万水素原子当たり 60 炭素原子を使う くらい (C/H = 60 ppm) にあれば、平坦赤外減光が説明できる。紫外ー可視ー 近赤外の減光曲線は Si/H = 34 ppm. C/H = 292 ppm を使うシリケイトーグラ ファイトモデルで説明可能である。  UV から MIR までの減光曲線はミクロン以下のサイズの非晶質シリケイトと グラファイト、ミクロンサイズの非晶質炭素の混成で説明できる。ただし、 このダストは C/H = 352 ppm となり、星間空間で得られる炭素量を越えている。

Schultheis, Chen. Jiang, Gonzalez, Enokiya, Fukui, Torii, Rejkuba, Minniti (2014)
銀河系バルジを高分解能でマップする:3D減光マップ、CO と X-ファクター  
 VVV + ブザンソンモデルから、l = [10, -10], b = [-10, 5] の 3D 減光マップを作った。最近開発された色超過を用いる方法を用いる。 第1に Ks-(H-Ks) と Ks-(J-Ks) CMD を VVV から作る。第2に、M-型星の 温度 - カラー関係と距離 - カラー関係を用いて、減光 - 距離関係を 導く。観測されたカラーを距離の関数として、ブザンソンモデルから決まる 固有カラーにずらすには逐次近似の方法を使う。この結果、 3D 減光マップ が得られる。
 全 VVV 領域で、角分解能 6×6 , 距離区画 0.5 kpc の E(J-Ks) と E(H-Ks) 3D 減光マップを作った。距離は 10 kpc, 減光は Av = 30 mag に達する。マップはバーの前面に多くの物質が 存在することを明らかにした。特に 5 - 7 kpc に多い。我々は減光マップを NANNTEN2 の CO 観測と較べた。その結果 Av と CO の良い相関が確認された。 両者から X ファクターを X = 2.5±0.47 × 1020 cm-2 K-1 (km/s)-1 と定めた。

Minniti, Saito, Gonzalez, Zoccali,+9 (2014)
VVV による銀河系の人口統計学 III.グレートダークレーン  
 VVV サーベイの 157 M 星赤外測光を用いて、バルジ内のダスト雲の大規模分布を 解析した。我々はバルジの CMD を調べ、レッドクランプ星のカラーが二つに 分かれることを示した。カラー差の平均は Δ(Z-Ks) = 0.55 である。 これは Av = 2 に相当する。  我々は l = [10, -10] にかけて銀河面の上下、中間銀緯帯に光学的に厚い ダスト帯があると結論する。我々はそれを "Great Dark Lane" と呼ぶ。その 距離はまだ不定であるが、バルジ前面にある。このダークレーンは銀河系の バーバルジ構造を考える際に重要な拘束である。マイクロレンズィングと 星種族への影響も論じる。

Wang, Jiang (2014)
APOGEE に基づく近赤外減光則の普遍性  
 APOGEE H バンド分光サーベイ(SDSSIII)から多数の巨星の表面温度、そして 固有カラーが求められた。5942 個の K-型巨星を用いて NIR 減光則を再検証した。
( 個々の星毎に固有カラーを決めて 赤化を求めているのは斬新である。)
E(J-H)/E(J-Ks) には E(J-Ks) = 0.3 - 4.0 の範囲で色超過依存性が認められなかった。  これは星間空間の希薄領域と濃密領域とで減光則が一定であることを示す。その一定値 E(J-H)/E(J-Ks) = 0.64 はべき乗指数 n = 1.95 に対応する。他の比は E(H-Ks)/E(J-Ks) = 0.36 と E(J-H)/E(H-Ks) = 1.78 であった。以上の結果は MNR ダストサイズ分布に合致する。

Gao, Li, Jiang (2013)
銀河系中心方向の減光曲線モデル 
 GC 方向 1 - 19 μm IR 減光曲線を標準 シリケイト - グラファイト モデル で表した。グレインはべき乗則半径分布+ある半径以上で指数関数型減衰を仮定した。  ベストフィットモデルは Av = 38 - 42 mag であった。
 モデルは 1 - 3 μm の急な勾配と 3- 8 μm の平坦部を上手く表せない。 その原因は視線に沿って異なる種類のダストが存在するためである。それらは、希薄 領域にある小さな Rv と急な NIR 勾配を持つダスト、および、濃密領域にある 大きな Rv と平坦な UV 減光を持つダストである。

Fourtune-Ravard, Babusiaux, Gomez (2013)
銀河系の減光マップ:モデル非依存法 
  これまでの天の川3D減光マップは全て、例えば Marshall et al. 2006 のように、モデルとデータの比較に基づいていた。ここでは モデルに依らず減光マップを作る方法を提案する。 我々は CMD 上でレッドクランプ系列を識別するアルゴリズムを開発した。 これにより、距離ー減光関係を視線に沿って導いた。2MASS と UKIDSS データを用いて詳細な 3D 減光マップを作った。

Nataf+13 (2013)
バルジ方向の赤化と減光:Rv=2.5 減光則
 OGLE-III with VVV と 2MASS データの E(J-Ks) を結合して、長らく問題だった 銀河バルジ方向の非標準的可視域減光則の問題を解決した。減光は次の式でよく 表せる:AI = 0.7465E(V-I) + 1.3700E(J-Ks), または同等だが、 AI = 1.217 E(V-I)(1 + 1.126(E(J-Ks)/E(V-I) - 0.3433))。 内側銀河の可視と近赤外の減光則は Rv = 2.5 ±0.2 に従う。この値は タイプ Ia SN の起きた銀河での結果に一致する。我々の用いたフィールドの大きさ 6' という細かさでも場所による赤化の違いが検出された。
 バルジレッドクランプの固有パラメタ―は以下の通りに決まった:
(MI,RC, σ(I)RC, (V-I)RC, σ(V-I)RC, (J-Ks)RC) = (-0.12, 0.09, 1.06, 0.121, 0.66) この値から、バルジ構造のパラメタ―を決めることが できた。われわれは銀河中心距離を 8.2 kpc と定めた。この結果、以前に 存在した I バンド観測から定めたバルジ距離の矛盾が解消した。軸の傾き 角度の上限 α = 40 deg である。見かけ等級のピークは N 体計算 からの予想値 25 deg と矛盾しない。RC星の数はバルジ星総質量として 2.0 × 1010 を示す。

Gonzalez, Rejkuba, Zoccali, Valenti, Minniti, Schultheis, Tobar, Chen (2011)
 VVV と 2MASS から導いた銀河系バルジの赤化と金属量マップ II. 高分解能で完全な減光マップとバルジ研究におけるその意義
 バルジの研究にとり強くて変動する減光は大きな障害である。   VVV 公開データを用いてバルジ全体の減光を高分解能で調べた。  論文Iで述べた方法で、 b = [-10.3, +5.1], l = [-10.0, +10.4] での赤化 を 2×2 から 2×2 の分解能で求めた。各小区間 内のレッドクランプ平均 (J-Ks) をバーデの窓のレッドクランプ平均 (J-Ks) と 較べて赤化を出したのである。
 2 という小さなスケールでの赤化の大きな変動が検出された。 外側バルジで Schlegel マップと較べた結果は良好な一致が得られた。バルジの星 種族や構造の研究には高分解の減光マップが必須であることが示された。  バルジ全体の 315 平方度を被う最初の減光マップを示した。 b = -3 のバーデの窓 で AK で 0.1 mag の変動があることが判った。バルジ種族の研究をする 場合には 2 - 6 の減光変動を考慮しなければ いけない。 

Saito, Minniti,+ 10 (2012)
銀河系の人口統計学 1.バルジの 84 M 星 CMD 
 VVV 2010 - 2011 データはバルジ 315 deg2 をカバーした。 これによりバルジ全域の CMD を作成した。データには 173 M 星が3バンド 測光値を与えている。内、"星" のフラッグの付いた天体は 84 M あった。 CMD は複雑な種族構成と減光効果により入り組んでいる。b = -8 と 10 では レッドクランプ星の等級は二重に分かれる。一方、もっと内側の b = -3 では カラーが広がっている。  星種族合成モデルは主系列星と巨星が (J-Ks) = [0.7, 0.9], Ks > 14 で支配的であることを示す。 バルジに赤色矮星の存在を見つけた。これらは惑星トランジット探索に重要 である。外側バルジで見つかった二重等級のレッドクランプは X-シェイプ バルジの証拠である。一方内側バルジのレッドクランプカラーの広がり、 極端な場合は第2ピークは赤化による。銀河系中心の周辺は減光と赤化が 強いため解釈が困難である。

Bladh (2012)
低温で明るい巨星の星風駆動ダスト種の探究 I.M-型 AGBs での選択基準と動力学モデル 
 AGBs からの質量放出は2段階の過程:(1)脈動衝撃波による大気の浮揚 と(2)形成されたダストの輻射加速、を経ると考えられる。ダストは衝突を 通して周囲のガスに運動量を転移し、ガス流出を起動する。浮揚する大気は ダスト形成温度まで冷える距離に達する必要がある。この浮揚距離は衝撃波 から大気に散逸される運動エネルギーで制限を受ける。どのようなダスト種が この条件を満たすかを調べるため、詳細な輻射流体力学にパラメター化した ダストを組み込んで、モデル計算を行った。
 ダスト凝結温度が低く、近赤外吸収係数が波長と共に急激に低下するという 組合わせだと、形成距離が星表面から遠すぎて星風を起動できない。純粋鉄 と鉄シリケイトは NIR 光学性質が星風起動には適さず、形成距離が遠すぎる。 TiO2 は Ti 量が少なすぎる。 SiO2 と Si2O3 は光学的性質と化学的性質に不明確な点が あり、一層の研究が必要である。最有力候補は粒径 0.1 - 1 μm の Mg2SiO4 である。その光散乱は輻射加速に大きく 寄与する。

Nidever,Zasowski,Majewski(2012)
近-, 中間赤外測光でダストのベイルを巻き上げる III.
  レーリージーンズ色超過法による銀河面の二次元減光マップ 
 レーリージーンズ色超過法 (RJCE) を用いて、銀河面の高分解減光マップ を作った。この RJCE 法では近赤外と中間赤外の測光を組み合わせて、星ごとに 減光度を決める。RJCE マップは 2'×2' ピクセルで、256° - 65° 区間を GLIMPSE-I, -II, -3D と Vela-Carina サーベイデータからマップした。
 RJCE 減光測定に基づき、我々は赤化補正色等級図を作り、 そしてそれを用いて、今度は逆に主系列、レッドクランプ、 赤色巨星毎に異なった距離区間のマップを作った。こうして粗いダスト雲の 3次元分布を調べた。

Minniti, Saito, Alonso-Garcia, Lucas, Hempel 2011
レッドクランプ星を用いた銀河系恒星円盤の縁の検出
 ヒッパルコスで較正したクランプ巨星の絶対光度を用いて、UKIDSS-GPS と VISTA Variables in the Via Lactea (VVV) の二つのサーヴェイにより、これら の星のマップを作った。クランプ星の選択範囲をいくつか試して結果を比べた。  銀河面の上下でも分布を調べて、ワープの効果も考慮した。その結果、 銀河系の恒星円盤には R = 13.9±0.5 kpc に縁が存在することを見出した。 恒星円盤の縁をマップできるので、いくつかの銀河系モデルをテストすることが 可能となった。

Majewski et al. (2011)
近-, 中間赤外測光でダストのベイルを巻き上げる I.
  レーリージーンズ色超過法
 2MASS と IRAC 波長域は大部分の星ではレーリージーンズ波長帯にあたるので固有カラーは ほぼ一定である。したがって、NIR-MIR カラーの変化は赤化を表す。
そこで Rayleigh-Jeans Color Excess = RJCE = [H - 4.5] を赤化指数として調べた。   その結果、銀河系の面における減光が IRAS/ISSA, COBE/DIRBE を用いて 100 μm 放射から導いた過去の結果と異なることが判った。われわれの結果は 13CO の マップと類似している。

Negueruela, Gonzalez-Fernandez, Marco, Clark (2011)
RSGC3 を囲む巨大アソシエイション
 スキュータム腕の根元の方向の4つの赤色超巨星星団の一つ RSGC3 の空間的 広がりは未確認である。RSGC3 の周辺で 2MASS で明るい星を探った。 Calar Alto 3.5 m 望遠鏡 TWIN 分光器で、候補星の 8000 - 9000 A 分光を 行った。  RSGC3 の 5 メンバー星の視線速度はStephenson2 と同じであった。星団の外 < 18' で 8 RSGs を見出した。それらは二つの集団に分かれる。南集団は 独立な RSGC に見える。北集団は小さい星団で類似の赤化と 年齢が示唆される。測光データの解析から RSGC3 を 30 以上の RSGs が取り巻 いていることが分かった。RSGC3 を取り巻く星の総質量は 105 Mo を超える。

Gonzalez, Rejkuba, Zoccali, Valenti, Minniti (2011)
 VVV と 2MASS から導いた銀河系バルジの赤化と金属量マップ I. 方法と短軸マップ
 銀河系バルジの性質は複雑で数か所から外挿で導くわけにはいかない。  赤化マップを作る方法を示し、バルジ構造とメタル量勾配を測る。データには 最近始まった Vista Variables in the Via Lactea (VVV) を用いる。  b = [-8, -0.4], l = [0.2, 1.7] の 1835 サブフィールド内のレッドクランプ星の 平均 J - Ks カラーを求め、バーデの窓での値と比べる。バーデの窓に対しては、 E(B-V) = 0.55 を採用した。そこから微分赤化の影響がないほど小さい空間スケールで 赤化マップを作成する。赤化補正した等級を用いて 0.4° x 0.4° の大きさでバルジ光度関数を作る。それらから距離指標を求め、バルジ構造を探る。 最後に、各サブフィールドごとに導いた距離と減光から測光金属量を、赤色巨星枝カラー の内挿値を使って、求める。測光金属量分布は分光から求めた分布と比較する。
 赤化の決定は作った図から見て取れるように小さなスケールの変動に鋭敏である。 エラーの範囲で我々の結果は他の方法で決めた文献値と合致した。我々のマップは それらより高分解能で範囲も広い。光度関数は最近 2MASS, OGLEIII で発見された 二重レッドクランプを示し、従って X 字型のバルジ形態を追尾する。最後に、 測光金属量は分光値と良く合った。  VVV サーベイはここで示した方法でバルジの性質を調べるのに優秀な道具である。 多の方法との一致はこの方法をもっと広げることの安全性を保証する。

Fritz et al. (2011)
 水素輝線から導いた銀河中心方向の減光
 ISO-SWS と SINFONI によるミニスパイラルの水素輝線観測結果を用いて、 銀河中心方向 1 - 19 μm の減光曲線を導いた。減光フリーのフラックス 基準には VLA で観測した 2 cm 連続光を用いた。
 内側 14″ × 20″ 領域で A2.166μm = 2.62 ±0.11で、λ < 2.8 μm でのべき乗指数 α = -2.11 ±0.06 であった。この値は最近の近赤外減光勾配の結果と 一致する。
 しかし、より長波長になると減光はより灰色になる。炭素質 およびシリケイトのグレイからなる星間ダストモデルでこの 減光曲線をフィットすることは不可能である。氷を含む他の成分が 必要である。
距離に依存する減光を我々の距離に依存しない減光と結びつけて 銀河中心距離 Ro = 7.94 ± 0.65 kpc を得た。 Sgr A* (r<0.5″)に対しては AH = 4.21 ±0.10, AKs = 2.42 ±0.10, AL′ = 1.09 ±0.13 である。

Ita, Matsunaga (2011)
星周減光を理解するための LMC ミラ
OGLE-III ミラ型星にNIRからMIRの周期等級関係を導いた。関係には折れ曲がり が見られる。短周期側からの延長と観測等級の差を星周減光によると解釈して 減光量と赤外カラーとの間の関係式を導いた。減光関係が変化することは ダストの性質が進化して行くことを示唆する。

Guver, Ozel, Cabrera-Lavers, Weoblewski (2010)
中性子星 4U 1806-52 の距離、質量、半径
 2MASS CMD からレッドクランプ星帯を抜き出し、各 K 区分帯毎に J-K カラー分布のピークを求めて、帯までの距離 D と減光 AK を決める。  X 線観測スペクトルから NH を求め、そこから AK を決定する。先の AK-D 関係と組み合わせて D 決定。

Schodel, Najarro, Muzic, Eckart (2010)

ベイルを透かして見る:銀河中心星団の近赤外測光と減光
 銀河中心 1 pc の近赤外減光則のべき乗指数を正しく求めるため、正確な 測光データを得た。アダプティブオプティックス+カメラの組み合わせ、 VLT の NAOS/CONICA、 を用いて観測した。測光には anisoplanatic 効果を 考慮して、系統エラーを 2 % に抑えた。レッドクランプ星を用い、H, Ks, L′ バンドの減光とべき乗指数を測定した。さらに、 H-Ks - Ks、 L′ カラーに基づいて減光マップを作成した。
 7700 星の Ks 等級を求めた。さらに、 H and/or L′ 測光も行った。 最近の公開観測データから Ro = 8.03±0.15 kpc を求めた。エラーは 2 % である。この Ro と RC 法により、銀河系中心 1 pc 領域の平均減光を AH = 4.48±0.13, AKs = 2.54±0.12, AL′ = 1.27±0.18 と決めた。べき乗指数は  αH-Ks = 2.218±0.24, αKs-L′ = 1.34±0.29, であった。この減光則と星の H-Ks カラーを用いて、 Ks 減光マップを作成した。エラーは 10 % 以下である。このマップの減光は 星のカラーエクセスから導かれたが、arcsec スケールで変動する。 平均は AKs = 2.74±0.30 である。Sgr A* の 0.5″ 半径 内での平均減光は、 AH,SgrA* = 4.35±0.12, AKs,SgrA* = 2.46±0.03, AL′,SgrA* = 1.23±0.08 である。

Madore, Mager, Freedman (2009)
赤色巨星枝先端(TRGB) を研ぐ
 TRGB 光度を測るため、合成等級 T = I - β[(V-I)o - 1.50] を導入した。 それを NGC 4258 (maser galaxy)で試した。  赤化ベクトルの方向が TRGB の勾配とほぼい位置するため、この方法は偶然に も赤化の影響を軽減する。

Zasowski et al. (2011)
近-, 中間赤外測光でダストのベイルを巻き上げる II.
  銀河系減光則の大域研究 
 2MASS+GLIMPSE から 1.2 - 8 μm 減光則を l 150° 巾で決めた。G, K 型 巨星 レッドクランプの色超過から 5 バンドの相対減光を求めた。銀河中心からの銀経距離 に応じて両側で対称的に減光則の形に強い単調な変化が見られた。この強い銀経による変化は、 浅い減光曲線を示すとされる濃い分子雲を消去した後にも残った。
 銀河中心から離れるにつれて急になっていく減光曲線は、 Rv が次第に減少していくことを 意味する。8 μm における減光曲線の折れ曲がりは銀経と共に強くなっていく。これが Rv 変化と同調することをモデルから明らかにした。いくつかの視線方向に対しては Aλ/ AKs を RGC の関数として表し、それが RGC で変化することを 見出した。減光曲線の l 依存性は減光曲線の RGC 依存性の反映であろう。

西山その他 (2009)

銀河系中心方向の星間減光則 III. V, J, H, Ks, [3.6], [4.5], [5.8] and [8.0]
 銀河中心方向の 1.2 - 8 μm 星間減光則を, IRSF/SIRIUS サーベイと, 2MASS, Spitzer/IRAC/GLIMPSE II カタログを用いて定めた。 バルジレッドクランプ星の Ks 等級と赤色巨星枝の (Ks - λ) カラーを赤化ベクトルのトレーサーに用い て、AKs/E(Ks-λ) を得た。

Hofner (2008)

ミクロン大ダストが駆動するM-型 AGB 星からの星風
 非灰色効果がシリケイトグレインをFe フリーにするという結論を受け入れ、 ミクロンサイズの Fe-フリーシリケイトが星風を駆動するかどうかを調べた。 ダストの単純な光学評価と詳細な動力学計算に基づいて、Fe-フリーシリケイト に掛かる輻射圧が十分大きいことを確かめた。原因は散乱である。  質量放出率、星風速度は観測値と良い一致を示す。粒子凝結と星風加速との間 に、自己調整フィードバックが働き、グレイン成長は直径 1 μm で自然に止ま る。星風駆動に最も効果的なグレイン径は 1 μm 付近のかなり狭い幅である。 これは AGB 星フラックスピークの位置で決まる値で、星間ダストのそれと近い。

Marshall, Fux, Robin, Reyle (2008)

銀河系バーの大規模ダスト帯
 銀河バー内部のダスト帯は容易に観測されている。しかし、銀河系バーの ダスト帯に関する情報を得ることは難しい。銀河系中央部のダストとガスの 分布を比較して、バーの先行縁側に予想されるバー中央からずれたダスト帯 の性質を得たい。このため、観測 CO l-b-V 図から、力学モデルに従って、 ダスト帯からの分子放射を抜き出す。もう一方では、近赤外観測から作成した 3次元減光マップがダスト自身の追跡子として利用され、その正面図として ダスト帯が現れた。二つの独立なダスト帯検出結果を l-b 面上で比較した。
 これら完全に独立な二つの方法を用いて、天の川銀河のバーの統一的な像を 描いた。ガスとダストの双方の像で、ダスト帯は銀河面から外れている。銀経 正の領域では銀緯が負、銀経負の領域では銀緯が正となる。しかし、ダスト の方がガスよりも銀河面に近い分布を示す。このズレを説明する二つの仮説が 考えられる。一つはバー衝撃波によるダスト破壊と下流側でのダスト再形成で ある。もう一つはダストとガスは共に傾いた同じ面上にあるが、分子ガスは 自身の強い磁場によりバー衝撃波のせん断応力に抵抗して、銀河系磁場から 離れるというものである。希薄ガスとダストは銀河磁場と結合したままで、 下流へ運ばれる。この仮説は最近棒銀河 NGC1097 の観測を説明するために 提案された。

西山その他 (2008)

銀河系中心方向の星間減光則 II. V, J, H, Ks バンド
銀河系バルジの OGLE データに IRSF/SIRIUS 観測を足して、AV: AJ: AH:AKs = 1:0.188:0.108:0.062 を得た。これは長波長 側で急速に落ちる減光を表している。

Lucas + 30 2008
UKIDSS 銀河面サーベイ
 UKIDSS Galactic Plane Survey (GPS) は UKIDSS コンソーシアムが行っている 5つの公開サーベイの一つである。これは b = [-5, 5] の 1868 deg2 を J, H, K フィルターで、牡牛座ー御者座ーペルセウス座分子雲複合体の 200 deg2 を J, H, K と 2.12 μm H2O (1-0) 線 で撮った。その総計は 2 109 天体となる。ここではデータセットの 性質とユーザーのためにその応用を述べる。 また、DR2 を用いた科学成果も 簡単に述べる。
(1)GPS-GLIMPSE クロス対象から星形成域 G28.983-0.603 の YSO 同定。
(2)M17 の広域像に減光マップを提供。星混同が光度関数に及ぼす効果。
(3)ρ Oph 暗黒雲の H2 放射。ジェットの根元に原始星。
(4)中心バルジ核の X-線源。近傍の主系列星軟X源とバルジ巨星硬X源。
(5)排除帯における銀河。l > 90 で星と明確に区別できる。
(6)(i-J, J-H) 二色図で A-F 矮星、G-矮星、K-矮星区別

Draine,Li 2007

星間ダストの赤外放射IV. post-Spitzer モデル
アモロファス・シリケートとPAH粒子を含むグラファイト性の微粒子 の混合にに対し、赤外放射を計算した。モデルは減光曲線を再現するよ う調整した。単一光子による加熱の効果も入っている。Spitzer による最新の観測スペクトルと合うように新しくしたPAHの吸収係数 を提示した。
 PAHのサイズ分布を調整して、銀河系や他の銀河で観測される放射 バンド間の強度比と一致できた。強い7.7μ帯はC原子が千個以下の PAH粒子から放射される。我々はまた、局所星間輻射強度に対する恒星 輻射強度の比=U がUIRにどう影響するかも計算した。FIR,サブ ミリ放射も観測と比較した。
銀河内での星間輻射場で加熱されるダストからの放射スペクトルを計算 した。モデルはPAHの質量比=η、恒星輻射分布の下限=Umin,と U>Uminの恒星輻射で加熱されるダストの割合=yがパラメターで ある。結果はグラフで示した。

西山その他 (2006)

銀河系中心方向の J, H, Ks 星間減光則
 銀河中心方向での減光対赤化比(the ratio of total to selective ectinction ) を J, H, K で求めた。減光と赤化の追跡には色等級図上でのレッドクランプの 位置を用いた。べき乗型減光則 Aλ ∝ λ -1.99±0.02 は良い近似式である。さらに、AKs/ EH-Ks が観測領域に渡って小さな変化を示すことが分かった。 これは、減光曲線の普遍性が近赤外に関しては当てはまらないことを意味する。

Woitke (2006)
 酸素過多 AGB 星のダストに働く輻射圧は弱すぎる
 AGB 星からの大規模星風はダスト駆動で脈動がそれを増幅していると考えら れている。しかし、振動数毎の輻射輸達式を組み入れた力学モデルで観測され る大きさの質量放出を説明できたのは炭素星のみである。このレターでは、酸 素過多 AGB 星に対しての同様なモデルの報告である。
 モデルでは Mg2SiO4, SiO2, Al2O3, TiO2, Fe の 非一様混合ダストダストの核形成、成長、蒸発を時間依存で扱う。 波長毎のモンテカルロ輻射輸達を組み込んだ酸素過多ダスト駆動力学モデルの 計算では、 R = 1.5 - 2 R でガス温度が 700 - 900 K と冷たく、核形成を助成する。ダスト温度は組成により大きく変わり、温度 差にして 1000 K にまで達する。動力学モデルでは二つのダスト層が形成され た。星表面近く R ≥ 1.5 R ではほぼ純粋なガラス Al2O3 粒子が、それより遠くではもっと吸収の強い Fe の少ない Mg-Fe シリケイトが出来る。
 固体 Fe と Fe の多いシリケイト だけが星からの近赤外光を効果的に吸収できるダストである。従って、それら は星風駆動機構の中心要因であり、かつガス温度の調節機構ともなっている。 少量の Fe しかグレイン内に組み込めない。というのはそうでないとダスト 温度が高くなる過ぎるからである。こうして、結果として、質量放出率がほぼ ゼロで、ダストシェルもないモデルが誕生した。
 質量放出率が上がるに連れ、出現するダストが Al2O3 &rarrow; 低 Fe の Mg-Fe シリケイトになるという観測事実は我々のモデルと 一致する。 Al2O3 は星の広がった外層大気中、 星風加速領域の下か、あるいは星風なしの星に存在する。 Mg-Fe シリケイト はもっと外側で形成され、その量は放出率に依存する。酸素過多 AGB 星の 星風駆動機構は依然として謎である。

Marshall, Robin, Reyle, Schultheis, Picaud (2006)

銀河系星間減光の 3D モデル
 2MASS と ブザンソンモデルを合わせて減光分布を計算した。  銀河モデルを使い星の固有カラーと距離の分布を与える。そこから近赤外 色超過、つまり減光を計算し、距離が評価される。  15 離れた、l = [100, -100], b = [-10, +10] の 64,000 視線方向にこの方法を用いた。我々の3次元マップを2次元の天空 に投影して、2D減光マップと CO 観測と較べた。
 異なるマップには共通の特徴が見えた。ダスト広域分布の特徴が明らか になった。星間物質のスケール高は 125 pc である。ダスト分布は非対称な ワープを示し、それは CO や HI と共通する。しかし、ワープの傾きや それが開始される銀河中心距離は HI 円盤より小さい。正銀経側では それは角度 θ = 89 で、銀河中心から 8.7 kpc で始まる。ワープの 勾配は 0.11 である。バルジ内にダストの存在が確認された。それは細長い 構造で、長さは 5.2 kpc, 太陽銀河中心線と 30 度の角度を成す。これは 銀河系のバーバルジに伴うダストレーンと解釈される。

Durant, Kerkwijk 2006

特異パルサーまでの距離をレッドクランプで決める
 2MASS レッドクランプ星を同定し、赤化と距離の関係を anomalous X-ray Pulsar (AXPs) の方向に対して決定した。この関係を X 線スペクトルから 決めた減光量と結合して、 AXP までの距離を決定した。その結果、全ての AXPs が渦状腕上にあることが判った。
 AXPs の 2 - 10 keV 光度が 1.3 1035 erg s-1 と 一定であることも分かった。さらに距離と光度から決まる黒体放射半径は パルスの割合と強い反相関関係にあり、黒体温度と弱い相関にあることが判った。

Ireland, Scholz 2006

M-ミラ型星動的大気内でのダスト形成
 1.2 Mo ミラ型星の色々な変光位相に整合するモデル大気中で非灰色の温度依存 オパシティを持つダストの形成を調べた。それらの測光、干渉計観測での特性を 予想した。初期形成シリケイト内の鉄成分と供給可能なグレイン核の量が決定パ ラメターとなる。  もっともらしい仮定の下で、ダストは連続平均大気半径の 2 - 3 倍の大きさで 形成される。この研究で波長1μm 以下では、ダストなし大気の基本振動モード モデルの半径よりミラ型星の半径が大きく見えることが説明された。

Indebetouw その他 (2005)

GLIMPSE データからの銀河系中心方向 1.25 to 8 μm 星間減光則
 l = 42° と l = 284° 方向で 1.25 μm ≤ λ ≤ 8.0 μm の範囲で Aλ/AK を定めた。l = 42° 方向は 静謐であり、l = 284° 方向は巨大 HIIR RCW 49 を含む活発な領域である。
 カラー・カラー図から (Aλ - AK)/ (AJ - AK) を測った。これから Aλ/AK を出すには AJ/AK が必要である。そのため、巨星の見かけ JHKs 等級 を二つの視線方向で測り、赤化量を等級(距離)の関数として定めた。こうして、 AJ/kpc, AK/kpc を求め、そこから AJ/AK を 導いた。
 得られた Aλ/AK は 3 - 8 μm で平坦であった。 これは Lutz et al 1996 の結果と大体一致する。

Fitzpatrick, Massa (2005)

星間減光曲線の形 IV. 標準星抜きの減光決定
 通常は赤化のない、または赤化の小さい標準星を基準に減光を測るが、この 論文では、恒星大気モデルを星の固有 SED を与えるものとして扱う。この標準 星抜きの減光測定法は減光の測定精度を大きく上げ、かつエラーの評価を確実 にする。その上、この方法は赤化を受けている星自体の固有の性質を明らかに する。ただし、モデルの物理的制約の結果、この方法が適用可能なのは主系列上 か少しだけ進化した B-型星である。しかし、この方法は、原理的には、モデル SEDがあるどんなクラスの星にも適用可能である。
 この標準星抜きの減光で次のことを明らかにする。
(1)局所空間で減光曲線の一様性を調べる。
(2)曲線の特徴の間の関係を調べる。
(3)低減光の視線から高精度の減光曲線を求める。
(4)星団内の減光を求める。
この方法を UV - IR データベースに適用して、星間グレインの性質に有益な制限 を掛ける。
(この方法だと、どんな固有スペクトル でも差を減光で説明できるのでは? )

Draine,Li (2005)

星間ダストのモデルと赤外放射
 非晶質シリケイト + カーボネイシャス(PAH を含む)で減光観測が説明可能。 赤外放射も計算できる。 SMC の減光は銀河系と大きく異なる。 NGC 7331 の 放射は銀河系ダストモデルで説明可能だが、17.1 μm に幅広の放射帯を 持つ点が異なる。

Suh (2004b)

AGB 星ダストが星間ダストの起源
 AGB 星から放出されたグレインは星間空間で混ざり、変成作用を受ける。 星間空間のグレインと AGB シェルのグレインの間には類似点と相違点がある。  銀河系内の質量循環は、様々な場所におけるダストが多くの類似点と 相違点を持つ事に現れている。

Zubko, Dwek, Arendt (2004)

減光、赤外放射、組成制限に合致する星間ダストモデル
 新しい星間ダストモデルを示す。モデルは FUV から NIR までの減光と拡散 赤外放射を同時にフィットする。以前のモデルと異なる点は元素組成の拘束を 満たすことである。減光フィット問題は典型的な "ill-posed" 逆変換問題で、 粒径分布が未知なので正規化法で解いた。ダストモデルは以下の成分から成る:
(1)PAH
(2)シリケイト
(3)非晶質炭素
(4)複合組成=シリケイト+非揮発性有機物+水氷+穴
各成分の光学的性質を光学定数を用いて計算した。特別な場合として Li, Draine (2001b) を再現した。  しかし、彼らのモデルではダスト内に含まれる Si, Mg, Fe の量がそれぞれ 50 ppm (100 万水素原子当たりの原子数)必要で、宇宙存在比 Si = 34, Mg = 35, Fe = 28 ppm を越えてしまう。  この論文の主な結論は観測される減光、拡散赤外放射、宇宙組成を同時に満 たす星間ダストモデルが一意には決まらないということである。これらの制限 に適合するいくつかの種類のダストモデルを見つけた。第1種は Li-Draine モデルと同じ構成で、PAH, グラファイト、シリケイトから成るが彼らのモデル とはサイズ分布が異なる。その結果、元素量制限をクリアできた。第2種はそ れに複合粒子を加えたものである。他の種類のモデルでは、グラファイトの代 わりに非晶質炭素を使用したり、PAH 以外では炭素を全く含まなかったりする。
 全てのモデルは、太陽、F-, G-型星元素組成の制限に抵触しないが、B-型星 に関しては困難である。炭素なしモデルのみが B-型星からの制限をクリアする。 他の観測的制限、例えば星間偏光、X-線散乱などからモデル間の優劣を決定でき る可能性がある。

Sumi 2004

銀河系中心方向の減光マップ:OGLE-IIバルジ
OGLE-II 銀河系バルジフィールド 48 個に対し、A(V), A(I) マップを作った。領域の総計は 11 平方度である。測定には RC 星の V, I 測光が用いられた。A(V)/E(V-I) = 1.9 - 2.1 という 異常値を得たが、それは Udalski の結果と一致している。平均値 R(VI)=1.964 (sdev=0.085)を 使用して E(V-I), A(V), A(I) のマップを作った。空間分解能は 26.7 - 106.8 秒角と高い。
レッドクランプ星 の 固有カラーは一定と仮定した。マップの範囲は 0.42 < E(V-I) < 3.5, 0.83 < A(V) < 6.9, 0.41 < A(I) < 3.4 に及ぶ。マップのゼロ点は バーデの窓中の RRab 型 RR Lyr 星 20 個の V-K カラーから較正された。l = +5&\deg;& から -5&\deg;& の 間に赤化補正後のレッドクランプ見かけ I 等級は 0.4 mag 変化した。これは星がバーに 乗っていることを示す。バルジの RRab, レッドクランプ星のカラーが異常と言う研究があった が、赤化補正した値は正常であった。

Dwek (2004)

銀河系中心方向の減光:金属針の証拠
 ISO による銀河系中心の観測から導かれた減光曲線は 3 - 8 μm で驚く べき平坦さを示した。それはシリケイトとグラファイトダストのモデルから 期待される深い極小とは大きく異なっていた。我々は、その原因として、 金属針が星間空間に存在するという説を提唱する。針が 3 - 8 μm での吸収 にのみ貢献すると仮定すると、それらは長波長カットを 8 μm に有しなけ ればならない。それは長さ・半径比 600 を意味し、 Cas A 内の針の見かけ比 3000 より小さい値である。  星間空間に一様に分布するとして、水素原子に対するその質量比は 5 10-6 と小さく、シリケイトダスト質量の 0.14 % である。 銀河系中心方向の観測からは、金属針がその組成量の低さにも拘わらず、3 - 8 μm 区間の主要吸光源であることを示す。しかし、それらの量は少な すぎて大きな減光は引き起こせないし、針の長さが短すぎ、サブミリでの 放射源にもなれない。

Jager, Dorschner, Mutschke, Th. Posch, Henning (2003)

星間シリケイト鉱物学の歩み VII. ゾル・ゲル法で製作したマグネシウムシリケイト の光学的性質と結晶化の振る舞い
 純粋なマグネシウムシリケイト (Mg/Si = 0.7 - 2.4) の系列を作り、波長 0.2 - 500 μm の範囲で光学定数を決めた。製作法はゾル・ゲル法であり、 マグネシウムとシリコンの水酸化物を溶液内で沈殿させる化学的手法である。 これらのマグネシウムシリケイトの著しい特徴は、シリケイト網目結合中に Si-OH 結合が非常に少ないことである。その結果、結晶化起動エネルギーが 低下し、こうして結晶化の温度障壁が下がりかつ結晶化時間も短くなる。 我々のゾル・ゲルシリケイトが天文学的に妥当であることは、モデル放射 スペクトルを AGB 星の ISO-SWS スペクトル、地上観測 10 μm スペクトル と比較して確認した。  AGB スペクトルの典型例として TY Dra 10, 20 μm バンドが細くその 間の谷が深い、を選んだ。TY Dra から得られたダスト放射率はモデルできれい に再現 され、星のダストグレインは実際純粋な非晶質マグネシウムシリケイトである ことを支持する。AGB 星と 超巨星集団の平均スペクトルも良く合う。ただし、 中間谷間部に強い放射を示す TR Cas のような星では他のダスト成分からの追加 が必要である。それは多分なんらかの酸化物だろう。そのような追加成分の 粗い光学的性質は、 R Cas スペクトルから純粋マグネシウムシリケイト成分を 差し引いたスペクトルから得られる。

Drimmel, Cabrera-Lavers, Loppez-Corredoira (2003)

3次元銀河系減光モデル
 銀河系ぜんたいの3次元減光モデルを Drimmel-Spergel 2001 ダスト 分布モデルに基づいて作った。このモデルは銀河円盤内の任意の点までの減光を 3次元デカルト座標系で与える。
 モデル減光を実際の観測値と比較した。それらには可視、赤外での銀河面 近くでの観測も含まれる。特に、近赤外色等級図から銀河面上 8 kpc までの減光を以下に決めるかを示す。

Lopez-Corredoira, Cabrera^Lavers, Garzon, Hammersley (2002)

2MASS による銀河面近くの古い恒星円盤:スケール、カットオフ 、フレア、ワープ
 2MASS データを用いて、銀河面近くの古い星種族を解析するのに二つの異なる 方法を調べた。第1の方法は色等級図上でレッドクランプ星を分離し、その 星計数を逆変換して、視線に沿った密度分布を求めるというものである。第2の 方法は、 820 領域で星計数を円盤モデルにフィットしてパラメタ―を定める というものである。この二つの独立な方法からの結果は互いに合致した。 定性的な結論は、円盤は動径方向にも垂直方向にも指数関数でよく表現される というものである。 R < 15 kpc では円盤の突然の終端はない。 強い円盤フレアが検出された。それは太陽円の内側で始まる。したがって スケール高は内側に向かって減少する。
 もう一つの著しい特徴は星種族にもワープが存在することである。その 振幅はガスのワープと一致する。
 R > 6 kpc で低高度、平均 |z| ∼ 300 pc, の星に関して、
(1)太陽円でのスケール高 hz(Ro) = 3.6 10-2 Ro
(2)表面密度スケール長 hR(Ro) = 0.42 Ro
(3)銀河面密度スケール長 H = 0.25 Ro

Suh, Kim (2002)

OH/IR 星の様々な位相における IR スペクトルをモデル化する
 厚いダスト層を持つ OH/IR 星 OH 127.8+0.0, OH26.5+0.6,のスペクトル エネルギー分布 SED を様々な変光位相で調べた。ISO データを用い、新しい 脈動パラメタ―を定めた。深いシリケイト吸収帯は脈動位相に応じて大きな 変動を示した。この変動は主に OH/IR 星ダスト層の性質の変化に起因する。 詳細な輻射モデルを観測と比較して中心星と周辺ダスト層のパラメタ―変動を 変光位相によりどう変化するかを追った。
 その結果、中心星が極小から極大へと光度上昇する際に、シェル内側半径が 大きくなり、その変化速度はガス膨張速度より大きいことが判った。ダスト 層の光学的深さは減少する。光度が極小から極大へ向かう際には、ダスト形成 は停止し、体積差(?)の中のダストの半分が蒸発しただろう。 極大から極小への期間には内側半径が縮小するので、ダスト形成が盛んに起き ているの違いない。ダスト外側半径では一定のダスト風が容易に維持されてい る。変光により引き起こされるダスト蒸発が OH/IR 星内側ダスト層における ダストの再結晶化機構である可能性がある。

Dutra, Santiago, Bica 2002A

内側バルジの低減光窓
 内側バルジの低減光領域で 2MASS の (Ks, J-Ks) 色等級図の上部赤色巨星枝へのフィットから減光量を 評価した。この手法をバーデの窓と Sgr I 窓に適用して、妥当性を調べた。 Schlegel et al 1998 の FIR マップは2MASS 測光からの結果と似ている。 しかし、W359.4-3.1 での FIR 減光強度は 2MASS からの減光に比べ 1.45 倍の強さであった。この現象の説明を論じた。

Li, Draine (2001B)

星間ダストからの赤外放射 II. 拡散星間空間
  拡散星間空間からの赤外放射の定量モデルを示す。モデルは非晶質 シリケイトグレインと炭素質グレインの混合物である。それぞれは 数十原子から > 1μm までの広いサイズ分布を有する。炭素質 グレインは微小サイズでは PAH と似た性質を持ち、 a > 50 A では グラファイト的な性質を持つと仮定する。最近の実験的研究の結果と 天文観測に基づき、我々は中性および電離 PAH の天文学的吸収断面積 を提案する。また、シリケイトの遠赤外放射率を改訂する。微小ダストの 温度スパイクを光学的性質と熱容量に基づいて計算した。天文減光観測 から決まるサイズ分布を適用して、近赤外からサブミリに至る拡散星間 空間物質からの放射を 3.3, 6.2, 7.7, 8.6, 11.3 μm PAH 放射を 含めて再現出来た。モデルを高銀緯と銀河面放射と比較した。 モデルでは H の 60 × 10-6 が PAH に含まれる。 内、45 × 10-6 は 5 A (100 C 原子)成分で PAH 放射 を放つ。残り 15 × 10-6 は 50 A 成分で 60 μm フラックスを説明する。全赤外放射はCOBE/DIRBE 観測と良い一致を 示す。モデルのアルベドも銀河系拡散光の観測と適合する。恒星による 加熱が平均値の 0.3 - 104 の範囲で変化した場合の赤外放射 スペクトルも計算した。

Lopez-Corredoira, Hammersley, Garzon, Cabrera-Lavers, Castro-Rodriguez, Schultheis, Mahoney (2001)

銀河面内のバーとリングを DENIS で探す
 DENIS を用いて、長く薄いバー、リング、内側円盤の丸め込み(穴?)を 探した。まず、DENIS, 2MASS 星計数から面内バーとリングの特徴を調べた。 l = [-30, +30] の星計数は大きく非対称で、正銀経側がかなり多い。しかし、 |b| = 1.5 では天体数は対称になる。したがって、非対称の原因は円盤でも バルジでもない。
 円盤は中央に穴が開いている。この非対称成分は方向角 40°、長軸半径 3.9 kpc の面内バーがあるとすると説明可能である。しかし、星計数のピーク が l = -22 にもある。これは 3 kpc 腕の接線方向である。これはおそらく リングか擬リングであろう。面内の減光も非対称で負銀経側で大きい。 l < 8 では減光分布は b = 0 面に対し、 HI 円盤と同様に僅かに傾いて いる。我々は銀河系はかなり典型的なリング棒渦状銀河であると結論する。

Li, Draine (2001)

星間空間中の超微小シリケイトダスト
  拡散星間空間からの放射に 10 μm シリケイト放射帯が見られないことから、 非晶質シリケイトと結晶質シリケイト双方の量に制限が付く。観測された放射スペ クトル、紫外減光曲線、 10 μm 吸収帯プロファイルに基づいて、超微小 (a ≤ 15 A) 非晶質シリケイトと結晶質シリケイト双方の上限を決めた。 以前の研究に反して、星間 Si の 10 % は a ≤ 15 A シリケイトグレインに 含まれる。結晶シリケートの量はどんな大きさでも 5 % 以下である。

Suh 1999

AGB 星周エンベロープ中シリケイトダストの光学的性質
O-リッチ AGB 星の周りにあるシリケイトダストの光学的性質を調べた。 実験室で得られたダスト候補物質の光学データと星の観測データに注意を 払った。 IRAS PSC, LRS データを含む赤外線星のSED観測を輻射輸送モデル を較べた。OH/IR 星の λ > 13 μm でのオパシティは光学的に 薄いシェルを持つ星のダストオパシティと異なることが判った。  これは、ダストの光学定数に温度依存性があるためかも知れない。オパシティ から、冷たいダスト物質と暖かいダスト物質との光学定数を導いた。 光学定数はクラマース・クロニッヒ関係を満たし、以前の研究よりフィットの よいオパシティを与える。光学定数からプランク平均光学有効係数を得た。
(λ=3-8μm の k がうんと上げてある。一種のダーティ シリケイトモデル。(n,k)の表がない。暖かいオパシティは18μm に弱い 振動子を付けている。必然性が?FIR はλ-2? )

Schultheis + 9, 1999

内側バルジ方向の星間減光
 DENIS と RGB, AGB 等時線モデルを使い、バルジの減光マップを作った。 この方法の精度はバルジの光学的深さにより限定される。減光強度が既知の 領域での比較は非常に良い一致を示した。バルジ 20 平方度の減光マップを 示す。

Cambresy (1999)

巨大分子雲の減光マップ
 USNO 精密測定器による可視光データにウェーブレット分解とアダプティブ グリッドを応用した星計数から導いた分子雲の減光マップを示す。減光分布から 総質量と最高減光度を導いた。等減光線内部の質量と減光量との関係は雲同士で 類似していることが分かった。これから、減光最大値を 5.7 - 25.5 mag の間で 外挿できた。質量の約半分は可視減光が 1 以下の層に存在していることが分か った。大きな領域 (∼ 250 deg2) に星計数を応用するのは 分子雲質量を求めるには、強力で、かなり直接的な方法である。この手法を 全天に適用して新しい分子雲を発見でき、実際この論文では Lupus 複合体で 第4の 104 Mo 雲の発見に成功した。

Udalski et al. 1999a
 LMC レッドクランプの局所平均等級の差を星間減光によるものと考え、LMC 84 方向の 減光量を求めた。

Udalski et al. 1998c

OGLE:LMC の短距離指標 
 LMC 内の食連星 HV 2274 の UBVI カラーの観測値の(U-B)-(B-V)二色図上の 位置から E(B-V) = 0.149 を得た。これは Guinan et al が 使用した値 0.083 のほぼ2倍である。  赤化が大きく修正されると見かけ等級が明るくなり、距離を小さくする効果がある。 その結果 LMC に対し、 m - M = 18.22 ±0.13 となった。これは LMC の短距離説を支持する結果である。これは最近の RR Lyr, レッドクランプから 求めた LMC 距離の結果と一致する。

Schlegel et al. 1998

赤化と背景放射評価のためのダスト赤外放射マップ
 DIRBE 100 μm と Leiden/Dwingeloo 21 cm との相関と DIRBE 25 μ から 黄道光を除去した。除去後のDIRBE 100, 240 μmデータからダスト温度を求め、 100 μm マップをダストコラム密度に直した。ダスト温度は 17 - 21 K である。 DIRBE の精度と IRAS の分解能を兼ね備えたマップが完成した。
 全銀緯に渡り、色々の大きさの糸状の模様が見えた。高銀緯ではダストマップは 21 cm マップと相関が良い。しかし、分子雲方向、HI 放射がサチっている箇所では ズレがはっきり見える。これに反し、高速度雲の方向ではダスト放射が弱い。
宇宙背景放射は 140 μm で 32±13 nW m-2 sr-1, 240 μm で 17±4 nW m-2 と驚くほど高い。 これはハッブルディープフィールドに検出される光学銀河からの総計の2倍である。

Lopez, Danchi, Bester, Hale, Lipman, Monnier, Tuthill, Townes 1997
11 ミクロンでの長基線干渉計観測による ο Ceti のダストシェル 非球対称構造とその時間変化
 1988 - 1995 年に UC Berkley 赤外干渉計 (ISI) により ο Ceti の観測が 行われた。観測されたビジビリティは観測時により大きく変わり、位相による 光度変化でダストが暖められたり冷やされたりするという単純な図式に当ては まらない。その代わり、 ο Ceti の光球から数恒星半径内のダスト 密度が激しく時間変化していた。二つのダストシェル、一つは光球から3恒星 半径以内、もう一つは星から約10恒星半径、というモデルが観測をうまく説 明する。
 4種類の軸対称な輻射輸達モデルをも、データと比べた。それらは、 (1)球対称なシェルの内側に楕円体空洞、(2)円盤、(3)一つか二つの 固まりをつけた球対称シェル、(4)相互に等間隔な薄い不完全シェルの群れ、 である。ビジビリティの時間変化を説明するため、全てのモデルには星光球に近い 距離でのダスト密度の時間変化が必要である。軸対称モデルは、球対称モデルの 距離に対応するところに、塊を持つ。観測された広帯スペクトルとの良い一致が これらのモデルで得られた。

Calbet, Mahoney, Hammersley, Garzon, Lopez-Corredoira 1996
正銀経でのバー前面のダストレーン
 銀河面に沿っての DIRBE 輝度分布を銀経正と負で比較した。異なる波長で の比較の検討から、K で 1 - 2 mag の厚いダストレーンが銀経負の領域に分布 することが判った。  最も考えやすい説明は、バーの前面に厚いダストレーンが存在するというモデル である。これは将来、DENIS や 2MASS により、実際に 2° の巾の減光層として 確認されるべきである。

Waters + 35 (1996)
正銀経でのバー前面のダストレーン
 銀河面に沿っての DIRBE 輝度分布を銀経正と負で比較した。異なる波長で の比較の検討から、K で 1 - 2 mag の厚いダストレーンが銀経負の領域に分布 することが判った。  最も考えやすい説明は、バーの前面に厚いダストレーンが存在するというモデル である。これは将来、DENIS や 2MASS により、実際に 2° の巾の減光層として 確認されるべきである。

Zubko, Mennella, Colangeli, Bussoletti 1996

宇宙炭素グレイン類似体の光学的性質
 3種の非晶質炭素=星間および星周ダストのモデル、の光学定数に関する最 初の結果を示す。それらは実験室データをクラマース・クロニッヒ解析して導 かれた。伝統的な CDE モデルは採用せず、訂正 CDE モデルを提案する。  訂正 CDE モデルではパラメター g によりパーコレイション効果を含める。 gは 集団ー集団集合と粒子ー集団集合の適切な評価から定める。

Little-Marenin, Stencel, Staley (1996)
AU Cygni 赤外スペクトルの変動するダスト特性 
 IRAS 1983 年中の LRS スキャンデータに基づいて、Oリッチミラ型星 AU Cygni の星周シェルからの赤外シリケイト放射に変化が存在する証拠を示す。 AU Cyg の光学的に薄いシェルからの放射帯コントラストは可視極大で強く、 極小期で弱い。  星周シェルは微小グレインが多数を占めるモデルを提案する。それらは、 極大期により大きいグレインの蒸発により生まれ、連続光に対するバンド放射 の相対強度を増加させる。バンド形状の変化は小さい。

Lutz et al. 1996

酸素リッチなダストシェルの鉱物学
 ISO/SWS によるダストシェルスペクトルの 20 - 45 μm 付近に新しい 放射帯が見つかった。これらの巾や強度は様々であるが、全て 9.7, 18 μm バンドより細い。放射帯ピークは結晶シリケイト、パイロキシンやオリビンと 定性的に一致する。  放射帯強度は低温ダストシェル T < 300 K で強い傾向が見られる。 これはダストが冷えるにつれ光学的性質が変化したのかも知れないし、質量 放出率が増加すると結晶性ダストの比率が増えるのかも知れない。

Dorschner, Begemann, Henning, Jaeger, Mutschke 1995

Mg-Fe-シリケイトガラスの光学的性質
 MgxFe1-xSiO3 x = 0.4, 0.5, 0.6, 0.7, 0.8, 0.95, 1.0 と Mg2yFe2-2ySiO4 y = 0.4, 0.5 のシリケイトガラスを作った。反射およびエリプソメトリック測定 と透過率測定から 0.19 - 500 μm の光学定数を導いた。 シリケイトダストアナログに関して鉄分の影響が定量的に評価できた。  オリビンガラスデータを晩期型星の IRAS LRS スペクトルと比較した。 オリビン組成の非晶質シリケイトが晩期型星スペクトルと合うことが示された。 しかし、二つの何度の間の谷間ではシリケイトガラスは透明過ぎ、観測 スペクトルに必要な放射を生み出せない。ダストシェル内側端における シリケイトダスト温度は文献で想定されている温度よりかなり高い可能性が ある。したがって、昔からの疑問=観測から導かれる低い温度とそれより かなり高い凝結温度のズレ、に対し、この新しいデータは差を埋める方向で ある。

Joblin et al. 1995

PAH分子ガスの赤外分光
PAH分子ナフタレン, ピレン, コロネン, オバレン, を 炉内で高温ガス化し、その放射スペクトルを計測した。

Jaeger, Mutschke, Begemann, Dorschner, Henning 1994

星間シリケイト鉱物学への歩み I. 平均宇宙組成シリケイトガラスの実験結果
 宇宙の主要4元素の平均組成を反映するパイロキシンガラスを用意し、その 特性を調べた。それらは YSO からのシリケイトスペクトルを説明する有力な 候補と期待されている。パイロキシンガラスの光学定数を 250 nm - 500 μm で決めた。レイリー限界内の粒径を持つ粒子は 9.5, 18.8 μm に幅広の吸収 帯を示した。比較のため、同一組成の結晶サンプルも測った。その細いバンド は 9.4, 10.5, 11.1, 13.7, 15.6, 18.1, 19.5, 26.5, 29.5, 37.5, 49 μm に存在した。それらはハイパーシーンに対応する組成に期待される波長と一致 する。この他に、Fe2+ に起因する弱い結晶場バンドが 1, 2 μm にあった。これが観測で検出出来たら、パイロキシン型グラスとオリビン型から 区別する強力な証拠になる。遠赤外でのガラスの吸収は λ-2 に比例した。
 パイロキシンガラスの 10, 19 μm バンドの中心はトラペジウム、大質量 YSO での観測と一致した。パイロキシンガラスの光学定数でレイリー粒子の 吸収を計算したものは YSO 6個の平均 10 μm プロファイルと一致したが、 トラペジウムとは合わなかった。オリオンで放射帯の巾が広い原因を論じた。 また、以前の結論と異なり、パイロキシンガラスは低質量 YSO (Herbig Ae/Be, T Taus) の放射帯プロファイルと合致しない。これは YSO シリケイトの組成が 質量により変化することを示唆する。 最後に、今回の結果を以前の組成が異な るパイロキシンガラスの結果と較べた。試料を用意する方法が光学定数の決定 に影響することを示す。

Arendt + 14 (1994)
銀河系赤化と星種族の COBE/DIRBE 観測
 COBE/DIRBE を用い、銀河系星種族のカラーと銀河系減光を調べた。 DIRBE で決めた NIR 減光は Rieke, Lebofsky 1985 の減光則と一致した。第1、第4象限のダストと星の分布は、最高 A(1.25μm) = 4 mag に及ぶ減光膜を隔てて臨む背景星種族と看做せる。  赤化補正した銀河円盤のカラーは晩期 K-型 から M-型の巨星のカラーと 似ている。銀河系バルジは 2.2 - 3.5 μm でそれより僅かに青い。これは Terdrup et al 1991 の結果と一致する。星形成域は 900 K の連続光の存在 を示すが、これは熱いダストか PAH が 3.5 μm という短波長にまで 影響することを示す。

Hammersley, Garzon, Mahoney, Calbert (1994)
内側渦状腕とバーの赤外像
 2 ミクロン銀河面サーベイを用いて、銀河面 l = [15, 35] 2 ミクロン表面 輝度マップ上のピークの性質を調べた。低減光の穴ではピークを説明するのに 不十分であった。 l = 33 のピークは l = 21, 27 のピークと異なる光度関数 を有する。後者はほぼ確実に非常に明るい大質量の若い星から成ると言える。 それらがバーの近い方の先端に付随する星形成領域であるという説明が もっともらしい。
 バーを含む簡単なモデルを提案する。それは l = [-40, -10], [10, 40] の 2 .2 ミクロン表面輝度分布をよく説明できる。このモデルのバーの 方位角は 75°, で主軸半径は 3.7 - 4 kpc, 3 kpc リングには殆ど 明るい星は含まれない、盾座腕の星種族の巾は 300 pc である。

Lada,Lada, Clemens,Bally 1994

暗黒雲 IC 5146 におけるダスト減光
 他波長測光データを用いてダスト分布を導く。この方法は近赤外色超過を直接測り、星 計数と結びつけて平均減光を導く。これは従来の可視域星計数に基づく手法より 高空間分解でより強い減光の領域に適用可能である。
 IC 5146 星団付近の暗黒雲での結果を報告する。この雲に JHK 画像、13CO, C18O, CS 電波観測を行った。 赤外で 4000 以上の星が検出された。10個程度 の星を除いて、ほとんどの星はフィールド星である。 J バンド星計数から星表面数密度と CO, CS 分子線強度の間に強い反相関が見つかった。1300 星の H-K カラーを用いて、 減光を直接測り、 1.5' の分解能で減光マップを作成した。  測定された減光強度とその分散の間に相関が見つかった。それをモデル化した結果、より小さな 雲の構造が測定の分散を支配していることが判った。そのような観測を用いて 分解能より小さな構造の性質が分かる。 1.5' より小さな構造は観測と合わない。
 求めた Av = 0 - 32 の各地点での Av と 13CO, C18O, CS 電波強度はほぼ比例することが判った。しかし、その関係の分散は 観測エラーより大きい。分子の組成、励起が雲の内部で変化しているのかも知れない。 Av < 10 mag では 13CO/C18O 比が地球よりかなり大きい。 また、そこでは組成の分散が非常に大きく、これはそのくらいまでは組成が安定していない ことを示す。 Av がより大きいところでは安定して地上値に一致する。

Little-Marenin, Staley, Stencel (1993)
ミラ型変光星のダスト放射帯は変化するか?: LRS サーベイ 
 ミラ型星の LRS 個々スキャンを調べた。  10 μm シリケイト帯コントラストは可視、12μm 変光 位相と共に変化する。

Le Bertre (1993)
酸素リッチ晩期型星の 1 - 20 μm 変光曲線 
 37 星の 1- 20 μm 測光モニターの結果を報告する。サンプルは、可視 ミラ 13 星、M-型超巨星 3 星、タイプ II OH/IR 星 20 星、未同定天体 1 星である。各天体は最低 13回、最高 42 回測光された。観測期間は最低 1250 日、最高 2150 日である。1 - 5 μm データにフーリエ解析を行い、 可視ミラ全て 13 星と OH/IR 9 星の計 22 星の変光周期 300 - 700 日が 得られた。この 22 星のサブサンプルでは OH/IR 星の周期が全て 470 日以上 であるという点を除くと、 可視ミラと OH/IR 星の間の変光の特性は同じである。  2 可視ミラ + 10 OH/IR = 12 星の周期は 800 - 1600 日で、これらの超 長周期星では変光の不規則性と変光曲線の繰り返しの悪さが見られた。 3 天体では周期が決まらなかった: VY CMa と IRSV 1540-5413 の変光は 小振幅で不規則、 OH/IR 344.93+0.01 では P > 2000 日が現在のデータ の外挿から推測されるのみである。振幅は波長と共に減少する。しかし、 M バンド振幅は L' バンドより大きい。シリケイト放射帯ピーク(9.7 μm) の振幅はその両側 8.4, 12.9 μm での振幅より大きい。OH/IR 星の 周期-光度関係を調べると少なくともその幾つかは、周期 500 日でさえ、 可視ミラの周期光度関係に従わないことが判った。
個々のデータはマイクロフィッシュで得られる。

Little-Marenin (1992)
ミラ型変光星のダスト放射帯は変光位相に伴って変化するか? 
 ミラ型星の変光サイクルの異なる位相で得られた個々の IRAS LRS スペク トルを見ると、幾つかの星では 10 μm 放射帯の強度が位相と共に変化 している。  放射帯強度は極大付近で強く、極小付近で弱い。 IRAS データの位相分布 は疎ら過ぎて位相遅れまでは出ない。

Arenou, Grenon, Gomez (1992)
銀河系星間減光の3次元モデル 
 現存のスペクトル及び測光データを全て用いて、全天の星間減光をマップした。 色超過分布を (l, b, r) の関数としてモデル化した。  このモデルは色超過が得られない高銀緯に有用である。

Ossenkopf, Henning, Mathis 1992
天体シリケイトへの制約
 星周シリケイトの吸収度の観測から (n, k) = 複素屈折率を導いた。 モデルでは、星周ダストの半径分布を n(a) ∝ a-3.5 と仮定 した。また、楕円率も連続分布するとした。Cabs(λ)/V = ダスト粒子の体積当たり吸収、はシリケイト鉱物の静誘電率の実験室データから 制限を付けた。  星周ダストは星間空間で風化される。その結果、バンド強度が強まり、18 μm と 10 μm の吸収比を星周ダストより大きくする。  シリケイト内に様々な、酸化物、硫化物、炭化物、非結晶炭素、金属イオン などが混ざる効果は有効媒質理論で計算した。その内いくつかは, 2 - 8 μm で吸収係数 k を上げ得る。これは、実験室シリケイト吸収データを星間空間や 星周空間での観測値と合わせるのに必要である。他の効果は 18μm/10μm 強度比に関連する。  星周シリケイトと星間シリケイトの夫々に対して、 (n. k) の表を与えた。  2 - 8 μm 帯で要求される吸収率に関しては鉄と磁鉄鉱 Fe3O4 が与える。

Wainscoat, Cohen, Volk, Walker, Schwartz 1992
8 - 25 ミクロン赤外の空のモデル
 赤外点源の分布モデルを作った。モデルは円盤、バルジ、渦状腕、ハロー (局所腕を含む)、分子リングを含む。銀河系内天体 87 種類の夫々に 特有のスケール高、密度、絶対等級を与えた。  我々は天体の V および K 累積および微分星計数を再現できた。我々は星の 星計数を IRAS LRS の波長範囲 7.7 - 22.7 μm で任意の方向で得ることが 出来る。

Kent, Dame, Fazio 1991
スペースラボ赤外望遠鏡 IRT による銀河系構造II. 銀河系の光放射モデル
 銀河系の3次元放射密度分布を北側銀河系 2.4 μm マップから決めた。 円盤の動軸方向の表面輝度分布はスケール長 3.0 kpc (Ro = 8 kpc 仮定)を 持つ。垂直方向分布は伝統的な sech2 型より exp(-|z|/h) の 方が良くフィットする。太陽近傍ではスケール高 h = 247 pc で、星計数から の値と合う。スケール高は一定ではなく、 R = 5 kpc では h = 165 pc である。
 バルジは潰れた回転楕円体で近似され、その軸比は b/a = 0.61 である。その 密度分布は指数関数型である。バルジの 2.2 μm/12 μm 強度比は他のダスト なし回転楕円体天体と一致する。銀河面に沿っての輝度の揺らぎは減光効果である ことが判った。この揺らぎはダスト分布により再現可能であり、ダスト/ガス比の 決定に使える。

Rouleau, Martin 1991
非晶質炭素の光学的性質に対する形状と集合体の影響
 非晶質炭素の光学定数を E = 4.1 10-3 - 3.5 103 eV の範囲で求めた。計算に用いたデータは FIR の減光と高エネルギー帯での 他の光学定数測定結果である。光学定数はクラマース・クロニッヒ関係を満たす。  グレイン形状と集合体効果が光学定数に及ぼす効果を調べ、それが大きいこ とが分かった。CDE 形状分布は定性的に粒子集団効果を表現する。水素化や 非晶質炭素の結合状態が光学定数にどう影響するかを調べた。

Ossenkopf 1991
宇宙ダストの有効媒質理論
 非一様なダスト粒子の光学的性質を記述するのに、有効媒質理論が適切な道 具となることを示す。コア・マントル型、様々な形の粒子の凝集体、非等方な 誘電率の物質から成る粒子を扱うための理論が発展させられる。さらに、磁気 効果も含める。 複合物質の時期吸収を調べた。フラクタルグレインの光学的性質が調べられた。 フラクタル凝集は赤外域での吸収を増加させ、吸収特性のシフトを招くことが 示された。  フラクタルグレインのサイズ分布の吸収スペクトルは真空の体積比 を持つ粒子の振る舞いに大きく影響される。
(色々な例の吸収係数が示されている が、混合率などの数値が抜けたままで、ふーんとしか言いようがない。 有効誘電関数が示されないで、 吸収係数の図示が並んでいるだけなのは不満。 )

Schutte, Tielens 1989

星周シリケイトの赤外特性とマスロス率
 簡単な準解析的な式でダストシェルからの赤外放射を特性付けた。輻射輸達の 数値解をダストシェルについて得た。モデルの自由パラメタ―は、ダストの吸 収特性と密度分布である。輻射圧で吹き出されるダストの密度分布に近似的 解析表現を与えた。フリーパラメタ―がスペクトルに与える影響を見るために、 大きなモデルグリッドを計算した。
 観測から、Tc = 近赤外カラー温度 と A10 = 10 μm の放射 または吸収強度の相関が知られている。この関係は本質的には近赤外光学的 深さと 10 μm 光学的深さの関係である。理論的 A10 - Tc 関係を計算し、観測と較べた。その結果、この関係は近赤外と 10 μm との 星周シリケイト吸収効率の比を決める鋭敏な方法であることが判った。
 これ等の結果と、以前に得られた結果とは、星周シリケイトグレインの近赤外 吸収効率は地上鉱物から予想されるよりもずっと大きいことが判った。我々は その原因は星周シリケイトに含まれる鉄イオン F2+ によるカラー センターと考える。近赤外と 10 μm との吸収効率の比を用いて、観測された A10 - Tc 関係をダストシェルのコラム密度として較正し、そう することで、マスロス率を容易に導けるようにした。
  R Cas, IRC 10011, OH 26.5+0.6 の3天体の赤外放射の詳細モデルを作った。 特に、 10 μm 放射または吸収の形に注意した。その結果、 10 μm 共鳴帯 の本来の形が天体毎に違い、 R Cas では太く、 OH 26.5+0.6 では狭く、IRC 10011 が中間になることが判った。この差の原因を考察した。マスロス率は、 3 10-7 Mo/yr (R Cas), 2 10-5 Mo/yr (IRC 10011), 2 10-4 Mo/yr (OH 26.5+0.6) である。
( パラメタ―が違うモデルを同じ コラム密度同士で較べている。しかし、コラム密度は観測量でないから、 観測の解釈に役立たないのが残念。)

Cardelli, Clayton, Mathis 1989

赤外、可視、紫外星間減光則の間の関係
 Fitzpatrick, Massa のパラメター化した UV 減光データ、それに 様々な可視、赤外の減光データを用い、0.125 μm - 3.5 μm に 渡り、平均 A(λ)/Av を求めた。減光則は一つのパラメター Rv [=Av/E(B-V)] にのみ依存する。減光の解析的な式が与えられた。 この式は Rv=3.1 の時薄い星間空間に対する Seaton 及び Savagr, Mathis の減光則に近い。しかし、個々の視線方向に対する減光則は Rv の あらゆる値に対するくらいに分散している。 λ < 0.16 μm では分散が特に大きい。
 ここで導いた Rv 依存の平均減光式は、コペルニクス衛星による4つの星の 観測+Fitzpatrick, Massa による IUE スペクトルの解析的なフィットに基づき、 定性的には IUE 観測波長の先 0.10 μm まで伸ばせる。さらに、カラー データが得られた 12 星に対する E(0.10 μm-0.13μm)/Av は、解析 フィットから得られる E(0.10 μm-0.13μm)/Av と一致した。
λ > 0.7 μm では Rv の値と独立に減光則が一定というこれ までの結果を確認した。V フィルターの系統的な変化のために減光則を Av で 規格化すると長波長側での減光則が Rv に依存性を持つかのように見える。 したがって、減光の規格化はもっと長い波長で行うことが望ましいのだが、 本論文では既存データの豊富さを考慮して V バンドで規格化する。
 [A(0.13 μm) - A(0.17 μm)] と E(B-V) との相関が悪いこと、 [A(0.22 μm) - A(0.25 μm)] と E(B-V) との相関がずっと良いことは、ここで示す解析的な結果からそれらの カラー特有な Rv 依存性に起因することが理解される。
平均減光則が広い波長帯に渡って存在することはグレインのサイズと組成を 決める物理過程がストカスティックでかつ非常に効率が良いことを意味する。 明らかにサイズ分布は同時に改変される。遠紫外の吸収にかかわる小さなダスト に変化が起こると、それはただちに全体のサイズ分布に系統的に波及するのである。
 星間空間の高密度領域で欠落してしていることが観測されている難揮発性物質、 AL, Mg, Fe, などはダストグレインに付着しても少量なのでサイズの増加には 結びつかない。良く観測されている暗黒雲、 ρ Oph, NU Ori では、H原子 一個あたりの全波長に渡る減光量は希薄領域より小さい。他の視線方向では 水素の柱密度の評価が難しいため、はっきりは分からないが、同様であるらしい。 これは、雲の内部ではグレインサイズがくっつきあうため大きくなるためと 考えられる。
 Rv は λ2175 のこぶ強度とよく相関しているように見える。λ < 0.16 μm での遠紫外の立ち上がりは議論しない。数学的表現が物理的という よりは多分形式的なものだからである。

Gehrz 1989

銀河系恒星ダストの源。
 銀河系星種族の分布とそれらに観測されたマスロス率を用いて、星間物質内に 放出される固体ダストの量を推定した。M-型星と LROH/IR 星はシリケイト ダストの大部分を生み出している。炭素と炭化ケイ素ダストの大部分は炭素星 から生じている。WR-星、新星、超新星は特異な組成のダストを放出する。  炭化水素グレイン の放出源に関しては観測的証拠が殆どない。恒星からのダストの注入と星形成 と超新星による消滅を比較して、銀河系ダストの生態学を研究すると、ダスト グレインは分子雲中での降着により恒星からの放出に比べ 1 - 5 倍の割合で 形成されていることが示唆される。

Cardelli, Clayton, Mathis 1988

可視・近赤外減光から紫外減光を導く。
 Fitzpatrick, Massa 1986, 1988 の UV 減光が得られた星のうち、UBVRIJHKL 測光データを調べた。A(λ)/Av で考えたとき、可視/近赤外減光と紫外 減光との間によい相関が存在することが分かった。特に、 R = Av/E(B-V) は Fitzpatrick,Massa の紫外減光曲線の線形紫外背景減光部と相関が強い。
 R から紫外減光強度を推定できることを意味する。R から紫外減光則を導く 解析表式を求めた。この式で、R = 3.2 の場合の曲線は Seaton 1979, Savage, Mathis 1979 の平均減光曲線と極めてよく一致する。この減光則は希薄星間空間に 対応する。
 これまで平均減光則を全ての方向に適用したり、バンプに「アイロンかけ」 したりしてきたが、3.1 < R < 3.5 では解析表式の方がより正確な 減光則を与える。

Fitzpatrick, Massa 1988

紫外減光曲線の解析 II. FUV 減光
 OB 星 45 個の IUE データを用い、λ < 1700 A での星間減光を 調べた。IUE 減光は(1)ローレンツ型 2175 A コブ、(2)FUV 反りかえった 減光、(3)背景の線形型減光の和で表される。線形成分のパラメタ―、 勾配と切片、は強く相関しており、その結果、わずか5個のパラメタ―で 紫外減光をフィットできることが分かった。それらは、コブの3つ、線形部 が一つ、最後の一つが反り返り成分強度である。
反り返り成分は同じ形をして いることが分かった。これは、この成分がサイズ分布などの効果で生まれた 形でなくあるダスト成分の物理性質を反映しているからと考えられる。 恐らく極端紫外部での共鳴吸収のテールであろう。

Dorschner, Friedemann, Gurtler, Henning 1988

ガラスブロンザイトの光学的性質と星間シリケイト帯
 ブロンザイト=隕石や惑星間塵に豊富に存在するパイロキシンからガラス基板 を作った。ミクロン以下のサイズの粒子を KBr に埋め込んで透過曲線を得て、 それに分散関係式を適用して 7 - 40 μm での複素屈折率を求めた。  吸収及び減光効率をミーモデルで計算した。観測との比較はブロンザイトガ ラスが、例えば T Tau 星や BN 天体のような、若い天体に付随する赤外源 の中間赤外スペクトルのモデル化に良い候補物質であることを示す。

LeBertre 1988

炭素星ミラ R Fornacis の可視・赤外観測:位相によるダストシェル変化
 1982 - 1987 年の間に取得した炭素星ミラ R For の可視・赤外測光データを 示す。異なる変光位相での SED を輻射モデルを用いて解釈した。極小付近に おいて、中心星が隠される現象は星周シェル内側部でのダスト凝結で説明され る。この凝結は単に光度低下に伴う温度降下の帰結であろう。  極大と極小間で総光度は 2.3 倍変化する。1 μm 光学的深さは極小期に 1.0 極大期に 0.7 である。赤外カラーの変化は質量流出が一様と云う仮定と 合う。 Feast et al 1984 が報告した 1983 年極小の異常な暗さが再確認 された。これは提出したモデル内で説明可能であり、余分の独立シェル放出 や、ダスト雲による食を考えなくてよい。 ( 光度低下の実証がポイントになる? )

Bedijn (1987)
ミラ型星と OH/IR 星の周りのダストシェル:IRAS と他の赤外観測の解釈
 ダストシェルモデル計算により、ミラ型星、OH/IR 星、非変光 OH/IR 星の IRAS 二色図系列を説明した。フィットの向上のため、(1) ダーティシリケイト モデルの修正、(2)吸収係数の温度依存性、(3)Baud, Habing 1983 の マスロス加速を取り入れた r-3 密度分布、(4)マスロス終焉 期の有限タイムスケールでのマスロス低下を組み込んだ。

Urasin 1987
星間減光から定めた銀河系の腕モデル
 銀河系の二本腕モデルを星間ダストの分布から作った。  モデルはピッチ角 6.5° の対数螺旋である。 二色図上で減光ベクトルで戻して主系列 O - B6 に当てる方法で減光決定。 UBV なのに(?)内側はスキュータムまで達している。二本螺旋だけで 合わせられず、スキュータムが一回りしてきて、局所腕とペルセウス腕に 分裂する。

Koike, Hasegawa 1987

非晶シリケイトの中間赤外吸光係数
 天然非晶シリケイト5種と合成ガラス7種の中間赤外減光係数を測った。全て のサンプルが 10, 12, 20 μm バンドが存在した。バンドパラメタ―は SiO2 量と良い相関がある。相関が最も顕著なのは 10 μm バンド である。SiO2 量が減ると、ピーク波長 λm は 長波長側に移り、ピーク強度 κm は下がり、バンド FWHM W が広がる。λmκmW は 15 % の範囲で一定 である。経験的に次の式が成り立つ。
   λm(μm) = 11.10 - 2.30 10-2[SiO2] ±0.15
   W (μm) = 5.14 - 4.68 10-2[SiO2] ±0.30
[SiO2]=SiO2 のパーセント重量比である。  このように、非晶シリケイトでは、λm と W の間に相関 がある。12 μm バンドでは相関は弱い。[SiO2] が 50 % 以下に 下がると 12 μm バンドはもはやバンドとして認めがたくなる。20μm バ ンドでは λm は [SiO2] と無関係であり、 κm は [SiO2] が下がると弱くなる。
この結果を天体観測と比較して、ピーク波長 λm = 9.7 μm, バンド幅 W = 2.5 - 3.0 μm から、[SiO2] = 48 ±8 % を得た。

Gurtler, Henning 1986
非常に若くて大質量天体の周りのダスト
 BN 天体に代表される非常に若く、大質量の赤外源の周囲のダストの性質を調 べた。10 μm バンドと 3.1 μm 氷バンドの深さに相関がないことが判った。 シリケイトバンドの強さと 8 - 13 μm カラー温度に負の相関がある。BN型 天体のこの関係は、既にミラ型星や OH/IR 星で知られている関係をさらに拡大 する。  BN型天体の輻射輸達モデルを計算して、その性質を調べた。その結果、 非常に若い天体のダストは酸素過多の巨星や超巨星の周辺にあるダストと 異なるという結論に達した。それらは定性的にはそれぞれ、パイロキシンと オリビンに結び付けられる。

Forbes 1985
l = [30, 70] の可視渦状腕構造 II. 星間減光の分布
 新しい、及び既存の 300 OB-星の観測を基に l = 30 - 70 での星間減光の 変化を調べた。領域を 16 に分けた。各領域で Av - D 関係を調べた。一般に 減光は太陽から 500 - 1000 pc にある雲で起きていることが分かった。
 この区間を過ぎると、 D = 4, 5 kpc までは殆ど減光のない区間が続く。最も減光の 強い領域は l = 32 - 44 で、最近 Huang et al 1983 により発見された分子雲 に随伴しているように見える。

Rieke, Lebofsky. 1985

1 - 13 μm での星間減光則
 ο Sco と銀河中心方向のいくつかの星で 1 - 13 μm 測光を行った。それらの星 と VI Cyg No.12 減光則は 1 - 13 μm で同じであった。3 μm の先の減光則および 減光対色超過比 R ≈ 3.09±0.03、Av/τSi = 16.6 ±2.1 を得た。

Knacke+3 1985

2.5 - 3.3 μm での星間ダストスペクトル:含水シリケイトを求めて
 VI Cyg12, AFGL 2205, AFGL 2885 の 2.5 - 3.3 μm スペクトル を撮って、星間ダスト中に吸着水、水加物グループ、水加鉱物を探した。新しい 吸収帯は見つからなかった。蛇紋石(serpentine)や緑泥石(Chlorite) から予想される バンド強度と比べると データはシリケイトダスト中のそれらの割合はそれぞれに対し、 25 % 以下と 50 % 以下であった。

Draine (1985)

シリケイトとグラファイトグレインの光学的性質の表
 グラファイトと天体シリケイトの光学定数を表にした。波長は 2 mm から 200 A に亘る。  半径 a = 0.01 μm と 0.1 μm の球に対する Qabs, アルベド, ⟨cosθ⟩ も同様に示す。
(ERRATUM: グラファイト λ > 10 μm に 少しエラーあり。 )

Draine, Lee (1984)

星間シリケイトとグラファイトグレインの光学的性質
  グラファイトと天文シリケイトの誘電関数を、グラファイトの実験 データと天文観測データに基づいて、導いた。グラファイトのような 伝導質の粒子に対しては赤外吸収に対する磁気双極子の寄与が重要である。 微小粒子に対する電気双極子と磁気双極子断面積を求める表式を与えた。 グラファイトとシリケイトの直径 0.003 - 1.0 μm 粒子に対する吸収 断面積を波長 300 A - 1000 μm で求めた。プロレイトとオブレイトの グラファイトーシリケイト粒子に対する偏光プロファイルに基づき、 星間シリケイトグレインはオブレイトであると結論された。Mathis- Rumple-Nordsieck グラファイトーシリケイト混合グレインに対する 減光曲線を観測と比べた。
(ERRATUM: グラファイト λ > 10 μm に 少しエラーあり。 )

Feast, Whitelock, Catchpole, Roberts, Overbeek (1984)

炭素星 R For の変化する星周遮蔽
 1983 年に炭素星 R For は可視、赤外で異常に暗くなった。  これは星周遮光の変化と解釈される。グラファイト粒子による吸光 には粒子半径 0.15 μm が必要である。

Burstein, Heiles (1982)

HI と銀河計数から導いた赤化
 Burstein, Heiles 1978 が提唱した HI/銀河計数法 = 銀河系の視線方向赤化 を求める方法の精度を定量的に評価した。二つの方法による高精度の赤化を比較 した。主に uvbyβ システムで決めた星の固有カラーと、銀河の古い星種族 の積分スペクトルのカラーと吸収線強度の間の関係である。
 HI/GC 法の相対精度は E(B-V) で 0.01 等か赤化の 10 % である。銀極方向 で、測光または偏光から決めた赤化データを集めて議論した。ここでも北銀極 では E(B-V) = 0.01、南銀極で 0.01 - 0.02 という値が得られた。  |b| > 10 の領域で赤化マップを得た。Shane-Wirtanen 1967 銀河計数の を 13 deg2 で平滑化したマップも与えた。それらの利用法を 論じた。最も著しい特徴は銀河系内で HI/ダスト比が低い、例えば分子雲、 領域は高い HI/ダスト比領域で囲まれていることである。

Holm, Wu, Doherty 1982
RY Sgr の星周減光
 RY Sgr は 1977 - 1978 に極小を示した。1979 - 1980 年の回復期に IUE による紫外分光観測が行われた。異なる時期であるが、 ほぼ同じ脈動位相での観測を比較して、この RCrB 星の減光が求められた。  減光の波長依存性は、半径 0.043 μm のグラファイト球の理論モデル、 から予想される減光曲線、および非晶質炭素煙で計測した減光 とほぼ同じである。

Greenstein (1981)

惑星状星雲 Abell 30 の異常減光
 Abell 30 の 1250 - 8000 A の中心星 SED はとても奇妙である。 もし 20 万度の中心星が吸収ピークが 2470 A 付近にあるダスト雲に 埋もれていると考えるならその奇妙さは理解される。ダスト雲は強い IR 源である。  内部赤化は E(B-V) = 0.30 で A(2470 A) = 2.5 mag に達する。 この減光はグラファイトでなく、炭素煙の実験室測定に合う。 強い P Cygni プロファイルから強い星風の存在が分かる。中心星は O 型准矮星で He-C 縮退 DO に接近中である。

Neckel, Klare (1980)

星間減光の空間分布
 11,000 を超す O - F 型星、うち 7565 個は O, B 星、の UBV, MK, β データから減光と距離を求めた。 1020 個に対しては二つの独立な手法、 Mv (MK) と Mv(β) による距離を定めた。二つの距離指標の差の平均は 0.01 mag 以下であった。
 天の川の写真を手掛かりに、|b| < 7°.6 を 325 区域に分けた。この 区域内では星の表面密度、減光は一様と看做せる。Av - D 図を作り調べた。 それらから D < 3 kpc までの減光マップを作った。

Jones + 4, 1980

南の石炭袋中の Bok グロビュールの赤外観測 
 南の石炭袋 "the Southern Coalsack" 中央に位置する Bok globule 2 の 200 arcmin2 における 75 星の JHK 測光を行った。若い星団の存在の兆候は なく、サンプルは主にフィールド星と考えられる。
 E(J-K) を用いて、グロビュール内部の密度分布を調べた。内部領域では密度は 一定で、周辺部で急激に低下することが判った。この観測から globule 2 の質量は 11 Mo 程度と見積もられる。やや不確かだが、ガス/ダスト比が非常に低いらしい。

Sitko, Savage 1980

特異 Be 星 HD 45677 の紫外、可視、赤外観測 
 特異 Be 星 HD 45677 を IUE で観測した。ほぼ同時期に可視、赤外の地上観測も 行った。それらから 0.12 - 12.6 μm SED を作り、星周ダストシェルにおける UV 光から IR 光への変換を調べた。高分解スペクトルからスペクトル型 B2 が示唆され 可視光の結論と合致する。しかし、低電離イオンのラインは予想より強く、 おそらくガス状星周シェルで生まれたものであろう。 スペクトル、特に中間紫外では、に多数の金属輝線が見える。
 星周吸収は 2150 A にピークを持つが、減光曲線の形は星間減光と大きく変わる。 HD 45677 の幅の広い赤外輻射は幾つかの炭素星、WC 星と似ており、2150 A の吸収バンドと合わせて考えると、星周グラファイトの存在を示す。 現時点、 JD 2443780、で UV, Opt での光度欠損は赤外超過の量とほぼ等しい。 観測される UV と可視の長期変動は赤外での変動を伴わず、 HD 45677 周囲の ダスト分布が斑点状であることを示す。

Jones, Hyland 1980

赤外星間赤化の新しい結果 
 強い赤化の星から E(J-H)/E(H-K) = 2.09 ±0.10 を得た。この値は以前に 得られていた値より大きい。この比が天空上で変動する証拠はない。

Janes (1977)

DDO 測光による K 型巨星の星間赤化
 単一 K 型巨星の DDO 及び BV 測光から、星間減光と固有 (B-V)o を導く 方法を述べる。  種族 I の星に対してはこの方法はうまく働き、かつ元素組成に依らない。 しかし、種族 II の星にはうまく行かない。

Jones,Merrill (1976)
晩期型星周囲のダストシェルのモデル
球対称ダストシェルモデルを、現実的なグレインオパシティを 用いて計算した。結果をグラフで表示した。  シリケイトグレイだけのシェルでは Tdust < 250 K の 光学的深さが十分に大きい時にのみ 10 μm 吸収帯が現れる。 この条件は他の種類の温かいダストが共存する場合には緩和される。  ”ダーティ”で短波長輻射を効果的に吸収するシリケイトが 混在するモデルと”純粋な”シリケイトが他のより吸収的なダスト に混ざっている場合との間にはっきりした区別がある。後者の場合 にはダスト種毎に温度を計算しなければならない。  地球上のシリケイトと比べ、星周ダストは 1 μm ≤ λ ≤ 5 μm で吸収率が高いらしい。

Gillett,Jones,Merrill,Stein 1975

星間グレイン組成の比等方性 
 シリケイトと氷の星間吸収観測を VI Cyg No.12 と BN 方向で行った。 (氷/シリケイト)吸収比は BN 方向が VI Cyg No.12 よりずっと大きい。 この結果を実験室データと比較して議論し、グレイン物質のコラム密度を 決めた。得られたモデルでは、VI Cyg No.12 の可視減光 10 等のうち、5 等分は 10 μm 吸収 を生み出したシリケイトが関与する。ここで 10 μm オパシティ として 5000 cm2gm-1 を仮定した。 もし、シリケイトオパシティが 5000 cm2gm-1 より低いということが無ければ、 これはその他の種類のグレインが存在しなければならないことを意味する。

Schultz, Wiemer 1975

O-, B-型星の星間赤化と赤外超過 
350 の O-, B-星の二色図から星間平均赤化を銀河系の様々な方向で 定めた。赤化定数 (Reddening Constant) は
     R = Av/E(B-V) = 3.14 ±0.10
と定められた。 20/350 星は分散上限の外にある。それらは異常赤外超過と 見なした。

Rieke 1974

VI Cyg No.12 の 10 ミクロンスペクトル 
VI Cygni No.12 の 10 μm 帯のスペクトルを狭帯測光した結果、シリケイト吸収が 検出された。S = Av/τ(9.7μm) = 24 であった。

Pollack (1973)
地上岩石とグラスの光学定数
 5 種類の自然石の光学定数を 0.2 - 50 μm で決めた。 ビアーの法則とフレネルの屈折の式を用いて、反射率と透過率の測定の 組み合わせから、0.2 - 5 μm では屈折率の実部と虚部を決めた。  5 μm より長波長側では反射率の測定しかできなかった。従って 光学定数の決定は分散式を用いて行った。これらの光学定数は互いに似るが、 λ < 4 μm では吸収係数に大きな差がある。グラスは非常に 透明である。

Alexander,Andrews, Catchpole, Feast, Loyd Evans, Menzies, Wisse, Wisse 1972
脈動 R CrB 星 RY Sgr の分光・測光研究
 1967 - 1970 年の RY Sgr 観測の結果を報告する。この間には初めに急速な 光度落下があり、続いて緩やかな回復と極大光度到達が起きた。382 本の輝線 とCN- の b−f スペクトルに起因する連続光が初めの光度落下期に 見えた。これら彩層輝線スペクトルの時間変化は励起度の低下と自己吸収の 減少を示す。彩層の低下タイムは 22 日であった。光球輻射の初期減光タイム は 5 日かそれ以下であった。[FeII] 輝線の不在から、衝突励起が支配的と するなら、輝線領域の密度は 1014 atoms cm-3 以上 と推定される。減光期にシェル速度は 200 km/s の CaII 輝線が見えた。
 増光期と極大期には可視等級とカラーは ΔV = 0.5 mag, Δ(B-V) = 0.3 mag, &Delta:(U-B) = 0.5 mag、周期 38.6 日の滑らかな変動を示す。 同様の周期性は視線速度 Δv = 30 km/s でも見え、RY Sgr は RCrB 星 であると同時に脈動変光星でもあることが判った。増光期のある時期には星 のスペクトルは極大期と同じで正常であるが、星の等級は暗く、カラーは 赤かった。Lee, Feast の赤-赤外観測と合わせると、星周減光が起きている と考えられる。Av/E(B-V) = 4.3, E(U-B)/E(B-V) = 1.3 が星周シェルに対し て導かれた。増光期中の光度低下に続いて異常なスペクトルとカラーが観測 された。それらは明らかに、光球吸収線が彩層輝線で埋められた結果である。 この現象の主原因は光球輻射光の減少で、それは新しいダスト層が光球付近に 形成されたためであろう。シェル吸収線 CaII, NaI のずれた速度がこの時期に 観測された。RY Sgr の脈動は概して言えば Trimble のヘリウム星振動モデル と合う。

Dorschner (1971)
シリケイトグレインの赤外スペクトル
文献にある鉱物粒子の中間赤外透過率曲線は放射星雲からの中間赤外スペクトル に似ている。観測スペクトルはシリケイト鉱物からの放射の可能性が強い。

FitzGerald 1970

星の固有カラーと二色図赤化線 
 Photoelectric Catalogue (Blanco et al 1968) を用い、 Johnson UBV と Cape UcBV システムの双方で、全ての MK クラスの星 の固有カラーを求めた。ある MK クラスの星の固有カラーを求める方法は
(1).A - M III, IV, V 星は無赤化星の平均カラー
(2).A - M I, II は2色図上系列の最も青いカラー
(3).O - B 型星は 2色図上の赤化直線
 赤化直線、Eu = αEy + β Ey2 の勾配は早期型星から決めた。UBV システムでの 値は、Cygnus 領域で α = 0.75±0.01, 残りの天域で α = 0.70±0.01 であった。曲げ率 β はどちらでも β = 0.05 であった。UcBV では α = 0.37±0.01, β = 0.00 で、スペクトル型依存はなかった。

Purcell 1969

星間グレインの光吸収率と放射率について 
 クラマース・クロニッヒ関係を星間空間媒質に適用した。 ここでは星間空間は回転楕円体グレインが疎らに散らばる真空空間と考える。 この関係を用いると、減光曲線全体に渡る積分は星間媒質の静誘電率と関係する。 これは直ちにグレインが星間空間中に占める体積比の下限を与える。
 この同じ方法をグレインの遠赤外放射率に適用した。低振動数振動子をむやみに 押し込んでグレインの低振動数放射率をかってに増加させることはできない。 得られる放射率の上限が導かれ、それを使って与えられれた半径と形状の グレインの熱平衡温度の下限値が定まった。

Fernie (1968) 
古典セファイドと銀河系構造 
 古典セファイドの空間分布に基づいて銀河系の構造を研究した。主な結果は
(i) 星間減光の銀経依存は kv=0.90+0.28sin(l+41)
(ii) 太陽はセファイドで定義される腕の外側の縁に位置する。
(iii) これは B-型星で定義される局所腕のケースと逆である。
現在のセファイドサーベイは不完全で、特に高銀緯 b > 10 での mv = 7 セファイドはまだ見つかるはずである。
 太陽は銀河面から 45±15 pc 上にあり、この面は形式的な銀河面に対し 0.8±0.2° 傾いている。この二つの面の交差点は太陽から 5.2 kpc, l = 97° 方向にあり、ノード線がこの方向に直交している。セファイドの z 方向分布は指数関数型でスケール高は 70 pc である。 Ro = 10 kpc を仮定して、 平均周期は 1 day/kpc で減少する。 

FitzGerald 1968

星間物質の分布 
 色超過対距離図を基に、太陽から数 kpc 以内の星間赤化物質の分布を 調べた。用いた星は Blanco, FitzGerald の光電測光カタログから採った。 大部分の方向では赤化物質は銀河面に集中しており、半値幅は 40 - 100 pc である。それらは直径 100 - 1000 pc の星間雲複合体の中に横たわっている。 太陽は、局所腕に属するそのような複合体の一つの南の縁に位置する。赤化は また内側の渦状腕に付随している。Gould's Belt に付随する局所的な赤化 物質には銀河面から数百 pc 銀河中心方向では上に、反中心方向では下に、 離れた雲が含まれる。

Scheffler (1967)
星間減光 III (独語)
 |z|<75 pc, の 4700 星データから、5 つの距離帯に対して、星間減光構造 関数 A(i,b,r) を導いた。それから次の結論が導かれた:
ダストの 80 % 以上は星間雲内にある。r ≤ 1.3 kpc では雲の空間分布は 統計的に一様である。

McCuskey 1967
銀河系反中心方向での恒星の空間分布
 (l, b) = (186, +1) 銀河系反中心方向 18.55 deg2 の 3621 星 のスペクトル型と V とを得た。Vlimit = 12.3 である。 A5 より早期の星に対しては B-V カラーも求めた。付録 A, B にはファイン ディングチャートと星のカタログを付けた。121 個の OB 星の解析からは 局所渦状腕(オリオン腕)の先に腕が存在する証拠は見つからなかった。
 星間減光は r = 2 kpc で Av = 1.8 mag, 4 kpc で 2.3 mag である。 早期 A 型星の超過が r = 0.8 kpc に、A2 - A5 星は r = 1 kpc に検出された。 A7 - F5 星は距離と共に急速に減少する。黄 - 赤色巨星の数はゆっくりと 低下する。4 つの距離で決めた一般光度関数 log ψ(Mv) は van Rhijn 関数からあまりずれない。

Neckel (1967)
早期 M 型星を用いた星間減光の決定
 早期 M 型星は星間減光の決定に最適の天体である。なぜなら (V-N) カラー 、ここに N はジョンソンの 10 μm 等級、が一定だからである。

Arp 1965

NGC 6522 方向における銀河系中心核の性質 
  NGC 6522 方向、 星団周囲の 31 星の光電測光の UBV カラーから、 銀河面高度が 140 pc になるまでは B バンド減光が視線に沿って 1.0 mag/kpc であることが判った。その結果総減光は E(B-V) = 0.44 mag に達した。
 NGC 6522 の色等級図からこの星団が比較的高メタルであることが判った。  NGC 6522 周辺のフィールド乾板から 1300 星の色等級図を作った。近傍星の寄与を 解析した結果、 B-V < 1.0 の星の大部分は 5 kpc 以内にあることが判った。B-V > 1.0 の星の大部分は銀河系中心核の星であり、中心核は 10 kpc 先の直径 1kpc の 星団のように見える。  中心核の星種族に含まれる低メタルのタイプ II 種族星は無視できる程度の割合である。 大部分の星は(1)やや高メタル( 47 Tuc 型)から非常に高メタル(NGC 188 型)に 至る高齢の星か、(2)全てが高メタルで年齢が 1 Gyr から 10 Gyr に渡る、かの どちらからしい。
 中心核の光度関数が導かれた。光度の 75 % は Mv = -2 から +1.3 の間の星から 生じている。  表面輝度は V = 20.3 mag/arcsec2 で B-V = 1.1 であり、赤化補正後は Vo = 18.9 mag/arcsec2 で (B-V)o = 0.6 - 0.7 である。  アンドロメダ銀河中心核と比べると天の川中心核は中心距離が同じ所で比べた時に淡くて 青い。大きさはサイズにして半分である。以上から我々は銀河系は Sc タイプとする。

Bok 1956

二つの減光域でのパロマ―シュミット星計数 
 ρ Ophiuchi のすぐ南の Ophiuchus 領域と κ tau と ψ Tau の 間の Taurus 領域をパロマ―シュミット乾板の星計数で調べた。Ophiuchus 領域 では写真等級で 7 -8 等の最大吸収と中心から 1° - 1.5° で 2 - 3 等 の吸収を得た。ρ Ophiuchi 南の雲のモデルを作り提示した。

Nassau, Seyfert (1946)

天の北極 5° 以内の BD 星のスペクトル分類
 北極から 5° 以内の BD 星全てのスペクトル型と光度クラス分類を Burrell 望遠鏡 4° 対物プリズム観測から決めた。スペクトル型分類の基準が確立 された。また G2 より晩期の星については巨星と矮星を区別する基準が作られた。 我々の分類と HD システムとの間の一致は良い。
 我々の結果による 6 - 11 等での矮星の割合は他の研究と一致する。 選択吸収は 450 pc で 0.30 等まで距離に比例して増加する。その先では 吸収量一定である。平均固有カラーを矮星のスペクトル型毎に、巨星では G0 より晩期について、求めた。



太陽近傍

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著者 内容

Andriantsaralaza, Ramstedt, Vlemmings, De Beck 2022
ガイア DR3 からの AGB 星距離の決定  
 Gaia DR3 視差をO-リッチの 33 AGB 星 VLBI メーザー視差と比べ、DR3 視 差に対する統計的補正ファクターを得た。次に、補正された Gaia 視差と 以前に得られた AGB 星の銀河分布からの事前確率 (prior) に対してベイズ法 を適用して、DEATHSTAR 計画からの 200 AGB 星距離を計算した。VLBI 星の SED を DUSTY モデルでフィットして、星の光度を求めた。  G < 8 mag の最も明るい星では、Gaia DR3 視差はファクター 5.44 低く 見積もられている事が判った。それより暗い 8 ≤ G < 12 ではファクター 2.74 である。Gaia DR3 視差ゼロ点オフセットは、明るい AGB 星で -0.077 mag である。より暗い AGB 星ではこのオフセット値はよりマイナス方向に振れる。 DR3 視差を補正すると、得られた距離は、我々のサンプルで、40 % 以上もの 非対称なエラーを伴うことが判った。銀河系 O-リッチミラ 型変光星の新しい周期光度関係は、
   Mbol = (-3.31±0.24)[logP-2.5] + (-4.317±0.060)
DEATHSTAR 星の新しい距離カタログを与えた。 DR3 視差の誤差が 20 % 以上の場合 AGB 事前確率に基づいて距離を求める際に は、距離がモデルに依存し、天体によりオフセットが変わるので、注意が必要 である。RUWE(re-normalised unit weight error) が 1.4 以下の場合、信頼で きる距離の保証はない。個々の AGB 星に対しては、距離の精度に RUWE のみを 使うことには問題がある。

Lebzelter, Nowlavi, Lecoeur-Taibi, Trabucci, Audard, Garcia-Lario, Gavras, Holl, Jevardat de Fombelle, Nienartowicz, Rimoldini, Eyer 2022
ガイア DR3: ガイア第2 LPV カタログ 
 セカンド Gaia LPVs カタログは G の変光巾が 0.1 mag ( 5 - 95 quantile range) の 1,720,558 LPVs を含む。他種変光星の混入を種々のファイルたーで 防いだ。周期と振幅は G-バンド変光曲線へのモデルフィットから決めた。C-星 は RP スペクトルの分子吸収帯から決めた。  392,240 LPVs には周期 P が与えられた。 546,468 星が C-星と分類された。 OGLE と ASAS-SN データとの比較から完全性は 80 % と評価された。リカバリー 率はミラ型で 90 %, SR と Irr で 60 % である。同時に LPVs 数は既知数の何 倍にもなった。特に混んだ領域でそうである。混入率は 2 % 以下である。しっか りした理論的議論に基づく C-星分類は文献にある分光で同定された炭素星と矛盾 しない。しかし、混んだ領域や赤化の強い場合注意が必要である。

Ruiz-Lara, Gallart, Bernard, Cassisi 2020
サジタリウス矮小銀河の円盤星形成史への度重なるインパクト 
 Gaia DR2 CMD を用いて、太陽近傍 2 kpc バブルの星形成史をモデル化する。 過去 5.7, 1.9, 1.0 Gyr に3つの鋭く強い星形成ピークが現れた。  これらのピークは (1) 軌道シミュレイション、(2) 銀河系円盤位相空間の特徴、(3) サジタリウス銀河の星構成 から予想される サジタリウス矮小銀河の銀河系への最接近時期と一致する。Sgr は銀河円盤形成の 主要駆動者ではないか?

Abia, de Laverny, Cristallo, Kordopatis, Straniero 2020
ガイア DR2 による太陽近傍炭素星の性質 
 Gaia DR2 で視差の誤差 20 % 以下の炭素星 210 個を選んだ。 N-型と SC-型星の合成光度関数は Mbol = -5.2 mag をピークとするガウシアン で表現可能である。以前に得られた光度関数と比べると両側のすそ野はより長く尾を引いている。 太陽メタル量の AGB 炭素星は Mbol = -6 mag まで達する可 能性がある。これは以前に銀河系ミラ型炭素星で得られた結果と矛盾する。 J-型星は N-, Sc-型星より 0.5 mag 暗い。R-型高温炭素星は以前の値より 0.5 mag 明るくなった。  N-, SC-, J-型星の空間分布と運動特性は非常によく似ている。一方、 R-型星 の 30 % は銀河面から 500 pc 以上離れている。その速度も LSR から離れてい る。
 N-, SC-星の光度関数は 1.5 - 3 Mo の AGB 光度と合致する。暗い尾の星は 外因性の低質量炭素星からの寄与を必要とする。明るい方の尾は炭素星質量が 5 Mo まで伸びる可能性を示唆する。J-型星は化学組成のみならず、光度関数 も異なり、その起源は不明である。空間分布と運動学は N-, SC-, J-型星は 薄い円盤種族に、 R-型星は厚い円盤種族に属することを示す。

Kobayashi, Karakas, Lugaror 2020
元素の起源: 炭素からウラニウムまで 
 C(A=12) から U(A=238) までの安定元素全ての銀河系化学進化モデルを作っ た。その結果、元素の起源とその時間経過が分かった。太陽近傍では、もし 20 - 50 Mo のハイパーノバ(HNe)からの寄与が大きければ M > 30 Mo の 星は超新星にならない。低質量スーパー AGB 星からのハイブリッド WDs  が所謂タイプ Iax 型超新星として爆発しない、またはスーパー AGB 星が 電子捕獲型超新星 (ECSNe) として爆発しないなら、スーパーAGB星 (太陽 近傍では 8 - 10 Mo) からの銀河系化学進化への寄与は無視できる程度である。  第一ピーク元素 Sr, Y, Zr は ECSNe と AGBs で十分な量が作られる。 中性子星マージャーは急速中性子捕縛(r-過程)によって Th - U までの元素 を作ることができるが、低メタル量星での観測量を説明するにはタイムスケー ルが長すぎる。Eu に見られるような進化傾向はもし 25 - 50 Mo ハイパーノバ の 3 % が磁場ー回転型超新星となって r-過程元素を作るなら説明可能である。 太陽近傍の他にもハロー、バルジ、厚い円盤における進化傾向を予言し、将来 の観測との比較に備えた。

Kobayashi, Karakas, Lugaror 2020
元素の起源: 炭素からウラニウムまで 
 C(A=12) から U(A=238) までの安定元素全ての銀河系化学進化モデルを作っ た。その結果、元素の起源とその時間経過が分かった。太陽近傍では、もし 20 - 50 Mo のハイパーノバ(HNe)からの寄与が大きければ M > 30 Mo の 星は超新星にならない。低質量スーパー AGB 星からのハイブリッド WDs  が所謂タイプ Iax 型超新星として爆発しない、またはスーパー AGB 星が 電子捕獲型超新星 (ECSNe) として爆発しないなら、スーパーAGB星 (太陽 近傍では 8 - 10 Mo) からの銀河系化学進化への寄与は無視できる程度である。  第一ピーク元素 Sr, Y, Zr は ECSNe と AGBs で十分な量が作られる。 中性子星マージャーは急速中性子捕縛(r-過程)によって Th - U までの元素 を作ることができるが、低メタル量星での観測量を説明するにはタイムスケー ルが長すぎる。Eu に見られるような進化傾向はもし 25 - 50 Mo ハイパーノバ の 3 % が磁場ー回転型超新星となって r-過程元素を作るなら説明可能である。 太陽近傍の他にもハロー、バルジ、厚い円盤における進化傾向を予言し、将来 の観測との比較に備えた。

Haywood, Snaith, Lehnert, Di Matteo, Khoperskov (2019)
昔からの天の川銀河問題再訪:外側円盤としての太陽近傍 
 広い範囲での拘束条件を考慮して、G-矮星問題を解決する、太陽近傍化学進 化の筋書きを提案する。 R < 10 kpc の円盤は巨大乱流ガス円盤から形成 された厚い円盤で、大質量星により太陽メタルまでメタル量増加が進んだ。R ≤ 6 kpc の内側円盤は宇宙年齢(?)7 - 10 Gyr での星形成停止期の後に メタル量増加が続いた。より遠方の領域では、厚い円盤の星形成活動後に残さ れたガスを、7 - 8 Gyr 昔に、動径方向のガス流(降着?)が希釈する。こう して、別々の化学進化を経ることにより、円盤は内側円盤と外側円盤とに分か れた。キーとなる考えは、厚い円盤によるメタル量の事前増加は、以前の内側 から外側モデルで想定されているような太陽半径におけるこの成分の比率に関 連しているだけではなく、形成期に存在した活発なガスの混合による完全な厚 い円盤にかんけいしているということである。だから、厚い円盤種族が表面密 度の 15 - 25 %, または太陽近傍での 5 - 10 % を占めるということでは G- 矮星問題を解くには不適切である。  この筋書きが上手く働くには、乱流ガス円盤から動径方向に一様なメタル分 布を持つ厚い円盤が形成され、太陽円付近が太陽メタル量になったことを認め る必要がある。太陽円では厚い円盤形成後に残された太陽メタル量のガスに、 外側円盤から流れ込んできたガスが一体となり、G-型矮星問題を解くのに必要 なメタル量の薄い円盤を形成した。 R > 6 kpc、特に太陽円を超えた向こう 側での化学進化は同じシナリオで説明される。外側からのガス流はバーの形成 とそれに伴う外側リンドブラッド共鳴が外側円盤の低メタルガスを R = 6 kpc (損頃の共鳴点位置)まで内側に流し込んだためにメタル量希釈が生じたので あろう。この共鳴は同時に内側円盤を外側から隔てて孤立させた。これらの結 果は太陽近傍のメタル量分布は天の川銀河のガス降着史と結びつかないことを 意味する。最後に、太陽は希釈を経験した 6 kpc より外側円盤に典型的な星で あり、内側円盤の特性は備えていない。
Mor, Robin, Figueras, Roca-Fabrega, Luri (2019)
ガイア DR2 が明らかにした 2 - 3 Gyr 昔の円盤星形成バースト
 DR2 G < 12 の 等級、カラー、視差を用い、 IMF, ノンパラメトリック 星形成史を含む15次元パラメター空間を調べた。それにはブザンソン銀河系 モデル高速シミュレイション BGM FASt と近似ベイジアンアルゴリズムを用いた。 DR2 データに 2 - 3 Gyr 昔の星形成バーストが刻み込まれていることが分かった。 現在の星形成率は 1 Mo/yr と判明した。また、 9 - 10 Gyr 昔から 6 - 7 Gyr 昔 に掛けて SFR が減少して行ったことも分かった。これは宇宙論的な星形成が z < 1.8 で低下するという傾向と一致する。  5 Gyr 昔からは星形成が活発になり 1 Gyr 昔まで続いた。我々の計算では円盤 で星形成に使われた質量の 50 % は 1 - 5 Gyr の間に含まれる。バーストの原因 は外部からの擾乱と思われる。さらに、M > 1.53 Mo では α2 = 2, M = 0.5 - 1.53 Mo では 1.3 であると分かった。

Messineo, Brown (2019)
ガイア DR2 中の既知クラス I 赤色超巨星候補のカタログ
 Gaia DR2 の信頼度が高い、π/σ > 4 で RUWE < 2.7, 赤色超巨星 889 個を調べた。サンプル星は Skiff 2014 が 集めた、これまでに分光で同定されたK-M 型でクラス I の超巨星である。  2MASS, CIO, MSX, WISE, MIPSGAL, GLIMPSE NOMAD データから星の輻射等級 を求めた。サンプル星を HR-図上で解析し 43 星が Mbol < -7 であると 分かった。サンプル星の 43 % は M > 7 Mo であり、 30 % は巨星であった。

Suh (2017)
  赤外二色図を用いた AGB 星の新カタログ 
 赤外二色図に変光とスペクトル情報を加えて、AGB 星の新しいカタログを作 成した。以前のカタログから分類ミスの天体をいくつか除いた。以前のカタロ グに記載された O-リッチ、C-リッチ星がそれぞれ占める領域を赤外二色図上 に定めた。そのそれぞれの領域内の新しい天体を O-リッチ、C-リッチ星の候 補とした。  このカラー選択法により、新しく 3996 の O-リッチ候補、1487 の炭素星候 補、295 の中間領域星を見出した。470 の O-リッチ星、9 C-リッチ星は変光 しており、スペクトル型も分かっている新しく AGB 星と認定された星である。 新しいカタログには 3828 の O-リッチ AGB 星と 1168 の C-リッチ星が含ま れる。分類ミスの星は除いた。

中川、倉山、松井、面高、本間、柴田、佐藤、寺家 (2016)
VERA によるミラ型星 R UMa の視差決定
 ミラ型星 R UMa の年周視差を VELA で測定した。2年間の観測から LSR 視線速度 37 - 42 km/s にH2O メーザーを検出した。年周視差 1.97 ±0.05 mas = 508±13 pc であった。VLBI マップには総計 72 個の光点が 110 au 領域に散らばっている様子が観察された。メーザー点の運動から、ヒッパル コス固有運動を引いてそれらの星周運動を求めた。  K バンドモニタリングを行い、平均等級 ⟨mK⟩ = 1.19± 0.02 mag を得た。先に求めた距離から絶対等級 MK = -7.34±0.06 を得る。これは以前 R UMa に対して得られていた値より遥かに高精度である。銀河系 ミラ型星の MK - log P 関係のゼロ点を求め、
   MK = -3.52 log P +(1.09±0.14)
を得た。赤色超巨星を含む他の長周期変光星データも集め、MK - log P 関係 の別の系列を研究した。

Lallement, Vergely, Valette, Eyer, Casagrande (2014)
個々星の色超過を逆変換して求めた局所星間空間の3Dマップ 
 銀河系青函物質の 3Dマップを得るために、距離限界の星間物質 量の個々の測定を逆変換することである。この方法を星の可視超過 に適用する。
 2.5 kpc 以内の視差や測光距離が分かる 23,000 個の星の色超過データ をカタログ化した。regularized Basian 法に基づいた逆変換をこの データベースに応用した。これは以前もっと近距離の星に使用されたこと がある。
 ダストの空間分布を様々な方向の平面カットで表した。マップには太陽 近傍の濃い雲が現れている。その空間分解能は太陽近傍で 10 pc, 1 kpc より遠方で 100 pc である。
近距離で弱い減光の星にバイアスがかかって いるこのデータセットは近くの空洞構造や薄い星間雲の位置を決めるのに特に 有用である。それらは他の手法では扱いにくい対象である。新しいマップには 第3象限に局所泡 (Local Cavity) の CMa トンネルの延長として、 1 kpc 巾の 空虚な空間が現れた。局所泡自体はわれわれはスーパーバブル GSH238+00+09 として、電波マップ上に同定し、オリオンとヴェラの雲で区切られたものと している。ダストマップにはその反対側 l = 70 方向にも狭いトンネルが伸びて 局所泡を引き延ばしていることが示された。
これらは一体として見ると、Lup, Sco, Oph, Aql, Lac, Tau 雲と OB アソシ エイションで限られたはっきりした空洞を形成している。この空洞の連鎖と 周囲の濃い領域は良く知られたグールドベルト=リンドブラッドリングの 計算機による表現である。最後に、 2D マップの高銀緯に現れた銀河面から 離れた構造は全て 3D マップに対応物が現れた。それらは近傍の薄い雲に 付随するダスト分布を与える。

Minchev、Chiappini, Martig (2013)
銀河系円盤の化学動力学進化 I. 太陽近傍
 円盤の化学進化モデルと銀河円盤のシミュレイションを合わせるという新し い方法で円盤の化学動力学進化を研究する。この方法はシミュレイションで起 きる星形成と化学組成増加の問題を避けることができる。ここでは、宇宙論的 な枠組みの中で、銀河系を扱う。その場での元素生成と動径移行が太陽近傍に もたらす影響を調べた。高 z 時代のマージャーからの動径移行と後期のバー の影響の結果、低メタル高アルファの星が多数太陽近傍に来たことが判った。 これは最近の観測を自然に説明する。  強い動径混合が生じるが年齢-メタル関係の勾配は分散以外ではあまり影響を 受けない。Ro = 8 kpc として、太陽は R = [4.4, 7.7] kpc で生まれた可能性 が強い。厚い円盤の新しい統一モデルを提案する。そこではマージャーと動径 移行が大きな役割を担う。初期に強いマージャーがなかったら、最古星の垂直 速度散布度は観測の半分となってしまう。従って、厚い円盤が静かな円盤進化 から生まれることはなさそうである。


Haywood, Di Matteo, Lehnert, Katz, Gomez (2013)
天の川の2相星形成史の手がかり
 太陽近傍にあり、元素組成が良く決まっている星を調べた。[α/Fe]- 年齢面上に二つのはっきり分かれる分布を示す。それらは厚い円盤と薄い円盤 の種族である。[Fe/H] および [α/Fe] と年齢とのきつい相関が厚い円 盤星に認められる。これはよく混ぜられた星間ガスこの種族が 4 - 5 Gyr か けて形成、初期には爆発的星形成その後はより静かに、されたことを意味する。 厚い円盤星の最も若いグループは円盤種族と同じくらいの小さなスケール高を 示す。この二つから導かれる自然な結論は、厚い円盤星には垂直方向のメタル量 勾配があることである。我々の考えでは、厚い円盤の最も若い星たちは、8 Gyr 昔に、内側薄い円盤の形成が始まる初期条件を用意したのである。その時の [Fe/H] は (-0.1, +0.1) の範囲であり、[α/Fe] = 0.1 dex であった。 この考えはまた、薄い円盤のメタル量が R = 7 - 10 kpc で階段状に変化する 事実と、厚い円盤が R < 10 kpc に限られる事との一致を説明する。  我々の考えでは、外側薄い円盤は厚い円盤の影響が及ぶ半径の外側で発達し、 独立な構造を持つのであるが、同時に、厚い円盤が形成される際に放出された ガスによって始原ガスが汚染された結果高い [α/Fe] を持つようになった。 太陽近傍の低メタル薄い円盤星 ([Fe/H] < -0.4) はそれらが外側円盤で生 まれたと考えると最もうまく説明されるのだが、それらの年齢は最も若い厚い円 盤星の 9 - 10 Gyr と同じである。これは、外側薄い円盤が形成し始めた時に、 厚い円盤はまだ内側円盤で星形成を継続していたことを意味する。 このように、内側厚い+薄い円盤は異なるスケール高を持つ二つの成分からなり、 その結合は内側から外側への形成過程を示すかのように見えるのだが、薄い円盤 自身は多分その最初の星を外側部で作った。その上、指摘したいのは、厚い円 盤のきつい [Fe/H], {α/Fe] − 年齢関係を考えると、内側から外側形成 モデルは厚い円盤において α 元素とメタル量の銀河系中心距離による 勾配を生む。しかしこれは観測されていない。最後に、我々の結果からは動径 方向の星の移住による太陽近傍星の汚染は考えられない。

Xu, Li, Reid, Menten, Zheng, Brunthaler, Moscadelli, Dame, Zhang 2013
銀河系局所渦状腕の性質
 VLBA を用いた BeSSeL 計画の一つとして、局所腕の水メーザー視差の観測が 行われた。他の 21 観測を文献から集めて、今回の結果と合わせると腕内の SFRs の3次元分布と運動が明らかになった。我々の結果は局所腕は短い棘(Spur)に特 徴的な大きなピッチ角を持たない事を示した。  その活発な星形成活動、5 kpc を越す長さ、約 10° のピッチ角は局所腕 がペルセウス腕かサジタリウス腕の枝(branch)であることを示唆する。我々の結果はこの 腕がペルセウス腕により近いことを示す。GC 方向と北銀極方向の平均特異運動は ゼロに近く、約 5 km/s の反回転速度を示す。これは他の主要渦状腕にも共通な 特徴である。

Suh, Kwon (2011)
  AKARI, MSX, IRAS, NIR データを用いた赤外二色図 
 Suh, Kwon (2009a) の AGB 星カタログを改訂した。新しいカタログでは各星に対し、AKARI, MSX, 2MASS の対応番号を付けた。  2色図上で C-リッチか O-リッチかで二色図上で占める位置が異なることを 見出した。シェルモデルによりその違いを説明した。

Hohle, Neuhauser, Schultz (2010)
 O-, B-型星と赤色超巨星の光度と質量
 O-, 早期 B-型と 3 kpc 内の全ての赤色超巨星を調べた。サンプルは 2MASS 観測とヒッパルコス視差があるものに限った。スペクトル型、光度クラス、 多色測光値から減光補正を行い、絶対等級を求めた。進化モデルと光度、カラー を比較して、質量、年齢を定めた。  3 kpc 以内のサンプル星全ての光度を使い、光度クラス I, III, V の平均 等級をスペクトル型に対して計算した。以前のデータは連星を分離していなか ったのと、距離を大きく見積もっていたために光度を大きく評価していたこと がわかった。質量と年齢の分布から太陽から 600 pc 以内の超新星率を 今後 10 Myr で 20 回/Myr と評価した。

Ita et al 2010
あかりが見た近傍星種族
 あかりの 9, 18 μm 全天サーベイ天体をヒッパルコス、2MASS と 結合して色等級図を作った。その天体を SIMBAD でスペクトル タイプ、光度クラスを調べた。(B-V) - (V-S9W) 二色図は IR エクセス のある星を見出すのに有効であった。(L-L18W) - (S9W-L18W) 二色図は 幾つかの天体分類に有効であった。この図上で炭素星と OH/IR 星は 独自の系列を形成した。YSOs, PMSs, post-AGBs, PNe は大きな赤外超過 を持つので赤外カタログ中で同定できる。(L18W, S9W-L18W) 色等級図 をヒッパルコスと一緒にして調べた。この図は低質量 YSO と AGB 星を 同定するのに用いられた。この図はSpitzer の LMC カタログにおける [24] - (8-24) 色等級図に相当する事が判った。

Feast, Whitelock,Menzies 2006
炭素リッチミラ型星:運動学と光度
 銀河系炭素星ミラの絶対輻射等級と視線速度を使ってその運動学を調べる。 銀河系微分回転から周期-輻射等級関係を導き、それが LMC からの P-L 関係と 合うことを確認した。銀河系ミラに対しては
  Mbol = -2.54 log P + 2.06(±0.24)
を得た。ただし勾配は LMC 値を使用した。  速度散布度に Nordstrom et al の観測データとパドヴァモデルを合わせて 解析した結果、炭素星ミラの平均年齢 1.8±0.4 Gyr, 平均初期質量 1.8±0.2 Mo を得た。速度散布度の周期による変化が見出された。 周期が初期質量と年齢に依存することを示唆する。O-リッチと C-リッチミラ の関係を論じ、両者の比と様々な星系種族との関係を考察する。

Elias, Cabrera-Cano,Alfaro 2006
太陽近傍の OB 星1.空間分布
 太陽 1 kpc 内の早期型星空間分布を解析するために、新たに3次元空間分類 法を開発した。分布モデルとしてグールドベルト円盤+局所銀河円盤を考える。  B6 型より早期で光度クラス III - V で測光距離 1 kpc 以内の星 550 個を用 いて、あるスペクトルグループの星に対し、分布モデルのパラメターを決めた。

Girardi, Groenewegen, Hatziminaoglou, da Costa 2005
銀河系の星計数:非常に深いのから浅い測光サーベイに基づくシミュレーション
 TRILEGAL = 銀河系のあらゆる方向での測光をシミュレートする種族合成コード を説明する。このコードはスターカウントモデルの幾つかの技術的な点を改良した。 それらは、 (1)星の進化経路ライブラリーを完全なものとした。 (2)あらゆる測光バンドに対応する星のスペクトルライブラリー。
 Groenewegen et al 2002 ではこのコードを始めて応用して CDFS 星カタログ を解析した。ここでは、 EIS の深い探査、 DMS 星計数に初めて応用する。これら はハローと大きなスケール高を持つ円盤成分を含んでいる。これにより得た、 もっと広い測光データを扱うために必要な較正の変化を示す。  新しい較正に基づき、やや浅い 2MASS カタログを上手く解釈できることを 示す。このカタログは主に中間年齢円盤を探査している。また太陽近傍を調べた ヒッパルコスの絶対等級対カラー図を解釈した。この図には深いサーベイに較べ 高い割合で若い星種族が含まれている。
 同じモデル較正が上述の全てのデータセットにうまく応用できた。それらは 非常に深い CDFS (16<R<23) から、非常に浅いヒッパルコス (V<8) にまで及んでいる。ただし、銀河中心方向に対しては 50 % 以上のずれが生じた。 これはバルジ成分を含めていないためである。それと銀河面 及び銀河南極方向でも良く合わない。TRILEGAL コードは可視ー赤外の広範囲サーベイ に使える形で提供されるであろう。

Nordstrom, Mayor, Andersen, Holmberg, Pont, Jorgensen, Olsen, Udry, Nowlavi 2004
太陽近傍ジュネーブ・コペンハーゲンサーベイ:14,000 F-, G-型矮星の年齢、 メタル量、運動学。
 太陽近傍の F-, G-型矮星の等級限界完全サンプル 16,682 星のメタル量、 回転速度、年齢、運動学と銀河系内軌道を定めた。約 13,500 星に対する 63,000 回の視線速度観測から連星の大部分が検出された。それに合わせた uvbyβ 測光、ヒッパルコス視差、Tycho-2 固有運動観測から 14,139 星の運動学情報を得た。それに最近の較正を適用して有効温度とメタル量を 定めた。当時線年齢を可能な全ての星に与えた。特に統計的バイアスとエラー の評価には注意した。と言うのは通常の手法だと、それらを過小評価し、その 結果、年齢分布に偽の特徴が現れるからである。我々の結果は Edvardsson et al. 1993 と一致した。  太陽近傍星に対する、G 型矮星の年齢分布、年齢・メタル量、年齢・速度、 メタル量・速度関係を再調査した。まず、閉箱モデル(closed box) モデル予想 に比べ低メタル G-型矮星が欠乏している(G-dwarf 問題)ことを再確認した。 銀河中心動径方向にメタル量勾配が存在し、薄い円盤ではその形成時以来 平均メタル量の変化が少ない事、全ての年齢でメタル量の分散が大きいこと、 渦状腕と分子雲により薄い円盤の運動学的加熱が連続的に起きていることが 判った。空間運動の V 成分に見られる特徴は年齢とメタル量にわたって広が っている。これは渦状腕のストカスティックな効果で、古典的な運動群に 対応しない。さらにこれは厚い円盤の星を運動学的基準で見分けることを 面倒にする。

Porras et al 2003
太陽から 1 kpc 以内の若い星団のカタログ
 1 kpc 以内にある若い(≤ a few Myr)恒星群、星団の近赤外サーベイのカタログを 提示する。69 論文から 143 サーベイを見つけ出した。それらは 73 領域をカバーして いる。各領域内の星数は中間値で 28, 平均値で 100 である。 星群内のメンバー数に基づく大雑把な分類から、星の 80 % は メンバー数 100 以上の星団に属している。 カタログされた領域の銀河面上での分布から、 270° > l > 60° で星群が欠けている。これは太陽が局所腕と サジタリウス腕の間に位置することからきている。

Cordes, Lazio 2002
NW2001 I. 自由電子の銀河系内分布
 自由電子の銀河系内分布の新しいモデルを提示する。(1)パルサーの分散 メジャーに関与する自由電子の分布を示し、それによりパルサー距離を定める。 (2)星間散乱の基底にある電子密度の揺らぎ強度の大規模変化を述べる。 (3)銀河系内天体の星間散乱とシンチレイション観測結果を解釈する。(4) 星間ガスの暖かい電離ガスの滑らかな空間分布の予備的モデルを提供する。 これは Taylor, Cordes 1993 モデルの拡張である。

Bertelli, Nasi 2001

太陽近傍の星形成史
 ヒッパルコス星の CMD を合成 CMD と比べて SFH を出した。主系列と赤色 巨星枝を分けて扱った。フィットは χ2 極小で決めた。
(1)サルピータ― IMF は妥当。開始時から現在にかけて星形成が次第に 活発になる。 (2)導かれる質量密度とそれに対応する星形成率の絶対値は M < 0.5 Mo での IMF の勾配に強く影響される。
(3) 恒星進化モデルは完全でない。He 燃焼星と主系列星の数の比は観測に 較べモデルが 1.5 倍高い。オーバーシュートをより効果的にする必要がある。

Olivier, Whitelock, Marang (2001)
ダストに埋もれた太陽近傍 AGB 星
 ダストに埋もれた 58 個の AGB 星、内二つは post-AGBs の可能性がある、 を調べた。27 個は C-リッチ、21 個は O-リッチである。これらは、 Jura, Kleinmann (1989) の太陽近傍高マスロス AGB 星(dM/dt > 10-6Mo/yr)に載って いる星である。NIR 地上測光、IRAS、視線速度と流出速度データを合わせてこ れらの星の性質を解析した。NIR 変光振幅は周期と相関し、波長と共に減少す る。P < 1000 日での統計テストからは C-リッチと O-リッチで周期分布に 差があると考える根拠はない。  周期 1000 日を越える炭素星はない。PLR を用いて光度と距離を決めた。 F60 から決めたマスロス率は赤外カラーと周期に相関する。 相関が強いのはマスロス率と k-[12] カラーの関係である。サンプルの運動と スケール高は周期 1000 日以下の星は低主系列質量星であることが判る。 O-リッチで周期が 1000 日を超す3つの星は中間質量星かも知れない。他の 星の平均質量は 1.3 Mo で白色矮星質量は 0.6 Moであろう。高マスロス率期 間は 4 104 年と見積もられ、これらの星が AGB を離れる前に TP を経験するとしても精々1回である。

Dutra, Bica 2001

2MASS で探す新しい赤外星団
 2MASS アトラスから銀河系全体で 赤外星団、星群または候補を 42 個見つけた。 シグナスX領域にはこれまで 6 個の星団、星群が知られていたが、今回新たに そこで 19 個発見した。色等級図から決めた 7 個のシグナス星団までの予備的 な距離は d = 1.0 - 1.8 kpc であった。銀河中心方向では 7 個の星団または 星群候補が見つかった。これまでには 61 個が知られている。
 バルジ中心方向で Ks 暗黒雲を調べた結果、5 つの暗黒雲が見つかった。内 二つは中心核付近で Arches や Quintuplet 星団のような大質量星団形成を 行い得る分子雲の候補である。

Lindblad (2000)
グールドベルト星の回転について
 グールドベルトの特徴は、系のひらぺったさ、銀河面に対する 20° の 傾き、膨張である。これはその 30 - 40 Myr という年齢と一致させる必要が ある。ここで提案するモデルは傾いた回転と膨張する円盤からなる。モデルは 線形近似で解かれ、観測に合うパラメタ―が決められた。  その結果、つじつまの合ったパラメタ―が得られた。しかし、非線形のシ ミュレイションで現実的なモデルを作る必要がある。そこには自己重力と 継続的な星形成も含まれる必要がある。

Hernandez, vallas-Gabaud, Gilmore (2000)
ヒッパルコス太陽近傍の最近の星形成史
 ヒッパルコスカタログを用いて、太陽近傍の CMD を作成した。ベイズ解析 により、この領域の過去3 Gyr にわたる星形成史 SFR(t) を調べた。SFR(t) の形や構造に事前の仮定は入れていない。  SFR(t)の時間分解能は 50 Myr である。SFH(t) には周期 0.5 Gyr の振動 成分がある。ヒッパルコスサンプルの非一様性からの問題を議論し、統計テス トを行った。その結果、我々の SFH(t) が観測と整合することが確認された。

Feast, Whitelock 2000
ヒッパルコスデータによるミラの運動:太陽円周を越えるバー 
視線速度、ヒッパルコス固有運動、周期光度関係に基づいて、ミラ型星の 空間運動を導いた。 P = 145 ? 200 日の太陽近傍ミラは銀河系中心 からの実質外向き平均速度75+-18 km/s を有する。これは軌道が細長く、 主軸が銀経17°の方向に伸びていると解釈される。

Dehnen 2000
銀河系バー外側リンドブラッド共鳴が近傍速度分布に及ぼす影響 
 平坦回転曲線+回転バーの指数 関数型円盤の外側における速度分布関数のシミュレイションを行った。古い恒 星円盤のモデルに対し、 OLR は外側円盤の相当部分で f(v) にはっきりした 特徴を残した。バー角度 0° - 70°, OLR 半径の 2 kpc 外側までの位 置では、速度分布関数は (1) LSR 中心の通常分布成分と (2) より低回転速度 で外側に向かう第2成分の二つに二分される。  実際、太陽近傍の晩期型星に対するヒッパルコスデータからの速度分布関数 には、このような二分性が存在する。観測されるこの二分性が OLR により誘 引されたと解釈するなら、OLR 半径は太陽 軌道半径 Ro より僅かに小さいことになる。その上、観測速度関数をシミュレ イションと較べると、バーのパターン速度は太陽近傍の回転周期の 1.85± 0.15 倍であると分かる。

De Zeeuw, P.T., Hoogerwerf, De Bruijne 1999
OB アソシエーションのヒッパルコス調査
 太陽から 1 kpc 以内の OB アソシエーションをヒッパルコスで調べた。 近くのアソシエーションは大きな視角を有し、等級では B ≤ 6 mag, スペクトル 型では B5 より早期の星に限られてきた。ヒッパルコスの結果に de Bruijne の 収束点法と Hoogegrwerf, Aguilar のスパゲッティ法を適用して運動群が同定された。
位置天文メンバーが 650 pc 以内で 12 の若い星群に載せられた。新しい選択則の 適用で古いメンバーリストが書き換えられ、多数の新メンバーが加えられた。 特に近傍アソシエーション Sco OB2 では T Tau 型星を含む晩期型星が加えられ、 大質量星と星形成中の低質量星の関連を示す最初の例である。
 500 pc より遠方のアソシエーションは固有運動では運動群と確定することは 出来なかった。確定した運動群の平均運動には系統的な特徴があり、グールド ベルトとの関係で議論された。
検出された 12 運動群の内 6 個は已然の OB アソシエーションの表に載っていない。 一つには O 型星が欠落しているためで、他の場合以前には散開星団とされていた ものがより広がった OB アソシエーションの一部と判った例もある。太陽近傍で 拘束されていない若い星群の数は以前考えられていたより多い。

Chiappini, Matteucci, Gratton (1997)
銀河系の化学進化:二回の降着モデル
 ハロー・厚い円盤と薄い円盤を形成した2回の降着を仮定する化学進化モデ ルを提示する。ハローの進化は直接には扱わない。モデルが円盤用だからであ る。薄い円盤の形成は厚い円盤よりずっと長く掛かった。これは薄い円盤を作 るガスが厚い円盤から降り注ぐだけでなく、主に得銀河間空間からのガスだか らである。薄い円盤を作るタイムスケールは銀河中心からの距離により変わり、 内側ほど短い。その結果銀河系建設は内側から外側へ広がって行った。  星形成には最低値を設けたので、厚い円盤の星形成は途中で停止した。これは 観測と合う。観測との比較で最もきついのはG-矮星のメタル分布である。我々 のモデルは最新のデータに合う。モデルはガス質量、星形成率、超新星 率、それに 16 主要元素量の時間変化を予想する。それらの制約から、 ハロー、厚い円盤の形成タイムスケールは 1 Gyr 以下、薄い円盤では太陽付近 で 8 Gyrである。

Rocha-Pinto, Maciel 1997
銀河系局所円盤における星形成の歴史
 G-型矮星のメタル量分布から太陽近傍で星形成バーストが起きたか を研究した。メタル分布と年齢・メタル量関係を結ぶ方法を 提案する。観測エラー、宇宙分散、スケール高効果を考慮した。  不規則な星形成史を持つ銀河の化学進化をシミュレイションして、 この方法の有効性をテストした。太陽系近傍に適用すると、少なくとも 2回の強い星形成期、一つは 8 Gyr 昔、もう一つは 2 - 3 Gyr 昔 があったことが分かった。

Lindblad (1997)
グールドベルト星の運動 ー 30 Myr の古さの星形成域
 ヒッパルコス非超巨星でストレームグレンの早期グループの光度を持つ 2440 星の、温度、年齢、距離を決めた。 よく決まった年齢と視線速度を持ち、 30 Myr より若い 241 星は銀河面に対し 20° 傾いた面 = グールドベルト に属する。この系には多数の 700 pc 以内の明るいアソシエイションが支配的 で、真っ先に挙げられるのはオリオン、サソリーケンタウルスアソシエイション である。
 グールドベルトの外にある年齢 30 Myr 以下の星から銀河系回転パラメタ― を導いた。それから平坦回転曲線と太陽距離で Ω = 25.3 km/s/kpc を 得た。  グールドベルトの運動はその外側の星と大きく異なる。僅かな外向きの運動 以外に、この系は銀河回転と同じ方向に回っていて、かつ膨張もしている。 その結果見かけ上の銀河回転は B = -21, K = +12 km/s/kpc である。  この系は 30 - 40 Myr 昔に、おそらく渦状腕で、生まれ、角運動量が大き すぎて系を重力的に束縛することが出来なかった。回転はこの傾いた系が平たい 理由を説明する。

Magnani,Hartmann, Speck (1996)
高銀緯分子雲のカタログ
 高銀緯分子雲の分布と物理特性を表にまとめた。|b| > 25° に 100 以上の天体が認められた。高銀緯分子雲の大部分は半透明雲である。 幾つかの中速度雲を入れない場合の速度分散は 5.8 km/s、入れると 9.9 km/s である。5.5 km/s だとスケール高は 124 pc、平均距離は 150 pc となる。 9.9 km/s だとスケール高は 210 pc、平均距離は 260 pc となる。つまり 高銀緯雲の大部分は近傍天体で局所泡の太陽に近い側の縁に位置しているので あろう。これらの雲は全体としては太陽に最も近い分子雲を構成している。 カタログから導いた空間占有率は 0.005、表面密度は 0.1 - 0.2 Mo pc -2 で、サイズは 0.1 - 10 pc, 質量は 0.1 - 103 Mo である。 銀緯南半球と北半球で分布が非対称なのは太陽位置が中心面から 18 pc ずれているためである。

Jura, Kleinmann (1992a)
短周期、中周期酸素リッチミラ
 |b| > 30° の 酸素過多ミラを、赤外測光と周期・赤外光度関係とを 用いて解析した。過去の運動学的解析結果と一致して、周期 300 日以下と以上 とで、空間分布に大きな違いがあった。我々が定義する中間周期ミラ、P= 300 - 400 d、では指数関数スケール高が 240 pc で、投影面密度= 100 kpc -2, 太陽近傍空間密度= 210 kpc-3 である。短周期 ミラ、P < 300 d, ではスケール高 500 - 600 pc, となる。この値は周期・ 光度関係のゼロ点によるがおそらくメタル量に依存する。これ等の短周期ミラ は薄い円盤種族、最大スケール高= 100 pc、には属さない。  短周期ミラの投影表面密度は 40 - 60 kpc-2, 太陽近傍空間密度 = 35 - 60 kpc-3 である。
( 中間ミラでは 210*0.24/100=0.5, 短期ミラでは 35*0.6/40=0.53 または 60*0.5/60=0.5 か、なるほど)
 P > 300 d ミラの母星は主系列質量 1 - 1.2 Mo の円盤矮星らしい。短周 期ミラの母星質量は < 1.1 Mo であろう。 1 Mo 星からのミラは年齢 10 Gyr 以上を意味する。しかし、その場合には 10-4 Lo より暗い白色矮星 を観測されているよりもずっと多く生み出すこととなる。短周期ミラの星周ダス トの量は大きいことから、それらの星のメタル量は太陽の 1/3 より大きい。
 中間周期ミラの期間を 2 105 と見積もった。この値は最近の他の 見積もりより長い。短周期と中間周期酸素過多ミラは大体 10-7 Mo /yr の質量を放出している。

Jura, Kleinmann (1990)
 太陽近傍の質量放出赤色超巨星 
 太陽から 2.5 kpc 以内にあるマスロス中の赤色超巨星 21 個(20 個は M-型、 1個は G-型 L > 105 Lo)のリストを作成した。これらは初期 質量 20 Mo の主系列星から進化したものである。それらの表面密度は 1 - 2 stars/kpc2 であった。 これらの星は WR-星に比べ、GC方向への集中 が少ない。  M型超巨星からの質量返還は 1 - 3 10-5 Mo kpc-2yr-1 である。GCに向いた半球側では W-R 星に較べ、RSGs からのマスロスはずっと少ない。しかし、半銀河中心方向では それが逆転する。M 超巨星の期間は 2 - 4 105 yr 程度である。 この期間に 20 Mo の星は 3 - 10 Mo のガスを星間空間に戻す。

Feast, Whitelock, Carter 1987
M 型巨星の種族と銀河系構造
太陽近傍63M型巨星、銀河面から外れた195M型巨星、それにSR と判っている34M型巨星のJHKL測光を行った。(J-H)o - (H-K)o 図上でそれらをバーデの窓のM型巨星と比べた。 その差がメタル量の差 に起因するなら、その大きさはΔ[Z/Zo]=+0.2である。 銀河面から500 pc かそれ以上離れた拡大太陽近傍域に (J-H)o - (H-K)o 上で NGC 6522 のM型巨星と同じ箇所を占める星がある。これはそれら がバルジM巨星と同じメタル量を有することを示唆する。それら銀河面外 に位置する星は多分、厚い円盤または内側ハローに属し、銀河バルジの高 メタル成分はこの種族の中心部分と看做せる。今回の研究はバルジ と拡大太陽近傍のミラ型星の母星(厚い円盤星)は似ているという想定を 支持する。

Jura, Kleinmann (1989)
太陽近傍のダストまみれ AGB 星
 赤外カタログを使い、太陽から 1 kpc 以内にあり、マスロス大 > 2 10-6 Mo/yr の星のリストを作った。それらの銀河円盤表面密度は 25 kpc-2 である。O-リッチと C-リッチ星は半々である。  総マスロス量は 3 - 6 10-4 Mo kpc-2 yr-1 である。主系列質量 1 - 5 Mo の星が白色矮星に進化する際に失う質量 8 10-4 Mo kpc-2 yr-1 とほぼ合う。 太陽近傍では 1.2 Mo 付近の星の半数は > 3 104 年を炭素星と して過ごし、1 - 2 10-5 Mo/yr のマスロスを行い 0.7 Mo WD となる。

Jura, Joyce, Kleinmann (1989)
銀河系反中心方向の明るい炭素星
 銀河系反中心方向の 211 炭素星の K 等級を測った。炭素星の K 等級と I-K カラーがほぼ一定という仮定を用いて、表面密度、見かけ等級とカラーの分布は、 (1) 反中心方向では K バンド星間減光は 0.15 - 0.3 mag/kpc, (2) 高光度炭素 星の密度は反中心方向 3 kpc でも、太陽近傍とあまり変わらない。  通常の円盤星は太陽円を超すと急速に密度が低下するので、炭素星の密度変化は 異常である。その説明としては、(1) 反中心方向でメタル量が低下し、(2) 太陽近 傍での炭素星寿命 105 年より長い 2-3 105 年となるの ではないか?反中心方向炭素星の平均マスロス率 1.2 10-7 Mo/yr は 太陽近傍の 1/1.7 で低い。
(何だ?暗黒雲に降参? )

Thronson, Latter, Black, Bally 1987
マスロス星の性質と星間ダスト構成の変化
 IRAS PSC からフラックスリミッテッドサンプルを調べた。IR 炭素星は 5.2 kpc-2、炭素星全体では 38 kpc-2となった。炭素星の 総数は 28,000(R/15kpc)2, R=銀河円盤半径 である。炭素星の数は 銀河中心距離に依存しない。一方 赤外 M-星は 47 kpc-2 である。 マスロス O-リッチ星は銀河系全体で 48,000 個である。進化した O-リッチ星 の数密度はスケール長 4 kpc の指数関数型の変化を示す。C-星と M-星の密度 分布のこの差は銀河面上での [C]/[O] 比の勾配が原因である。マスロス星の 種族構成が銀河中心距離により変化するため、星間空間に注入されるダストの 性質が変わり、その結果分子雲の加熱、化学、減光、初期質量関数など全てが 場所により変化する。  中間質量星からの総質量放出は 0.35 Mo/yr で、その内炭素星からの寄与は 10 - 50 % である。この値は銀河系のサイズによる。総マスロスは少数の 極端に激しいマスロスを行う星からの寄与が大きい。それらの星の多くは O- リッチである。サンプル中の炭素星の寿命は 2 105 yr である。 M-星も似たような値であろう。これは太陽近傍での炭素星誕生率= 5 10 -13 pc-3yr-1 を意味する。これは 3 - 5 Mo 星が主系列を離れる割合に等しい。それらの星が炭素星の母星であろう。 銀河系全体で炭素星が生まれる割合は 0.14 (R/15kpc)2yr -1 である。現存の mm-波輝線サーベイから得られる炭素星の 赤外二色図は炭素星全体からは偏っている。
( IRAS 2色図から(不思議なことに)隔離シェル炭素星ボックスを赤外炭素星 領域として定め、そこにある星のCO観測(KnappMorris 1985)を使って、炭素 星の分布とマスロスを出して、銀河系全体の総数、マスロス総量、炭素星寿命 ...と話を広げている。どうも不思議な論文。吹きすぎ? )

Urasin 1987
星間減光から定めた銀河系の腕モデル
 銀河系の二本腕モデルを星間ダストの分布から作った。  モデルはピッチ角 6.5° の対数螺旋である。 二色図上で減光ベクトルで戻して主系列 O - B6 に当てる方法で減光決定。 UBV なのに(?)内側はスキュータムまで達している。二本螺旋だけで 合わせられず、スキュータムが一回りしてきて、局所腕とペルセウス腕に 分裂する。

Dame et al 1987
全銀河面 CO 合成サーベイ
 銀河系分子雲の大規模 CO サーベイで、近傍の CO 放射は主にグールドベルト に沿っている。Lupus, Ophiuchus, Aquila がベルトの正銀経成分、Taurus, Orion が負銀経成分を代表している。

Dame, Thadeus 1985
北銀河面での広銀緯分子雲 CO サーベイ
  l = [12, 100], b = [-5, +6] の CO サーベイを角分解 1° で行った。 l = [20, 60] では b をもっと広くした。CO 放射の約半分は Great Rift に伴う 近傍雲から、半分は R = 4 - 7 kpc の内側腕内の雲から来た。視線速度を用い、 Rift を 太陽距離 200 - 2300 pc の 10 個の分子雲に分解できた。  近傍のリフト雲は 数 104 Mo - 数 105 Mo である。そう 大きいという わけでもない。近傍雲の平均半値半径は 75±25 pc であった。銀河面上 での分子密度は 0.013 Mo pc-3 である。CO 積分強度と可視減光との 相関は殆ど全ての暗黒雲が分子雲であることを示す。

Forbes 1985
l = [30, 70] の可視渦状腕構造 II. 星間減光の分布
 新しい、及び既存の 300 OB-星の観測を基に l = 30 - 70 での星間減光の 変化を調べた。領域を 16 に分けた。各領域で Av - D 関係を調べた。一般に 減光は太陽から 500 - 1000 pc にある雲で起きていることが分かった。
 この区間を過ぎると、 D = 4, 5 kpc までは殆ど減光のない区間が続く。最も減光の 強い領域は l = 32 - 44 で、最近 Huang et al 1983 により発見された分子雲 に随伴しているように見える。

Paresce (1984)
太陽周辺の星間物質の分布について
  r ≤ 100 pc での星間ラインや EUV 連続光吸収のデータを解析した。 これらのデータと分極、カラー超過データを合わせて、解析した結果、 殆どの方向で、薄い(nH = 0.07 cm-3、暖かい (T = 103 - 104) ガスが遠方まで広がっている ことが分かった。
この物質がない唯一の領域は l = 200° - 270° の高銀緯、低銀緯両方である。強い密度不連続が Sco-Cen と Per アソシエー ションの方向、 r = 100 - 150 pc のあたりにある。もっと弱い不連続が より太陽に近いところ、それらの中心を結ぶ線に平行な不連続な尾根が走っ ている。これらの不連続面の向こうでは星間物質の空間密度は非常に 低い値に落下し、太陽から数百 pc 離れたところまで広がっている。この 結果は HI, 21-cm, 軟X線のサーベイ結果と一致する。

Schlosser (1984)
北暗黒雲システム
 北銀河系の広視野写真に l = 90° - 200 ° に渡り。暗黒雲の複合系が写っている。この北暗黒雲システムは細胞状の 見かけを持つ個々の雲が揃って作る構造である。この系は局所渦状腕に 属するに違いない。それは、系の銀緯方向の厚みが大きい事、局所腕を 追跡する良く確立された天体と似た分布をしていることで確認される。

Neckel, Klare (1980)

星間減光の空間分布
 11,000 を超す O - F 型星、うち 7565 個は O, B 星、の UBV, MK, β データから減光と距離を求めた。 1020 個に対しては二つの独立な手法、 Mv (MK) と Mv(β) による距離を定めた。二つの距離指標の差の平均は 0.01 mag 以下であった。
 天の川の写真を手掛かりに、|b| < 7°.6 を 325 区域に分けた。この 区域内では星の表面密度、減光は一様と看做せる。Av - D 図を作り調べた。 それらから D < 3 kpc までの減光マップを作った。

Cohen, Cong, Dame, Thadeus 1980
分子雲と銀河系の渦状構造
 CO 2.6 mm サーベイ、一つは l = [12, 60], b = [-1, +1]、もう一つは l = [105, 139], b = [-3, +3]、から以前の見解に反し、渦状腕をよく再現 することが分かった。分子雲から、ペルセウス腕、局所腕(Lindblad の 局所膨張リングを含む)、サジタリウス腕、盾座腕、 4 kpc 腕が同定された。
 局所腕とペルセウス腕の間の空間には分子雲がない。内側銀河の腕間領域の 大部分にも分子雲が存在しない。CO が渦状構造を示していることからその寿命が 108 yr をそう大きくは超えないことが分かる。この時間スケールは 星間物質が腕を横切る時間である。すると、質量保存則から R = 4 - 12 kpc での 星間物質中で分子雲に含まれる割合は 1/2 を越えられないことが導出される。

Eggen (1980)
ベラ・スタークラウド I. NGC 2547 付近のスターシート
 ベラ・スタークラウド, 8h - 9h, -40° ∼ -50°, の大規模測光サーベイ の第1報告を行う。年齢 2.5 × 107 年、距離 425 pc, の扁平な 星の集団が暗黒雲の手前にある可能性を論ずる。

Miller, Scalo (1979)
太陽近傍における初期質量関数と星形成史
 太陽近傍での初期質量関数(IMF)と星形成史を調べた。現在の質量関数は光度 関数から決めた。関連する観測量全て、光度関数、質量・光度関係、スケール高、 非主系列星の補正、主系列星の光度増加、と不確定性を議論した。観測された総 質量は力学質量=オールト質量とひどく矛盾はしない。従って、局所的に "隠され た質量" を想定する必要はない。
 星形成史に対する主な拘束は、主系列星寿命が円盤年齢と等しくなる質量で、 導いた IMF が非物理的な不連続を示さないことである。様々な不定性を考慮す ると、過去の平均星形成率は現在の値に較べ、精々5倍大きいか、3倍小さいか である。我々は変動幅はファクター2程度と考える。星形成史に対する副次的な 12の拘束を与える。星形成率がガス密度の二乗に比例するという証拠はない。 もし、星形成率がガス密度のべき乗としても、その指数は 0.5 以下である。
 連続性の拘束に矛盾しない幾つかの星形成史に対して、 IMF を求めた。得ら れた IMF は滑らかで、 log M に関しハーフガウシャン、つまりログノーマル である。IMF の勾配は dlogξ/dlogM = -(1 + logM) である。現在の質量 消費は (3 - 7) 10-9 Mo pc-2 yr-1 で ある。ガス消費のタイムスケールから、星形成はガスの落下率と釣り合っている か、または星形成率が超新星や銀河衝突によりストカスティックに制御されて いることを示す。IMF の形は星団 IMF と大体合っている。

Scalo, Miller (1979)
特異赤色巨星の進化に対する拘束II.:質量と空間密度
 様々な進化段階にある赤色巨星の理論的空間密度と初期質量分布を特異赤色 巨星 Ba, R, S, N(P giants) のに関する観測データと比較した。理論モデルは 半観測的な IMF と文献にある主系列星寿命、半観測的なマスロス率を合わせて 得た。星質量の観測データは変光タイプ、空間密度、運動学、連星、星団から 得た。Ba 星の空間密度はダブルシェルモデルで説明するには多すぎ、ヘリウム シェルフラッシュと何の関係もないことを示す。より冷たい P 型巨星の空間 密度は良く分からないが、ダブルシェル期の星の予期数は超えないだろう。 連星系と星団のP巨星データは 1 - 10 Mo と大きな広がりを示す。運動学から P 型巨星の平均質量は 1 - 1.5 Mo 辺りである。
 光度、空間密度、質量からの拘束を合わせると、(1) R-星の性質はヘリウム コアフラッシュ期のミクシングと合う、(2)Ba 星の大部分はヘリウムコア フラッシュと考えられる。ただ、ξ Cap, HD 65662 のような星は別のメカニズム が必要である。(3)ヘリウムコアフラッシュだけでは N, S 星のミクシングは 説明できない。(4)ヘリウムシェルフラッシュはぎりぎり低温 P 巨星の観測 制約をクリアする。(5)もし、ヘリウムシェルフラッシュが低温P巨星の 原因であるなら、観測される平均質量はコアマスが ≤ 0.7 Mo と小さい時に 起こるという制約を課すが、これは恒星進化計算では実現されない。

Weaver(1979)
円盤には当たり前な大きな超新星残骸
 l = 330° を中心に両側 80° に渡って伸びる HI アーチは Sco-Cen アソシエーションからの星風により生じたバブルである。 ループ I はバブルと重なるが同じではない。バブル中で爆発した 超新星爆発のシェルである。一方ループ II とループ III は α Per アソシエーション中の超新星爆発シェルが銀河面 ガスで二つに裂けて銀河面の北と南に噴き出たものである。

Lucke(1978)
太陽近傍での赤化と赤化物質の分布
 4,000 個の O-, B- 星の UBV 測光を最近の測光、分光カタログから探し、 色超過を求めた。色超過と距離から銀河面上に色超過の等高線マップを描いた。 マップ半径は 500 pc, 1000 pc, 2000 pc の三種である。さらに、銀河面に 垂直な面6つの面上に色超過分布を描いた。1 kpc 当たりの色超過率も 銀河面上と天空上に描いた。
 赤化物質の分布はグールドベルトと強い相関を示し、 l = 210° - 255 ° では 500 pc まで低赤化領域が広がり、それは l = 240° 付近では 2 kpc まで伸びる。l = 10° から 80° では非常に赤化が強い。 ダスト雲と反射星雲の位置との比較は非常に良い相関を示した。また、過去の 結果とも一致が良い。ダストの分布は不規則で、他の銀河のダスト腕の局在領域 で見られる分布に似ている。

Herbst (1975)
R-アソシエイション III. 局所渦状腕構造
 R アソシエイションの分布は、局所 (Cygnus) 渦状腕構造が帆座 l = 265 方向、 2 kpc まで見える。この構造はカリーナ・サジタリウス腕からは明ら かに離れている。可視局所腕の内側の縁にダストが集まっているらしい証拠 がある。  これは銀河の観測にも見られる。R アソシエイションを他の種類の銀河腕 追尾天体と組み合わせて、新しい可視渦状腕のマップを作った。このマップ から、渦状腕の巻き込み角 = 13±4° が導かれた。

Stothers, Frogel (1974)
O, B 型星の局所複合体 I. 星の分布と減光
    距離 1 kpc 以内の O - B5 型星、超巨星、若い星団、アソシエイション は互いに 19° - 22° 傾いた二つの平坦な系に集中している。その 歴史背景、統計的有意性、組成、空間配置、星間減光を調べた。銀河面 ベルト、銀河面に沿っている、の O - B5 星は空間配置、年齢分布共に ランダムであった。グールドベルトは北側が Sco-Oph 領域、南側が Orion 領域に投影像がとんぼのような形に伸びている。系の直径は 750 - 1000 pc で太陽は中心から Ophuichus 方向に少しずれている。系の年齢は 幅広のターンオフが B2.5 付近にあることから 3 × 107 yr と見積もられる。 太陽付近にある O - B2 星の大部分と若い星団はグールドベルトに属している。 しかし、どちらのベルトも B3 - B5 星の空間密度としては同程度で、星間減光 の強度も同じくらいである。グールドベルトは銀河面ベルトに較べ縦方向に 3倍圧縮されているが、各ベルトは星間ダスト、星グループの中心に関し 同じ集中度を面に対して示す。(?)太陽の周りには O - B5 星の小さな 空隙がある。

Lindblad, Grape, Sandqvist, Schober 1973
近傍星間ガスの運動は多分グールドベルトと関係する
 HI 観測の太陽近傍成分にシェルまたは雲の膨張を示す特徴が見つかった。膨張 年齢は 70 Myr である。この特徴はグールドベルトに関係する証拠がいくつかある。 この特徴の運動学的特性は渦状腕のショックモデルと関係するのではないか。

Walborn 1973
太陽近傍における O-型星の分布
 O-型星の2次元分類システムに関する新しい結果を提示する。新しく追加し た南北天の星の分類が与えられ、特異な Of-的スペクトルの二つの群が述べら れる。絶対等級に関する修正を議論した。正常な O-型星の分類と分布を示す。 最も驚くべき結果は、カリーナ・サジタリウス腕が l = [285, 20] の間 全区間で局所腕から分離していることである。他の若い天体に関する以前の 結果との良い一致は O-型星の新しい光度分類を支持する。

Spoelstra 1973
銀河系磁場内の超新星残骸としての銀河系ループ
 ループ IV, Lupus ループ、Monoceros ループ、Origem ループ に対する van der Laan モデルに基づく計算結果を示す。ループの 空間方向はシェルの外側にあるまだ乱されていない磁場の方向に 関する情報を含む。太陽から数百パーセク以内での Bo の方向は l = 40° である。

Feast, Woolley,Yilmaz (1972)
太陽近傍セミレギュラー変光星の運動学
 Kottamia Obs で撮った北天の 67 M-型 SRs と Radcliffe Obs での南天 53 M-型 SRs の視線速度を得た。それに既存データを加えて SRs の運動を調べた。 運動の平均が周期により変化する証拠はなかった。ただし P = 60 - 140 d の 範囲で弱い輝線を示す星は他より速度分散が大きい。ただこれは高速のサンプル を加えるか外すかで結果が変わる。  203 個のデータから得た平均は、
   u = -20±4,   v = -27±4,   w = -12±5
   α = 42±6,   β = 42±6,   γ = 34±9
セミレギュラーは古い円盤種族に属する。セミレギュラーに対して若い天体の 銀河系が外向きに膨張する証拠はない。密度勾配は
∂ log ν = -3.7 ±0.9
∂ log R
であった。Me に対する解析も行った。

Berkhuijsen, Haslam, Salter 1971
銀河系ループは超新星残骸か?
 銀河系電波連続光ループの性質の観測的証拠を提示する。それらの小さな 輪の幾何学を論じる。高・中銀緯における中性水素の特徴と連続光ループとの 関係が見つかった。 ループ I と逃散星 θ Ophiucus との関連が 示唆された。現在の証拠はループは超新星残骸であるという仮説を支持する。

Bok 1970
プログレスレポート
 カリーナ・ケンタウルス区域 l = [265, 305] における、 O-, B-型星、HIIR, HI, ダストの分布に関するデータをまとめた。公表データに UBV 光電測光と 新しい写真画像も加えた。結果は図9と図10にまとめた。カリーナ渦状構造は l = 282 で、また l = 295 で鋭く区切られている。その距離は 1.5 kpc - 6 kpc である。その外側縁は太陽から 8 kpc の所でほぼ接点方向となる。腕構造は 距離 9 - 10 kpc の所で曲がっている。この特徴は HI, 電波 HII データにも 現れている。  図9に現在の分布データを天体タイプ毎に図示した。O-, B-型星と HIIR は 密接に関連していて、r < 6 kpc では l = [285, 295] に集中している。 HI はその両側にはみ出て分布している。長周期セファイドは O-, B-型星、 HIIR と類似の集中を示す。  l = [282, 295] 方向の星間減光は,r = 4 - 5 kpc で 0.5 mag/ kpc である。 しかし、カリーナ腕構造の外側ではもっと強い減光が観測されている。 l = [265, 280] では r = 2 kpc で Av = 3.5 mag の減光が観測されている。 r = 4 kpc ではさらに強い減光が示唆されている。このようにカリーナ腕構造の 外側で減光が強いのは一般的な現象のようである。弱い減光は腕構造の内側 でのみ見られる。  図10には O-, B-型星と HIIR のピーク巾 = 0.8 kpc で、 距離 4 kpc で 12° であることを示している。一方 HI は 8° で 巾 0.6 kpc である。

Courtes, Georgelin, Geogelin, Monnet (1969)
HIIRs から決めた銀河系渦状腕の形と回転曲線のパラメタ―
 HIIRs の視線速度と分光測光距離を、HI 21 cm から決まる速度と OB 星が なぞる腕の幾何構造との間を繋ぐことに用いた。星間電離水素と OB-星、 セファイドから得られる運動データは同じで、重力効果が支配的であることを 示す。  l = [305, 333] 区間には二つの速度極大が見出される。そして、有名なペ ルセウス腕と局所腕がはっきりと分離された。HI, HIIRs, O-型星の星団が 4本の腕上に位置した。これらは 2kpc づつ離れ、ピッチ角= 20° で あった。

McCuskey (1969) 
銀河系反中心方向の M-型巨星 
 反中心方向 (l, b) = (186, +1) 8 平方度の領域で M0 - M1, M2 - M4, M5 - M8 巨星の空間密度を距離の関数として見積もった。493 星の赤領域対物プリ ズム、赤外と V 等級が使用データである。
 反中心方向での距離による数密度の低下は、  M0 - M1 星では、r = [1, 5] kpc で D(r) = 9.5 から 2.5 ×10-6pc-3、  M2 - M4 星では、r = [1, 5] kpc で D(r) = 4 から 2.5 ×10-6pc-3、  M5 - M8 星では、r = [2, 5] kpc で D(r) = 1.0 から 0.25 ×10-6pc-3 である。

Fernie (1968) 
古典セファイドと銀河系構造 
 古典セファイドの空間分布に基づいて銀河系の構造を研究した。主な結果は
(i) 星間減光の銀経依存は kv=0.90+0.28sin(l+41)
(ii) 太陽はセファイドで定義される腕の外側の縁に位置する。
(iii) これは B-型星で定義される局所腕のケースと逆である。
現在のセファイドサーベイは不完全で、特に高銀緯 b > 10 での mv = 7 セファイドはまだ見つかるはずである。
 太陽は銀河面から 45±15 pc 上にあり、この面は形式的な銀河面に対し 0.8±0.2° 傾いている。この二つの面の交差点は太陽から 5.2 kpc, l = 97° 方向にあり、ノード線がこの方向に直交している。セファイドの z 方向分布は指数関数型でスケール高は 70 pc である。 Ro = 10 kpc を仮定して、 平均周期は 1 day/kpc で減少する。 

Racine (1968)
南天星雲の星
 反射星雲中の星の測光および分光観測を行った。二色図上での赤化勾配は正常で 早期型星よりも晩期型星に対して急であることが判った。  データからこれらの天体の距離と空間分布を求めた。観測からは約15の反射星雲の アソシエイションが現れた。はっきりした R-アソシエイションの帯がオリオン腕の縁

FitzGerald 1968

星間物質の分布 
 色超過対距離図を基に、太陽から数 kpc 以内の星間赤化物質の分布を 調べた。 太陽は、局所腕に属するそのような複合体の一つの南の縁に位置する。 Gould's Belt に付随する局所的な赤化 物質には銀河面から数百 pc 銀河中心方向では上に、反中心方向では下に、 離れた雲が含まれる。

McCuskey 1967
銀河系反中心方向での恒星の空間分布
 (l, b) = (186, +1) 銀河系反中心方向 18.55 deg2 の 3621 星 のスペクトル型と V とを得た。Vlimit = 12.3 である。 A5 より早期の星に対しては B-V カラーも求めた。付録 A, B にはファイン ディングチャートと星のカタログを付けた。121 個の OB 星の解析からは 局所渦状腕(オリオン腕)の先に腕が存在する証拠は見つからなかった。
 星間減光は r = 2 kpc で Av = 1.8 mag, 4 kpc で 2.3 mag である。 早期 A 型星の超過が r = 0.8 kpc に、A2 - A5 星は r = 1 kpc に検出された。 A7 - F5 星は距離と共に急速に減少する。黄 - 赤色巨星の数はゆっくりと 低下する。4 つの距離で決めた一般光度関数 log ψ(Mv) は van Rhijn 関数からあまりずれない。

Klare, Neckel 1967
OB 星の空間分布
 北天、南天の 8703 OB-星までの距離を求めた。 7903 星のデータは ハンブルグ・クリーブランドカタログとハイデルベルグカタログから 採った。それ以外の 800 星の MK スペクトル型は既知であった。MK 分類が未定の星に対しては OB+, OB0, OB- グループの平均絶対等級と Neckel の星間吸収モデルを当てはめた。
 銀河面に垂直な方向の OB-星分布を研究した。 2 kpc より遠方では それは星間吸収の効果で難しい。星層の厚みは H* = 50 pc, 吸収層の厚みは 30 pc と分かった。OB-星は 3 本の渦状腕に集中している ことがこれまでより遠くにまで示された。

Lindblad 1967
銀河系反中心方向の 21 cm 観測
 銀河系反中心方向の 21-cm 観測が Dwingeloo 25-m 望遠鏡で行われた。 目的は速度からこの領域の天体成分を分解することである。ラインをガウシャン で分けて、(l, v) 図上で解析した(図6)。それらの成分の(b、v)上の性質 を表2にまとめた。
 良く知られたペルセウス腕、オリオン腕、それに腕 F, 腕 I に加え、三つの細い 腕が銀河面とはずれて存在し、反中心方向でこちらに接近する速度を示す。  これ等の内、最も極端な成分は l = 180 で b = -9 まで下がり、視線速度 -29.5 km/s を示す。この腕はライデンマップ上で最も外側の腕の延長を成している。
 銀緯方向に大きく広がった二つの成分もある。一つは異常なほど速度分散が小さい。 これは近傍の年齢 70 Myr の膨張リングではないか。もう一つは微かで、速度分散は 19 km/s と大きい。これは腕間ガスかも知れないが、その性質は不明である。

Smak, Preston 1965
ミラ型変光星の運動
 リック天文台 120 インチクーデ分光器による 270 個のミラ型星の観測から これまで報告のなかった視線速度を初めて与えた。多くは mpg = 10 - 15 mag である。これらの結果を Merrill や Feast の結果に足して、 ミラ型星の運動を論じた。距離は Osvald, Risley の絶対等級を用いて決めた。 減光は指数関数型減光層モデルを使用した。  減光率には 1.5, 2.0, 2.5 p.g.mag/kpc の3種類を試した。オールト定数 A = 15 km/s/kpc が P < 350 d のミラ型星に対して得られた。P > 350 d のミラに対しては、もっと大きい A = 25 km/s/kpc が得られた。銀河 中心の周りの回転速度は銀河面から上がるにつれ低下して行く。この低下は 楕円体仮説に基づいて説明される。それによって Vθ, A, Rmax, Vθ が極大となる銀河中心距離の z-依存表現が 得られた。

Blanco (1965) 
晩期型巨星の分布と運動 
 スペクトル型 C, S, gM の星の空間分布と運動を調べた。変光星かどうかは 区別していない。変光星のみについては Plaut 1965 参照。C, S 型星の光度と 固有カラーの情報が不足しているため、またそれらの空間密度が低いため、 その空間分布については、天空上の見かけ分布と特異運動に頼らざるを得なか った。 gM 型星では状況はずっとましで、空間分布に関していくらかのことが 言える。  太陽近傍での gM 星空間密度は 9,000 kpc-3である。銀河面垂直 方向高度 250 pc でこの密度は半減する。 銀河面上では銀河中心方向に増加し、 反中心方向で減少するがその率は不明である。M5 より早期型の gM 星の約半数 かそれ以上が渦状腕に集中している。 N 型星は他の種族 I 星と共に腕に集中 して見える。 R 型星にはその集中が見られない。それらはバルジに見つかって いない。 S 型星の分布は二つに分かれる。一つは古典的な種族 I と同じ、 もう一つは長周期変光星と同じ分布である。  gM 星の速度楕円体は主系列 F 型星と似る。R 型星の速度楕円体は G - K 矮星のそれと似る。

Blaauw (1964) 
太陽近傍の星間減光 
 O アソシエーションのレビュー。

Feast 1963
長周期変光星
 表1には主に南天の 114 長周期変光星に対する 281 分光観測からの視線 速度を記す。輝線と吸収線のそれぞれに、波長と速度を示す。異なる輝線間の 速度差を議論し、図1では輝線速度 - 吸収速度の周期との関係を示す。この 関係を用いて、輝線速度しか測れなかった星の吸収速度を決定した。表2には 405 長周期変光星の速度を周期に基づいて9つの集団に分けて示した。
 第6章では S Ind 1953 年サイクルの詳しい解析から極大直後に速度が急速 に変化することを示した。第7、8章では Me 変光星のスペクトル型と光度ク ラスを与えた。光度におおきな広がりが、特に短周期で、あることが示唆され る。平均結果は統計的視差と合う。CrI 4254/FeI 4250 比の異常は以前 47 Tuc で見出された結果と合う。
 353 Me 変光星は周期で 7 集団に分けられ、太陽運動を差し引いた残差速度を 解析した。K項は存在しない。銀河回転方向からのずれもない。第2章と図12 には、Me 変光星がほぼ全ての星種族タイプにまたがっている事が示される。 周期 149 日以下の星の運動の異常はこれらの星が第1倍音で振動していることを 示唆している。振動定数の比 Q0/Q1 = 2.4 は RR Lyr の 値より大きく、大きな Q0 = 0.056 と一致する。 Woolley-Eggen ク ラスのほしとの比較から、長周期の変光星がヒアデス巨星と同じ年齢と質量を持つ ことが示された。  短周期の星は高メタル球状星団の 周期 0.45 日の RR Lyr と 同じ年齢と質量を持つ。Me 変光星の大部分は円盤種族と中間種族 II に属する。
 15章では速度楕円を導いた。表5には様々な定数の平均値を示す。h/k (0.87 ±0.11) は極端種族I天体より大きい。銀河面から離れた所で、密度 勾配 ∂ν/∂R が通常星と異なる証拠はない。しかし、もし変光星 の見かけ分布から見出された高い勾配が確認されたら、それは θ c > 270 km/s という大きな回転速度を意味する。密度勾配は R が大きくなるにつれ緩くなる。h/l (0.77±0.14) は若い星の値より 大きく、Me 変光星が定常状態に近いことを示す。銀河面距離の平均は短周期 で 1500 pc, 長周期で 100 pc である。オールト定数の重み付き平均
   A = 7.8 ±3.4 km/s/kpc
が導かれた。これは極端種族Iに対するものよりずっと小さいが、平均周期 250 日の Me 変光星の速度楕円体からの予想と一致する。 Se 変光星の微分銀河回転からその Mv = -3.4 が導かれた。これは Takayanagi の値と一致する。しかし、最近の統計視差からの値より明るい。

Eggen (1963) 
非常に明るい A 型星の光度、カラー、運動  
 B8 より晩期型で、(B-V)<0.3, かつ m(vis)<5.5 の星 750 個を 集めた。主系列にある B8 - A0 星は太陽付近の銀河中心と反中心方向に 100 pc に渡って広がるが、回転と半回転方向にはその半分以下の広がり しか持たない低減光領域の存在を示す。
 空間運動は A 型星は主に約6個の運動群を成すことを示す。色等級図上の 分布からは A 型星の進化は Ap 星と F 型星の領域を経て、ヘルツシュプ ラング間隙を通過して赤色巨星になるのであろう。

Fernie (1962) 
太陽近傍の星間吸収 
 太陽から1kpc 以内の星間減光は銀緯 l に関してサイン関数型であった。 その理由は太陽が大きさ 500 - 600 pc、密度が周辺の3倍のダスト雲の南縁 近くに埋もれているためであろう。
 P/E(B-V) も E(U-B)/E(B-V) も同じようなサイン曲線型変化を示す。 それから推察すると、偏光は銀河磁場の直接効果ではなく、また R=Av/E(B-V) もおそらくサイン曲線型の変化を示すのであろう。

Bok (1959) 
銀河系の腕構造 
 シグナス(lI = 40) から太陽を通り、オリオン (lI = 170 - 180) 方向に流れるオリオン腕に反対である。 シグナス(lI = 40) から太陽を通り、カリーナ(lI = 255) へ抜けるカリーナ・シグナス腕を提案する。  OB 星、セファイド、その他の若い種族 I 天体の分布を調べると、我々の 提案がデータの自然な解釈になっていることが判る。

Woolley, Eggen (1958) 
近傍星のカラー・光度アレイ 
 太陽から 20 pc 以内の星を集めた Gliese's Catalogue の星を使って、 カラー・光度アレイを作った。ただし、三角視差の測定が独立に2回以上行わ れた星に限定した。星を近銀点距離に従って分類した。  ほぼ円軌道の星のグループAはプレアデスのように比較的 "新しい" アレイ を示す。逆の極端集団 E+ は銀河中心近くまで侵入し、 M 67 的な "古い" アレイを示す。

Woolley 1958
太陽から 20 pc 以内 743 星の速度分布
 太陽から 20 pc 以内の 743 星の視線速度を Gliese のカタログから採り、 様々に解析した。それらの星の太陽に対する平均速度は u0 = 11 km/s, v0 = -17 km/s, w0 = -7 km/s である。 スペクトル型 M, K では、メディアン接線方向速度が視線速度のメディアンと較べると、 ランダムサンプリングで許される値より大きい。また接線方向速度分布は ガウス分布から外れていて、サンプルの重みが固有運動の大きな星に片寄って いることを指し示している。  星は銀河系公転軌道の離心率で分類された。離心率の小さな星の群れでは、 速度楕円体の頂角の方向は銀河中心方向から大きく外れていない。オールト 定数 A, B から求まる (B-A)/B = 3.1 である。銀河面に垂直な方向の速度分散 は銀河面上の離心率と明白な相関を示す。 星を質量毎にグループ分けした時、 (w-w0) の分散は一定である。つまり、エネルギー等分配は全く 存在しない。

Sanduleak (1957) 
天の川の透明 25 領域での M 型星の分布 
M 型星の銀経分布を調べた。M7 またはより晩期の星が円盤を形作り、その密度 は銀河中心距離と共に低下するという仮説を支持する結果が得られた。より早 期 M 型星も円盤種族を形成するだろうが、集団化の傾向も見られる。  太陽近傍での空間密度は 106 pc3 当たり、2 (≥M7), 3 (M5, M6), 24 (M2-M4) である。太陽近傍で ≥M2 星は星質量の 0.1 % を 占める。(早期 M 型星/晩期 M 型星)比は銀河中心方向に近づくに連れ減少する。

McCuskey (1956) 
光度関数の変動 VIII: まとめ 
 銀河系選択領域でのスペクトル型と写真等級を集めた 過去 10 年間の観測データをまとめた。太陽から 1 kpc 以内の銀河系構造 を表と図で表した。  B8 - A0 と B5 星については 2.5 kpc まで構造を調べた。星間物質の分布は 2.5 kpc まで調べた。光度関数の揺らぎは log φ(M) で 0.6 まで 上がる。銀経と距離に対する揺らぎの平均は van Rhijn と一致する。

Halliday (1955) 
分光視差から導いた G8 - K1 星の光度関数 
 G8 - K1 型の227星に対して 33 A/mm 分光観測を行い、 MK 分類と光度を求めた。  光度関数には準巨星の付近に著しい極小が見られた。分光視差 と空間運動を全ての星に求めた。24 星では銀河面内の速度が 65 km/s を越えた。

Morgan, Whitford, Code (1953) 
青色巨星の空間分布 
 O - A 型明るい巨星の分光視差を求めた。全部で 27 の恒星集団をカタログ化した。 集団は腕状に分布している。 内7つは l = 311° - 346° 太陽から 1400 pc に位置し、太陽と銀河中心 の間に横たわる腕の一部である。太陽が含まれる腕は、二つに分裂しているようだ。

Morgan, Shaplless, Osterbrock (1952) 
太陽近傍での銀河構造の特徴
太陽近傍の電離領域は帯状に分布している。 赤緯 -10$deg; より北では二本の狭い帯が存在する。近い方の腕は銀経 l = 40° から 190° 最も太陽に近いのは半中 心方向で 300 pc、 観測された長さは 3 kpc, 巾は 250 pc である。 第2の腕は銀経 l = 70° から 140° で第1の腕と平行で半中心方向距離 2 kpc に位置する。 銀河中心方向には 1.5 kpc のところに腕の存在の証拠がある。

Merrill 1941
長周期変光星の視線速度:第2論文
 マウントウィルソンで 206 長周期変光星の 618 スペクトルを撮った。 結果は表1に示した。152/206 星は初観測であった。これまでと合わせ 305 変光星の視線速度全てを表3に載せた。輝線と吸収線との速度差はかなり大 きくなるが、星の運動を調べるには吸収線を使用することを推奨する。 表3の 72 星では吸収線が直接測定された。残りの星は輝線速度に補正を 施して吸収線速度に直した。
 太陽運動の補正後の残差視線速度の平均は 36 km/s であった。この値は 短周期、早期型の星ほど大きい。周期との関係ははっきり見て取れる。 P < 300 の 152 星の内、 16 個は 100 km/s を越え、10 個は 80 - 100 km/s であった。一方、P > 300 の 152 星中 100 km/s を越すものはなく、 僅か2つが 80 - 100 km/s であった。平均速度は周期と共に下がり、P = 150 - 199 d の 27 星で 80 km/s が、P > 399 d の 35 星では 17 km/s となる。
 太陽運動の補正後、 305 星は向点 (α, δ) = (316, 50) で Vo = 31 km/s の集団運動を示す。残差速度の大きさで星を分けた時、25 km/s 以下の グループでは Vo = 4 km/s であるのに、残りのグループの Vo = 60 km/s と なある。同様の結果が星を変光周期で分けた時にも得られる。それに対して、 星を太陽からの距離で分けても Vo は同じくらいであった。集団運動と 散乱速度とのはっきり分かる関係は高速度の非対称性の良い例である。高速度星 の向点は、それらの星が太陽付近の銀河軌道上で天空上のどの方向に向かっている かを表す。この事実は速度非対称性は非常に小さい回転速度の星が示す効果である ことを示す。視線方向成分は例外的に大きい。
 1923 年に長周期変光星 133 個の視線速度を議論してから、多くの観測が現れた。 今や 282 Me + 24 Se = 305 星になったので再解析を行った。



円盤

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著者 内容

Drimmel et al. (2023)
GAIA DR3:天の川円盤の非対称構造をマップ化する  
 ガイアにより 33 M 星の位置と速度、470 M 星の物理量が、11 M 星の変光 が見つかった。物理量と変光情報から星をグループ分けし、天の川銀河円盤の 非軸対称な特徴を位置速度空間に見出す。高温 OB 星 580,000 個と 100 Ma より若い 988 の既知散開星団を用いて、 太陽から 4 - 5 kpc の位置にある 星形成を伴う渦状構造をマップ化した。年齢が 200 Ma より若い古典的セファ イド 2800 個の分布は外側円盤太陽から 10 kpc にある渦状構造を現わす。8.7 M の赤色巨星(RGBs)が見出されたが、その内 5.7 M 星は視線速度が得られて いる。それらから太陽から 8 kpc まで MW の速度場マップがえられた。  若い種族によって明らかになった渦状構造は EDR3 の距離測定と赤外測光 からの天体リストからの最近の結果と一致し、オリオン腕が少なくとも 8 kpc の長さを持つ事を示す。外側腕は HIIRs からの結果に合う。それはペルセウ ス腕の第3象限への延長のように見える。速度の得られた RGBs は内側円盤に おけるバーの運動学的特徴を明らかにした。また外側円盤の星流運動は渦状腕 かバーの力学共鳴かも知れない。近傍 OB 星の速度場を比較した結果は RGB サンプルと一致する点、異なる点を明らかにした。

Matsunaga + ? (2021)
太陽近傍にある円盤軌道を持つ低メタル RR Lyr 星  
 スケール高 1 kpc の厚い円盤内にあり、軌道が厚い円盤の運動と整合する RR Lyrae を発見した。この RRL 星は太陽から 1 kpc のところにあり、V = 11.3 mag で、これまでに知られた最も明るい 100 個の RRLs に入るが、 銀河面の真ん中 b = -1° にあるためこれまで殆ど調べられてこなかった。  その 0.91 - 1.32 μ スペクトルにはパッシェン系列以外の吸収線が殆ど ない。これは [Fe/H] < -2.5 を意味する。これは軌道が厚い円盤に属する RRLs のなかでは最も低メタルである。これは内側銀河における星形成に 重要な手掛かりを与える。

Kobayashi, Karakas, Lugaror 2020
元素の起源: 炭素からウラニウムまで 
 C(A=12) から U(A=238) までの安定元素全ての銀河系化学進化モデルを作っ た。その結果、元素の起源とその時間経過が分かった。太陽近傍では、もし 20 - 50 Mo のハイパーノバ(HNe)からの寄与が大きければ M > 30 Mo の 星は超新星にならない。低質量スーパー AGB 星からのハイブリッド WDs  が所謂タイプ Iax 型超新星として爆発しない、またはスーパー AGB 星が 電子捕獲型超新星 (ECSNe) として爆発しないなら、スーパーAGB星 (太陽 近傍では 8 - 10 Mo) からの銀河系化学進化への寄与は無視できる程度である。  第一ピーク元素 Sr, Y, Zr は ECSNe と AGBs で十分な量が作られる。 中性子星マージャーは急速中性子捕縛(r-過程)によって Th - U までの元素 を作ることができるが、低メタル量星での観測量を説明するにはタイムスケー ルが長すぎる。Eu に見られるような進化傾向はもし 25 - 50 Mo ハイパーノバ の 3 % が磁場ー回転型超新星となって r-過程元素を作るなら説明可能である。 太陽近傍の他にもハロー、バルジ、厚い円盤における進化傾向を予言し、将来 の観測との比較に備えた。

Gorski, Barmby (2020)
進化星大気と天の川渦状腕の相関
 HOPS 水メーザーサーベイとGaia DR2 をクロスマッチさせて、水メーザー 源の位置分布を調べた。同時にカラーから C, M 分類も行った。C-リッチが 半数以上という変な結果だが、特にコメントはない。Gaia データの非対称 距離確率分布に対し、モンテカルロ法で実現距離(と位置)の分布を実験し、 Valee08腕モデルにより決めた腕領域か腕間領域かを判定した結果、水メー ザーの配置は腕間領域に多いという結果を得た。

Nogueras-Lara, Schodel, Gallego, Dong, Shahzamanian, Girard, Nishiyama, Najarro, Neumayer (2019)
GALACTICNUCLEUS: 高角分解能 JHKs 銀河中心サーベイ II. 第1データリリース 
 GC の NIR サーベイ= 2MASS, UKIDSS, VVV, SIRIUS の角分解能は GC の 込み具合を扱うのに必要なレベルに達していない。ここで 0.2" 分解能の JHK サーベイ GALACTICNUCLEUS を報告する。  GC 0.3 deg2 の JHKs 測光を行い、 3.3 106 個中、 J で 20 %, H で 65 %, Ks で 90 % を検出した。5σ で J = 22, H = 21, Ks = 21 mag である。J = 21, H = 19, Ks = 18 で精度は 0.05 mag である。

Haywood, Snaith, Lehnert, Di Matteo, Khoperskov (2019)
昔からの天の川銀河問題再訪:外側円盤としての太陽近傍 
 広い範囲での拘束条件を考慮して、G-矮星問題を解決する、太陽近傍化学進 化の筋書きを提案する。 R < 10 kpc の円盤は巨大乱流ガス円盤から形成 された厚い円盤で、大質量星により太陽メタルまでメタル量増加が進んだ。R ≤ 6 kpc の内側円盤は宇宙年齢(?)7 - 10 Gyr での星形成停止期の後に メタル量増加が続いた。より遠方の領域では、厚い円盤の星形成活動後に残さ れたガスを、7 - 8 Gyr 昔に、動径方向のガス流(降着?)が希釈する。こう して、別々の化学進化を経ることにより、円盤は内側円盤と外側円盤とに分か れた。キーとなる考えは、厚い円盤によるメタル量の事前増加は、以前の内側 から外側モデルで想定されているような太陽半径におけるこの成分の比率に関 連しているだけではなく、形成期に存在した活発なガスの混合による完全な厚 い円盤にかんけいしているということである。だから、厚い円盤種族が表面密 度の 15 - 25 %, または太陽近傍での 5 - 10 % を占めるということでは G- 矮星問題を解くには不適切である。  この筋書きが上手く働くには、乱流ガス円盤から動径方向に一様なメタル分 布を持つ厚い円盤が形成され、太陽円付近が太陽メタル量になったことを認め る必要がある。太陽円では厚い円盤形成後に残された太陽メタル量のガスに、 外側円盤から流れ込んできたガスが一体となり、G-型矮星問題を解くのに必要 なメタル量の薄い円盤を形成した。 R > 6 kpc、特に太陽円を超えた向こう 側での化学進化は同じシナリオで説明される。外側からのガス流はバーの形成 とそれに伴う外側リンドブラッド共鳴が外側円盤の低メタルガスを R = 6 kpc (損頃の共鳴点位置)まで内側に流し込んだためにメタル量希釈が生じたので あろう。この共鳴は同時に内側円盤を外側から隔てて孤立させた。これらの結 果は太陽近傍のメタル量分布は天の川銀河のガス降着史と結びつかないことを 意味する。最後に、太陽は希釈を経験した 6 kpc より外側円盤に典型的な星で あり、内側円盤の特性は備えていない。
Buder + 33 (2019)
GALAH サーヴェイ:TGAS による太陽近傍星の元素組成、年齢、運動の調査 
 7066 の矮星、ターンオフ星、準巨星を選び分光解析した。Gaia と GALAH 視線速度から運動速度を得た。質量と年齢は、 星パラメターと絶対等級からベイズ当時線フィットにより求めた。 年齢、[Fe/H], [α/Fe] 間の相関を調べ、高アルファ系列の星は一般に 低アルファ星より古いという結果を再確認した。  低アルファ系列星は [Fe/H] = [-0.7, +0.5] に分布する。[Fe/H] - [α/Fe] 面上で二つの系列は高メ タル領域で融合する。しかし、年齢を使うとこの領域でも二つの系列を分離 出来る。サンプルを年齢で分けると、古い星(> 8 Ga) は角運動量 Lz が太陽より低いと分かった。それらの星は離心率の大きな軌 道を描き、内側円盤から来ている。(理由?)以前のより小規模な研究とは 逆に、高アルファ系列の進化に裂け目はなく、連続にスーパーソーラーまで 進化することが判った。10 Ga より若い星は主に低アルファ系列に見出され、 低メタルで Lz > Lo, z から 高メタルで Lz < Lo, z へ変化する。 この系列の最後にある星が太陽近傍領域から来たのではないことを意味する。 ( Lz の話、合ってるか? )

Noguchi (2018)
天の川銀河の低温降着流と化学的双峰性 
 α 元素と鉄との存在比 [α/Fe] は、それらが異なる種類の超新 星を起源とするために、銀河形成の診断に有用である。太陽近傍の星に二種類 の元素比、一つは高 [α/Fe], 一つは低 [α/Fe], が存在すること はそれらが異なる起源を持つ事を示唆する。しかし、この双峰性が何に起因す るかは不明である。形成途上銀河に始原ガスが降着するという説が最近提案さ れている。我々は、この低温降着流仮説によると 6 - 7 Gyr 昔を境として、 二つの星形成活動があり、自然に元素の双峰性が説明されることを示す。  第1星形成活動は元々の冷たい始原ガスが銀河円盤に自由落下することで引き起 こされる。この時期の星は高 [α/Fe] を持つ。 第2星形成活動は第1星形成活動で一度加熱されたガスが、放射冷却 でユックリと冷えるにつれて第1期よりずっと遅い降着流となることが原因であり、 低 :α/Fe] が特徴である。低温流仮説はまた、銀河系における元素存在比の 場所による大規模変化を降着の歴史の差として説明する。

Haywood, Di Matteo, Lehnert, Snaith, Fragkoudi, Khoperskov (2018)
天の川銀河内側円盤とバルジの系統学 
 MW R ≤ 7 kpc のバルジと円盤が単一の化学進化と二期の星形成活動で 上手く記述できることを示す。内側円盤の種族は一つであり、バーの外側リン ドブラッド共鳴(OLR) がこの一様性を説明する鍵である。我々の二期星形成モ デルでは、メタル量、[α/H], [α/Fe], 年齢-メタル量関係が全て 内側円盤とバルジの観測に一致する。バルジと内側円盤のメタル量分布におい て、[Fe/H] = 0 dex 付近に現れる窪みは内側円盤の星形成史で年齢 8 Gyr に 起きた星形成活動の一時停止と、バルジと内側円盤星の共通進化を反映する。 内側円盤 R ≤ 7 kpc に対する我々の結果は, 銀河系総バリオン質量の大 きな割合が数ビリオン年で急速に構築されたという考えに合う。  z ≤ 1.5 の頃、銀河系の星形成が停止し始め、高 α 厚い円盤 形成の終了から薄い円盤の開始に切り替わり、未だ円盤はガスが豊富な時代に ガス降着は強くはあり得なかった。この降着停止期の前後で [α/Fe] は 異なるであろうが、観測では未確認である。z ≤ 2 における降着率とガス 量比率の低下は、円盤を安定させ、厚い円盤から薄い円盤への転移を許し、天 の川銀河のゆっくりした進化の開始をもたらす。恐らくこれが恒星バーの発達 を可能とし、我々はそれが星形成の停止につながったと仮定する。 今回の解析は天の川の歴史、特に厚い円盤から薄い円盤への転移と星形成の 一時停止は星形成効率の低下により駆動されたに違いない。ガス降着の低下、 バーの形成、星形成停止が同じ時期に起きたことは互いに因果関係で結びつき、 それで同時に発生したのである。貯蔵ガスの 20 % が分子であると仮定すると 我々のモデルはシュミットケニカット関係に上手く乗る。

Rezaei, Bailer-Jones, Hogg, Schultheis (2018)
ダスト 3D マッピングから検出される天の川の渦状腕  
 測光と分光データに星距離を組み合わせると3Dダストマップが作れる。 SDSS と APOGEE DR14 を用いて、太陽から 7 kpc, 銀河面から 100 pc 以内の ダスト分布を求めた。累積物理量でなく局所物理量であるダスト分布を導く 方法にはガウシャンプロセスに基づいたノンパラメトリック法を採用した。  この方法は、3D 空間内の点の間でダスト相関(?) をモデル化し、事前に定 める関数形に拘束されず任意の形の変化を捉える。結果として得たマップは 渦状腕らしき特徴が見られた。これは何の仮定も置かずに、ダスト分布に腕 構造を見出した最初の例である。マップには既知の大きな分子雲が見え、 それらの幾つかは距離が不定であった。


Nogueras-Lara + 11 (2018)
GALACTICNUCLEUS: GC の高角分解能 JHKs サーベイ
 HAWK-I/VLT による、分解能 0.2" の JHKs サーベイを SgrA* の周り 7.95'x 3.43' で行った。短時間露出とスペックル・ホログラフィ・アルゴリズムにより、 PSF 0.2" FWHM 像を得た。位置較正は VVV, 測光較正は SIRIUS により行った。 5 σ 限界等級は J 22, H 21, Ks 20 等であった。測光精度 0.05 等が J 20, H 17, Ks 16 等まで保証される。  CMD 上に5つの特徴が見えるが、その 3つは渦状腕らしい。残り二つは GC の高減光と低減光の恒星集団であろう。 減光マップは銀河中心領域で ISM がムラムラであることを示す。JHKs の減光 がべき指数 αJHKs = 2.30±0.08 でよく表される。 この値が視線に沿って変わる、または減光深さで変わる証拠はない。赤化補正 した CMD は星の大部分は太陽メタルかそれ以上であることを示す。

Gonzalez, Minniti, Valenti, + 8 (2018)
 VVV RC が示す銀河系バーの背後にある構造
 VVV カタログを使い、 l = [-10, 10], b = [-1.5, 1.5] で高空間分解能の 減光マップを作った。それらを使い赤化補正したカタログで、銀河面レッドク ランプの周りで Ks 光度関数を作った。主ピークより暗い第2ピークが見つか った。それらは依然考えられたバルジの RGB バンプだけでは解釈できない。  この暗い第2ピークは主にバーの向こう側にある渦状腕構造に対応する。 この結果はバルジ RGB バンプの特性を研究する際には |b| < 2 領域を 避けるべきであることを示す。そこでは背景のレッドクランプ種族が大きな コンタミを生むからである。
(LF の RGB が2次式で表される 保証はないので、その揺らぎが第2ピークとその怪しげな銀経変化を 生み出した可能性が否定できない。ここで止め。 )

Contreras Pena, Lucas, Minniti, Kurtev, Stimson, Navarro Molinam Borrisova, Kumar, Thompson, Gledhill, Terzi, Froebrich, Caratti o Garatti (2017a)
 VVV が見出した噴火型変光原始星種族
 VVV 119 deg2 サーベイから ΔKs > 1 mag の大振幅 変光星を検出した。ほぼ全ては新発見であり、約 50 % は YSOs である。 これは銀河面内にあっては、 YSOs が高振幅変光星の中でもっともありふれた 種族であることを証明する。YSO と思われる天体の 2010 - 2014 年データを 用い、進化の若い段階、クラス I と平坦スペクトル天体、へ行くほど、 変光振幅が増大することを見出した。ただし、短時間 (< 25 d) 事象に 関してはこの傾向が逆転する。  変光曲線を分類し、 106 噴火型、45 ディッパー、 39 フェイダー、24 食 連星、 65 長周期変光星 (P > 100d)、162 短周期変光星を見出した。 噴火型とフェイダーは振幅が大きく、噴火型は SED が最も赤い。続く論文で、 噴火型の降着率が最大であることを示す。今回の観測で噴火型 YSOs の数が 5 倍に増えた。それらは既知の FUors や EXors より進化早期にあり、 クラス I での存在率はクラス II より一桁高い。噴火の継続期間は 1 - 4 年 で、 EXors と FUors の中間である。4 年間という期間中にはクラスI YSOs の 3 - 6 % で噴火が観測された。

Veneziani + 22, 2016
ハーシェル Hi-GAL サーベイによる星形成の解析 II.
銀河系長いバーの先端
 Hi-GAL による l = [19, 33], [340, 350], b = [-1, +1] サーベイからの、 長い銀河系バーの先端領域における星形成クランプの性質を調べた。新しく生 まれた大質量星と大質量原始星を同定した、それらの性質を調べた。 遠い側のバー先端で NANTEN CO(1-0) で見つかった5つの巨大分子雲複合体を 研究した。
 大質量の乱流塊が星団へと陥落する時期に形成されると予想される原始星の 数から星形成率を評価した。そして、与えられた初期乱流塊の可能な最終配置 から原始星の数を予想した。乱流核にモンテカルロ法を適用する新しい方法を 開発し、陥落の間に作られる天体の多重性も配慮した。
 第1象限先端での星形成率は 1.2 10-3 Mo yr-1 kpc-3、第4象限先端での星形成率は 1.5 10-3 Mo yr-1 kpc-3 である。視野全体での平均値は 0.9 10-3 Mo yr-1 kpc-3 と 0.8 10-3 Mo yr-1 kpc-3 と である。変換効率は第1象限で 0.8 %, 第4象限で 0.5 % であり、特に バーの近くで変化しない。CO 等高線から決まった、第4象限バー先端での 星形成域は周囲領域より高い星形成と星形成率を示す。しかし、その変換 効率は似たような値である。
 バー先端部は前景、背景部に比べて高い星形成率を持つ。しかし、変換 効率は観測領域全体で変化がなく、バーにおける星形成活動はダストと分 子量が多いためであり、特別な加速機構が働いているわけではないことを 示す。

Messineo, Zhu, Menten, Ivanov, Figer, Kudrizki, Chen (2016)
内側銀河における異常に多数の赤色超巨星の発見
 Q1 と Q2 を使い、2MASS と GLIMPSE North カタログから選んだ RSG 候補 94 個の H-, K-バンド R/1000 赤外分光観測を行った。水吸収が強くなく、 EW(CO) が大きい 58 個 = 61 % の RSGs を同定した。   47 個の距離をレッドクランプ法で決定した。
Hayden et al 2015
APOGEE による化学地図学:天の川円盤のメタル量分布関数化学構造
 SDSS-III/APOGEE DR12 からの 69,919 赤色巨星を用い、 R = [3, 15] kpc, |z| < 2 kpc 銀河面内かってない体積での, [α/Fe] - [Fe/H] 面上 分布とメタル量分布関数を測った。内側円盤(R < 5 kpc) の星は、高アル ファ低メタルから始まり [α/Fe] = 0, [Fe/H] = 0.4 で終わる一本の [α/Fe] - [Fe/H] 系列をなす。より大きな半径では、[α/Fe] - [Fe/H] 空間に二本の系列が現れる:一本はほぼ太陽アルファでメタル量は一桁 の広がりを示し、もう一本は高アルファ系列で超太陽 [Fe/H] で低アルファ系 列と合体する。  高アルファ系列の位置は円盤全体で一定である。しかし、R > 11 kpc に は高アルファ星が殆どない。円盤中央面 MDF のピークは R が大きくなると、 銀河系メタル量勾配を反映して、低メタル側に移動する。最も驚くべきは、 中央面 MDF の形が R と共に系統的に変わって行くことである: R = [3, 7] kpc では負方向に片寄った分布だが、太陽円環付近ではガウシャン型となり、 外側円盤で正方向に片寄った分布となる。|z| > 1 kpc または [α/Fe] > 0.18 では、MDF は R に依らず一定である。外側円盤 MDF が正方向に片 寄るのは動径移行 (migration) の標しかも知れない。軌道離心率は星種族のぼ やけを」説明するには不十分であるが、動径移行の単純なモデルで説明できる ことが判った。

Wegg, Gerhart, Portail 2015
天の川バルジ外側バーの構造
 銀河系バーが銀河面でどのような構造を有しているかは不明である。 バルジ外側の銀河系バー=ロングバーを UKIDSS、2MASS, VVV, GLIMPSE からの レッドクランプ星を用いて調べた。これ等のサーベイを合体して、|b| < 9, |l| <: 40 のデータを得た。解析の結果、
(i) |b| = 5 でバーは l = 25 まで伸びている。もっと低銀緯では l = 30 まで。
(ii) ロングバーの方位角は 28 - 33 の範囲で、|b| < 10 で測ったバルジ の角度と整合する。
(iii) レッドクランプ星のスケール高はバルジからロングバーへ滑らかに移行する。
(iv) ロングバーには二つのスケール高が併存する証拠がある。一つは 180 pc の 薄いバー成分であり、太陽付近での古い薄い円盤成分とよく似ている。もう一つは 45 pc の非常に薄いバー成分で、バーの端付近に集中する。
(v) レッドクランプ等級分布のパラメトリックモデルを作り、2成分バーの 半値長(?)として 5.0±0.2 kpc, 薄いバーのみでは 4.6±0.3 kpc を得た。銀河系のボクシー/ピーナッツバルジはもっと長くて平たいバーを 伴い、これは銀河の観測やシミュレーション結果と合致する。

Schultheis, Chen. Jiang, Gonzalez, Enokiya, Fukui, Torii, Rejkuba, Minniti (2014)
銀河系バルジを高分解能でマップする:3D減光マップ、CO と X-ファクター  
 VVV + ブザンソンモデルから、l = [10, -10], b = [-10, 5] の 3D 減光マップを作った。最近開発された色超過を用いる方法を用いる。 第1に Ks-(H-Ks) と Ks-(J-Ks) CMD を VVV から作る。第2に、M-型星の 温度 - カラー関係と距離 - カラー関係を用いて、減光 - 距離関係を 導く。観測されたカラーを距離の関数として、ブザンソンモデルから決まる 固有カラーにずらすには逐次近似の方法を使う。この結果、 3D 減光マップ が得られる。
 全 VVV 領域で、角分解能 6×6 , 距離区画 0.5 kpc の E(J-Ks) と E(H-Ks) 3D 減光マップを作った。距離は 10 kpc, 減光は Av = 30 mag に達する。マップはバーの前面に多くの物質が 存在することを明らかにした。特に 5 - 7 kpc に多い。我々は減光マップを NANNTEN2 の CO 観測と較べた。その結果 Av と CO の良い相関が確認された。 両者から X ファクターを X = 2.5±0.47 × 1020 cm-2 K-1 (km/s)-1 と定めた。
(年齢データなしに「古い」、「若い」 と言っているのは解析姿勢が甘い。年齢の重要性を痛感する。)

Sato, Wu, Immer, Zhang, Sanna, Reid, Dame, Brunthaler Mnten (2014)
スキュータム腕内大質量星形成領域の三角視差 
 スキュータム腕内の HMSFRs 6個の三角視差を測った。その結果 l = [5, 32] の視差付き HMSFRs の総数は 16 になった。全て BeSSel サーベイの結果である。 対数螺旋を仮定したピッチ角=19.8°±3.1° である。  このピッチ角は他の腕より大きい。これはバーの力学効果のためかも知れない。 平均特異速度は銀河回転より 4 km/s 遅く、銀河中心方向に 8 km/s 向かっている。 この日線形運動の方向は他種天体で得られたものと同じであるが、GC 向きの速度 が大きい。

Wu, Sato, Reid, Moscadelli, Zhang, Xu, Brunthaler, Mentel, Dame, Zheng (2014)
サジタリウス腕内大質量星形成領域の三角視差 
 VLBA による BeSSeL サーベイの一環としてサジタリウス腕の 10 大質量星 形成域の三角視差と固有運動を測った。これらのデータを文献から採った他の 8天体データと合わせて、銀河中心経度 β = [-2, 65] 区間での腕の構造 と運動を調べた。  腕のピッチ角= 7.3° ±1.5°, フィットした腕からのズレの rms 偏差として決めた腕の半巾=0.2 kpc, サジタリウス腕の太陽からの最短距離 = 1.4±0.2 kpc である。隣あう腕と異なり、サジタリウス腕の天体には 銀河回転に対し反対向きの大きな特異運動はなく、逆に銀河回転より 10 km/s 速い。

Hou, Han 2014
観測から定めた天の川銀河腕構造
 銀河系渦状腕構造の研究には追跡天体の数と距離精度の向上が欠かせない。  HIIR, 巨大分子雲、6.7 GHz メタノールメーザーは良い追跡天体である。 それらの距離は三角法、測光法、運動学により決められ文献から得られる。 我々はそれらのカタログを新しくした。  我々は HIIR 2500 個、巨大分子雲 1300 個、メタノールメーザー 900 個の データを集めた。測光距離または三角視差が得られない場合には運動距離を 求めた。銀河系回転曲線には Ro = 8.5 kpc、Θo = 220 km/s の IAU 値 を使用した。 また、追跡天体の速度を太陽運動で補正した後、最新の値、 Ro = 8.3 kpc、Θo = 239 km/s で運動距離を求めた。
HIIR の励起ファクター、または巨大分子雲の質量で重みをつけて、それら追跡子 の銀河面分布を求めた。  追跡子分布は第1象限に少なくとも4本の腕の一部を示し、第4象限には 3本見い出された。ペルセウス腕と局所腕は、また多くの明るい HIIR に よってもなぞられた。大質量星形成領域と巨大分子雲で追跡された腕部分は 外側銀河系の HI 観測と合わせられた。3本と4本の対数渦状腕モデルが大 部分の渦状腕追跡子をつなげることが分かった。

Minchev, Chiappini, Martig (2014)
天の川円盤の化学動力学進化2.銀河半径と高度による変化
 Minchev13 では太陽近傍を中心に研究した。今回はさまざまな R での化学 進化を調べ、現在進行中および将来の観測で発見されるべき特徴を求める。 運動学的加熱と動径移行の効果を分離して、移行の方が重要であることを示 した。星誕生のガイド半径と最終ガイド半径の分布は古い星ほど広がる。 その結果年齢-メタル関係は太陽より外側では著しく平坦になる。色々な半径 でのメタル分布はどこでも -0.15 dex がピークになる。低メタル端は -1.3 dex までのびる。これに反し、高メタル端は半径と共に下がって行き、平均 メタル量が半径と共に下がる原因となる。  同様に、[Mg/Fe] 分布はどこでも 0.15 dex がピークとなる。その低値端は R が大きくなると消える。逆に高端は 0.45 dex で消える。 R-[Fe/H]、R-[Mg/Fe] 関係は円盤高度 Z により大きく変化する。R-[Fe/H] 勾配は負から僅かな正へ( R = 10 kpc で)と、R-[Mg/Fe] 勾配は正から負へと 銀河面高度と共に転換する。これは(i)円盤面近くで若い星が、離れると古い星 が多く、(ii)古い星ほど集中度が高く, (iii) フレアリングとエラーの効果である。 動径移行は「内から外」円盤形成には勝てない。

Minniti, Saito, Gonzalez, Zoccali,+9 (2014)
VVV による銀河系の人口統計学 III.グレートダークレーン  
 VVV サーベイの 157 M 星赤外測光を用いて、バルジ内のダスト雲の大規模分布を 解析した。我々はバルジの CMD を調べ、レッドクランプ星のカラーが二つに 分かれることを示した。カラー差の平均は Δ(Z-Ks) = 0.55 である。 これは Av = 2 に相当する。  我々は l = [10, -10] にかけて銀河面の上下、中間銀緯帯に光学的に厚い ダスト帯があると結論する。我々はそれを "Great Dark Lane" と呼ぶ。その 距離はまだ不定であるが、バルジ前面にある。このダークレーンは銀河系の バーバルジ構造を考える際に重要な拘束である。マイクロレンズィングと 星種族への影響も論じる。

Lehnert, Di Matteo, Haywood, Snaith (2014)
高 z 銀河としての天の川:銀河における厚い円盤形成の重要性
 天の川銀河の星形成史を遠方の円盤銀河と比較した。進化の初期 4 - 5 Gyr の間に天の川は星形成率 ΣSFR = 0.6 Mo yr-1 kpc-2 という激しい星形成を行い、その結果星間空間に流れと強 い乱流を作り出した。この強い星形成期が厚い円盤の形成に対応し、 z = 1 までに全星質量の約半分を作り出した。これは組成マッチから選びだされた 「MW 前駆銀河」と似た状況である。  この一致から、厚い円盤の形成は円盤銀河一般の進化段階と考えられる。1 次元速度散布度と星形成強度の間に単純な注入エネルギー - 運動エネルギー 関係を適用すると、天の川の垂直方向速度散布度の時間変化を導き出せる。 この関係から推測される進化は z = 0 -3 の銀河での観測に一致する。強い星 形成活動が生み出す乱流が、厚い円盤、化学的に一様な星間物質を産み出す。

Snaith, Haywood, Di Matteo, Lehnert, Combes, Katz, Gomez (2014a)
天の川星形成が最も強い時期に厚い円盤ができた
 古い星の化学組成を使い、天の川の星形成史を初めて確実に測定した。厚い 円盤の形成は 9.0(z=1.5) - 12.5(z=4.5) Ga に起こり、その後 z = 1.1 に約 1 Gyr 続く星形成停止期を迎えた。厚い円盤の質量は薄い円盤と同程度に大 きい。  この結果は、この時期の銀河系内に大量のガスが存在したことを意味する。 これは過去20年間化学進化モデルで仮定されてきた、長期にわたる降着に 対立する。これらの結果は早期宇宙における円盤銀河の進化で最近現れて きた特徴とも良く合う。

Churchwell, Benjamin (2013)
星計数と銀河系の構造
 銀河系円盤面では最近の赤外サーベイにより以前は知られていなかった数千万の天体が カタログ化された。この劇的増加の原因は、感度増加、分解能向上、減光低下の3つが 考えられる。それらの制限に応じ、異なる観測は異なる要素、バルジ、円盤、バー等 に敏感になる。  それらの観測の拘束とモデルを理解して、銀河系パラメタ―の解釈に必要である。 様々な探査観測を探り、最近の成果を議論する

Minchev、Chiappini, Martig (2013)
銀河系円盤の化学動力学進化 I. 太陽近傍
 円盤の化学進化モデルと銀河円盤のシミュレイションを合わせるという新し い方法で円盤の化学動力学進化を研究する。この方法はシミュレイションで起 きる星形成と化学組成増加の問題を避けることができる。ここでは、宇宙論的 な枠組みの中で、銀河系を扱う。その場での元素生成と動径移行が太陽近傍に もたらす影響を調べた。高 z 時代のマージャーからの動径移行と後期のバー の影響の結果、低メタル高アルファの星が多数太陽近傍に来たことが判った。 これは最近の観測を自然に説明する。  強い動径混合が生じるが年齢-メタル関係の勾配は分散以外ではあまり影響を 受けない。Ro = 8 kpc として、太陽は R = [4.4, 7.7] kpc で生まれた可能性 が強い。厚い円盤の新しい統一モデルを提案する。そこではマージャーと動径 移行が大きな役割を担う。初期に強いマージャーがなかったら、最古星の垂直 速度散布度は観測の半分となってしまう。従って、厚い円盤が静かな円盤進化 から生まれることはなさそうである。

Fourtune-Ravard, Babusiaux, Gomez (2013)
銀河系の減光マップ:モデル非依存法 
  これまでの天の川3D減光マップは全て、例えば Marshall et al. 2006 のように、モデルとデータの比較に基づいていた。ここでは モデルに依らず減光マップを作る方法を提案する。 我々は CMD 上でレッドクランプ系列を識別するアルゴリズムを開発した。 これにより、距離ー減光関係を視線に沿って導いた。2MASS と UKIDSS データを用いて詳細な 3D 減光マップを作った。

Xu, Li, Reid, Menten, Zheng, Brunthaler, Moscadelli, Dame, Zhang 2013
銀河系局所渦状腕の性質
 VLBA を用いた BeSSeL 計画の一つとして、局所腕の水メーザー視差の観測が 行われた。他の 21 観測を文献から集めて、今回の結果と合わせると腕内の SFRs の3次元分布と運動が明らかになった。我々の結果は局所腕は短い棘(Spur)に特 徴的な大きなピッチ角を持たない事を示した。  その活発な星形成活動、5 kpc を越す長さ、約 10° のピッチ角は局所腕 がペルセウス腕かサジタリウス腕の枝(branch)であることを示唆する。我々の結果はこの 腕がペルセウス腕により近いことを示す。GC 方向と北銀極方向の平均特異運動は ゼロに近く、約 5 km/s の反回転速度を示す。これは他の主要渦状腕にも共通な 特徴である。

Dame 2013
天の川銀河系腕構造の現在の展望
 60 年前に HI 21-cm サーベイが完成した時、皆すぐに天の川銀河の正面図 が手に入ると思った。我々は未だに待ち続けている。HI の信用できるマップ は今でも (l, v) 図だけである。30 年前に CO 観測が完了した時にはかなりの 進歩があった。しかし、運動距離の誤差の大きさのため正面図へ辿り着くことは 出来なかった。  新しい21cm干渉計が新しく発見された数百の HIIRs と母分子雲の遠近距離 分離に使われつつある。さらに VLBI による三角視差測定が数百のメーザー源に 対して行われつつある。約 100 の予備的成果がまもなく発表されるであろう。
 我々の渦状腕を選り分ける能力が向上するにつれて、構造自体が以前に 想定されていたよりは単純なのではないかという見方が浮上してきた。 近赤外観測は銀河系バーがかなり強力であり、さらに支配的な腕は二本で あることを示唆している。それらは 盾座ーケンタウルスとペルセウスである。  二本腕のより直截な証拠は遠 3 kpc 腕の発見である。これは近 3 kpc 腕 と運動、構造の点で著しい対称性を示している。  さらに、盾座ーケンタウルス腕の遠い延長として、アウターアームの外側 に、近傍ペルセウス腕の対応腕が同定された。

Sakai 2013
VERA で見えてきた銀河系ペルセウス座腕の構造と非円運動
 天文月報。2013年5月号記事。VERA によりペルセウス座腕メーザー源に 円運動からの系統的なズレが検出された。銀河系非軸対称ポテンシャルの表れである。

Immer, Reid, Menten, Brunthaler, Dame 2013
大質量星形成域 G0123.88+0.48 と W33 の三角視差
 BeSSel プロジェクトの一つとして、  G012.88+0.48 と大質量星複合形成域 W33 (G012.68-0.18, G012.81-0.19, G012.90-0.24, G012.90-0.26 を含む)内の水メーザーの三角視差を測った。  全てのメーザーは距離 2.60+0.17-0.15 kpc で W33 と G012.68+0.48 の両方 がスキュータム腕にあることが分かった。W33 の運動距離 3.7 kpc は大き過ぎた。 W33 Main 内の星団星のスペクトル型は 1.5 ポイント晩期へずらす必要がある。


Amores, Lopez-Corredoira, Gonzalez-Fernandez, Moitinho, Minniti, Gurovich (2013)
VVV サーベイが見たロングバー II. 星計数
 内側銀河系のロングバーに関しては未だにその存在や形状に関する論争が 残っている。我々は VVV サーベイを用いて、星計数を 2MASS より 3 等深く してロングバーの形状を探った。我々の探査はこれまであまり研究が及んでい なかった負銀経領域をカバーしている。  l = [0, -20] b = [-2, 2] 領域を VVV, 2MASS, GLIMPSE データで星計数を 行った。そこに平均星間減光を適用した。また銀緯プロファイルを用いて、 中心位置の変動とバーの厚みを調べた。
 ロングバーの構造を l = -14 の遠方端まで調べた。減光補正なしとありとで の星計数の差から粗い減光マップを作製し、星間減光の強い領域を同定した。そ れらは主に、銀河系バーの向こうである。銀緯プロファイルは中心が縦に変動し、 l = -13.8 で最小になることを示した。バーの軸角は α = 43±5 である。バーの厚み、長さ、星分布も調べた。


Haywood, Di Matteo, Lehnert, Katz, Gomez (2013)
天の川の2相星形成史の手がかり
 太陽近傍にあり、元素組成が良く決まっている星を調べた。[α/Fe]- 年齢面上に二つのはっきり分かれる分布を示す。それらは厚い円盤と薄い円盤 の種族である。[Fe/H] および [α/Fe] と年齢とのきつい相関が厚い円 盤星に認められる。これはよく混ぜられた星間ガスこの種族が 4 - 5 Gyr か けて形成、初期には爆発的星形成その後はより静かに、されたことを意味する。 厚い円盤星の最も若いグループは円盤種族と同じくらいの小さなスケール高を 示す。この二つから導かれる自然な結論は、厚い円盤星には垂直方向のメタル量 勾配があることである。我々の考えでは、厚い円盤の最も若い星たちは、8 Gyr 昔に、内側薄い円盤の形成が始まる初期条件を用意したのである。その時の [Fe/H] は (-0.1, +0.1) の範囲であり、[α/Fe] = 0.1 dex であった。 この考えはまた、薄い円盤のメタル量が R = 7 - 10 kpc で階段状に変化する 事実と、厚い円盤が R < 10 kpc に限られる事との一致を説明する。  我々の考えでは、外側薄い円盤は厚い円盤の影響が及ぶ半径の外側で発達し、 独立な構造を持つのであるが、同時に、厚い円盤が形成される際に放出された ガスによって始原ガスが汚染された結果高い [α/Fe] を持つようになった。 太陽近傍の低メタル薄い円盤星 ([Fe/H] < -0.4) はそれらが外側円盤で生 まれたと考えると最もうまく説明されるのだが、それらの年齢は最も若い厚い円 盤星の 9 - 10 Gyr と同じである。これは、外側薄い円盤が形成し始めた時に、 厚い円盤はまだ内側円盤で星形成を継続していたことを意味する。 このように、内側厚い+薄い円盤は異なるスケール高を持つ二つの成分からなり、 その結合は内側から外側への形成過程を示すかのように見えるのだが、薄い円盤 自身は多分その最初の星を外側部で作った。その上、指摘したいのは、厚い円 盤のきつい [Fe/H], {α/Fe] − 年齢関係を考えると、内側から外側形成 モデルは厚い円盤において α 元素とメタル量の銀河系中心距離による 勾配を生む。しかしこれは観測されていない。最後に、我々の結果からは動径 方向の星の移住による太陽近傍星の汚染は考えられない。

Cheng + 10 (2012)
天の川銀河内の高 α 厚い円盤の短いスケール長
 SEGUE = Sloan Extension for Galactic Understanding and Exploration によって観測された、 R = 6 - 16 kpc, |Z| = 0.15 - 1.5 kpc の 5620 星 の [α/Fe] を調べた。その結果、高 α 厚い円盤種族は短いスケ ール長 1.8 kpc を有すことが判った。内側円盤中での高 α 星の比率は |Z| 大領域で増加する。高 α 星は低 α 星と較べ回転速度が小 さい。  反対に外側円盤では高 α 星の比率は全ての |Z| で低く、高 α 星と低 α 星は |Z| < 1.5 kpc では同じ回転速度を持つ。この結果は 高 α 星は内側円盤と外側円盤とで異なる形成作用を経てきたことを示す。 内側円盤の高 α 星は短いスケール長と大きなスケール高を有す。これは 厚い円盤は初期のガスに富んだ降着期に形成されたというシナリオに合う。外 側円盤の高い Z を持つ星はマイナーマージャーの加熱によりそこに運ばれたの であろう。R と |Z| の大きな領域に高 α 星がないことは渦状腕による 移行(migration) に制限をつける。

Adibekyan + 7 (2012)
HARPS GTO 惑星探査プログラムからの 1111 FGK 矮星の化学組成
 1111 FGK 矮星の Na,Mg, AL, Si, Ca, Ti, Cr, Ni, Co, Sc, Mn, V 組成を解析 した。サンプルは HARPS GTO 惑星探査プログラムから採った。109/1111 は巨大 惑星を宿し、26 はnptunian と super-Earth を宿す。論文の目的は、(1)星種 族が異なった時に元素組成の傾向に差が生じるのか、(2)それらの [X/H] により 惑星宿主星と非宿主星を特性付けることである。  HARPS スペクトルの等値巾はARES コードにより自動的に測定される。スペク トル解析プログラムMOOG と ATLAS9 大気グリッドにより [X/H] を定めた。星種族 の分離には運動学的方法と化学的方法を使用した。Mg, Si, Ti により化学的に薄 い円盤と厚い円盤を分離した結果は Na, V, Ni, Mn でも同じ結果をもたらすことが 判った。 Na, V, Ni, Mn ははっきりしない。

Bovy, Rix, Liu, Hogg, Beers, Lee (2012)
単一元素組成星による銀河系円盤構造
 SDSS/SEGUE から選んだ 23,767 G-型矮星分光サーベイデータを用いて、銀 河系円盤の [α/Fe], [Fe/H] サブ集団毎の密度モデルを作った。その範 囲は R = [5, 12] kpc, |Z| = [0.3, 3] kpc である。単組成準集団はそれぞ れが単純な空間構造を持つ事が判った。それらは垂直方向にはスケール高 0.2 - 1 kpc, 動径方向にはスケール長 < 4.5 - 2 kpc の単一指数関数で記述 できる。  組成で選んだ準集団のうち、スケール高最大はスケール長最小になる。これ は単純に幾何学的に厚いー薄い円盤に分解する図式と反する。[α/Fe] を年齢の指標に使える限りで、我々の結果は古い円盤準集団ほど中心集中が 強い。これは「内から外へ」の円盤成長モデルを意味する。スケール高最大の 準集団が最も中心集中度が高いという事実は内的進化を通じての円盤垂直構造 を説明する。

Hill, Babusiaux, Gomez, Haywood, Katz, Royer (2012)
内側円盤のメタル量分布とバルジ-円盤関係
 内側銀河系円盤の中間-高齢種族は探索があまり進んでいない亜集団である。 そこで、Rgc = 3 - 5 kpx, Z < 300 pc にある内側円盤レッドクランプ 200 星の高分散分光観測を行った。Rgc < 7 kpc の円盤メタル量は 0.2 dex で、明らかに太陽近傍より高い。  これは中間年齢の星には銀河円盤動径に沿ってかなりの勾配がある事を意味 する。この観測はバルジメタル量分布の高メタル部分は内側円盤の力学的不安 定性が起源であるという説を支持する。

Gonzlez, Rejkuba, Minniti, Zoccali, Velenti, Saito (2011)
 VVV から導いた銀河系内側バルジ
 VVV を用い、b = ±1 でのバーを追いかけた。これは以前に b = 1 で 調べた話の拡張である。6'x6' 区画でレッドクランプ星の J-Ks から赤化を求 める。次に 0.4 deg2 領域毎に赤化補正した光度関数を作り、 平均等級を求める。それらをバー構造を探るトレーサーに用いた。  その結果 Kso(l=-10) = 13.4, Kso(l=10) = 12.4 と分かった。バーの傾きが b = ±4, |l| < 4 では傾くことが分かった。これは他の研究で l > 0 において得られた結果に一致する。バーに内部構造が存在することを 意味する。これは半軸径 500 pc の内部バーなのかも知れない。  RC 光度関数には |l| < 5 に第2ピークがあり、それらは向こう側の渦状腕 かも知れない。


石原, 金田、尾中、板、松浦、松永 2011
AKARI MIR 全天探査による C-, O-リッチ AGB 星の銀河系内分布
 あかりの IRC 全天サーベイデータを用いて AGB 星を分類した。二色図上で 既知天体の占拠する領域を定めた。次に、マスロスー光度関係を用いて、C-リッチ 星と O-リッチ星の空間配置を定めた。O-リッチ星は銀河中心に集中していることが 分かった。一方、C-リッチ星は太陽から 8 kpc 以内では一様な分布を示した。

Dame, Thaddeus 2011
銀河系最外側にある分子腕
 銀河系第1象限にアウターアームのさらに外側 R ∼ 15 kpc の腕を発見した。 現存する 21-cm サーベイデータ上でこの腕を追跡した後、 CfA 1.2 m 望遠鏡により、 分子雲を探し、10/220 点で CO を検出した。検出された雲は (l, v) = (13, -21) から (55, -84) に掛けて分布しており、その位置は H I の高密度部と大体一致する。
 その内の一つを完全にマップした結果、半径 47 pc, 質量 50,000 Mo の分子雲である ことが分かった。平均距離 21 kpc での検出は銀河系では最も遠方での検出である。 新しい腕は盾座ーケンタウルス座腕の延長のようである。これは、近傍のペルセウス腕の 対応物となる。

Lopez-Corredoira et al 2011
Martinez-Valpuesta, Gerhard 2011 "バルジとバーの単一化" へのコメント
 "Unifying Bulge and Bar" by Martinez-Vaspuesta and Gerhard 2011 の コメントを述べる。そのモデルでは主軸がねじまがったボクシーバルジという 単一構造で銀河系内側 4 kpc の観測結果を説明する。我々はこの仮説は原理的 に許容できると考える。  しかし、このモデルはある観測的特徴を説明しないままに残している。一方 バルジとロングバーの軸角がずれているという従来のモデルはそれらを 説明できることを指摘する。

Martinez-Valpuesta, Gerhard 2011
ボクシーバルジと平面バーの単一天体化
 銀河系は棒円盤銀河であることが知られてきた。さらに最近、星計数に基づ いて、銀河系には新たに平たいロングバーが棒状バルジとは異なる角度で横た わっているという説が唱えられている。我々はボクシーバルジとバーを持つ シミュレイションにより、それらの観測が単一の構造で説明できることを示す。 シミュレイションによると星のバーが円盤から進化して形成され、さらにそれ からボクシーバルジが永年進化とバックリング不安定性の結果生まれる。
 このモデルで星計数を計算した結果、良い一致が得られた。このモデルでは ロングバーの特徴は、一部は体積効果の結果、他の一部はある時期には ボクシーバルジとバーが隣接する腕の頭との相互作用の結果回転方向に伸ばす 端末部の結果生じる。ロングバー部分での視線速度のモデル予想は将来の観測 で確認されるべきである。

Negueruela, Gonzalez-Fernandez, Marco, Clark (2011)
RSGC3 を囲む巨大アソシエイション
 スキュータム腕の根元の方向の4つの赤色超巨星星団の一つ RSGC3 の空間的 広がりは未確認である。RSGC3 の周辺で 2MASS で明るい星を探った。 Calar Alto 3.5 m 望遠鏡 TWIN 分光器で、候補星の 8000 - 9000 A 分光を 行った。  RSGC3 の 5 メンバー星の視線速度はStephenson2 と同じであった。星団の外 < 18' で 8 RSGs を見出した。それらは二つの集団に分かれる。南集団は 独立な RSGC に見える。北集団は小さい星団で類似の赤化と 年齢が示唆される。測光データの解析から RSGC3 を 30 以上の RSGs が取り巻 いていることが分かった。RSGC3 を取り巻く星の総質量は 105 Mo を超える。

Bensby, Alves-Brito, Oey, Yong, Melendez (2011)
厚い円盤スケール長への初めての制約: Rgc = 4, 8, 12 kpc での K型巨星元素組成
 マゼラン望遠鏡搭載の MIKE 分光器を使い、外側円盤 Rgc = 9 - 13 kpc の 20 赤色巨星を観測した。比較用に内側円盤と太陽近傍の星も観測した。Rgc が 10 kpc を超える星では太陽近傍の薄い円盤星と同じ組成パターンしか見出 さなかった。それは銀河面から高く離れても変わらない。我々の結果は、厚い 円盤と薄い円盤の相対密度比が太陽近傍とは遥かに異なることを示す。  厚い円盤のスケール長は薄い円盤よりずっと短い。我々は厚い 円盤のスケール長を初めて測り、 Lthin = 3.8 kpc を仮定して、 Lthick = 2.0 kpc を得た。厚い円盤には年齢、メタル量、組成 の動径勾配がないが、我々は動径移行 (radial migration) がその原因では なかろうか。そしてそれは、厚い円盤とバルジの低メタル成分を繋ぐだろう。

Culverhouse + 30 (2011)
QUaD 銀河面サーベイ II. コンパクト源カタログ
 QUaD 銀河面サーベイで見つかったコンパクト電波源のカタログを示す。 サーベイは 100, 150 GHz で |b| < 4° の 800 deg2 をス トークス I, Q, U で走査した。分解能は各 5', 3.5'である。526 のコンパ クト源が I で見つかった。内 239 天体は両方で、53 は 100 GHz のみ、234 天体は 150 GHz のみで検出された。170 天体は UCHIIRs と一致した。 総フラックスの分布をべき乗則で近似して傾きを決めると、 100 GHz で γS,100 = -1.8, 150 GHz で γS,150 = -2.2 であった。  同様に二点相関関数の傾きは 100 GHz で γθ,100 = -1.21, 150 GHz で γθ,150 = -1.25 であった。 総輻射強度スペクトル指数 αI は 0.25 で極大となる。 これは、ダスト放射はこれらの天体からの放射の唯一の原因ではないことを 示唆する。100 GHz ではフリーフリー放射が強そうである。4つの偏光が 強い。3つは Sag A*, Sag B2, Galactic Radio Arc である。残りは明るい HIIR RCW 49 である。

Minniti, Saito, Alonso-Garcia, Lucas, Hempel 2011
レッドクランプ星を用いた銀河系恒星円盤の縁の検出
 ヒッパルコスで較正したクランプ巨星の絶対光度を用いて、UKIDSS-GPS と VISTA Variables in the Via Lactea (VVV) の二つのサーヴェイにより、これら の星のマップを作った。クランプ星の選択範囲をいくつか試して結果を比べた。  銀河面の上下でも分布を調べて、ワープの効果も考慮した。その結果、 銀河系の恒星円盤には R = 13.9±0.5 kpc に縁が存在することを見出した。 恒星円盤の縁をマップできるので、いくつかの銀河系モデルをテストすることが 可能となった。

Negueruela, Gonzalez-Fernandez, Marco, Clark, Martinez-Nunez (2010)
RSGC1 の近くに見つかったもう一つの RSG 星団
 RSGC1 から 16' 離れた所にある、以前に報告の無い、赤くて明るい星の集団 を調べた。近赤外測光から候補を選び、それらの K-バンド分光を行った。 8 個の赤色超巨星を見出した。他に異なる距離にある 5 個の候補星がある が、その一つは赤色超巨星である。これらは散開星団を形成しているので Alicante 8 と名付ける。赤化が大きく、混み合っているため、2MASS, UKIDSS では星団系列がはっきりしない。赤色超巨星の解析から AKs = 1.8, t = 20 Myr とした。星団質量は 10,000 Mo を超える。

Messineo, Figer, Davies, Kudritzki, Rich, MacKenty (2010)
HST/NIRCam と多天体分光による GLIMPSE9 星団の観測
  GLIMPSE9 の HST/NICMOS3 と KPNO, KeckII で多体分光測光を行った。 CMD には H-Ks = 1 の星団系列が見えた。しかし2MASS で済む。これは星間減光 AKs = 1.6 に相当する。 3つの最も明るい星は深い CO 吸収を示した。M1 - M2 赤色超巨星の特徴で ある。二つの O9 - B2 超巨星が確認された。それから求まる分光距離は 4.2 kpc である。  同一年齢を仮定すると、 t = 15 - 27 Myr、 1 Mo までの星団質量 1600 Mo となる。GLIMPSE9 の周りにいくつかの HIIRs と SNRs が存在する。 幾つかの星団候補も見つかった。 それらと GLIMPSE9 は全て一つの GMC に属していたのであろう。

Culverhouse + 30 (2010)
QUaD 銀河面サーベイ I. マップと拡散光成分の解析
 QUaD 望遠鏡による銀河面 800 deg2 の 100 および 150 GHz ストークス I, Q, U パラメターマップを観測した。分解能は 5' と 3.5' で ある。観測領域は l = [245, 295] と [315, 5], b = [-4, 4] である。 全強度に関しスペクトル指数 α = 2.35±0.01 (|b|≤1) で、 放射がダスト以外であることを示唆する。文献中のダスト、シンクロトロン、 フリーフリー放射モデルとの比較から、 100 GHz QUaD バンドに WMAP 5 年間 の W-バンド観測に対して小さな超過が見られる。一方 150 GHz は良く合う。  QUaD と WMAP データを合わせ、内側銀河面の |b| ≤ 1 に対し、2成分 モデルでフィットした結果、 αs = -0.32 と αd = 2.84 を得た。前者はシンクロトロン、フリーフリー、 ダストの合成結果であり、後者はダスト連続光と思われる。偏光データは、 予想される磁場の方向に対して直交方向に高い水準で整列している。 平均偏光率は 100 GHz で 1,38 %, 150 GHz で 1.70 % である。

Roman-Duval, Jackson, Heyer, Johnson, Rathborne, Shah (2009)
GRS = 銀河系リングサーベイで見つかった分子雲の運動距離
 GRS = Galactic Ring Survey 13CO J = 1-0 で見つかった 750 の 分子雲の運動距離を求めた。 VLA Galactic Plane Survey で CO ピーク位置での HI 自己吸収を調べて、距離の二重性を解消した。また、GRS 雲中の 21 cm 連続 波源を検出して、その吸収線の存在から遠距離と近距離の分別を行った。
 GRS 天体の銀河面上での分布は4本腕モデルと整合する。GRS 天体で追尾した 盾座ー南十字座腕とペルセウス腕の位置は Galactic Legacy Infrared Mid-Plane Survey Extraordinaire 星計数データと一致する。結論として、分子雲は渦状腕に 沿って分布し、また、腕間空間に大質量分子雲が存在しないことからその寿命は 10 Myr 以下である。

Rathborne, Jphnson, Jackson, Shah, Simon (2009)
GRS = 銀河系リングサーベイで見つかった分子雲とガス塊
 ボストン大ー5大学電波天文台(BU-FCRAO) 銀河リングサーベイ(GRS) は 13CO J=1-0 で l = [18, 55.7], b = [-1, 1] を掃く計画で ある。受信機は FCRAO 14 m 望遠鏡に載った SWQUOIA アレイで、22" グリッド で分解能 46" のマップを作った。  829 個の分子雲と 6124 個のガス塊を見つけた。カタログの内容を紹介し、 予備解析の結果を示す。 5 kpc リングの内側と外側の雲を比べ、リング内の 雲は暖かく、高密度で大きく、ガス塊も多いことを見出した。
Benjamin 2009
銀河系の渦状腕接点
 天の川銀河における腕の接線方向の歴史的変遷を紹介し、スピツァー望遠鏡 中間赤外の星計数に基づいた結果と比べる。盾座ーケンタウルス腕の接線方向 では星計数が 20 - 30 % の超過を示したが、他の腕の接線方向での超過は認め られなかった。  この二つの接線方向はおそらくバーの近い側の端から始まる密度波腕に伴っ ている一方、他の腕はガスの圧縮であるが古い星種族の密度増加ではないので あろう。

Churchwell et al. 2009
スピッツアー GLIMPSE サーベイ:銀河系の新しい眺め
 GLIMPLSE の主な成果を述べ、将来可能な応用を示唆する。特に、星の形成と初期進化、 星間媒質、銀河系構造、晩期巨星について議論する。赤外暗黒雲、YSO,赤外バブル/HIIR は詳しく述べる。膨張赤外バブルに触発されたと思われる星形成についても簡単に触れる。 ダストとPAHの分布と形態も論じる。大規模星形成領域における、バウショック、 象の鼻、不安定性のGLIMPSE 画像を示す。赤外減光則を論じる。  銀河系大規模構造を GLIMPSE 点光源カタログのレッドクランプ星を 用いて追跡した。中心バーの半径と傾き、恒星分布の動径スケール長、Scutum-Centaurus 腕の端点方向での星計数の増加、それに反して、Sagittarius 腕の端点方向での星計数 増加が見られないこと、バルジ方向での星計数の急激な増加が示される。2008 年末までに GLIMPSE データを用いて、70以上の論文が書かれた。

Clark, Negueruela, Davies, Larionov, Titchie, Figer, Messineo, Crowther, Arkharov (2009)
Scutum-Crux 腕内の第3赤色超巨星星団
 NIR/MIR 測光と分光観測を用いて、赤色超巨星第3星団構成星を 分類した。統計的に星団質量を推定した。16星を星団に属すると確定し、 それらのスペクトル型 K3 - M4 Ia, 光度 log(L/Lo = 4.5 - 4.8 を決めた。 距離 6±1 kpc である。年齢 t = 16 - 20 Myr, M = 2 - 4 104 Mo となった。  Scutum-Crux 腕の根本で 10 - 20 Myr 以前に大規模な星形成爆発が起きた のであろう。この年齢の星形成複合体内部に X-線連星が見当たらないことは不思議である。
(どうやって星団を探したのか? )

Reid + 13 (2009)
大質量星形成域の三角視差 VI. 銀河系構造、基本パラメタ―、非円運動
 VLBA と VERA を用いて星形成領域内メーザーの固有運動と視差を測っている。 18個のメーザーに対する初期結果はそれらを幾つかの渦状腕の上に位置させた。 ペルセウス腕のピッチ角=16°±3° は2本腕よりは4本腕に 合う。星形成域が円運動から予想されていたよりも、平均して 15 km/s 遅い 速度であることを見出した。また、 Ro = 8.4±0.6 kpc, Θo = 254±16 km/s, Θo/Ro = 30.3±0.9 km/s/kpc である。  データは回転曲線がほぼ平坦かやや上向きであることを示す。一般に運動距離 は大き過ぎる。いくつかの例ではファクター2以上となる。Θo/Ro を IAU 推奨値の 25.9 km/s/kpc から 30 に変えると運動距離と視差との一致は 向上する。運動距離を更新する処方を示す。回転曲線はM31のものと似ており、 二つのダークマターハローの質量が同じくらいであることを示唆する。

Giveon, Becker, White (2008)

GLIMPSE の 電波成分
 l = [350, 42], b = [-0.4, 0.4] で VLA 5 GHz - MSX6C - GLIMPSE v1.0 マッチングを行った。GLIMPSE の高解像度と高感度により、埋もれた星形成域 の同定を改善し、中心星、電離ガス、ダストの関係をより深く調べる役に立っ た。GLIMPSE カタログは数が多すぎて 5 GHz 天体との同定が困難であるが、 GLIMPSE 天体を、「赤」(m3.6-m8>2.5)と 「青」(m3.6-m8<2.5) に分けると解決した。 GLIMPSE の高い感度にも拘わらず、GLIMPSE-5GHz マッチの数は予想外に 少なかった。  双方が重なる領域=(l=[10,42],b=[-0.4,0.4])に GLIMPSE-5GHz マッチ 132 天体中 55 個が MSX とマッチした。マッチングは期待したほどでは 無かった。しかし、それでも幾つかの結果が得られた。(1) 電波位置付近 では 「青」天体数が減る。それらの平均見かけ明るさは上昇し、カラーは 著しく赤くなる。これは不透明な雲の背後で背景星が消えるという描像に 合う結果である。(2) 選ばれた天体は近赤外および中間赤外カラーの条件 を定めた。それを用い、GLIMPSE 全領域中から 849 GLIMPSE 天体を MSX マッチがあり、かつ選択天体と同じ性質の天体として同定した。 それらの 15 % のみがこれまでに HIIR, メーザー天体、YSO、MC として同定されていた。

Lucas + 30 2008
UKIDSS 銀河面サーベイ
 UKIDSS Galactic Plane Survey (GPS) は UKIDSS コンソーシアムが行っている 5つの公開サーベイの一つである。これは b = [-5, 5] の 1868 deg2 を J, H, K フィルターで、牡牛座ー御者座ーペルセウス座分子雲複合体の 200 deg2 を J, H, K と 2.12 μm H2O (1-0) 線 で撮った。その総計は 2 109 天体となる。ここではデータセットの 性質とユーザーのためにその応用を述べる。 また、DR2 を用いた科学成果も 簡単に述べる。
(1)GPS-GLIMPSE クロス対象から星形成域 G28.983-0.603 の YSO 同定。
(2)M17 の広域像に減光マップを提供。星混同が光度関数に及ぼす効果。
(3)ρ Oph 暗黒雲の H2 放射。ジェットの根元に原始星。
(4)中心バルジ核の X-線源。近傍の主系列星軟X源とバルジ巨星硬X源。
(5)排除帯における銀河。l > 90 で星と明確に区別できる。
(6)(i-J, J-H) 二色図で A-F 矮星、G-矮星、K-矮星区別

Marshall, Fux, Robin, Reyle (2008)

銀河系バーの大規模ダスト帯
 銀河バー内部のダスト帯は容易に観測されている。しかし、銀河系バーの ダスト帯に関する情報を得ることは難しい。銀河系中央部のダストとガスの 分布を比較して、バーの先行縁側に予想されるバー中央からずれたダスト帯 の性質を得たい。このため、観測 CO l-b-V 図から、力学モデルに従って、 ダスト帯からの分子放射を抜き出す。もう一方では、近赤外観測から作成した 3次元減光マップがダスト自身の追跡子として利用され、その正面図として ダスト帯が現れた。二つの独立なダスト帯検出結果を l-b 面上で比較した。
 これら完全に独立な二つの方法を用いて、天の川銀河のバーの統一的な像を 描いた。ガスとダストの双方の像で、ダスト帯は銀河面から外れている。銀経 正の領域では銀緯が負、銀経負の領域では銀緯が正となる。しかし、ダスト の方がガスよりも銀河面に近い分布を示す。このズレを説明する二つの仮説が 考えられる。一つはバー衝撃波によるダスト破壊と下流側でのダスト再形成で ある。もう一つはダストとガスは共に傾いた同じ面上にあるが、分子ガスは 自身の強い磁場によりバー衝撃波のせん断応力に抵抗して、銀河系磁場から 離れるというものである。希薄ガスとダストは銀河磁場と結合したままで、 下流へ運ばれる。この仮説は最近棒銀河 NGC1097 の観測を説明するために 提案された。


小林、安井, 斉藤、Tokunaga 2008
銀河系最外縁分子雲での星形成
 Digel の Cloud2 は銀河系の最外縁部にある最も銀河中心から遠い、R ∼ 20 kpc, の分子雲である。そこに活発な星形成を発見した。Cloud2 は低メタル量、低ガス密度、 渦状腕の擾乱が殆どないという点で太陽近傍の分子雲と異なる環境にある。NIR 撮像に より、雲のコア二つの中に二つの埋もれた星団を発見した。我々の NIR, CO データに HI, 電波連続波、IRAS データを足して、この特異な環境下での星形成を調べた。
 近くの巨大 SNR GSH 138-01-94 で引き起こされた連鎖的星形成の証拠が見つかった。 二つの埋もれた星団の形状には大きな差があった。一つは北側分子雲コアにあり、孤立 モード星形成との関係が緩い。もう一つの南側分子雲コアの星団は稠密で星団モード 星形成を伴っていた。南側コアではSNRシェルによる高い圧縮が稠密な星団形成を 生み出したと考える。最外側円盤部の特異な環境は星形成研究に重要である。また、 間たる量からは、厚い円盤の起源にも関係する。

Dame, Thaddeus 2008
銀河系の新しい渦状腕:遠方 3 kpc 腕
 銀河系で良く知られた 3 kpc 膨張腕の向こう側成分を CO で検出した。 b = 0° の CO (l, v) 図上で、遠方 3 kpc 腕は視線速度正の側で近方 3 kpc 腕と平行に走っている。 遠方腕は l = 0° を +56 km/s で越えている。近方膨張腕が -53 km/s で越えている ことと極めて良い対称性を示す。二つの腕の線巾は ∼21 km/s, スケール高は 113 pc FWHM, 単位長さ当たりの H2 質量は ∼ 4.3 × 10 6 Mo/kpc で 26 % 精度で一致する。
 この CO 観測に導かれて、 21 cm 高精度データに遠方腕を発見した。双方の腕での 水素分子と水素原子との比は 3 - 4 倍である。このように対称性の良い膨張腕の検出 は我々の銀河系中心にバーが存在する強力な支持を与える。バーの物理的性質の 究明にも役立つであろう。

Gerhard 2008
銀河系渦状腕とバーのパターン速度
 銀河系のバーと腕のパターン速度を決定する方法をレビューする。 銀河系バーは高速で回転し、その共回転半径は太陽半径 Ro の半分である。 その外側リンドブラッド共鳴点は Ro から遠くない。  一方、銀河系の腕は現在著しく遅い速度で回転している。その共回転半径 は Ro の僅かに外側である。従って二つの構造は力学的には切り離されている。

Bibby, Crowther, Furness, Clark (2008)
星団 1806-20 距離の下方改訂
 星団 1806-20 (G10,0-0.3) の OB-星と WR-星に H-,K-バンド分光観測を行 った。B-超巨星と WR-星の絶対等級較正と NIR 測光から、星団 DM = 14.7 (8.7 kpc)を得た。今回の距離を採用すると、 マグネター 2004 年 12 月の 巨大フレアのピーク光度はファクタ3小さくなり、系外マグネターによる BASTE short gamma ray bursts へのコンタミは数パーセントと無視できる範囲 に収まる。銀河中心から 1.8 kpc で、4 kpc 以内で不活発な星形成活動という 状況では珍しい例である。

Cabrera-Lavers, Gonzalez-Fernandez, Garzon, Hammersley, Lopez-Corredoira 2008
UKIDSS GPS で辿る銀河系ロングバー
 過去10年間、銀河系に長軸半径 4.5 kpc, 位置角約 45 の長くて平たい バーが存在するという仮説を支持する証拠が集まってきた。このバーは 3軸バルジとは明らかに異なる構造体である。  内側銀河系の減光を再解析して、二つの3軸楕円体またはバーが 銀河系内に存在する確実な証拠を得ることを目指す。  レッドクランプを銀河系構造の追跡体に使用して、内側銀河系の形状を 決定する。UKIDSS の深くて高空間分解能の観測から、星の混み合いが 大きい銀河面の最内側部まで調べることが出来た。  OKIDSS の結果は以前の研究でレッドクランプを用いて得られた結果を 確認するものであった。銀河面上には二つの構造が共存していた。 一つは位置角 23.60°±2.19° で銀河中心から、l = 10 まで 伸びている。これはバルジである。もう一つは位置角 42.44°± 2.14° で l = 28 で終わっている。これはロングバーである。

Vallee 2008
新しい速度距離法と渦状腕の改訂版地理学
 渦状腕の位置(ピッチ角、形、数、腕同士の間隔)と速度(回転 曲線)に関する最近の成果を評価し、以前の数値と較べる。それに基づいて データ平均値にフィットする、地理学的モデルを作成した。銀河系四分区 内の腕の断片の一つづつに対して LSR 視線速度を計算した。我々の 速度距離モデルから、視線の腕交差点が速度空間で予想される。  モデル予想と CO 観測データとの比較を銀河系四分区で行ったが、結果は 良好であった。我々の方法は単純であるが、観測との比較が容易である。 この速度距離決定法は銀河系地理学と共生関係にあり、互いに矛盾しない。 ペルセウスとシグナス腕の混合を例示した。また、 4 kpc 付近での 4本の渦状腕出発点の銀経・速度混合も論じる。

Reipurth, Schneider 2008
シグナスの星形成と若い星団
 シグナスリフトには、現在または最近の活発な星形成域が多数含まれている。 この領域は渦状腕を見下ろす(縦に貫いて見る?)ので、数百 pc から 数 kpc まで様々な距離にある星形成域が重なっている。巨大な HIIR の一部である北 アメリカ星雲とペリカン星雲は白鳥座星形成域の中では最も有名であるが、これら は僅かに 600 pc の位置にある。
 その隣に見えるのはシグナスXであるが、距離は 1.7 kpc である。この天体 は直径 10° に及ぶ活発な星形成分子雲と若い星団の複合体である。それら の星団の中で最も大きいのは、年齢 3 - 4 Myr の Cyg OB2 アソシエイション である。それには数千の OB-星が属し、 LMC の若い球状星団とよく似ている。 白鳥座の分子雲複合に属する若くて大質量または低質量の星や原始星は未だに 研究が不十分であり、系統的な研究に値する。

Lopez-Corredoira, Carera-Lavers, Mahoney, Hammersley, Garzon, Gonzalez-Fernandez (2007)
銀河系 のロングバー
 Galactic Legacy Infrared Mid-Plane Survey Extraordinaire データは銀河面に 埋まった長いバーの存在を確認した。これは我々が数年前に見出したのと同じ特徴 を有し、バルジとは異なる。この論文では長いバーに関する以前の主張、 長くて平らなサイズが 7.8 kpc × 1.2 kpc × 0.2 kpc で位置角 43°、と合致する二つの解析結果を報告する。
(1)2MASS と Midcourse Space Experiment(MSE) データは l = [30, 0] の方が l = [0, -30] より多い。これはバルジ、腕、リング、減光によるものではない。
(2)長いバーの距離を 2MASS を使って求めたが、我々のモデルと合致した。

Davies, Figer, Kudritzki, MacKent, Najarro, Herrero (2007)
Scutum 腕の根元にある赤色超巨星の巨大星団
 Scutum-Crux 腕の根本にある赤色超巨星の巨大星団 RSGC2 で、 2MASS と 分光観測から RSG 候補を同定した。さらに高分散分光から CO EW を求め、 視線速度を決めた。その結果 26 RSGs を星団メンバーとして同定した。  星の速度分散、光度、進化モデルを合わせ、星団初期質量を 40,000 Mo と 推定した。この星団は Figer et al. (2006) が発見した 14 RSGs を含む星団 RSGC1 から数百パーセクしか離れていない。この二つ だけで既知 RSGs の 20 % を占める。二つの星団の年齢に差があり、 15 - 25 Mo の星の進化の研究に適している。

Cabrera-Lavers, Hammersley, Gonzalez-Fernandez, Lopez-Corredoira, Garzon, Mahoney (2007)
レッドクランプ星で辿るロングバー
 銀河系内に薄くて長いバー構造が存在するという仮説に対し、 過去10年間多くの支持研究が発表された。これは3軸バルジとは 明瞭に異なる構造である。  銀河系中心から 4 kpc 以内の恒星分布を解析し、そこに二つの 3軸楕円体が共存しているのかどうかを調べる。  レッドクランプ星を内側銀河構造の追跡子として使い、内側銀河の 形態を調べる。2MASS の星計数を手段とする。  内側銀河系には二つの異なる3軸構造体が存在することを示した。 一つは位置角 43°±1.8° の長くて薄いバー、もう一つ は方位角 12.6°±3.2° の3軸バルジである。スケール 高はバーで 100 pc, バルジはその5倍。 

Nagai, Tanaka, Kamegai, Oka 2007
銀河系中心分子ガスの物理状態
 ASTE による CO(3-2) 観測と野辺山 12CO(1-0), 13CO(1-0) データと合わせて解析し、銀河系の中心分子帯(CMZ) の物理条件を求めた。 速度勾配近似(LVG)法を用いた。位置と速度の関数として、CO(3-2) 観測領域での ガス密度、運動温度、CO コラム密度を求めた。
 CMZ の 69 % 以上でのデータポイントにおいて物理条件を定めることができた。 運動温度は CMZ 全体でほぼ一定であった。一方、ガス密度は 120 pc 星形成リング において外側のダストレーンより高い。CO(3-2)/CO(1-0) 比が高い領域の物理条件 も調べた。

Levine, Blitz, Heiles 2006
外側銀河系 HI 円盤の垂直構造
 銀河系円盤の HI 表面密度、平均高度、厚みのマップを作り、 HI 円盤の b = 0° 面からのずれを調べた。ワープを記述するには垂直方向のズレに m = 1, 2 フーリエ成分がよいことが分かった。 m = 2 成分を加えると北側ワープと南側ワープ の非対称性がうまく表現できる。  我々は Morlet ウェイブレット変換を用い、高振動数の空間的及び振動数的な局在を 調べた。それらのモードはしばしば "scalloping" と呼ばれる。m = 10 と 15 の "scalloping" モードがノイズの上で認められた。しかし、局在しているので、scalloping は円盤全体には及んでいないと判断された。

Schneider et al 2006
シグナスXの新しい観測像
 シグナスX領域が視線方向にいくつかの星形成域が重なったものか、距離 1.5 - 2 kpc にある単一の星形成複合体なのかが議論されてきた。 KOSMA 3m 電波 望遠鏡による 13CO 2-1 サーベイを MSX 中間赤外画像と合わせて、 複合体の空間構造を調べた。分子ガスの物理状態を以前より詳しく調べた。 シグナスXを 13CO 2-1 により分解能 130 で 10.8 deg2 マップし、もっと小さい領域を 12CO と 13CO 3-2 ラインで分解能 90 マップ観測した。
 13CO 2-1 で 90 個の雲塊を検出した。その励起温度 10 - 30 K, 密度 1.3 103 cm-3, 半径 1 - 8 pc, 質量は 数百 - 数万 Mo である。北側にある雲複合体の主要部は M = 2.8 105 Mo で DR 21, W 75N を含む。南側は M = 4.5 105 Mo で、IC 1318b/c AFGL 2591を含み、物理状態が異なる。13CO 放射は MSX の中間赤外 と強い相関を示す。Cyg OB2 と Cyg OB9 がシグナスXの分子ガスに影響を及ぼ している証拠が見つかった。このように、シグナスX内の分子雲複合は全て、 チャネル及び 位置-速度図上でつながったグループを形成している。そして一部 は UV 光との作用を示している。したがって、この領域で見られる 天体の大部分は Cyg OB2 と同一距離 1.7 kpc にあると看做せると結論する。 この値は Cyg B1, OB9 とも一致する。

Stil, Taylor, Dickey, Kavars, Martin, Rothwell, Boothroyd, Lockman, McClure-Grifiths 2006
VGPS = VLA Galactic Plane Survey
 VGPS = the VLA Galactic Plane Survey は HI および 21 cm 連続波による 銀河面 l = [18, 67], |b| <1.3 と < 2.3 VLA 990 点のサーベイである。  VGPS 画像は CGPS = Canadian Galactic Plane Survey と SGPS = Southern Galactic Plane Survey が苦手な第1象限の赤道付近(望遠鏡が東西配列で赤緯 分解能が低い)をつなぎ、銀河面 90 % の HI 1' 分解能統合画像を作る 第1歩となるだろう。

Cabrera-Lavers,Garzon, Hammersley, Vicente, Gonzalez-Fernandez 2006
TCS-CAIN: 近赤外の深い多色測光による銀河面探査
 最近カナリー天体物理研究所で完了した多色NIR探査 TCS-CAIN の報告をする。 探査は銀河面沿いの選択区域で行われ、 2MASS や DENIS より深い。目的は 銀河系の大規模構造、特にロングバーを調べることである。  この探査は位置精度 0.2, 測光精度 0.1 mag の J,H, Ks 撮像から一千万個の天体を抽出した。530領域が観測された。総面積は  41 deg2 である。この探査は 2MASS より少なくとも 1 mag 深く、 混んだところではその差はさらに大きい。

小林、安井 2006
木曽シュミットによる銀河系最外縁星形成の観測
 2006年木曽シュミットシンポでの発表PDF.

Marshall, Robin, Reyle, Schultheis, Picaud (2006)

銀河系星間減光の 3D モデル
 2MASS と ブザンソンモデルを合わせて減光分布を計算した。  銀河モデルを使い星の固有カラーと距離の分布を与える。そこから近赤外 色超過、つまり減光を計算し、距離が評価される。  15 離れた、l = [100, -100], b = [-10, +10] の 64,000 視線方向にこの方法を用いた。我々の3次元マップを2次元の天空 に投影して、2D減光マップと CO 観測と較べた。
 異なるマップには共通の特徴が見えた。ダスト広域分布の特徴が明らか になった。星間物質のスケール高は 125 pc である。ダスト分布は非対称な ワープを示し、それは CO や HI と共通する。しかし、ワープの傾きや それが開始される銀河中心距離は HI 円盤より小さい。正銀経側では それは角度 θ = 89 で、銀河中心から 8.7 kpc で始まる。ワープの 勾配は 0.11 である。バルジ内にダストの存在が確認された。それは細長い 構造で、長さは 5.2 kpc, 太陽銀河中心線と 30 度の角度を成す。これは 銀河系のバーバルジに伴うダストレーンと解釈される。

Starl, Lee (2006)

巨大分子雲は渦状腕に封じ込まれている?
 我々は天の川分子雲カタログをベル研 13CO サーベイの結果に温度 閾値を設けて作成した。このカタログから、二つのグループを作った。
(1) 近運動距離にあったとしても M > 105 Mo の雲。
(2) 遠運動距離にあったとしても M < 105 Mo の雲。
(l, v) 面上でのそれぞれの位置と速度を渦状雲の軌跡と較べた。各雲から 最短位置にある腕までの速度差を集中統計量として導入する。ほぼ全ても GMC は腕の近くにある。
 小さい雲の密度は腕の近くで増大する。しかし 10 % くらいの雲はどの腕にも 付随していない。GMC と最近接腕との速度差中間値は 3.4±0.6 km/s で ある。一方小さい雲では 5.5±0.2 km/s であった。この差の一部は 雲集団の速度分散により、一部は銀河系回転速度場における雲と腕の位置の差 によるのであろう。簡単な評価によると、位置の違いによる速度差は重要でない。 つまり、データは GMC が渦状腕の中に封じられており、腕内での GMC の速度 分散は小さな雲より小さいという考えに整合する。

Rodriguez-Fernandez,Combes, Martin-Pintado, Wilson, Apponi 2006
銀河系中心における動力学と分子化学の結合
 銀河中心のガスの大部分は円軌道に沿って動いており、それが中心核リング =GCR を作っている。Sgr A や Sgr B のような分子雲複合がそれにあたる。 ガスは濃く、暖かで、様々な分子種に富んでいる。分子雲のこのような性質の 原因は衝撃波、特に銀河系の大規模構造力学に基づくそれと考えられる。それ に加え、高度な非円周軌道で動く雲が低密度分子遷移 CO(1-0) で検出されて いる。非円周軌道雲の物理状態は不明である。
 CO(1-0) の (l, v) データから、非円周軌道雲のサンプルを抜き出した。 それらの CS(2-1), SiO(2-1) 観測を行い、濃い雲と衝撃波の性質を調べた。 非円周軌道雲の全てから CS, SiO 放射を検出した。SiO の密度と組成は GCR 雲と同様であった。したがって、これら全ての運動学的に選び出した 雲は潮汐力に抗している。しかし、GCR の外側では星形成の証拠はない。 バー主軸に沿って存在すると予想されるダストレーンにおける大きな相対 速度とズレ応力が星形成過程を妨げているのかも知れない。非円周雲に おける高い SiO 組成はダストレーンを形成する大規模衝撃波に起因する のかも知れない。

Benjamin + 沢山 2005
GLIMPSE による銀河系構造の第1レポート
 GLIMPSE の |l| = [10, 65], |b| < 約 三千万の星カタログを用いて、 銀河系 (l, b, m) 分布を調べた。計数対銀経関係はモディファイドベッセル 関数 N = No(l/lo)K1(l/lo) で近似した。ここに lo は限界等級、 バンド、銀河中心のどちら側かにあまり依らない。 4.5 μm で lo = 17 - 30, ベストフィットで lo = 24±4 である。天体分布を指数関数円盤 でフィットした結果、スケール長 H* = 3.9±0.6 kpc を得た。
 |l| < 30 には南北非対称が存在し、北側が 25 % 多い。l = [10, 30] では m = [11.5, 13.5] mag に強い個数超過が認められる。軸半径 Rbar = 4.4±0.5 kpc、 太陽・銀河中心線に対する角度 φ = 44±10 の バーが最も単純な解釈である。天体数超過、l = [26, 28], [31.5, 34], [306, 309] が渦状腕に関係するかどうかを調べた。赤い天体 [K-8.0] > 3 の数が多い 所では星計数が減る。これらの領域では減光により星計数が減る。

Stark, Lee (2005)

巨大分子雲のスケール高は小さな雲のそれより低い。
 ベル研 7 m 13CO サーベイにアンテナ温度閾値を適用して、 1400 個の分子雲カタログを作った。その内 281 個を運動距離がよく決まった 雲として選択した。  スケール高、光度、内部速度分散、雲の大きさを解析した結果、M < 105.5 の雲のスケール高は 35 pc で雲の質量に無関係であること がわかった。一方、それより大きい巨大分子雲のスケール高は質量と共に 低下する。

Mercer + 15 (2005)
GLIMPSE で見つかった新しい星団
  GLIMPSE 点源カタログの密度超過を自動探査して新しく 59 星団 を検出した。さらに視察で、深く埋もれた 33 星団を加えた。総計 92 星団である。  

Giveon, Becker, Hefand, White (2005)

天の川の電波 CHIIRs の新しいカタログ II. 1.4 GHz データ
 新しい VLA 1.4 GHz 銀河面カタログ、l = [340, 120], b = [-0.8, 0.8], l = [350, 40], b = [-1.8, 1.8], l = [100, 105], b = [-2.5, 2.5], を MSX6C カタログとマッチさせた。これは Zoonenmatkermani et al が最初に 出版したカタログをデータを再解析した結果である。  その結果新しいカタログでは 1.4 GHz 源の数が3倍になった。新しい 1.4 GHz カタログと MSX6C カタログの比較から 556 マッチが得られた。その大部分は 「赤」MSX 天体である。スケール高は 24' - 28', 8.5 kpc で 60 - 70 pc で ある。銀緯分布は l > 40° で平らになり、マッチ数は急落する。

Giveon, Becker, Hefand, White (2005)

天の川の電波 CHIIRs の新しいカタログ
 MSX6C カタログから選んだ天体の VLA 5, 1.4 GHz, l = [350, 42], b = [-0.4, 0.4] コンパクト HIIRカタログを示す。Becker et al 1994 は以前この 領域のサーベイをしているが、今回の結果は 5 GHz 電波源の数を3倍に増やした。  新しい 5 GHz 天体と MSX5C 銀河面カタログとの比較では 687 マッチがあった。 偶然一致の予想数は 15 である。一致天体は赤い MSX カラーと熱電波源スペク トルを示した。それらの銀河内分布のスケール高は 16' = 40 pc と小さい。 これ等の性質はサンプルが、これまで未発見であった若い UCHIIR で占められて いることを示す。

Dias, Lepine (2005)

渦状腕パターンスピードの直接決定。
 銀河系円盤内の散開星団の年齢とその誕生した場所との関係から、渦状パタ ーンの回転速度を決定した。その決定法は渦状腕構造の特定のモデルに依存し ない。この方法は我々のグループにより最近完成した散開星団の大規模データ ベースにより可能となった。星団が何処で生まれたかは二つの方法で決められた。 一つは円軌道を仮定する方法。もう一つは銀河系ポテンシャル内の軌道を星団 の寿命分遡る。
 固有運動、視線速度、距離、年齢がわかった 212 星団、及び年齢と距離が 分かる 612 星団を利用した。回転曲線と銀河中心距離 Ro の色々な組み合わせ に対してテストした。我々の結果は星団の大部分が渦状腕で生まれ、渦状腕は 剛体回転していることを確認した。共回転半径 Rc は Ro に近く Rc/Ro = 1.06±0.08 であった。二つの量がこのように近いことは多くの興味深い 結果に導く。

Girardi, Groenewegen, Hatziminaoglou, da Costa 2005
銀河系の星計数:非常に深いのから浅い測光サーベイに基づくシミュレーション
 TRILEGAL = 銀河系のあらゆる方向での測光をシミュレートする種族合成コード を説明する。このコードはスターカウントモデルの幾つかの技術的な点を改良した。 それらは、 (1)星の進化経路ライブラリーを完全なものとした。 (2)あらゆる測光バンドに対応する星のスペクトルライブラリー。
 Groenewegen et al 2002 ではこのコードを始めて応用して CDFS 星カタログ を解析した。ここでは、 EIS の深い探査、 DMS 星計数に初めて応用する。これら はハローと大きなスケール高を持つ円盤成分を含んでいる。これにより得た、 もっと広い測光データを扱うために必要な較正の変化を示す。  新しい較正に基づき、やや浅い 2MASS カタログを上手く解釈できることを 示す。このカタログは主に中間年齢円盤を探査している。また太陽近傍を調べた ヒッパルコスの絶対等級対カラー図を解釈した。この図には深いサーベイに較べ 高い割合で若い星種族が含まれている。
 同じモデル較正が上述の全てのデータセットにうまく応用できた。それらは 非常に深い CDFS (16<R<23) から、非常に浅いヒッパルコス (V<8) にまで及んでいる。ただし、銀河中心方向に対しては 50 % 以上のずれが生じた。 これはバルジ成分を含めていないためである。それと銀河面 及び銀河南極方向でも良く合わない。TRILEGAL コードは可視ー赤外の広範囲サーベイ に使える形で提供されるであろう。

Picaud, Cabrera-Lavers, Garzon (2003)

近赤外で見る銀河面上の星密度分布
TMGS と DENIS データを用い、 (l, b) = (27, 0) 領域で密度超過を見出した。 それは銀河面内のバーかも知れない。我々は銀河面上 l = 15 - 45 の 15 箇所で NIR CAIN 星計数を行い、それをブザンソン銀河系モデルと較べた。  比較の結果、 l < 27 で密度超過が確認された。モデルから予想される星数に較べ 超過率は 100 % を越えた。太陽からの距離は 6 kpc 以下と見積もられた。この密度超過 がバーの星種族に対応するならば、バーの半軸長は 3.9±0.4 kpc で、軸角は 45±9 である。

Larsen, Humphreys (2003)

POSS I サーベイに銀河系モデルをフィットする
 POSS I による APS Catalog の星計数を用いて、銀河系モデルを作った。 星計数データをフィットするため、円盤、ハロー、厚い円盤の3成分モデルを 作った。GA = genetic algorithm を用いて、銀河系の全体パラメタ―を決める。  結果は, c/a = 0.5 - 0.6 の平坦化した内側ハロー、円盤スケール長 3.5 kpc、厚い円盤のスケール高 900 pc を得た。最も驚くべきは、厚い円盤のス ケール長が > 4 kpc と円盤より大きい事である。

Russeil (2003)

星形成複合体と銀河系の渦状構造
 星形成複合のカタログを作製した。含まれる観測量は Hα, H109α, CO. 電波連続波、電波吸収線 である。各複合体に、天体速度、運動距離、天体 距離を決定した。距離は同一の方法で決定し、データの一様性を高めた。 星の距離を決定する過程で回転曲線が得られ、 Brand, Blitz (1993) との良い一致が得られた。  回転曲線との残差速度は腕の領域で大きい。ワープも検出されたが、円回転 からのズレとの相関はない。節片形状が複合体分布に見られ、より大きな 背景構造を現わしているのか調べた。複合体の分布を2、3、4本腕でフィッ トした。4本腕が最も良く合う。我々の結果は Geogelin, Geogelin (1976) の研究を支持する。

Bissantz, Gerhard (2003)

銀河系のガス運動:二つのパターン速度
 SPH計算による太陽円内ガス流の新しいモデルを提示する。重力ポテンシ ャルはバルジと円盤の近赤外輝度分布から M/L 一定を仮定して決めた。 高密度の渦状腕を付けた重力場中のガス流は、渦状ポテンシャル無しの場合より CO (l, v) 図に良く合う。さらに、4本腕重力ポテンシャルモデルの方が2本 腕より(l, v) 図は良く合う。
 バーと渦状腕が別々の回転速度を持つモデルも考えた。最も大きい違いは、 後者ではガス渦状腕がバーの共回転領域を通過することである。そこでもガスは 腕に沿ったままであった。(l, v) 図ではこれはガスが排除された領域として現 れる。単一回転モデルではこの領域はガスで満たされる。なぜなら渦状腕は バー共回転領域では消滅するからである。
 12CO データと比較した結果、我々は分離速度パターンの証拠を 見出した。最もデータに合うのは、バーのパターン速度 Ωp = 60±5 /Gyr, 共回転半径では 3.4±0.3 kpc である。腕のパターン 回転速度はそれほど良くは決まらないが、 大体 Ωsp = 20 /Gyr である。様々なパラメタ―で計算した結果、最もよいのは、 φbar = 20 - 25 であった。φbar = 20, Ωp = 60/Gyr, Ωsp = 20 Gyr は観測 (l, v) 図と極めて良い一致を示した。

Lopez-Corredoira, Cabrera^Lavers, Garzon, Hammersley (2002)

2MASS による銀河面近くの古い恒星円盤:スケール、カットオフ 、フレア、ワープ
 2MASS データを用いて、銀河面近くの古い星種族を解析するのに二つの異なる 方法を調べた。第1の方法は色等級図上でレッドクランプ星を分離し、その 星計数を逆変換して、視線に沿った密度分布を求めるというものである。第2の 方法は、 820 領域で星計数を円盤モデルにフィットしてパラメタ―を定める というものである。この二つの独立な方法からの結果は互いに合致した。 定性的な結論は、円盤は動径方向にも垂直方向にも指数関数でよく表現される というものである。 R < 15 kpc では円盤の突然の終端はない。 強い円盤フレアが検出された。それは太陽円の内側で始まる。したがって スケール高は内側に向かって減少する。
 もう一つの著しい特徴は星種族にもワープが存在することである。その 振幅はガスのワープと一致する。
 R > 6 kpc で低高度、平均 |z| ∼ 300 pc, の星に関して、
(1)太陽円でのスケール高 hz(Ro) = 3.6 10-2 Ro
(2)表面密度スケール長 hR(Ro) = 0.42 Ro
(3)銀河面密度スケール長 H = 0.25 Ro

Cole, Weinberg 2002
銀河系バー年齢の上限
 2MASS データを用い、 J-Ks ≥ 2 の赤外炭素星種族を同定した。 これ等の星は以前に可視、赤外のサーベイで発見されたバーに沿って 並んでいることが判った。  炭素星の性質は、それらが中間年齢であることを強く示唆する。我々は バーの形成は 3 Gyr より新しく、確実に 6 Gyr より若いと結論する。 この結論の意味を議論する。
赤化補正なしのカラーだけで炭素星は?

Freeman, Bland-Hawthornr 2002
新しい銀河系
 銀河の階層的な形成の枠組みないで、我々は自身の銀河が如何に現在に至ったかと 同様、銀河形成の粗い描像を持っているだけである。個々の星種族が原始銀河雲のどの 要素に結び付くかを描く詳細な筋書きは理解の彼方にある。  銀河系=近傍宇宙論と高赤方偏移宇宙=遠方宇宙論の両方から重要な手掛かりが 現れてきている。ここでは銀河系に見つかる過去の化石資料に重点を置く。 銀河系の詳細な研究は "baryon dissipation" に含まれる複雑な過程」を理解する 核心である。

Lee, Stark, Kim, Moon 2001
ベル研 7 m 鏡 13CO l = [-5, 117] サーベイ: (l, v)図
 13CO J=1-0 遷移の銀河面サーベイを報告する。ベル研7m鏡で 10 年に亘り 73,000 スペクトルを取った。サーベイ範囲は l = [-5, 117], b = [-1, +1] の 244 deg2 である。グリッド間隔は |b| < 0.5 では 3, |b| > 0.5 では 6 である。 ここで示したデータは再サンプルして 3 間隔になっている。  生データは FITS フォーマットに変換され、IRAF/FCRAO パケッジで処理さ れた。処理されたデータはここで (l, v) 図の形で示す。データから 103 Mo 以上の 分子雲の同定と分類が行われた。巨大分子雲の位置から渦状腕が 見えた。

Ojha 2001
2MASS で決める薄い、厚い円盤のスケール長
 2MASS 7 領域のデータからブザンソンモデルとのフィットで円盤の構造パラ メターを決めた。  薄い円盤のスケール長は 2.8±0.3 kpc, 厚い円盤は 3.7 kpc でスケール高は 860 pc, 局所密度は薄い円盤の 3.5 % である。

Lopez-Corredoira, Hammersley, Garzon, Cabrera-Lavers, Castro-Rodriguez, Schultheis, Mahoney (2001)

銀河面内のバーとリングを DENIS で探す
 DENIS を用いて、長く薄いバー、リング、内側円盤の丸め込み(穴?)を 探した。まず、DENIS, 2MASS 星計数から面内バーとリングの特徴を調べた。 l = [-30, +30] の星計数は大きく非対称で、正銀経側がかなり多い。しかし、 |b| = 1.5 では天体数は対称になる。したがって、非対称の原因は円盤でも バルジでもない。
 円盤は中央に穴が開いている。この非対称成分は方向角 40°、長軸半径 3.9 kpc の面内バーがあるとすると説明可能である。しかし、星計数のピーク が l = -22 にもある。これは 3 kpc 腕の接線方向である。これはおそらく リングか擬リングであろう。面内の減光も非対称で負銀経側で大きい。 l < 8 では減光分布は b = 0 面に対し、 HI 円盤と同様に僅かに傾いて いる。我々は銀河系はかなり典型的なリング棒渦状銀河であると結論する。

Dame,Hartman, Thadeus 2001
銀河系分子雲: 新しい CO サーベイ
 銀河全体の CO 合成マップを作った。観測は (1/8)° 間隔で行われた。  マップから銀河系の骨組み構造が見える。

Drimmel, Spergel 2001
天の川円盤の3次元構造:0.35 Ro より外側のダストと星の分布
 COBE/DIRBE の FIR, NIR データをフィットして、 l = [20, -20]を除く, b = [-30, 30] の銀河系3次元モデルを作った。 240 μm の光学的深さが小さいので、遠赤外放射 はダスト分布を追跡可能である。ダスト分布は、(1)スケール長 0.28 Ro で スケール高はフレアリングを示すワープした円盤、(2)4本腕の渦状腕成分、 (3)局所腕、から成る。この局所(オリオン)腕は l = 80 と l = -100 方向に明るい 放射構造を生み出している。以前の研究と合致する、宇宙背景放射 1.07 MJy/str が 得られた。
 このダスト分布を使って、J, K 減光量を計算した。さらに恒星放射強度分布を次の 2成分モデルで計算した。(1)ワープしたスケール長 0.28 Ro の指数型円盤。 (2)2本腕が支配的な渦状腕成分。この小さなスケール長は我々の銀河系を最適化 フィットして得られた結果であり、 CDM モデルが予想する暗黒物質尖がりハローとは 合わない。ワープの振幅はダストとハローとでは異なる。ワープの開始は太陽円の内側 である。  Ro = 8 kpc 採用。

Sevenster, Dejonghe, Van Caelenberg, Habing 2000
銀河系内側円盤における進化した星の分布
 内側銀河系の O-リッチ、進化した、中間質量星の一様なサンプルに対し、 力学分布関数を求めた。軸対称、2成分 Stackel ポテンシャルを用いた。 安定な2積分モデルは最初の3投影モーメントに関してデータを非常によく 再現する。しかし、中心部視線速度、中心スケール高、 |l|=[5, 15] でほぼ 完全に筒状の回転を再現できなかった。  これらの特徴は銀河バーを示しており、3積分モデルで良くフィットする。 2積分及び3積分分布関数を議論した。円盤の高年齢 AGB 星の観測分布を説明 するには、やや厚い円盤成分が必要である。この厚い成分は高銀緯での AGB 星 の運動を、薄い円盤より上手く説明する。AGB 星で見る限り円盤とバルジは力 学的に非常によく似ていて、同一成分と見做せる。しかし、バルジの 100 pc 以内は力学的に独立な成分である。

Drimmel 2000
銀河系の腕は2本である証拠
 K バンドと 240 μm における銀河面の輝度分布を示す。渦状腕の 接点を示す特徴が同定された。K バンドは恒星放射を表し、吸収の影響は ほとんど受けないが、腕の接点に伴う特徴から2本の対数螺旋が天の川 銀河の非軸対称構造で支配的であると示唆される。
  それに反し、星間ガスに含まれるダストからの 240 μm 放射は 4 本 腕を支持し、電波及び可視光での渦巻き構造と合っている。これはガスの 4本腕構造を引き起こす非軸対称質量摂動は4本でなく、2本腕であること を示唆する。

Hammersley et al 2000
銀河系の大きなバーに古い種族星を発見
 銀河面の色々な場所で NIR CMD と星計数を行った。 (l, b) = (27, 0), d = 5.7±0.7 kpc の所に円盤と較べ2倍、おそらくは 5 倍の星密度の箇所 がある。この構造はバルジから l = 28 まで (H, J-H) 図上ではっきりした 塊りを示す。  しかし、l > 28 では消える。その距離は l = 20 では l = 27 より 0.5 kpc 遠くにある。そして l = 10 までにはバルジと溶け合う。 l = 27, と l = 21 に非常に若い星の集団がある。それらを全て説明するのは長軸半径 4 kpc で位置角 43 ±7 の長いバーである。

Dehnen 2000
銀河系バー外側リンドブラッド共鳴が近傍速度分布に及ぼす影響 
 平坦回転曲線+回転バーの指数 関数型円盤の外側における速度分布関数のシミュレイションを行った。古い恒 星円盤のモデルに対し、 OLR は外側円盤の相当部分で f(v) にはっきりした 特徴を残した。バー角度 0° - 70°, OLR 半径の 2 kpc 外側までの位 置では、速度分布関数は (1) LSR 中心の通常分布成分と (2) より低回転速度 で外側に向かう第2成分の二つに二分される。  実際、太陽近傍の晩期型星に対するヒッパルコスデータからの速度分布関数 には、このような二分性が存在する。観測されるこの二分性が OLR により誘 引されたと解釈するなら、OLR 半径は太陽 軌道半径 Ro より僅かに小さいことになる。その上、観測速度関数をシミュレ イションと較べると、バーのパターン速度は太陽近傍の回転周期の 1.85± 0.15 倍であると分かる。

Fux 1999
天の川銀河の 3D N-体バー銀河モデル
 自己無撞着3次元 N-体計算を使い、銀河系のガスの動力学を調べた。 銀河の星成分は COBE 的なバーを有しており、そこに軸対称分布の SPH 成分を放した。星バーの密度中心は質量中心の周りを揺らいで 動き回り、その結果生じるガスの流れは非軸対称かつ非定常的である。 そのため、HI, CO l-v 図の再現は瞬間的である。これは現在観測されて いる銀河系内側でのガスの運動は一時的なものであることを示唆する。
 最適モデルからバー領域内の l-v データに関する新しい、かつ合理的な 解釈が得られた。特に、早期型棒渦状銀河のバー主軸の進行側の明るい中心から 外れたダストレーンは明らかに同定される。
 3 kpc 腕とその非軸対称位置にある対応腕とは円盤渦状腕の内側延長がバー を回り込んで、非常に異なる銀河中心距離でダストレーンに合体する姿である。 バーニアのクランプ1と2、及び速度空間で伸びている l = 5.5 の構造は ダストレーンの衝撃波を通過するガスの塊りと解釈される。l = ±2.5 の 終端速度の頂点はダストレーンに沿ったガスから生まれ、尖がり x1 軌道を表現しているものではない。尖がり x1 は銀河中心からもっと 離れた個所を通っている。これ等のモデルからの制約から求めたバーは傾斜角 25±.4, 共回転半径 4.0 - 4.5 kpc で上から見た軸比は b/a = 0.6 で ある。

Lopez-Corredoira, Garzon, Beckman, Mahoney, Hammersley, Calbet 1999
銀河系恒星バーの進行前面における大規模星形成
Garzon et al. (1997) では、TMGS の l = 27 領域での分光観測の概略を示した。 この第2論文では、より詳細な解析を報告する。我々はこの領域の K < 5 星の 50 % 以上が光度クラス I であり、残りの大部分は非常に低温の巨星で 急速な進化の過程にあることを見出した。我々はこれをバー先端部における星形成 活動を観測していると解釈する。その原因は、バーが渦状腕とぶつかって多数の 衝撃波が集中するからであろう。そのような現象は棒銀河で観察されている。
 反対側バー先端に当たる l = -22 でも分光等値巾解析を行うべきである。もし そこでも強い星形成が起きていることが確認できたら、それはバーの軸角が 75 付近であることを意味するので重要である。この角度は他の研究者が得た軸角と 異なる。我々はその原因は彼らがバーでなく3軸非対称バルジ成分を扱って いるせいだと考える。

Englmaier, Gerhart 1999
天の川銀河のガスダイナミックスと大規模形態
 太陽円内側のガスダイナミックスの新しいモデルを提案する。COBE 投影像から 出した近赤外バーと円盤に、中心の質点とあるモデルでは外側ハローも加えた、 重力ポテンシャル中の準定常な流れを決めた。  最良モデルは多くの観測事実と整合する。同期回転の外側にある4本腕構造は 定性的には |l| < 60° での5つの渦状腕端点を再現する。3-kpc腕 はバーの端から出て、同期回転域に伸びるモデル腕と一致する。  モデルは特にカスプ軌道ショックから半径 150 pc の x2 軌道円盤 への変換を記述している。   バーの同期回転半径は Rc = 3.5±0.5 kpc に収まる。バーの方向角は 20 - 25° である。HI, CO 観測からの終端速度は l = ±45° ( ∼ 5 kpc) まで、 L/M 比一定の近赤外バルジ+円盤モデルで記述された。

Chiappini, Matteucci, Gratton (1997)
銀河系の化学進化:二回の降着モデル
 ハロー・厚い円盤と薄い円盤を形成した2回の降着を仮定する化学進化モデ ルを提示する。ハローの進化は直接には扱わない。モデルが円盤用だからであ る。薄い円盤の形成は厚い円盤よりずっと長く掛かった。これは薄い円盤を作 るガスが厚い円盤から降り注ぐだけでなく、主に得銀河間空間からのガスだか らである。薄い円盤を作るタイムスケールは銀河中心からの距離により変わり、 内側ほど短い。その結果銀河系建設は内側から外側へ広がって行った。  星形成には最低値を設けたので、厚い円盤の星形成は途中で停止した。これは 観測と合う。観測との比較で最もきついのはG-矮星のメタル分布である。我々 のモデルは最新のデータに合う。モデルはガス質量、星形成率、超新星 率、それに 16 主要元素量の時間変化を予想する。それらの制約から、 ハロー、厚い円盤の形成タイムスケールは 1 Gyr 以下、薄い円盤では太陽付近 で 8 Gyrである。

Blitz (1997)
MW の CO
 MW 中の CO 分布を Rg = 3 - 7 kpc の分子リングと見做さずに、中央部が 欠けた指数関数型円盤と考えると、恒星円盤の進化を理解しやすくなる。 単位分子ガス質量当たりの星形成率は銀河系動径距離に対して一定であり、 水素分子の減少時間はハッブルタイムの数パーセントに過ぎない。  この非常に短いタイムスケールは、活発な星形成領域ガスに対して、原子 ガスが貯蔵庫の役を果たすことを要求する。HI がCOと大きく異なる 分布を示すので、銀河系外側からのガス落下か、円盤中の HI ガスが角運動 量を失う高効率な方法があるに違いない。CO 円盤の中心部が欠けるのはバー のせいである。

Rocha-Pinto, Maciel 1997
銀河系局所円盤における星形成の歴史
 G-型矮星のメタル量分布から太陽近傍で星形成バーストが起きたか を研究した。メタル分布と年齢・メタル量関係を結ぶ方法を 提案する。観測エラー、宇宙分散、スケール高効果を考慮した。  不規則な星形成史を持つ銀河の化学進化をシミュレイションして、 この方法の有効性をテストした。太陽系近傍に適用すると、少なくとも 2回の強い星形成期、一つは 8 Gyr 昔、もう一つは 2 - 3 Gyr 昔 があったことが分かった。

Garzon, Lopez-Corredoira, Hammersley, Mahoney, Calbet, Beckman 1997
銀河系バー前方縁にある巨大星形成域
 l = 27 の銀河面上にある 58 星の可視分光観測の解析結果を述べる。天体は Two-Micron Galactic Survey カタログから K < 5 mag でかつ銀河面から 2° 以内という基準で選んだ。60 % 以上が光度クラス I であった。 残りの内かなりが非常に晩期型で速い進化速度の巨星であった。
 このように若い天体の集中は巨大な星形成領域が 存在することを示す。それは、盾座腕が生じると想定される方向の丁度内側 である。そこは銀河系のバーが渦状腕と出合う場所で衝撃波が集中している と考えられる。そのような現象は銀河に見られる。巨大星形成領域の存在は 銀河系にロングバーが存在する強い傍証である。

Twarog, Ashman, Anthony-Twarog 1997
銀河系円盤の形成と進化の改訂に関するある観測
 DDO 測光と中間分散分光により組成が与えられた 76 散開星団を統一した メタル量表示に変換し、銀河系円盤の局所構造と進化の研究を行った。Ro = 8.5 kpc. 星団メタル量の分布は二つのはっきり区別されるゾーンで記述される。一つは RGC = 6.5 - 10 kpc でメタル分布は平均 [Fe/H] = 0.0 で散布度 = 0.1 dex。そこではあるにしても精々弱いメタル量勾配の証拠しかない。 R > 10 kpc ではメタル量散布度は 0.10 - 0.15 dex、平均 [Fe/H] = -0.3 でメタル量には R = 10 kpc で鋭い断絶があることが予想される。この断絶を 補正した後には、面に垂直な方向のメタル量勾配の証拠は認められない。

Binney, Gerhard, Spergel 1997
内側銀河系の測光構造
 内側銀河系の放射分布を、ダスト減光補正した COBE/DIRBE 表面輝度マップ からノンパラメトリックに、求めた。ベストフィットは太陽を銀河面の上方 14±4 pc に置いた時に得られた。得られた密度分布は細長い3次元 バルジが高度に非軸対称な円盤内に埋め込まれていることを示した。バルジの 軸比は 1 : 0.6 : 0.4 で長軸半径 2 kpc であった。長軸の近い側頂点は第1 象限にある。バルジを囲む楕円円盤は短軸 2 kpc, 長軸 3.5 kpc である。
 どのモデルにも短軸方向 2.2 kpc の所に密度極小がある。それに続く、極大 は 3 kpc の所にあり、l = -22°, +17° の方向にある。この点は L4 に対応するのかもしれない。そう考えて、バルジバーの長さを 使うと、バーのパターンスピードとして Ωb = 60 - 70 km/s/kpc を得る。
 渦状腕を持つ銀河モデルを使った数値実験によると、COBE データから回復された 高度に非対称な円盤は、もし密度コントラスト > 3 ならば渦状構造を反映する はずである。これらの実験はバルジの方向角が 20° 付近であることを示唆している。

Calbet, Mahoney, Hammersley, Garzon, Lopez-Corredoira 1996
正銀経でのバー前面のダストレーン
 銀河面に沿っての DIRBE 輝度分布を銀経正と負で比較した。異なる波長で の比較の検討から、K で 1 - 2 mag の厚いダストレーンが銀経負の領域に分布 することが判った。  最も考えやすい説明は、バーの前面に厚いダストレーンが存在するというモデル である。これは将来、DENIS や 2MASS により、実際に 2° の巾の減光層として 確認されるべきである。

Robin, Haywood, Creze, Ojha, Binayme 1996
銀河系の厚い円盤:マージャー事件のその後
 銀河の複数領域の観測データから厚い円盤種族の特性を再考した。その結果、 スケール高=760 pc, スケール長=2.8 kpc, 太陽近傍密度=0.056x薄い円盤 密度となった。スケール長は円盤スケール長の 2.5 kpc とよく一致する。 厚い円盤の平均メタル量は -0.7 dex でメタル量勾配はない。  これら測光データを運動学データと組み合わせると厚い円盤の形成に新たな 見方が生まれる。厚い円盤の特性はトップダウンシナリオと合わない。良く合 うのは薄い円盤初期に激しいマージングが起きたというシナリオである。

Hammersley, Garzon, Mahoney, Calbert (1994)
内側渦状腕とバーの赤外像
 2 ミクロン銀河面サーベイを用いて、銀河面 l = [15, 35] 2 ミクロン表面 輝度マップ上のピークの性質を調べた。低減光の穴ではピークを説明するのに 不十分であった。 l = 33 のピークは l = 21, 27 のピークと異なる光度関数 を有する。後者はほぼ確実に非常に明るい大質量の若い星から成ると言える。 それらがバーの近い方の先端に付随する星形成領域であるという説明が もっともらしい。
 バーを含む簡単なモデルを提案する。それは l = [-40, -10], [10, 40] の 2 .2 ミクロン表面輝度分布をよく説明できる。このモデルのバーの 方位角は 75°, で主軸半径は 3.7 - 4 kpc, 3 kpc リングには殆ど 明るい星は含まれない、盾座腕の星種族の巾は 300 pc である。

Arendt + 14 (1994)
銀河系赤化と星種族の COBE/DIRBE 観測
 COBE/DIRBE を用い、銀河系星種族のカラーと銀河系減光を調べた。 DIRBE で決めた NIR 減光は Rieke, Lebofsky 1985 の減光則と一致した。第1、第4象限のダストと星の分布は、最高 A(1.25μm) = 4 mag に及ぶ減光膜を隔てて臨む背景星種族と看做せる。  赤化補正した銀河円盤のカラーは晩期 K-型 から M-型の巨星のカラーと 似ている。銀河系バルジは 2.2 - 3.5 μm でそれより僅かに青い。これは Terdrup et al 1991 の結果と一致する。星形成域は 900 K の連続光の存在 を示すが、これは熱いダストか PAH が 3.5 μm という短波長にまで 影響することを示す。

Weinberg 1994
回転バーの共鳴点付近における運動の兆候
 銀河系が回転バーを持つという話がある。その場合、OLR, ILR 付近にはっき りした運動学的な特徴が現れることを示す。この共鳴の効果はバー密度のピーク からはるかに離れたところに及び、太陽付近でも観測可能である。特徴の詳細は バーの進化の歴史に依存する。したがって、速度分散、偏差から銀河系の現在の 様子のみならず、過去の歴史を知ることが出来る。  様々な簡単なシナリオに基づいた運動学的モデルを示す。パターン速度が進化 していくモデルは定常パターンに較べ著しく大きな速度分散を示す。したがって 速度分散からバーが定常的かどうかが分かる。モデル計算から、
(1)提案された回転楕円体のどのモデルも恒星運動と合わない。
(2)軸半径 3 kpc のバーは OLR (5 kpc) 付近で、動径方向には小さな実質 速度で大きな速度分散を生み出す。この現象は K-巨星のデータに現れている。

Digel, De Geus, Thaddeus 1994
銀河系円盤最縁部の分子雲
 運動銀河中心距離 18 - 28 kpc の 11 分子雲を観測した。最も遠い分子雲はこれまで 知られていたものより 10 kpc 遠く、明らかに可視光円盤の縁より遠い。これらは全て より大きな HI 集合(雲?)に含まれているが、HI ピークから約 40 pc 離れている。 CfA 1.2m と NRAO 12 m 望遠鏡の CO 観測によると、雲のサイズは 20 - 40 pc, 速度 巾 1 - 3 km/s, 運動温度 10 - 25 K である。
 これ等の雲の CO 光度は太陽付近にくらべ低い。いくつかは IR 源を持つかも知れない。 しかし、遠すぎるため、星形成に関して一般的に言えるのは B1 より早期の星はない ということだけである。雲の存在数から R > 18 kpc では星間媒質中で分子雲の 寄与は大きくない。

Ortiz, Lepine 1993
銀河系の赤外星計数を予想するモデル
 R, I, J, H, K, L, [12], [25] バンドでの銀河系星計数モデルを 任意の方向、感度で与えるモデルを作った。銀河系は、Hernquist 密度則に従う 楕円体成分、スケール高 100 pc と 390 pc の二つの円盤、それに渦状腕の 重ね合わせで作った。V - λ 色指数から各光度クラスとスペクトル帯の 絶対等級をスペクトル型の関数として多項式の形で求めた。星間減光は原子、分子 ガスの分布から求めた。晩期型巨星、超巨星星周ダストからの寄与も考慮した。M6 より晩期の巨星は全てダストシェルを持つことが分かった。
 データが不足しているため、全てのバンドでモデルと観測との比較は行えなかった。 K バンドでは 1 - 11 等までの比較を様々な方角で行った。モデルは全方向で適切な 星計数を与えた。また、 [12], [25] での比較も良かった。ただし、IRAS バンドで は渦状腕を表すのに余分のパラメタ―を必要とし、それでも局所腕の表現は良く なかった。円盤のスケール長は 390 pc 円盤に対しては 2.6 kpc, 100 pc 円盤では もっと大きく 4 kpc であった。

Brand, Blitz 1993
外側銀河系の速度場
 外側銀河系の速度場を l = [90, 270], R = 17 kpc = 2 Ro まで与える。 速度場は内側銀河系に対しても太陽から 2 - 3 kpc まで与える。データセット は HIIR と反射星雲のサンプルである。それまでの距離は測光で定める。また 付随する分子雲の視線速度も利用する。それらに HI 接点データを加えた。 データ点は R = [0.2, 2] Ro に亘る。Θ = 回転速度とし、
   Θ/Θo = a1(R/Ro)a2 + a3
で近似すると、Ro = 8.5 kpc, Θo = 220 km/s とした時、 a1 = 1.00767, a2 = 0.0394, a3 = 0.00712 となる。回転曲線はほぼ平坦で あるが、最外側点は僅かに上がる傾向を示す。 R = 2Ro までの銀河系質量は 4.1 1011 Mo である。  残差視線速度=Vlsr(観測)-Vlsr(モデル) のパターンは純回転からのズレを 示唆する。そのズレは渦状密度波の流れに合致する。我々のサンプル中の 早期型星の分布に渦状構造の証拠は見られなかった。ストリーミング=残差 速度に見られる系統速度成分が見つかった。その平均速度は 12 km/s で、 2D速度としては 17 km/s である。LRS では分子ガスが l = 180° から l = 0° 方向に 3.8 km/s で流れていることを見出した。回転曲線の南側と 北側の差は小さく、20 kpc で 5 % である。 太陽から [0.7, 2] kpc にある局所分子雲サンプルから、太陽は銀河面の 13 pc 上にある。分子雲スケール高は 65 pc である。

Garzon, Hammersley, Mohaney, Calbet, Selby, Hepburn 1993
2 ミクロン銀河面サーヴェイ(TMGS)
 2ミクロン銀河面サーベイ(TMGS) の最初の結果を報告する。銀河面を ドリフトスキャンによって、l = [-5, 30], b = [-15, 15] と l = [30, 180], b = [-5, 5] の範囲を観測した。この論文では δ = -1, -23, -30 のスキャン、計 138 deg2 を中心に 議論する。
 サーベイは K = 9.8 mag まで完全である。今までに 255 deg2 の観測がマップ化され、470,000 天体が検出された。その多くは銀河面にあり、 可視対応天体がない。IRAS 天体の 90 % が同定された。

Weinberg 1992
銀河系の大規模恒星バーの発見
 AGB 星を探索子に使い、太陽円の内側の恒星円盤の構造を調べた。銀河中心の 周りの恒星分布の最低調和関数項を決定することから出発し、長半径 5 kpc, 位置角 -36±10 のバーが存在する証拠を発見した。  バーの存在は、輻射補正の不確定性、減光強度、AGB 星の光度分散に対して 確実に言える結論のようである。また、マップはバーの端末から渦状腕が発生している 様子を示す。この方法はもっと広範なサーベイに適用可能である。

Kent, Mink, Fazio, Koch, Melnick, Tardiff, Maxson 1992
スペースラボ赤外望遠鏡 IRT による銀河系構造I. 2.4 μm マップ
Infrared Telescope (IRT) は スペースシャトルに搭載され、2.4 μm で空の大半を観測した。分解能は約 1° である。この論文では l = [-20, 120], b = [-30, 30] の較正マップを示す。  測光精度は 20.0 mag arcsec-2 である。ゼロ点を除くと、データは 気球による以前の観測と良く合う。ただし、高銀経で系統的なズレがある。 これらのデータはよりシステマティックな銀河系 2.4 μm 放射密度を与える。

Kent, Dame, Fazio 1991
スペースラボ赤外望遠鏡 IRT による銀河系構造II. 銀河系の光放射モデル
 銀河系の3次元放射密度分布を北側銀河系 2.4 μm マップから決めた。 円盤の動軸方向の表面輝度分布はスケール長 3.0 kpc (Ro = 8 kpc 仮定)を 持つ。垂直方向分布は伝統的な sech2 型より exp(-|z|/h) の 方が良くフィットする。太陽近傍ではスケール高 h = 247 pc で、星計数から の値と合う。スケール高は一定ではなく、 R = 5 kpc では h = 165 pc である。
 バルジは潰れた回転楕円体で近似され、その軸比は b/a = 0.61 である。その 密度分布は指数関数型である。バルジの 2.2 μm/12 μm 強度比は他のダスト なし回転楕円体天体と一致する。銀河面に沿っての輝度の揺らぎは減光効果である ことが判った。この揺らぎはダスト分布により再現可能であり、ダスト/ガス比の 決定に使える。

Kent, Dame, Fazio 1991
スペースラボ赤外望遠鏡 IRT による銀河系構造II. 銀河系の光放射モデル
 銀河系の3次元放射密度分布を北側銀河系 2.4 μm マップから決めた。 円盤の動軸方向の表面輝度分布はスケール長 3.0 kpc (Ro = 8 kpc 仮定)を 持つ。垂直方向分布は伝統的な sech2 型より exp(-|z|/h) の 方が良くフィットする。太陽近傍ではスケール高 h = 247 pc で、星計数から の値と合う。スケール高は一定ではなく、 R = 5 kpc では h = 165 pc である。
 バルジは潰れた回転楕円体で近似され、その軸比は b/a = 0.61 である。その 密度分布は指数関数型である。バルジの 2.2 μm/12 μm 強度比は他のダスト なし回転楕円体天体と一致する。銀河面に沿っての輝度の揺らぎは減光効果である ことが判った。この揺らぎはダスト分布により再現可能であり、ダスト/ガス比の 決定に使える。

Digel, Bally, Thaddeus 1990
外側腕の巨大分子雲
 内側銀河の巨大分子雲と質量、サイズの点で同程度の分子雲が外側銀河系腕 に b = 1° を中心とした l = [65, 71] の新しい CO サーベイで検出された。 Ro = 8.5 kpc を仮定して、それらは R = 12 kpc にあり、ビリアル質量と CO 光度ーライン巾関係から定めた N(H2/WCO 比は内側銀 河の 4±2 倍大きく、CO では暗めである。
 R = 11 kpc の外側に外挿すると、銀河系全体では (1 - 7) × 108 Mo の分子質量が期待される。サーベイされた外側腕複合体の中には, R > 10 kpc で最も明るい二つの HIIR が含まれている:一つは W 58, もう一つはこれまで未同定 であった S 98 の遠方成分である。

Wouterloot, Brand, Burton, Kwee 1990
太陽円外側の IRAS 天体 II.ワープ中の分布
 外側銀河系での分子雲分布を導き、HI ガスと較べた。雲候補は IRAS 点源 カタログから、第2、第3象限にあって、カラーが埋もれた星を持つ既知の 分子雲と同じという基準で、選ばれた。選択された 1302 天体中 1077 個に CO(1-0) が検出された。それらの運動距離を求めた。外側銀河系の雲の数と 距離範囲の点で今回のサンプルは既存のどれよりも大きい。  距離エラーが調べられた。回転曲線は Brand らが求めた、 Θ = Θo (R/Ro)0.0382, Θo = 220 km/s, Ro = 8.5 kpc である。
 分子雲の銀河中心距離は R = 20 kpc にまで及んでいる。今回 CO が検出 された雲は全て埋もれた IRAS 源を含んでいるので、この結果は星形成が 非常に離れた銀河円盤で進行していることを示す。
 雲の分布は HI と同じワープを示す。IRAS 天体で追跡したワープは R = 11 kpc で始まり、サンプルが終わる R = 20 kpc まで続いた。この区間で 雲集合の厚みは増加していき、R = 17 kpc では R = 10 kpc での厚みの 2 倍になった。内側銀河系では分子雲の厚みに比べ HI 層はずっと厚いの だが、外側銀河では二つの厚みは同じくらいに接近する。R > 14 kpc で 定めた動径方向スケール長は HI ガス密度の低下は分子雲よりゆっくり している。

Jura, Joyce, Kleinmann (1989)
銀河系反中心方向の明るい炭素星
 銀河系反中心方向の 211 炭素星の K 等級を測った。炭素星の K 等級と I-K カラーがほぼ一定という仮定を用いて、表面密度、見かけ等級とカラーの分布は、 (1) 反中心方向では K バンド星間減光は 0.15 - 0.3 mag/kpc, (2) 高光度炭素 星の密度は反中心方向 3 kpc でも、太陽近傍とあまり変わらない。  通常の円盤星は太陽円を超すと急速に密度が低下するので、炭素星の密度変化は 異常である。その説明としては、(1) 反中心方向でメタル量が低下し、(2) 太陽近 傍での炭素星寿命 105 年より長い 2-3 105 年となるの ではないか?反中心方向炭素星の平均マスロス率 1.2 10-7 Mo/yr は 太陽近傍の 1/1.7 で低い。
(何だ?暗黒雲に降参? )

Wouterloot, Brand 1989
太陽円外側の IRAS 天体I.CO 観測
 l = [85, 280], b = [-10, +10] にあり、星形成領域と同じ カラーを持つ IRAS 天体 1302 個の 12CO(1-0) 観測を 行った。速度成分のプロファイルは非ガウス的(自己吸収やウィング) であった。  全成分の運動距離を求めた。IRAS 天体に付随すると我々が考える 成分に対しては絶対光度を求めた。次の論文でこれらのデータを解析し、 HI データと比較する。

Habing 1988

IRAS が見た我々の銀河系 I.
 IRAS PSC から F12 ∼ F25 の天体を選んで、銀河系の横向き像を得た。 そのほぼ全ては、大きな質量放出率を持つ長周期変光星である。星の数を銀経、 銀緯、フラックスの区分毎に数えた。どの方向でも、星の数はフラックスに対して 極めて平坦であった。星の数を、空間分布と光度関数の畳み込みとして解釈する。
 その結果、二つの種族が含まれていることが判った。同じ光度関数を持つが異なる 空間分布をする二つの種族か、同じ平均光度を持つが空間分布が異なる二つか。 私が好むのは後者で、4/5 は薄い円盤に属す。その厚みは FWHM = 440 pc、動径 方向のスケール長 = 4.5 kpc, カットオフ = 9.5 kpc である。そのピーク光度は 4000 Lo である。  残りの 1/5 はもっと厚い成分で、厚みは 1.2 - 2.8 kpc, スケール長 6.5 kpc, カットオフ = 18 kpc である。この成分も平均光度 = 4000 Lo である。この厚い 種族はおそらく Gilmore, Reid 1983 が提唱した厚い円盤に属する。
 この他の結論は
(i)薄い円盤種族の光度分布はバルジと似ている。
(ii)光度から導いた星のコア質量分布は白色矮星のそれとよく似ている。

Dame et al. 1987
全銀河面 CO 合成サーベイ
 銀河系分子雲の大規模 CO サーベイが 1.2 m 望遠鏡を用いて北半球 NY で、南半球 セロトロロで行われた。これによる5つの大きなサーベイと、特定の星形成域 に対する 11 の小サーベイとを加え合わせ、各分解能 0.5° のマップができた。   銀河系の内側渦状腕は、分子リングとも呼ばれるが、銀緯 2° 厚みで銀河中心 の両側 60° に広がっている。l, v ダイアグラムは分子リングでも他の場所でも 軸対称からの大きなズレを示している。最も大きなそれはカリーナとペルセウスの 渦状腕である。近傍の CO 放射は主にグールドベルトに沿っている。Lupus, Ophiuchus, Aquila がベルトの正銀経成分、Taurus, Orion が負銀経成分を代表している。  今回のまとめで初めて太陽周囲の分子雲の分布が明らかになった。長い間、 暗黒雲の分布とリフトの位置とから近傍分子雲は北側銀河系の方が南側銀河系 より多いのではないかと疑われてきた。 今回のサーベイ合成はその疑いが正しい ことを定量的に確認した。1 kpc 内の分子雲の質量は第1、第2象限の方が 第3,4象限の4倍多い。それに第1、第4象限にある 1 kpc 以内の分子雲は殆ど 全てが直線状に並んでいる。これは局所腕の内側エッジを追跡しているのでは ないか。銀河面の上下の分子ガスの分散 74 pc はガウス分布では半値半幅 87 pc に相当する。その平均表面中密度は 1.3 Mo pc-2、 銀河面上で ガス密度 0.0068 Mo pc-3、 0.10 H2 cm-3 である。


Urasin 1987
星間減光から定めた銀河系の腕モデル
 銀河系の二本腕モデルを星間ダストの分布から作った。  モデルはピッチ角 6.5° の対数螺旋である。 二色図上で減光ベクトルで戻して主系列 O - B6 に当てる方法で減光決定。 UBV なのに(?)内側はスキュータムまで達している。二本螺旋だけで 合わせられず、スキュータムが一回りしてきて、局所腕とペルセウス腕に 分裂する。

Thronson, Latter, Black, Bally 1987
マスロス星の性質と星間ダスト構成の変化
 IRAS PSC からフラックスリミッテッドサンプルを調べた。IR 炭素星は 5.2 kpc-2、炭素星全体では 38 kpc-2となった。炭素星の 総数は 28,000(R/15kpc)2, R=銀河円盤半径 である。炭素星の数は 銀河中心距離に依存しない。一方 赤外 M-星は 47 kpc-2 である。 マスロス O-リッチ星は銀河系全体で 48,000 個である。進化した O-リッチ星 の数密度はスケール長 4 kpc の指数関数型の変化を示す。C-星と M-星の密度 分布のこの差は銀河面上での [C]/[O] 比の勾配が原因である。マスロス星の 種族構成が銀河中心距離により変化するため、星間空間に注入されるダストの 性質が変わり、その結果分子雲の加熱、化学、減光、初期質量関数など全てが 場所により変化する。  中間質量星からの総質量放出は 0.35 Mo/yr で、その内炭素星からの寄与は 10 - 50 % である。この値は銀河系のサイズによる。総マスロスは少数の 極端に激しいマスロスを行う星からの寄与が大きい。それらの星の多くは O- リッチである。サンプル中の炭素星の寿命は 2 105 yr である。 M-星も似たような値であろう。これは太陽近傍での炭素星誕生率= 5 10 -13 pc-3yr-1 を意味する。これは 3 - 5 Mo 星が主系列を離れる割合に等しい。それらの星が炭素星の母星であろう。 銀河系全体で炭素星が生まれる割合は 0.14 (R/15kpc)2yr -1 である。現存の mm-波輝線サーベイから得られる炭素星の 赤外二色図は炭素星全体からは偏っている。

Caswell, Haynes 1987
南天 HIIRs: 電波再結合線の研究
 パークス 64m 鏡により 316 HIIRs の H109α, H110α を 観測した。その多くは可視では見えない。それらは l = [210, 360] での 銀河系の研究に適している。 銀河中心付近の視線速度は非常に大きい。その他 では銀河回転を表現していると考え、運動距離の計算に使う。二つの渦状腕の 軌跡が改善され、太陽円の外側に多数の HIIRs が新しく距離を決められて、 カリーナ腕の延長を指し示す。  電子温度 Te を電波の連続波とライン波のスペクトルから決めた。銀河中心 距離と共に Te の増加が見られ、以前の結果を確認した。Ro = 10 kpc, Vo = 250 km/s 採用。

Dame, Elmergreen, Cohen, Thadeus 1986
銀河系第1象限での最大級分子雲複合体
 コロンビア CO サーベイの 第1象限を使い、内側銀河系で最大の分子雲複合の 位置と物理的性質を決定した。 l = [12, 60] で M > 5 × 105 の 26 複合が検出された。これから、太陽園内には数百の複合があると推定される。 これら複合は、種族I の多くの母天体であろう。
 複合までの距離は運動学的に決めた。随伴する HIIR, OB アソシエイション、 メーザー、他の種族I 天体を使って、遠距離・近距離縮退を解いた。複合はサジタ リウス腕をはっきりとなぞった。 17 の巨大複合が腕に沿い、 15 kpc の長さに 渡り、系外銀河で観察される HIIR の規則正しい配列と同じ程度の間隔で一様に 分布している。
 線幅と複合体のサイズの間、および密度とサイズの間にはにはそれぞれ べき乗則が成り立つ。その形は以前に我々や他の研究で見出されたものと よく一致し、今回の研究はこの関係を質量にして一桁の巾に広げた。

Cohen, Grabelsky, May, Bronfman, Alvarez, Thaddeus 1985
カリーナ腕の分子雲
 南天天の川の 2.6 mm CO サーベイから l = [282, 336] でカリーナ腕に沿っ て、 37 個の 105 Mo 以上の分子雲を同定した。雲は 25 kpc に亘り、ほぼ 700 pc 間隔で並び、そのピッチ角は約 10° であった。  分子雲総質量は 40 106 Mo、一個当たり 106 Mo, である。l = 280° に突然現れる接点と l-v 曲線の特徴的な構造はカリー ナ腕内分子雲の渦状配列の見間違えない証拠である。この腕は北天のサジタリ ウス腕につながり、全体として銀河系全周の 2/3 を 10° ピッチ角で巡る 渦を形成する。

Dame, Thadeus 1985
北銀河面での広銀緯分子雲 CO サーベイ
  l = [12, 100], b = [-5, +6] の CO サーベイを角分解 1° で行った。 l = [20, 60] では b をもっと広くした。CO 放射の約半分は Great Rift に伴う 近傍雲から、半分は R = 4 - 7 kpc の内側腕内の雲から来た。視線速度を用い、 Rift を 太陽距離 200 - 2300 pc の 10 個の分子雲に分解できた。  近傍のリフト雲は 数 104 Mo - 数 105 Mo である。そう 大きいという わけでもない。近傍雲の平均半値半径は 75±25 pc であった。銀河面上 での分子密度は 0.013 Mo pc-3 である。CO 積分強度と可視減光との 相関は殆ど全ての暗黒雲が分子雲であることを示す。

Elmegreen 1985
天の川と銀河の渦状構造
 天の川銀河の渦状構造にはいつもとらえどころのない点があった。それは 我々が内部の視点から見ているせいである。このレビューでは全体パターンを 決めるための方法とデータを提示する。  さらにこれまで提案されてきた様々なモデルを較べる。銀河の腕の観測も 議論する。それらは天の川銀河の腕構造についての手がかりを与えてくれる。 Ro = 10 kpc.

Blaauw 1985
オリオン腕の星形成
 オリオン腕 1500 pc 内の形態の主要な構成天体を集めた。  これは星形成の進行を研究するための出発点である。

Forbes 1985
l = [30, 70] の可視渦状腕構造 II. 星間減光の分布
 新しい、及び既存の 300 OB-星の観測を基に l = 30 - 70 での星間減光の 変化を調べた。領域を 16 に分けた。各領域で Av - D 関係を調べた。一般に 減光は太陽から 500 - 1000 pc にある雲で起きていることが分かった。
 この区間を過ぎると、 D = 4, 5 kpc までは殆ど減光のない区間が続く。最も減光の 強い領域は l = 32 - 44 で、最近 Huang et al 1983 により発見された分子雲 に随伴しているように見える。

Forbes 1984
l = [30, 70] の可視渦状腕構造 I. 遠方早期型星の新しい観測
 UBV 光電測光を写真等級 11 等より暗い 86 の早期型星に行った。位置は l = [30, 70] である。Hamburg and Warner Swasey Observatories の Luminous Star catalogues から OB+ と OB 型の星を選んだ。  それらの星でスペクトル型が B1.5 V より早期で and/or 光度クラス Iab か より明るい星の色超過と距離を求めた。いくつかは B, 又は A 型超巨星で 太陽から 8 kpc 以遠であった。

Henderson, Jackson, Kerr (1982)

太陽周円を越えた先の HI 分布
 パークス 18 m とハットクリーク 26 m による HI 21 cm サーベイデータ を円周回転モデルで解析した。Ro=10 kpc を仮定。  等高線マップを (i) HI 表面密度、(ii) 銀河基準面からのズレ、(iii) HI 層の厚みについて与えた。 M(HI) = 4.81 109 Mo でその 81 % は太陽周円の外側にある。

三上、石田、浜島、川良 1982
盾座(Scutum)方向の近赤外放射に寄与する恒星成分
 盾座(Scutum) 領域における近赤外放射に対する恒星の寄与を調べた。 検出された星は、対物プリズムスペクトルと H-K カラーを用いて、 K0 - M3 巨星、M4 とより晩期の巨星、赤色超巨星とそれに 混入した晩期型巨星の3つにグループ分けされた。恒星の空間分布モデル =円盤+5kpcリング+バルジ を用いて、観測された 見かけ K 等級累積分布と銀河面見かけ分布を合成フィットした。 これらの星から期待される K バンド表面輝度 分布は気球望遠鏡からの観測結果と良く合う。太陽近傍での体積放射率の 導出値は IRC 解析結果と良く合う。3つのグループの星からの寄与は全体の 70 %に達する。5 kpc リング成分では赤色超巨星の割合が高くなる。

Viallefond, Lena, Muizon, Nicollier, Rouan, Wijnbergen (1980)
銀河面からの遠赤外放射 I. l = 27.5
 航空機上の望遠鏡を使い、銀河面を遠赤外で 1° 以上に亙りスキャンした。 赤外線と電波連続波の間に良い相関を認めた。電波連続波から導いた Lyα 強度から予想される遠赤外強度に較べ、観測された遠赤外線は一桁から二桁高い。  説明として考えられるのは;(1)大量のダストを含む HIIR があり、Lyα、 または Ly-c 光子はダストの加熱に使われる、か(2) HIIR は分子雲に付随し、 それが多数のより低温の星に加熱されている。

Cohen, Cong, Dame, Thaddeus 1980
分子雲と銀河系の渦状構造
 CO 2.6 mm サーベイ、一つは l = [12, 60], b = [-1, +1]、もう一つは l = [105, 139], b = [-3, +3]、から以前の見解に反し、渦状腕をよく再現 することが分かった。分子雲から、ペルセウス腕、局所腕(Lindblad の 局所膨張リングを含む)、サジタリウス腕、盾座腕、 4 kpc 腕が同定された。
 局所腕とペルセウス腕の間の空間には分子雲がない。内側銀河の腕間領域の 大部分にも分子雲が存在しない。CO が渦状構造を示していることからその寿命が 108 yr をそう大きくは超えないことが分かる。この時間スケールは 星間物質が腕を横切る時間である。すると、質量保存則から R = 4 - 12 kpc での 星間物質中で分子雲に含まれる割合は 1/2 を越えられないことが導出される。

Neckel, Klare (1980)

星間減光の空間分布
 11,000 を超す O - F 型星、うち 7565 個は O, B 星、の UBV, MK, β データから減光と距離を求めた。 1020 個に対しては二つの独立な手法、 Mv (MK) と Mv(β) による距離を定めた。二つの距離指標の差の平均は 0.01 mag 以下であった。
 天の川の写真を手掛かりに、|b| < 7°.6 を 325 区域に分けた。この 区域内では星の表面密度、減光は一様と看做せる。Av - D 図を作り調べた。 それらから D < 3 kpc までの減光マップを作った。

Downes, Wilson, Bieging, Wink (1980)

H110α and H2CO による銀河電波源サーベイ
 Effelsberg 100-m 鏡により 5 GHz 帯で H110α 輝線と H2CO 吸収線を 262 個の電波源で観測した。観測天体は、l = [0,60], b = [-1,1] に ある Fpeak > 1 Jy の天体全てである。H110α 再結合線は 171 電波源で 検出された。 H2CO は合計で 388 本検出された。  以前の研究と同じく、Te が銀河中心距離 RG と共に上がる現象が RG = [4, 9] kpc で観測された。新しく HIIRs の距離を決定して それらが渦状腕をよくなぞることを再確認した。 Ro = 10 kpc 採用。

Viallefond、Lena, Muizon, Nicollier, Rouan, Wijnbergen (1980)

銀河面からの遠赤外放射 I. l= 27°.5 での観測
 航空機上の望遠鏡を使い、銀河面を遠赤外で 1° 以上に亙りスキャンした。 赤外線と電波連続波の間に良い相関を認めた。電波連続波から導いた Lyα 強度から予想される遠赤外強度に較べ、観測された遠赤外線は一桁から二桁高い。  説明として考えられるのは;(1)大量のダストを含む HIIR があり、Lyα、 または Ly-c 光子はダストの加熱に使われる、か(2) HIIR は分子雲に付随し、 それが多数のより低温の星に加熱されている。

Bania 1980
内側銀河系での CO: 3 kpc 腕と他の膨張構造
 内側銀河の CO 銀緯分布の観測から、濃い分子雲の多くが l で数十度に及ぶ 幾つかの大規模構造に属することが分かった。最も目立つのは回転中心円盤、 3 kpc 腕、それに +135 km/s 構造である。これらは HI でも見えるが、全体 として銀河回転から 50 - 180 km/s の速度の逸脱を示している。(l, v) で 見ると、 3 kpc 腕と +135 km/s 構造は単純な運動学的円環で記述できる。 しかし、 R = 4, 3.5 kpc にある二つの不完全円環の追加が要求される。
 後者の二つの CO 放射は雲塊状である。単純な円環距離を仮定すると、雲の サイズは 125 pc となる。
 二つの不完全円環の水素質量は 2 × 10 7 Mo である。従って内側銀河には少なくと二つの長さ 2 kpc に 伸びた雲があり、共に銀河中心核から外側に 4 × 1054 ergs で膨張速度を示している。もしそれらを 90° 角の 弧とすると 1.3 × 1055 ergs の膨張エネルギーは爆発モデル への制限となるだろう。この構造は l = 0 を -53 と +135 km/s で交差する ので、対称性爆発や軸上の棒回転(?)では観測の特徴を説明できない。爆発や 棒は強い衝撃波を形成し、それが星形成を生み出す。しかし、そこに大量の 電離ガスがある証拠はない。 Ro = 10 kpc, Vo = 250 km/s 仮定。

Humphreys (1979)

若い星、星団、とセファイド の銀河面と M 33 での分布
 可視天体=アソシエイション、若い星団、長周期セファイド、による渦状構造 の証拠をまとめる。  M33 の同様な証拠を挙げて銀河系と比較する。

Lockman (1979)

内側銀河系の濃い HIIRs の分布
 濃い電波 HIIRs の分布を、円周回転の仮定と密度波理論を用いて、内側銀河 100° で定めた。北銀河系 l = [5, 55] の電波星雲は、南銀河系 l = [305, 355] の電波星雲に比べると、可視でも見える場合が2倍である。これは 遮光物質との関係で上手い配置になっているからであろう。南星雲は銀河中心 から 3 kpc 以内で見つかっている。北星雲は R = 4 kpc にまでしか迫っていない。  濃い HIIRs のスケール高はどんな天体よりも小さい。平均高度の周りの z 分布分散度は僅かに 33 pc である。観測された銀経と視線速度から、運動学 モデルを作ると星雲が狭い幅に集中する。その形は2本渦状腕に似る。 この結果は星雲の運動学の詳細には依らない。 HI や 分子雲が沢山ある広い 領域に濃い星雲がないことは、大質量星の形成は分子雲の存在だけからは 言えないことを意味する。何か追加のファクターが必要らしい。Ro=10kpc

Henderson (1977)

銀河系にあるかも知れない4本腕
 密度波理論の運動を持つ対称的対数螺旋腕モデルから計算した HI l-v 図を 観測と比較した。最初に銀河系6か所でフィットするモデルを作った。それらは、 可視光観測から選んだペルセウス、カリーナ領域と電波観測から選んだ接点円 上の4領域である。これら6領域はピッチ角 13° の4本腕で良く合う。  腕:腕間密度比= 3 : 1, ストリーミング速度= 7 km/s を仮定して、モデル HI 輝度分布を計算した。それらの l-v 図を電波観測と較べた。その他に二つの モデルも較べた。一つは、二本腕に弱い4本腕モードを付けたモデル、もう一つは 4本腕だが共回転半径= 9 kpc としたものである。

Bania 1977
内側銀河系での CO
 CO J = 1 - 0, b = 0, l = [352, 10], Δl = 0.2°, φ = 65 , Δv = 2.6 km/s の観測を行った。 以下 Ro = 10 kpc を仮定。 CO の積分強度 と運動は、銀河系の内側 2 kpc、 300 pc より外では N(CO) ≥ 2 × 1016 cm-2 (観測感度限界)の分子雲は数個しかない ことを示唆する。中心 3 - 4 kpc 以内の CO は R < 300 pc の中心核 領域、 M(H2 ≤ 7 × 108 Mo, に含まれている。
 3 kpc リングは、もし銀河面に大きく傾いているなら別だが、完結した 円環を成していない。腕の断片に関して言えば、H2 質量は HI 質量 より小さい。CO データには 3 kpc 腕の共鳴リングモデルを支持する証拠はない。 |l| < 3° の CO (l, v) 図は Ω = 40 km/s/kpc の剛体回転する 傾いた円盤を示す。これは HI の中心核円盤と同じである。その内部には二つの 付加的構造があり、それぞれが -135 km/s と +165 km/s で l = 0° を 横切っている。この二つは l = 359° で v = [-140, +140] km/s にかけての 尾根でつながっている。この特徴は回転膨張円環のモデルに合致するが、模様が l = 0° で不完全である。と言うのは、 l = 1° にある特徴の対応物が l = 359° にはないからである。その上、単純な回転円環も、共鳴軌道も、 銀河中心爆発も b = 0° の (l, v) 図を説明できない。

Georgelin, Georgelin 1976 
HIIR から定める銀河系渦状構造 
 HIIR の分布が他銀河でも見られるような渦状構造を示す。可視観測から決めた 励起星の距離、Hα線の視線速度を HIIR 電波観測による H 109α 視線速度と結合して、Bok 1971 の提案した方法で渦状腕を描き出した。
 268 個の HIIR の Hα線の視線速度観測、360 個の励起星までの距離 決定から、銀河系の回転モデルが詳細に決定された。
ある個所では円運動から のズレがわかり、星までの距離と運動学距離を一致させることが可能となった。 この回転モデルは、 109α 速度極大を使うことで、 R = 4 - 5 kpc, l = 330° - 340° 補足された。
 9 kpc という遠方 HIIR の可視光検出は可視データと銀河面全体に及ぶ電波 109α データとを重ねることを可能にした。その結果、 109α 天体を1つにまとめることができた。ただ、距離選択効果は残る。これらの 同定により、遠運動距離と近運動距離のあいまいさが 66 % 確度で解決した。 高励起 HIIR の 80 % が傾き角 12° 二対の対称腕(計4本)に沿って並 んだ。これ等の腕を接線方向に見る銀経は電波連続波と 21 cm 波の極大に 一致した。

Crampton, Georgelin (1975)
我々の銀河系における可視 HIIRs の分布
 分光測光距離と運動距離を用いて、太陽から 8 kpc にまで達する HIIRsに よる渦状構造がマップ化された。分光測光距離は Balona, Crampton 1974 と Walborn 1972, 1973 による OB 星絶対等級較正に基づいている。運動距離は Georgelin 1974 が提案した南北銀河系で異なる回転速度を使用して求めた。  HIIRsの運動解析から太陽運動成分 Uo = -7.2 km/s, Vo = 14.7 km/s, それにオールト定数 A = 14.4 km/s/kpc が求まった。 太陽から数 kpc 内の HIIRs と OB-星の運動は同じで、両者は同じ回転速度を有し、さらに、星と ガスの運動に系統的速度差は検知されなかった。Ro=9kpc.

Herbst (1975)
R-アソシエイション III. 局所渦状腕構造
 R アソシエイションの分布は、局所 (Cygnus) 渦状腕構造が帆座 l = 265 方向、 2 kpc まで見える。この構造はカリーナ・サジタリウス腕からは明ら かに離れている。可視局所腕の内側の縁にダストが集まっているらしい証拠 がある。  これは銀河の観測にも見られる。R アソシエイションを他の種類の銀河腕 追尾天体と組み合わせて、新しい可視渦状腕のマップを作った。このマップ から、渦状腕の巻き込み角 = 13±4° が導かれた。

Weaver 1974
バークレイ低銀緯サーベイでわかった銀河系構造の幾つかの点について
 渦状構造研究の基本課題はデータから分かり易い少数の図または数字を導き出す 事である。円運動の仮定に基づいて新しいマップが作られた。しかし、動径方向の 大きな運動速度が円運動仮説の渦構造にはエラーがありそうであると示唆している。
 新しい図にはアウターアームの構造が見える。それは多くの雲状構造ガスをその 上に、場合によっては1kpc以上の高さにまで伴っている。外側銀河系の非常に弱 く、広がった構造について述べた。ホールとジェットの例が示された。

Hirabayashi 1974
銀河系の熱電子と背景放射
 銀河面上の9点で分解能 10 4.2 GHz、15.5 GHz で 銀河系背景放射の観測を行った。背景放射尾根上の輝度温度は 15.5 GHz で 0.07 K であった。観測結果は過去のより低周波の観測と合わせて、 1.4 GHz から 15.5 GHz 間のスペクトルを得た。  X Cyg のスペクトルは主に熱的であることが判った。腕間空間の点及び 内側銀河系の点からは熱的と非熱的の混合放射が得られた。ターンオーバー は 3 GHz 付近で起きる。スペクトル指数は -3 であった。

Moffat, Vogt 1973
若い散開星団に基づく銀河系渦状構造の改訂像
 Becker, Fenkart 1971 が3色測光した若い星団 88 個は今では 110 個に 増えた。4つの星団の改訂を与えるが、中でも Pismis 20 は特に興味深い。 この星団は 超新星残骸 G320.4-1.2、X-線源 2U1509-58 と一致する。   r = 4 kpc までの若い星団の分布を他の5種類の渦状腕追跡天体の分布と 較べた。最も面白い特徴は、l = 270 で局所腕から枝が出ること、局所腕が l = 235, r = 1.6 kpc で突然切れることである。

Walborn 1973
太陽近傍における O-型星の分布
 O-型星の2次元分類システムに関する新しい結果を提示する。新しく追加し た南北天の星の分類が与えられ、特異な Of-的スペクトルの二つの群が述べら れる。絶対等級に関する修正を議論した。正常な O-型星の分類と分布を示す。 最も驚くべき結果は、カリーナ・サジタリウス腕が l = [285, 20] の間 全区間で局所腕から分離していることである。他の若い天体に関する以前の 結果との良い一致は O-型星の新しい光度分類を支持する。

WilsonTL 1972
電波点源のフォルムアルデヒド 4830 MHz 観測
74個の連続電波源ピークでフォルムアルデヒド (H2CO) 分子 の観測を NRAO 140 フィート望遠鏡で行った。63/74 天体は Reifenstein et al. 1970 の H109α サーベイから選ばれた。結果を用いて、運動距離の遠近 分解を行った。

Burton (1971)
密度波理論に基づく運動学モデルを使った HI 構造
 HI 第1象限観測の結果を、2種の銀河系速度場モデルにより、解釈する。 サジタリウス腕や他の主要腕に伴う大規模ストリーミング運動は円周回転の仮説 に基づく解釈を不十分なものにする。密度波理論から予言される速度場はより 満足のいく解釈を与える。この理論とさらに l-v 図に見える速度パターン、 終端速度の銀経変化に見られる系統的不規則性に基づくモデル I からはストリ ーミング速度 3 - 8 km/s が得られる。このモデルでは腕と腕間空間とでの密度 比は 3 : 1 で、渦状腕の傾きは 7° である。全体として観測への一致は良い。  HI 密度分布と速度場は同時に決める必要がある。 スペクトルプロファイルは、密度分布の違いよりはストリーミング運動の違い の方に敏感に反応する。従って、速度場を密度分布に結びつける理論を使って 密度を決めなければいけない。密度波運動学に基づいてサジタリウス腕の銀河 系構造マップを作った。

Tammann (1970) 
若いセファイドの銀河面分布 
 種族 I 長周期セファイドの分布を調べた。セファイドと銀河星団の年齢の 比較から、P > 11.25 d、 年齢 ≤ 30 Myr は b 2-3 の早期型星団と同じ くらいよい渦状腕の追尾天体である。  セファイド距離は改訂された周期・光度関係と色超過から決めた。得られた分布 は若い星団から導かれる渦状腕とよい相関がある。

Freeman 1970
渦状銀河と S0 銀河の円盤について
 渦状銀河と S0 銀河の大部分は二つの成分を持つ:楕円体成分と指数関数型 円盤成分。円盤の表面輝度は、I(R) = Io exp(-αR) の形を取る。 この論文では円盤成分を扱う。輝度分布に円軌道の力学平衡を考えて、角運動 累積分布 M(h) を導いた。指数型円盤の M(h) は、一様密度剛体回転球のそれと 殆ど同じである。36個の渦状銀河と S0 銀河の測光データから以下の結果を 得た。
(i) 28/36 銀河は全等級の幅は 5 等もあるが、 Io は 21.65 B mag./arcsec 2, 標準偏差 0.3 mag./arcsec2 で一定値を取る。 Io が一定であることから、ハッブルが見出した見かけ等級と角直径の間の関係 が導かれる。
  (ii) S0 - Sbc 銀河の円盤スケール長 α-1 は 1 - 5 kpc に広く分布するが、晩期型銀河では主に < 2 kpc に集中する。
  (iii) 楕円体成分の占める明るさと大きさは形態型と弱い相関しか持たない
もし結論 (i) が柱密度 μ0 一定を意味するなら、円盤の総質量 M と総角運動量 Dの間に、DM 7/4 の関係が成立する。もし M(h) が原始銀河の収縮期に保存され るなら、 渦状銀河と SO 銀河になる原始銀河の全ては類似した M(h) を持って いたことになる。少なくとも円盤に対応する h に関しては。もし M(h が 非保存であるなら、現在見られる M(h) に転移する非常に効率的な機構が 存在するはずである。
銀河系がタイプ II であるとする、表面密度分布を Innanen 1966 から採った 図で示している。この図では太陽円周から内側が密度欠落部になり、指数型 円盤は太陽円周外側ということになっている。

Dickel, Wendker, Bieritz 1970
シグナスX方向局所腕内での HII 領域の分布
 シグナス X 複合中の可視星雲の形と方向は局所腕内に対称性が存在すること を示唆する。その対称性は渦状腕内の局所磁場の構造と関連するのであろう。 我々はシグナスX複合内の星雲 90 個の距離を、星間減光強度を用いて、定めた。  星間減光の値は可視光と電波との強度比から決定した。明るい星雲は 1.5 kpc の距離に集中する。星雲までの距離は全体で 1 kpc から 4 kpc に亘る。星雲の 3次元分布に局所腕モデルをフィットした。

Becker,Fenkart (1970)
銀河星団と HII 領域
 若い星団と HIIR の観測データを文献から集めた。 それらが渦状腕に沿って並んでいることが判った。 l = [200, 250] で渦状腕が消えて行くように見える。一方、l < 95 における +I 腕(ペルセウス腕)を完成させるには観測的困難がある。 というのは星団距離が 3 kpc を超え、シグナス分岐の強い減光を 受けるからである。 l = [140, 180] には若い天体が完全にない。  最も興味深いのは、l = [300, 360] で、Bok の解釈と我々の考えとの 相違を解決する領域である。l = 50 方向、及び l = [255, 285] の 腕間領域をはっきり定義することも重要である。

Abraham (1970)
カリーナ領域における OB-星の分布
 新しい Hβ ライン強度とスペクトル分類から、カリーナにある 436 の OB 星までの距離を決めた。銀河系中心からから見ての OB 星の分布には 鋭い縁が存在することが判った。この縁線の向こう側には OB-星が殆ど 見出されない。 OB 星の帯は Rg < 3 kpc までは銀河面に 貼りついている。この距離までは OB星 の平均 |z| = 38.1 pc である  。Rg > 4 kpc で OB- 帯は銀河面から下方向に 2° - 3° の角度で逸れ始めその傾向は Rg = 10 kpc まで持続する。この折れ曲がりは HI 21 cm 観測で見出された折れ曲が りと類似の現象である。

Humphreys (1970)
超巨星の空間分布と運動学
 全スペクトル型に亘る超巨星の分布と運動を、特にガスとの相関を重点的に、 調べた。この研究に用いた星は表にまとめた。これら超巨星の 60 % はグループ で存在している。オールト定数 A = 14 km/s/kpc が得られた。また二次係数が -0.6 km/s/kpc2 と求まった。  星とガスの速度を比較した結果の一致は良かった。これらの超巨星は比較的 ガスの濃い箇所に多い。星の運動残差はグループの運動が非円周回転であること を示唆する。カリーナ・ケンタウルス領域では腕の両側で系統運動 10 km/s が 検出された。これは Lin の密度波理論の予想に合う。ペルセウスの運動残差は 部分的にはこのずれ運動のためかも知れない。

Weaver (1970)
ハットクリークサーベイからの渦状腕構造
 ハットクリーク+南半球の HI 観測を基礎に渦状構造を議論する。ピッチ角 = 12.5° で腕に多くの枝があり、腕間副構造も豊富であることが判った。 太陽は主要腕にはなく、銀河系の主要構造であるサジタリウス腕の枝の上に ある。 太陽の周辺にある若い星はこの枝に沿っている。この局所構造に関しては星も ガスもピッチ角 20 - 25° という値で一致している。

Kerr (1970)
サジタリウス腕とカリーナ腕との間のギャップの証拠
 11 cm 連続波と再結合線強度の銀経分布ヒストグラムから、 l = [292, 304] 区間のフラックス強度が著しく低いことが判る。 これはカリーナ腕とサジタリウス腕は分離した構造である証拠 である。 この推論は運動距離と無関係で回転曲線の選択に よらない。

Kerr (1970a)
我々の銀河における中性水素の渦状構造
 21 cm 観測から得られる中性水素の渦状構造を示す。水素マップを作る際の 問題点を論ずる。  渦状構造の一つの可能な解釈を示す。渦状腕内の水素の特性を論じ、 HI と HII の運動を比較する。

Courtes, Georgelin, Monnet (1970)
HIIRs から決まる銀河系構造の新しい解釈
 HIIRsからの 6000 本の視線速度から新しい渦状構造=ピッチ角 20° の 4 本腕、が見出された。  HIIRs の観測視線速度は HI 視線速度と一致した。

Georgelin, Georgelin (1970)
3つの遠方 HIIRs から決まるサジタリウス・カリーナ腕の延長
 カリーナの 4°.5x4°.5 領域が ラシーヤ観測所ファブリーペロリング で観測された。 l = 290 で 9 HIIRs の視線速度が得られた。  それらの運動距離は 3 - 9 kpc に亘るが、励起星の分光測光距離とよく一 致する。この銀経で渦状腕に沿って接点方向を見ていることが確認された。 その結果、サジタリウス・カリーナ腕のより完全な描像が得られた。

Bok 1970
プログレスレポート
 カリーナ・ケンタウルス区域 l = [265, 305] における、 O-, B-型星、HIIR, HI, ダストの分布に関するデータをまとめた。公表データに UBV 光電測光と 新しい写真画像も加えた。結果は図9と図10にまとめた。カリーナ渦状構造は l = 282 で、また l = 295 で鋭く区切られている。その距離は 1.5 kpc - 6 kpc である。その外側縁は太陽から 8 kpc の所でほぼ接点方向となる。腕構造は 距離 9 - 10 kpc の所で曲がっている。この特徴は HI, 電波 HII データにも 現れている。  図9に現在の分布データを天体タイプ毎に図示した。O-, B-型星と HIIR は 密接に関連していて、r < 6 kpc では l = [285, 295] に集中している。 HI はその両側にはみ出て分布している。長周期セファイドは O-, B-型星、 HIIR と類似の集中を示す。  l = [282, 295] 方向の星間減光は,r = 4 - 5 kpc で 0.5 mag/ kpc である。 しかし、カリーナ腕構造の外側ではもっと強い減光が観測されている。 l = [265, 280] では r = 2 kpc で Av = 3.5 mag の減光が観測されている。 r = 4 kpc ではさらに強い減光が示唆されている。このようにカリーナ腕構造の 外側で減光が強いのは一般的な現象のようである。弱い減光は腕構造の内側 でのみ見られる。  図10には O-, B-型星と HIIR のピーク巾 = 0.8 kpc で、 距離 4 kpc で 12° であることを示している。一方 HI は 8° で 巾 0.6 kpc である。

Courtes, Georgelin, Geogelin, Monnet (1969)
HIIRs から決めた銀河系渦状腕の形と回転曲線のパラメタ―
 HIIRs の視線速度と分光測光距離を、HI 21 cm から決まる速度と OB 星が なぞる腕の幾何構造との間を繋ぐことに用いた。星間電離水素と OB-星、 セファイドから得られる運動データは同じで、重力効果が支配的であることを 示す。  l = [305, 333] 区間には二つの速度極大が見出される。そして、有名なペ ルセウス腕と局所腕がはっきりと分離された。HI, HIIRs, O-型星の星団が 4本の腕上に位置した。これらは 2kpc づつ離れ、ピッチ角= 20° で あった。

Dickel, Wendker, Bieritz 1969
シグナスX領域 V. 可視 HII 領域のカタログと距離
 シグナス X 西半分側の Hα 星雲のカタログを示す。 カタログの内容は、位置、形、Hα 表面輝度である。電波データのある 90天体については赤化データから距離を求めた。  星間減光の値は可視光と電波との強度比から決定した。星雲までの距離は 1 kpc から 4 kpc 以上に亘る。シグナスX全体を取り囲むフィラメントの 円環について短く述べる。

Yuan (1969)
天の川渦状構造への密度波理論の応用
 円盤銀河に密度波があると、星間ガスは円周運動からずれて運動する。この 系統的な偏差を理論と観測の両面から研究した。この系統運動の視線成分は 天の川銀河の渦状構造を同定する際に全く新しい方法を与える。  この方法でサジタリウス腕とノルマ・スキュータム腕の位置を決定する。 密度波理論とシュミットモデルを用いて、理論的渦状構造と観測との比較を 行った。渦状腕は 13.5 km/s/kpc で回転する。これはガスの効果と円盤の厚み の影響を含んでおり、無限に薄い極限での 11.5 km/s/kpc に対応する。

Courtes, Georgelin, Geogelin, Monnet (1969)
HIIRs から決めた銀河系渦状腕の形と回転曲線のパラメタ―
 HIIRs の視線速度と分光測光距離を、HI 21 cm から決まる速度と OB 星が なぞる腕の幾何構造との間を繋ぐことに用いた。星間電離水素と OB-星、 セファイドから得られる運動データは同じで、重力効果が支配的であることを 示す。  l = [305, 333] 区間には二つの速度極大が見出される。そして、有名なペ ルセウス腕と局所腕がはっきりと分離された。HI, HIIRs, O-型星の星団が 4本の腕上に位置した。これらは 2kpc づつ離れ、ピッチ角= 20° で あった。

McCuskey (1969) 
銀河系反中心方向の M-型巨星 
 反中心方向 (l, b) = (186, +1) 8 平方度の領域で M0 - M1, M2 - M4, M5 - M8 巨星の空間密度を距離の関数として見積もった。493 星の赤領域対物プリ ズム、赤外と V 等級が使用データである。
 反中心方向での距離による数密度の低下は、  M0 - M1 星では、r = [1, 5] kpc で D(r) = 9.5 から 2.5 ×10-6pc-3、  M2 - M4 星では、r = [1, 5] kpc で D(r) = 4 から 2.5 ×10-6pc-3、  M5 - M8 星では、r = [2, 5] kpc で D(r) = 1.0 から 0.25 ×10-6pc-3 である。

Fernie (1968) 
古典セファイドと銀河系構造 
 古典セファイドの空間分布に基づいて銀河系の構造を研究した。主な結果は
(i) 星間減光の銀経依存は kv=0.90+0.28sin(l+41)
(ii) 太陽はセファイドで定義される腕の外側の縁に位置する。
(iii) これは B-型星で定義される局所腕のケースと逆である。
現在のセファイドサーベイは不完全で、特に高銀緯 b > 10 での mv = 7 セファイドはまだ見つかるはずである。
 太陽は銀河面から 45±15 pc 上にあり、この面は形式的な銀河面に対し 0.8±0.2° 傾いている。この二つの面の交差点は太陽から 5.2 kpc, l = 97° 方向にあり、ノード線がこの方向に直交している。セファイドの z 方向分布は指数関数型でスケール高は 70 pc である。 Ro = 10 kpc を仮定して、 平均周期は 1 day/kpc で減少する。 

Racine (1968)
南天星雲の星
 反射星雲中の星の測光および分光観測を行った。二色図上での赤化勾配は正常で 早期型星よりも晩期型星に対して急であることが判った。  データからこれらの天体の距離と空間分布を求めた。観測からは約15の反射星雲の アソシエイションが現れた。はっきりした R-アソシエイションの帯がオリオン腕の縁

McCuskey 1967
銀河系反中心方向での恒星の空間分布
 (l, b) = (186, +1) 銀河系反中心方向 18.55 deg2 の 3621 星 のスペクトル型と V とを得た。Vlimit = 12.3 である。 A5 より早期の星に対しては B-V カラーも求めた。付録 A, B にはファイン ディングチャートと星のカタログを付けた。121 個の OB 星の解析からは 局所渦状腕(オリオン腕)の先に腕が存在する証拠は見つからなかった。
 星間減光は r = 2 kpc で Av = 1.8 mag, 4 kpc で 2.3 mag である。 早期 A 型星の超過が r = 0.8 kpc に、A2 - A5 星は r = 1 kpc に検出された。 A7 - F5 星は距離と共に急速に減少する。黄 - 赤色巨星の数はゆっくりと 低下する。4 つの距離で決めた一般光度関数 log ψ(Mv) は van Rhijn 関数からあまりずれない。

Lindblad 1967
銀河系反中心方向の 21 cm 観測
 銀河系反中心方向の 21-cm 観測が Dwingeloo 25-m 望遠鏡で行われた。 目的は速度からこの領域の天体成分を分解することである。ラインをガウシャン で分けて、(l, v) 図上で解析した(図6)。それらの成分の(b、v)上の性質 を表2にまとめた。
 良く知られたペルセウス腕、オリオン腕、それに腕 F, 腕 I に加え、三つの細い 腕が銀河面とはずれて存在し、反中心方向でこちらに接近する速度を示す。  これ等の内、最も極端な成分は l = 180 で b = -9 まで下がり、視線速度 -29.5 km/s を示す。この腕はライデンマップ上で最も外側の腕の延長を成している。
 銀緯方向に大きく広がった二つの成分もある。一つは異常なほど速度分散が小さい。 これは近傍の年齢 70 Myr の膨張リングではないか。もう一つは微かで、速度分散は 19 km/s と大きい。これは腕間ガスかも知れないが、その性質は不明である。

Burton 1966
サジタリウス腕の縁近くの系統的ガス流の予備的考察
 l = [43, 56], b = [-4.5, 4.5] の 236 点で HI 21-cm 波の観測を行った。 l-v 図と b-v 図上に等輝度温度線を描いた。光学深さラインプロファイルを ガウス型成分の和で表して等高線図にした。  サジタリウス腕を含む、渦状腕の部分が同定された。サジタリウス腕が cross section で見えるのと同じ個所に水素の別の流れが見えた。それら は腕自身より系統的により高速である。この流れの存在は銀河回転曲線に 影響する。

Feast 1966
銀河中心方向 Me 変光星の運動と惑星状星雲との比較
 l = [20, 355], b = [-17, -2] の 51 Me, 2 Se 変光星の視線速度を決めた。 多くは太陽から 5 kpc 以上離れている。 Me, 特に遠方の星は、銀河中心方向 (|l| < 5) で非常に急な速度勾配を示す。同様の現象が惑星状星雲でも見 られ、どちらも l = [5, 0] で内向き軌道が、l = [0, 355] で外向き軌道が 卓越するためと解釈される。  短周期変光星は銀河中心から動径方向の速度散布度 α が、銀河中心 距離のかなりの範囲に亘って一定であることを示す。これは速度楕円体理論と 一致する。惑星状星雲に見られる、α が銀河中心に近づくに連れ増大す る傾向はこれらの天体の年齢が Me 変光星と同様にかなり広い範囲に亘ること を意味する。

Sharpless 1966
アソシエイション、HIIRs、銀河星、超巨星の分布
 "Galactic Structure" の第7章。1965 年当時までの腕追跡天体、アソシエ イション、HIIRs、星団、超巨星の研究結果を解説。相互に比較して、 最終案を出す。  サジタリウス腕、オリオン腕、ペルセウス腕がほぼ確定し、サジタリウス腕の 内側にもう一つあるらしいという推測がなされている。

Kerr, Westerhout 1965
星間水素の分布
 "Galactic Structure" の第9章。 HI 観測のまとめ。Oort58 との違いは残念ながら読み取れなかった。

Blanco (1965) 
晩期型巨星の分布と運動 
 スペクトル型 C, S, gM の星の空間分布と運動を調べた。変光星かどうかは 区別していない。変光星のみについては Plaut 1965 参照。C, S 型星の光度と 固有カラーの情報が不足しているため、またそれらの空間密度が低いため、 その空間分布については、天空上の見かけ分布と特異運動に頼らざるを得なか った。 gM 型星では状況はずっとましで、空間分布に関していくらかのことが 言える。  太陽近傍での gM 星空間密度は 9,000 kpc-3である。銀河面垂直 方向高度 250 pc でこの密度は半減する。 銀河面上では銀河中心方向に増加し、 反中心方向で減少するがその率は不明である。M5 より早期型の gM 星の約半数 かそれ以上が渦状腕に集中している。 N 型星は他の種族 I 星と共に腕に集中 して見える。 R 型星にはその集中が見られない。それらはバルジに見つかって いない。 S 型星の分布は二つに分かれる。一つは古典的な種族 I と同じ、 もう一つは長周期変光星と同じ分布である。  gM 星の速度楕円体は主系列 F 型星と似る。R 型星の速度楕円体は G - K 矮星のそれと似る。

Kraft, Schmidt (1963) 
セファイドから決まる銀河系構造と回転 
  Kraft (1961) によるセファイド周期光度関係と周期カラー関係を用いて、光電測光等級と カラーの分かっている全セファイドの距離を求めた。1500 pc 以内のセファイ ドの大部分は太陽から見て銀河中心側にある。長周期セファイドのみに、OB アソシエイションと似た渦状腕の兆候が見える。  セファイドの視線速度の解析から、回転定数 A と太陽運動を求めた。 視線速度には系統的に -3 km/s のズレがあった。(意味不明)。銀河面上の 太陽運動成分は Uo = -8 km/s, Vo = 13 km/s で、A = 15 km/s/kpc であった。 現在の距離スケールとここで導いた太陽運動を用いた永年視差に基づく距離 スケールとの差について議論する。

Elsasser, Haug (1960) 
Uber eine lichtelektrische Flachenphotometrie der sudlichen und nordlichen Milchstrabe in zwei Farben und die Struktur des kalaktischen Systems 
 南アフリカボイデン観測所とスイスユングフラウ観測所の夜光測光器 (60/300 o)による光電測光記録から、天の川の輝度とカラー分布を導いた。 最高輝度はサジタリウス領域で得られ、blue で 260 星 10m deg -2, visual で 750 星 10m deg-2 であっ た。銀河赤道上で最小輝度はペルセウスの blue で < 50 星 10m deg-2, visual で < 100 星 10m deg-2 であった。色指数は 1.1 mag から 0.4 mag の間である。銀河中心領域では 平均カラーは反中心方向より赤い。  天の川の見かけ総等級は P = -5.68 等 で、積分平均カラーは P-V = 0.89 mag である。図5、6に示す輝度とカラーの銀河赤道に沿った分布から、 図7,8のような銀河系渦状構造が導かれる。それは太陽近傍以外で HI 21 cm 観測の結果と良い一致を示す。渦状腕は凸面側が銀河回転の向きである。

Oort, Kerr, Westerhout (1958) 
渦星雲としての銀河系 
21 cm 観測から得られた腕の性質のレビュー Ro = 8 kpc.

Walraven, Muller, Oosterhoff (1958) 
セファイド 184 星の光電測光等級とカラー 
 ヨハネスブルグにあるライデン観測所ロックフェラー天体測光器により、南天 セファイドの青、黄色光電測光を行った。観測は 12 等まで完全である。 ケープ S システムの固有カラーと周期の間に
     SCImax = +0.01 + 0.10 log P
色超過と減光の関係を論じた。それから決まった 184 セファイドの距離は表 13に載せた。  図12にはセファイドの銀河面上の位置をプロットした。最も興味深い特徴は 銀河中心方向約 600 pc 付近にセファイドが集積して見えることである。これは カリーナ腕の連続となっているように見え、明らかにサジタリウス腕とは異なる。 サジタリウス腕自体は多数のセファイドを含む。

Westerhout (1957) 
外側銀河系における水素原子の分布 
 Ro = 8.2 kpc 外側の銀河系中性水素の 3D 分布を Kootwijk での lI = [340, 220], b = [-10, 10] 観測から導いた。H 強度を光学的厚みに変換する 際には、水素温度を 125 K と仮定した。シュミットの銀河系質量モデルを用いて、 視線速度を距離に変換した。  ペルセウス腕とオリオン腕が良く見える二本の腕で、その他に二つの腕が 認識可能である。ペルセウス腕の外には弱い Outer arm が R = 12.5 - 15 kpc まで伸びている。

Sanduleak (1957) 
天の川の透明 25 領域での M 型星の分布 
M 型星の銀経分布を調べた。M7 またはより晩期の星が円盤を形作り、その密度 は銀河中心距離と共に低下するという仮説を支持する結果が得られた。より早 期 M 型星も円盤種族を形成するだろうが、集団化の傾向も見られる。  太陽近傍での空間密度は 106 pc3 当たり、2 (≥M7), 3 (M5, M6), 24 (M2-M4) である。太陽近傍で ≥M2 星は星質量の 0.1 % を 占める。(早期 M 型星/晩期 M 型星)比は銀河中心方向に近づくに連れ減少する。

Weaver (1953) 
太陽周辺空間での B-型星と渦状構造 
 早期 B-型星、O-アソシエイション、星間水素の空間分布が似ていることを示す。 Oort, van de Hulst, Muller による水素の分布を早期 B-型星と OB-星分布の 第1近似として、その銀経、視線速度分布から第2次近似分布を導いた。渦状 構造が明瞭に現れた。腕に沿って明るい星の分布が指摘された。
 南天の早期型星は二つの構造に分かれる:局所星団と太陽から 1.2 kpc のところ に広がった構造である。"inner B stars" は南天で局所星団に属さない星で速度分散 が "outer B stars" の5倍以上ある。"outer B stars" は銀河中心距離が太陽より 大きい星のことである。

Oort 1952
渦状構造と星間電波放射
 Morgan 等の HIIRs を使った腕の発見に遅れたが、 HI 観測が 1951 から 始まった。  スペクトルのピークを繋ぎ HI 腕が見つかった。

Baade (1951) 
 銀河:現時点での問題 
 渦状銀河が系外銀河であることが判ってから 25 年経過した。赤方偏移の 発見により、現在銀河の研究は宇宙論の方向に大きな比重が掛かっている。 しかし、この論文では個々の銀河を研究する分野でどんな問題が重要かを論じる。  特に、天の川銀河では、腕の存在を実証する段階に来ている。そのためには 腕の追跡天体である O-, B-型星の配置を調べる必要がある。その絶対等級を 定める研究が Morgan, Nassau により進行中で、間もなく腕の位置がわかるで あろう。

Reber (1944) 
宇宙座標系で静止している特徴(Cosmic Static) 
 "cosmic static" は空から来る電波スペクトル中で、自分自身を露わにする 自然の中の擾乱である。 160 MHz でのサーベイを行い、擾乱の中心がいて座 にあることを見出した。  小さな極大が白鳥座、カシオペア座、 大犬座、とも座にある。極小がペルセウス座にある。観測可能なレベルの電波 放射が太陽から来る。



バルジ

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著者 内容

Iwanek, Poleski, Kozlowski, Soszynski, Pietrukowicz, Ban, Skowron, Mroz, Wrona 2023
66,000 ミラを使った銀河系3次元マップ 
 OGLE で発見された 65,981 ミラ型星の空間分布を、 X−型ボックス成分を 含む3成分バーと非軸対称円盤から成るモデルで解析した。距離不定性は 階層的ベイズ推定法で考慮した。銀河中心までの 距離は Ro = 7.66 ±0.01(stat.)±0.39(sys.) kpc、 バルジ主軸と太陽-GC 視線方向との角度は 20.2°±0.7° である。  若い種族と中間年齢種族から成る銀河系の3次元マップを初めて提示する。 バルジの X-型成分とフレアリング円盤の独立な証拠も示す。ここに使用した ミラ型星の完全なカタログも示した。距離精度中間値は 6.6 % である。 ( 実際はバルジモデル )

Lebzelter, Nowlavi, Lecoeur-Taibi, Trabucci, Audard, Garcia-Lario, Gavras, Holl, Jevardat de Fombelle, Nienartowicz, Rimoldini, Eyer 2022
ガイア DR3: ガイア第2 LPV カタログ 
 セカンド Gaia LPVs カタログは G の変光巾が 0.1 mag ( 5 - 95 quantile range) の 1,720,558 LPVs を含む。他種変光星の混入を種々のファイルたーで 防いだ。周期と振幅は G-バンド変光曲線へのモデルフィットから決めた。C-星 は RP スペクトルの分子吸収帯から決めた。  392,240 LPVs には周期 P が与えられた。 546,468 星が C-星と分類された。 OGLE と ASAS-SN データとの比較から完全性は 80 % と評価された。リカバリー 率はミラ型で 90 %, SR と Irr で 60 % である。同時に LPVs 数は既知数の何 倍にもなった。特に混んだ領域でそうである。混入率は 2 % 以下である。しっか りした理論的議論に基づく C-星分類は文献にある分光で同定された炭素星と矛盾 しない。しかし、混んだ領域や赤化の強い場合注意が必要である。

Nogueras-Lara, Schodel, Gallego, Dong, Shahzamanian, Girard, Nishiyama, Najarro, Neumayer (2019)
GALACTICNUCLEUS: 高角分解能 JHKs 銀河中心サーベイ II. 第1データリリース 
 GC の NIR サーベイ= 2MASS, UKIDSS, VVV, SIRIUS の角分解能は GC の 込み具合を扱うのに必要なレベルに達していない。ここで 0.2" 分解能の JHK サーベイ GALACTICNUCLEUS を報告する。  GC 0.3 deg2 の JHKs 測光を行い、 3.3 106 個中、 J で 20 %, H で 65 %, Ks で 90 % を検出した。5σ で J = 22, H = 21, Ks = 21 mag である。J = 21, H = 19, Ks = 18 で精度は 0.05 mag である。


Nogueras-Lara + 11 (2018)
GALACTICNUCLEUS: GC の高角分解能 JHKs サーベイ
 HAWK-I/VLT による、分解能 0.2" の JHKs サーベイを SgrA* の周り 7.95'x 3.43' で行った。短時間露出とスペックル・ホログラフィ・アルゴリズムにより、 PSF 0.2" FWHM 像を得た。位置較正は VVV, 測光較正は SIRIUS により行った。 5 σ 限界等級は J 22, H 21, Ks 20 等であった。測光精度 0.05 等が J 20, H 17, Ks 16 等まで保証される。  CMD 上に5つの特徴が見えるが、その 3つは渦状腕らしい。残り二つは GC の高減光と低減光の恒星集団であろう。 減光マップは銀河中心領域で ISM がムラムラであることを示す。JHKs の減光 がべき指数 αJHKs = 2.30±0.08 でよく表される。 この値が視線に沿って変わる、または減光深さで変わる証拠はない。赤化補正 した CMD は星の大部分は太陽メタルかそれ以上であることを示す。

Gonzalez, Minniti, Valenti, + 8 (2018)
 VVV RC が示す銀河系バーの背後にある構造
 VVV カタログを使い、 l = [-10, 10], b = [-1.5, 1.5] で高空間分解能の 減光マップを作った。それらを使い赤化補正したカタログで、銀河面レッドク ランプの周りで Ks 光度関数を作った。主ピークより暗い第2ピークが見つか った。それらは依然考えられたバルジの RGB バンプだけでは解釈できない。  この暗い第2ピークは主にバーの向こう側にある渦状腕構造に対応する。 この結果はバルジ RGB バンプの特性を研究する際には |b| < 2 領域を 避けるべきであることを示す。そこでは背景のレッドクランプ種族が大きな コンタミを生むからである。
(LF の RGB が2次式で表される 保証はないので、その揺らぎが第2ピークとその怪しげな銀経変化を 生み出した可能性が否定できない。ここで止め。 )

Haywood, Di Matteo, Lehnert, Snaith, Fragkoudi, Khoperskov (2018)
天の川銀河内側円盤とバルジの系統学 
 MW R ≤ 7 kpc のバルジと円盤が単一の化学進化と二期の星形成活動で 上手く記述できることを示す。内側円盤の種族は一つであり、バーの外側リン ドブラッド共鳴(OLR) がこの一様性を説明する鍵である。我々の二期星形成モ デルでは、メタル量、[α/H], [α/Fe], 年齢-メタル量関係が全て 内側円盤とバルジの観測に一致する。バルジと内側円盤のメタル量分布におい て、[Fe/H] = 0 dex 付近に現れる窪みは内側円盤の星形成史で年齢 8 Gyr に 起きた星形成活動の一時停止と、バルジと内側円盤星の共通進化を反映する。 内側円盤 R ≤ 7 kpc に対する我々の結果は, 銀河系総バリオン質量の大 きな割合が数ビリオン年で急速に構築されたという考えに合う。  z ≤ 1.5 の頃、銀河系の星形成が停止し始め、高 α 厚い円盤 形成の終了から薄い円盤の開始に切り替わり、未だ円盤はガスが豊富な時代に ガス降着は強くはあり得なかった。この降着停止期の前後で [α/Fe] は 異なるであろうが、観測では未確認である。z ≤ 2 における降着率とガス 量比率の低下は、円盤を安定させ、厚い円盤から薄い円盤への転移を許し、天 の川銀河のゆっくりした進化の開始をもたらす。恐らくこれが恒星バーの発達 を可能とし、我々はそれが星形成の停止につながったと仮定する。 今回の解析は天の川の歴史、特に厚い円盤から薄い円盤への転移と星形成の 一時停止は星形成効率の低下により駆動されたに違いない。ガス降着の低下、 バーの形成、星形成停止が同じ時期に起きたことは互いに因果関係で結びつき、 それで同時に発生したのである。貯蔵ガスの 20 % が分子であると仮定すると 我々のモデルはシュミットケニカット関係に上手く乗る。

Veneziani + 22, 2016
ハーシェル Hi-GAL サーベイによる星形成の解析 II.
銀河系長いバーの先端
 Hi-GAL による l = [19, 33], [340, 350], b = [-1, +1] サーベイからの、 長い銀河系バーの先端領域における星形成クランプの性質を調べた。新しく生 まれた大質量星と大質量原始星を同定した、それらの性質を調べた。 遠い側のバー先端で NANTEN CO(1-0) で見つかった5つの巨大分子雲複合体を 研究した。
 大質量の乱流塊が星団へと陥落する時期に形成されると予想される原始星の 数から星形成率を評価した。そして、与えられた初期乱流塊の可能な最終配置 から原始星の数を予想した。乱流核にモンテカルロ法を適用する新しい方法を 開発し、陥落の間に作られる天体の多重性も配慮した。
 第1象限先端での星形成率は 1.2 10-3 Mo yr-1 kpc-3、第4象限先端での星形成率は 1.5 10-3 Mo yr-1 kpc-3 である。視野全体での平均値は 0.9 10-3 Mo yr-1 kpc-3 と 0.8 10-3 Mo yr-1 kpc-3 と である。変換効率は第1象限で 0.8 %, 第4象限で 0.5 % であり、特に バーの近くで変化しない。CO 等高線から決まった、第4象限バー先端での 星形成域は周囲領域より高い星形成と星形成率を示す。しかし、その変換 効率は似たような値である。
 バー先端部は前景、背景部に比べて高い星形成率を持つ。しかし、変換 効率は観測領域全体で変化がなく、バーにおける星形成活動はダストと分 子量が多いためであり、特別な加速機構が働いているわけではないことを 示す。

Wegg, Gerhart, Portail 2015
天の川バルジ外側バーの構造
 銀河系バーが銀河面でどのような構造を有しているかは不明である。 バルジ外側の銀河系バー=ロングバーを UKIDSS、2MASS, VVV, GLIMPSE からの レッドクランプ星を用いて調べた。これ等のサーベイを合体して、|b| < 9, |l| <: 40 のデータを得た。解析の結果、
(i) |b| = 5 でバーは l = 25 まで伸びている。もっと低銀緯では l = 30 まで。
(ii) ロングバーの方位角は 28 - 33 の範囲で、|b| < 10 で測ったバルジ の角度と整合する。
(iii) レッドクランプ星のスケール高はバルジからロングバーへ滑らかに移行する。
(iv) ロングバーには二つのスケール高が併存する証拠がある。一つは 180 pc の 薄いバー成分であり、太陽付近での古い薄い円盤成分とよく似ている。もう一つは 45 pc の非常に薄いバー成分で、バーの端付近に集中する。
(v) レッドクランプ等級分布のパラメトリックモデルを作り、2成分バーの 半値長(?)として 5.0±0.2 kpc, 薄いバーのみでは 4.6±0.3 kpc を得た。銀河系のボクシー/ピーナッツバルジはもっと長くて平たいバーを 伴い、これは銀河の観測やシミュレーション結果と合致する。

Schultheis, Chen. Jiang, Gonzalez, Enokiya, Fukui, Torii, Rejkuba, Minniti (2014)
銀河系バルジを高分解能でマップする:3D減光マップ、CO と X-ファクター  
 VVV + ブザンソンモデルから、l = [10, -10], b = [-10, 5] の 3D 減光マップを作った。最近開発された色超過を用いる方法を用いる。 第1に Ks-(H-Ks) と Ks-(J-Ks) CMD を VVV から作る。第2に、M-型星の 温度 - カラー関係と距離 - カラー関係を用いて、減光 - 距離関係を 導く。観測されたカラーを距離の関数として、ブザンソンモデルから決まる 固有カラーにずらすには逐次近似の方法を使う。この結果、 3D 減光マップ が得られる。
 全 VVV 領域で、角分解能 6×6 , 距離区画 0.5 kpc の E(J-Ks) と E(H-Ks) 3D 減光マップを作った。距離は 10 kpc, 減光は Av = 30 mag に達する。マップはバーの前面に多くの物質が 存在することを明らかにした。特に 5 - 7 kpc に多い。我々は減光マップを NANNTEN2 の CO 観測と較べた。その結果 Av と CO の良い相関が確認された。 両者から X ファクターを X = 2.5±0.47 × 1020 cm-2 K-1 (km/s)-1 と定めた。

Minniti, Saito, Gonzalez, Zoccali,+9 (2014)
VVV による銀河系の人口統計学 III.グレートダークレーン  
 VVV サーベイの 157 M 星赤外測光を用いて、バルジ内のダスト雲の大規模分布を 解析した。我々はバルジの CMD を調べ、レッドクランプ星のカラーが二つに 分かれることを示した。カラー差の平均は Δ(Z-Ks) = 0.55 である。 これは Av = 2 に相当する。  我々は l = [10, -10] にかけて銀河面の上下、中間銀緯帯に光学的に厚い ダスト帯があると結論する。我々はそれを "Great Dark Lane" と呼ぶ。その 距離はまだ不定であるが、バルジ前面にある。このダークレーンは銀河系の バーバルジ構造を考える際に重要な拘束である。マイクロレンズィングと 星種族への影響も論じる。

Wegg, Gerhard (2013)
 VVV レッドクランプによる銀河系バルジの3次元マップ
 内側銀河系では円盤不安定性から生じたと考えられるボクシー3軸不等バルジ が支配的である。その近さに拘わらず、我々が不透明な円盤中にあるため、その 大規模構造は未だに良く知られていない。  VVV サーベイの DR1 を用い、レッドクランプ星を用いたバルジの3次元分布 を示す。視線方向の密度分布は Ks 分布に減光と検出度の補正を行って求めた。 モデル化に当たってはバルジは8重の対称性を保持すると仮定した。
 そうして、バー主軸の傾きを (27±2)° と求めた。得られた密度 分布は非常に細長く、軸比が 10;6.3;2.6 で指数関数型スケール長= 0.70: 0.44-0.18 kpc である。銀河面から 400 pc 上でバルジの密度分布はX字構造 を示す。全体としての構造は棒銀河に特有なボクシーでピーナツ型の形を している。

Nataf+13 (2013)
バルジ方向の赤化と減光:Rv=2.5 減光則
 OGLE-III with VVV と 2MASS データの E(J-Ks) を結合して、長らく問題だった 銀河バルジ方向の非標準的可視域減光則の問題を解決した。減光は次の式でよく 表せる:AI = 0.7465E(V-I) + 1.3700E(J-Ks), または同等だが、 AI = 1.217 E(V-I)(1 + 1.126(E(J-Ks)/E(V-I) - 0.3433))。 内側銀河の可視と近赤外の減光則は Rv = 2.5 ±0.2 に従う。この値は タイプ Ia SN の起きた銀河での結果に一致する。我々の用いたフィールドの大きさ 6' という細かさでも場所による赤化の違いが検出された。
 バルジレッドクランプの固有パラメタ―は以下の通りに決まった:
(MI,RC, σ(I)RC, (V-I)RC, σ(V-I)RC, (J-Ks)RC) = (-0.12, 0.09, 1.06, 0.121, 0.66) この値から、バルジ構造のパラメタ―を決めることが できた。われわれは銀河中心距離を 8.2 kpc と定めた。この結果、以前に 存在した I バンド観測から定めたバルジ距離の矛盾が解消した。軸の傾き 角度の上限 α = 40 deg である。見かけ等級のピークは N 体計算 からの予想値 25 deg と矛盾しない。RC星の数はバルジ星総質量として 2.0 × 1010 を示す。

Gonzalez, Rejkuba, Zoccali, Valenti, Minniti, Schultheis, Tobar, Chen (2011)
 VVV と 2MASS から導いた銀河系バルジの赤化と金属量マップ II. 高分解能で完全な減光マップとバルジ研究におけるその意義
 バルジの研究にとり強くて変動する減光は大きな障害である。   VVV 公開データを用いてバルジ全体の減光を高分解能で調べた。  論文Iで述べた方法で、 b = [-10.3, +5.1], l = [-10.0, +10.4] での赤化 を 2×2 から 2×2 の分解能で求めた。各小区間 内のレッドクランプ平均 (J-Ks) をバーデの窓のレッドクランプ平均 (J-Ks) と 較べて赤化を出したのである。
 2 という小さなスケールでの赤化の大きな変動が検出された。 外側バルジで Schlegel マップと較べた結果は良好な一致が得られた。バルジの星 種族や構造の研究には高分解の減光マップが必須であることが示された。  バルジ全体の 315 平方度を被う最初の減光マップを示した。 b = -3 のバーデの窓 で AK で 0.1 mag の変動があることが判った。バルジ種族の研究をする 場合には 2 - 6 の減光変動を考慮しなければ いけない。

Hill, Babusiaux, Gomez, Haywood, Katz, Royer (2012)
内側円盤のメタル量分布とバルジ-円盤関係
 内側銀河系円盤の中間-高齢種族は探索があまり進んでいない亜集団である。 そこで、Rgc = 3 - 5 kpx, Z < 300 pc にある内側円盤レッドクランプ 200 星の高分散分光観測を行った。Rgc < 7 kpc の円盤メタル量は 0.2 dex で、明らかに太陽近傍より高い。  これは中間年齢の星には銀河円盤動径に沿ってかなりの勾配がある事を意味 する。この観測はバルジメタル量分布の高メタル部分は内側円盤の力学的不安 定性が起源であるという説を支持する。

Saito, Minniti,+ 10 (2012)
銀河系のデモグラフィックス 1.バルジの 84 M 星 CMD 
 VVV 2010 - 2011 データはバルジ 315 deg2 をカバーした。 これによりバルジ全域の CMD を作成した。データには 173 M 星が3バンド 測光値を与えている。内、"星" のフラッグの付いた天体は 84 M あった。 CMD は複雑な種族構成と減光効果により入り組んでいる。b = -8 と 10 では レッドクランプ星の等級は二重に分かれる。一方、もっと内側の b = -3 では カラーが広がっている。  星種族合成モデルは主系列星と巨星が (J-Ks) = [0.7, 0.9], Ks > 14 で支配的であることを示す。 バルジに赤色矮星の存在を見つけた。これらは惑星トランジット探索に重要 である。外側バルジで見つかった二重等級のレッドクランプは X-シェイプ バルジの証拠である。一方内側バルジのレッドクランプカラーの広がり、 極端な場合は第2ピークは赤化による。銀河系中心の周辺は減光と赤化が 強いため解釈が困難である。

Bensby, Alves-Brito, Oey, Yong, Melendez (2011)
厚い円盤スケール長への初めての制約: Rgc = 4, 8, 12 kpc での K型巨星元素組成
 マゼラン望遠鏡搭載の MIKE 分光器を使い、外側円盤 Rgc = 9 - 13 kpc の 20 赤色巨星を観測した。比較用に内側円盤と太陽近傍の星も観測した。Rgc が 10 kpc を超える星では太陽近傍の薄い円盤星と同じ組成パターンしか見出 さなかった。それは銀河面から高く離れても変わらない。我々の結果は、厚い 円盤と薄い円盤の相対密度比が太陽近傍とは遥かに異なることを示す。  厚い円盤のスケール長は薄い円盤よりずっと短い。我々は厚い 円盤のスケール長を初めて測り、 Lthin = 3.8 kpc を仮定して、 Lthick = 2.0 kpc を得た。厚い円盤には年齢、メタル量、組成 の動径勾配がないが、我々は動径移行 (radial migration) がその原因では なかろうか。そしてそれは、厚い円盤とバルジの低メタル成分を繋ぐだろう。

Gonzlez, Rejkuba, Minniti, Zoccali, Velenti, Saito (2011)
 VVV から導いた銀河系内側バルジ
 VVV を用い、b = ±1 でのバーを追いかけた。これは以前に b = 1 で 調べた話の拡張である。6'x6' 区画でレッドクランプ星の J-Ks から赤化を求 める。次に 0.4 deg2 領域毎に赤化補正した光度関数を作り、 平均等級を求める。それらをバー構造を探るトレーサーに用いた。  その結果 Kso(l=-10) = 13.4, Kso(l=10) = 12.4 と分かった。バーの傾きが b = ±4, |l| < 4 では傾くことが分かった。これは他の研究で l > 0 において得られた結果に一致する。バーに内部構造が存在することを 意味する。これは半軸径 500 pc の内部バーなのかも知れない。

Gonzalez, Rejkuba, Zoccali, Valenti, Minniti (2011)
 VVV と 2MASS から導いた銀河系バルジの赤化と金属量マップ I. 方法と短軸マップ
 銀河系バルジの性質は複雑で数か所から外挿で導くわけにはいかない。  赤化マップを作る方法を示し、バルジ構造とメタル量勾配を測る。データには 最近始まった Vista Variables in the Via Lactea (VVV) を用いる。  b = [-8, -0.4], l = [0.2, 1.7] の 1835 サブフィールド内のレッドクランプ星の 平均 J - Ks カラーを求め、バーデの窓での値と比べる。バーデの窓に対しては、 E(B-V) = 0.55 を採用した。そこから微分赤化の影響がないほど小さい空間スケールで 赤化マップを作成する。赤化補正した等級を用いて 0.4° x 0.4° の大きさでバルジ光度関数を作る。それらから距離指標を求め、バルジ構造を探る。 最後に、各サブフィールドごとに導いた距離と減光から測光金属量を、赤色巨星枝カラー の内挿値を使って、求める。測光金属量分布は分光から求めた分布と比較する。
 赤化の決定は作った図から見て取れるように小さなスケールの変動に鋭敏である。 エラーの範囲で我々の結果は他の方法で決めた文献値と合致した。我々のマップは それらより高分解能で範囲も広い。光度関数は最近 2MASS, OGLEIII で発見された 二重レッドクランプを示し、従って X 字型のバルジ形態を追尾する。最後に、 測光金属量は分光値と良く合った。  VVV サーベイはここで示した方法でバルジの性質を調べるのに優秀な道具である。 多の方法との一致はこの方法をもっと広げることの安全性を保証する。

Saito, Zoccali, McWilliam, Minniti,Gonzalez, Hill (2011)
 X-型銀河系バルジのマップ
 2MASS レッドクランプ星を用いて、バルジにおけるその分布を調べた。 l = [8.5, -8.5], |b| = [3.5, 8.5] で、1 deg2 の RC 平均 距離を 170 deg2 でマップにした。高銀緯のレッドクランプは 2成分に分かれる。これは視線に沿って、異なる距離に二つの構造があるため である。この X-型は l = 0 近くの Z - X 面上で見ることができる。  レッドクランプの空間分布も X-型構造を裏付ける。銀河系のバルジは |l| ≤ 2 に X-型構造を持つと言える。更なる深い探査と分光観測が 必要である。

McWilliam, Zoccali (2010)
 二つのレッドクランプ星と X-型銀河系バルジ
 2MASS からバルジ |b| > 5.5 のレッドクランプが二つの種族に別れて いることを見出した。この分離は銀経で 13°, 銀緯で 20° に及ぶ。 この二つのピークは (l, b) = (1, -8) では 距離 6.5 kpc と 8.8 kpc ±0.2 kpc で 2.3 kpc の距離差がある。二重のレッドクランプは 傾いたバーの形状とは矛盾する。我々のデータ領域では二つのレッドクラ ンプの距離は銀経に無関係に一定である。これもバー形状と矛盾する。 二つのレッドクランプ密度は銀緯と共に激しく変化する。正銀経側では 前景レッドクランプ星が支配的である。一方負銀経では背景星が支配的と なる。
 前景と背景の分布極大を結んだ線は視線方向に対し 20°±4°: 傾く。これは銀河系バーの傾きと似た値である。二つのレッドクランプ間の 距離は銀河面に近づくと減少する。横から見るとバルジは X-型に見える。 この特徴は銀河の幾つかに見られるバルジや M-体計算の結果と似ている。 もっと似るのはもしバルジが 47 Tuc より 2 - 3 Gyr 若かった場合である。 我々の観測は、二つの種族は接線向きにバーの端点から漏斗状に発すると 考えると理解できる。X-, または二重漏斗が銀河中心まで伸びているのかも 知れない。太陽から見るとそれはピーナッツ/ボックス型に見え、バルジを 真横から見たら X-型に見えるのだろう。

Glass, Schultheis, Blommaert, Sahai, Stute, Uttenthaler (2009)
AGB 星の中間赤外周期等級関係
 AGB 変光星が 24 μm という中間赤外でも近赤外と同様の周期光度関係に 従うことが判った。そこではダストからの星周放射が支配的である。 LMC と HBC 6522 とは年齢もメタル量も異なるが、 M - log P 関係は同じらしい。  その傾きには波長による系統的な傾向はない。見かけ等級対 log P 関係の 差は 3.8 で、これは距離指数の差に等しい。変光星のカラーは log P > 1.85 が検出可能な質量放出の条件であることを示す。最長波長 24 μm では 多くのセミレギュラー変光星がミラと同じくらいの明るさのダストシェルを有す。 24 μ を含む LMC CMD には明白な分岐が見える。

西山その他 (2009)

銀河系中心方向の星間減光則 III. V, J, H, Ks, [3.6], [4.5], [5.8] and [8.0]
 銀河中心方向の 1.2 - 8 μm 星間減光則を, IRSF/SIRIUS サーベイと, 2MASS, Spitzer/IRAC/GLIMPSE II カタログを用いて定めた。 IRSF/SIRIUS サーベイは |l| ≤ 3 deg, |b| ≤ 1 deg で行われた。この J, H, Ks バンドは MKO システムと似ている。GLIMPSE II カタログと同定 された天体に対して、 Ks - (Ks - &lambda) 色等級図を作った。ここに、 λ = 3.6, 4.5, 5.8, 8.0 μm である。バルジレッドクランプ星の Ks 等級と赤色巨星枝の (Ks - &lambda) カラーを赤化ベクトルのトレーサーに用い て、AKs/E(Ks-λ) を得た。
前論文で得た近赤外の結果とつないで、 AJ:AH:AKs:A3.6:A4.5 :A5.8:A8.0=3.02:1.73:1:0.50:0.39:0.36:0.43 を得た。 これは、λ > 3 μm での減光曲線の平坦化を確認するものである。 2MASS J, H, Ks に関しても減光を求め、 MKO システムとの一致を確かめた。 この結果、J, H, Ks 帯では銀河中心方向の減光則が λ-2.0 でよく近似されることが確立した。近傍分子雲や希薄星間空間では信頼できる 観測が不足していて減光則を決めることは困難である。しかし、それらの視線 方向の観測結果を一つのべき乗関数で表現することはできない。

西山その他 (2008)

銀河系中心方向の星間減光則 II. V, J, H, Ks バンド
銀河系バルジの OGLE データに IRSF/SIRIUS 観測を足して、Av/E(V-J) = 1.251±0.014, AJ/E(V-J) = 0.225±0.007 を導いた。 その結果、 AJ/ AV = 0.188±0.005 が得られた。 この結果を論文 I での結果と組み合わせて、AV:AJ: AH:AKs = 1:0.188:0.108:0.062 を得た。これは長波長 側で急速に落ちる減光を表している。特に、 Ks 減光の強さが AKs/ AV = 1/16 で以前の値 1/10 と比べ著しく小さい値であることは 驚くべきことである。

Vallenari, Ragaini, Berttelli (2008)
銀河系バルジの方位角
  2MASS を用いて、 l = [17, -17], b = [-6, 3] の範囲で銀河系バルジ の構造を調べた。100 以上の領域が用いられた。その領域の距離をレッド クランプ法により決定した。  銀河系バルジの軸の方位角をどんな質量分布を仮定するかに応じて、 42±11 から 35±10 と定めた。

Lopez-Corredoira, Carera-Lavers, Mahoney, Hammersley, Garzon, Gonzalez-Fernandez (2007)
銀河系 のロングバー
 Galactic Legacy Infrared Mid-Plane Survey Extraordinaire データは銀河面に 埋まった長いバーの存在を確認した。これは我々が数年前に見出したのと同じ特徴 を有し、バルジとは異なる。この論文では長いバーに関する以前の主張、 長くて平らなサイズが 7.8 kpc × 1.2 kpc × 0.2 kpc で位置角 43°、と合致する二つの解析結果を報告する。
(1)2MASS と Midcourse Space Experiment(MSE) データは l = [30, 0] の方が l = [0, -30] より多い。これはバルジ、腕、リング、減光によるものではない。
(2)長いバーの距離を 2MASS を使って求めたが、我々のモデルと合致した。

西山その他 (2006)

銀河系中心方向の J, H, Ks 星間減光則
 銀河中心方向での減光対赤化比(the ratio of total to selective ectinction ) を J, H, K で求めた。IRSF/SIRIUS 観測領域は |l| ≤ 2.0 度、0.5 度 ≤ |b| ≤ 1.5 度である。減光と赤化の追跡には色等級図上でのレッドクランプの 位置を用いた。結果は、AKs/EH-Ks = 1.44±0.01, AKs/EJ-Ks = 0.494 ±0.006, AH/EJ-H = 1.42 ±0.02 で、以前に決められた 値より著しく小さい。  これらの値からから、AJ: AH: AKs: = 1 : 0.573±0.009 : 0.331±0.004、 と EJ-H/EH-Ks = 1.72 ±0.04 と求めた。指数型減光則 Aλ ∝ λ -1.99±0.02 は良い近似式である。さらに、AKs/ EH-Ks が観測領域に渡って小さな変化を示すことが分かった。これは、減光曲線 の普遍性が近赤外に関しては当てはまらないことを意味する。

Marshall, Robin, Reyle, Schultheis, Picaud (2006)

銀河系星間減光の 3D モデル
 2MASS と ブザンソンモデルを合わせて減光分布を計算した。  銀河モデルを使い星の固有カラーと距離の分布を与える。そこから近赤外 色超過、つまり減光を計算し、距離が評価される。  15 離れた、l = [100, -100], b = [-10, +10] の 64,000 視線方向にこの方法を用いた。我々の3次元マップを2次元の天空 に投影して、2D減光マップと CO 観測と較べた。
 異なるマップには共通の特徴が見えた。ダスト広域分布の特徴が明らか になった。星間物質のスケール高は 125 pc である。ダスト分布は非対称な ワープを示し、それは CO や HI と共通する。しかし、ワープの傾きや それが開始される銀河中心距離は HI 円盤より小さい。正銀経側では それは角度 θ = 89 で、銀河中心から 8.7 kpc で始まる。ワープの 勾配は 0.11 である。バルジ内にダストの存在が確認された。それは細長い 構造で、長さは 5.2 kpc, 太陽銀河中心線と 30 度の角度を成す。これは 銀河系のバーバルジに伴うダストレーンと解釈される。

Schultheis, Glass, Cioni (2004)

NGC 6522, LMC, SMC 領域での晩期型変光星
 2MASS から NGC 6522, LMC, SMC 3領域の完全サンプルを抽出し、MACHO, ISO データと同定した。各 MK ヒストグラム上で、TRGB の上で数が減る。 TRGB 光度はメタル量と共に増大する。また、与えられた MK に対す る (J-K)o もメタル量と共に大きくなる。これらのデータを Ferraro et al 2000 の銀河系球状星団と比較した。(J-H, H-K) 二色図上、低メタル星ほど多くの星が H-K 大になる傾向が著しい。これは、炭素星の割合が増加することによる。 全ての領域で主な変光星は、周期数十日の短周期変光星、長周期大振幅のミラ的 変光星、二重周期星であった。  低メタルになると、変光星の割合が小さくなり、与えられた振幅に対する最短 周期は長くなる。各領域で、 K - log P 図上の様々な傾向が見られた。LMC では 各領域間は類似しているがバルジ領域は異なる。バルジ領域では、K - log P 図 の "A" 系列は MK,0Tip をほとんど越えない。他のグル ープも LMC の対応系列と較べ途中で止まっている。マゼラン雲では 200 - 300 日周期の星が多数あり、 "C" 系列に従う。  ISOCAM で検出された MIR サンプルは MK < -7 星に対しては 完全である。様々な TCD, CMD には低メタルになると炭素星が増加する効果が 反映されている。ミラ型星の 等級・周期関係は少なくとも 7 μm までは 存在する。長周期変光星と二重周期 SRV からの質量放出はメタル量の差に 拘わらず、領域間で類似している。

Sumi 2004

銀河系中心方向の減光マップ:OGLE-IIバルジ
OGLE-II 銀河系バルジフィールド 48 個に対し、A(V), A(I) マップを作った。 測定には RC 星の V, I 測光が用いられた。

Cole, Weinberg 2002
銀河系バー年齢の上限
 2MASS データを用い、 J-Ks ≥ 2 の赤外炭素星種族を同定した。 これ等の星は以前に可視、赤外のサーベイで発見されたバーに沿って 並んでいることが判った。  炭素星の性質は、それらが中間年齢であることを強く示唆する。我々は バーの形成は 3 Gyr より新しく、確実に 6 Gyr より若いと結論する。 この結論の意味を議論する。
赤化補正なしのカラーだけで炭素星は?

Launhardt, Zylka, Mezge 2002
銀河系中心核バルジ III. 星と星間物質の大規模構造
 IRAS と COBE/DIRBE データを用い、銀河系中心 500 p の 2.2 - 240 μm の大規模恒星および星間物質分布を調べた。Ro = 8.5 kpc. 銀河系円盤とバルジ のモデルをから減光補正で表面輝度分布を成分に分解した。中心核バルジ(NB) は 他からはっきりと区別される、大質量で円盤状の恒星と分子雲の系で、GC に対称 である。形が平たい円盤状であり、恒星と分子ガスが非常に高密度で、星 形成が進行中であることで、NB は銀河系バルジとはっきり区別される。NB は R-2 NSC (Nuclear Stellar Cluster)=半径 230 pc, スケール高 45 pc, と、同じ大きさの Nuclear Molecular Disk から成る。
 NB は M = 1.4 109 Mo, L = 2.5 109 Lo である。L の 75 % は若い大質量 MS 星からの紫外、可視光である。  今回初めて、中心 500 pc の測光的質量分布を導いたが、それは運動学的な 質量分布と完全に一致した。よく用いられる R-2 型密度分布は 中心 30 pc でしか妥当でなく、それより外では中心核恒星円盤の平坦な質量 分布が支配的であることが分かった。
 NB 内の水素ガス質量は MH = 2 107 Mo で、 R = 110 pc の暖かい内側円盤と、外側にあり冷たく質量の 80 % を占める円環 から成る。NB 内の星間物質は非常にムラムラであり、質量の 90 % は濃い大 質量分子雲に含まれる。その体積率は数 % である。おそらく NB の重力ポテ ンシャルによる潮汐限界がその原因であろう。そのため、強い星間輻射が NB 全体に浸透し、また比較的低い平均減光を GC に与えている。さらに、第1象限 では NB 外側に 3 107 Mo, 第4象限では 1 107 Mo の冷たい分子ガスを見出した。この外側ガスは NB 星からの加熱を受けず、 中心分子帯 (Central Molecular Zone) に観測される非対称性の原因となっている。 読むのが大変で途中で投げ出した。

Freeman, Bland-Hawthornr 2002
新しい銀河系
 銀河の階層的な形成の枠組みないで、我々は自身の銀河が如何に現在に至ったかと 同様、銀河形成の粗い描像を持っているだけである。個々の星種族が原始銀河雲のどの 要素に結び付くかを描く詳細な筋書きは理解の彼方にある。  銀河系=近傍宇宙論と高赤方偏移宇宙=遠方宇宙論の両方から重要な手掛かりが 現れてきている。ここでは銀河系に見つかる過去の化石資料に重点を置く。 銀河系の詳細な研究は "baryon dissipation" に含まれる複雑な過程」を理解する 核心である。

Dutra, Santiago, Bica 2002A

内側バルジの低減光窓
 内側バルジの低減光領域、W02-2.1 (l, b) = (0.25°, -2.15°) と W359.4-3.1 (l, b) = (359.40°, -3.10°)、での減光マップを作った。 2MASS の (Ks, J-Ks) 色等級図の上部赤色巨星枝へのフィットから減光量を 評価した。この手法をバーデの窓と Sgr I 窓に適用して、妥当性を調べた。 我々が得た平均減光は以前の研究結果と良い一致を示した。
 観測領域内に低減光の窓を確認した。Schlegel et al 1998 の FIR マップは 2MASS 測光からの結果と似ている。したがって、われわれはダスト雲が基本的には 同じでバルジ前面に位置すると考える。しかし、AK の値は大きく 異なる。特に、W359.4-3.1 での FIR 減光強度は 2MASS からの減光に比べ 1.45 倍の強さであった。この現象の説明を論じた。これら二つの窓はバーデ の窓より銀緯が低く、バルジ研究にとって重要である。

Alard + ISOGAL Collaboration + MACHO Collaboration (2001)
バーデ窓の質量放出セミレギュラー変光星 
 ISOGAL (7, 15 μm)と MACHO (V, R) の天体同定からセミレギュラー変光 星の一般的性質を決めた。バーデの窓で約 300 のセミレギュラー星を集めた。 これらは主に M-型巨星で、AGB に沿って進化している。それらの log P - Mbol 関係を調べた。ISOGAL から質量放出率は 1 10-8 - 5 10-7 Mo/yr となった。
 質量放出率は光度と周期に依存する。いくつかのセミレギュラー星は短周期 ミラと同程度の質量放出を示すが、ミラ程の振幅は持たない。周期 70 日は 質量放出の必要条件であるが、十分条件ではない。放出率を dM/dt ∝ TαLβ で近似すると、 α = -8.80, β = +1.74 である。これはモデル予想と合う。 もし LMC の極端に大きな質量放出星を加え、 T = 一定とすると、 dM/dt ∝ L2.7 となる。この式は [10-8, 10-4] Mo/yr にあてはまる。

Hammersley et al 2000
銀河系の大きなバーに古い種族星を発見
 銀河面の色々な場所で NIR CMD と星計数を行った。 (l, b) = (27, 0), d = 5.7±0.7 kpc の所に円盤と較べ2倍、おそらくは 5 倍の星密度の箇所 がある。この構造はバルジから l = 28 まで (H, J-H) 図上ではっきりした 塊りを示す。  しかし、l > 28 では消える。その距離は l = 20 では l = 27 より 0.5 kpc 遠くにある。そして l = 10 までにはバルジと溶け合う。 l = 27, と l = 21 に非常に若い星の集団がある。それらを全て説明するのは長軸半径 4 kpc で位置角 43 ±7 の長いバーである。

Lopez-Corredoira, Hammersley, Garzon, Cabrera-Lavers, Castro-Rodriguez, Schultheis, Mahoney (2001)

銀河面内のバーとリングを DENIS で探す
 DENIS を用いて、長く薄いバー、リング、内側円盤の丸め込み(穴?)を 探した。まず、DENIS, 2MASS 星計数から面内バーとリングの特徴を調べた。 l = [-30, +30] の星計数は大きく非対称で、正銀経側がかなり多い。しかし、 |b| = 1.5 では天体数は対称になる。したがって、非対称の原因は円盤でも バルジでもない。
 円盤は中央に穴が開いている。この非対称成分は方向角 40°、長軸半径 3.9 kpc の面内バーがあるとすると説明可能である。しかし、星計数のピーク が l = -22 にもある。これは 3 kpc 腕の接線方向である。これはおそらく リングか擬リングであろう。面内の減光も非対称で負銀経側で大きい。 l < 8 では減光分布は b = 0 面に対し、 HI 円盤と同様に僅かに傾いて いる。我々は銀河系はかなり典型的なリング棒渦状銀河であると結論する。

Dehnen 2000
銀河系バー外側リンドブラッド共鳴が近傍速度分布に及ぼす影響 
 平坦回転曲線+回転バーの指数 関数型円盤の外側における速度分布関数のシミュレイションを行った。古い恒 星円盤のモデルに対し、 OLR は外側円盤の相当部分で f(v) にはっきりした 特徴を残した。バー角度 0° - 70°, OLR 半径の 2 kpc 外側までの位 置では、速度分布関数は (1) LSR 中心の通常分布成分と (2) より低回転速度 で外側に向かう第2成分の二つに二分される。  実際、太陽近傍の晩期型星に対するヒッパルコスデータからの速度分布関数 には、このような二分性が存在する。観測されるこの二分性が OLR により誘 引されたと解釈するなら、OLR 半径は太陽 軌道半径 Ro より僅かに小さいことになる。その上、観測速度関数をシミュレ イションと較べると、バーのパターン速度は太陽近傍の回転周期の 1.85± 0.15 倍であると分かる。

Schultheis + 9, 1999

内側バルジ方向の星間減光
 DENIS と RGB, AGB 等時線モデルを使い、バルジの減光マップを作った。 この方法の精度はバルジの光学的深さにより限定される。減光強度が既知の 領域での比較は非常に良い一致を示した。バルジ 20 平方度の減光マップを 示す。

Englmaier, Gerhart 1999
天の川銀河のガスダイナミックスと大規模形態
 太陽円内側のガスダイナミックスの新しいモデルを提案する。COBE 投影像から 出した近赤外バーと円盤に、中心の質点とあるモデルでは外側ハローも加えた、 重力ポテンシャル中の準定常な流れを決めた。  最良モデルは多くの観測事実と整合する。同期回転の外側にある4本腕構造は 定性的には |l| < 60° での5つの渦状腕端点を再現する。3-kpc腕 はバーの端から出て、同期回転域に伸びるモデル腕と一致する。  モデルは特にカスプ軌道ショックから半径 150 pc の x2 軌道円盤 への変換を記述している。   バーの同期回転半径は Rc = 3.5±0.5 kpc に収まる。バーの方向角は 20 - 25° である。HI, CO 観測からの終端速度は l = ±45° ( ∼ 5 kpc) まで、 L/M 比一定の近赤外バルジ+円盤モデルで記述された。

Frogel, Tiede, Kuchinski 1999
内側バルジのメタル量と赤化
  銀河系短軸沿いの7箇所で K, J-K 色等級図を調べた。上部 RGB の傾きから ⟨[Fe/H]⟩ の銀緯による変化は、 -10.3° ≤ b ≤ -0.8° では、傾きは -0.064±0.012 dex/deg である。平均減光強度とそこでの星ごとの減光の 分散との間には線形の関係があり、
σK = 0.056(±0.005) ⟨AK⟩ + 0.043(±0.005) であった。これはフィー ルドの大きさ(約90") よりも吸収雲のサイズが小さいためと解釈される。

Schultheis98, Ng, Hron, Kerschbaum 1998
パロマ―・グロニンゲンサーベイのフィールド3 II. セミレギュラーの近赤外測光
 パロマ―・グローニンゲンサーベイのフィールド3 (PG3, l = 0, b = 10) にある 78 SRs の近赤外測光を行い、既知の領域内ミラ型星と比較した。 PG3 SRs は PG3 Miras と P-L, P-color 関係で同一系列に並ぶことが判った。 そこでは SRs は Miras の短周期側拡張と見える。  フィールドと PG3 のミラは同じ P/(J-Ks) 関係に従う。しかし、SRsの場合は そうではない。PG3 のミラと SRs の双方共に Glass et al 1995 の Sgr I P-L 関係 に従う。それらは共に基本モードで脈動しているように見える。その金属量は intermediate から solar に分布している。

Binney, Gerhard, Spergel 1997
内側銀河系の測光構造
 内側銀河系の放射分布を、ダスト減光補正した COBE/DIRBE 表面輝度マップ からノンパラメトリックに、求めた。ベストフィットは太陽を銀河面の上方 14±4 pc に置いた時に得られた。得られた密度分布は細長い3次元 バルジが高度に非軸対称な円盤内に埋め込まれていることを示した。バルジの 軸比は 1 : 0.6 : 0.4 で長軸半径 2 kpc であった。長軸の近い側頂点は第1 象限にある。バルジを囲む楕円円盤は短軸 2 kpc, 長軸 3.5 kpc である。
 どのモデルにも短軸方向 2.2 kpc の所に密度極小がある。それに続く、極大 は 3 kpc の所にあり、l = -22°, +17° の方向にある。この点は L4 に対応するのかもしれない。そう考えて、バルジバーの長さを 使うと、バーのパターンスピードとして Ωb = 60 - 70 km/s/kpc を得る。
 渦状腕を持つ銀河モデルを使った数値実験によると、COBE データから回復された 高度に非対称な円盤は、もし密度コントラスト > 3 ならば渦状構造を反映する はずである。これらの実験はバルジの方向角が 20° 付近であることを示唆している。

Binney, Gerhard (1996)
銀河系バルジの脱投影について
 銀河系バルジの測光観測において起きた問題を解決するためのアルゴリズム を開発した。バルジは天空上にある大きさで広がっている。これにより空に 投影された二次元輝度分布を、バルジが3つの直交する対称面を持つという 仮定の下で、3次元分布に戻すことが可能である。

Weiland + 14 (1994)
銀河系バルジの COBE/DIRBE 観測
 COBE/DIRBE 1.25, 2.2, 3.5, 4.9 μm のバルジ低分解マップを示す。 減光補整および円盤成分除去の後、バルジの輝度分布は短軸対長軸の比が 0.6 の楕円形になった。  バルジ短軸のスケール高は 4 波長全てで 2°.1±0°.1 であった。 バルジの輝度分布等高線の銀経非対称性は定性的には第1象限に先端がある 3軸不等バーから予想されるものと一致する。銀河面からの傾きの兆候はない。

Hammersley, Garzon, Mahoney, Calbert (1994)
内側渦状腕とバーの赤外像
 2 ミクロン銀河面サーベイを用いて、銀河面 l = [15, 35] 2 ミクロン表面 輝度マップ上のピークの性質を調べた。低減光の穴ではピークを説明するのに 不十分であった。 l = 33 のピークは l = 21, 27 のピークと異なる光度関数 を有する。後者はほぼ確実に非常に明るい大質量の若い星から成ると言える。 それらがバーの近い方の先端に付随する星形成領域であるという説明が もっともらしい。
 バーを含む簡単なモデルを提案する。それは l = [-40, -10], [10, 40] の 2 .2 ミクロン表面輝度分布をよく説明できる。このモデルのバーの 方位角は 75°, で主軸半径は 3.7 - 4 kpc, 3 kpc リングには殆ど 明るい星は含まれない、盾座腕の星種族の巾は 300 pc である。

Arendt + 14 (1994)
銀河系赤化と星種族の COBE/DIRBE 観測
 COBE/DIRBE を用い、銀河系星種族のカラーと銀河系減光を調べた。 DIRBE で決めた NIR 減光は Rieke, Lebofsky 1985 の減光則と一致した。第1、第4象限のダストと星の分布は、最高 A(1.25μm) = 4 mag に及ぶ減光膜を隔てて臨む背景星種族と看做せる。  赤化補正した銀河円盤のカラーは晩期 K-型 から M-型の巨星のカラーと 似ている。銀河系バルジは 2.2 - 3.5 μm でそれより僅かに青い。これは Terdrup et al 1991 の結果と一致する。星形成域は 900 K の連続光の存在 を示すが、これは熱いダストか PAH が 3.5 μm という短波長にまで 影響することを示す。

Wainscoat, Cohen, Volk, Walker, Schwartz 1992
8 - 25 ミクロン赤外の空のモデル
 赤外点源の分布モデルを作った。モデルは円盤、バルジ、渦状腕、ハロー (局所腕を含む)、分子リングを含む。銀河系内天体 87 種類の夫々に 特有のスケール高、密度、絶対等級を与えた。  我々は天体の V および K 累積および微分星計数を再現できた。我々は星の 星計数を IRAS LRS の波長範囲 7.7 - 22.7 μm で任意の方向で得ることが 出来る。

Kent, Mink, Fazio, Koch, Melnick, Tardiff, Maxson 1992
スペースラボ赤外望遠鏡 IRT による銀河系構造I. 2.4 μm マップ
Infrared Telescope (IRT) は スペースシャトルに搭載され、2.4 μm で空の大半を観測した。分解能は約 1° である。この論文では l = [-20, 120], b = [-30, 30] の較正マップを示す。  測光精度は 20.0 mag arcsec-2 である。ゼロ点を除くと、データは 気球による以前の観測と良く合う。ただし、高銀経で系統的なズレがある。 これらのデータはよりシステマティックな銀河系 2.4 μm 放射密度を与える。

Kent, Dame, Fazio 1991
スペースラボ赤外望遠鏡 IRT による銀河系構造II. 銀河系の光放射モデル
 銀河系の3次元放射密度分布を北側銀河系 2.4 μm マップから決めた。 円盤の動軸方向の表面輝度分布はスケール長 3.0 kpc (Ro = 8 kpc 仮定)を 持つ。垂直方向分布は伝統的な sech2 型より exp(-|z|/h) の 方が良くフィットする。太陽近傍ではスケール高 h = 247 pc で、星計数から の値と合う。スケール高は一定ではなく、 R = 5 kpc では h = 165 pc である。
 バルジは潰れた回転楕円体で近似され、その軸比は b/a = 0.61 である。その 密度分布は指数関数型である。バルジの 2.2 μm/12 μm 強度比は他のダスト なし回転楕円体天体と一致する。銀河面に沿っての輝度の揺らぎは減光効果である ことが判った。この揺らぎはダスト分布により再現可能であり、ダスト/ガス比の 決定に使える。

Feast, Whitelock, Carter 1990
M 型巨星の種族と銀河系構造
太陽近傍, SGP のM型巨星、SR星を (J-H)o - (H-K)o 図上でバーデの窓のM型巨星と比べた。 SGPのSR星は 銀河バルジの高メタル成分星と同じ領域を占め、太陽近傍M型星とずれている。 バルジと拡大太陽近傍のミラ型星の母星(厚い円盤星)は似ているらしい。

Frogel, Whitford 1987
バーデの窓における M 型巨星
バーデの窓で M1 ? M9 の185 星に対しJ, H, K, L, [10], CO, H2O 測光 を行った。輻射光度、メタル量分布関数、ブランケッティング効果、マス ロス、星周放射が非変光星から長周期変光星に至るまで導かれた。バルジ M型巨星の性質は全体として太陽より高メタルな種族を表わしていると理解 される。変光星、非変光星の光度は球状星団の年齢の星として無理がない。 バルジのM型巨星を銀河の合成モデルに使用すると、赤外カラーや指数で、 完全ではないがかなりよい一致が得られる。モデルに関しての残された問題 はM 巨星以外の星が十分に高メタルでないことである。このメタルを上げる と E, S0 銀河の 0.5 ? 10 μm エネルギー分布を良く再現するだろう。

Rodgers, Harding, Ryan 1986
銀河系バルジの研究 II. スターカウント、色等級分布
 バルジの3領域、l = 340°, b = -15°, -25°, -35° の V = 15.5 - 21.5 での見かけ微分光度関数(スターカウント)、カラー分布、色― 等級格子を提示し、 B&S モデルと比較した。 スターカウントの予測との一致はまあ良いが、適用した楕円体成分の持つ球状星団 的な特徴は示さなかった。太陽から 3 kpc のあたりで円盤光度関数が van Rhijn- Wielen 関数と大きくずれる。太陽近傍での v = +4.5 の サルピータ不連続より明るい 所で超過を示している。この若い種族は古い円盤と同じスケール高 370 pc を持つ。 古いバルジ星へのターンオフフィットは銀河核への距離 8.4 kpc を与える。バルジ 星成分は銀河中心距離が小さくなると 47 Tuc タイプ星の割合が増加する勾配を 示す。英語最低。若い種族の話は本文では?

Mulder (1986)
多重グリッド法による渦状銀河内のガス準定常流の計算
 ガス運動のオイラー方程式の積分を効率的に行う計算法を示す。 定常解の存在を仮定し、計算法のポイントを述べる。方程式は上流微分法で フラックスベクトル分割を通して空間を分割する。これにより衝撃波を 明快に表現できる。時間積分はインプリシット法で行われる。その形式化 で現れる線形系は多重グリッド補正法により、ガウスザイデル緩和により 解かれる。
 この方法を弱いバーを含む銀河に適用した。バーの強さと、音速の 大きさに応じて、基本的に異なる二つのタイプの解が現れる。 タイプIは共回転の内側にのみ衝撃波を持つ。衝撃波でのエネルギー散逸に より内側への流入が起こる。中心密度を固定することで準平衡解が 得られる。流入率は非常に小さく、セル分割化に伴うエラー程度である。 バーとガスとの間のトルクに伴うタイムスケールは非常に長く、ハッブル 時間より大きい。流入率の小ささは一方では準平衡解の正当化に役立つが、 もう片方では実際の銀河で見られる流入量の説明には衝撃波による 散逸以外のメカニズムが必要であることを意味する。
 タイプIIの解は共回転の内側にも外側にも衝撃波 を持つ。内側衝撃波はガス流入を、外側衝撃波はガス流出を招く。 その結果、共回転半径の周辺からガスが消失し、二つのリングを形成する。その 一つは ILR の内部、もう一つは OLR の外側に。準平衡解を得るにはこの ガス消失領域にガスを注入し、ガスが溜まる領域から抜き出す必要がある。

 回転曲線の見え方 
 解は強い非円運動を示す。円盤銀河の中性水素速度場に見られる傾いた リングモデルは回転楕円モデルかも知れない。真横から見た回転曲線を 幾つか示した。それらは HI 観測と較べられる。それを見ると、円運動を 仮定しての回転曲線の解釈は間違いを導く危険があると分かる。

Heiligman, Schwarzschild (1979)
三軸不等モデル銀河の中間軸を巡るチューブ軌道の非存在について
 前論文では三軸不等モデル銀河の一つを数値的な方法で調べた。最長軸(X) を回るチューブ軌道と最短軸(Z)を巡るチューブ軌道が発見されたが、中間軸 (Y)を巡るチューブ軌道は見つからなかった。
 今回やはり数値的手段で、調べたモデルにはほぼ確実に Y-軸を回るチューブ 軌道は存在しないことを示した。その代りに新しいシェル軌道族が見つかった。 X-, Z- チューブ軌道の存在と、 Y-チューブ軌道がシェル軌道で交換されることは 三つの対称平面上での2次元共鳴閉軌道の安定性と不安定性を数値的に決定する ことから理解された。

Schwarzschild (1979)
力学平衡にある三軸不等恒星系の数値モデル
 平衡状態にある 3 軸不等恒星系の数値モデルを計算した。手続きは次の 4段階に分かれる:
(1)軸比 1 : 1.25 : 2 の変形ハッブルモデルの密度分布を選ぶ。回転はしない。
(2)選んだモデルのポテンシャルを計算する。
(3)1500 軌道を計算する。それぞれは約100振動=10億年を被う。軌道は ボックス軌道族とチューブ軌道族の二つに分かれる。
(4)得られた軌道の部分集合の積み重ね、各軌道には適当な星数の重みを 付けて、を行い、各8分象限内の285細胞中の質量に基づく、選んだ密度分布の 再現を探す。
 主な結論は、
(1)第3段階で計算した軌道の大部分は3つの実質的な積分を伴っていた。
(2)第4段階で見出された数値解の存在は楕円銀河には3軸不等の力学平衡にある ものが実際に存在することを示唆する。

Arp 1965
 NGC 6522 周辺星の色等級図から B - V < 1 の青い星は 円盤主系列星。それより赤い星はバルジの主に G, K 巨星。

Bok (1959) 
銀河系の腕構造 
 シグナス(lI = 40) から太陽を通り、オリオン (lI = 170 - 180) 方向に流れるオリオン腕に反対である。 シグナス(lI = 40) から太陽を通り、カリーナ(lI = 255) へ抜けるカリーナ・シグナス腕を提案する。  OB 星、セファイド、その他の若い種族 I 天体の分布を調べると、我々の 提案がデータの自然な解釈になっていることが判る。

Baade (1958)
銀河系中心部の星種族と銀河系円盤全てに古い種族が浸透している証拠
 1945 - 1949 の間 100" 望遠鏡で NGC 6522 領域を撮った 137 乾板から 変光星を探した。42' × 37' 内に 285 変光星を発見した。その 内から RR Lyr 変光星の視線距離に沿った数密度分布を求めた。中心に 向かい密度が上昇している事が判った。

Nassau, Blanco (1958)
銀河系中心における M-型星と赤色変光星
 NGC 6522 周辺の比較的透明な領域を赤外感度の高い乾板を用いて M 型星探査を行った。390 arcmin2 で 210 M-型星が見つかった。 M/RR Lyr 比 = 2 である。多数の赤色変光星が見つかった。変光星の 等級分布は M-型星のそれと似ている。晩期 M-型星の内変光星の数は 驚くほど少ない。変光星のスペクトル型と周期の分布を天の川と比べた。



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著者 内容

Drake et al 2013
銀河系潮汐星流が 100 kpc を越えて存在する証拠
 マウントレモン望遠鏡を使ったカタリナ測光サーベイで見つかった 1207 個の RR Lyr の解析を報告する。これらの星の距離をカタリナシュミット望遠鏡での 14,000 ab 型 RR Lyr 星の観測と合わせ、星の集合が 100 kpc の先まで延び、 サジタリウス星流と重なることを見出した。
 この結果は、破壊された星系の潮汐流が外側ハローに存在するという以前の発見を 確認するものである。RR Lyr 密度をハローモデルの予測と比較して、今回の検出は 8 σ で確かである。 RR Lyr の距離、視線速度、メタル量、周期ー振幅関係 を調べた。
 視線速度と距離は現在のサジタリウス星流モデルと合致しないことが判った。また、 最も遠方の星のメタル量に分離がある定性的な証拠が見つかった。以前の解析に従い、 RR Lyr の位置を測光法で選択した水平枝星候補と比較した。その結果、この構造が 60° の長さを持つことを見出した。この星流と異常球状星団 NGC 2419 との 関係を調べた。

Kalirai (2013)
初期ー最終質量関係の応用:銀河系ハローの年齢
 この10年で IM-FM 関係の理解が大きく変わった。大きな進歩は、 宇宙年齢中に水素を燃やし尽くす「最小」恒星質量まで観測が深く なったことである。その結果、Kalirai et al. 2009 は t = 12.5 Gyr の低メタル種族 II 星が現在 Mf = 0.529 Mo の白色矮星を形成し つつあることを発見した。  この結果から、我々は現在作られつつある低メタル種族II 星の 白色矮星質量からその星の年齢を導く関係を導いた。この関係を 使い、少数のハロー白色矮星から、銀河系内側ハローの形成が 11.4 Gyr 昔で、大部分の球状星団より若いことを見出した。

Ruhland et al 2011
青色水平枝星で見るサジタリウス星流
 SDSS DR7 から青色水平枝星を選び、サジタリウス矮小銀河の潮汐流の構造を 調べた。測光のみで選んだサンプルの青色水平枝星含有率は 70 % に達する。 その距離精度は 5 % であり、100 kpc を越える遠方の構造を探ることが可能で ある。このサンプルを用いて、我々は追尾腕を太陽から 60 - 80 kpc のとこ ろで確認した。
 現在のモデルは遠方に "戻り" 星流が存在することを予測する。しかし、 我々のデータではその位置に何もない。我々のトレーサーの距離精度を 使い、我々は先行腕の視線方向厚みを 3 kpc と見積もった。そして、 二本の分岐流が僅か 1 - 2 kpc しか離れずに存在することを示した。 分光で選んだ、統計的に純粋なサンプルを用い、我々は先行腕の速度 分散 37 km/s を得た。これはモデルの予測と合致する。先行腕の 青色水平枝星確率が高いサンプルを提示した。

Bell et al 2010
銀河系ハロー内星種族組成の変動
 ハローが矮小銀河の破砕でできたなら、ハローの星種族にその構造が残っている はずである。それを調べるため、SDSS を用い、ハローでの青色水平枝星と主系列 ターンオフ星の比を調べた。ugr カラーのみから青色水平枝星を選別する方法を 開発し、 g < 18 の 9000 候補を選び出した。その 70 % が青色水平枝星である。

 青色水平枝星と主系列ターンオフ星の比 
 全天の 1/4 にあたる区域で青色水平枝星と主系列ターンオフ星の比をマップにした。 ハロー内に比の大きな変動が見出された。以前に見出された星流では比が周囲とはっきり 異なる。これはそこでの年齢・メタル量が異なることを示唆する。
 ハローのある個所、低銀緯構造、では青色水平枝星がほとんど存在しない。ところが 別の構造では青色水平枝星に富んでいる。サジタリウス潮汐星流に沿って比の変化が 見られる。これは母銀河内の種族勾配を表していると考えられる。これらの発見は ハロー成長に重要である。

Yanny et al 2009
SDSS, SEGUE 測光、分光データでサジタリウス構造を追跡する。
 SDSS から選んだ非常に赤い K/M 型巨星でサジタリウス星流を追跡できることを示す。 その一部は SEGUE, SDSS 分光で確認された。2MASS と SDSS 巨星の距離スケールは RR Lyr 距離スケールで較正された。 K/M 巨星の絶対等級は巨星先端で Mgo = -1.0 である。星流と位置が重なる M 巨星と青色水平枝星の視線速度は以前の研究の 結果と良く合う。
 潮汐流に沿って星の密度を測った。それはモデルの制限に役立つ。サジタリウス星流 の脇にあるもっと表面密度の薄い潮汐流にある K/M 巨星、青色水平枝星、F 型ターンオフ 星の速度とメタル量はサジタリウス先行流の星とよく似ている。K/M 巨星と青色水平枝星 の数の比、青色水平枝星とターンオフ星の数の比はやはり、先行流での値と似ている。

Juric + 25, 2008
SDSS による天の川銀河の断層映像 I. 星の密度分布
 SDSS |b| > 25 の 6500 deg2, 48 M 星の測光観測から、それ らの星、 100 pc - 20 kpc の距離を決めた。その星密度マップは、関数形を 仮定せずに、銀河構造を直接表す。
 データは、銀河系がオブレート形状のハロー、円盤成分、数個の密度超過から なることを示す。M-矮星を追跡子とした D < 2 kpc の密度分布は、連星率を 35 % として補正を加えた後、スケール高とスケール長が H1 = 300 pc, L = 2600 pc の薄い円盤と H2 = 900 pc, L = 3600 pc の厚い円盤の二つの重ね合わせで表される。太陽近傍での両者の密度 比は、ρo, thicko, thin = 12 % である。
 主系列ターンオフ付近の星を用いて調べたハローの形はオブレート形状を支持 した。ベストフィット軸比は c/a = 0.64, ρ ∝ r-2.8 で あった。ρo, haloo, thin = 0.5 % である。  モンテカルロ計算から円盤スケール長エラーは 20 %, 局所密度は 10 % である。 エラーの原因は測光視差の較正と連星の割合の不確定性が大きい。
 一角獣座星流のような既知の密度超過に加え、厚い円盤領域に二つの密度 超過を発見した。それらは銀河中心円筒座標系で (R, Z) = (6.5, 1.5) kpc, と (9.5, 0.6) kpc である。さらにおとめ座方向 1000 deg2、D = 6 - 20 kpc で大きな密度超過がある。l = 0 面に対して鏡映な位置と較べると、 おとめ座方向の密度は2倍である。これは近傍の潮汐流か銀河系に融合する途中 の矮小銀河なのではないか。この超過に関与する星の (u - g) カラー分布は 厚い円盤より低いメタル量を示唆し、ハローメタル量と合う。以上の密度超過 を除くと、残りのハロー密度分布は平滑である。それら以外には、円盤で 50 pc, ハローで 1 - 2 kpc を越える大きさの副構造はない。

Newberg et al 2007
おとめ座密度超過、サジタリウス潮汐デブリ、非対称楕円体
 SDSS と SEGUE からの F ターンオフ星と青色水平枝星の撮像、分光観測を 行い、おとめ座方向で以前に銀河系ハローの中に認められた幾つかの構造の間の 関係を調べた。サジタリウス星流の先行腕は太陽近傍は通らないことが判った。そ れが銀河面を横切るのは太陽円外側で、太陽から 15 kpc も離れている。また それはおとめ座中の密度超過 S297+63-20.5 とも空間的に重ならない。 S297+63-20.5 ははっきり異なるターンオフカラーと運動性質を有している。 S297+63-20.5 中の暗い(g∼20.3) ターンオフ星は銀河慣性中心視線速度 Vgsr = 130±10 km/sで、サジタリウス腕が持つ負の視線速度 とは符号が反対である。
 もっと明るい g∼19.8 ターンオフ F 型星の分布は銀河中心に関して 対称でない。この矛盾は S297+63-20.5 運動群が原因ではない。 楕円体が銀河中心に関して対称ではないか、副構造がハローにあって、 S297+63-20.5 と同じ側に存在するかである。おとめ座には以前から おとめ座星流(Virgo Stellar Stream=VSS)とおとめ座密度超過 (VOD) の二つの副構造が知られているが、S297+63-20.5 も関係するのかも 知れない。しかし、視線速度の差が問題である。

Girardi, Groenewegen, Hatziminaoglou, da Costa 2005
銀河系の星計数:非常に深いのから浅い測光サーベイに基づくシミュレーション
 TRILEGAL = 銀河系のあらゆる方向での測光をシミュレートする種族合成コード を説明する。このコードはスターカウントモデルの幾つかの技術的な点を改良した。 それらは、 (1)星の進化経路ライブラリーを完全なものとした。 (2)あらゆる測光バンドに対応する星のスペクトルライブラリー。
 Groenewegen et al 2002 ではこのコードを始めて応用して CDFS 星カタログ を解析した。ここでは、 EIS の深い探査、 DMS 星計数に初めて応用する。これら はハローと大きなスケール高を持つ円盤成分を含んでいる。これにより得た、 もっと広い測光データを扱うために必要な較正の変化を示す。  新しい較正に基づき、やや浅い 2MASS カタログを上手く解釈できることを 示す。このカタログは主に中間年齢円盤を探査している。また太陽近傍を調べた ヒッパルコスの絶対等級対カラー図を解釈した。この図には深いサーベイに較べ 高い割合で若い星種族が含まれている。
 同じモデル較正が上述の全てのデータセットにうまく応用できた。それらは 非常に深い CDFS (16<R<23) から、非常に浅いヒッパルコス (V<8) にまで及んでいる。ただし、銀河中心方向に対しては 50 % 以上のずれが生じた。 これはバルジ成分を含めていないためである。それと銀河面 及び銀河南極方向でも良く合わない。TRILEGAL コードは可視ー赤外の広範囲サーベイ に使える形で提供されるであろう。

Ivezic et al 2005
一回観測のデータで RR Lyr 星を選別する方法
 QEST サーベイで発見された RR Lyr 星を SDSS カラーで調べた。 u-g が 重力に敏感で、g-r が有効温度に敏感と言う性質から、 一回観測 データからRR Lyr 星を選択することができる。  RR Lyr を 100 % 含むカラー選択サンプルでは、最大で RR Lyr 星が 6 % 含まれていた。カラー選択を厳しくして、 RR Lyr が 80 % しか含まれない サンプルで調べると、その中に RR Lyr が 10 %, 28 % しか含まないサンプル ではその中に RR Lyr が 60 % 検出されることが可能である。  

Parker, Humphreys, Beers 2004
非対称な厚い円盤 II:運動特性
  Parker, Humphreys, Larsen 2003 で見つかった厚い円盤/ハローの非対称性に伴う運動学的な特徴を報告する。 同一のカラーと等級基準で選んだ 741 星の視線速度を観測した。対象星は 非対称性が見出された領域とそれに対応する第4象限の比較域に属している。 我々は視線速度、スペクトル型、メタル量を求めた。我々は二つの領域の間で VLSR 分布の非対称を見出したばかりでなく、第1象限の星の 角速度 ω は、それらの有効角速度が第4象限に較べ遅いことも見出した。  VLSR と ω には銀経 l に対する興味深い依存性があり、 それは第1象限で最も著しい。[Fe/H] 測定結果から星を3つのグループ、 ハロー、厚い円盤、薄い円盤に分けると、厚い円盤の星が第1象限では遅い回転 速度を示す。 厚い円盤の星は観測された VLSR と ω の銀経 依存性を生み出す原因にもなっていた。 VLSR の動径、横向き(?)、 銀河面に垂直方向成分から、第1象限の厚い円盤星は銀河回転方向に 800 - 90 km/s の遅れがあることが判った。一方、第4象限の星は 20 km/s の遅れしか 示さない。これは二つの方向間での運動学的非対称性である。 Parker, Humphreys, Larsen 2003 では、星計数の非対称性は3軸不等の厚い円盤か、薄い円盤中のバーと厚い円盤 /ハロー星との相互作用のどちらでも説明可能と述べた。今回の結果は、バーとの 重力相互作用により生じた厚い円盤の回転遅れが、星計数と運動特性の非対称性 の原因であることを示す。しかし、最近発見された大犬座ストリームか類似の マージャーデブリと関係するかも知れない。

Newberg et al 2003
銀河系中心から 90 kpc にあるサジタリウス潮汐デブリ
 A 型のカラーを持つ星から新しい密度超過が go = 20.3 に見つかった。それに 付随する RR Lyr 星候補を同定した結果、それらの星が青い水平枝星であることが 確認された。絶対等級 Mgo = 0.7 で、銀河中心距離を 8.5 kpc と して、それらの星(BHB)の距離は銀河中心から 90 kpc となった。
 新しい潮汐デブリはサジタリウス潮汐デブリの存在面から 10 kpc 以内にある。 したがって、追尾腕と関係するかもしれない。M 型星から決めたサジタリウス星流 までの距離は我々の距離より 13 % 短い。潮汐デブリは少なくとも 10° の 巾を持ち、20° の長さに渡り追跡できた。 NGC 2419 は検出された潮汐デブリの 中に存在する。

Parker, Humphreys, Larsen 2003
非対称な厚い円盤 I:星計数
 厚い円盤と多分内側ハローの太陽から 1 - 2.5 kpc 内側の恒星分布に統計的に有意な 非対称性が存在する。 第1象限では銀河面の上下それぞれで40領域、第4象限で銀河面の上側40の補助領域 で計120の POSS I 領域を比べた。第1象限に、青から中間カラーの星数で 20 & - 25 % の超過を示す広がった領域を見出した。非対称分布を示す領域の形はやや不規則である。
 しかし、超過領域はかなり一様で、数百平方度に渡っている。したがってそれは厚い円盤 や内側ハローの小さな密度揺らぎを越えた大きな構造である。この論文では、 観測と、星計数の結果とその統計的解析を示す。超過の原因としては、(1)マージャーの 残存構造、(2)3軸不等の厚い円盤またはハロー、(3)厚い円盤・ハローが円盤内の バーと相互作用した結果が考えられる。

Freeman, Bland-Hawthornr 2002
新しい銀河系
 銀河の階層的な形成の枠組みないで、我々は自身の銀河が如何に現在に至ったかと 同様、銀河形成の粗い描像を持っているだけである。個々の星種族が原始銀河雲のどの 要素に結び付くかを描く詳細な筋書きは理解の彼方にある。  銀河系=近傍宇宙論と高赤方偏移宇宙=遠方宇宙論の両方から重要な手掛かりが 現れてきている。ここでは銀河系に見つかる過去の化石資料に重点を置く。 銀河系の詳細な研究は "baryon dissipation" に含まれる複雑な過程」を理解する 核心である。

Ibata,R.,Irwin, Lewis, Stolte 2001
SDSS からのハロー副構造:古代の潮汐流
 SDSS データからハロー副構造を発見したという報告が最近2つ出た。ここでは それらがサジタリウム矮小銀河から引きはがされた潮汐流であることを示す。この 解釈は星流に属する星の運動と距離に強い予言を与える。SDSS チームが発見した 古い水平枝星の副構造と、我々がこの論文で発見した炭素星副構造を比較して、 この星流の年齢は銀河系と同じくらいであることが示された。銀河系とサジタリウス 矮小銀河とは存在期間の大部分の間強く相互作用を行い続けてきたようである。SDSS が完成するとサジタリウス銀河の力学進化に強い制約が課せられるであろう。また 銀河系外縁部の質量分布にも強い制限が与えられるだろう。

Liebert, Cutri, Nelson, Kirkpatrick, Gizis, Reid (2000)
2MASS で銀河面高くに見つかったダストに覆われた炭素星
 2MASS から、非常に低温度の炭素星が数個銀河系ハローまたはその向こうに 見つかった。全て N(C-N)-型 AGB 星で、可視光で発見された高銀緯炭素星より ずっと赤い。内3つは厚いダスト雲に覆われ、カラー温度 1000 K の赤外線を 放射していて IRAS 天体である。Keck II とパロマ― 5m 望遠鏡による低分解 能分光測光観測は IRAS SSC 08546 + 1732 と似た極度に赤い連続光と CN 吸収帯を検出した。
 天体の一つ、2MASSI J040197 + 182807 は低励起輝線スペクトルが被さって いる。輝線は KI, Rb I, Cs I で 19 か月後に消えた。これはミラ的な脈動に 伴う輝線ではないか。これらの初期成果は 2MASS を使い、ハロー構造をマゼ ラン雲距離まで探る有用なサンプルを定義する可能性を示す。

Majewski et al 2000
巨星を用いたハロー副構造の探求 I.巨星・矮星分離
 銀河系や他の銀河のハロー構造を赤色巨星で調べるプロジェクトを開始した。 ワシントンシステム (M-T2, M-DDO51) 二色図で巨星と矮星が 分離することを利用するため、まず較正を行う。

Yanny,B. + 23 2000
SDSS による A 型星カラー星の同定と 銀河系ハロー内副構造
 SDSS 開始観測が赤道に沿った巾 2°.5 の帯で行われ、 15 > g > 22 で主系列 A 型星のカラーを持つ 4208 星 が選ばれた。これらの星の分布はハロー中に円弧状の副構造を示すことが判った。  測光カラーから低表面重力星は青い水平枝星、高表面重力 のブルーストラグラーを分離した。 南側A型星超過の場所には F 型星も見つかった。北側はF型星検出には遠過ぎた。
検出された BHB 星の数から導かれた円弧質量の下限は 6 × 106 Mo と 2 × 106 Mo である。ただし空間的広がりの全体はまだ 不明である。全天の 1 % を見ただけでこんな大きな副構造が見つかったということは ハロー中にこの様な副構造が稀ではないことを意味する。
 簡単な楕円体分布を BHB 星に当てはめて、 c/a = 0.65, 密度低下の指数 α = -3.2 を得た。

Totten,E.J., Irwin, Whitelock 2000
銀河系ハロー炭素星の APM 探査 II. 炭素矮星
 APM ハロー炭素星サーベイで見つかった炭素星の固有運動測定の結果を報告する。 測定は POSSI, POSSII, UKST 乾板を用いた。APM 炭素星に対しては有意な固有運動 を検出しなかった。これらのサンプルには炭素矮星は含まれていないと結論した。 既知の炭素矮星3個に対しては固有運動が検出された。SAAOにおけるNIR観測 の結果も提示する。炭素矮星は特異なNIRカラーを有し、これは将来矮星と巨星を 区別するのに使えるだろう。幾つかの既知ハロー炭素星の固有運動測定とNIR 測光結果は CLS 29 が炭素矮星である可能性を示唆する。

Totten,E.J., Irwin,M.J. 1998
銀河系ハロー炭素星の APM 探査
 APM 高赤方偏移クエサー探査の副産物として、幾つかの高銀緯遠方(20-100 kpc) N 型炭素星が見つかった。それから出発して、|b| > 30° の全天探査を 行った。この論文では分光追尾観測の第一結果を報告する。 広い波長巾の分光測光と平行して、 1 A 分解能スペクトルを 取って 10 km/s 精度の視線速度を定めた。 6500 deg2 の初期探査で 1 N 星/200deg2 を見つけた。これはハロー CH 星の約 1/4 の表面密 度に相当する。中間年齢 N 型炭素星が他の星形成領域から離れて孤立して形成さ れることはありそうにない。したがって、可能性としては、(1)捕獲された 矮小銀河が破壊されて流れてきたか、(2)長い間探されてきたマゼラン流の 光学的対応天体であろう。

Sarin, Jura (1996)
銀河系ハローにミラがない
 Hawkins 1983 は (l, b) = (356, -47) 方向の 16 平方度領域で変光星の 自動検出観測を行った。期待値は11だったが、ミラ型星は一つも見つからなか った。これは、銀河系ハロー星はミラ型星に進化しないことを示唆する。

Feast, Whitelock, Carter 1990
M 型巨星の種族と銀河系構造
太陽近傍, SGP のM型巨星、SR星を (J-H)o - (H-K)o 図上でバーデの窓のM型巨星と比べた。 SGPのSR星は 銀河バルジの高メタル成分星と同じ領域を占め、太陽近傍M型星とずれている。 バルジと拡大太陽近傍のミラ型星の母星(厚い円盤星)は似ているらしい。

Burbidge, Sandage (1958) 
銀河間空間2球状星団の性質 
 二つの非常に遠方にある球状星団のデータを与えた。水平枝の平均 Mv 等級 を 0.00 と仮定すると、その一つ 11h 星団 RA(1950)=11h26.6m, Dec(1950) = +29°15' (Pal 4 のこと)  は、距離 120 kpc, 直径 90 pc, 積分等級 Mv = -6.3, M = 1.8 104 Mo, 星総数 4.3 104 である。 もう一つ 10h 星団 RA(1950)=10h03.0m, Dec(1950) = +0°18' (Pal 3 のこと) は、距離 130 kpc, 直径 80 pc, 積分等級 Mv = -5.9, M = 1.1 104 Mo, 星 総数 2.7 104 である。  M3, M13 のように少なくとも星の数では10倍以上大きい星団 と比べると、量星団の直径は異常に大きい。潮汐力が小さいためかもしれない。 もし、過去に銀河中心から 9 kpc 以内に接近したことがないなら、この大きさは 理解できる。両星団が銀河中心に対し放物軌道であると仮定すると現在位置まで に 1Gyr で到達可能である。もし、それらが M31 からの脱出星団とすると、 銀河系の影響を無視して、10 Gyr で到達可能である。



銀河中心

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著者 内容

Nogueras-Lara, Schodel, Gallego, Dong, Shahzamanian, Girard, Nishiyama, Najarro, Neumayer (2019)
GALACTICNUCLEUS: 高角分解能 JHKs 銀河中心サーベイ II. 第1データリリース 
 GC の NIR サーベイ= 2MASS, UKIDSS, VVV, SIRIUS の角分解能は GC の 込み具合を扱うのに必要なレベルに達していない。ここで 0.2" 分解能の JHK サーベイ GALACTICNUCLEUS を報告する。  GC 0.3 deg2 の JHKs 測光を行い、 3.3 106 個中、 J で 20 %, H で 65 %, Ks で 90 % を検出した。5σ で J = 22, H = 21, Ks = 21 mag である。J = 21, H = 19, Ks = 18 で精度は 0.05 mag である。

Chen, Wang, Deng, de Grijs (2018)
銀河中心方向の極度に低い中間赤外減光と 55 セファイドの距離  
  GC 方向の古典セファイド 55 個から NIR - MIR 減光則を3つの方法で導い た。我々の MIR 減光則は 極めて低く、急勾配である。7バンド最適距離の方法を用い、我々の 55 セファイドサンプル星の平均距離精度を 4 % に改善した。銀河中心セファイド 4つを用いて、銀河中心距離 Ro = 8.10±0.19±0.22 kpc とした。
(筋が怪しい気がする。最後の方で 論理を整理した。)


Nogueras-Lara + 11 (2018)
GALACTICNUCLEUS: GC の高角分解能 JHKs サーベイ
 HAWK-I/VLT による、分解能 0.2" の JHKs サーベイを SgrA* の周り 7.95'x 3.43' で行った。短時間露出とスペックル・ホログラフィ・アルゴリズムにより、 PSF 0.2" FWHM 像を得た。位置較正は VVV, 測光較正は SIRIUS により行った。 5 σ 限界等級は J 22, H 21, Ks 20 等であった。測光精度 0.05 等が J 20, H 17, Ks 16 等まで保証される。  CMD 上に5つの特徴が見えるが、その 3つは渦状腕らしい。残り二つは GC の高減光と低減光の恒星集団であろう。 減光マップは銀河中心領域で ISM がムラムラであることを示す。JHKs の減光 がべき指数 αJHKs = 2.30±0.08 でよく表される。 この値が視線に沿って変わる、または減光深さで変わる証拠はない。赤化補正 した CMD は星の大部分は太陽メタルかそれ以上であることを示す。

Fritz, Chatzpoulos, Gerhard, Gillessen, Genzel, Pfuhl, Tacchella, Eisenhauer, Ott (2016)
銀河系中心核星団:質量と光度
 銀河系中心核星団の基本パラメタ―を得た。第1に、 VISTA, WFC3/IR, VLT/NACO データから減光を補正した古い星の計数を用いて、中心 1000" の個数 マップを作成して、構造を調べた。データは2成分で記述される。内側のやや 平坦な (軸比 q = 0.80±0.04) 成分は中心核星団である。外側は核周辺 部の恒星成分にあたる。中心核星団の半光度半径 = 178 ±51" = 7 ±2 pc で MKs = -16.0±0.5. 第2に、外側 4 pc まで の詳細な運動を調べた。AO データから 10,351 固有運動、VLT/SINFONI データ から 2513 視線速度を得た。
 我々は等方的球対称ジーンズモデルを使い、星団質量を定めた。我々は銀河 中心距離を決め、超巨大ブラックホールの質量を決めた。クラスターのモデル を M/L 一定および、べき乗則の仮定で星団をモデル化した。後者の場合、 我々は勾配 1.18±0.06 を得た。我々は 100" 以内の星団質量 M100" = (6.09±0.53fixRo±0.97 Ro)×106 Mo を双方の仮定に対して得た。 観測されている中央平坦部を含むモデルは 47 % 大きな質量を与える。われわれ の結果は尖頭よりは中心核の方に幾分か合う。8" 以内の非拘束星の数を最小化 することで、星の軌道からの Ro - MSMBH 関係を使い、我々は銀河 中心距離 Ro = 8.53-0.15+0.21 kpc を得た。我々の 結果を合わせると、 M/L = 0.51±0.12 Mo/Lo を得た。これは Chabrier IMF と合致する。

Schodel, Najarro, Muzic, Eckart (2010)

ベイルを透かして見る:銀河中心星団の近赤外測光と減光
 銀河中心 1 pc の近赤外減光則のべき乗指数を正しく求めるため、正確な 測光データを得た。アダプティブオプティックス+カメラの組み合わせ、 VLT の NAOS/CONICA、 を用いて観測した。測光には anisoplanatic 効果を 考慮して、系統エラーを 2 % に抑えた。レッドクランプ星を用い、H, Ks, L′ バンドの減光とべき乗指数を測定した。さらに、 H-Ks - Ks、 L′ カラーに基づいて減光マップを作成した。
 7700 星の Ks 等級を求めた。さらに、 H and/or L′ 測光も行った。 最近の公開観測データから Ro = 8.03±0.15 kpc を求めた。エラーは 2 % である。この Ro と RC 法により、銀河系中心 1 pc 領域の平均減光を AH = 4.48±0.13, AKs = 2.54±0.12, AL′ = 1.27±0.18 と決めた。べき乗指数は  αH-Ks = 2.218±0.24, αKs-L′ = 1.34±0.29, であった。この減光則と星の H-Ks カラーを用いて、 Ks 減光マップを作成した。エラーは 10 % 以下である。このマップの減光は 星のカラーエクセスから導かれたが、arcsec スケールで変動する。 平均は AKs = 2.74±0.30 である。Sgr A* の 0.5″ 半径 内での平均減光は、 AH,SgrA* = 4.35±0.12, AKs,SgrA* = 2.46±0.03, AL′,SgrA* = 1.23±0.08 である。

Buchholz, Schodel, Eckart, 2009
銀河中心星団の星種族:狭帯フィルターによる種族解析
 狭帯フィルターを用いて、混んだ星団中で晩期型星と早期型星を分離する新しい方法を 開発した。それを銀河系中心核星団に適用し、この領域の種族解析を行った。 観測は AO 支援の VLT/H+ K バンド内 7 狭帯フィルター撮像である。CO 吸収を早期型 と晩期型の分離に用いた。
 その結果、中心パーセク領域で、K < 15.5 の K-型より晩期の巨星と B2-型より 早期の主系列星を分類できた。以前の分光法が K = 13 - 14 等までだったのに比べると、 観測が深く、短時間で済むようになった。極端に赤い天体と前景星も除去できた。 スペクトル分類が既知の星と比較すると、今回の方法は信頼度 87 % である。早期型星は 312/5914 星であった。
 K-光度関数の形、晩期型星、早期型星の空間分布は以前の結果を 確認した。早期型星の分布はべき乗則、β1″ = -1.49±0.12, β1″-10″ = -1.08±0.12, β10″-20″ = -3.46±0.58 で表される。今回初めて 0.5 pc より遠くに多数の早期型星候補を発見した。晩期型星 分布は内側 6″ で反転し、β<6″ = +0.17±0.09 である。晩期型星の K-光度関数はべき指数 0.30±0.01 を持ち、バルジと近い。 早期型星の K-光度関数はべき指数 0.14±0.02 でもっと平坦である。これらは 現地星形成シナリオに合致する。

Gillessen, Eisenhauer, Fritz, Bartko, Dosdds-Eden, Pfuhl, Ott, Genzel, (2009)
VLT と Keck データから求めた Sgr A* をまわる S2 の軌道
 最近の2論文、 Ghez et al. (2008), Gillessen et al. (2009) が銀河中心ブラックホールまでの距離とその質量を出している。二つのデータは 独立であり、ほぼ同じ結果を出している。しかし、報告された星の位置は かなり違っている。このレターでは、座標系に小さなオフセットをかけると 二つがよく一致することを示す。  オフセットの値と慣性系速度の調整値は Ghez et al 2008 に与えられた 不確定性の範囲内である。二つのデータセットを合わせるとブラックホール 質量と、銀河系中心距離は幾分改良される。しかし、エラーの大部分は 系統誤差と慣性系の長期的較正に起因している。得られた結果は Ro = 8.28±0.15|stat±0.29|sys kpc, MMBH = 4.30±0.20|sta±0.30|sys ×106 Mo.

Gillessen, Eisenhauer, Trippe, Alexander, Genzel, Martins, Ott (2009)
銀河中心ブラックホールを回る軌道のモニタリング
 銀河系中心の大質量ブラックホールを巡る軌道の16年間の観測結果を報告 する。この研究は座標系の定義を長期の位置精度を 300 μas まで大幅に 改善し、個々の系統誤差の寄与を詳細に検討して、以前のデータ解析を精密化 した。観測期間の長期化とAO位置測定の高精度化の組み合わせから、 28 星 の軌道が決定された。 S2 は軌道を完全に一周した。  我々の結論は、全ての軌道が単一の質点による重力ポテンシャルでよくフィット 出来るということである。位置精度は以前の研究の6倍向上した。中心質量は (4.31±0.06|Stat ±0.36|Ro)× 106 Moである。  現在最良の Ro 推定値は Ro = 8.33±0.35 kpc.中心質量は Ro と (3.95±0.06)×106 (Ro/8kpc)2.19 Mo の関係がある。中心1秒角での軌道角運動量の方向はでたらめである。軌道が 確定したうちの6星は晩期型星であり、6つの早期型星は時計回り回転円盤系に 属する。これは以前提案された通りである。S2 星の近点と遠点との間に分布する 広がったダークマターの量は中心質量の 0.066 以下である。

Ghez + 12
恒星軌道から銀河中心ブラックホールの距離と性質を測る
 銀河系中心超大質量ブラックホールの精密観測について報告する。 ケック 10-m 鏡による 1995 - 2007 の位置観測と 2000 - 2007 視線速度観測に基 づき、S0-2 星のケプラー軌道は距離 8.0±0.6 kpc, MBH = 4.1±0.6 ×106 Mo, ブラックホール視線速度  0±30 km/s を与えた。もしブラックホールが銀河系に対し静止して いると仮定するなら、フィットへの制限は強まり、 Ro = 8.4±0.4 kpc, MBH = 4.5±0.4 ×10 6 Mo となる。
 もっと複雑なモデルでは 0.01 pc 以内に 3 - 4 ×105 Mo のダークマターが広がる。これは星と星残骸のモデルによる予想を 100 倍 上回る量である。我々の導いた Ro と Sgr A* の見かけ固有運動 から導いた太陽近傍回転速度 (θo = 229±18 km/s) は他の方法 での値と整合している。今回判明したブラックホール質量のより大きな値は MBH - σ 関係をよりよく合うものとした。

Maness, Martins, Trippe, Genzel, Graham, Sheehy. Salaris,
銀河中心で長期に渡り、頭でっかちの星形成が続いてきた証拠
 Sgr A* から 1 pc 以内の 329 晩期型巨星を分類した。観測は AO 面分光 SINFONI/VLT を使用。銀河中心で得られた最も深い分光データである。レッドクランプ (Ks ∼ 15.5 )での完全度は 50 % である。
 分光の結果を NACO H, K 測光と結合して、 HR 図を作った。これを様々な星形成史に 対するモデル HR 図と比較した。ベストフィットは過去 12 Gyr の間連続的に星形成が 起きてきたモデルであった。ただし、その IMF の形は頭でっかち型の必要がある。この  IMF とごく最近に起きた星形成で観測された IMF とが似ていることは、最近の星形成と 銀河中心の全期間を通じての星形成が通じていることを示唆する。

Nagai, Tanaka, Kamegai, Oka 2007
銀河系中心分子ガスの物理状態
 ASTE による CO(3-2) 観測と野辺山 12CO(1-0), 13CO(1-0) データと合わせて解析し、銀河系の中心分子帯(CMZ) の物理条件を求めた。 速度勾配近似(LVG)法を用いた。位置と速度の関数として、CO(3-2) 観測領域での ガス密度、運動温度、CO コラム密度を求めた。
 CMZ の 69 % 以上でのデータポイントにおいて物理条件を定めることができた。 運動温度は CMZ 全体でほぼ一定であった。一方、ガス密度は 120 pc 星形成リング において外側のダストレーンより高い。CO(3-2)/CO(1-0) 比が高い領域の物理条件 も調べた。

Rodriguez-Fernandez,Combes, Martin-Pintado, Wilson, Apponi 2006
銀河系中心における動力学と分子化学の結合
 銀河中心のガスの大部分は円軌道に沿って動いており、それが中心核リング =GCR を作っている。Sgr A や Sgr B のような分子雲複合がそれにあたる。 ガスは濃く、暖かで、様々な分子種に富んでいる。分子雲のこのような性質の 原因は衝撃波、特に銀河系の大規模構造力学に基づくそれと考えられる。それ に加え、高度な非円周軌道で動く雲が低密度分子遷移 CO(1-0) で検出されて いる。非円周軌道雲の物理状態は不明である。
 CO(1-0) の (l, v) データから、非円周軌道雲のサンプルを抜き出した。 それらの CS(2-1), SiO(2-1) 観測を行い、濃い雲と衝撃波の性質を調べた。 非円周軌道雲の全てから CS, SiO 放射を検出した。SiO の密度と組成は GCR 雲と同様であった。したがって、これら全ての運動学的に選び出した 雲は潮汐力に抗している。しかし、GCR の外側では星形成の証拠はない。 バー主軸に沿って存在すると予想されるダストレーンにおける大きな相対 速度とズレ応力が星形成過程を妨げているのかも知れない。非円周雲に おける高い SiO 組成はダストレーンを形成する大規模衝撃波に起因する のかも知れない。

Eisenhauer + 20, 2005

銀河系中心でのSINFONI: 若い星銀河系数光月でのフレア
 AO 支援インテグラルフィールド分光器 SINFONI/VLT により GC 30 光日で 空間分解能 75 mas の近赤外画像分光を行った。限界等級 16 mag で中心ブラ ックホールから 0.4 内の 9/10 星、 0.7 内の 13/17 星は B0 - B9 主系列星のスペクトルを示した。He I 2.1127 μm 吸収線の線巾から決めた回転速度は太陽近傍のそれと同じであった。新しく得た 視線速度を SHARP/NACO 位置測定と合わせて、中心 0.5 内の S-星 6 個の3次元軌道精度を改善した。軌道面の方向はでたらめに見える。 Sgr A* から 1 - 10 にある若い大質量の 二つの円盤と S-星軌道面の向きは揃っていない。  なので、S-星が全体として円盤の内側部を形成するという仮説は排除される。 また、それらが円盤内で形成されて内側へ移ってきたという可能性もない。 自転速度が通常で、軌道の傾きがでたらめであることから、 S-星は個別に 強い散乱事象を経て内側の数光月領域に飛ばされてきたと考えられる。  新しい S2 軌道軌道から決めた銀河中心距離は Ro = 7.62±0.32 kpc, 中心質量 (3.61±0.32) 106 Mo である。  スペクトル観測中に Sgr A* での小さなフレアを2回観測した。これら フレアの 1.7 - 2.45 μm スペクトルは Sν ≈ ν-4±1 で吸収線はなく、シンクロトロン放射 モデルに良く合う。このモデルでは、赤外放射は中心 10 Rs 領域の非効率 降着流中の非熱的高エネルギー電子からやって来る。

Eisenhauer + 7, 2003

銀河系中心距離の幾何学的決定
 銀河系中心のブラックホールの周りを回る星 S2 の位置及びスペクトル観測 の結果を報告する。観測には ESO VLT に AO を付けた近赤外カメラ NAOS/CONICA と近赤外インテグラルフィールド分光器 SPIFFI が用いられた。  これ等のデータから、太陽ー銀河中心距離を含む星の軌道パラメタを全て決定した。 得た値 Ro = 7.94 ±0.42 kpc は第1次的な観測値として最も精度が高い。 この値は最近の Ro 値と良く合っている。

Launhardt, Zylka, Mezge 2002
銀河系中心核バルジ III. 星と星間物質の大規模構造
 IRAS と COBE/DIRBE データを用い、銀河系中心 500 p の 2.2 - 240 μm の大規模恒星および星間物質分布を調べた。Ro = 8.5 kpc. 銀河系円盤とバルジ のモデルをから減光補正で表面輝度分布を成分に分解した。中心核バルジ(NB) は 他からはっきりと区別される、大質量で円盤状の恒星と分子雲の系で、GC に対称 である。形が平たい円盤状であり、恒星と分子ガスが非常に高密度で、星 形成が進行中であることで、NB は銀河系バルジとはっきり区別される。NB は R-2 NSC (Nuclear Stellar Cluster)=半径 230 pc, スケール高 45 pc, と、同じ大きさの Nuclear Molecular Disk から成る。
 NB は M = 1.4 109 Mo, L = 2.5 109 Lo である。L の 75 % は若い大質量 MS 星からの紫外、可視光である。  今回初めて、中心 500 pc の測光的質量分布を導いたが、それは運動学的な 質量分布と完全に一致した。よく用いられる R-2 型密度分布は 中心 30 pc でしか妥当でなく、それより外では中心核恒星円盤の平坦な質量 分布が支配的であることが分かった。
 NB 内の水素ガス質量は MH = 2 107 Mo で、 R = 110 pc の暖かい内側円盤と、外側にあり冷たく質量の 80 % を占める円環 から成る。NB 内の星間物質は非常にムラムラであり、質量の 90 % は濃い大 質量分子雲に含まれる。その体積率は数 % である。おそらく NB の重力ポテ ンシャルによる潮汐限界がその原因であろう。そのため、強い星間輻射が NB 全体に浸透し、また比較的低い平均減光を GC に与えている。さらに、第1象限 では NB 外側に 3 107 Mo, 第4象限では 1 107 Mo の冷たい分子ガスを見出した。この外側ガスは NB 星からの加熱を受けず、 中心分子帯 (Central Molecular Zone) に観測される非対称性の原因となっている。 読むのが大変で途中で投げ出した。

Schultheis + 9, 1999

内側バルジ方向の星間減光
 DENIS と RGB, AGB 等時線モデルを使い、バルジの減光マップを作った。 この方法の精度はバルジの光学的深さにより限定される。減光強度が既知の 領域での比較は非常に良い一致を示した。バルジ 20 平方度の減光マップを 示す。

Najarro + 5 1999
銀河中心 He I 星の分光観測
 銀河中心にある明るい He I 輝線星に対する定量的な赤外分光の結果を報告する。 He I と H の幅広の輝線は極端に若い星からの星風 (dM/dt = 5 - 80 × 10 -5 Mo yr-1 と 比較的遅い (V = 300 - 1000 km/s) 小さな 放出流が原因である。
 星の有効温度は 17,000 から 30,000 K に渡り、光度は 1 - 30 × 105 Lo である。He/H が見出された。これ等の結果は星は進化した 青色超巨星であり、ウォルフ・ライエ星に近い進化段階にあると考えられる。 これ等の星は数百万年前に生まれた大質量星星団に属し、 銀河中心の 1 pc 領域にエネルギーを注入している。

岡、長谷川、佐藤、坪井、宮崎 1998 
銀河中心 の大規模 CO サーベイ
 野辺山 45 m 電波望遠鏡 2x2 焦点検出器を用いた銀河系中心領域 CO 観測 の結果を報告する。44,000 の CO(1-0), 13,000 の 13CO スペクトルを 34(1.4 pc) 格子で得た。CO 観測は l = [3.4. -1.5], b = [-0.6, 0.6] 領域で行われた。
 CO 画像は極度に交錯した分布と運動を示す。大規模な様子は良く知られた 揃った特徴を物語る一方、多くの小さくて(d ≤ 10 pc) 速度巾が大きな (ΔV ≥ 30 km/s) 明るい CO 放射が検出された。分子ガスの小スケール 構造はフィラメント、アーク、シェル状の構造を示す。そこに見られる 激しい運動は超新星爆発またはウォルフライエ星からの星風が原因かも知れない。

Blum, Sellgren, DePoy 1996
銀河中心の本当に低温度の星
  円盤、バルジの M-巨星、超巨星と比較して、銀河中心の 19 晩期型星の K- バンドスペクトルを調べた。同じ CO 強度の星同士で較べた時、中心星は円盤 星よりも Na I(2.206 μm), Ca I (2.264 μm) 吸収が強い。K-絶対等級、 CO, H2 吸収強度を、銀河中心星および既知の円盤 M-超巨星、AGB 星と比較し、 IRS 7 のみが超巨星であると結論した。
 他にも2つの中心星が超巨星の可能性がある。残りの明るく低温の星は中質量 の AGB 星である。K-バンドスペクトルの特徴と、測光の変動から、銀河中心星の 4 つは長周期変光星と判定した。中心星の初期質量と年齢から銀河中心では、 過去 7 - 100 Myr の間に複数回の星形成が起きたと思われる。

Morris, Serabyn 1996
銀河中心の環境:レビュー
 銀河系の中央 0.5 kpc (= ±2°) は中心部の環境でしか見られない 珍しい現象が数多く存在する。ここでは銀河系のポテンシャル中心に流れ込む 物質流の観点から観測的な星間物質の構造を解説する。多くの散逸過程が半径 200 pc の中心分子帯 (CMZ) に強いガス集中を引き起こす。そこでは分子が 大きな密度、大きな速度分散、高温、強い磁場の環境に存在する。
このような ガスの物理状態と結果としての星形成は、銀河円盤の他の場所とは大きく異なる。 星形成で消費されなかったガスは、高温 X-線放射ハローに入って銀河風として 失われるか、さらに数 pc サイズの中心核円盤を経由して、ついには中心 1 pc 領域にまで落ち込むかである。そこでは、流入物質による星形成と星風による ガス放出とがリミットサイクルを構成し、中心電波源 Sgr A* は流入物質の ほんの僅かしか受け入れないようである。 

Krabbe + 12 1995
銀河中星団:中心 0.5 パーセクの星形成と速度分散
 銀河系中心核星団の観測を報告する。中心 pc は 2 ダースの明るく高ヘリウムの 青色超巨星/ウォルフライエ星 Te=20,000 - 30,000 K, Mzams = 100 mo からの 放射エネルギーで励起されている。これら大質量星形成の原因は 7 百万年から 3 百万年前にかけて起きた小規模な星形成バーストによる。このシナリオでは 銀河系中心は現在、主系列後の短期間の星風期にある。
 さらに、1億年前に別の星形成があった証拠がある。また最近形成された星がガス 流と共に中心核へと移動してきた証拠もある。 Sgr A* から 1″ - 12″ にある 35 個の早期型、晩期型星の視線速度分散は 154±1 km/s である。これは 力学中心から 0.14 pc 内の質量として 3 × 106 Mo を与える。

Krabbe,Genzel,Drapatz,Rotaciuc 1991
銀河中心 にある He I 輝線星の集団
 銀河中心の分解能 1″.9/300 km s-1 He I n=21P → n=21S 画像分光の結果を報告する。1ダースほどの幅広な He I 輝線星の集団が見つかった。その大部分の位置は広帯域 2 μm 光源と一致する。 IRS 16 とその幅広輝線領域はおそらく中心の直径 1 pc He I 星集団の中心核部分 であろう。He I 星は激しい質量放出を行っている青色超巨星であろう。
 He I/H I(Brγ,Br;alpha;) ライン比が高いことからこれらの星はポスト主系列期 にあると考えられる。質量放出率は (2-3) × 10-5 - 10-5 Mo/yr、 放出速度は 500 - 1000 km/s である。He I 星は大質量星星団の構成員であり、 銀河中心 数 pc 領域からの全光度、ライマン連続光、かなり低い励起度を説明 できる。今回のデータから過去数百万年以内に大きな星形成が銀河中心数パーセク内 で起きたことが確実となった。

Binney, Gerhard, Stark, Bally, Uchida 1991
銀河系中心ガスの運動学を理解する
 銀河系 |l| < 10, |b| < 0.5 の HI, CO, CS 放射に筋の通った説明を 与えるモデルを示す。銀河中心のガス流は r = 2.4±0.5 kpc で共回転 するバーのポテンシャルに支配されている。このバーを我々は主軸角度 θ incl = 16±2° で見ている。最初の(?) CO 放射は ガスが x1 軌道から x2 軌道へと切り替わる所から 生じている。軌道名は Contopoulos に従った。この切り替わりはショックを 発生させ、(l, v) 図上に明白な特徴を残す。Sgr B のような銀河系中心部の 巨大分子雲は x1 軌道にある。
 HI 終端速度の外郭の構造から、中心部密度はバーの主軸沿いに 1.2 kpc まで、ρ ∝ r-1.75 であることを導いた。このため、 単純な接線速度解析では回転速度が低下する半径領域で、回転円運動曲線が 上昇するという結果になった。r = 3.5 kpc の分子リングは多分、 バーの外側リンドブラッドレゾナンスと関係する。その共回転内側では ガス密度が低下する。

Lacy, Achtermann, Serabyn 1991
銀河系中心ガスダイナミックス: ケプラー円盤内側の一本腕渦
 銀河系中心 3 × 4 pc 領域を [Ne II] 12.8 μm ラインの空間分解能 2″, 速度分解能 30 km/s で撮像観測した。電離ガスの形態は1本腕の r ∝ θ 渦で説明できる。腕に沿ってのガスの運動は近似的にケプラー円運動で説明できる。そのため の中心質量は 2±0.5 × 106 Mo である。

Bally, Stark, Wilson, Henkel 1988
銀河系中心分子雲 II. 分布と運動
 様々なミリ波分子線で観測した銀河系中心付近の分子の運動と分布を報告する。 分子の分布は銀河系中心に対し非対称にで、 13CO, CS の 3/4 は 銀経正である。また、別の 3/4 は正の視線速度を持つ。ガスの速度場は高度に 混乱している。ある雲は円運動から予想される速度場から 100 km/s 以上逸脱 している。しかし、ガスの 70 % は銀河面上の薄いシート状に分布する。シート のスケール高から、銀河面に垂直方向の雲中心の分散速度は、個々の雲の内部分散 速度と同程度であることが推定される。
 ガスの分布と速度構造が複雑なため、銀河系 500 pc 以内の回転速度を一意に 決めることは不可能であるが、各(l, b)での最高速度から等値回転速度(?)が l の減少に伴って非常にゆっくりと、もし減少するとしても、しか減少していか ないことが分かる。回転曲線は vrot(l=5) = 200 km/s から、 vrot(l≈0) ≥ 120 km/s である。
 簡単な質量分布モデルを使い、観測されたガススケール高と比べた。その比較から マップに見られる様々な構造の銀河中心距離を定めた。それらの幾つかは 銀河面からかなり上または下にまで伸びている。それらの構造の軌道傾斜角は大きいに 違いない。
 分子構造のエッジには Sgr A から 0°.2 離れた連続波アークに付随する電波 フィラメントと看做せるものがある。電波再結合線を放射するフィラメントの視線速度 は隣接する分子雲と一致する。分子雲が雲間物質と衝突してできる衝撃波が産み出す 熱的および非熱的放射が電波フィラメントなのであろう。円回転運動からの大きな乖離と 傾き角の大きな運動から、センチメートル波放射を説明するのに必要な Δv = 50 - 150 km/s の衝撃波が生まれる。

Stark, Bania 1986
クランプ2:内奥渦状腕?
 (l, b, v) = (3, 0.2, [+20. +150]) のクランプ2分子雲を 12CO と 13CO J=1-0 及び CS J=2-1 で観測した。分子ガスは16個の CS コア に分かれていた。その各々は n > 2 × 104 cm-3, M > 5 × 105 である。分子線の視線速度は銀河回転からの許容 範囲内にある。複合体全体での異常な線幅はバーポテンシャル中のダストレーンまたは 内部渦状腕の表明であろう。 12CO での異常な形状はコアが潮汐力で 引き裂かれている結果である。

Bania, Stark, Heiligman 1986
クランプ1:銀河中心近傍の異常な分子雲複合体
 クランプ1分子雲複合 (l, b, v) = (355, 0.4, 100) を 12CO, 13CO J = 1 - 0 で観測した。84 × 54 マップには, 個々の雲の内部に分布する禁止速度ガス が示されている。 VLSR > 20 km/s 放射の大部分は三つの大き な雲、それぞれが +68, +85, +100 km/s, から出ている。これ等の雲は銀河 系内天体の中で最も大きな非円運動を示している。
 +100 km/s 雲は HIIR G354.67+0.25 により加熱されている。他の二つは電離 ガスを含む証拠はない。クランプ1の 13CO サイズは 42pc × 72pc で、M(H2) = 2.4±1.5 × 105 Mo で ある。複合体内の雲は全て重力的に拘束されているが、外層部は潮汐力で剥され ているかも知れない。雲間の相互速度は外側銀河系の分子雲複合体での値より 大きい。付随する HIIR のエネルギーはこの相互速度を引き起こすには不足である。 おそらく、分子ガス、原子ガス、銀河ポテンシャル間の相互作用の結果であろう。

Lo, Claussen 1983
銀河系中心 3 パーセクにある電離ガスの高分解観測
 1 秒角分解能の電波マップは銀河中心から 1.5 pc 以内に渦状の電離ガスが存在する ことを明らかにした。銀河中心付近を通過する 3 本の電離ガス流が判別された。銀河中心に 落下してくる分子ガスがその原因であろう。これは銀河中心核による降着路を実際に観察 した最初の例である。

Ekers,van Gorkom,Schwarz,Goss 1983
Sgr A の電波構造
 Sgr A の 6, 20 cm 連続波マップを VLA で作った。分解能は 5″ × 8″ である。2 cm では Sgr A 周辺 を分解能 2″ × 3″ でマップした。 熱電波源 Sgr A West は渦状形状で、その傍にコンパクトな点源がある。Sgr A West には 拡散非熱的成分もある。Sgr A East のシェル状の構造が非熱的スペクトル指数を持つことも 確認された。Sgr A East の東側にコンパクトな熱的電波源の集団がある。

Becklin,Gatley,Werner 1982
サジタリウス A の遠赤外観測
 銀河中心 4″ の 30μm, 50μm, 100μm 観測の結果を示す。 30μm は 2 μm 輝度分布と電離ガスの密度分布から定めた銀河中心位置 に鋭いピークを示す。50μm と 100μm はもっと広がっていて、 30 μm ピーク の両側に耳を持つ。100μm 表面輝度は銀河中心位置で極小となる。銀河中心 周辺数パーセクはダスト密度が中心に向けて減少していると思われる。中心 1 パーセクでのダスト密度は低すぎて、可視光と紫外光は減光を受けず (Av≤1) にこの領域を通っている。遠赤外光を出す中心数パーセクにあるダストの加熱源 は 1 - 3 × 107 Lo と推定された。

Bania 1980
内側銀河系での CO: 3 kpc 腕と他の膨張構造
 内側銀河の CO 銀緯分布の観測から、濃い分子雲の多くが l で数十度に及ぶ 幾つかの大規模構造に属することが分かった。最も目立つのは回転中心円盤、 3 kpc 腕、それに +135 km/s 構造である。これらは HI でも見えるが、全体 として銀河回転から 50 - 180 km/s の速度の逸脱を示している。(l, v) で 見ると、 3 kpc 腕と +135 km/s 構造は単純な運動学的円環で記述できる。 しかし、 R = 4, 3.5 kpc にある二つの不完全円環の追加が要求される。
 後者の二つの CO 放射は雲塊状である。単純な円環距離を仮定すると、雲の サイズは 125 pc となる。
 二つの不完全円環の水素質量は 2 × 10 7 Mo である。従って内側銀河には少なくと二つの長さ 2 kpc に 伸びた雲があり、共に銀河中心核から外側に 4 × 1054 ergs で膨張速度を示している。もしそれらを 90° 角の 弧とすると 1.3 × 1055 ergs の膨張エネルギーは爆発モデル への制限となるだろう。この構造は l = 0 を -53 と +135 km/s で交差する ので、対称性爆発や軸上の棒回転(?)では観測の特徴を説明できない。爆発や 棒は強い衝撃波を形成し、それが星形成を生み出す。しかし、そこに大量の 電離ガスがある証拠はない。 Ro = 10 kpc, Vo = 250 km/s 仮定。

Bania 1977
内側銀河系での CO
 CO J = 1 - 0, b = 0, l = [352, 10], Δl = 0.2°, φ = 65 , Δv = 2.6 km/s の観測を行った。 以下 Ro = 10 kpc を仮定。 CO の積分強度 と運動は、銀河系の内側 2 kpc、 300 pc より外では N(CO) ≥ 2 × 1016 cm-2 (観測感度限界)の分子雲は数個しかない ことを示唆する。中心 3 - 4 kpc 以内の CO は R < 300 pc の中心核 領域、 M(H2 ≤ 7 × 108 Mo, に含まれている。
 3 kpc リングは、もし銀河面に大きく傾いているなら別だが、完結した 円環を成していない。腕の断片に関して言えば、H2 質量は HI 質量 より小さい。CO データには 3 kpc 腕の共鳴リングモデルを支持する証拠はない。 |l| < 3° の CO (l, v) 図は Ω = 40 km/s/kpc の剛体回転する 傾いた円盤を示す。これは HI の中心核円盤と同じである。その内部には二つの 付加的構造があり、それぞれが -135 km/s と +165 km/s で l = 0° を 横切っている。この二つは l = 359° で v = [-140, +140] km/s にかけての 尾根でつながっている。この特徴は回転膨張円環のモデルに合致するが、模様が l = 0° で不完全である。と言うのは、 l = 1° にある特徴の対応物が l = 359° にはないからである。その上、単純な回転円環も、共鳴軌道も、 銀河中心爆発も b = 0° の (l, v) 図を説明できない。

Becklin,Neugebauer 1975
銀河系中心の 2.2, 10 μm 赤外マップ
 銀河系中心 1、分解能 2.5 の 2.2, 10 μm 測光マップを示す。銀河中心 2 pc の 2.2 μm 輻射は大部分が 個々に分かれ、M2.2 μm ≤ -8 の天体から来る。  10 μm では個々に区別できる天体が 9 つと、広がった放射の尾根が見える。 個々の天体の 5 つは尾根内にある。その大きさと 10 μm 光度は 惑星状星雲 NGC 7027 と似ている。

Becklin,Neugebauer 1968
銀河系中心の赤外観測
 銀河系中心核を 1.65, 2.2, 3.4 μm、分解能 0.06 × 1.8 で観測した。結果として、
(1)直径 5 の明るい天体。
(2)その中心にある点源
(3)広がった背景輻射
(4)その他の分離した広がった天体
が検出された。2.2 μm の等高線マップが 2.2, 0.8, 0.25 の分解能で与えられた。
 電波と赤外の観測の比較から、明るい赤外天体と電波源サジタリウスA は同じ 座標と同じ大きさを持つことが判った。
 赤外放射の解析から太陽と銀河系中心の間の可視域減光は 25 等と見積もられた。 銀河系中心と M 31 中心からの赤外放射を比べると双方の中心核の見かけ構造と 光度が同程度であることが判った。


 銀河系星形成史 

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著者 内容

Ruiz-Lara, Gallart, Bernard, Cassisi 2020
サジタリウス矮小銀河の円盤星形成史への度重なるインパクト 
 Gaia DR2 CMD を用いて、太陽近傍 2 kpc バブルの星形成史をモデル化する。 過去 5.7, 1.9, 1.0 Gyr に3つの鋭く強い星形成ピークが現れた。  これらのピークは (1) 軌道シミュレイション、(2) 銀河系円盤位相空間の特徴、(3) サジタリウス銀河の星構成 から予想される サジタリウス矮小銀河の銀河系への最接近時期と一致する。Sgr は銀河円盤形成の 主要駆動者ではないか?

Kobayashi, Karakas, Lugaror 2020
元素の起源: 炭素からウラニウムまで 
 C(A=12) から U(A=238) までの安定元素全ての銀河系化学進化モデルを作っ た。その結果、元素の起源とその時間経過が分かった。太陽近傍では、もし 20 - 50 Mo のハイパーノバ(HNe)からの寄与が大きければ M > 30 Mo の 星は超新星にならない。低質量スーパー AGB 星からのハイブリッド WDs  が所謂タイプ Iax 型超新星として爆発しない、またはスーパー AGB 星が 電子捕獲型超新星 (ECSNe) として爆発しないなら、スーパーAGB星 (太陽 近傍では 8 - 10 Mo) からの銀河系化学進化への寄与は無視できる程度である。  第一ピーク元素 Sr, Y, Zr は ECSNe と AGBs で十分な量が作られる。 中性子星マージャーは急速中性子捕縛(r-過程)によって Th - U までの元素 を作ることができるが、低メタル量星での観測量を説明するにはタイムスケー ルが長すぎる。Eu に見られるような進化傾向はもし 25 - 50 Mo ハイパーノバ の 3 % が磁場ー回転型超新星となって r-過程元素を作るなら説明可能である。 太陽近傍の他にもハロー、バルジ、厚い円盤における進化傾向を予言し、将来 の観測との比較に備えた。

Haywood, Snaith, Lehnert, Di Matteo, Khoperskov (2019)
昔からの天の川銀河問題再訪:外側円盤としての太陽近傍 
 広い範囲での拘束条件を考慮して、G-矮星問題を解決する、太陽近傍化学進 化の筋書きを提案する。 R < 10 kpc の円盤は巨大乱流ガス円盤から形成 された厚い円盤で、大質量星により太陽メタルまでメタル量増加が進んだ。R ≤ 6 kpc の内側円盤は宇宙年齢(?)7 - 10 Gyr での星形成停止期の後に メタル量増加が続いた。より遠方の領域では、厚い円盤の星形成活動後に残さ れたガスを、7 - 8 Gyr 昔に、動径方向のガス流(降着?)が希釈する。こう して、別々の化学進化を経ることにより、円盤は内側円盤と外側円盤とに分か れた。キーとなる考えは、厚い円盤によるメタル量の事前増加は、以前の内側 から外側モデルで想定されているような太陽半径におけるこの成分の比率に関 連しているだけではなく、形成期に存在した活発なガスの混合による完全な厚 い円盤にかんけいしているということである。だから、厚い円盤種族が表面密 度の 15 - 25 %, または太陽近傍での 5 - 10 % を占めるということでは G- 矮星問題を解くには不適切である。  この筋書きが上手く働くには、乱流ガス円盤から動径方向に一様なメタル分 布を持つ厚い円盤が形成され、太陽円付近が太陽メタル量になったことを認め る必要がある。太陽円では厚い円盤形成後に残された太陽メタル量のガスに、 外側円盤から流れ込んできたガスが一体となり、G-型矮星問題を解くのに必要 なメタル量の薄い円盤を形成した。 R > 6 kpc、特に太陽円を超えた向こう 側での化学進化は同じシナリオで説明される。外側からのガス流はバーの形成 とそれに伴う外側リンドブラッド共鳴が外側円盤の低メタルガスを R = 6 kpc (損頃の共鳴点位置)まで内側に流し込んだためにメタル量希釈が生じたので あろう。この共鳴は同時に内側円盤を外側から隔てて孤立させた。これらの結 果は太陽近傍のメタル量分布は天の川銀河のガス降着史と結びつかないことを 意味する。最後に、太陽は希釈を経験した 6 kpc より外側円盤に典型的な星で あり、内側円盤の特性は備えていない。
Mor, Robin, Figueras, Roca-Fabrega, Luri (2019)
ガイア DR2 が明らかにした 2 - 3 Gyr 昔の円盤星形成バースト
 DR2 G < 12 の 等級、カラー、視差を用い、 IMF, ノンパラメトリック 星形成史を含む15次元パラメター空間を調べた。それにはブザンソン銀河系 モデル高速シミュレイション BGM FASt と近似ベイジアンアルゴリズムを用いた。 DR2 データに 2 - 3 Gyr 昔の星形成バーストが刻み込まれていることが分かった。 現在の星形成率は 1 Mo/yr と判明した。また、 9 - 10 Gyr 昔から 6 - 7 Gyr 昔 に掛けて SFR が減少して行ったことも分かった。これは宇宙論的な星形成が z < 1.8 で低下するという傾向と一致する。  5 Gyr 昔からは星形成が活発になり 1 Gyr 昔まで続いた。我々の計算では円盤 で星形成に使われた質量の 50 % は 1 - 5 Gyr の間に含まれる。バーストの原因 は外部からの擾乱と思われる。さらに、M > 1.53 Mo では α2 = 2, M = 0.5 - 1.53 Mo では 1.3 であると分かった。

Buder + 33 (2019)
GALAH サーヴェイ:TGAS による太陽近傍星の元素組成、年齢、運動の調査 
 7066 の矮星、ターンオフ星、準巨星を選び分光解析した。Gaia と GALAH 視線速度から運動速度を得た。質量と年齢は、 星パラメターと絶対等級からベイズ当時線フィットにより求めた。 年齢、[Fe/H], [α/Fe] 間の相関を調べ、高アルファ系列の星は一般に 低アルファ星より古いという結果を再確認した。  低アルファ系列星は [Fe/H] = [-0.7, +0.5] に分布する。[Fe/H] - [α/Fe] 面上で二つの系列は高メ タル領域で融合する。しかし、年齢を使うとこの領域でも二つの系列を分離 出来る。サンプルを年齢で分けると、古い星(> 8 Ga) は角運動量 Lz が太陽より低いと分かった。それらの星は離心率の大きな軌 道を描き、内側円盤から来ている。(理由?)以前のより小規模な研究とは 逆に、高アルファ系列の進化に裂け目はなく、連続にスーパーソーラーまで 進化することが判った。10 Ga より若い星は主に低アルファ系列に見出され、 低メタルで Lz > Lo, z から 高メタルで Lz < Lo, z へ変化する。 この系列の最後にある星が太陽近傍領域から来たのではないことを意味する。 ( Lz の話、合ってるか? )

Noguchi (2018)
天の川銀河の低温降着流と化学的双峰性 
 α 元素と鉄との存在比 [α/Fe] は、それらが異なる種類の超新 星を起源とするために、銀河形成の診断に有用である。太陽近傍の星に二種類 の元素比、一つは高 [α/Fe], 一つは低 [α/Fe], が存在すること はそれらが異なる起源を持つ事を示唆する。しかし、この双峰性が何に起因す るかは不明である。形成途上銀河に始原ガスが降着するという説が最近提案さ れている。我々は、この低温降着流仮説によると 6 - 7 Gyr 昔を境として、 二つの星形成活動があり、自然に元素の双峰性が説明されることを示す。  第1星形成活動は元々の冷たい始原ガスが銀河円盤に自由落下することで引き起 こされる。この時期の星は高 [α/Fe] を持つ。 第2星形成活動は第1星形成活動で一度加熱されたガスが、放射冷却 でユックリと冷えるにつれて第1期よりずっと遅い降着流となることが原因であり、 低 :α/Fe] が特徴である。低温流仮説はまた、銀河系における元素存在比の 場所による大規模変化を降着の歴史の差として説明する。

Haywood, Di Matteo, Lehnert, Snaith, Fragkoudi, Khoperskov (2018)
天の川銀河内側円盤とバルジの系統学 
 MW R ≤ 7 kpc のバルジと円盤が単一の化学進化と二期の星形成活動で 上手く記述できることを示す。内側円盤の種族は一つであり、バーの外側リン ドブラッド共鳴(OLR) がこの一様性を説明する鍵である。我々の二期星形成モ デルでは、メタル量、[α/H], [α/Fe], 年齢-メタル量関係が全て 内側円盤とバルジの観測に一致する。バルジと内側円盤のメタル量分布におい て、[Fe/H] = 0 dex 付近に現れる窪みは内側円盤の星形成史で年齢 8 Gyr に 起きた星形成活動の一時停止と、バルジと内側円盤星の共通進化を反映する。 内側円盤 R ≤ 7 kpc に対する我々の結果は, 銀河系総バリオン質量の大 きな割合が数ビリオン年で急速に構築されたという考えに合う。  z ≤ 1.5 の頃、銀河系の星形成が停止し始め、高 α 厚い円盤 形成の終了から薄い円盤の開始に切り替わり、未だ円盤はガスが豊富な時代に ガス降着は強くはあり得なかった。この降着停止期の前後で [α/Fe] は 異なるであろうが、観測では未確認である。z ≤ 2 における降着率とガス 量比率の低下は、円盤を安定させ、厚い円盤から薄い円盤への転移を許し、天 の川銀河のゆっくりした進化の開始をもたらす。恐らくこれが恒星バーの発達 を可能とし、我々はそれが星形成の停止につながったと仮定する。 今回の解析は天の川の歴史、特に厚い円盤から薄い円盤への転移と星形成の 一時停止は星形成効率の低下により駆動されたに違いない。ガス降着の低下、 バーの形成、星形成停止が同じ時期に起きたことは互いに因果関係で結びつき、 それで同時に発生したのである。貯蔵ガスの 20 % が分子であると仮定すると 我々のモデルはシュミットケニカット関係に上手く乗る。

Hayden et al 2015
APOGEE による化学地図学:天の川円盤のメタル量分布関数化学構造
 SDSS-III/APOGEE DR12 からの 69,919 赤色巨星を用い、 R = [3, 15] kpc, |z| < 2 kpc 銀河面内かってない体積での, [α/Fe] - [Fe/H] 面上 分布とメタル量分布関数を測った。内側円盤(R < 5 kpc) の星は、高アル ファ低メタルから始まり [α/Fe] = 0, [Fe/H] = 0.4 で終わる一本の [α/Fe] - [Fe/H] 系列をなす。より大きな半径では、[α/Fe] - [Fe/H] 空間に二本の系列が現れる:一本はほぼ太陽アルファでメタル量は一桁 の広がりを示し、もう一本は高アルファ系列で超太陽 [Fe/H] で低アルファ系 列と合体する。  高アルファ系列の位置は円盤全体で一定である。しかし、R > 11 kpc に は高アルファ星が殆どない。円盤中央面 MDF のピークは R が大きくなると、 銀河系メタル量勾配を反映して、低メタル側に移動する。最も驚くべきは、 中央面 MDF の形が R と共に系統的に変わって行くことである: R = [3, 7] kpc では負方向に片寄った分布だが、太陽円環付近ではガウシャン型となり、 外側円盤で正方向に片寄った分布となる。|z| > 1 kpc または [α/Fe] > 0.18 では、MDF は R に依らず一定である。外側円盤 MDF が正方向に片 寄るのは動径移行 (migration) の標しかも知れない。軌道離心率は星種族のぼ やけを」説明するには不十分であるが、動径移行の単純なモデルで説明できる ことが判った。
(年齢データなしに「古い」、「若い」 と言っているのは解析姿勢が甘い。年齢の重要性を痛感する。)

Snaith, Haywood, Di Matteo, Lehnert, Combes, Katz, Gomez (2015)
天の川銀河円盤の星形成史を化学組成から再構築する 
 内側銀河系=閉箱的モデル、外側銀河系円盤=降着の影響を受ける、と仮定 した。Kennicutt 則のような星形成の処方を規定して元素組成を再現すること はしない。その代わりに、我々は組成の変化を年齢にフィットして、銀河系の 星形成史を再現した。 内側 (R<7-8 Kpc)と外側 (R>9-10kpc)におけ る 銀河系形成最初の数Gyrs における星形成史をこれまでにない 精度で再現した。内側銀河系では厚い円盤期である最初の 4-5 Gyr の間に約 半分の星が作られた。それに続き 8-9 Gyr (昔?)には星形成活動が低下し た。その後残りの 8 Gyr は低レベルでほぼ一定の星形成活動が続いた。  我々の結果によれば、閉箱モデルは内側円盤の初期進化は良く再現できる。 その時期星形成は主に星間物質の強い乱流で支配される。 z=1 の頃までは 降着の大部分は外側円盤で起き、内側円盤の星形成は厚い円盤時期に消費され 残ったガスと最初期の星からの放出ガスにより支えられていた。外側円盤では 星形成活動は内側円盤を忠実になぞるが、内側円盤で薄い円盤の形成が始まる より 2 Gyr 早く、 z = 2 の時期に星形成活動を開始する。

Lehnert, Di Matteo, Haywood, Snaith (2014)
高 z 銀河としての天の川:銀河における厚い円盤形成の重要性
 天の川銀河の星形成史を遠方の円盤銀河と比較した。進化の初期 4 - 5 Gyr の間に天の川は星形成率 ΣSFR = 0.6 Mo yr-1 kpc-2 という激しい星形成を行い、その結果星間空間に流れと強 い乱流を作り出した。この強い星形成期が厚い円盤の形成に対応し、 z = 1 までに全星質量の約半分を作り出した。これは組成マッチから選びだされた 「MW 前駆銀河」と似た状況である。  この一致から、厚い円盤の形成は円盤銀河一般の進化段階と考えられる。1 次元速度散布度と星形成強度の間に単純な注入エネルギー - 運動エネルギー 関係を適用すると、天の川の垂直方向速度散布度の時間変化を導き出せる。 この関係から推測される進化は z = 0 -3 の銀河での観測に一致する。強い星 形成活動が生み出す乱流が、厚い円盤、化学的に一様な星間物質を産み出す。

Snaith, Haywood, Di Matteo, Lehnert, Combes, Katz, Gomez (2014a)
天の川で星形成が最も強い時期に厚い円盤ができた
 古い星の化学組成を使い、天の川の星形成史を初めて確実に測定した。厚い 円盤の形成は 9.0(z=1.5) - 12.5(z=4.5) Ga に起こり、その後 z = 1.1 に約 1 Gyr 続く星形成停止期を迎えた。厚い円盤の質量は薄い円盤と同程度に大 きい。  この結果は、この時期の銀河系内に大量のガスが存在したことを意味する。 これは過去20年間化学進化モデルで仮定されてきた、長期にわたる降着に 対立する。これらの結果は早期宇宙における円盤銀河の進化で最近現れて きた特徴とも良く合う。

Minchev, Chiappini, Martig (2014)
天の川円盤の化学動力学進化2.銀河半径と高度による変化
 Minchev13 では太陽近傍を中心に研究した。今回はさまざまな R での化学 進化を調べ、現在進行中および将来の観測で発見されるべき特徴を求める。 運動学的加熱と動径移行の効果を分離して、移行の方が重要であることを示 した。星誕生のガイド半径と最終ガイド半径の分布は古い星ほど広がる。 その結果年齢-メタル関係は太陽より外側では著しく平坦になる。色々な半径 でのメタル分布はどこでも -0.15 dex がピークになる。低メタル端は -1.3 dex までのびる。これに反し、高メタル端は半径と共に下がって行き、平均 メタル量が半径と共に下がる原因となる。  同様に、[Mg/Fe] 分布はどこでも 0.15 dex がピークとなる。その低値端は R が大きくなると消える。逆に高端は 0.45 dex で消える。 R-[Fe/H]、R-[Mg/Fe] 関係は円盤高度 Z により大きく変化する。R-[Fe/H] 勾配は負から僅かな正へ( R = 10 kpc で)と、R-[Mg/Fe] 勾配は正から負へと 銀河面高度と共に転換する。これは(i)円盤面近くで若い星が、離れると古い星 が多く、(ii)古い星ほど集中度が高く, (iii) フレアリングとエラーの効果である。 動径移行は「内から外」円盤形成には勝てない。

Minchev、Chiappini, Martig (2013)
銀河系円盤の化学動力学進化 I. 太陽近傍
 円盤の化学進化モデルと銀河円盤のシミュレイションを合わせるという新し い方法で円盤の化学動力学進化を研究する。この方法はシミュレイションで起 きる星形成と化学組成増加の問題を避けることができる。ここでは、宇宙論的 な枠組みの中で、銀河系を扱う。その場での元素生成と動径移行が太陽近傍に もたらす影響を調べた。高 z 時代のマージャーからの動径移行と後期のバー の影響の結果、低メタル高アルファの星が多数太陽近傍に来たことが判った。 これは最近の観測を自然に説明する。  強い動径混合が生じるが年齢-メタル関係の勾配は分散以外ではあまり影響を 受けない。Ro = 8 kpc として、太陽は R = [4.4, 7.7] kpc で生まれた可能性 が強い。厚い円盤の新しい統一モデルを提案する。そこではマージャーと動径 移行が大きな役割を担う。初期に強いマージャーがなかったら、最古星の垂直 速度散布度は観測の半分となってしまう。従って、厚い円盤が静かな円盤進化 から生まれることはなさそうである。


Haywood, Di Matteo, Lehnert, Katz, Gomez (2013)
天の川の2相星形成史の手がかり
 太陽近傍にあり、元素組成が良く決まっている星を調べた。[α/Fe]- 年齢面上に二つのはっきり分かれる分布を示す。それらは厚い円盤と薄い円盤 の種族である。[Fe/H] および [α/Fe] と年齢とのきつい相関が厚い円 盤星に認められる。これはよく混ぜられた星間ガスこの種族が 4 - 5 Gyr か けて形成、初期には爆発的星形成その後はより静かに、されたことを意味する。 厚い円盤星の最も若いグループは円盤種族と同じくらいの小さなスケール高を 示す。この二つから導かれる自然な結論は、厚い円盤星には垂直方向のメタル量 勾配があることである。我々の考えでは、厚い円盤の最も若い星たちは、8 Gyr 昔に、内側薄い円盤の形成が始まる初期条件を用意したのである。その時の [Fe/H] は (-0.1, +0.1) の範囲であり、[α/Fe] = 0.1 dex であった。 この考えはまた、薄い円盤のメタル量が R = 7 - 10 kpc で階段状に変化する 事実と、厚い円盤が R < 10 kpc に限られる事との一致を説明する。  我々の考えでは、外側薄い円盤は厚い円盤の影響が及ぶ半径の外側で発達し、 独立な構造を持つのであるが、同時に、厚い円盤が形成される際に放出された ガスによって始原ガスが汚染された結果高い [α/Fe] を持つようになった。 太陽近傍の低メタル薄い円盤星 ([Fe/H] < -0.4) はそれらが外側円盤で生 まれたと考えると最もうまく説明されるのだが、それらの年齢は最も若い厚い円 盤星の 9 - 10 Gyr と同じである。これは、外側薄い円盤が形成し始めた時に、 厚い円盤はまだ内側円盤で星形成を継続していたことを意味する。 このように、内側厚い+薄い円盤は異なるスケール高を持つ二つの成分からなり、 その結合は内側から外側への形成過程を示すかのように見えるのだが、薄い円盤 自身は多分その最初の星を外側部で作った。その上、指摘したいのは、厚い円 盤のきつい [Fe/H], {α/Fe] − 年齢関係を考えると、内側から外側形成 モデルは厚い円盤において α 元素とメタル量の銀河系中心距離による 勾配を生む。しかしこれは観測されていない。最後に、我々の結果からは動径 方向の星の移住による太陽近傍星の汚染は考えられない。

Patel + 16 (2013)
 天の川型銀河の z = 1.3 以降の構造進化
 天の川のような星形成銀河の構造進化を星形成系列の進化から推測される星 総質量に基づいて追跡した。サンプル銀河は HST/WFC3 G141 NIR グリズムの 3D-HST 分光サーベイから選んだ。構造 CANDELS WFC3 画像に Sersic プロフ ァイルフィットをして構造を決めた。z = 0 1010.5 Mo の星形成 母銀河の質量は z = 1 では約半分である。この晩期星質量増加は最近の元素 組成マッチ法からの結果と合う。  z= 0 での星形成銀河の半光量半径はz= 1 以来 1.4 倍に増加している。この 半光量半径の増加は星質量と re ∝ M0.29 の関係 にある。星質量の大部分は外側部に集積するが、表面密度プロファイルは中心 部でも質量増加が継続していることを示す。そこではバルジまたは擬バルジが 標準的である。中心部での成長の一部は、 z = 1 銀河の H&alph; 撮像が中心 にピークを持つ事が示すように、星形成活動による。z = 1 時代から現在までの 間に R = 8 kpc での表面密度は 2 倍に成長する。これは太陽近傍での観測 と良く合う結果である。

Leitner, Kravtsov (2011)
 高燃料効率銀河:星からのマスロスで星形成を維持する
 銀河の後期進化の間進行する星形成を持続させる上で星からの継続性マスロス の役割を調べた。恒星質量 Ms 銀河に対して、観測される Ms-星形成率関係の 進化から導かれる星形成史に様々な初期質量関数を仮定して、標準的恒星進化 モデルのカスロスを合わせて用いて、全星種族からの総マスロスを計算した。  我々のモデル恒星からのマスロスによる再生ガスは現在の晩期型銀河で進行 中の星形成を維持するに十分である。星からのマスロスはしたがって、観測か ら導かれる比較的低レベルのガス落下率と円盤銀河で見られるかなり速い星形 成との間の対立を取り除くものである。冷たいガスの落下率が評価されている 銀河に対しては、星形成によるガス消費率と落下率との差を星からのマスロス が埋めることを直接に示す。

Dekel, Birnboim (2006)
 低温降着流と衝撃波加熱による銀河の双峰性
 特定質量3 1010 Mo 銀河に見られる双峰性の起源を調べる。より 小質量の銀河はバラバラに青い星を形成する円盤になる傾向がある。一方、より 大きな銀河はよくまとまり赤い古い星から成る楕円体を形成する。カラー・等級 データは赤系列と青系列の間に間隙を持つ。極度に赤く明るい銀河が z = 1 に は既に存在し、 L* の上にある現在の青い系列が区切られ、z = 2 - 4 で巨大星 形成が起きている。
 これらの特徴は降着ガスの熱的性質とそれらの集積とフィードバックの相互作 用に駆動されている。それらすべてはダークマターハローの関数で類似の特性長 と関係する。衝撃波加熱臨界質量 Mshock ≤ 1012 Mo 以下では円盤が冷たい降着流により形成される。それはビリアル衝撃波による加熱 はなく、初期の効率的な星形成に導く。  それ(?)は超新星のフィードバックにより青い銀河の長期にわたる爆発的 星形成に導かれ、「基本系列」に加えられる。M ≥ Mshock の ハロー内の高温ガスを通り抜ける冷たい降着流は特に z > 2 で巨大星形成 を L > L* 銀河で起きる。z < 2 での M > Mshock ハロー を持つ銀河では、ガスがビリアルショックで加熱され、希薄であるためAGN の ような活発なエネルギー源からのフィードバックに対し脆弱となる。その結果、 ガス供給が止まり、さらなる星形成を妨げる。その結果、「赤くて死んだ」巨大 楕円体が z = 1 で発生する。Mshock 付近でのフィードバック効率 の極小が観測される M/L の極小とSFH の性質を説明する。冷たい降着流は角 運動量問題への解答のヒントを与える。

Bertelli, Nasi 2001

太陽近傍の星形成史
 ヒッパルコス星の CMD を合成 CMD と比べて SFH を出した。主系列と赤色 巨星枝を分けて扱った。フィットは χ2 極小で決めた。
(1)サルピータ― IMF は妥当。開始時から現在にかけて星形成が次第に 活発になる。 (2)導かれる質量密度とそれに対応する星形成率の絶対値は M < 0.5 Mo での IMF の勾配に強く影響される。
(3) 恒星進化モデルは完全でない。He 燃焼星と主系列星の数の比は観測に 較べモデルが 1.5 倍高い。オーバーシュートをより効果的にする必要がある。

Hernandez, vallas-Gabaud, Gilmore (2000)
ヒッパルコス太陽近傍の最近の星形成史
 ヒッパルコスカタログを用いて、太陽近傍の CMD を作成した。ベイズ解析 により、この領域の過去3 Gyr にわたる星形成史 SFR(t) を調べた。SFR(t) の形や構造に事前の仮定は入れていない。  SFR(t)の時間分解能は 50 Myr である。SFH(t) には周期 0.5 Gyr の振動 成分がある。ヒッパルコスサンプルの非一様性からの問題を議論し、統計テス トを行った。その結果、我々の SFH(t) が観測と整合することが確認された。

Twarog, Ashman, Anthony-Twarog 1997
銀河系円盤の形成と進化の改訂に関する観測
 DDO 測光と中間分散分光により組成が与えられた 76 散開星団を統一した メタル量表示に変換し、銀河系円盤の局所構造と進化の研究を行った。Ro = 8.5 kpc. 星団メタル量の分布は二つのはっきり区別されるゾーンで記述される。一つは RGC = 6.5 - 10 kpc でメタル分布は平均 [Fe/H] = 0.0 で散布度 = 0.1 dex。そこではあるにしても精々弱いメタル量勾配の証拠しかない。 R > 10 kpc ではメタル量散布度は 0.10 - 0.15 dex、平均 [Fe/H] = -0.3 でメタル量には R = 10 kpc で鋭い断絶があることが予想される。この断絶を 補正した後には、面に垂直な方向のメタル量勾配の証拠は認められない。
 R < 10 kpc の星団を過去 7 Gyr の円盤を代表すると、星団メタル量の 巾はフィールド星での分布の半分である。この結果を先のメタル量分布の断絶 と結びつけると、低メタルの R > 10 kpc フィールド星が内側へと拡散で 流入してきていると解釈可能である。これはまた、太陽は太陽円上で 4.6 Gyr 昔にできた普通の星ではないという解釈も含む。メタル量断絶は円盤球状星団 と所謂厚い円盤とで定義される銀河系の初期円盤の縁を反映していると考えら れる。断絶線の両側での化学進化の差によって生み出された [Fe/H] の初期の ずれは銀河進化を生き延びて現在の状態にまで至っている。そうであるなら、 組成勾配ゼロでの拡散は銀河中心距離に基づくフィールド星の分離を困難に する。

Chiappini, Matteucci, Gratton (1997)
銀河系の化学進化:二回の降着モデル
 ハロー・厚い円盤と薄い円盤を形成した2回の降着を仮定する化学進化モデ ルを提示する。ハローの進化は直接には扱わない。モデルが円盤用だからであ る。薄い円盤の形成は厚い円盤よりずっと長く掛かった。これは薄い円盤を作 るガスが厚い円盤から降り注ぐだけでなく、主に得銀河間空間からのガスだか らである。薄い円盤を作るタイムスケールは銀河中心からの距離により変わり、 内側ほど短い。その結果銀河系建設は内側から外側へ広がって行った。  星形成には最低値を設けたので、厚い円盤の星形成は途中で停止した。これは 観測と合う。観測との比較で最もきついのはG-矮星のメタル分布である。我々 のモデルは最新のデータに合う。モデルはガス質量、星形成率、超新星 率、それに 16 主要元素量の時間変化を予想する。それらの制約から、 ハロー、厚い円盤の形成タイムスケールは 1 Gyr 以下、薄い円盤では太陽付近 で 8 Gyrである。

Rocha-Pinto, Maciel 1997
銀河系局所円盤における星形成の歴史
 G-型矮星のメタル量分布から太陽近傍で星形成バーストが起きたか を研究した。メタル分布と年齢・メタル量関係を結ぶ方法を 提案する。観測エラー、宇宙分散、スケール高効果を考慮した。  不規則な星形成史を持つ銀河の化学進化をシミュレイションして、 この方法の有効性をテストした。太陽系近傍に適用すると、少なくとも 2回の強い星形成期、一つは 8 Gyr 昔、もう一つは 2 - 3 Gyr 昔 があったことが分かった。

Blitz (1997)
MW の CO
 MW 中の CO 分布を Rg = 3 - 7 kpc の分子リングと見做さずに、中央部が 欠けた指数関数型円盤と考えると、恒星円盤の進化を理解しやすくなる。 単位分子ガス質量当たりの星形成率は銀河系動径距離に対して一定であり、 水素分子の減少時間はハッブルタイムの数パーセントに過ぎない。  この非常に短いタイムスケールは、活発な星形成領域ガスに対して、原子 ガスが貯蔵庫の役を果たすことを要求する。HI がCOと大きく異なる 分布を示すので、銀河系外側からのガス落下か、円盤中の HI ガスが角運動 量を失う高効率な方法があるに違いない。CO 円盤の中心部が欠けるのはバー のせいである。

Kennicutt (1994)
円盤銀河の過去と将来の星形成史
  渦状銀河の表面輝度を用いてその星形成史を調べた。現在の星形成率と過去の平均 星形成率との比 b は Sa での 0.01 から Sc - Irr の 1 まで変化する。ハッブル系列 に沿って渦状銀河の測光特性の変化は基本的に星形成史の違いに依る。現在の星形成率 とガス質量を比較すると、ガス消費時間のメディアンは 3 Gyr である。しかし、星から のガス還流を適切に扱うと、円盤のガス寿命を 1.5 - 4 倍伸ばす。その結果、多くの (全部ではない)円盤銀河での現在の星形成率はハッブル時間程度の期間維持され得る。
前半と後半は切れてる。後半はワンゾーンの還流モデルで、星形成効率の係数の絶対値が 様々な銀河形態を生むという考えらしい。原因は論じていない。

Miller, Scalo (1979)
太陽近傍における初期質量関数と星形成史
 太陽近傍での初期質量関数(IMF)と星形成史を調べた。現在の質量関数は光度 関数から決めた。関連する観測量全て、光度関数、質量・光度関係、スケール高、 非主系列星の補正、主系列星の光度増加、と不確定性を議論した。観測された総 質量は力学質量=オールト質量とひどく矛盾はしない。従って、局所的に "隠され た質量" を想定する必要はない。
 星形成史に対する主な拘束は、主系列星寿命が円盤年齢と等しくなる質量で、 導いた IMF が非物理的な不連続を示さないことである。様々な不定性を考慮す ると、過去の平均星形成率は現在の値に較べ、精々5倍大きいか、3倍小さいか である。我々は変動幅はファクター2程度と考える。星形成史に対する副次的な 12の拘束を与える。星形成率がガス密度の二乗に比例するという証拠はない。 もし、星形成率がガス密度のべき乗としても、その指数は 0.5 以下である。
 連続性の拘束に矛盾しない幾つかの星形成史に対して、 IMF を求めた。得ら れた IMF は滑らかで、 log M に関しハーフガウシャン、つまりログノーマル である。IMF の勾配は dlogξ/dlogM = -(1 + logM) である。現在の質量 消費は (3 - 7) 10-9 Mo pc-2 yr-1 で ある。ガス消費のタイムスケールから、星形成はガスの落下率と釣り合っている か、または星形成率が超新星や銀河衝突によりストカスティックに制御されて いることを示す。IMF の形は星団 IMF と大体合っている。



 LMC/SMC 星種族 

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著者 内容

Tosi, Dell'Agli, Kamath, Ventura, Van Winckel, Marini (2022)
マゼラン雲 post-AGB 星を用い AGB 期のダスト形成を理解する
 post-AGBs のスペクトルを解析して、AGB 期の間に星の表面組成に起きる変 化を研究する。マゼラン雲中の双峰性 SED を輻射モデルで解析して、星の光度 とダスト成分を調べる。さらに、進化モデルと観測との比較から母星質量、メ タル量を導く。  13 サンプル中 8/13 は炭素星で母星は 1 - 2.5 Moであった。5/13 星は < 1 Mo 星から生じた。それら 5 星はシリケイトダストに覆われている。 ダスト光学的深さと星の光度との間には相関がある。現在 post-AGB 星を 覆っているダストが放出されたのは Teff = 3500 - 4000 K の時期である。

Groenewegen (2022)
WISE が見る極端 AGB 星
 WISE から大質量放出率星のサンプルを得ることを目的に、SiC 吸収帯を 持つ炭素星と、周期が 1000 日以上の O-リッチ星 の計 2000 天体を調べた。 WISE W1, W2 変光曲線を "a sinus curve" でフィットした。他の変光サーベ イの結果もダウンロードしてフィットした。特に赤い 316 天体の SED を作り、 可能なら MIR スペクトルも合わせ、輻射モデルでフィットして質量放出率を 求めた。幾つかの赤外データベースとの位置相関を調べた結果、 1/3 は合って いないと分かった。単に WISE フラッグを使っただけでは誤りを防ぐのは難しい。 非常に明るい星のクローンであり、幾つかでは既知の周期と一致する。  最近の論文に刺激を受け、多数の非変光 OH/IR 星が見つかった。振幅に基づ いた選択の結果、約 750 の LPVが見つかり、内 145 は周期が 1000 日を超す。 その多くは新発見である。極めて赤い炭素星 EROs と同じカラーを持つ天体の SEDs をフィットした結果、C-リッチと O-リッチに分かれた。質量放出炭素星の MIR スペクトルをフィットすると、 Av ≥ 2 mag での星間減光が判る。5 kpc 以内の EROs が完全に同定された。そこからのダスト還流総量が決定された。 LMC では新たに 12 の EROs が見つかった。それらは LMC 炭素星数の 0.15 % にしか過ぎないが、それらからの質量放出は LMC での還流を 8 % 引き上げた。

Lebzelter, Nowlavi, Lecoeur-Taibi, Trabucci, Audard, Garcia-Lario, Gavras, Holl, Jevardat de Fombelle, Nienartowicz, Rimoldini, Eyer 2022
ガイア DR3: ガイア第2 LPV カタログ 
 セカンド Gaia LPVs カタログは G の変光巾が 0.1 mag ( 5 - 95 quantile range) の 1,720,558 LPVs を含む。他種変光星の混入を種々のファイルたーで 防いだ。周期と振幅は G-バンド変光曲線へのモデルフィットから決めた。C-星 は RP スペクトルの分子吸収帯から決めた。  392,240 LPVs には周期 P が与えられた。 546,468 星が C-星と分類された。 OGLE と ASAS-SN データとの比較から完全性は 80 % と評価された。リカバリー 率はミラ型で 90 %, SR と Irr で 60 % である。同時に LPVs 数は既知数の何 倍にもなった。特に混んだ領域でそうである。混入率は 2 % 以下である。しっか りした理論的議論に基づく C-星分類は文献にある分光で同定された炭素星と矛盾 しない。しかし、混んだ領域や赤化の強い場合注意が必要である。

Marini, Dell'Agli, Groenewegen, Garcia-Hernandez, Mattsson, Kamath, Ventura, D'Antona, Tailo (2022)
LMC 炭素星の進化とダスト形成を理解する
 ダスト形成を星風モデルに組み込んで、マスロス進化をモデル化した。 グラファイト/非晶炭素比、 MgS 付着量を調整してIRS/Spitzer SED に フィットした。 その結果、L-τ 面内で LMC 炭素星をプロットし、進化経路と合わせるこ とで、母星質量、AGB 年齢などの情報を得ることが出来た。  大部分のマスロス炭素星は 5000 - 17,000 Lo、τ10 < 3 で炭素星モデルと合う。調べた星の約半数は < 2 Mo 母星由来で 1 Gyr より 古い。残り半数は 1 Gyr より若く、 M > 2 Mo である。  サンプル中に L < 5000 Lo の星がある。それらは TP からの回復途中星 と考える。非常にシェルが厚い炭素星が幾つかある。単独星進化の枠組み内で の説明は困難である。連星系のロシュローブ溢れ出しの可能性がある。  MgS で 20 - 30 μm 放射の説明が可能である。

Lebzelter, Mowlavi, Marigo, Pastorelli, Trabucchi, Wood, Lecoeur-Taibi (2018)
ガイアと 2MASS を用いた AGB 星分類の新手法
 ガイア BP, RP と MASS J, Ks から二つの Wesenheit 関数 WRP, BP-RP, WKs, J-Ks を作り、次に、 (WRP, BP-RP-WKs, J-Ks) - Ks を作った。 この図上では様々な LPVs が異なる位置を占める。  O-リッチ星と C-リッチ星が分離することを示す。また、低質量、中質量、 大質量 O-リッチ赤色巨星、さらに極端 C-リッチ星を同定した。進化モデル を援用して、この図の天体分類力を示す。

Hoyt, Freedman, Madore, Seibert, Beaton, Hatt, Jang, Lee, Monson, Rich (2018)
The NIR TRGB II. LMC における絶対較正
 LMC における TRGB JHK 絶対較正を行った。Near Infrared Synoptic Survey には 3500 万星のデータが含まれ、その中の 65,000 は TRGB から 1 mag 内に 入る。  IC1613 の TRGB 勾配を適用し、 LMC DM = 18.49 を用い、TRGB JHK 絶対等級を 求めた。TRGB は LMC の立体構造を露わにした。

Groenewegen, Sloan (2018)
局所群 AGBs, RSGs の光度とマスロス率 
 SMC, LMC, Fornax, Carina, Sculptor dSphs 内の AGBs サンプルからの マスロスを調べた。スピッツアー搭載赤外分光器で測った 225 炭素星と 171 O-リッチ星のスペクトルに可視、赤外測光観測を加え、を輻射輸達モデルで フィットした。そこから光度とマスロス率を出した。現存データの解析から 変光周期を求めた。  VMC の K-等級、IRAC 4.5 μm 多期観測、ALLWISE+NEOWISE から非常に 深い赤外天体の 1000 日を超す周期を決めることができた。サンプル星全ての マスロス率と光度を決めた。文献に載っているマスロス率は今回の値とかなり 異なることがあるが、それは適用する光学定数の違い(場合によっては数倍の差) とモデル化の手法が主な原因である。

Cioni, Ripepi, Clementini, Groenewegen, Moretti, Muraveva, Subramanian 2017
VMC における脈動変光星
 VMC = the VISTA survey of the Magellanic Clouds は 2009 年に観測を開始 した。その後、 Ks モニターと追加の Y, J 測光をマゼラン系に亘り行ってきた。  その中には脈動変光星=セファイド、RR Lyrae, AGB 星が含まれている。 それらの星はマゼラン系の幾何学を追跡する有用な天体である。

板 その他 2015
SMC の長周期変光星(原稿)
 SMC 長周期変光星の可視と近赤外時系列データを解析し、その光度変化を調べた。脈動周期 の間、光度変化は小さいことが判った。カラーに応じた輻射補正の値を求めた。光度変化と 可視および近赤外変光との位相遅れが O-リッチミラに検出された。しかし、炭素星ミラと SRs には系統的な位相遅れは検出されなかった。
 明るいミラ型星にカラー位相の逆転が見出された。それらは長周期で、振幅が大きく、 O-リッチである。その原因は J バンドにおける TiO and/or VO 吸収帯が原因と思われる。 周期・光度関係と周期・カラー関係を導き、示す。

Jones, Kemper, Srinivasan, McDonald, Sloan, Zijlstra (2014)
LMC O-リッチ進化した星のアルミナ量  
 O-リッチ AGBs の星周外層中ダストの成分を決めるために、ダスト成分、 マスロス率、シェル内径、星パラメターのグリッド上で MODUST 輻射輸達モデ ルを作った。モデルのカラーを SAGEーSpec LMC サンプルと比較して、良い一 致を得た。5 - 37 &mu:m Spitzer IRS スペクトルと 可視 - MIR の測光が与 えられた 37 O-リッチ AGB 星をフィットした。  モデルフィットから得たマスロス率は 8 10-8 - 5 10-6 Mo/yr である。観測スペクトルに合うダスト組成は 非晶質シリケイトが主成分 で、それに非晶質アルミナ、金属鉄が加わる。AKARI の[11-15]-[3.2-7] 二色図 からアルミナの割合を決めることも出来る。

Ita, Matsunaga (2011)
星周減光を理解するための LMC ミラ
OGLE-III ミラ型星にNIRからMIRの周期等級関係を導いた。関係には折れ曲がり が見られる。短周期側からの延長と観測等級の差を星周減光によると解釈して 減光量と赤外カラーとの間の関係式を導いた。減光関係が変化することは ダストの性質が進化して行くことを示唆する。

Ita + 11 2010
AKARI SMC の近・中間赤外撮像分光観測 I. 明るい点光源リスト
 AKARI/IRC により SMC の 100 arcmin 2 領域で近・中間赤外 撮像分光観測を行った。撮像は 3.2, 4.1, 7, 11, 15, 24 μm, 分光は 2.5 - 13.4 μm であり、分解能は 20(3.5μm), 50(6.6μm), 50(10.6μm), である。ここでは測光結果から明るい、 12,000 NIR, 1800 MIR 天体を提示する。10σ 限界は 16.50(3.2μm), 16.12(4.1μm), 13.28(7μm), 11.26(11μm), 9.62(15μm) であった。

Glass, Schultheis, Blommaert, Sahai, Stute, Uttenthaler (2009)
AGB 星の中間赤外周期等級関係
 AGB 変光星が 24 μm という中間赤外でも近赤外と同様の周期光度関係に 従うことが判った。そこではダストからの星周放射が支配的である。 LMC と HBC 6522 とは年齢もメタル量も異なるが、 M - log P 関係は同じらしい。  その傾きには波長による系統的な傾向はない。見かけ等級対 log P 関係の 差は 3.8 で、これは距離指数の差に等しい。変光星のカラーは log P > 1.85 が検出可能な質量放出の条件であることを示す。最長波長 24 μm では 多くのセミレギュラー変光星がミラと同じくらいの明るさのダストシェルを有す。 24 μ を含む LMC CMD には明白な分岐が見える。

Vijh, Meixner, Babler, Block, Bracker, Engelbracht, For, Gordon, Hora, Indebetouw, Leitherer, Meade, Misselt, Sewilo, Srinivasan, Whitney (2009)
SAGE による LMC の AGB, YSOs 変光の発見
 SAGE LMC サーベイの3か月おいた2回の測光から変光天体を探した。変光 は IRAC 4 バンドと MIPS 24 μm を組み合わせて探した。  7°x7° 領域内で両方の観測で検出された3百万の星から 2000 個の 変光天体を見つけた。その大部分は AGB 星である。極端AGB 星の >66% は 変光しており、それが炭素星では 6.1 %, O-リッチ星では 2 % である。 また、変光 YSOs も見つけた。

Blum + 沢山 2006
LMC のスピツアーサーベイ(SAGE) II
進化した星と赤外 CMD
SAGE IRAC, MIPS に 2MASS を組み合わせ、CMD 分析を行った。TRGB の上に約 3万星を検出した。内訳は、O-リッチ AGBs = 17,500、C-リッチ AGBs = 7000、 晩期型超巨星(または明るい O-リッチ星)= 1200、極端 AGB 星 = 1200 である。 これらの 10 % にダストシェルがついている。 MIPS により IRAC では赤外超過が検出されてこなかった、比較的暗い O-リッチ AGB 星に赤外超過が検出された。

Meixner + 沢山 2006
LMC のスピツアーサーベイ(SAGE) I
概観と予備的解析
SAGE の目的は
(1)コラム密度 > 1.2 × 1021 H cm-2 の星間物質 からダスト過程を調べる。
(2)M > 3 Mo の誕生星を全て検出して、現在の星形成率を測る。
(3)質量放出率 > 1 × 10-8 Mo/yr の星を全検出して、 質量サイクルの収支を調べる。
N79/N83 領域を対象に、赤色超巨星、ダストAGB星、ダストなし星、前景星、 背景銀河の分類法を調べ、かなり良い選別に成功した。

Schultheis, Glass, Cioni (2004)

NGC 6522, LMC, SMC 領域での晩期型変光星
 2MASS から NGC 6522, LMC, SMC 3領域の完全サンプルを抽出し、MACHO, ISO データと同定した。各 MK ヒストグラム上で、TRGB の上で数が減る。 TRGB 光度はメタル量と共に増大する。また、与えられた MK に対す る (J-K)o もメタル量と共に大きくなる。これらのデータを Ferraro et al 2000 の銀河系球状星団と比較した。(J-H, H-K) 二色図上、低メタル星ほど多くの星が H-K 大になる傾向が著しい。これは、炭素星の割合が増加することによる。 全ての領域で主な変光星は、周期数十日の短周期変光星、長周期大振幅のミラ的 変光星、二重周期星であった。  低メタルになると、変光星の割合が小さくなり、与えられた振幅に対する最短 周期は長くなる。各領域で、 K - log P 図上の様々な傾向が見られた。LMC では 各領域間は類似しているがバルジ領域は異なる。バルジ領域では、K - log P 図 の "A" 系列は MK,0Tip をほとんど越えない。他のグル ープも LMC の対応系列と較べ途中で止まっている。マゼラン雲では 200 - 300 日周期の星が多数あり、 "C" 系列に従う。  ISOCAM で検出された MIR サンプルは MK < -7 星に対しては 完全である。様々な TCD, CMD には低メタルになると炭素星が増加する効果が 反映されている。ミラ型星の 等級・周期関係は少なくとも 7 μm までは 存在する。長周期変光星と二重周期 SRV からの質量放出はメタル量の差に 拘わらず、領域間で類似している。

Marigo, Girardi, Chiosi 2003
LMC 炭素星の赤い尾
 炭素星は M-型星に較べ系統的に赤いことが知られている。2MASS, DENIS の 色等級図で LMC 炭素星は印象的な赤い尾を引いている。これまでこの特徴は モデル等時線にはなかった。  その再現を目指し、TP-AGB 段階の進化を取り入れた等時線から種族合成を 2MASS j-(J-Ks) 図で試みた。シミュレーションは、2MASS データに現れる 銀河系前景と LMC O-何本かの垂直指を上手く再現した。
 その代り、炭素星の赤い尾の再現は出来なかった。通常採用される、太陽組成 相対比のまま Z を変えてオパシティを計算する方法で TP-AGB モデルを作って も炭素星の赤い尾は作れない。この失敗は炭素星の Teff - (J-K) 関係には 押し付けられない。そうではなく第3ドレッジアップで炭素が増加するに連れ 新しいオパシティを計算する必要がある。この方法で赤い尾を再現することに 成功した。

Matsuura, Zijlstra, van Loon, Yamamura, Markwick, Woods, Waters 2002
LMC 炭素星の VLT スペクトルとそのメタル依存性
 LMC 炭素星 6 個の L-バンドスペクトルを示す。3.1 μm に HCN, C2 H2, 3.8 μm C2H2 の吸収帯がある。それらの 等値巾は系統的に太陽近傍の炭素星より大きい。二つの炭素星には 3.5 μm に HCN 吸収帯があった。EW(3.8 μm)/EW(3.1 μm) は LMC では太陽近傍星より 大きい。これは n(C2H2)/n(HCN) が高いことを示唆する。
 LMC 炭素星の吸収強度が強いことは、炭素星に関してもスケール太陽近傍炭素星が 成立して、分子組成も低いという仮定とは矛盾する。銀河系炭素星では n(C)/n(O) = 1.05 - 1.1 であるが、我々の化学モデルによれば n(C)/n(O) > 1.2 である。高い C/O 比は n(C2H2)/n(HCN) が高いこと も説明する。

Cioni et al 2001
LMC 巨星の変光と分類:DENIS と EROS の結果
 EROS から LMC Optical Center 0.5 deg2 で 800 変光星の 光度曲線を得た。その 126 星の分光データ、内 30 は既知、 96 は新しい、 を示す。スペクトルを C-リッチと O-リッチに分けた。残りの星は J-Ks カラーだけで C-リッチと O-リッチに分けた。P - Ks プロットは SRa, SRb, Miras からなる系列が見えた。 C-星は上の方を占めている。 AGB 星の 65 % は長周期変光星である事が判った。

Nikolaev, Weinberg 2000
2MASS からの LMC 星種族
我々は特徴の豊富な2MASS LMC色-等級図の形態的な分析を提示する。そして、 銀河系とLMC種族を同定してLMC種族だけの密度を推定する。いろいろな星の 種族の投影された空間的な分布を示す。2MASSの 10σ 感度限界は J < 16.3、 H < 15.3、Ks < 14.7であった。 既知の種族の色-等級図上の予想される位置、等時線フィット、空間的な 分布の分析に基づいて、主な種族が同定された。2MASSは、 漸近巨星分岐(AGB)星(104天体)とダストにおおい隠された AGB星(2 × 103天体)の種族を検出した。第一上昇 赤色巨星分岐(RGB)とAGBに沿ったLMC種族は、定量化される。 バーとLMCの外側の領域での巨星光度関数の比較は、両方の光度 関数は互いに矛盾しないように見えることを示す。中心(バー)フィールドの 光度関数は RGB 先端の位置に相当する Ks = 12.3 等付近で、はっきりした 落ち込みを示す; 同じ特徴は、全 LMC フィールドの光度関数で見られる。 巨星分岐に対する等時線フィットからは、LMCの中心と外側の領域との間の金属量と 年齢に有意な相違が見られなかった。これは、最近数十億年の強い力学的 進化の証拠であるかもしれない。特に、観測されたLMC巨星分岐は、DM = 18.5 ±0.1、E(B-V) = 0.15-0.20、Z = 0.004 と 年齢 3-13 Gyr の公表されている CIT/CTIOシステムのモデル軌跡とよく一致する。 標準露出 × 6 倍の深い 2MASS エンジニアリング・データの分析も類似した評価 を生み出す。

Massey, Waterhouse, DeGiola-Eastwood (2000)
LMC/SMC アソシエイションのターンオフから決めた W-Rs, LBVs 母星質量
 自分たちと文献データを合わせて、ウォルフ・ライエ星と他の進化した大質量星 を含むマゼラン雲の 19 OB アソシエイションを調べた。分光から多数の天体、 例えば O-型超巨星、SMC 中の大質量連星、LMC の新しく確認された LBV (LBV R 86)、 新しく発見されたウォルフ・ライエ星 (Sk-69°194)、新発見の Be 星 LH 85-10 などを同定した。
 これ等のデータから赤化の決定、物理的 HR 図の作成を行った。約半数のアソシ エイションは共時的(coeval) で、大質量星の年齢差 Δτ < 1 Myr で あった。未進化系列の星の最大質量から、進化した星の母星質量を決めた。また、 未進化系列の最大質量星の総輻射光度から、進化した星の輻射補正 BC を決めた。 これらの星の複雑な大気をモデル化する際に BC の制約は大変有用であった。
 こうして我々は以下を見出した。
(1)SMC の WR 星は最大質量 (> 70 Mo) から来た。これは、低メタル環境では 最も質量の大きい星のみが十分なマスロスが出来、従って W-R 星に成れるという シナリオに合致する結果である。
(2) LMC では早期型 WN (WNE) 星がターンオフ質量 30 - 100 Mo またはもっと大 のアソシエイションで見られる。これは、 LMC メタル量の場合、M > 30 Mo の 星は全て WNE 期を経ることを意味する
(3)SMC でただ一つ見つかった WC 星はターンオフ質量 70 Mo のアソシエイションに 属する。このターンオフ質量は SMC WN 星の場合に等しい。LMC では WC 星が見つかる のはターンオフ質量 45 Mo かそれ以上のアソシエイションである。これは WN 星 と同じ区間である。つまり、 WC 星は基本的には WN 星と同じ質量区間の星から 生まれる。それがしばしば同じ星団中で両者が見つかる理由であろう。これは 局所群銀河内での WC/WN 比を解釈する際に重要な意味がある。
(4)我々のサンプルでは LBV は最も大質量 M > 85 Mo のグループから 出てくる。最近 Ofpe/WN9 星の一つが LBV 的な燃え上がりを示した。これから Ofpe/WN9 星は LBV の一種ではないかという議論があった。しかし、今回の サンプル中に合った二つの Ofpe/WN9 星, BE 381 と Br 18 はターンオフ質量 が 25 - 30 Mo のアソシエイションに属していた。したがって、Ofpe/WN7 星は LBV とは関係がなく、LBV 的に見える変光の全てが同じ原因ではないことに 注意すべきである。
(5)WN, WC 星の輻射補正 BC は極端な大きさで、例えば平均 BC(WNE) = -6, BC(WC4) = -5.5 である。これらの値は最も高温の O-型星と比べてさえ、絶対値 でずっと大きい。しかし、WNE 星に Hillier の「標準モデル」を適用した結果 では類似の BC を得ている。BC(Ofpe/WN9) = -2 to -9 でより穏やかである。 これらの値を銀河星団に適用すれば異なるメタル量での大質量星進化を理解 するのに役立つだろう。

Azzopardi 1987
SMC: Hγ線等値巾と明るく青い星の光度クラス
  2000 個の対物プリズムスペクトルから、銀河系内の OB と 超巨星 O7 - F2 標準星、 SMC の 195 O9 - F8 星 の Hγ 線等値巾を得た。銀河系の星から、等値巾と MK 分類との相関を調べた。それを用いて、SMC の 青い星 172 個の 光度クラスを 与えた。

Mulder 1986
多重グリッド法による渦状銀河内の準定常ガス流の計算
 ガス運動のオイラー方程式の積分を効率的に行う計算法を示す。 定常解の存在を仮定し、計算法のポイントを述べる。方程式は上流微分法で フラックスベクトル分割を通して空間を分割する。これにより衝撃波を 明快に表現できる。時間積分はインプリシット法で行われる。その形式化 で現れる線形系は多重グリッド補正法により、ガウスザイデル緩和により 解かれる。
 この方法を弱いバーを含む銀河に適用した。バーの強さと、音速の 大きさに応じて、基本的に異なる二つのタイプの解が現れる。 タイプIは共回転の内側にのみ衝撃波を持つ。衝撃波でのエネルギー散逸に より内側への流入が起こる。中心密度を固定することで準平衡解が 得られる。流入率は非常に小さく、セル分割化に伴うエラー程度である。 バーとガスとの間のトルクに伴うタイムスケールは非常に長く、ハッブル 時間より大きい。流入率の小ささは一方では準平衡解の正当化に役立つが、 もう片方では実際の銀河で見られる流入量の説明には衝撃波による 散逸以外のメカニズムが必要であることを意味する。
 タイプIIの解は共回転の内側にも外側にも衝撃波 を持つ。内側衝撃波はガス流入を、外側衝撃波はガス流出を招く。 その結果、共回転半径の周辺からガスが消失し、二つのリングを形成する。その 一つは ILR の内部、もう一つは OLR の外側に。準平衡解を得るにはこの ガス消失領域にガスを注入し、ガスが溜まる領域から抜き出す必要がある。
 解は強い非円運動を示す。円盤銀河の中性水素速度場に見られる傾いた リングモデルは回転楕円モデルかも知れない。真横から見た回転曲線を 幾つか示した。それらは HI 観測と較べられる。それを見ると、円運動を 仮定しての回転曲線の解釈は間違いを導く危険があると分かる。

Wood+2 1985
LMCバーの長周期変光星に見る最近の爆発的星形成
 LMCバーとその北における長周期変光星の幾つかに対し、JHK等級と スペクトル型を求めた。炭素星とM型星とでは異なる周期光度関係に従う事 が判った。LMCバー内の長周期変光星に対する周期光度関係から、
(1)この領域の星の大多数は主系列質量で 1.6 Mo 以下、年齢 1 Gyr 以上。
(2)しかし、主系列質量 5 - 6 Mo、年齢〜 6×107 年 のグループ が存在する。
セファイドの周期、光度分布もやはり6 ×107 年前に星形成期があった事を示す。  短周期( 250日以下)M型星ミラ銀河系の種族 II ミラと類似していて恐 らく非常に古い、多分100億年以上、で比較的低メタルの種族に属するようだ。 これらの短周期ミラを 47 Tuc 内に見つかった3つの類似ミラと比べると、 47 Tuc距離指標=13.34 を使って LMC距離指標=18.6±0.25 となる。

Frogel, Blanco (1983)
LMC Bar West の星形成史
 LMC Bar West 0.12 deg2 での赤外色等級図は、二つのはっきり 異なる AGB が見出される。暗い AGB 星は数 Gyr 前の一時的星形成、 明るい AGB 星は LMC の青い星団に対応する年齢の第2の一時的星形成 を表わす。

Mould, Aaronson 1982
LMC 中間年齢星団の伸張した巨星枝 III.
 マゼラン雲球状星団 80 星の JHK 測光を行い、AGB 星最大光度に 基づき、Mv < -7 の星団のほぼ完全な年齢推定を行った。LMC 星団の年齢分布は 4 Gyr に鋭いピークを持つ。これは SMC と違う。 星形成率一定のモデルは必ずしも除去できない。星団系には明らかな年齢・ メタル量関係が存在する。

Aaronson, Mould 1982
LMC 中間年齢星団の伸張した巨星枝 II.
 LMC, SMC 間で AGB 先端等級のはっきり異なる分布は星団の間で 年齢が大きく異なっていることを意味する。平均すると、 LMC 中間年齢星団は SMC 中間年齢星団より若い。 しかし、 LMC は銀河系球状星団と同じくらい古い球状星団を含むのだが、その ように古い星団は SMC には見つかっていない。 マゼラン雲のメタル量増加の割合は 太陽近傍よりは速いが、銀河系ハローよりは遅い。

Cohen, Frogel, Persson, Elias (1981)
マゼラン雲と銀河系の炭素星の絶対輻射光度と赤外の性質
 LMC の明るく赤い 89 星と SMC の明るく赤い 21 星を主に、Blanco, McCarthy, Blanco 1980 から選び、JHK測光及び、CO, H2O 狭帯域測光を行っ た。大部分は既知の炭素星である。それらを新しく観測した銀河系炭素星 33 個と比べた。バイアスのないマゼラン雲炭素星の光度分布を Renzini, Voli のヘリウムシェルフラッシュを起こしている最中の二重シェル燃焼星モデル計算 と比べた。観測とモデルは大きく違った。観測された星の大部分はモデル炭素 星の最も暗い星よりさらに暗かった。  さらに、Mi > 3 Mo の高光度の星の数が期待値より少なかった。その説明 として可能な一つは、初期質量関数の勾配が急であるか、無視されてきたマス ロスの効果が大きかったことなどである。それにもかかわらずヘリウムシェル フラッシュが炭素のドレッジアップを引き起こすという仮説は保持される。 LMC の晩期型 M-型巨星のカラーと指数は銀河系に似る。赤外指数は分子バンド 吸収の強度効果として説明された。それはまた、広帯域等級やカラーにも 影響する。 SMC と LMC のサンプル間の小さな差異はメタル量効果と解釈された。

BLanco,McCarthy, Blanco 1980
マゼラン雲の炭素星と M-型星
 マゼラン雲 5 領域、各 0.12 deg2、での 320 炭素星と 107 M5+ 星 のチャート、座標、R, I 等級表を示す。 M 型巨星に比べての炭素星の数は SMC の方が LMC よりはるかに多い。 炭素星の光度分布は単ピーク型で、⟨I⟩ = -4.6 である。 ピークの差は距離指標の差にして 0.51±-.03 である。



 LMC/SMC 構造 

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著者 内容

Ruiz-Lara, Gallart, Monelli, Nidever, Dorta, Choi, Olsen, Besla, Bernard, Cassisi, Massana, Noel, Perez, Rusakov, Cioni, Majewski, van der Marel, Martinez-Delgado, Monchesi, Monteagudo, Munoz, Stringfellow, Surot, Vivas, Walker, Zaritsk (2020)
SMASH による LMC 恒星成分
 LMC の形態の特徴は中心から外れたバーと一本腕の渦状腕であり、それが マゼラン型渦状銀河 (Sm) を規定している。この形状は潮汐相互作用で起きた と考えられ、多分ガス降着で維持されている。しかし、この構造が永続するか どうか不明である。  ここでは SMASH により、LMC 渦状腕が 2 Gyr の昔から長期にわたり存続して きた証拠を見出した。2 Gyr 昔の近接遭遇がマゼランブリッジ、先行腕と共に、 渦状腕を生み出した。これは LMC-SMC 衝突に重要な制限を掛ける。

Hoyt, Freedman, Madore, Seibert, Beaton, Hatt, Jang, Lee, Monson, Rich (2018)
The NIR TRGB II. LMC における絶対較正
 LMC における TRGB JHK 絶対較正を行った。Near Infrared Synoptic Survey には 3500 万星のデータが含まれ、その中の 65,000 は TRGB から 1 mag 内に 入る。  IC1613 の TRGB 勾配を適用し、 LMC DM = 18.49 を用い、TRGB JHK 絶対等級を 求めた。TRGB は LMC の立体構造を露わにした。

Monteagudo, Gallart, Monelli, Bernard, Stetson (2018)
LMC バーの起源:バーと円盤の SFH からの手がかり 
 LMC バーとその周辺の内側円盤数領域における深い CMDs からの SFHs を較 べて、 LMC バーの起源を探った。VIMOS/VLT により、この様な深い領域におい て古い星種族の MSTO に達する深い CMDs を得た。  全ての領域での SFHs は同じパターンを共有する。したがって LMC バー形成 に関わる星形成の特別な事件は起きていなかった。バー形成は円盤が力学 不安定になり物質の再分布を起こした結果である。

Lennon, van der Marel, Lerate, Mullane, Sahlmann (2016)
LMC ランアウェイ超巨星を Gaia TGAS を使い探索する
 GAIA DR1 TGAS カタログの中に含まれる LMC ヒッパルコス超巨星の中からランアウェイ 星を探した。GAIA TGAS 固有運動カタログに含まれる LMC 中の可視光で明るい星の 空間速度を計算した。選ばれた 31 星は LBV, 輝線星、青色、黄色超巨星、SgB[e] である。 固有運動と文献から得た視線速度を合わせて、空間速度を導いた。さらに円盤の力学 モデルで決まる局所速度に対する特異速度を求めた。
 31星の内、2星は異常に大きな固有運動を示した。残りは円盤回転速度に良く合う速度 を示した。実際、モデルとの一致は非常に良く、 TGAS の誤差評価は過大であることを 示唆する。  それら29星の中で一番速い星は LBV R71 で、他によく知られた輝線星が 含まれる。ただし、それらは 100 km/s のランアウェイ星速度には合わない。 R 71 は局所回転速度 40 km/s からややずれている。この天体が通常の孤立星進化 を遂げるには大質量形成領域から離れすぎているという考えを支持している。 我々の発見はこの LBV が連星進化の結果であるという仮説を強化する。 ランアウェイ星の一つ, 超巨星 Sk-672 (HIP22237) B1.5 Ia+ の 360 km/s という大きな横断速度は LMC 銀河を去り、そこで超新星となるだろう。

Marel, Sahlmann (2016)
Gaia 局所群運動の初期成果:マゼラン雲固有運動と回転
 Gaia DR1 を用いて LMC/SMC の固有運動(PM)を調べた。そのために LMC で 29 個、SMC で 8 個のヒッパルコス星の Tyco-Gaia Astrometric Solution (TGAS) 固有運動を用いた。西、北方向の固有運動は LMC が (μW, μN) = (-1.872±0.045, 0.224±0.054) mas/yr, SMC が (μW, μN) = (-0.874±0.066, -1.229±0.047) mas/yr である。これらの結果は HST が得た結果と大体等しい。 TGAS の値は HST と独立な手法で求めたもので、この結果は両者の解析の確実性を 示す。  また、HST の結果と一致することだが、TGAS LMC PM 速度場は時計回りの 回転を示す。LMC 円盤の回転には 108 年以上かかる。若い星の回転曲線の振幅 は視線速度観測から予期されていたものと一致する。固有運動と視線速度の比較から 運動学的 LMC 距離指数 m-M = 18.54±0.39 が得られた。

Olsen, Zaritsky, Blum, Boyer, Gordon (2011)
LMC 内に降着した SMC 星種族
 LMC の大質量赤色巨星,酸素過多と炭素過多 AGB 星、その他の巨星 約 5900 個の視線速度の解析を行った。LMC 平均速度を補正し、 AGB 星の非対称ドリ フトを考慮して、我々は使用した追跡子星全てと HI データと整合する回転曲 線を導いた。それは、 Ro = 2.4±0.1 kpc より先では回転速度 v0 = 87±5 km/s で、運動学的なノード線の位置角 = 142°±5° である。フィットから外れた星を調べた結果、376 星 (> 5 %) の視線速度は LMC 円盤と逆回転を示す。  これら運動が特異な星は、LMC 円盤と近い面内を逆方向に回転しているか、 LMC 円盤と回転の向きは同じだがその回転面の角度が LMC 円盤と 54° ±2° を成すかのどちらかである。それらの運動は明らかに2本の 既知 HI 腕と結びついている。それらは以前に LMC 円盤から引き上げられた と解釈された。LMC フィールド星 1000 個の CAT ラインからメタル量を測った。 内 30 個は視線速度が特異な星である。普通の LMC フィールド星のメタル量は メディアン [Fe/H] = -0.56±0.02、散布度 0.5 dex である。特異速度 星ではメディアン [Fe/H] = -1.25±0.13、散布度 0.7 dex である。 このメタル量の違いは特異速度星が SMC から来たことを示唆する。この解釈 に伴うモデルはそれらの星に随伴する HI 腕もまた SMC から LMC へと降着 してきたというものである。

Koerwer (2008)
NIR RC からのマゼラン雲 距離と構造
 IRSF マゼラン雲カタログを用い RC 距離をマップした。J, H データから 赤化フリーパラメターの光度関数を作り、RC 絶対等級を恒星進化ライブラリー から求めて、LMC 距離指数として 18.54±0.06 を得た。LMC銀河面の 傾斜角は i = 23°.5 ±0°.4, 方位角 &fi; = 154°.6 ±1°.2 である。多くのフィールドで AGB バンプが著しい。

Grocholski, Cole, Sarajedini, Smith (2006)
LMC 赤色巨星の CaII 三重線分光観測 1. 大きい星団巨星の組成と速度
VLT/FORS2 を使い、LMC の大きな星団 28 個中の 200 星の近赤外スペクトル を撮った。 新しく測られた星団 NGC 1718 は最も低メタル ([Fe/H] ∼ -0.80) の 内側円盤中間年齢星団の一つであることが判った。この星団の 視線速度は単一の回転円盤システムと矛盾せず、ハローの運動は示さない。 さらに我々の結果は LMC はバーのない渦状銀河では典型的なメタル量勾配を 欠いているという以前の報告と一致する。バーが LMC 星種族の混合を 促していることを示唆する。

Cioni,Girardi,Marigo,Habing (2006)
マゼラン雲 AGB 星 II. 星形成史
 DENIS, 2MASS データを使い、 LMC AGB 星の Ks 等級分布をモデル分布 と比べた。炭素星と O-リッチ星双方の等級分布にフィットすることで LMC 全体でのメタル分布に制限を加えた。LMC 種族は平均して 5 - 6 Gyr の年齢で、平均 Z = 0.006 である。これらの値はモデルの系統エラーにより 影響を受けている可能性がある。 その代わり、我々の方法は平均メタル量と 星形成史の変化を検出する力に優れている。
(解析法に問題があると思う。 )

Cole, Tolstoy, Gallagher, Smecker-Hane (2005)
LMC バー赤色巨星の分光
 LMC バー光学中心の 200 平方分にある 373 赤色巨星の近赤外スペクトルから メタル量と視線速度を導いた。これは LMC 表面輝度最大地点での中間年齢と 高齢の星の最初の測定である。メタル量分布は [Fe/H] = -0.4 に鋭いピークを 持つ。 赤色巨星の 10 % は [Fe/H] ≤ -0.7 であり、分布の小さな尾が [Fe/H] = -2.1 まで伸びている。低メタル星が比較的少ないことは、 LMC にも 銀河系と似た "G-矮星" 問題を持つことを示唆している。組成分布は二つのガウ シャンの重ね合わせで近似できる。 一つは星の 89 % を含み、[Fe/H] = -0.37, σ = 0.15, もう一つは星の 11 % を含み、[Fe/H] = -1.08, σ = 0.46 である。 第1成分のメタル量分布は LMC 円盤中間年齢星団と似る。それらの太陽中心 平均視線速度 257 km/s は円盤の中心から遠く離れた箇所の測定で決めた重心 速度と同じである。我々の観測領域はバーの中心にあるので、運動学的な拘束 は強くない。しかし、バーの運動が円盤全般の運動からずれていることを示唆 する証拠はない。
 サンプル全体の速度散布度は σv = 24.7±0.4 km/s である。最も低メタルな 5 %, [Fe/H] < -1.15, は σv = 40.8±1.7 km/s で、最も高メタル 5 % の倍以上となる。これは、古 くて、厚い円盤またはハロー種族が存在することを示している。年齢・メタル 量関係は t = 5 - 10 Gyr でほぼ平坦であり、メタル量の散布度は平均関係の 周り、 ±0.15 dex である。これを文献の化学進化モデルと比較すると、 3 Gyr の爆発的星形成は観測と合致せず、星形成率が 6 Gyr 以降漸減するモ デルの方が良い。LMC と銀河系の性質を比較し、両者の潮汐作用で星と星団の 形成史を説明するモデルとの関連を調べた。

Lah, Kiss, Bedding 2005
OGLE-II データの赤色変光星 III. LMC と SMC の3次元構造への制約
 OGLE-II サンプル赤色変光星の周期光度関係を用い、平均 P-L 関係 からのズレを距離のズレと解釈することで、マゼラン雲の立体構造を 調べた。LMC に関しては TRGB より下の星のみを使い、過去に得られた 傾きと恐らくウォープしたバーを確認した。深さの変化は 2.4 kpc であった。これは薄く傾いた円盤を表わしている。 傾斜角は 29° であった。OGLE-II RC 距離との比較では興味ある 差が検出された。これは RC の赤化補正に関係するらしい。場所により RC 種族が変わる事がその差を説明するかもしれないが、それは LMC 形成史の理解に大きなインパクトを与える。SMC に関しては複雑な 構造が見つかった。3.2 kpc の深さに渡って粒々の構造であった。

Alves 2004
LMC 距離と構造のまとめ
 LMC 距離の最近の研究結果 14 個の平均値は 18.50±0.02 で、 最近 2 年間に値が標準値に収束している事を示す。ここでは、 RC, TRGB, セファイド、 RR Lyr、ミラ、星団主系列、 SN1987A、食連星による結果を 較べる。食連星の結果は平均すると他の結果と合うが、内部分散が他の倍 くらいなのが問題である。RC のカラーから LMC に最近発見されたウォー プは実は本当のウォープではない。

Nikolaev, Drake, Keller, Cook, Dalal, Griest, Welch, Kanbour (2004)
MACHO と 2MASS から導いた LMC 円盤の幾何学
 MACHO で得た 2000 セファイドの完全な {VR}KC 変光曲線 と 2MASS の単期 JHKs 測光から、LMC 内側 ρ<4° の傾き角 と幾何形状を調べた。このセファイドサンプルは以前の結果に比べ飛躍的に 大きく、カバーする領域も広い。単期 JHKs 測光は MACHO V 変光曲線から 補正を加えられて平均 JHKs 等級に直された。得られた VRJHKs 周期光度 関係を解析して、個々のセファイドに対し統計的赤化と距離を求めた。 平面をフィットした結果、 i = 30.7°±1.1°, Θ = 151.0°±2.4° を得た。所謂リングモデルでは、中心位置の により、得られる角度が大きく変わる事を見出した。これは幾何形状が 平面からずれている為であろう。平面フィットからの残差を解析した結果、 対称的なウォープとバーが円盤の上に浮かびあがっている事が判った。 円盤の非平面形状は i と Θ の報告値がばらつく原因である。

Staveley-Smith, Kim, Calabretta, Haynes, Kesteven (2003)
LMC HI 大規模構造の新しい見方
 LMCのパークス多ビーム HI サーベイの結果を報告する。オーストラリア テレスコープコンパクトサーベイが 15 - 500 pc 構造に敏感であるのに対し、 この観測は 200pc - 10 kpc 構造に敏感で相補的である。線幅が狭い場合には 感度が 8 1016 cm-2, 通常の 40 km/s 線巾では 4 1017 cm-2 感度なので、LMC の広がった領域からの 放射を見出した。腕状の構造が LMC からマゼランブリッジとマゼランストリーム の前方対応物である先行腕に繋がっている。
 これ等の構造はSMCの場合ほど劇的ではないが、銀河系の潮汐力場の中で 共通の起源を持ち、星について 2MASS, DENIS が見出した最近の結果と一致する。 LMC を囲む希薄ガスは特に PA = [90, 330] 方向で、緩い潮汐構造を伴って いるが、薄い銀河系ハローのラム圧力で剥されている可能性も捨てきれない。 LMC 星の紫外スペクトルに現れる高速度星は LMC に付属しているらしい。それら はおそらく LMC 円盤からの高エネルギー噴出の産物であろう。 LMC HI ガスの 質量は (4.8±0.2) 108 Mo と判明した。これは以前の推定値 よりかなり大きい。

Cioni,Habing (2003)
マゼラン雲 AGB 星 I. C/M 比
 C/M比を使って、マゼラン雲の領域によりメタル量に差がある事を 見出した。LMCではこの比が中心から端にかけて同心状に低下して行くが、 CMCには明瞭な傾向が見えない。
 これはSMCが視線方向に深く伸びているためか、星形成史が複雑なため であろう。C/M分布はデコボコしていて、どちらの銀河でも [Fe/H] の 広がり 0.75 dex に対応している。両者を結ぶプリッジではC/M 比が 高い、つまり [Fe/H] が低いようである。

Olsen, Salyk 2002
LMC 円盤がウォープ?
 LMC にランダムに選んだ 50 フィールドを CTIO 0.9 m 望遠鏡で 観測し、(V-I, I) 色等級図上の RC 見かけ平均等級を求めた。RC カラーを赤化の評価に用いて、円盤傾斜角 i = 35.8°±2.4°, ノード線の方位角 Θ = 145.8°±4° を得た。
この解を得るにあたり、LMC 南西隅の 15 フィールドを除外した。そこは フィットした平面に比べ RC 等級が 0.1 等明るい。これは LMC 円盤の ウォープを示すものである。円盤面から 2.5 kpc めくれあがっている。 この光度差を年齢やメタル量に帰することは困難である。

Pietrzynski et al. 2002  レッドクランプ星の K 等級に減光、バーの傾き、種族効果からLMC 重心まで の距離は 18.501

van der Marel, Cioni 2001
近赤外サーベイによる LMC 構造 II. 星計数マップと円盤の固有楕円率
論文Iで導いたviewing angle を使い、RGB/AGB star countデータの解析を ellipse fittingで行なった。動径密度分布は指数型でスケール長=1.3−1.5 kpc、しかし遠くにエクセスがある。楕円の位置角と楕円率は距離で大きく 変動するがr>5kpcではθ=189.3±1.4°、ε=0.199±0.008に収斂する。 R 大ではイメージがviewing perspective に影響され、楕円中心を円盤の近い 側にずらす効果を持つ。このズレは論文Iで出したθ=122.5度と良く合う。 これを使うと固有ε=0.31となる。外側コントアは大体バー中心から0.4kpc離 れた点を中心とするが。この点はバー中心ともHIガスの運動中心ともずれている。 LMCは銀河系方向に伸びている。

van der Marel, Cioni 2001
近赤外サーベイによる LMC 構造 I. 円盤の傾き角
 LMC 円盤の傾き角が一般に受け入れられてきた値と大幅に異なる事が判った。 我々は 2MASS と DENIS 色等級図の場所による変化を調べ、方位角により 0.25 mag の巾でサインカーブ的変動を見出した。同じ現象が AGB 等級の モード値、 TRGB に見出された。ダスト吸収や種族変化が大規模な影響を 及ぼしている証拠はない。
ベストフィットは傾斜角 i = 34.7°±6.2°、ノード線の方位角 Θ = 122.5°±8.3° である。
LMC からの距離により これらの値が 10° 程度ゆれているような証拠もある。円盤はウォープしている らしい。伝統的な方法では、主軸の方位角 Θmajor や速度場の 最も急勾配な方向 Θmax が用いられてきた。円形回転円盤なら Θmajor = Θmax = Θ である。今回の 研究は回転対称を仮定しておらず、以前の方法よりずっと精密である。
我々は ノード線の本当の方位角が Θmajor や Θmax からかなり離れている事を見出した。これまでの値は 140° - 190° で あった。これは LMC 円盤の本当の形が円でなく、楕円形であることを意味する。 論文 II ではこのことの帰結を詳細に論じる。傾斜角は以前の結果と合っているが これは偶然であろう。なぜなら、それらは円形円盤という誤った仮定の上で 得られた結果だから。

Weinberg,Nikolaev 2001
2MASS による LMC 構造
LMC の 2MASS データを用い、投影密度を指数関数型円盤または 球対称冪乗則モデルに2次元楕円バーを加えたモデルでフィットした。得られた 円盤スケール長はバーなしモデルで R = 1.42 ±0.01 kpc, バーありで R = 2.15 ±0.01 kpc であった。円盤の傾斜角は 星種族により異なり、 i = 22° - 29° であり、平均は i = 24.0° ±0.3° である。バーを含むモデルから導かれた傾斜角はもっと大きく、 i = 38.2° ±0.4° である。
 1.6 < (J-Ks) < 1.7 の炭素星長周期変光星を用い LMC 円盤傾斜角の直接決定値 i = 42.3° ±7.2° を得た。
等級分布の著しい特徴からいくつかの種族が区別された。我々はそれらを LMC の 広がった厚さ 8 kpc の恒星成分、と LMC から 14 kpc 離れた潮汐デブリと考えた。 別のモデルとして、この特徴は AGB 進化に現れるものでさらなる理論的研究を 促すものかも知れない。

Cioni,Habing,Israel (2000)
異なる年齢の星によるLMC形態学
DENIS の I,J で受かった星を、(A)赤色巨星枝より左の若い種族、(B)TRGB より上のAGB 種族, (C)TRGB より下の RGB 種族に分け、その分布を LMC, SMC で調べた。(A)は乱れた構造、潮汐効果、渦状腕が特徴で、(B),(C) は スムーズで規則的な構造になる。

Whitelock, Feast (2000)
ミラ的変光星のヒッパルコス視差
ヒッパルコスで観測されたミラ255 星のうち 180 星から K 等級周期光度 関係ゼロ点を 0.84+-0.14 mag と求めた。LMC 距離指数 18.64+-0.14 を与える。

Piatti + 6 (1999)
LMC の新しい巨星クランプ
LMCバーの6°北、21か所、2.5deg^2、でのワシントン測光。場所の 選択は、第2巨星枝を示すSL388とSL509に近いところが選ばれた。 SL509から14°離れたNGC2209も観測した。CMDに分離した巨星 クランプは見つからず、垂直な構造(VS)が見つかった。VSはNGC 2209フィールドにもあった。その位置と大きさはどこでも同じで、RC の底から0.45等下まで伸びている。RCの青い方を占める。NGC 2209と他の2フィールドではRCが赤化ヴェクトル方向にやや傾いてい るが、VSの形は変わらない。VS箱をΔ(C−T1)=1.45-1.55, ΔT1= 18.75−19.15と定義すると、VS星数は場所による変化が激しい。 巨大星団SL515,NGC2209の周囲は巨星が多いが、VSも多い。 VSは何らかの進化効果で生まれたものである。
t=1−2Gyrの星を, もっと年老いて{Fe/H}=>−0.7の星 と混ぜると、暗くて青い第2クランプが生ずると、Girardiモデル では予言される。VS星を生むためのは、年齢、メタル、大量の赤色巨星 以外に別の条件が必要であるlことをわれわれの研究は示している。実際、 そのような星はLMC至る所にあるが、VSはいくつかの孤立した箇所で しか見られない。
最後に、クランプは固有の光度分散を持つことがクランプを距離指標として 使う有用性に制約をかける。

Udalski et al. 1999a
 LMC レッドクランプの局所平均等級の差を星間減光によるものと考え、LMC 84 方向の 減光量を求めた。

Udalski et al. (1998c)
食連星 HV 2274 の UBVIカラーから、この星への赤化をE(B-V) = 0.149、 (m - M)LMC = 18.22 ±0.13。

Udalski (1998b)
LMC/SMC の t = 1.5 - 12 Gyr 15星団を観測し、レッドクランプ平均 I 等級が 2 - 10 Gyr では年齢に依らないことを示す。

Udalski 1998a
 レッドクランプのメタル光度関係から(m-M)LMC = 18.13±0.07。

Kim + 6, (1998)
LMC の HI 開口合成モザイク
LMC の HI 開口合成モザイク観測のデータを解析した。画像の分解能は 1'.0 (15pc) で、乱流的でフラクタルな星間物質の構造が見えるようになった。中性原子 の構造はシェルや穴を伴うフィラメントが支配的である。大きな構造として、HI 円盤は著しく対称的であり、よく整った回転場を示す。HI の大部分は直径 7.3 kpc の円盤内に存在している。LMC 円盤成分の質量は 2.5 × 109 Mo で、半径 4 kpc 以内の質量上限は 3.5 × 109 Mo である。HI 雲 内の速度分散の分布は指数関数型である。これは 速度分散がストカスティックな過程で生じたことを示す。

Oestreicher, Schmidt-Kater (1996)
LMC の ダスト分布 
LMC の O - A 型星 1507 個の UBV 測光と分光から星間ダスト分布を 決めた。平均の内部赤化は E(B-V) = 0.16 であった。赤化の頻度分布 はひどく非対称なのでエラーを求める意味はない。赤化が 0.8 になる 箇所があった。赤化の強い箇所では星が見えなくなるので選択効果は 大きい。 Vo > 13.3 の固有光度が暗い星の赤化は E(B-V) ≤ 0.2 と小さいか全くない。12.3 < Vo ≤ 13.3 の中間光度星は E(B-V) = 0.3 まで達するかそれ以上にもなる。E(B-V) = 0.4 - 0.8 の 大きな赤化は Vo ≤ 12.3 の明るい星に限られる。光度関数から 我々の観測の完全度限界は 12 mag である。赤化にバイアスがかからな いよう、固有光度が暗い星は除去した。高赤化の星の位置と Cohen et al 1988 による分子雲の位置とには相関が殆どない。Hodge 1972 と van den Bergh 1974 の分子雲カタログとは逆に、我々は赤化の高い星を LMC の 至る所で見つけた。赤化分布は二つの分子雲モデルで説明できる。 小さい雲は赤化 0.04±0.01, 大きい雲は赤化 0.40±0.10 を産み出す。ダスト雲の性質は銀河系と似ているが、小さい雲と大き雲 の数の比は LMC と MW とで大きく異なる。全体としては Isserstedt, Kohl 1984 と合うが絶対値が大きい。これは 30 Dor とスーパーシェル LMC 2 のためである。大きな赤化は HIIR N11 と LMC 6 の周りで 見られる。マップは Luks, Rohls 1992 の HI マップ、Israel, Schwering 1986 の IR マップと同じ構造が現れている。

Wood+2 1985
LMCバーの長周期変光星に見る最近の爆発的星形成
 LMCバーとその北におけるの短周期ミラを 47 Tuc 内に見つかった 3つの類似ミラと比べると、 47 Tuc距離指標=13.34 を使って LMC距離指標=18.6±0.25 となる。

Schmidt-Kaler (1977)
LMC の 構造について
 渦を追跡する天体の幾つかは LMC 30 Dor を核とする渦巻構造を明らかに している。それらの主なものは HIIR, 早期型超巨星、星間ダスト、 WR 星 である。LMC は多分非対称多渦状腕の Sc(-C+)III-IVp 型であろう。 磁場のパターンは通常腕に沿っていて、電離水素フィラメントは観測と 合っている(?)。 30 Dor から軸状に発生する渦の破片と、外側での 羽毛状の様子は 30 Dor を活動源とする渦構造の活動を示唆する。

de Vaucouleurs (1955)
マゼラン雲の研究 I. LMC の大きさと構造 
 LMC 周辺、m = 14 までの星計数は平均直径が 20° = 15 kpc より大きい ことを示唆する。mpg = 14 (M = -4.7) より明るい星の総数は背景 補正後の数で 4700 である。その半数は分布中心 (5h33m, -67.7°) から 5° 以内にある。この中心は バーの幾何学中心 (5h24m, -69.8°) から 約 2 ° 北東にある。  長時間露出写真は薄い中間領域中に広がる渦状構造を示す。ある方向では中心 から 15° - 20° まで伸びるストリームがある。視線方向に対する赤道面 の傾きは 65° である。主軸の方位角は 160° である。セファイドの ハーバードデータの解析では、短軸の近い側は北側である。その場合、主渦状腕 は回転追随型になる。

McCuskey (1935)
写真等級 14 等より明るい星の LMC 表面分布 
 B 等級 9.0 - 14.0 等の星計数を LMC 周辺 215 平方度で行い、 等密度図を作成した。  LMC は南北直径 10.1°, 東西径 11.0° であることが分かった。



 LMC/SMC 星形成史 

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著者 内容

Massana, Ruiz-Lara, Noel, Gallart, Nidever, Choi, Sakowska, Besla, Olsen, Monelli, Dorta, Stringfellow, Cassisi, Bernard, Zaritsky, Cioni, Monachesi, van der Marel, de Boer, Walker (2022)
マゼラン雲星形成のラインダンス
 SMC CMD で古い種族の MSTO まで届く SMASH = The Survey of the Magellanic Stellar History データを用いて、CMD フィットにより SFH を導 いた。過去 3.5 Gyr に5つの星形成ピーク, 3, 2, 1.1, 0.45, それに現在、 があった。それを LMC の SFH と比べた結果、過去 3.5 Gyr で両銀河が似た 時期に星形成が活発になっていることが明らかになった。  この並行性が意味するのは、少なくとも過去 3.5 Gyr の間、両銀河間の潮汐 作用が SMC の質量を剥ぎとり、 LMC 腕構造を作って、繰り返し銀河進化に影響 していることである。我々は初めて最近の SMC-LMC 関連星形成が LMC 北半分の 腕に限定され、 SMC では全面的に起きていることを示した。これらの新発見は マゼラン雲の軌道史への拘束だけでなく、シミュレイションをどう行うべきかにも 使われるべきである。

Mazzi, Girardi, Zaggia, Pastorelli, Rubele, Bressan, Cioni, Clementini, Cusano, Rocha, Gullieszik, Kerber, Marigo, Ripepi, Bekki, Bell, de Grijs, Groenewegen, Ivanov, Oliveira, Sun, van Loon (2021)
VMC サーベイ - XLIII. マゼラン雲の空間分解された星形成史
 VMC から LMC 96 領域に対する SFHs を導いた。各 0.125 deg2 = 296 pc x 622 pc の 756 副領域が解析された。得られた SFH マップ log t で 0.2 - 0.3 の時間分解能を有す。LMC 円盤の古い時代の SFH の特徴と、最 近の斑な星形成= 1.6 Gyr に遡る 3 本の腕とバーに集中する星形成が明らか になった。最も強い星形成は t = 0.5 - 4 Gyr の 0.3 Mo/yr の時代である。  RR Lyr とセファイドの数から古い時代と若い時代の星形成率を比較した。 各副領域の平均減光と平均距離を求め、距離分布から円盤の面を決めた。 我々の結果は Harris, Zaritsky 2009 が求めた SFH マップより 50 % 広い。 それとの主な差は、若い時期での星形成率が低くなったことと、星形成の 主ピークが 1 Gyr より少し若い時点に同定されたことである。

Ruiz-Lara, Gallart, Monelli, Nidever, Dorta, Choi, Olsen, Besla, Bernard, Cassisi, Massana, Noel, Perez, Rusakov, Cioni, Majewski, van der Marel, Martinez-Delgado, Monchesi, Monteagudo, Munoz, Stringfellow, Surot, Vivas, Walker, Zaritsk (2020)
SMASH による LMC 恒星成分
 LMC の形態の特徴は中心から外れたバーと一本腕の渦状腕であり、それが マゼラン型渦状銀河 (Sm) を規定している。この形状は潮汐相互作用で起きた と考えられ、多分ガス降着で維持されている。しかし、この構造が永続するか どうか不明である。  ここでは SMASH により、LMC 渦状腕が 2 Gyr の昔から長期にわたり存続して きた証拠を見出した。2 Gyr 昔の近接遭遇がマゼランブリッジ、先行腕と共に、 渦状腕を生み出した。これは LMC-SMC 衝突に重要な制限を掛ける。

Monteagudo, Gallart, Monelli, Bernard, Stetson (2018)
LMC バーの起源:バーと円盤の SFH からの手がかり 
 LMC バーとその周辺の内側円盤数領域における深い CMDs からの SFHs を較 べて、 LMC バーの起源を探った。VIMOS/VLT により、この様な深い領域におい て古い星種族の MSTO に達する深い CMDs を得た。  全ての領域での SFHs は同じパターンを共有する。したがって LMC バー形成 に関わる星形成の特別な事件は起きていなかった。バー形成は円盤が力学 不安定になり物質の再分布を起こした結果である。

Haywood, Di Matteo, Lehnert, Snaith, Fragkoudi, Khoperskov (2018)
天の川銀河内側円盤とバルジの系統学 
 MW R ≤ 7 kpc のバルジと円盤が単一の化学進化と二期の星形成活動で 上手く記述できることを示す。内側円盤の種族は一つであり、バーの外側リン ドブラッド共鳴(OLR) がこの一様性を説明する鍵である。我々の二期星形成モ デルでは、メタル量、[α/H], [α/Fe], 年齢-メタル量関係が全て 内側円盤とバルジの観測に一致する。バルジと内側円盤のメタル量分布におい て、[Fe/H] = 0 dex 付近に現れる窪みは内側円盤の星形成史で年齢 8 Gyr に 起きた星形成活動の一時停止と、バルジと内側円盤星の共通進化を反映する。 内側円盤 R ≤ 7 kpc に対する我々の結果は, 銀河系総バリオン質量の大 きな割合が数ビリオン年で急速に構築されたという考えに合う。  z ≤ 1.5 の頃、銀河系の星形成が停止し始め、高 α 厚い円盤 形成の終了から薄い円盤の開始に切り替わり、未だ円盤はガスが豊富な時代に ガス降着は強くはあり得なかった。この降着停止期の前後で [α/Fe] は 異なるであろうが、観測では未確認である。z ≤ 2 における降着率とガス 量比率の低下は、円盤を安定させ、厚い円盤から薄い円盤への転移を許し、天 の川銀河のゆっくりした進化の開始をもたらす。恐らくこれが恒星バーの発達 を可能とし、我々はそれが星形成の停止につながったと仮定する。 今回の解析は天の川の歴史、特に厚い円盤から薄い円盤への転移と星形成の 一時停止は星形成効率の低下により駆動されたに違いない。ガス降着の低下、 バーの形成、星形成停止が同じ時期に起きたことは互いに因果関係で結びつき、 それで同時に発生したのである。貯蔵ガスの 20 % が分子であると仮定すると 我々のモデルはシュミットケニカット関係に上手く乗る。

Rezaei, Javadi, Khosroshahi, van Loon (2014)
LPVs 星計数から導いたマゼラン雲の星形成史
  LPVs K-計数から LMC/SMC の SFH を導いた。それらの星の K-等級から、 誕生質量と年齢を導き、そうして SFH を得ることができた。LMC では 10 Gyr 昔に一度、 1.5 Mo/yr の星形成活動が起き、その後は 0.2 Mo/yr の活動が 続いてきた。 LMC バーでは第2の星形成活動が 3 Gyr 昔に始まり、 0.5 Gyr 昔まで続いた。  SMC においては、二つの星形成活動が見られる。一つは、6 Gyr 昔 0.28 Mo/yr で、もう一つは 0.7 Gyr 昔に 0.3 Mo/yr のピークがあった。この第2ピーク の方は LMC でも見られ、相互作用の結果かも知れない。第1星形成期が異なる ことは二つが対になって誕生したのではないことを示唆する。

Rubele, Kerber, Cioni, Girardi, Marigo, Zaggia, Bekki, de Grijs, Emerson, Groenewegen, Gullieuszik, Ivanov, Miszalski, Oliveira, Tatton, van Loon (2012)
VMC サーベイ VI. VMC 4タイルから導いた LMC SFH と円盤の幾何学
 VMC 観測データを基に、LMC の数か所で SFHs を導いた。3箇所は1.4 deg 2 の大きさで LMC 中心から 3.5 ° 離れている。加えて二つの 0.12 deg2 (21.5'x21.5')の大きさの副領域と、 30 Dor タイル中の 減光が一様な 0.036 deg2 (11.3'x11.3') の副領域を解析した。SFH の導出には極小探索プログラム StarFISH を用いた。距離指標 (m-M)o は 0.2 Av は 0.5 くらい変わるのでそれぞれの領域で独立に解析を行った。  ルックバックタイム を t として、 log t = 9.3 と 9.7 に星形成ピークが現れた。 最近の星形成率は場所により大きく変わる。バー領域では、log t = 8.4 - 9.7 の間非常に一定である。各領域の距離指標が正確なので、 LMC 円盤の空間モデルを 作った。円盤の傾斜角 i = 26.2 ± 2.0° ノード線の位置角は θo = 129.1 ° である。LMC 中心までの距離は (m-M)o = 18.470±0.006 mag となる。

Weisz, Dolphin, Skillman, Holtzman, Dalcanton, Cole, Neary (2013)
マゼラン雲の古代星形成史を比較する
 HST archival を用いて LMC/SMC の 4 Gyr 以前の SFHs を調べる研究の予 備報告である。HST/WFPC2 による CMD は地上観測より 2 mag 以上深い。 特に LMC バーの様に混んだ領域で HST は優れている。SMC 7 領域、LMC 8 領域で CMD フィッティングにより SFHs を導いた。次に SMC, LMC それぞれ の重み付き平均 SFHs を較べた。どちらの銀河も早期星形成の爆発的活動を 欠くことが判った。10 - 12 Gyr 昔に LMC は SMC に比べて強い星形成を経 験した。他の研究と同じく、 SMC は 4.5 Gyr と 9 Gyr 昔に SFH ピークを 示す。これは繰り返し起きた LMC との近接遭遇の結果かもしれない。  どちらにも周期的な星形成活動の証拠はほとんど見られない。これから MW との繰り返し遭遇はなかったらしい。 3.5 Gyr 昔から二つの銀河は SFH の 鋭い立ち上がりを示す。その結果二つの SFH はよく辿れる。SMC SFH の場所 による変化はガスが 3.5 Gyr 前から SMC 中心部に流れ込み始めたという描像 に合致する。それが周辺部での星形成を停止させると同時に中心部での活動を 活発にした。対照的に、 LMC の古い SFH は場所による変化が無い。両者の SFHs の比較にはより外周での SFH の研究が重要である。

Piatti (2011d)
SMC 星団年齢−金属量関係の包括的理解に向けて
 SMC 11星団の CT1T2 測光により年齢とメタル 量を決定した。11星団の結果の年齢ーメタル量関係へのプロットは、 2Gyr 昔 の爆発的星形成を再現した。これらの星団を SMC 星団サンプルに加えて、 包括的な星団年齢ーメタル量関係を得た。  それによると、t = 2 Gyr と t = 5 - 6 Gyr に星形成の活動期があった。t = 7 Gyr より古いとメタル量勾配は平らで散らばりが大きい。星団数の不足がこの 結論を大きく変えることはない。

Leitner, Kravtsov (2011)
 高燃料効率銀河:星からのマスロスで星形成を維持する
 銀河の後期進化の間進行する星形成を持続させる上で星からの継続性マスロス の役割を調べた。恒星質量 Ms 銀河に対して、観測される Ms-星形成率関係の 進化から導かれる星形成史に様々な初期質量関数を仮定して、標準的恒星進化 モデルのカスロスを合わせて用いて、全星種族からの総マスロスを計算した。  我々のモデル恒星からのマスロスによる再生ガスは現在の晩期型銀河で進行 中の星形成を維持するに十分である。星からのマスロスはしたがって、観測か ら導かれる比較的低レベルのガス落下率と円盤銀河で見られるかなり速い星形 成との間の対立を取り除くものである。冷たいガスの落下率が評価されている 銀河に対しては、星形成によるガス消費率と落下率との差を星からのマスロス が埋めることを直接に示す。

Matsuura et al (2009)
 LMC 全体でのガスとダストの収支
 LMC 星間物質のガスとダストの収支を調べた。Spitzer 中間赤外観測を用い、 LMC 全体で星間物質にガスとダストが注入される割合を調べた。AGB 炭素星候  補からの中高質量放出量は 8.5 - 21 10-3 Mo/yr である。酸素 AGB 星も含めると 27 10-3 Mo/yr となる。この数字は SFR と整合する。 LMC SNe からのガス注入は 20 - 40 10-3 Mo/yr である。  現在、LMC の SFR は AGBs と SNe からのガス還流を上回っている。現在の SFR は既  存ガス量に依存している。これは、外部からのガス降着が無ければ、星間ガスが 枯渇するにつれて SFR は低下することを意味する。高z銀河で見出されている 不明ダスト量問題は LMC にも存在する。ダスト寿命=0.4 - 0.8 Gyr 内に AGBs, SNe から蓄積されるダスト量は現在星間ダスト量より大幅に少ない。他のダスト源 が必要で、多分 SFRs に関連するであろう。

Cole, Grocholski, Geisler, Sarajedini, Smith, Tolstoy (2009)
年齢・メタル量の縮退を破る:LMC のメタル量分布と星形成史
 LMC バー中心からの様々な距離の 28 領域からの約 1000 個の赤色巨星に対し、 Ca 三重線の分光からメタル量を決定した。これらから、中心距離・メタル量、 年齢・メタル量関係を調べた。その応用として HST CMDs の解析がある。CMD からの星形成史を確実に求める力は主系列ターンオフと準巨星枝から来た。 生じる年齢・メタル量縮退は赤色巨星枝カラーで破れる。しかし、モデル RGB カラーの不定性は残る。
 観測されるメタル量分布をモデルに組み込んで、星形成史の精度が大きく 向上した。我々は LMC バーの観測メタル量分布をバー CMD の最尤法解析に 組み入れて、バーの新しい星形成史と年齢メタル量関係を提示する。全体と してバーは円盤より若く、最も信頼できる年齢巾は 5 - 6 Gyr である。この時期 には LMC の平均ガス組成は [Fe/H] ≥ -0.6 であった。LMC 円盤には メタル量勾配は R = 8 - 10 kpc まで見えない。バーは円盤より 0.1 - 0.2 dex 高メタルである。これはバーが円盤より若いためであろう。円盤とバーで、 赤色巨星の 95 % は [Fe/H] > -1.2 である。

Cioni,Girardi,Marigo,Habing (2006)
マゼラン雲 AGB 星 II. 星形成史
 DENIS, 2MASS データを使い、 炭素星と O-リッチ星双方の 等級分布に星形成史モデルフィットすることで LMC 全体でのメタル分布に制限を加えた。LMC 種族は平均して 5 - 6 Gyr の年齢で、平均 Z = 0.006 である。系統エラーは予想されるが、LMC 面上で 平均メタル量と星形成史の変化の存在は確かである。
(解析法に問題があると思う。 )

Grocholski, Cole, Sarajedini, Smith (2006)
LMC 赤色巨星の CaII 三重線分光観測 1. 大きい星団巨星の組成と速度
VLT/FORS2 を使い、LMC の大きな星団 28 個中の 200 星の近赤外スペクトル を撮った。星団メタル分布はバーの赤色巨星と同じ 形である。これはバーと星団が似た形成史を持つ事を示唆する。これは、バー と中間年齢星団は 4 Gyr 昔の近接遭遇の結果として形成された、という最近の 理論モデルと良く合う。

Cole, Tolstoy, Gallagher, Smecker-Hane (2005)
LMC バー赤色巨星の分光
 LMC バー光学中心の 200 平方分にある 373 赤色巨星の近赤外スペクトルから メタル量と視線速度を導いた。これは LMC 表面輝度最大地点での中間年齢と 高齢の星の最初の測定である。メタル量分布は [Fe/H] = -0.4 に鋭いピークを 持つ。 赤色巨星の 10 % は [Fe/H] ≤ -0.7 であり、分布の小さな尾が [Fe/H] = -2.1 まで伸びている。低メタル星が比較的少ないことは、 LMC にも 銀河系と似た "G-矮星" 問題を持つことを示唆している。組成分布は二つのガウ シャンの重ね合わせで近似できる。 一つは星の 89 % を含み、[Fe/H] = -0.37, σ = 0.15, もう一つは星の 11 % を含み、[Fe/H] = -1.08, σ = 0.46 である。 第1成分のメタル量分布は LMC 円盤中間年齢星団と似る。それらの太陽中心 平均視線速度 257 km/s は円盤の中心から遠く離れた箇所の測定で決めた重心 速度と同じである。我々の観測領域はバーの中心にあるので、運動学的な拘束 は強くない。しかし、バーの運動が円盤全般の運動からずれていることを示唆 する証拠はない。
 サンプル全体の速度散布度は σv = 24.7±0.4 km/s である。最も低メタルな 5 %, [Fe/H] < -1.15, は σv = 40.8±1.7 km/s で、最も高メタル 5 % の倍以上となる。これは、古 くて、厚い円盤またはハロー種族が存在することを示している。年齢・メタル 量関係は t = 5 - 10 Gyr でほぼ平坦であり、メタル量の散布度は平均関係の 周り、 ±0.15 dex である。これを文献の化学進化モデルと比較すると、 3 Gyr の爆発的星形成は観測と合致せず、星形成率が 6 Gyr 以降漸減するモ デルの方が良い。LMC と銀河系の性質を比較し、両者の潮汐作用で星と星団の 形成史を説明するモデルとの関連を調べた。

Javiel et al (2005)
LMC 星形成史への制約
LMC 6 領域の HST F814(∼ I), F555(∼ V) 撮像による V555 ∼ 26.5 に達する CMD を得た。「部分モデル法」による CMD フィットから 星形成史を導いた。領域間で SFH が異なっていた。
バーに近い NGC1805, 1818 領域はt<2Gyrに SFR 高い。 6 - 10 Gyr で低い。LMCの東側、NGC 2209,Hodge 11 では 2 - 6 Gyr に SFRが高い。 NGC 1831, 1868 では SFH が比較的一様。
古い種族の割合が高いことが確認された。
SFRにギャップが見つからなかった。6−10GyrでSFRが低下したのはバー に近いフィールドのみである。これは星団形成のギャップと矛盾する。

Smecker-Hane, Cole, Gallagher, Stetson (2002)
LMC 星形成史
 LMC 円盤とバーの2か所で WFPC2/HST の V, I 画像を取った。 V = [19, 23.5] の主系列光度関数、レッドクランプと水平枝形態学、二領域からの微分ヘス図 は全て円盤とバーが異なる星形成史を経たことを示す。円盤の星形成史は比較的 なだらかで過去 15 Gyr の間継続してきた。  一方バーの星形成史は中間年齢での星形成現象が支配的であった。パドヴァ 等時線と仮定したメタル・年齢関係を用いて、光度関数を解析した結果、 バーでは強い星形成が 4 - 6 Gyr と 1 - 2 Gyr に起きたことがわかった。 それらは星質量の 25 % と 15 % を説明する。円盤では若い星形成がやや強い。 4 - 6 Gyr 星形成はバー形成に伴うものである。

Holtzman et al (1999)
LMC の星形成史
HST/WFPC2 による LMC 円盤外辺2個所とバー1箇所の CMD をフィットして円盤と バーの星形成史を導いた。分散のない AMR では十分なフィットは出来ずその制限を はずしてよいフィットが得られた。つまり、同じ年齢でもメタル量には巾がある。 約 40 % の星が 4 Gyr より古い種族に属することが判った。バーの方が古い種族の 割合が高い。星団の年齢分布に見られた年齢ギャップはフィールド星には存在しない。 結果はグラフでのみ示され表の形では与えられていない。

Pagel,B.E., Tautvaisiene,G.(1998)
マゼラン雲の化学進化: 解析モデル
銀河系化学進化の解析的モデルをマゼラン雲に適用した。太陽系近傍に適用したのと 同じ時間遅延と収率を用いて、始原ガスの降着と銀河風を仮定した。辻本らと異なり、 初期分布関数の勾配を急にしたり、選択的銀河風は考えない。
しかし、正直ついていけなかった。

Mould, Da Costa (1988)
マゼラン雲星団の年齢
 Mv < -6, (B-V) > 0.25 (SWB IV 以上)の LMC/SMC 星団を観測した。 ここでは Kron 3 (1Mo), NGC 1978 (1.3 Mo), NGC 2134 (3 Mo) において とり、星団 CMD から恒星進化の研究を行う例を示す。  AGB先端光度や組成と年齢の関係も調べた。さらに、距離に無関係な年齢指標 としてターンオフ等級と水平枝等級との差を調べた。t = [4, 10] Gyr のギャッ プを埋める星団は見つからなかった。 DM(LMC)=18.2, DM(SMC)=18.8 を採用。

Elson, Fall (1988)
マゼラン雲星団;年齢較正と年齢分布への再訪問
 CMD がターンオフまで達する CCD 撮像星団が急増したので、 Elson, Fall (1985) による、ターンオフ法による LMC 星団の年齢決定を再調査した。サンプルは 57 星団で、内 24 個は 1985 年以降に CMD が得られたものである。  他の研究での年齢分布と比較した。 新しい年齢分布は、前回得られたものとそう変わらない。 つまり、爆発的星団形成のような派手なイベントの証拠はない。
という結論だが、問題にされる 3 - 8 Gyr のあたりは UBV 二色図で s が 怪しいフック部になっている。そのあたりのサンプル区分を大きくとっていて、 ギャップを議論できる細かさは最初からないのでは?

Rebecca, Elson, Fall (1985)
マゼラン雲星団の年齢較正と年齢分布
 積分 UBV カラーを用いて、LMC 大星団の年齢をファクター2の精度で経験的 に求める関係式を導いた。その較正には 58 LMC 星団の主系列測光、積分スペ クトル、AGBの広がりに基づく年齢を用いた。恒星種族モデルを用いて、LMC 星団中 104 Mo 以上のものを分離した。その際には等級ごとの不完 全性の補正を施した。  次に、それらの星団の偏りのない年齢分布を定めた。星団数は、我々の銀河 系散開星団の年齢分布と同様に、年齢と共に減少する。LMC 年齢分布はより 平坦で、星団年齢の中間値は銀河系より大きい。二つの銀河で形成率が平坦 であると仮定するなら、この年齢差は LMC では星団破壊の速度がより緩やか であることを意味する。我々の結果は星団の爆発的生成を支持する証拠を示さ ないが、小さな増減や、ゆっくりした変動は排除されない。

Wood+2 1985
LMCバーの長周期変光星に見る最近の爆発的星形成
 LMCバーとその北における長周期変光星周期光度関係から、
(1)この領域の星の大多数は主系列質量で 1.6 Mo 以下、年齢 1 Gyr 以上。
(2)しかし、主系列質量 5 - 6 Mo、年齢〜 6×107 年 のグループ が存在する。
セファイドの周期、光度分布もやはり6 ×107 年前に星形成期が あった事を示す。
 短周期( 250日以下)M型星ミラ銀河系の種族 II ミラと類似していて恐 らく非常に古い、多分100億年以上、で比較的低メタルの種族に属するようだ。

Reid, Mould (1984)
LMC における AGB 星の進化
 LMC 15 deg2 での AGB 星の輻射光度関数を提示する。 明るい AGB 星の欠如がこの測定でも確認された。 また、フィールドに渡って、AGB 光度関数の変動が見られた。これは LMC の場所により星形成史が異なっているためと理解される。

Frogel, Blanco (1983)
LMC Bar West の星形成史
 LMC Bar West 0.12 deg2 での赤外色等級図は、二つのはっきり 異なる AGB が見出される。一つは他より 1.5 mag 明るく、星は 0.1 Gyr 年齢 の LMC 星団と光度、カラーが似ている。一方、暗い AGB は数 Gyr 星団の巨星と 似る。暗い AGB 星は Butcher, Stryker が見出した一時的星形成によるもので ある。明るい AGB 星は LMC の青い星団に対応する年齢の第2の一時的星形成 を表わす。少なくともターンオフ付近の主系列に関しては、この第2星形成は 古い方と比べると星形成率としては 1/10 程度のレベルであった。両星形成時代 の間の期間、星形成は低調であった。

Cohen 1982
大マゼラン雲星団の年齢・メタル量関係
デュポン望遠鏡に取り付けたレチコン増幅アレイを使い、LMC 15 星団中から 選んだ 38 星の中分散スペクトルを撮った。吸収線の準等値巾 W を測り、 銀河系球状星団 6 個中の 42 星と何個かの超巨星で (V-K)o-W 関係を較正して、 メタル量で内挿する式をつくる。それを用いて、星団星の組成を決めた。それらの 星団の年齢は SWB クラスから推定した。強い年齢・メタル量関係が見出された。 太陽近傍や銀河系ハローと異なり、単純なボックス型化学進化モデルで年齢・ 組成関係が説明できる。

Mould, Aaronson 1982
LMC 中間年齢星団の伸張した巨星枝 III.
 マゼラン雲球状星団 80 星の JHK 測光を行い、AGB 星最大光度に 基づき、Mv < -7 の星団のほぼ完全な年齢推定を行った。LMC 星団の年齢分布は 4 Gyr に鋭いピークを持つ。これは SMC と違う。 星形成率一定のモデルは必ずしも除去できない。星団系には明らかな年齢・ メタル量関係が存在する。

Aaronson, Mould 1982
LMC 中間年齢星団の伸張した巨星枝 II.
 LMC, SMC 間で AGB 先端等級のはっきり異なる分布は星団の間で 年齢が大きく異なっていることを意味する。平均すると、 LMC 中間年齢星団は SMC 中間年齢星団より若い。 しかし、 LMC は銀河系球状星団と同じくらい古い球状星団を含むのだが、その ように古い星団は SMC には見つかっていない。 マゼラン雲のメタル量増加の割合は 太陽近傍よりは速いが、銀河系ハローよりは遅い。

vandenBergh 1981
マゼラン雲球状星団の UBV 積分測光
  UBV 積分測光から SMC 50, LMC 141 星団の年齢分類を与えた。どちらの 星団でも異なる年齢間で空間分布が驚くほど変わる。

Butcher (1977)
LMC の主系列光度関数
 LMC フィールドの Mv = 0 から +4 までの主系列光度関数を導いた。混んだ 領域での測光テクニックを述べる。系統エラーについても論じる。最終的に 得られた光度関数は太陽近傍でのそれと似ているが、1等明るい点で傾きが 変化する。自然な解釈は LMC では大きな星形成が 3 - 5 × Gyr 昔 に開始されたというものである。これは銀河系ではそれが 10 Gyr であった ことに対応する。この解釈は LMC データから太陽近傍での サルピータ 初期光度関数を回復することを許す。

Hodge 1973
LMC 星団系の最近の形成史
 最近 1400 万年の星団形成の空間パターンを調べた。 星団形成率は 1/3×104 yr である。



 LMC/SMC 星団 

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著者 内容

Palma, Gramajo, Claria, Lares Geisler, Ahumada (2016)
ワシントン測光システムで観測された LMC 星団のカタログ 
 ワシントンシステムで観測された 277 LMC 星団の基本的性質をカタログ化した。 82 個は最近我々が研究した。星団パラメタ―:投影補正距離、赤化、年齢、 メタル量は基本的に同じ方法で決めた。それを簡単に述べる。我々は観測累積 関数を用いて、年齢、メタル量、投影補正距離の分布を副サンプル毎に求めた。  我々の新しい 82 星団はワシントンシステムで測光された LMC 星団の数を 40 % 増加させた。その内 42 個は基本性質が初めて求まった。単独星団は複合 星団よりも一般に高齢であることが判った。そして、どちらも log(年齢) の 分布関数の形が非対称である。我々は年齢をパドヴァ等時線を用いたフィッティ ングで決めた年齢と較べた。

Asad, Vazdekis, Alexandre, Zeinelabdin, Sami (2016)
ASAD2 を用いた LMC 星団の年齢決定 
  ASAD2 は ASAD = Analyzer of Spectra for Age Determination の新しい版である。 これを用いて、LMC の 27 星団の年齢と赤化を定めた。データ解析には integrated spectra を χ2 と コルモゴルフ・スミノフテストで検定し、 GALAXEV と MILES を含む星種族モデルでフィットした。我々の結果はどちらのモデルでも CMD 年齢と一致した。また、log t < 9 以下ではモデルに依らず、フルスペクトル フィッティング法では年齢決定にメタル量は影響しない。GALAXEV と MILES に対し、 χ2 と コルモゴルフ・スミノフテスト検定を適用した時の結果を 3つのファクター=年齢、S/N比、分解能に対して議論した。   χ2 検定を使用した時の赤化量は文献にある値と一致したが、 コルモゴルフ・スミノフテストを使うと高い E(B-V) を与えた。log t = 9 付近と log t = 7.8 の AGB ピークの両側で、超巨星の寄与スペクトルの鋭い変化が起きた。 これが我々の CMD と一致する値を与える能力に制限を与える。広い年齢範囲に亘る 4つの星団に関する詳しい解析を示す。 ASAD2 は使いやすいソフトでダウンロード 可能である。

Niederhofer,Bastian, Korhurina-Platais, Hilker, de Mink, Cabrera-Ziri, Ercolano  (2016)
LMC 中間年齢星団のターンオフとレッドクランプとから決めた年齢の巾の不一致
  LMC/SMC の中間年齢 1 - 2 Gyr 星団の大部分には CMD が単純星種族のモデルと 合わないという不思議な特徴がある。これら星団のターンオフは測光誤差より ずっと太い。その解釈の一つは年齢幅が 200 - 500 Myr に及ぶというものだ。 しかしこの解釈には異論が多い。そのように広い年齢幅は CMD の年齢に鋭敏な 他の特徴に反映されるはずである。この研究では LMC 中の 12 個の中間年齢星団を 解析した。それら全てで幅広いターンオフが見られる。データは HST アーカイブ を用いた。  ターンオフ領域とレッドクランプ領域の星形成史を独立にフィットした。 大部分の星団でレッドクランプから導かれた星形成の時間巾はターンオフからの 値より小さかった。2/12 星団でのみ両者が一致した。レッドクランプ領域の フィットからの結果はあいまいで、これだけでターンオフの巾が星形成の 時間巾によるかどうか言えない。しかし、ターンオフ巾は星団年齢と相関している。 これ自身が年齢幅モデルでは説明できない。しかし、星の回転がターンオフの 巾の原因ならば予期できる結果かも知れない。

Pieres + 59 (2016)
 DES = ダークエネルギーサーベイで観測された LMC 外辺部星団の性質 
  LMC 星団は LMC 星形成史の情報を提供する。Dark Energy Survey (DES) の Science Verification 画像データを用い、 LMC 外辺部の星団の物理的 性質を調べた。サンプルは 255 可視同定星団である。内 119 個は 初出である。DES データへの混み合いの影響をパイプラインで調べ、 完全性は星団コアでは 10 % 以下であると結論した。  従って、星団周辺部で DAOPHOT を使って星の位置と等級を測った。 密度形状と CMD をフィットするのに Maximum Likelyhood Method = MLM を 使用した。117/255 星団で信頼できる年齢、メタル量、距離指数、構造 パラメタ―を得た。メタル量の分布はLMC中心からの距離に依存する。 LMC 中心から 8 kpc 以上離れると [Fe/H] ≥ -0.7 の星団はない。 年齢分布は 1.3 Gyr と 2.7 Gyr のピークを持つ。

Bica, Santiago, Bonatto, Garcia-Dias, Kerber, Dias, Barbuy, Balbino (2015)
銀河にかける橋:LMC/SMC 張力下にある星団とアソシエイション
 Southern Astrophysical Research telesscope を用いて、LMC と SMC の間 をつなぐブリッジにある 14 個の星団とアソシエイションの B, V 測光を行っ た。このデータを用い潮汐力を受ける環境下で星団、アソシエイションがどう 形成され進化するかを調べた。ブリッジの典型的星団はあまり大きくなく、 大きな半径 30 - 35 pc を有する。年齢その他の基本パラメタ―はフィールド 星を除去して決めた。  自己無矛盾な方法を最大の星団 NGC 796 と二つの若い CMD テンプレート 作りに使用した。 ブリッジ内の星団は同時期に生まれたものでないことが 分かった。それらは数百万年(可視 HIIR があり,WISE, Spitzer のダスト 放射もある)から 100 - 200 Myr までに渡る。天体の距離指数は ブリッジが東側では LMC の遠い側と, 西側では SMC の手前側をつないでいる ことを示唆する。現在の星団の大部分は潮汐矮小銀河候補 D1 の一部である。 ブリッジの一部がブリッジから離れて矮小銀河を形成しようとしている 証拠がある。 

Geller, de Grijs, Chengyuan, Hurley (2015)
連星率から判明した二つの若い LMC 星団 NGC 1805 と NGC 1818 の間の異なる力学年齢
 LMC 星団 NGC 1805 と NGC 1818 は 30 Myr という同じ年齢を持つ。 しかし、連星の比率の半径分布が異なる。NGC 1818 内の F 型星 1.3 - 2.2 Mo は中心方向に連星率が下がるが、 NGC 1805 では平坦である。 詳細な N-体計算の結果、二つの星団は同じ連星率形状を持って生まれた と考えられる。  その力学進化も似ているが、NGC 1805 は NGC 1818 より力学的に高齢 である点が違う。NGC 1818 の F-型連星は星団初期の急速な力学的 分裂の証拠を残している。一方、 NGC 1805 ではコア中心部での連星の 回復が起きている。それは質量分離過程の結果であろう。この回復率は 高質量ほど大きい。

Niederhofer, Hilker, Bastian, Silva-Villa (2015)
LMC 若い星団の年齢に有意な巾があることには証拠はない
 最近、星団が単純星種族かどうかに疑問が提示されている。特に、 LMC の 中間年齢 1 - 2 Gyr の大きな星団では、 CMD から年齢幅が 100 - 500 Myr に及ぶ証拠が見つかっている。これらの星団で複数回の星形成が起きたなら、 t < 1 Gyr の若い星団でも同程度の年齢の広がりが見えるはずである。この 仮説を調べるため、八つの若い LMC 星団 NGC 1831, NGC 1847, NGC 1850, NGC 2004, NGC 2100, NGC 2136, NGC 2157, NGC 2249 の HST データを調べた。  これら星団の CMD を解析し、その星形成史をフィットして年齢幅の上限を 導いた。これらの星団のどれにも、中間年齢星団で提案されているような 広がった星形成史の証拠はなかった。人工星によるテストは最も若い星団での 年齢広がりは測光エラーで説明可能な範囲である。副産物として NGC 1850 の年齢がこれまでの 30 Myr よりずっと古い 100 Myr であることが判った。

Bastian, Strader (2014)
若い大質量星団の研究から球状星団形成に制約を加える III. LMC と SMC の若く大きい星団にガスとダストが欠乏。
 球状星団中に観測される元素組成と等級の異常を説明するために、 若い球状星団が複数回の星形成現象を経験するというシナリオが提案されて いる。このシナリオには星団が星からの放出物を内部に貯えられることが 必要である。従って、局所宇宙に、総質量の 10 % 以上 に上るガスとダストを持つ若くて大きい星団が見つけられるはずである。
 最近のモデルに依れば、 LMC 内の M > 104 Mo, t = [30, 300] Myr 星団にはそのようなガスとダストがあるはずである。 12 LMC + 1 SMC 星団の HI 観測と Spitzer 70, 160 μm 観測から ガスとダストを探した。しかし、どの星団にも見つからなかった。
二つの星団方向に同じ視線速度の HI ガスが見つかったがガス分布の 中心は星団中心と一致しなかった。近傍の雲の一部のようである。 ガス量の上限 1 % はモデルの予想と強く対立する。星からのフィードバック が予想より大きいか、以前のモデルで使用された仮定に修正が必要か であろう。

Mucciarelli, Dalessandro, Ferraro, Origlia, Lanzoni (2014)
二重ターンオフを持つ LMC の若くて大きな星団 NGC 1806 の 星に組成異常の証拠はなかった
 2重の主系列ターンオフを示す、中間年齢の大きな球状星団 NGC 1806 の 元素組成を調べた。VLT/FLAMES で8個の巨星スペクトルを取得した。それらは 平均 [Fe/H] = -0.60±0.01 で星同士に軽元素 Na, O, Mg, Al 組成の 変動は検出されなかった。また、HST による (mF815W, mF336W - mF815W) CMD は一本の細い赤色巨星枝を示した。
 したがって、C, N 量の変動は考えられない。これらの結果、 NGC 1896 には 元素組成の異なる副種族が存在しないと考えられる。 従来高齢の球状星団で見られる組成異常を説明するために考えられた組成の 自己濃縮効果で二重主系列ターンオフを説明することはできない。他の解、 回転、星団のマージャー、分子雲との衝突を追究すべきである。

Baumgardt, Parmentier, Anders, Grebel (2013)
LMC の星団形成史
 LMC 星団の年齢、光度、質量を文献から集めて、それを使い、LMC 星団の年齢分布と溶解率を決めた。 M > 5000 Mo の大きな星団の 頻度は 10 - 200 Myr でほぼ一定であった。これは、残存ガスの排出は最初の 10 Myr、または、5000 Mo 以下の星団に限られることを意味する。  LMC の約 15 % の星は 10 Myr 以上生き延びる星団内に生まれることが 分かった。1 Gyr より若い星団の質量関数は N(m) ≈ m, ここに α = 2.3 で近似され、一方古い星団ではずっと緩い勾配であった。 これは、不完全性または低質量星の解離であろう。200 Myr より古い星団では dex of lifetime 毎に 90 % の星が失われる。この分解率はモデルの想定より 遥かに速い。また、1 Gyr 以前に星団形成のバーストがあった。

Palma, Claria, Geisler, Piatti, Ahumada (2013)
LMC のあまり研究されていない星団:ワシントン測光から決めた基本パラメタ―
 LMC 内側円盤と外側領域にあるあまり研究されていない 23 星団のワシントン CT1 測光の結果を報告する。星団半径は星計数から定めた。(T1, C-T1) CMD のフィールド星混入の掃除は統計的に行った。星団の年齢とメタル量はパドヴァ 等時線とのフィットで行った。可能な場合は δT1 = ターンオフとレッド クランプとの等級差からも年齢を決めた。また、メタル量は標準的な赤色巨星枝 法でも決めた。  同様の方法で年齢とメタル量を決めた文献にある星団に加えることで 全体のサンプル量を 30 % 大きくした。それらを用いて、 LMC 内の位置、年齢、 メタル量の関係を調べた。年齢とメタル量を決める二つの方法はよく一致 することが判った。14 星団は中間年齢 t = 1 - 2 Gyr, [Fe/H] = [-0.7, -0.4] で、残りの 9 星団は t < 1 Gyr の若い星団で [Fe/H] = [-0.4, 0.0] であった。以前の結果と同じく、メタル量勾配は 見られない。若い星団は LMC 中心に近く形成される。

Mateluna, Geisler, Villanova, Carraro, Grocholski, Sarajedini, Colem Smith (2012)
高齢 LMC 球状星団 Hodge 11 の元素存在比
 Hodge 11 は LMC 内の高齢低メタル球状星団 Hodge 11 の赤色巨星枝星を調べ、 なるべく多くの元素組成を決めようとした。目的はそれを銀河系や矮小楕円銀河の 赤色巨星枝星と比較して、LMC や銀河系の形成史を理解することである。データ は VLT/FLAMES により Hodge 11 内の8個の赤色巨星枝星から取った。 調べた元素は Fe, Mg, Ca Ti, Si, Na, O, Ni, Cr, Sc, Mn, Co, Zn, Ba, La, Eu, Y である。
 平均して [Fe/H] = -2.00±0.04 であった。[α/Fe] は低く、 銀河系ハローよりも矮小銀河に近い傾向を持つ。これは Hodge 11 が LMC の古い種族 を代表するとすると、 LMC は銀河系ハローを建設する部品ではなかったことを 意味する。我々の [Ca/Fe] 比は、Ca 三重線からメタル量を導く較正に使われる ハロー星での値より 0.3 dex 低い。Na 比の広がりが微かに見える。Hodge 11 星は 異常なまでに O が高く、Na が低い。これは 銀河系、LMC の球状星団で見られる Na:O 逆相関の極端な例となっている。

Chiosi, Baume, Carraro, Costa, Vallenari (2012)
LMC 星団 NGC 2145 と NGC 1898 周辺フィールドの星種族
 二つの LMC 中間年齢星団 NGC 1898 と NGC 2154 周辺フィールドの星形成史 を調べた。また、NGC 1898 と周辺の小星団の年齢も与えた。NGC 2154 自体は Baume et al の研究があるので触れない。星団年齢は掃除済の CMD に等時線 をフィットして求めた。  星団の星種族ははっきりと二つに分かれた。NGC 2154 は平均年齢 1.7 Gyr で 巾 1 Gyr の継続した星形成を伴っている。他の星団は年齢 100 - 200 Myr で あった。近接領域の星形成史は "downhill-simple”アルゴリズム で求めた。 どちらの星形成史も 200, 400, 800 Myr, 1.6 Gyr, 8 Gyr に大きな星形成を 起こしている。これらは LMC-SMC, LMC - Milky Way 力学相互作用によるのだろう。

Lyubenova, Kuntschner, Rejkuba, Silva, Kissler-Patig, Tacconi-Garman (2012)
LMC 球状星団の積分 J-, H-バンドスペクトル:星種族モデルと銀河年齢決定 のための意義。
 LMC 中間年齢星団6個の積分 J-, H-スペクトルを研究した。観測は SINFONI/VLT 積分フィールド分光器で行われた。波長域は J(1.09-1.41 μm), H(1.43-1.86 μm) である。分解能は J で 6.7 A, H で 6.6 A である。観測は中心部 24"x24" で行わ れた。それ以外に、潮汐半径内にある8個の最も明るい赤色巨星と AGB 星の観測も 行った。星団年齢は 1.3 Gyr (NGC 1806, NGC 2162), 2 Gyr (NGC 2173), 13 Gyr (NGC 1754, NGC 2005, NGC 2019) である。LMC 星団の H-バンド C2 および K-バンド 12CO (2-0) 強度を Maraston 2005 モデルと比較した。 C2 は全年齢でモデルによって良く再現された。   12CO (2-0) は 2 Gyr より古い星に関しては モデルとの一致が良いが、1.3 Gyr 球状星団の星はモデルに従わない。その理由は モデルの観測較正が数個の銀河系炭素星スペクトルのみに基づいているせいであろう。 そして銀河系とマゼラン雲とでは 12CO (2-0) の振る舞いが違う。 C2 強度は年齢と強い相関がある。12CO (2-0) 吸収は 1 - 2 Gyr の星にのみ観測され、より古い種族では存在しない。 はっきり区別される J-. H- SED が中間年齢星団で見出されたが、それは Maraston が予測した熱パルス AGB 星からの寄与の予想と一致する。このパイロット 観測で6つの球状星団の積分近赤外スペクトルの観測ライブラリーを作った。 それは、恒星種族モデルをテストするのに有用である。 H-バンド C2 強度と J-バンド、H-バンドスペクトルの形は銀河や星団の中間年齢種族の 年齢指標として使える。

Mucciarelli1, Origlia, Ferraro, Bellazzini, Lanzoni (2012)
血縁:LMC 連系星団 NGC 2136 と NGC 2137 の性質
 FLAMES/VLT ファイバー多体分光器により、 LMC 連星団 NGC 2136の 7 星と NGC 2137 の 4 星の高分解能スペクトルを撮った。この二つは連系を成している のではと疑われている。両者の中心間隔は 1.4 arcmin である。視線速度を測った 結果、平均して NGC 2136 は Vr = 271.5±0.4 km/s, NGC 2137 は Vr = 270.6±0.5 km/s と分かった。  [Fe/H](NGC2136) = -0.40±0.01, [Fe/H](NGC2137) = -0.39±0.01 であった。[α/H] は両者ともにほぼソーラーであった。これらの結果から、 両星団は重力的に拘束されていて、同じ分子雲から生まれたと看做せる。 LMC ペア星団が連系を成すことが初めて確認された。軌道時間程度の将来、 両者は合体して一つの星団となるであろう。

Molinaro, Ripepi, Marconi, Musella, Brocato, Mucciarelli, Stetson, Walker (2012)
LMC 星団 NGC 1866 までの CORS Baade-Wesselink 距離
 若くて大きく青い LMC 星団 NGC 1866 の 11 個のセファイドに対し、 可視、近赤外測光と視線速度観測を行い、 CORS Baade-Wesselink 法を使って 半径と距離を定めた。この方法は表面輝度を (U-B), (V-K) カラーの関数として 高精度に較正して、セファイドの物理半径と角半径を同時に導き出すものである。  その結果、セファイドまでの距離も求まる。半径と距離のエラーをモンテカルロ 法によって厳正に見積もった。我々の解析は NGC 1866 の距離指数を 18.51 ±0.03 とした。この値は他の幾つかの独立な測定と一致する。

Popescu, Hanson, Elmegreen (2012)
一億回のモンテカルロシミュレイションから決めた LMC の 920 星団の年齢と質量
 これまでに公表された LMC 星団の測光に星団解析ソフト MASSCLEANage を 適用して、920 星団の年齢と質量を決めた。形成率を d2N/dMdt ∝ Mα tβ とフィットした時、 α = [-1.5, -1.6], β = [-2.1, -2.2] であった。258/920 星団 に関しては最近色等級図に基づいた年齢が導かれている。それとの比較は 我々の方法の信頼性のチェックに用いられた。結果は大いに有望で、この 920 星団サンプルは年齢、質量、測光値は LMC の星団種族の特性を調べる 路を開いた。
 また、従来の星団カラーに χ2 極小で年齢を決める手法も 調べた。この方法の結果には年齢分布に大きな欠損が現れた。U, B, V, R からのカラーからの解析は常に、若い星団と古い星団の数の超過と、 対応した log t = [7.0, 7.5] 区間の不足を示した。最後に、暗い方の限界 が生むストカスティックな現象を調べるシミュレイションを紹介する。

Piatti, Bica (2012)
SMC 星団候補のワシントン測光
 SMC 内のあまり研究されていない星団候補11個のワシントン CT1 測光を 報告する。候補天体は小さく、数個の星しか含まず、投影位置はSMC最深部 にあたる。避けられないフィールド星の混入を清掃するため、CMD内の可変 区分を利用した方法を採用した。この手法は、巨大星団において綺麗な清掃を 行うばかりでなく、明るい星によるストカスティック効果をも消去することが 分かった。
 サンプル星団候補のほぼ 1/3 は実際に集合体をなしていることを示す。その 意味で、それらの幾つかに対し以前に得られた年齢は、周辺フィールド星種族と の複合集合の年齢になる。予想された星団分布と観測分布との間に、はっきり した差は認められなかった。

Piatti (2011d)
SMC 星団年齢−金属量関係の包括的理解に向けて
 SMC 11星団の CT1T2 測光により年齢とメタル 量を決定した。11星団の結果の年齢ーメタル量関係へのプロットは、 2Gyr 昔 の爆発的星形成を再現した。これらの星団を SMC 星団サンプルに加えて、 包括的な星団年齢ーメタル量関係を得た。  それによると、t = 2 Gyr と t = 5 - 6 Gyr に星形成の活動期があった。t = 7 Gyr より古いとメタル量勾配は平らで散らばりが大きい。星団数の不足がこの 結論を大きく変えることはない。

Piatti (2011c)
LMCの爆発的星団形成に対する新たな見方
 ワシントン CT1T2 測光が初めて行われた LMC の 36 星団の年齢決定結果を 示す。(T1, C-T1), (T1, T1-T2) 図を用いて、δT1 法により年齢を決定 した。観測した星団が 2 Gyr 前の星形成爆発に属することを確認した。  年齢決定エラーを考慮して、年齢分布を調べた結果、年齢 1 - 3 Gyr の星団 の数がこれまで知られていた星団の2倍になることが判った。これは、 二つのマゼラン雲間の、それにおそらくは銀河系との潮汐作用がこれまで 考えられてきたよりも強かったことを示唆する。

Piatti (2011b)
SMC 中年星団の新候補
 SMC 星団 AM3m HW31, HW40, HW41, HW42, HW59, HW63, L91, NGC339 の ワシントン CT1T2 測光を行った。AM3 と NGC339 が 中間年齢、かつ低メタルであることを確認した。  残りの7星団の年齢が t = 4.3 - 9.3 Gyr の中・高年齢であると決定した。 この結果 SMC の中間年齢ー高齢星団の数が 60 % 増加した。調べた星団の メタル量は [Fe/H] = -0.7 から -1.3 に亙る。

Piatti, Claria, Bica, Geisler, Ahumada, Girardi (2011a)
SMC 中間年齢ー高齢 14星団のワシントン測光
 セロトロロ 1.5 m 鏡による SMC 星団 L3, L28, HW66, L100, HW79, IC1708, L106, L108, L109, NGC643, L112, HW84, HW85, HW86 のワシントン測光 C, T1, T2 を 行った。総計 213,516 星の測光を各 14.7'x14.7' 領域系14星団に対して行った。 CMDは周辺領域の星を参照にしてフィールド星の統計的除去を行った。 (T1,C-T1) CMD へのT等時線フィット、δ (T1) 指数から星団の年齢とメタル量を決めた。  やや低メタルの ヒアデス型星団を除き、残りの 13 星団は 1.0 - 6.3 Gyr の中間年齢ー高齢 星団であった。メタル量は [Fe/H] = -1.4 から -0.7 に分布した。文献値と 合わせ、計 43 の 1 Gyr より高齢の星団サンプルが得られた。そこから年齢 分布を改訂した。t = 2 Gyr と 5 Gyr に超過がある。SMC 誕生から 4 Gyr の 間は星形成率は一定であったらしい。

Piatti, Claria, Parisi, Ahumada (2011aa)
LMC3星団の基本特性の初評価
 LMC 星団の形成史と化学進化を観測するプログラムの一環として、 CTIO 0.9 m + CCD により、LMC 周辺部に位置する未研究の3星団 NGC 2161, SL 874, KMHK 1719 のワシントンシステム C, T1 測光を行った。 13.6' x 13.6' 画像中に 9611 星が測光された。パドヴァ等時線をフィットし、 δT1 と巨星枝位置から年齢とメタル量を導いた。  他の方法で決めた年齢、メタル量も良い一致を示した。3星団の年齢は 1 Gyr で [Fe/H] = -0.7 dex であった。文献にあるデータと今回の3星団の結果を 合わせると 1 Gyr より高齢の星団数は 45 個となった。それらから星団年齢 分布ヒストグラムを作った。 t = 2 と 14 Gyr の星形成期が見つかった。 この星団年齢分布を過去の研究から解析的に求まった星形成率と比較した。

Glatt, Grebel, Koch (2010)
若い SMC/LMC 星団の年齢と光度、および最近の星団形成史
 年齢 < 1 Gyr の若い SMC/LMC 星団の年齢と空間分布を Magellanic Cloud Photometric Survey データを用いて調べた。年齢が知られた星団の光度は全て 求めた。324/SMC と 1193/LMC 星団の年齢はパドヴァ等時線モデルを CMD にフィットして決定した。星団年齢は 10 Myr から 1 Gyr に及ぶ。SMC 星団に対しては、(m-M)o = 18.90, Z = 0.004, LMC には、 (m-M)o = 18.50, Z = 0.008 を使った。色超過は場所で変わると考えた。
 どちらの銀河にも、星団形成には二つの活動期があることが判った。SMC では 160 Myr と 630 Myr, LMC では 125 Myr と 800 Myr である。若い星団の形成史 に対しては空間分解した表示を示す。最初のピークは SMC と LMC の近接遭遇 が原因と思われる。どちらの銀河でも最も若い星団が存在するのは、超巨大シェル、 巨大シェル、シェル間領域、強い Hα 領域で、それらの形成は膨張と シェル・シェル相互作用と関係することを示唆する。星団の大部分は超巨大シェル の力学年齢より高齢である。星団が溶解する証拠は見出されなかった。計算された V バンド光度は年齢と共に暗くなる傾向を示す。また星団半径が大きくなると 明るくなる傾向もあった。

Balbinot, Santiago, Kerber, Barbuy, Dias (2010)
中間質量星団の LMC 年齢ギャップを探る
 LMC 星団の著しい特徴は 3 - 10 Gyr に大きな年齢ギャップが生じている ことである。しかし、この特徴はフィールド星には見当たらない。積分カラー が中間年齢単純星種族と一致する比較的貧弱で緩い星団が存在する3つの フィールドで BVI 撮像を行った。観測には SOAR = Southern Telescope for Astrophysical Research に搭載した SOI = Optical Imager を使用した。 そこにある、6個の星団、内5個は M < 104 Mo、を調べた。  PSF測光の限界等級は V = 23 であった。CMD を作り、フィールド星 混入効果の除去には、3次元カラー・等級空間内でフィールド星に対する 超過分として星団星を掬い上げた。このために統計的な CMD 比較法を 開発し、差し引きが有効で、単純星種族の CMD が得られた。我々のサンプル 中で中間年齢候補が 1 - 2 Gyr と最高齢であった。残りの星団は 100 - 200 Myr であった。我々の解析は、サンプルとした低質量星団の どれも年齢ギャップには属しないことを示した。

Pfalzner, Eckart (2009)
若い星団の2系列は普遍的か?:LMC, MC. MW, Antennae, M83 の場合
 銀河系での研究から、集団星形成には星団サイズと密度に強い制約が掛かる ことが判ってきた。それは二つの系列が存在することを意味する。他の銀河でも 類似系列が存在するのか?  他銀河でも類似系列を発見したが、差もある。LMC, SMC では密度が銀河系 より低い。同じ密度で較べると核半径が小さい。 M83, アンテナ銀河では核 半径は銀河系と同じくらいだが、膨張速度が同じくらいかどうか不明である。

Raimondo (2009)
LMC 星団の NIR 性質と表面輝度揺らぎ
 表面輝度揺らぎは距離を決定し、銀河成分を指定する強力な手段であること が立証されてきた。しかし、遠方銀河の成分を調べる前に、近傍銀河で十分な 較正を行う必要がある。ここでは、 LMC 19星団の J, H, K 特性を解析する。 それらに対しては、個々星の精度の高い測光と同時に、積分測光も可能である。 同じ星団で、J, Ks 表面輝度揺らぎの測定も実施した。  SPoT = Stellar POpulation Tools コードを用い、CMDシミュレイションを 行い、星計数、積分等級、カラーを調べた。年齢とメタル量を評価し、観測的な s-パラメタ―の較正を行った。近赤外表面輝度揺らぎが熱パルス AGB 星に 鋭敏であることを利用し、マスロスの進化に対する影響を調べた。銀河で TP-AGB 星の性質を分解する可能性を論じた。

Milone, Bedin, Piotto, Anderson (2009)
マゼラン雲星団の複数恒星種族I.LMC 中間年齢星団では普通?
 NGC 2808, Omega Centauri 中に複数の主系列が発見され、 NGC 1851, NGC 6388 中に見つかっていた複数準巨星枝と共に、球状星団は SSP であるという これまでの考えに挑戦している。最近 NGC 1806 と NGC 1846 というLMC 中間年齢星団の主系列ターンオフに2つのコブが見つかり、NGC 1783 と NGC 2173 ではターンオフが広がっていることが判り、ますます混乱している。我々 は HST アーカイブから LMC/SMC 星団の画像を取ってきて、星形成が複数回 起きた、または星形成期間が長引いた星団がどのくらいあるかを調べた。 53 星団の画像が得られ、それらのうち中間年齢 ( 1 - 3 Gyr) LMC 16星団 の CMD を解析した。  データは整約され、微分減光の補正も行われた。11個の星団では、主系列、 赤色巨星枝、 AGBは正常に見え、巾も狭く、レッドクランプもしっかり定義 されるに拘わらず、ターンオフ付近の CMD に異常な巾の広がり、または分裂が あった。  星団周辺の星の CMD を用い、上の特徴は星団に特有なものであること を確認した。人工星テストは巾の広がりやターンオフの分裂は測光エラーや連 星に伴うものでないことが判った。  NGC 1806, NGC 1846 は明らかに二つに分かれたターンオフを有する。NGC 1751 にも二重ターンオフが発見された。これら3星団では明るい方のターンオフに 対応する種族は星団星の 2/3 以上を占めている。NGC 1783 においては複数星 種族を確認した。この星団のターンオフは二つの分かれた枝から成る。7つの 星団、 ESO 057-SC075, Hodge 7, NGC 1852, NGC 1917, NGC 1987, NGC 2108, NGC 2154 では主系列が太く、星形成が 150 - 250 Myr という長期に亙った 疑いがある。IC 2146, NGC 1644, NGC 1652, NGC 1795, NGC 1978 の CMD には 異常が見られなかった。結論として、 サンプルの 70 % 以上は SSP 仮説に 反する CMD を示した。

Lebzelter, Lederer, Cristallo, Straniero, Hinkle (2009)
 LMC 星団 の AGB 星 の研究
 LMC 星団は 1.5 - 2 Mo 星の最終進化段階の研究に最適である。ここでは AGB に沿ったドレッジアップの結果を報告する。  星団 AGB 星の表面組成を高分散近赤外スペクトルから求めた。 AGB に沿って C/O と 12C/13C が進化する様子を初めて確認した。

Lebzelter, Lederer, Cristallo, Hinkle, Straniero, Aringer (2008)
 中間年齢星団 NGC 1846 の AGB 星 II. AGB に沿ったドレッジアップ
 第3ドレッジアップのモデルに制約を加えることを目的として、 AGB に沿っ た進化の間の 12CO 表面組成を調べた。LMC 星団 NGC 1846 の AGB 星サンプルに対し、高分散近赤外分光観測を行った。 C/O 比と12C /13C 比を測定し、進化モデルと比較した。
 星団 AGB に沿った C/O 比と12C/13C 比の進化が初 めて示された。これにより進化モデルの信頼度を調べることが可能となり、特に 第3ドレッジアップの効率を決められる。酸素過多星での C/O 比と12C/13C 比の増加はモデルでよく再現可能で ある。しかし、ふたつの炭素星での低い12C/13C 比は ある程度の追加混合が遅く起きることを示唆する。追加混合は非常に明るい AGB 星に影響し、13C を増加させる一方で、C/O 比を一定に保つ。 C/O はそれまでの混合の累積で決まっているからである。AGB に沿って F 組成が 増加する徴候も発見した。

Lebzelter, Wood (2007)
 中間年齢星団 NGC 1846 の AGB 星
 LMC 中間年齢星団 NGC 1846 AGB 星の変光特性をモデルとの比較から調べた。 我々の測光モニターを MACHO アーカイブと合わせて、星団 AGB 中から 22 変 光星を検出し、周期を求めた。星団パラメタ―から大気中の C/O 比を考慮し つつ脈動モデルを作った。酸素リッチ星と炭素リッチ星ではそれぞれに適切な オパシティを使用した。
 NGC 1846 星の P-L 図を質量 1.8 Mo のモデルでフィットした。脈動周期は 炭素星に変化すると増加する。脈動特性で定義された質量から星団年齢を 1.4 Gyr とした。これは星団年齢が AGB 星変光から求められた最初の例である。 炭素星は基本振動と第1倍音振動の混合であることが示された。

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Girardi, Marigo (2007)
TP-AGB 期寿命、マゼラン雲星団での C-, M-星計数から。
 マゼラン雲星団での C-, M-星 Mbol < -3.6 のデータを用いて、 夫々の寿命を恒星質量の関数として定めた。

Grocholski, Cole, Sarajedini, Smith (2006)
LMC 赤色巨星の CaII 三重線分光観測 1. 大きい星団巨星の組成と速度
VLT/FORS2 を使い、LMC の大きな星団 28 個中の 200 星の近赤外スペクトル を撮った。星団は年齢 1 - 13 Gyr, メタル量 -2 < [Fe/H] < -0.3 に 渡っていて、位置は円盤全般に分布している。観測から星団の平均速度を 1.6 km/s, 平均メタル量を 0.04 dex の精度で決めた。8星団ではメタル量が 今回の観測により初めて分光的に定められた。その内の6個ではこれまで 視線速度の観測はなかった。観測結果を HST/WFPC2 公開データと結合して、 新しく測られた星団 NGC 1718 は最も低メタル ([Fe/H] ∼ -0.80) の 内側円盤中間年齢星団の一つであることが判った。この星団の 視線速度は単一の回転円盤システムと矛盾せず、ハローの運動は示さない。 さらに我々の結果は LMC はバーのない渦状銀河では典型的なメタル量勾配を 欠いているという以前の報告と一致する。バーが LMC 星種族の混合を 促していることを示唆する。
以前の結果と異なるのは、より高メタル星団 ([Fe/H] > -1.00) のメタル 分布が ⟨[Fe/H]⟩ = -0.48, σ = 0.09 とタイトで太陽メタル 側にテイルを引かないことである。星団メタル分布はバーの赤色巨星と同じ 形である。これはバーと星団が似た形成史を持つ事を示唆する。これは、バー と中間年齢星団は 4 Gyr 昔の近接遭遇の結果として形成された、という最近の 理論モデルと良く合う。

Udalski (1998b)
LMC/SMC の t = 1.5 - 12 Gyr 15星団を観測し、レッドクランプ平均 I 等級が 2 - 10 Gyr では年齢に依らないことを示す。

Geisler, Bica, Dottori, Claria, Piatti (1997)
LMC 高齢星団を探して
  LMC には銀河系球状星団と同じくらいに古い星団は数個しかない。ここでは 25個のLMC高齢星団候補の CMD サーベイを報告する。それらは以前の UBV 積分測光と Ca II 分光から導かれたものである。測光はセロトロロの 0.9 m 望遠鏡+ C T1 フィルターで行われた、ほぼ全ての星団 でターンオフまで観測できた。また多くの星団では主系列を数等追うこと ができた。その良い例は、年齢 9 Gyr の ESO121-SC03 で、はっきりと主系列 が見えている。
 年齢の決定には δT1 = T1(TO) - T1(GBC), GBC=giant branch clump, を用いた。年齢の較正には 標準星団を用いた。 しかし、高齢星団は見つからなかった。ただし、NGC1928 と NGC1939 は バー領域にあってターンオフを決定できなかったので、高齢の可能性を 排除できない。それ以外の候補星団は 1 - 3 Gyr の中間年齢星団であった。 UBV カラーが高齢を示唆した原因はストカスティックに現れる高光度の星 の影響及び混み合った領域内の暗い星団に対する測光エラーである。CaII 三重線から導かれる [Fe/H] &sim: -1.0 という比較的低いメタル量も 中間年齢と一致する。これらの星団が円盤上遠距離に位置することは LMC 円盤の形成と進化に関して興味深い。
 文献から調べた δV, δR も調べたが、これらの併用により、 t > 1 Gyr での星団形成と破壊の歴史を詳しく知ることが出来る。 その結果、以前から言われていた, 星団形成が 3 - 8 Gyr 以前の時代 中断したこと、星団形成が 3 Gyr 前から活発となり、1.6 Gyr 昔に ピークを迎えたことを再確認した。我々の観測から、未発見の古い星団は まず残っていないと思える。

Kontizas, Morgan, Kontizas, Dapergolas (1996)
LMC 星団近傍にある惑星状星雲
 UK シュミット乾板を調べて作った LMC 星団と惑星状星雲のカタログを調べ、 星団の近くにある惑星状星雲のリストを作った。それらが偶然の一致かどうか の統計テストを行った。  惑星状星雲の前駆天体である C-, M-型星がどのくらいあるか調べるため、 UK シュミット望遠鏡で撮った対物プリズム乾板を用い、個々星のスペクトル 分類を行った。近くに惑星状星雲がある星団は 48 個あった。テストの結果、 その約半分は星団に属すると考えられる。

Girardi,Chiosi,Bertelli,Bressan (1995)
Age Distribution of LMC Clusters
from Integrated UBV Colors
Bica et al 1994 の LMC 星団 UBV カタログ(BCDSP)からの星団カラー分布を Bertelli et al 1994 の SSP モデル等時線を用いて説明した。
その結果、2色図上分布のギャップはカラー分散ベクトルの方向が変わる ことで説明された。CMDから年齢が決まった星団で較正した S - 年齢 関係から BCDSP 星団の年齢を決めた。3 - (12 - 15 ) Gyr で星団形成は 低下している。一方 100 Myr, 1 - 2 Gyr に星団形成の増加期がある。

Bica, Claria, Dottori, Santos, Piatti (1991)
LMC 624 星団の UBV 二色図上のヘリウムフラッシュギャップの検出
 我々は LMC 星団の積分 UBV 測光の数をこれまでの約 4 倍, 全部で 624 個 に増やした。二色図上の星団分布には SWB タイプ IV 付近にギャップが存在 する。ギャップの巾は 0.1 等である。ギャップの縁付近に存在する星団の ターンオフ年齢は赤色巨星相変化の年齢と一致する。  このカラージャンプはヘリウムフラッシュを経験する星が初めて登場する 事に起因する。その結果明るく数の多い赤色巨星枝が形成される現象に対応する。 おまけとして、 Hodge7 = SL735 は古典的な球状星団であることが判った。

Olszewski,Schommer,Suntzeff,Harris (1991)
Spectroscopy of Giants I.
Velocities, Abundances, and
Age-Metallicity Relation
 LMC 80 星団に属する 150 星の Ca II 三重線の等値幅 EW(Ca) を測り、[Fe/H] と Vr を決定した。メタル量較正には高年齢の銀河系星団を用いた。Caライン付近の等級 M8600 に対して EW(Ca) をプロットして、等[Fe/H]線を描き、LMC 星の EW(Ca) から [Fe/H] への較正に用い る。この方法は星団年齢の影響が少ないことを等時線モデルから確かめた。
組成を求めた 70 星団中、年齢が知られている 31 星団を用いて、年齢 - メタル 量関係をプロットした。3 - 10 Gyr の星団が欠落しているため、メタル量増加の 詳細は不明である。

Frogel, Mould, Blanco (1990)
マゼラン雲星団の AGB
 LMC 39 星団に属する M-, C-型 AGB 星を同定し、400 星の赤外測光を行った。 SWB 分類に基づいて AGB 星の性質を調べた。SWB I から SWB IV へと移るにつれ M-型星は赤くなって行く。これは年齢が増して行く効果である。明るい炭素星は SWB IV - VI にのみ存在する。炭素星の光度は星団年齢と相関する。M-星から C-星への転換光度は SWB 早期型ほど高い。炭素星が見つかる最も若い星団は 100 Myr である。これは Mi = 3 - 5 Mo に相当する。それより若い星団では M-星 が最大光度星となるが、古典モデルの予想最大光度より低い。対流オーバー シューティングか、または及び、激しいマスロスが明るい炭素星、明るいM-星の 不在の説明に必要かも知れない。中間年齢星団では総光度の 40 % が明るい AGB 星からの寄与である。炭素星光度関数が予想より低い方にずれているので、 AGB 星が貢献する年齢帯はかなり古い方に動く。あと相転移の変な話。

Mould, Da Costa (1988)
マゼラン雲星団の年齢
 Mv < -6, (B-V) > 0.25 (SWB IV 以上)の LMC/SMC 星団を観測した。 ここでは Kron 3 (1Mo), NGC 1978 (1.3 Mo), NGC 2134 (3 Mo) において とり、星団 CMD から恒星進化の研究を行う例を示す。  AGB先端光度や組成と年齢の関係も調べた。さらに、距離に無関係な年齢指標 としてターンオフ等級と水平枝等級との差を調べた。t = [4, 10] Gyr のギャッ プを埋める星団は見つからなかった。 DM(LMC)=18.2, DM(SMC)=18.8 を採用。

Rlson, Fall (1988)
マゼラン雲星団;年齢較正と年齢分布への再訪問
 CMD がターンオフまで達する CCD 撮像星団が急増したので、 Elson, Fall (1985) による、ターンオフ法による LMC 星団の年齢決定を再調査した。サンプルは 57 星団で、内 24 個は 1985 年以降に CMD が得られたものである。  他の研究での年齢分布と比較した。 新しい年齢分布は、前回得られたものとそう変わらない。 つまり、爆発的星団形成のような派手なイベントの証拠はない。
という結論だが、問題にされる 3 - 8 Gyr のあたりは UBV 二色図で s が 怪しいフック部になっている。そのあたりのサンプル区分を大きくとっていて、 ギャップを議論できる細かさは最初からないのでは?

Jensen, Mould, Reid (1988)
マゼラン雲星団形成の連続性
 カラーから年齢 2 - 10 Gyr と推定される LMC 星団を調べた。NGC 1754, NGC 1795, SL 506 は 0.8 - 3 Gyr の間にあることが判った。  NGC 2005 に関しては、バーの中にあり、混み合いのためはっきりしたこと が言えない。主系列ターンオフ年齢が 4 - 10 Gyr にある星団は未だに 見つかっていない。

Gratton,Ortolani (1987)
レチクル座球状星団 GlC0435-59 の深い測光観測
 LMC ハローの球状星団 G1C0435-59 の深い CCD 測光 (Vlim = 24.4) を 行った。色等級図と光度関数を作り議論する。水平枝には多数の RR Lyr 星 ⟨V⟩ = 19.07±0.06 が存在する。ターンオフは V = 22.45 ±0.1, B-V = 0.35±0.05 である。  水平枝光度での巨星枝カラー (B-V)g = 0.71±0.04 から導いたメタル 量は、赤化 E(B-V) = 0.02 を仮定して、 [Fe/H] = -2.0±0.2 である。 この低いメタル量は星団 RR Lyr が Oosterhoff I 型であることと矛盾する。 VandenBerg, Bell 1985 等時線からの年齢は 16 - 18 Gyr である。
(年齢はその後、どこを調整したのか? )
多数のブルーストラグラーが存在するらしい。光度関数は M5 と似る。それは、 銀河系球状星団に比べ、もう少し若い年齢か、大きな O/Fe 比を示唆する。

Rebecca, Elson, Fall (1985)
LMC の大型星団の年齢較正と年齢分布
 積分 UBV カラーを用いて、LMC 大星団の年齢をファクター2の精度で経験的 に求める関係式を導いた。その較正には 58 LMC 星団の主系列測光、積分スペ クトル、AGBの広がりに基づく年齢を用いた。恒星種族モデルを用いて、LMC 星団中 104 Mo 以上のものを分離した。その際には等級ごとの不完 全性の補正を施した。  次に、それらの星団の偏りのない年齢分布を定めた。星団数は、我々の銀河 系散開星団の年齢分布と同様に、年齢と共に減少する。LMC 年齢分布はより 平坦で、星団年齢の中間値は銀河系より大きい。二つの銀河で形成率が平坦 であると仮定するなら、この年齢差は LMC では星団破壊の速度がより緩やか であることを意味する。我々の結果は星団の爆発的生成を支持する証拠を示さ ないが、小さな増減や、ゆっくりした変動は排除されない。

Stryker, Da Costa, Mould (1985)
SMC の古い球状星団 NGC 121 の主系列ターンオフ
 主系列等時線フィットから、SMC 球状星団 NGC 121 の年齢を 12±2 Gyr とした。これには, フィールド RR Lyr の Mv = +0.6 mag とした [(m-M)o=18.85] ことが効いている。そうでなく (m-M)o = 19.3 とすると、 年齢は 9±2 Gyr となる。星団は RR Lyr を含むが青色水平枝は持たない。 この星団はまた炭素星ギリギリの星を含む。このようにこの星団は色々な 進化ステージの星の境界にあるので、年令決定は非常に興味深い。  星団近傍も暗い主系列ターンオフを示し、以前のマゼラン雲フィールド研究 と異なり、中間年齢星が多いという証拠がない。SMC の化学進化を見直すと、 銀河系では初期以降はほぼ一定のメタル量増加が続いてきたのと異なり、SMC のメタル量は長期にわたり低レベルにあり、ここ 1 - 2 Gyr に急増している。
(この頃銀河系球状星団の年齢 14 - 16 Gyr )

Aaronson, Mould (1985)
マゼラン雲中間年齢星団の伸長したAGB.IV.
 この論文で、Mv < -7, B-V > 0.3 のマゼラン雲星団に含まれる AGB 星の同定と測光が完成した。それらを解析して、
(1)AGB 上端光度は Mbol = -4 から -6 に亘る。
(2)レイマーズマスロスで大体説明可能。
(3)Mi > 1,5 Mo ではより強くする必要がある。
(4)Mi < 2 Mo では炭素星ができる。
(5)Mi > 3 Mo では M-型星で終わる。
(6)Mi-Mf 関係は Weidemann とずれる。

Becker, Mathews 1983
マゼラン雲の若い星団 NGC 1866 HR-図
 (Y,Z,M) の進化経路グリッドを基に、NGC 1866 のパラメター (t, Δt, Y, Z) = (86Myr, 1Myr, 0.273, 0.0160) を得た。フィットはブルーループの 先端カラーで決め、それ自体は一意ではないが、Lequeux et al 1979 の 関係 Y = 0.228 + 2.83 Z で一つに絞ったのである。 NGC 1866 は LMC 星間物質より高メタルという ことになるが、Cohen (1982) の年齢・メタル量関係とは合致する。 モデルには観測に比べモデル主系列星が少なく、巨星が多いという不一致 がある。対流オーバーシュートとミクシング長の検討が必要であろう。

Hodge 1983
マゼラン雲星団の年齢較正
 主に主系列測光に基づき、マゼラン雲 81 星団の年齢を集めた。これらを用いて Searle, Wilkinson, Bagnuolo と van den Bergh の年齢クラスを較正した。 以前に発表された較正は系統的な改訂が必要である。特に炭素星を含む事に 基づいた年齢決定は直す必要がある。AGB 先端光度法は大き過ぎる年齢を与える。 マスロスが小さなモデルが悪い。

Rabin 1982
マゼラン雲赤い星団の積分スペクトル
 マゼラン雲 16 星団の SIT 積分デジタルスペクトルのバルマー線等値巾を Ca I K線等値巾に対してプロットすると、マゼラン雲星団は 銀河系球状星団の観測系列から離れた所に跳ぶ。与えられたメタル線強度に対 して、星雲星団はより強いバルマー線強度を示す。これはマゼラン雲星団が 銀河系球状星団ほど高齢でないためと解釈される。色等級図ではターンオフまで 届かない星団でもバルマー線強度はターンオフ星に、したがって年齢に、鋭敏 であることがモデルスペクトルの解析から分かった。  N年齢とメタル量を変えたモデルスペクトルと比較すると、水素・メタル線 診断図は年齢とメタル量を定量的に得る独立な方法と見做せる。 積分スペクトルは個々の星の観測が不可能な遠方銀河の化学進化を探る実際的な道具である。 そのはずだが、実際にはそこまで行っていないのが残念。中途半端!

Mould, Aaronson 1982
LMC 中間年齢星団の伸張した巨星枝 III.
 マゼラン雲球状星団の写真NIR探査による上部 AGB 星の観測結果を報告する。 80 星の JHK 測光を行い、以前の観測結果と合わせて Mv < -7 の星団 のほぼ完全な年齢推定を行った。LMC 星団の年齢分布は 4 Gyr に鋭いピーク を持つ。これは SMC と違う。これは星団の光度進化の結果かも知れなくて、 星形成率一定のモデルは必ずしも除去できない。星団系には明らかな年齢・ メタル量関係が存在する。ただし、その関係の周りの分散は幾分不確かである。

Aaronson, Mould 1982
LMC 中間年齢星団の伸張した巨星枝 II.
 マゼラン雲の赤い星団中の上部 AGB 星 JHK 測光からそれらの星団の 大部分は伸張巨星枝を有する事が判った。これはそれらが中間年齢であり、 銀河系球状星団と異なる事を意味する。  LMC, SMC 間で AGB 先端等級のはっきり異なる分布は星団の間で 年齢が大きく異なっていることを意味する。平均すると、 LMC 中間年齢星団は SMC 中間年齢星団より若い。そしてそれらの AGB 先端には赤い炭素星が位置する。 しかし、 LMC は銀河系球状星団と同じくらい古い球状星団を含むのだが、その ように古い星団は SMC には見つかっていない。  巨星枝を下がると、 (J-K, V-K) 二色図上で マゼラン雲の比較的暖かな巨星は銀河系フィールド、星団巨星の系列から かなり離れて分布する。この効果は無矛盾な有効温度の導出を複雑にする。  最後に、マゼラン雲の年齢・メタル関係を論じた。メタル量増加の割合は 太陽近傍よりは速いが、銀河系ハローよりは遅い。

Frogel, Cohen 1982
マゼラン雲星団内の晩期型星種族
 NGC 419, 1651, 1652, 1783, 1841, 1844, 1846, 1978, 2173, 2193, 2209, 2257 の晩期型 48 星の JHK 測光を行った。その結果をマゼラン雲フィールド、 銀河系の炭素星、M-型星の観測結果と比べた。星団炭素星はフィールド炭素星 と似るが、同じ (J-K)o に対する Ko の散布度は星団の方がフィールドの 1/2 - 1/3 と小さい。二色図上でマゼラン雲炭素星は銀河系炭素星と少しずれる。 LMC フィールドには、LMC 星団では見つかっていないほどに、赤くて明るい M-型巨星が存在する。そのような M-星を含む星団は見つかっていない。 一つの星団内では例外が一つあるが、炭素星は M-星より明るい。その境界 光度は SWB クラス=年齢と相関する。NGC 1841 は M3 と似た球状星団と考 えられていたが、TAGB を超える AGB 星を含む点が謎である。

Cohen 1982
マゼラン雲星団の年齢・メタル量関係
デュポン望遠鏡に取り付けたレチコン増幅アレイを使い、LMC 15 星団中から 選んだ 38 星の中分散スペクトルを撮った。吸収線の準等値巾 W を測り、 銀河系球状星団 6 個中の 42 星と何個かの超巨星で (V-K)o-W 関係を較正して、 メタル量で内挿する式をつくる。それを用いて、星団星の組成を決めた。それらの 星団の年齢は SWB クラスから推定した。強い年齢・メタル量関係が見出された。 太陽近傍や銀河系ハローと異なり、単純なボックス型化学進化モデルで年齢・ 組成関係が説明できる。

Flower 1981
LMC 星団中の超高光度星
 LMC の青い球状星団 NGC 1866 中心部の CMD を得た。 星団の中心付近に超光度星が 11 個集まっている。 これまで 8 星団に 40 超光度星が見つかっている。これらは post-AGB 星ではないか?

vandenBergh 1981
マゼラン雲球状星団の UBV 積分測光
 SMC 61 星団、LMC 147 星団の UBV 積分測光を行った。これらの観測から 星団年齢系列を導き、 SMC 50, LMC 141 星団の年齢分類を与えた。どちらの 星団でも異なる年齢間で空間分布が驚くほど変わる。 SMC では若い星団が バーの中か近くに固まる。一方、古い星団はそこを避けている。LMC の 非常に若い星団はシャプレーのコンステレーションに集中している。LMC 星団 システムの中心はバーからかなり外れている。

Flower, Geisler, Hodge, Olszewski 1980
NGC 1868: LMC の低メタル中間年齢星団
 LMC の青い球状星団 NGC 1868 の CMD を得た。その基部は (B-V, Mv) = (+0.70, +1.0) で、 (+1.15, -0.5) まで伸びる。 Mv = 0.0 のブルーループは B-V = +0.50 まで伸びる。 主系列はターンオフ Mv = +0.4 の主系列を示す。 巨星枝は太陽組成でフィットするには青すぎ, Z = 0.001, MTO = 2.0 Mo, t = 0.7 Gyr でフィットした。 星団の中心付近に超光度星が 10 個集まっている。現在のモデル計算の先の 進化段階を示すのではないか?巨大星団にしか見られないことから考えると 非常に短期の進化期であろう。

Mould, Aaronson 1980
マゼラン雲中間年齢球状星団の伸長した巨星枝 I.
 マゼラン雲の赤い球状星団の巨星枝先端近くの星にビジコンスペクトル観測と JHK 測光を行った。サンプルは Mould, Aaronson 1979 の分光サーベイを大きく 拡張した。多くの炭素星といくつかの M-型星が見出された。赤外測光によると、 炭素星の平均輻射等級は LMC で -5.02±0.10 mag, SMC で -4.69± 0.10 mag である。これらの値は、 Mould, Aaronson 1979 の値よりずっと暗い。 Mould, Aaronson 1979 が使用した可視輻射補正は不正確であった。 平均して、LMC星団炭素星はSMC星団炭素星より明るく赤い。個々星に J-K から 決めた有効温度を与えた。Vバンドはブランケッティング効果が大きいため、 V-K から決めた有効温度は信頼できない。非炭素星は掩蔽観測から得た視直径 を用いた有効温度で較正したが、炭素星は Mendoza,Johnson 1965 の Teff-(J-K) 関係を使用している。AGB進化の簡単なモデルから AGB 上端光度を用いて星団 年齢を決めた。この年齢順列は SWB 分類と合う。また、年齢・メタル量相間の ヒントらしきものが得られた。

Frogel, Persson, Cohen 1980
LMC 三つの球状星団内の非常に赤い星
 LMC 星団 NGC 1783, 1846, 1978 中の最も赤い星 12 個に対し、 JHK測光観測を行った。 7/12 は炭素星で、LMC フィールド炭素星 と測光上区別できない。銀河系星の赤外データから輻射等級と温度 を導いた。炭素星の平均輻射等級は -4.9 であった。これは Mould, Aaronson 1979 の炭素星光度より 2 等暗い。 M-型星赤巨星枝は青くて先端光度は銀河系球状星団と同じくらいである。 47 Tuc と同じメタル量として、星団間の ΔlogTe = 0.06 を出す にはMto = 2 Mo まで上げる必要があり、その場合巨星枝が観測される 光度に達しないという矛盾が生じる。星団年齢とメタル量の調整および モデルの修正が必要でないか。

Mould, Aaronson 1979
マゼラン雲球状星団中の炭素星
 マゼラン雲球状星団の中には、巨星枝先端の B-V が非常に赤いものがある。 それらの星団の巨星枝先端星の分光サーベイを行った。多数の炭素星が発見さ れた。その光度はそれらが上部 AGB 星であることを示す。そのような星ができ るのは、星団が銀河系球状星団よりずっと若い場合にのみ可能である。  星団年齢をファクター2の精度で 30 億年とした。マゼラン雲星団はその カラーにより2種類に分かれるが、赤グループに多数の中間年齢星団が存在 することはマゼラン雲において星団形成が連続的に進行してきたという描像 に合う。最近マゼラン雲のフィールドで多数の炭素星が発見されたことの 帰結も議論する。

Webster 1976
LMC の赤い星団 NGC 1852 の 惑星状星雲
 LMC の赤い球状星団 NGC 1852 の中心近くにある天体が低励起惑星状星雲で あり、おそらく星団メンバーであることを示す。

Flower, Hodge 1975
LMC の4つの大きな星団の CMDs
 青い球状星団 NGC 2164, 2156, 2159, 2172 の CMD を得た。Iben の恒星 進化モデルと比較して、よく 合う結果を得た。しかし、巨星枝の上に中間カラーで Mv ∼ -5.7 の 超光度星が存在する。  4つの星団の年齢は 50 Myr に集中した。 Blair et al. 1974 が得た、この 領域の小星団の多くがこの年齢を持つことと合わせ、興味深い結果である。

Hodge 1973
LMC 星団系の最近の形成史
 LMC 各星団中の最も明るい星の等級を区分規準に使い、星団分布が年齢と共に 変化する様子を調べた。509 個の若い星団に年齢を与え、最近 1400 万年の星団 形成の空間パターンを調べた。星団がグループで生まれる様子が見える。 星団形成率は 1/3×104 yr である。

Hodge 1960
LMC の研究 I. 赤い球状星団
 LMC 中心の 125 平方度で撮った2色の乾板から球状星団を探した。以前に球状 星団と報告されたものの多くは純粋な球状星団ではないことが分かった。新しく 発見された球状星団を同定した。  全部で35の星団を、色等級図に基づいて、真の球状星団と認定した。それらは 星雲の東側に片寄って分布する。いくつかの巨星枝は異常に弱い。

Thacheray, Wesselink 1953
マゼラン雲までの距離
 新設のラドクリフ 74 インチ反射鏡を用いて、マゼラン雲の RR Lyr 探索を 行った。  3つの星団 NGC 121, NGC 1466, NGC 1978 において RR Lyr が検出された。 その結果 LNC 距離はこれまでの 23 kpc から 44 kpc へと伸びた。

Gascoigne, Kron 1952
マゼラン雲の幾つかの星団のカラーと等級
 SMC8星団、LMC13星団、2フォルナックス星団の光電測光をコモン ウェルス天文台 29 インチ望遠鏡で行った。赤星団と青星団にはっきり分かれる。  マゼラン雲の球状星団は銀河系球状星団に比べ 1.5 等暗い。これは、セファイド の周期光度関係のゼロ点を見直すべきと言う考えを支持する結果である。



M31 の星種族

先頭へ
Lebzelter, Nowlavi, Lecoeur-Taibi, Trabucci, Audard, Garcia-Lario, Gavras, Holl, Jevardat de Fombelle, Nienartowicz, Rimoldini, Eyer 2022
ガイア DR3: ガイア第2 LPV カタログ 
 セカンド Gaia LPVs カタログは G の変光巾が 0.1 mag ( 5 - 95 quantile range) の 1,720,558 LPVs を含む。他種変光星の混入を種々のファイルたーで 防いだ。周期と振幅は G-バンド変光曲線へのモデルフィットから決めた。C-星 は RP スペクトルの分子吸収帯から決めた。  392,240 LPVs には周期 P が与えられた。 546,468 星が C-星と分類された。 OGLE と ASAS-SN データとの比較から完全性は 80 % と評価された。リカバリー 率はミラ型で 90 %, SR と Irr で 60 % である。同時に LPVs 数は既知数の何 倍にもなった。特に混んだ領域でそうである。混入率は 2 % 以下である。しっか りした理論的議論に基づく C-星分類は文献にある分光で同定された炭素星と矛盾 しない。しかし、混んだ領域や赤化の強い場合注意が必要である。
著者 内容

Goldman, Boyer, Dalcanton, McDonald, Girardi, Williams, Srnivasan, Gordon (2022)
アンドロメダ銀河の PT-AGB 星数調査とダスト収支への寄与評価
 M31 北西部の高メタル TP-AGB 星のほぼ完全なカタログを示す。 346,623 AGB 星が検出された。内 4802 星は大量のダストを形成していた。 また年齢のわかる星団内に1356 AGB 星が見つかった。星団のいくつかでは メタル量も知られている。  スピッツアー中間帯データを用いて、ダスト 形成 AGB 星の C/M 分類を行った。LMC AGB 星のカラー対マスロス関係を使い、 PHAT 領域にある AGB 星からのダスト放出量を評価した。ダストの 97.8 % はO-リッチである。ダスト寿命を 300 Myr(MW) かずっと長いかの仮定で、 M 31 AGB 星の貢献度は 0.9 - 35.3 % である。これはマゼラン雲での以前 の評価に一致する。

Massey, Neugent, Levesque, Drout, Courteau (2020)
M31 と M33 の赤色超巨星種族
 log(L/Lo) = 4.0 まで完全な NIR 測光アーカイバルデータを用いて、 M31 と M33 の RSGs 探査を行った。M31 で 5 deg2, M33 で 3 deg2 である。前景星の除去には Gaia が用いられた。その後、CMD 上で RSGs を AGBs から分けた。MARCS 大気 モデルを使い、有効温度と輻射光度を定めた。得られた HR-図は Geneva 恒星 進化トラックと良い一致を示した。  M31 で 6400, M33 で 2850 の RSGs が Holmberg 半径内に見つかった。 RSGs の空間分布は渦状腕をなぞっているが、AGBs は円盤全体により一様に広 がっている。

Ren, Biwei Jiang, Yang, Wang, Jian, Ren (2020)
M31 と M33 の赤色超巨星 1. 完全データ
 M31 と M33 内の赤色超巨星の完全サンプルを得た。UKIRT/WFCAM の公開デー タを用いて、(J-H)-(H-K) 二色図上で前景の赤色矮星を除き、候補星を選んだ。  結果として、M31 には 5,498, M33 には 3,055 の赤色超巨星が見出された。 副産物として O-リッチ, C-リッチ AGB 星の完全サンプルも得られた。さらに、 TRGB も決定され、M 31, M33 距離が求められた。

Soraisam et al. (2018)
パロマートランジットファクトリーからの M31 赤色超巨星の変光
  Palomar Transient Factory 5年間 1500 回の R バンド観測を用いて、 M 31 で 分光 で決まった 255 RSGs の変光を調べた。MK ≤ -10 (log(L/Lo) > 4.8) の RSG は全て ΔR > 0.05 の変光星であった。周期解析の 結果、63 個にはっきりした周期が認められた。 それらから決めた PLR は他のメタル量を持つ銀河の PLRs と同じであった。  今回初めて、第一倍音振動と思われる系列を発見した。MESA 恒星進化 モデルとの比較から、この第1倍音仮説が裏付けられた。また、これらの星の 質量が 12 Mo < M < 24 Mo であることが示唆された。これらの RSGs はタイプII コア崩落型超新星の前駆天体なので、 RSGs 変光が SN 前駆天体 の初期質量の評価に影響していた可能性がある。前駆天体のアーカイバル画像 を調べた結果、その効果は測光誤差に比べ無視できる程度であることが分かった。

Bond (2015)
局所群球状星団内の惑星状星雲を HST 撮像で探す
銀河系外の局所群球状星団の HST [OIII] 5007A 狭帯フィルター撮像で惑星状 星雲を探した。M31, M33, NGC147, LMC, SMC, NGC6822, WLM, Fornax から 66 GCs, アーカイバルを加え、計 75 GCs の F502N 画像を得た。PN なし。
ただし、間違えて GC と分類されていた若いアーカイブ星団 B477 に一つ, 中心核近くの B068 の近く、しかし星団半径よりは大きく離れて多分フィールド の PNs が二つ見つかった。星団から離れた近傍フィールド画像には多数の PNs が見つかったが殆どは既知であった。Jacoby et al 2013 による M31 高齢星団 247 個の積分分光で見つけた 3 つの PN を含む星団の HST アーカイブを調べた 結果、一つは周辺光のコンタミ、二つは星団 PN らしい。結局この二つだけが 確実な星団 PN なので、より調べる必要がある。

Lewis et al (2015)
局PHAT XI. M31 の空間的に分解された星形成史
 M31 PHAT 可視画像を使い, 100pc x 100pc の 9000 領域で CMDs にフィットして、 SFH を 500 Myr 前まで調べた。10 kpc リングは少なくとも 400 Myr まで遡る。 リング位置はこの期間安定していた。星から円盤への浸透により古い種族ほど 広がっている。リング位置の安定性はその起源が衝突による説を疑わしくする。  外側の 15 kpc リングは 80Myr 前から星形成が盛んになった。内側 5 kpc リングの星形成度はもっと低い。200 Myr 前にはもっと輪郭がはっきりしていたが、 今では拡散して薄まっている。全体の星形成は過去 500 Myr ほぼ一定であった。 50 Myr 前に過去 100 Myr 平均の 1.3 倍という小さな高まりがあった。過去  500 Myr の間、全星形成の 60 % が 10 kpc リングで起きた。過去 100 Myr の PHAT 領域での星形成率は 7.3 10-4 Mo yr-1kpc-2 で、領域全体で 0.7 Mo/yr である。

Boyer et al 2013
M 31 内側円盤での炭素星の欠乏
 WFC3/HST 中帯域近赤外測光を AGB 星近赤外モデルスペクトルと組み合わせ、 AGB 星を M-型と C-型に効率よく分けた。この方法を M 31 内側円盤でテストし、 M 31 他領域での観測に反して驚くほどに C-星が欠乏していることを見出した。 我々はそこにただ一個の炭素星とやや不確かな6個の候補星しか見出さなかった。
 C-型星と M-型星の比、 C/M = (3.3+20-0.1) × 10-4 は M 31 の他領域での値に比べ、一桁から二桁小さい。この 小ささは内側円盤のメタル量が大きいために C/M > 1 になることが妨げられ るからであろう。
 この観測は高メタル AGB 星の進化モデルに強い制限をつけ、あるメタル量以上では 炭素星への変換が起きないことを示唆する。これは AGB 星の質量放出に劇的な変化を もたらし、ダスト形成に影響し、最終的には高メタル銀河の全体的な性質に 影響するだろう。

Rosenfield et al 2012
PHAT I. M 31 バルジ内側での明るい UV 星
 PHAT の過程で M31 バルジ 12'x6'.5 領域を F275W と F336W で撮った。 そこから約 4000 の古くて UV で明るい星を見つけた。パドヴァ進化経路と の比較からそれらを post-AGB, post-Early AGB, AGB-manque 星に分類した。 後2者はまとめて hot post horizntal branch = HP-HB 星と呼ばれる。 それらは AGB 進化には外層質量が不足した星で、RGB 星のマスロスが高い時 の高いヘリウムとα元素量を示すと思われる。  データからバルジの UV で明るい星は高温の極端水平枝星であるという 主張が支持される。しかし、UV で明るい星種族はバルジの UV 光の主役 ではない。というのは我々が検出したのは極端水平枝星の後継者のみであ るからである。計算に依れば、中心バルジ主系列星の数パーセントだけが HP-HB 期を経ることができる。そしてこの割合は中心距離に従って低下 する。また、高温の UV で明るい星の表面密度は低質量 X-線連星と同じ 密度変化を示す。

Dalcanton et al 2012
PHAT = Panchromatic Hubble Andromeda Treasury
 Panchromatic Hubble Andromeda Treasury は進行中の HST 多期間 観測プログラムで M 31 円盤、中心から 0 - 20 kpc の 1/3 を UV から NIR にかけての 6 フィルターで撮像する。観測には WFC3 と ACS が用いられる。 完結すると 828 軌道からの 0.5 deg2 をカバーする。 フィルターは F275, F336 を WFC3/UVIS カメラで、 F475, F814 を ACS/WFC カメラで、 F110W, F160W を WFC3/IR カメラで使用した。 この波長帯から有効温度、輻射等級、減光をほとんどのスペクトル型星に対し 求めることが出来た。mF275W = 25.1, mF336W = 24.9, mF475W = 27.9, mF814W = 27.1, mF110W = 25.5, mF160W = 24.6 で S/N = 4 であった。  しかし、内側円盤では混み合いのため限界等級は混み合いで決まる。 最も込んだところでは最大で5等くらい明るくなる。論文ではディザリング、 観測戦略、測光、天文位置、データについて述べる。また、測光安定性テスト の結果、混み合いエラー、測光バイアス、ポインティングコントロールについ て述べる。赤色巨星から導いた円盤構造の初期フィットについて報告する。 これは M/L 比の仮定に独立な方法で、減光変化に対しても安定な結果を出す。 これ等のフィットは 10 kpc リングは単に最近の星形成が活発な領域 ではなく、 t ≥ 1 Gyr の星の密度超過を示す力学的な構造であることが 分かった。

Battinelli et al. (2003)
M31 外側円盤中の炭素星探査
 CFHT/MegaCam R, I, CN, TiO で M31 南西円盤 17 - 30 kpc を 2240 arcmin2 観測した。945 炭素星を検出した。⟨Io⟩ = 19.94, σ = 0.47 であった。炭素星の主軸沿い表面密度プロファイルはスケール長 4.85±0.35 kpc の指数関数型であった。この値は円盤種族の値と一致 する。Ferguson et al が最近見つけた G1 密度超過で特に密度の超過はなかった。 C/M 比を 7 kpc に渡って測った、以前の結果と異なり強い C/M 勾配が見つかった。

Baum, Schwarzschild (1958)
M31 と随伴銀河の星種族の比較
 M31 と随伴銀河 NGC 205 での 選択領域で分解可能な星の数を計数し、 表面輝度を光電測光した。計数/輝度の比は NGC 205 の方が M31 より 遥かに高かった。 NGC 205 の値は」球状星団とほぼ匹敵する。一方 M31 の値は太陽近傍と似ている。これは M31 の光の大部分は極端 種族 II でなく古い種族 I であることを意味する。



M31 の構造

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著者 内容

Beaton + 9 (2007)
M31 ハローの高メタル星から成る巨大ストリーム
 2MASS 6X プログラムによるアンドロメダ銀河の 2.8 deg2 J, H, K 観測は M31 中心部の、ほとんど減光の影響を受けない、明瞭な画像を与えた。 長軸半径 700 (2.6 kpc) の箱型等輝度線を有するバルジ が現れた。内側バルジ (≤ 50)等輝度線は比較的丸いが、 幾分かよじれている。その先では、
(1)M31 バルジの楕円率が増加する。
(2)位置角は 50° で一定。これは M 31 円盤位置角より 10° 大きい。
(3)ボクシー度は増加して 3 - 4 % に達する。これは他のボックスバルジ NIR 画像の値と一致する。
 もう一つの論文では、自己無矛盾 N 体計算で、古典バルジ+箱型バルジ 付きのバーが観測された近赤外の特徴を再現することを示す。 箱型バルジの先、円盤上位置角約 40° に沿って細い尾根が伸びている。 これはバーの細い部分と解釈でき、長軸半径 700 - 1200 まで達している。J, H, K 間で形態、相対 輝度は変わらない。つまり、カラー勾配は見られない。これらのデータは M31 が天の川銀河と同様に棒状渦巻き銀河であることを示す。
( バルジとバーは平行に見えないが)

Ibata,R., Irwin, Lewis, Ferguson, Tanvir (2001)
M31 ハローの高メタル星から成る巨大ストリーム
 INT(2.5m)/WFC により M31 南東部を V, i 撮像観測した。限界等級は i = 23.5, V = 24.5 でRGB 星で Mv = 0, 主系列で Mv = -1 に相当する。 以前の観測はハローの外側部を数箇所つまむか、広い代わりにずっと浅い眺望を 目的としていた。それに対し、今回の観測は深く広いので、等級・カラー毎に空間分布 を調べることが可能となる。この観測は領域がつながっているので、M31 ハローの 大規模構造と前景天の川銀河星分布とから局所的な密度超過を区別することが可能 となる。
i-バンド像上で星状、かつ等級とカラーが赤色巨星に合致する天体の数分布にスト リーム状の密度超過が見出せた。色等級図で球状星団の赤色巨星枝との対応から メタル量が導かれた。 太陽メタルに近い星がストリームには集中している。そのような高メタル星が M31 ハローには広く薄く分布している。 このストリームは M32 と NGC205 をつなぐ 線に沿っている。さらに NGC205 の外側等密度線の伸びる向きはこのラインの方向 である。これら二つの矮小銀河とストリームの間には何らかの関係があるのかも 知れない。ストリーム星と二つの衛星矮小銀河の星とはメタル量が割りと似ていて、 かつ 配列 が揃い、M31 から共に近い。これらの特徴は共通の起源を指し示している。

Richer, Harvey, Crabtree, Pritchet, Christopher (1990)
M31 円盤遠方での晩期型星
M31 円盤上中心から 4 kpc と 20 kpc(Baade's field IV) の 2 領域を V, I, CN, TiO の 4 フィルターで観測した。遠方フィールドでの C/M = 0.15 は以前 11 kpc で求めた値と同じ。色等級図は最も高メタルの球状星団より さらに赤い。この図上で炭素星は、フィールドで最も明るいという独自 の位置を占めている。どちらの領域でも赤色巨星枝の太さは測光エラーより 優位に太い。M 31 距離は 24.45 と求まった。



M31 の星形成史

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著者 内容

Lewis et al (2015)
局PHAT XI. M31 の空間的に分解された星形成史
 M31 PHAT 可視画像を使い, 100pc x 100pc の 9000 領域で CMDs にフィットして、 SFH を 500 Myr 前まで調べた。10 kpc リングは少なくとも 400 Myr まで遡る。 リング位置はこの期間安定していた。星から円盤への浸透により古い種族ほど 広がっている。リング位置の安定性はその起源が衝突による説を疑わしくする。  外側の 15 kpc リングは 80Myr 前から星形成が盛んになった。内側 5 kpc リングの星形成度はもっと低い。200 Myr 前にはもっと輪郭がはっきりしていたが、 今では拡散して薄まっている。全体の星形成は過去 500 Myr ほぼ一定であった。 50 Myr 前に過去 100 Myr 平均の 1.3 倍という小さな高まりがあった。過去  500 Myr の間、全星形成の 60 % が 10 kpc リングで起きた。過去 100 Myr の PHAT 領域での星形成率は 7.3 10-4 Mo yr-1kpc-2 で、領域全体で 0.7 Mo/yr である。



近傍銀河の星種族

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著者 内容

Lebzelter, Nowlavi, Lecoeur-Taibi, Trabucci, Audard, Garcia-Lario, Gavras, Holl, Jevardat de Fombelle, Nienartowicz, Rimoldini, Eyer 2022
ガイア DR3: ガイア第2 LPV カタログ 
 セカンド Gaia LPVs カタログは G の変光巾が 0.1 mag ( 5 - 95 quantile range) の 1,720,558 LPVs を含む。他種変光星の混入を種々のファイルたーで 防いだ。周期と振幅は G-バンド変光曲線へのモデルフィットから決めた。C-星 は RP スペクトルの分子吸収帯から決めた。  392,240 LPVs には周期 P が与えられた。 546,468 星が C-星と分類された。 OGLE と ASAS-SN データとの比較から完全性は 80 % と評価された。リカバリー 率はミラ型で 90 %, SR と Irr で 60 % である。同時に LPVs 数は既知数の何 倍にもなった。特に混んだ領域でそうである。混入率は 2 % 以下である。しっか りした理論的議論に基づく C-星分類は文献にある分光で同定された炭素星と矛盾 しない。しかし、混んだ領域や赤化の強い場合注意が必要である。

Massey, Neugent, Levesque, Drout, Courteau (2020)
M31 と M33 の赤色超巨星種族
 log(L/Lo) = 4.0 まで完全な NIR 測光アーカイバルデータを用いて、 M31 と M33 の RSGs 探査を行った。M31 で 5 deg2, M33 で 3 deg2 である。前景星の除去には Gaia が用いられた。その後、CMD 上で RSGs を AGBs から分けた。MARCS 大気 モデルを使い、有効温度と輻射光度を定めた。得られた HR-図は Geneva 恒星 進化トラックと良い一致を示した。  M31 で 6400, M33 で 2850 の RSGs が Holmberg 半径内に見つかった。 RSGs の空間分布は渦状腕をなぞっているが、AGBs は円盤全体により一様に広 がっている。

Ren, Biwei Jiang, Yang, Wang, Jian, Ren (2020)
M31 と M33 の赤色超巨星 1. 完全データ
 M31 と M33 内の赤色超巨星の完全サンプルを得た。UKIRT/WFCAM の公開デー タを用いて、(J-H)-(H-K) 二色図上で前景の赤色矮星を除き、候補星を選んだ。  結果として、M31 には 5,498, M33 には 3,055 の赤色超巨星が見出された。 副産物として O-リッチ, C-リッチ AGB 星の完全サンプルも得られた。さらに、 TRGB も決定され、M 31, M33 距離が求められた。

Hopkins 2018
恒星質量関数を測る
 IMF を測る様々な方法を紹介し、比較する。  特にそれが普遍的であるかどうかに注意を払った。

Lebzelter, Mowlavi, Marigo, Pastorelli, Trabucchi, Wood, Lecoeur-Taibi (2018)
ガイアと 2MASS を用いた AGB 星分類の新手法
 ガイア BP, RP と MASS J, Ks から二つの Wesenheit 関数 WRP, BP-RP, WKs, J-Ks を作り、次に、 (WRP, BP-RP-WKs, J-Ks) - Ks を作った。 この図上では様々な LPVs が異なる位置を占める。  O-リッチ星と C-リッチ星が分離することを示す。また、低質量、中質量、 大質量 O-リッチ赤色巨星、さらに極端 C-リッチ星を同定した。進化モデル を援用して、この図の天体分類力を示す。

Madore, Freedman, Hatt, Hoyt, Monson, Beaton, Rich, Jang, Lee, Scowcroft, Seibertr (2018)
The NIR TRGB 1. IC 1613 における較正
 Las Campanas 6.5 m Baade Magellan 望遠鏡の FourStar NIR カメラを使い、 IC1613 ハローにある星を NIR で観測した。観測 CMD に見られる J-H, J-K カラーによる TRGB による右上がり勾配を補正するメタル量不変な T-バンド等級 を作った。  IC 1613 の観測から決まったカラータームとマゼラン雲の観測との比較から 得たゼロ点等級を用い, IC 1613 の距離指数=24.32±0.03(statistical) ±0.05(systimatic) を得た。

Boyer, McQuinn, Groenewegen, Zijlstra, Whitelovk, van Loon, Sonneborg, Sloan, Skillman, Meixner, McDonald, Jones, Javadi, Gehrz, Britavskiy, Bonanos (2017)
スピツアーによる近傍銀河中ダスト星の調査(DUSTiNGS) IV. 高赤方偏移 AGB 星 類似天体の発見
 Spitzer による近傍銀河内の "DUST" 探査は近傍矮小銀河中に幾つかの AGB 星候補を見つけた。そして非常に低メタル (Z=0.008 Zo) の系でもダストが形 成されることを示した。ここでは、 HST WFC3/IR による追加観測の結果を示す。 使用フィルターは C-リッチと O-リッチを区別できるよう F127M, F139M, F153M を用いた。星形成 DUSTiNGS 銀河 NGC 147, IC 10, Peg dIrr, Sextans B, Sextans A, Sgr DIG を観測に加えた。全てマゼラン雲より低メタルで、メタル 量の散らばりは一桁に亘る。
 これ等の銀河で我々は知られていたダスティAGB 星の数を2倍に増やし、そ れらの殆どが C-リッチであることを見つけた。 IC 10 では26個の M-型ダス ティ星を発見した。それらの大きなダスト超過と空間分布が区切られているこ とから、それらは AGB 星質量分布の上部に属する。ホットボトム燃焼期にある のであろう。理論モデルは低メタル M-型星では大量のダスト形成を予測しない。 しかし、最も低メタル、12+log(O/H) = 7.26 - 7.50 の銀河でも M-型星の周りに ダスト超過を見出した。低メタルと高質量(-10 Mo) から、 AGB 星は誕生後 30 Myr という極めて早期にダストを形成可能で、おそらく高赤色変移銀河に見られる ダストの貯蔵源となっていると思われる。

Bond (2015)
局所群球状星団内の惑星状星雲を HST 撮像で探す
銀河系外の局所群球状星団の HST [OIII] 5007A 狭帯フィルター撮像で惑星状 星雲を探した。M31, M33, NGC147, LMC, SMC, NGC6822, WLM, Fornax から 66 GCs, アーカイバルを加え、計 75 GCs の F502N 画像を得た。PN なし。
ただし、間違えて GC と分類されていた若いアーカイブ星団 B477 に一つ, 中心核近くの B068 の近く、しかし星団半径よりは大きく離れて多分フィールド の PNs が二つ見つかった。星団から離れた近傍フィールド画像には多数の PNs が見つかったが殆どは既知であった。Jacoby et al 2013 による M31 高齢星団 247 個の積分分光で見つけた 3 つの PN を含む星団の HST アーカイブを調べた 結果、一つは周辺光のコンタミ、二つは星団 PN らしい。結局この二つだけが 確実な星団 PN なので、より調べる必要がある。

Garcia, Herrero, Castro, Corral, Rosenberg (2009)
IC 1613 の若い星種族 II. OB アソシエイションの物理的性質
Q - V 図を用いて IC 1613 の OB-アソシエイションの解析を行い、それらの年齢、 質量を定め、若い大質量星集団を確認した。  その結果、 M ≥ 50 Mo の星 10 個以上を確認した。 アソシエイションの平均直径は 40 pc で、歴史的に考えられてきた値の半分である。 アソシエイションの分布は HI, HII の分布と強い相関がある。H I が豊富な バブル領域ではアソシエイション年齢の広がりが最も大きい。これは、そこでの 星形成が銀河の他領域より長期間にわたって継続してきたことを意味する。
 最も若いアソシエイションはバブル領域から離れた銀河の西に見つかった。そこは 伝統的には星形成が起きている唯一の場所と考えられていた。  測光と分光から導かれた星の性質を比較した結果、Q 指数は測光データしか 存在しない場合に OB-星の性質を調べるのに大変有効であることが判った。

Madore, Mager, Freedman (2009)
赤色巨星枝先端(TRGB) を研ぐ
 TRGB 光度を測るため、合成等級 T = I - β[(V-I)o - 1.50] を導入した。 それを NGC 4258 (maser galaxy)で試した。  赤化ベクトルの方向が TRGB の勾配とほぼい位置するため、この方法は偶然に も赤化の影響を軽減する。

Garcia, Herrero, Vicente, Castro, Corral, Rosenberg, Monelli (2009)
IC 1613 の若い星種族
 Gran Telescopio CANARIAS (GTC) に計画される新装置の準備のため、 不規則銀河 IC 1613 中の大質量星リストを用意することにした。多天体分光 に使えるためには位置精度を正確にする必要がある。
 Isaac Newton Telescope の Wide Field Camera を使い、IC 1613 星の カタログを作成した。カラーにより青い星候補を選んだ。”feiends-of-friends” アルゴリズムにより、銀河内の集団を見つけた。OB アソシエイションのカタログ は中心集中を示す。

Dalcanton + 26 (2009)
ACS 近傍銀河サーベイ
 ACS Nearby Galaxy Survey Treasury (ANGST) は D ≤ 4 Mpc の銀河体積 限界サンプルの星に対し一様精度の多色測光を行う。サーベイ体積内には 69 銀河が含まれ、それらは様々な環境、近接二重銀河、大小の銀河群、フィラメ ント、孤立系を成している。その形態型は光度, 星形成率でファクター 104 に亘る。サーベイデータは Advanced Camera for Surveys (ACS/HST) で撮られ、ACS が故障した後はアーカイブデータと WFPC2 観測で 補った。  ANGST のメジアン 50 % 完全度を、 mF475W = 28.0 mag, mF606W = 27.3 mag, mF814W = 27.3mag で達成した。 これは tip of the red giant branch (TRGB) の数等下である。深い観測を行 った領域ではその限界等級はレッドクランプの構造を分解できる。得られた測光 カタログは公開され、 1400万以上の星に対する 3400 万測光から成る。 この論文ではサンプル選択、撮像、データ整約、エラー、カタログを記述 する。また、 TRGB から決めた相対距離も述べる。

Whitelock et al (2009)
フォルナックス矮小楕円銀河中の AGB 星
フォルナックス42'×42'でのIRSFモニタリングの結果、7ミラ、10 SR, P = 215 - 470 d が見つかった。AGB星の大部分は Marigo et al 2008 の Z=0.0025, t = 2 Gyr と 10 Gyr の線に囲い込まれる。ただ、マリゴの等時線は 2色図を再現しない。ダストの性質が適していないのではないか?また、マリゴ モデルが与える周期は観測と合わない。
Whitelock et al 2006 の輻射補正を用いて mbol を求めた。LMC の JHKsも同じ補正式を適用して新しく炭素星ミラのPLR を決め直した。ミラ、SR で は Optical - NIR - MIR で平均等級を用いて、または同一時期の観測値を用いて モデルフィットしないと、Mbol, マスロス率に大きな誤りが起きる。

Jackson, Skillman, Gherz, Polomski, Woodward (2007)
局所群矮小銀河内 AGB 星の スピッツアー IRAC センサスII: IC 1613
 局所群矮小不規則銀河 IC 1613 の Spitzer IRAC 測光の報告をする。IRAC 3.6, 4.5, 5.8, 8.0 μm 観測と可視測光データを組み合わせて解析した結果、 IRAC AGBs の 43 % が可視で検出されず、さらに 11 % 追加分が誤認であるとわかった。 原因は星周ダストによる減光であろう。さらに、狭帯フィルター観測は AGB 星の 半分しか検出できず、 C/M 比を計算する際に全 AGB 星の 18 %しか考慮してい ないことがわかる。  AGB 星全体からの全マスロス量は (0.2 - 1.0) 10-3 Mo/yr である。 輻射等級とマスロス率の分布は他の近傍低メタル銀河と合う。IC 1613 の可視 検出完全性とマスロス率は局所群矮小不規則銀河 WLM と非常によく似ている。 特性と進化の歴史の類似性から想定されていたことである。

Jackson, Skillman, Gherz, Polomski, Woodward (2007)
局所群矮小銀河内 AGB 星の スピッツアー IRAC センサスI: WLM
 LGGS = Local Group Galaxy Surbey の Spitzer 3.6, 4.5 μm と可視観測 データから WLM の分を示す。観測は AGB 星の全てをカバーしている。 可視の限界等級は TRGB より 3 等低いにも拘わ らず、赤外で検出された AGB 星の 39 % は可視で検出されなかった。さらに、 赤外検出天体の 4 % が 可視で誤同定された。
 我々の結果を可視狭帯炭素星サーベイの結果と比べた。それらは全 AGB 星の 18 % しか検出していないことが判った。 AGB 星マスロスは総計で (0.7 - 2.4) 10-3 Mo/yr となった。AGBs と RSGs のマスロス率と Mbol の分布は LMC, SMC とよく似ている。
(マスロスは Groenewegen05 使用だが、 詳しく書いていない.赤外 AGB 星の大部分は C/M 分類がハッキリしないままである。 そのため結論はあいまいで物足りない。)


Bresolin, Urbaneja, Gieren, Pietrzynski, Kudriyzki (2007)
IC 1613 青色超巨星の VLT 分光
 ACS/HST を用い、おとめ座銀河団の中心部で多数の矮小楕円銀河を含む2領域 を撮影した。 F555W - F814W 画像にはそれらの銀河中の赤色巨星が、RGB Tip の1等下まで、分解されて写っていた。中心輝度が低い、Bo > 27.0 という 理由で、二つの銀河が標的に選ばれた。星への分解はこのように 希薄な銀河の存在を明らかにする。どの銀河にも明白な帰属が認められない赤色 巨星も見つかった。5つの矮小銀河、近くの渦状銀河のハロー、それに銀河間 領域2か所で V-I CMDs が得られた。  それらの図の RGB tips から距離、メタル量を推定した。矮小銀河星の平均 メタル量は [Fe/H] = [-2.4, -1.2] で、局所群と M81 群の矮小楕円銀河に対 する光度-メタル量関係に乘る。表面輝度が極端に低い二つの銀河でメタル量は それほど極端な値を取らず、[Fe/H] は銀河表面輝度と相関しないようだ。おと め座銀河団銀河の距離指数は 31.0±0.05 = 16.1±0.4 Mpc で ある。一方、銀河団内空間に存在する星の距離指数は 31.2±0.09 = 17.4±0.7 Mpc である。

Valcheva, Ivanov, Ovcharov, Nedialkov (2007)
WLM の炭素星とC/M 比
 マゼラン型矮小不規則 WLM 銀河(Wolf-Lundmark-Melotte) の豊富な炭素星 種族を同定した。深い NIR 観測でそれらの測光的性質を調べた。C/M = 0.56 である。  WLM 内の AGBs 分布は数百パーセクの大きさの恒星集団が二つある可能性がある。 WLM の HI 分布から N(HI)/E(B-V) = 60 1021 cm-2 mag-1 である。セファイド4つから出した距離指標 (m-M)o = 24.84 である。円盤の J バンドスケール長は 0.75 kpc である。
(青い方に制限は掛けていないので、 TRGB の上の星はOB 星から M6 まで皆 M に含まれる分類法。RGBより赤い方に すれば合理性はある。進化経路はどう重なるのか?)

Caldwell (2006)
おとめ座銀河団矮小銀河の点源に分解された星の CMDs
銀河系外の局所群球状星団の HST [OIII] 5007A 狭帯フィルター撮像で惑星状 星雲を探した。M31, M33, NGC147, LMC, SMC, NGC6822, WLM, Fornax から 66 GCs, アーカイバルを加え、計 75 GCs の F502N 画像を得た。PN なし。
ただし、間違えて GC と分類されていた若いアーカイブ星団 B477 に一つ, 中心核近くの B068 の近く、しかし星団半径よりは大きく離れて多分フィールド の PNs が二つ見つかった。星団から離れた近傍フィールド画像には多数の PNs が見つかったが殆どは既知であった。Jacoby et al 2013 による M31 高齢星団 247 個の積分分光で見つけた 3 つの PN を含む星団の HST アーカイブを調べた 結果、一つは周辺光のコンタミ、二つは星団 PN らしい。結局この二つだけが 確実な星団 PN なので、より調べる必要がある。

Rowe, Richer, Brewer, Crabtree (2005)
M33 中の 炭素星と明るい星種族
 M33 74' × 56' の 106 星を V, I. CN, TiO バンド で測光した。主系列、超巨星、赤色巨星枝、 AGB 種族が同定された。 炭素星と M 型星が分類された。星計数を用いて M33 構造を調べた。 得られた C/M 比をメタル量の指標と考えて円盤でのメタル勾配を決めた。 結果は viscous disk formation モデルと一致した。 炭素星光度関数は M31, SMC と似ていた。 Block et al が述べた 「炭素星の驚くべき アーク」は単に M 33 円盤の延長に過ぎない。

Cioni, Habing (2005)
NGC 6822 の NIR 観測: AGB 星、距離、メタル量
 NGC 6822 の 20'x20"' をWHT で I, J, Ks 撮像した。NIR により銀河全体 に渡り特徴を調べた。C/M 比からメタル量の銀河内変化を導いた。  それは 1.56 dex に達する。この値はマゼラン雲で得られた値の倍である。 測光結果は DENIS (I) と 2MASS (J, Ks) で較正した。その結果、距離指標 (m-M)o = 23.34±0.12 を TRGB から得た。

Pietrzynski et al. 2003
LMC, SMC, フォルナックス、カリーナ レッドクランプの平均 K等級はメタル量依存がほとんど無い

Rejkuba, Minniti, Silva, Bedding (2002)
NGC 5128 の古い星種族
 太陽から最も近い楕円銀河 NGC 5128 の北東部の希薄シェルとハローで、 VLT FORS1 と ISAAC を用いて、恒星を分解した。可視 - 近赤外の色等級図で支配 的な特徴は幅広な赤色巨星枝である。  幅の広さはメタル量に大きな広がりがあることを示唆する。赤色巨星先端光度 を超える明るさの星を多数発見した。これらの明るい星の変光モニターは、それ らがミラと似た長周期変光星であることを示す。

Massey et al. 1998
NGC6822, M33, M31 とメタル量が高くなるに連れ、普通の赤色超巨星に比べ、 明るい赤色超巨星の比率が下がって行く。マスロスのメタル量効果が大質量星の 進化に影響したためでないか?

Lee, Freedman, Madore (1993)
星に分解された銀河の距離指標としての TRGB 
 TRGB I 等級が低メタル( [Fe/H] < -0.7) の古い種族を含む銀河の距離指標 として有用である。その精度はセファイドや RR Lyrae に匹敵する。  Sobel カーネル k(j) = [-2, 0, 2] を光度関数 L(i) 抱き合わせ、 G(i) = ΣjL(i+j)k(-j) のピークを探る。

Da Costa, Hatzidimitiou, Irwin, McMahon (1991)
セクスタンス dSph 銀河の視線速度とメタル量
 AAT/FOCAP ファイバー分光器により最近発見されたセクスタンス dSph 銀河の14星の CaT スペクトルを撮った。視線速度から 6 星は銀河に 属すると決定された。その視線速度は 230±6 km/s に集中した。 この速度は Sculptor や Ursa Minor とならんで銀河系ハローマスの決定 に有用である。CaT 等値幅からメタル量 [Fe/H] = -1.7±0.25 が 得られた。この値は光度メタル量関係からの予想より高い。

Cook, Aaronson, Norris (1986)
近傍銀河中の 炭素星と M-型星
 CN, TiO 吸収バンドに合わせた中間帯域フィルターを用い、炭素星と M 型星を 区別する方法を開発した。銀河系炭素星でこの技法を試した後、近傍銀河 M31, M33, NGC6822, IC1613, WLM を観測した。得られた C/M 比は銀河の絶対等級と良い相関 がある。これは絶対等級とメタル量の間に存在する関係を反映していると考えられる。

Richer, Prichet, Crabtree (1985)
NGC 300 中の 明るい晩期型星
 CTIO 4m 主焦点で NGC 300 15 arcmin2 V, I, TiO, CN バンド 撮像から 赤色巨星を分解した。狭帯域と広帯域のカラーの間には A0 から M6.5 まで非常に良い相関が認められた。16 の炭素星と 25 の 冷たい M 型星が検出された。ただ内二つは前景星であろう。 C/M 比は [Fe/H] ≈ -0.5 程度のやや低メタルを示唆する。炭素星から導いた 距離指数は 25.87 でこれまでの結果より著しく小さいが、最近の Graham によるセファイド観測とは合う。
 AGB 光度関数を LMC のそれと比べると、 LMC に見られる明るい AGB 星 の欠如は NGC 300 では観察されない。ただし、サンプル数が小さい。 色等級図は超巨星を欠く。しかし、明るい星を避けてフィールドを選んだ 結果かも知れない。

Richer, Crabtree, Prichet (1984)
NGC 205 中の 明るい晩期型星
 M31 の随伴楕円銀河 NGC 205 中心部の VRI および TiO, CN バンド CCD 撮像から M-型星と C-型星を分離した。7 つの炭素星が分離された。 最も低温で M5 までの M-型星 21 個も確認された。 C/M 比からメタル量 を推定すると、マゼラン雲と同程度と考えられる。炭素星が存在する ことは星形成が継続しており、かつ現在の方が過去より活発であることを 示唆する。

Aaronson, Persson, Frogel (1981)
ヴァーゴとコマにおける早期型銀河の赤外カラー等級関係
 早期型銀河のカラー光度関係をバーゴとコマ銀河団で求め、等カラーでの 見かけ等級の差を求めた。意外なことに、 Δm(u-V) = 3.5, Δm(u-K) = 3.0, Δm(V-K) = 2.6 であった。 C-M 関係の勾配でなく、原点が両銀河団で異なるらしい。 局所群のバーゴへの落下を考慮すると、可視カラーでは同じ原点を持つようだ。 従って、同じ (u-V) を持つ銀河を比べたとき、バーゴ の K 等級がコマより 明るい、つまり、コマ銀河は赤い星成分を欠くと解釈できる。したがって、 早期型銀河の C-M 関係には第2パラメターとして、中間年齢星の存在の有無 が必要となる。



近傍銀河の構造

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著者 内容

Palma, Majewski, Siegel, Patterson, Ostheimer, Link (2003)
巨星を用いたハロー副構造の探求 IV. UMi dSph の広がった構造
ワシントンシステムの M, T2, DDO51 フィルターを用い、UMi 矮小楕円銀河とその周辺の測光をした。  UMi 巨星と水平枝星の候補の空間分布は良く似ており、潮汐半径の外側にも 多くの星が見出された。潮汐半径内側での表面数密度の等高線には幾つかの 特徴がある:
(1)銀河の星の最高数密度は外側等高線の中心から南西にずれている。
(2)外側等高線は楕円形でなく S 字型である。  表面密度プロファイルは遠くまで広がっている。
 観測は(1)UMi 星が遠方まで分布する、(2)潮汐半径内側での特異な形態、(3) 密度プロファイルの形、は全てこの銀河が MW の潮汐力を受けて力学的に進化して いる最中であることを示す。しかし、測光データのみでは潮汐半径外の星が本当に 非拘束なのか、ダークマターハローに拘束されているのか不確かである。

Ibata, Gilmore, Irwin (1994)
サジタリウスの矮小衛星銀河
 銀河中心方向に大規模で同じ向きに運動する星の群れを発見した。これは今まで 知られていたどれよりも近い矮小銀河に属する星である。この銀河はこれまで銀河系 の多数の星の蔭にあって見逃されてきた。この銀河をサジタリウス矮小銀河と呼ぶこと を提案する。この銀河はフォルナックス銀河と同じ程度である。サジタリウス銀河は 引き延ばされていて、現在潮汐効果で破壊されている最中であることを示す。

Block, Wainscoat (1991)
渦状銀河 NGC 309 の可視と近赤外画像での形態の差
 渦状銀河の形態分類は波長に大きく依存する。というのは、可視光画像は 他のタイプの星を抑えて若い種族 I や電離ガス、ダストの影響が大きいから である。分類を波長数ミクロンへまで伸ばすには、現在より大きなフォーマット の近赤外カメラの登場を待たなければならない。本論文ではグランドデザイン 渦状銀河 (ScI) の中でも最大のものの一つ NGC 309 の 2.1 μm 画像を提示 する。これは、HST/NICMOS 256×256 カメラで撮られた。
 可視光では NGC 309 は古典的な多重腕形態を示す。しかし、近赤外 2.1 μm では二本腕と明るい中心バーが現れるのを見る。これは SBa 銀河 NGC 1358 と 似ている。これらの研究から、渦状銀河の円盤構造と一過性の種族 I で決められる ハッブルタイプとの間には関係がないという考えを支持するものである。


近傍銀河の星形成史

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著者 内容

Golshan, Javadi, van Loon, Khosroshahi, Saremi (2017)
 NGC 147 と NGC 185 の LPVs
 NGC 174 と NGC 185 は M31 の衛星銀河の中で最大級であり、場所も接近し ている。質量も形態分類 dE も似ているに拘わらず、それらの星間ガス量と 潮汐変形は異なる。したがって、SFHはどうなのかが疑問となる。そこで、 LPVs を用いて二つの SFHs を再構成した。LPVs の光度は Mi に相関するか らである。NIR 測光と進化モデルを組み合わせて、我々は質量関数を作り、 そこから SFH を導いた。   NGC 185 の星形成は 8.3 Gyr 昔で、その後はずっと低い水 準だがほぼ一定の星形成を続けてきたことが判った。NGC 174 では、星形成の ピークは 7 Gyr 昔で、3 Gyr 前まで強い星形成が続いた。しかし最近 300 Myr は星形成が起きていない。銀河質量が類似であるに拘わらず、 NGC 147 の進化 は NGC 185 より遅い。しかし、最近の進化はより激しい。これはNGC 147 の 強い潮汐変形と NGC 185 中心に溜まるガスの存在により裏付けられる。
(炭素星と LPVs の同定に全く触れていない。 二重に数えているのか? LPV は O-リッチとして赤化補正 しているらしい。そして、LPVs は (I-K)o = 2.6, 炭素星は (J-K)o = 1.4 に固定している。Ko 等級は明るくなり過ぎる危険がある。すごくキケン! )

Javadi, van Loon, Khosroshahi, Mirtorabi (2013)
 UKIRT M33 モニタリングプロジェクト III. 中心 1 kpc 平方の星風フィードバック
 この第3論文では、脈動 AGBs によるマスロス率を測る。その為、UKIRT NIR 観測に,Spitzer MIR 観測を組み合わせる。低質量星はその初期質量の 大部分を星風により失う。しかし、スーパー AGBs や RSGs でさえも質量の 40 % を星風によって失う。  ダスト還流の 3/4 以上は酸素系である。マス還流率の 2 D マップを作った。 それは動径に沿った低下を示すが、大質量星の集団があるところでは局所的 盛り上がりを示す。マスロス率は, 中心キロパーセク領域で 0.006 Mo yr-1 kpc-2 である。ここには、爆発的、例えば超新星、 のような現象も考慮した。これを現在の星形成率 0.03 Mo yr-1 kpc-2 と比べると、現在の星形成を維持するには、外側円盤からの ガス流入か、銀河間ガスの降着が必要である。

Leitner, Kravtsov (2011)
 高燃料効率銀河:星からのマスロスで星形成を維持する
 銀河の後期進化の間進行する星形成を持続させる上で星からの継続性マスロス の役割を調べた。恒星質量 Ms 銀河に対して、観測される Ms-星形成率関係の 進化から導かれる星形成史に様々な初期質量関数を仮定して、標準的恒星進化 モデルのカスロスを合わせて用いて、全星種族からの総マスロスを計算した。  我々のモデル恒星からのマスロスによる再生ガスは現在の晩期型銀河で進行 中の星形成を維持するに十分である。星からのマスロスはしたがって、観測か ら導かれる比較的低レベルのガス落下率と円盤銀河で見られるかなり速い星形 成との間の対立を取り除くものである。冷たいガスの落下率が評価されている 銀河に対しては、星形成によるガス消費率と落下率との差を星からのマスロス が埋めることを直接に示す。

Javadi, van Loon, Mirtorabi (2011)
 UKIRT M33 モニタリングプロジェクト II. 中心 1 kpc 平方の星形成史
 UKIRT を用い、M 33 の NIR モニタリングを実施した。目的は進化最終期に あり、光度から初期質量が分かる星を探し出すことである。この第2論文では、 初期質量関数を求め、そこから星形成史を導く。星形成率は 0.002 から 0.007 Mo yr-1 kpc-2 の間を変動する。 SFH には二つ のピークがあった。第1は ≥ 6 Gyr 昔で 星質量の 80 % 以上がこの時に 生まれた。 もう一つは 250 Myr 昔に 200 Myr 続いた星形成で、< 6 % の 星か作られた。  画像面と銀河面の両方に、動径分布と経度分布を、古い、中間年齢、若い種族 に対して描いた。古い RGB 星は楕円体分布を、若い星は平坦な円盤状 分布をすることを見出した。中間年齢星はバルジまたはバーらしきものを示す。

Coleman, de Jong (2008)
フォルナックス矮小楕円銀河中の 深い観測 I. 星形成史
 B = 23 までのフォルナックス B, R 撮像からCMDフィットにより星形成史を 導いた。フォルナックスは複雑な星形成史を持つことが判った。多くの星が早期 に形成されたが、最も支配的な種族は中間年齢種族である。そこには 3 - 4 Gyr 昔の爆発的星形成が含まれる。また、大きな種族勾配が明らかに見える。他の 矮小楕円銀河と似て、最近の星形成は中心近くに限られる。さらに、中心付近では メタル増加が外辺部より速い。中心部では年齢 10 Gyr 以上の星は [Fe/H] ∼ -1.4 であり、3つのメタル量分布のピークを示す。全体として、フォルナックス のメタル増加は非常に効率的であった。もっとも最近の爆発的星形成は太陽 メタル量に近い星を産み出した。我々の結果は以下のシナリオを支持する。 すなわち、早期に急速なメタル量増加期を経て、広いメタル量分布を産み出す。 星形成は 4 Gyr 昔まで次第に穏やかに低下して行く。そこで急な爆発的星形成 が起き、メタル量が大きく変化する。その後は弱い星形成が続く。年齢 100 Myr 以下の星が存在する定性的な証拠がある。

Pont, Zinn, Gallart, Hardy, Winnick (2004)
CaT から導くフォルナックス矮小楕円銀河の化学組成進化
 フォルナックス 117 赤色巨星の近赤外スペクトルを VLT/FORS1 で撮った。 これからメタル分布を求め、色等級図赤色巨星枝の年齢・メタル縮退を 分ける。メタル量は CaT 等値幅を球状星団、散開星団 M67, LMC で較正して 決めた。
 サンプルのかなりは予想外に高い CaT 強度を示した。フォルナックスの 主要種族は色等級図赤色巨星枝の位置から推定されるより高いメタル量を 持っている。フォルナックス赤色巨星枝の巾が狭い原因は年齢とメタル量 が非常に異なる種族が偶々重なった結果である。
 フォルナックスの星で若く、高メタル、明るい巨星はパラメター空間の 中で基準サンプルがカバーしていない部分である。このため、メタル分布で 高メタル領域は十分に較正されていない。これまで発表された CaT 等値幅 の理論モデルを用い、光度、メタル、年齢に対するその依存性を調べた。 I 等級と等値幅の相関は年齢によっては僅かしか影響されないので、そこで この関係をフォルナックス星のメタル量を決めるのに使った。
 フォルナックスのメタル量分布は [Fe/H] = -0.9 を中心に低メタル側 -2 までテイルが伸びている。高メタル側は良く決まっていないが、 LMC データとの比較から -0.4 まで広がっているらしい。メタル量の決まった星 の色等級図上の位置から我々はフォルナックスの複雑な年齢メタル量関係を 導いた。初めの数 Gyr の間メタル量は [Fe/H] ∼ -1.0 まで上がった。 メタル増加は過去 1 - 4 Gyr 加速し、[Fe/H] ∼ -0.4 まで達している。 サンプルの半数以上の星が 4 Gyr 以降の生まれで最近まで星形成が 継続していたことを示す。矮小銀河の進化に関する理論的予想と比べた。 矮小銀河が自分の作り出したメタルを系内に留める容量は予想より大きいらしい。

Dolphin (2002)
星形成史を導く数学的方法と7つの矮小楕円銀河への応用
 CMD から SFH を最尤法フィットから導く。χ2 を使わ ず、ポアソン統計を適切に扱った。 応用として、7つの dSphs, Ursa Major, Draco, Sculptor, Carina, Sagittarius, Leo I の SFHs を導いた。   > 8 Gyr の古い星形成が どの銀河にも存在した。その後、Ursa Major, Draco, Sculptor では若い星形成 の証拠がない。  Leo II では寿命の約半分の期間星形成が続いた。一方 Carina と Sagittarius では 2 Gyr 前まで星形成が行われていた。最後に Leo I は非常に強い星形成を 最近 2 - 3 Gyr 昔に行った。

Kennicutt (1994)
円盤銀河の過去と将来の星形成史
  渦状銀河の表面輝度を用いてその星形成史を調べた。現在の星形成率と過去の平均 星形成率との比 b は Sa での 0.01 から Sc - Irr の 1 まで変化する。ハッブル系列 に沿って渦状銀河の測光特性の変化は基本的に星形成史の違いに依る。現在の星形成率 とガス質量を比較すると、ガス消費時間のメディアンは 3 Gyr である。しかし、星から のガス還流を適切に扱うと、円盤のガス寿命を 1.5 - 4 倍伸ばす。その結果、多くの (全部ではない)円盤銀河での現在の星形成率はハッブル時間程度の期間維持され得る。
前半と後半は切れてる。後半はワンゾーンの還流モデルで、星形成効率の係数の絶対値が 様々な銀河形態を生むという考えらしい。原因は論じていない。



種族合成

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著者 内容

Hopkins 2018
恒星質量関数を測る
 IMF を測る様々な方法を紹介し、比較する。  特にそれが普遍的であるかどうかに注意を払った。

Anders, Bissantz, Fritze-v, Alvensleben, de Grijs (2004)

恒星進化モデル合成による星団SEDの解析:
系統的な不確実性
 Z = 0.02 の6個のテストモデル星団 t = 8 Myr, 60 myr, 200 Myr, 1 Gyr, 10 Gyr に対して、Schluz et al 2002 を使った、 フィット実験を繰り返して、UBVRIH バンドのどの組み合わせが役に立つか、 どれが無駄かを調べた。その結果
(1)U,Bバンドは必須。
(2)バンドはなるべく広い範囲に渡るべきである。近赤外に一つは欲しい。
(3)年齢、メタル、赤化、マスを指定するに必要な最低数4バンドしか使えないなら、 UBIH か, もし古い星団なら UBVH がよい。もし NIR がないなら UBVI。
(4)若い星団の U フックと古い星団の BV キンクを検知せよ。
(5)メタル量をよく決めるためには NIR バンドが決定的。若い星団では U/B。 (6)メタル量は種族合成の一番弱い所である。



恒星晩期進化

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著者 内容

Groenewegen (2022)
WISE が見る極端 AGB 星
 WISE から大質量放出率星のサンプルを得ることを目的に、SiC 吸収帯を 持つ炭素星と、周期が 1000 日以上の O-リッチ星 の計 2000 天体を調べた。 WISE W1, W2 変光曲線を "a sinus curve" でフィットした。他の変光サーベ イの結果もダウンロードしてフィットした。特に赤い 316 天体の SED を作り、 可能なら MIR スペクトルも合わせ、輻射モデルでフィットして質量放出率を 求めた。幾つかの赤外データベースとの位置相関を調べた結果、 1/3 は合って いないと分かった。単に WISE フラッグを使っただけでは誤りを防ぐのは難しい。 非常に明るい星のクローンであり、幾つかでは既知の周期と一致する。  最近の論文に刺激を受け、多数の非変光 OH/IR 星が見つかった。振幅に基づ いた選択の結果、約 750 の LPVが見つかり、内 145 は周期が 1000 日を超す。 その多くは新発見である。極めて赤い炭素星 EROs と同じカラーを持つ天体の SEDs をフィットした結果、C-リッチと O-リッチに分かれた。質量放出炭素星の MIR スペクトルをフィットすると、 Av ≥ 2 mag での星間減光が判る。5 kpc 以内の EROs が完全に同定された。そこからのダスト還流総量が決定された。 LMC では新たに 12 の EROs が見つかった。それらは LMC 炭素星数の 0.15 % 二しか過ぎないが、それらからの質量放出は LMC での還流を 8 % 引き上げた。

Marigo et al (2021)
ガイア距離のある散開星団中の AGB 星を新しく見直す
 Gaia DR2 と EDR3 を用い、中間および若年銀河系散開星団中の AGB 星を調 べた。TRGB より明るく、星団メンバーシップが確実な 49 AGB 星が見つかった。 内 19 星は TP-AGB 星でそのスペクトル型は 4 Ms, 3 MS/Ss, 12 Cs である。 観測、進化モデル、星周ダスト層の輻射輸達計算を合わせて、各星の初期質量、 光度、マスロス率、コアマス、周期、脈動モードを決めた。  その結果、第3ドレッジアップ、炭素星の初期質量、星風、初期ー最終質量 関係(IFMR) への制限が与えられ、太陽メタルの TP-AGB 進化に光があてられた。 特に、NGC 7789 の MSB75, NGC2660 中の BM IV90 の二つの炭素星は年齢 1.2 - 1.6 Gyr, Mi = 1.2 - 1.6 Mo で似ているが、異常に大きなコアマス Mc = 0.67 - 0.7 Mo を有する。これは Maarigo et al 2020 が最近発見した IFMR の折れ曲がりを支持する結果である。Mc データの説明には二つのシナ リオ=単独星での星風と連星でのブルーストラグラーを介しての相互作用がある。

Fadeyev (2019b)
最終ヘリウムフラッシュ星の動径脈動
 FG Sge が 1990 以降光度、カラー、変光周期が安定しているのを、ボーン アゲインの LTP = late thermal pulse の膨張がピークに達し、WD へ戻る 寸前として 1.3 Mo 進化でモデル化。脈動計算を進化コードと組み合わせた のが新しい?進化速度観測と合ってる?

Fadeyev (2019a)
種族I AGB 星の進化と動径脈動
 Z = Zo, M = 1.0, 1.5, 2.0 Mo の MS - PPN 進化計算。Teff = [3.6, 20] 103 K のpost-AGB 星で脈動計算を行い、周期変化を求めた。 Teff = 20,000 K になるまでの時間は 1 Mo では7500年だが、1.5 Mo になる と 1000 年である。だから観測される post-AGB 星の多数は 1 Mo。

Alonso-Santiago, Nugueruela, Marco, Tabenero, Gonzalez-Fernandez, Castro (2019)
低メタルの若い散開星団 NGC 2345 の包括的研究
 WD/SN 境界質量を若い星団のpost-MS 星の分光と測光から研究するシリーズ の第3弾。これからどうやって,WD で終わるか SN になるのかを区別できるの か、心配。マスロス星は含まれていなかった。そんなに少ないとは意外だった。

Engels, Etoka, Gerald (2018b)
AGB 進化終末期における大振幅変光の終焉
 我々は 2013 年からナンシー電波天文台を用いて 100 個以上の銀河円盤 OH/IR 星のメーザーモニターを行っている。メーザー強度の変化を用いて中心星の変化を 調べた。  我々は AGB - post-AGB 遷移の際に大振幅変光がどのように失われるかを理解 したいと考えている。振幅がゆっくりと縮小していき脈動が消えていく過程がありそう な仮定と、我々は予想している。

Engels, Etoka, West,Gerald (2018a)
プローブとしての OH メーザー: AGB - post-AGB 遷移
 ナンシー電波望遠鏡 (Nancay Radio Telescope = NRT) を用いて、 1612 MHz で数十個の OH/IR 星をモニターしている。データとしては Hartebeesthoek 電波望遠鏡(SA) における銀河中心 OH/IR 天体のモニターを加えた。メーザー 変光を中心星の変光を示すと考える。初期の成果から、既に示したように、幾 つかの星は 7 年にまで達する周期での変光を示す。他の星は小さな振幅の変光、 または無変光であった。  変光におけるこの二分は AGB 期と post-AGB 期の境界を定めるものと考え られている。現在の観測プログラムで、このような遷移天体を発見し、その変光 特性を調べたい。我々は脈動の低下消失がその表れと考える。その有力候補は 銀河円盤中の小振幅変光星 OH 138.0+7.2, OH 51.8-0.2 である。銀河中心付近 における「非変光」OH/IR 星の出現頻度は円盤と同じくらいである。

Nugueruela (2017)
散開星団: AGB/SN 遷移の実験室
 30-100 Myr星団のpost-MS 星の分光と測光を行う。狙いはWD/SN 境界質量と 進化モデルの検証。モデルブルーループが観測される不安定帯に届かない、予 想されるメタル効果が post-MS のスペクトル分布に顕著に表れない、等の不 一致がある。

Limongi (2017)
MW 遺物星における太陽型振動の検出:M4 K型巨星の星震学
 球状星団 M4 内のRGB と RHB に属する 8 星から太陽型振動を検出した。 観測データは K2 Campaign2 計画の測光から得られた。  恒星モデルから示唆される補正項 Δν を適用して、CMD フィット から得られる値と一致する質量を得た。

Miglio + 20 (2016)
大質量星からの超新星
 コア崩壊型超新星となる大質量星, M = 13 - 120 Mo, の進化を解説する。 [Fe/H]= [-3, 0], 初期回転速度 = 0, 150, 300 km/s である。  マスロス、ミクシング、回転の相互作用が星の最終運命をどう決めるかにつ いて重点的に調べた。初期質量、メタル量、回転速度による進化の概観を述べる。

Miller Bertolami(2016)
post-AGB 星と惑星状星雲中心星の新しい進化モデル
 現在使用されている post-AGB 進化モデルは古い物理を使用しており、互い に矛盾している。色々な星系での CSPNe = PN 中心星と post-AGB 星の観測は モデル予想と大きな違いを示す。主系列から白色矮星までの進化のグリッドを 計算した。 Mi = 0.4 - 4 Mo, Z = 0.02, 0.01, 0.001, 0.0001 である。 その結果、post-AGB 水素燃焼のタイムスケールを M = 0.5 - 0.8 Mo について 調べることが出来た。  古いモデルに比べ、今回の post-AGB タイムスケールは古いモデルの 3 - 10 倍短く、メタル依存性が小さいことが分かった。また、新しいモデルは古いモ デルより 0.1 - 0.3 dex 明るい。この短いタイムスケールは最近バルジ CSPNe から求められた post-AGB タイムスケールと整合する。新しいモデルが予想する より少数の post-AGB, CSPN 星の数はこれまでの矛盾の解消に役立つ。また それは、post-AGB 通過時間、Mf/Mi 比も異なり、星震学や分光学から予想され てきた低質量 CSPNe 形成の理解にも役立つ。

McDonald, Zijlstra (2016)
AGB 星からの脈動駆動質量放出
 中・低質量星は赤色巨星期に大量の質量を放出する。その強い星風の物理 機構はよく分かっていない。標準モデルでは脈動が大気を押し広げ、そこに 形成されたダストに働く輻射圧が星風を駆動する。この論文ではヒッパルコス カタログから取った近傍の RGB 星を用いて、星風の発生を調べる。我々は 星の脈動周期が 60 日に達すると、ダスト形成が急激に起こることを見出した。 これは、星が第1倍音脈動モードへと転移する時期と一致する。 星のエネルギースペクトルは質量放出率がこの時に急激に増大することを 示す。それは、彩層駆動星風の約10倍に達する。  ダスト放射は周期と振幅の 双方に強く相関する。これは脈動が放出の引き金で、放出率を決定することを 示唆する。ダスト放射は光度とあまり相関が無く、ダストに働く輻射圧は 質量放出率にあまり関係ないことを示す。
(周期光度関係と矛盾? )
RGB 星は一般にはダスト形成を行わ ないようだが、 AGB 星では普通に見られるようで、TRGB より明るい AGB 星 では普遍的に見られる。我々は強い星風の発生は質量放出に段差を生み、 それは脈動で引き起こされると結論する。放出率が大きく変わる第2の遷移は 基本振動が始まる周期が 300 日の付近である。

Bond (2015)
局所群球状星団内の惑星状星雲を HST 撮像で探す
銀河系外の局所群球状星団の HST [OIII] 5007A 狭帯フィルター撮像で惑星状 星雲を探した。M31, M33, NGC147, LMC, SMC, NGC6822, WLM, Fornax から 66 GCs, アーカイバルを加え、計 75 GCs の F502N 画像を得た。PN なし。
ただし、間違えて GC と分類されていた若いアーカイブ星団 B477 に一つ, 中心核近くの B068 の近く、しかし星団半径よりは大きく離れて多分フィールド の PNs が二つ見つかった。星団から離れた近傍フィールド画像には多数の PNs が見つかったが殆どは既知であった。Jacoby et al 2013 による M31 高齢星団 247 個の積分分光で見つけた 3 つの PN を含む星団の HST アーカイブを調べた 結果、一つは周辺光のコンタミ、二つは星団 PN らしい。結局この二つだけが 確実な星団 PN なので、より調べる必要がある。

Mosser + 20 (2014)
赤色巨星のミックスモード:恒星進化への窓  
 準巨星と巨星における混合性の振動が検出され、中心核の物理条件が調べら れるようになった。ケプラーデータからデータを選び、星の進化段階と質量を マップした。振動進化経路を周波数と周期間隔の面上に引いた。
 進化段階の変化を定める asteroseismic な特性を定量的に示した。  特に準巨星から早期赤色巨星枝星への転移を明らかにした。恒星振動の情報は はっきりしているので、恒星モデルに関係なくヘリウム燃焼核内のエネルギー 輸送や赤色巨星枝、前近巨星枝に入る星の内部構造の研究に使える。 またヘリウムサブフラッシュの星の研究から、第2レッドクランプ星、ブルー ループ星の星が同定される。

McDonald,Zijstra,Rajoelimanana,Johnson (2013)
あり得ない NGC 4372 V1, V2 : [Fe/H]=-2.2 星団の拡張 AGB
球状星団 NGC 4372 の AGB は予想外の明るさにまで伸びているらしい。固有 運動と空間運動とから、伸びたAGB が実際に星団のものであることを示した。また、 その先端に位置する低温 2600 K, 明るい 8000 Lo, でダストに 覆われた O リッチな二つの LPV V1, V2 のスペクトルを示した。特にそれらの視線速度は V1, V2 はおそらく星団メンバーである。
 この原因はおそらく脈動の欠落と高いガス/ダスト比のためマスロスが阻害され、 マスロスとダスト形成が遅れたからであろう。これは、M15 のWD Pease 1 の大きな質量 を説明するために以前考えられた説明だが今まで実証されなかった。これが正しければ、 星からの質量還流、炭素星、超新星の形成に大きな意味を持つ。

Kalirai (2013)
初期ー最終質量関係の応用:銀河系ハローの年齢
 この10年で IM-FM 関係の理解が大きく変わった。大きな進歩は、 宇宙年齢中に水素を燃やし尽くす「最小」恒星質量まで観測が深く なったことである。その結果、Kalirai et al. 2009 は t = 12.5 Gyr の低メタル種族 II 星が現在 Mf = 0.529 Mo の白色矮星を形成し つつあることを発見した。  この結果から、我々は現在作られつつある低メタル種族II 星の 白色矮星質量からその星の年齢を導く関係を導いた。この関係を 使い、少数のハロー白色矮星から、銀河系内側ハローの形成が 11.4 Gyr 昔で、大部分の球状星団より若いことを見出した。

Rosenfield et al 2012
PHAT I. M 31 バルジ内側での明るい UV 星
 PHAT の過程で M31 バルジ 12'x6'.5 領域を F275W と F336W で撮った。 そこから約 4000 の古くて UV で明るい星を見つけた。パドヴァ進化経路と の比較からそれらを post-AGB, post-Early AGB, AGB-manque 星に分類した。 後2者はまとめて hot post horizntal branch = HP-HB 星と呼ばれる。 それらは AGB 進化には外層質量が不足した星で、RGB 星のマスロスが高い時 の高いヘリウムとα元素量を示すと思われる。  データからバルジの UV で明るい星は高温の極端水平枝星であるという 主張が支持される。しかし、UV で明るい星種族はバルジの UV 光の主役 ではない。というのは我々が検出したのは極端水平枝星の後継者のみであ るからである。計算に依れば、中心バルジ主系列星の数パーセントだけが HP-HB 期を経ることができる。そしてこの割合は中心距離に従って低下 する。また、高温の UV で明るい星の表面密度は低質量 X-線連星と同じ 密度変化を示す。

Bedding + 49 (2010)
低光度赤色巨星の太陽型振動:ケプラーの初期結果  
 ケプラーの 34 日分データから赤色巨星の太陽型振動を検出した。測光は 30 分間隔で行われた。対象星は K-, G-型巨星で、光度はレッドクランプから巨星 枝基底部に及ぶ。振動数間隔 Δν と極大パワー振動数 νmax の間に強い相関が見つかった。S/N 比の高い低光度 νmax > 100 μHz, L ≤ 30 Lo の 50 星で太陽型振動を確認した。それらは水素 殻燃焼星で、進化計算と星形成史に貴重な情報を与える。
 振動数をスケールして新しいエシェル法で解析して、動径および非動径振動に 対応する系列を発見した。その中には l = 3 振動も含まれる。l = 0 と l = 2 振動の小さな差を測り、ν02 - Δν プロット、いわゆる C-D 図を作成した。隣接 l = 0 の中間点と l = 1 との差は、太陽や太陽型星 での観測に反して負であった。l = 1 系列はかなり幅広でこれはミックスモード に起因すると考えられ、モデル予想と一致する。

Lebzelter, Lederer, Cristallo, Straniero, Hinkle (2009)
 LMC 星団 の AGB 星 の研究
 LMC 星団は 1.5 - 2 Mo 星の最終進化段階の研究に最適である。ここでは AGB に沿ったドレッジアップの結果を報告する。  星団 AGB 星の表面組成を高分散近赤外スペクトルから求めた。 AGB に沿って C/O と 12C/13C が進化する様子を初めて確認した。

Lebzelter, Lederer, Cristallo, Hinkle, Straniero, Aringer (2008)
 中間年齢星団 NGC 1846 の AGB 星 II. AGB に沿ったドレッジアップ
 第3ドレッジアップのモデルに制約を加えることを目的として、 AGB に沿っ た進化の間の 12CO 表面組成を調べた。LMC 星団 NGC 1846 の AGB 星サンプルに対し、高分散近赤外分光観測を行った。 C/O 比と12C /13C 比を測定し、進化モデルと比較した。
 星団 AGB に沿った C/O 比と12C/13C 比の進化が初 めて示された。これにより進化モデルの信頼度を調べることが可能となり、特に 第3ドレッジアップの効率を決められる。酸素過多星での C/O 比と12C/13C 比の増加はモデルでよく再現可能で ある。しかし、ふたつの炭素星での低い12C/13C 比は ある程度の追加混合が遅く起きることを示唆する。追加混合は非常に明るい AGB 星に影響し、13C を増加させる一方で、C/O 比を一定に保つ。 C/O はそれまでの混合の累積で決まっているからである。AGB に沿って F 組成が 増加する徴候も発見した。

Kalirai (2008)
初期ー最終質量関係:下限質量での直接拘束
 これまでの初期ー最終質量関係は散開星団中約40の Mi = 2.75 - 7 Mo 星 から導かれていた。ここでは、CFH12K/CHHT 測光器と Keck LRIS 多体分光を用 いた NGC7789 (1.4 Gyr) と NGC6819(2.5 Gyr) 中の 22 白色矮星の観測結果を 報告する。バルマー線を大気モデルに合わせることから、初期ー最終質量関係 の質量下端側に制限を付けた。Mi = 1.6 Mo からは 0.54 Mo WD が生まれる。  非常に古い散開星団 NGC 6791 の新しいデータにより、 Mi = 1.16 Mo (Mf =0.53Mo)まで初期ー最終質量関係を伸ばした。星団中の白色 矮星サンプルはまた幾つかの興味深い系を含む。DB=ヘリウム白色矮星、 磁気白色矮星、DAB =DA+DB の二重縮退か水素/ヘリウム混成大気、 それに等質量DA二重縮退連星系である。

Marigo, Girardi, Bressan, Groenewegen, Silva, Granato (2008)
AGB 星の進化 II. 修正 TP-AGB モデルによる可視から遠赤外等時線
論文IのTP-AGBモデルから理論的等時線のはっきりした特徴 を提示出来るようになった。その際、(1)炭素星に適切なオパシティを適用して 冷たいテールを形成させる。 (2)ホットボトムバーニングを経過する星がHR図上で釣鐘型の系列を成す。 (3)脈動モードの第1励起振動から基本振動への突然の転換。 (4)M- から C- 型に変わる際に起きる突然の重力低下が引き起こす質量放出 率の突然の増大、を保持するよう注意を払った。等時線は約20の測光システム に変換された。マスロス星に対してはダストの影響も考慮された。 その結果、Spitzer, AKARI のような FIR, MIR 観測結果とも比較できるように なった。

Schonberner (2008)
FG Sge, V605 Aql, Sakurai -- 事実とウソ
 TP期=10万年、post-AGB 期=1万年なので、post-AGB 期間中に熱パルス が起きる確率は 0.1 である。この理屈はめちゃくちゃな気がするが。post-AGB 熱パルスボーンアゲイン巨星を生み出す。LTP(Hリッチ星) と VLTP(Hフリー 星) の二種類がある。周囲星雲の診断から熱パルス前の様子を診断できるが、 電離平衡の扱いに注意。

Mermilliod, Mayor, Udry (2008)
散開星団中の赤色巨星 XIV. 1809 星と 166 星団の平均視線速度
シリーズ総決算。視線速度から 891/1309 赤色巨星のメンバーシップ, 288/1309 分光連星確認。視線速度変化があったものが27 星あったが、全て赤色超巨星で あった。距離がはっきりしないので、結果の解釈が難しい。

Mermilliod, Mayor (2007)
散開星団中の赤色巨星 XII. 高齢6星団
6 星団内の 93/123 赤色巨星のメンバーシップを視線速度から確定した。分光 連星が7つ確定。あと11星も連星の疑いが濃い。すると連星率= 19 % で少し 低い。フィールド星の混入が除かれた結果、星団 RGB がはっきり浮かび上がっ てきた。AGB 星も多数確認されたが、 CMD 上位置はモデルより青いか明るい。 赤外超過はどうかな?調べられていないのだろうか?これでないと先行き心配。

Marigo, Girardi (2007)
Evolution of Asymptotic Giant Branch Stars I.
Updated Synthetic TP-AGB Models and Their Basic Calibration
TP-AGB 合成進化モデル。LMC,SMC の炭素星光度関数、マゼラン雲星団のM-,C-型星寿命 でモデルパラメター較正。モデルの特徴は、(i)熱パルス静謐期光度、サイクル間隔、 第3ドレッジアップ等の解析的関係を改訂してモデル化。(ii)可変分子オパシティ。 (iii)脈動力学モデルからマスロス率を求める。(iv)第1倍音から基本振動への転換 の定式化。改訂の結果、(1)化学組成変化(2)脈動モードと周期(3)質量放出 が矛盾なく予言可能になった。

Lebzelter, Wood (2007)
 中間年齢星団 NGC 1846 の AGB 星
 LMC 中間年齢星団 NGC 1846 AGB 星の変光特性をモデルとの比較から調べた。 我々の測光モニターを MACHO アーカイブと合わせて、星団 AGB 中から 22 変 光星を検出し、周期を求めた。星団パラメタ―から大気中の C/O 比を考慮し つつ脈動モデルを作った。酸素リッチ星と炭素リッチ星ではそれぞれに適切な オパシティを使用した。
 NGC 1846 星の P-L 図を質量 1.8 Mo のモデルでフィットした。脈動周期は 炭素星に変化すると増加する。脈動特性で定義された質量から星団年齢を 1.4 Gyr とした。これは星団年齢が AGB 星変光から求められた最初の例である。 炭素星は基本振動と第1倍音振動の混合であることが示された。

Girardi, Marigo (2007)
TP-AGB 期寿命、マゼラン雲星団での C-, M-星計数から。
 マゼラン雲星団での C-, M-星 Mbol < -3.6 のデータを用いて、 夫々の寿命を恒星質量の関数として定めた。1.5 - 2.8 Mo の炭素星の寿命は 2 - 3 Myr である。LMC から SMC へ移ると炭素星寿命ピークが 2 Mo より少し 上から 2 Mo の少し下へとシフトするらしい。
 LMC では M-巨星の寿命もやはり 2 Mo 付近がピークで 4 Myr である。一方 SMC ではその値はずっと短いが、データからの拘束力は弱い。これらの値は TP-AGB の理論モデルに対し有用な拘束となる。文献にある幾つかのモデルでは 炭素星の寿命を短く見積もり過ぎている事を示す。

Suarez, Garcia-Lario, Manchado, Manteiga, Ulla, Pottasch (2006)
IRAS PSC からの post-AGBs と PNe のスペクトルアトラス
 PNe と似た FIR カラーを持つ星の可視スペクトルを調べた。計画スタート は 15 年前で、当時サンプルの大部分は未同定であった。可視スペクトルと ファインディングチャート、それに改良された位置座標を 253 IRAS 天体に与 える。  post-AGBs = 103, 21 = transition sources, 36 = PNe, 38 YSOs, 5 = peculiar stars, 2 = Seufert gals. 49 = 可視天体無しで、post-AGBs では ないか。それらの統計的性質を調べた。

Werner, Herwig
惑星状星雲前駆星の元素組成と AGB 星のシェル燃焼
 スペクトル型=[WC] と PG1159 型で極度に高温、かつ水素欠乏の post-AGB 星の観測的性質をまとめて解説する。その水素欠乏性はおそらく非常に遅れた ヘリウムシェルフラッシュまたは AGB 最終熱パルスが、通常は水素層の下に 隠されている星の内層をさらけ出した結果であろう。  これらの星の光球元素組成は、前駆 AGB 星内の核反応と混合の詳細を明らかにする。 AGB 進化と遅れたヘリウムシェルフラッシュを計算するモデルをまとめ、予想される 元素分布をスペクトル解析の結果と比べる。

Lebzelter, Wood 2005
47 Tuc 内の長周期変光星:マスロスの直接的証拠
 47 Tuc の中に 22 個の新しい変光赤色巨星を発見し、また既知の変光星8個 の周期を定めた。V-Ic ≥ 1.8 の赤色巨星は δV の検出限界で全て変光 星であった。このカラー限界値は log L/Lo = 3.15 に相当し、それは TRGB の 光度 log L/Lo = 3.35 よりかなり下である。 線形非断熱モデルは巨星枝上でのマスロスなしの場合、観測される低振幅脈動星 の PL 関係を再現できない。マスロスを入れると再現可能であるが、赤色巨星枝 とAGBで 0.3 Mo のマスロスが必要である。  大振幅の基本振動するミラ型星に対して、線形脈動周期は観測と合わない。 この問題への回答は、このように小質量の脈動星に対しては非線形モデルの 与える周期は線形モデルよりかなり短いというものである。非線形効果が 脈動の間に構造の再構築がその原因である。理論と観測の双方が RGB を上がり、 AGB 下部に進化した星は初め倍音振動をして、次に基本モードに移ることを示す。

Sandquist, Bolte (2004)
球状星団 M 5 の上部 RGB と AGB の研究
 M5 10' 以内の RGB, AGB 星、8'以内 HB 星のリストを作った。この大きな サンプルから R2 = NAGB/NHB の正確な 値 0.176±0.018 が得られた。この値はモデルと不一致である。
 不一致のの原因は多分 R2 観測値が水平枝形態学に依存するから であろう。M55 はこの効果が表れたもう一つの例であろう。大きな星団において HB, AGB サンプルは球状星団における水平枝星の質量を較正する良い方法である。 上部 RGB 累積光度関数は RGB 先端での星の数の不足を示した。この結果が統計 ゆらぎで生じる可能性は 2 % である。AGB 累積光度関数の勾配はモデルの予想と 一致する。  M5 では、Rclump = 寿命(AGB clump)/寿命(AGB) = 0.42±0.05 であった。この値はモデルとギリギリ不一致である。M5 不安定帯の青い領域、 RR Lyr の第1倍音が起きる、で基本振動星、青い端にある非変光星の数に比べ、 第1倍音星の数が不足している。これは不安定帯における恒星進化が振動に 影響されることを意味しているのかもしれない。

Mullan, MacDonald (2003)
赤色巨星マスロスの開始:進化上の事件との関連
 Stencel, Mullan 1980 はMg II k 輝線輪郭から、HR 図上に "velocity dividing line" = VDL の位置を決定した。VDL の右上にある星は線輪郭が非対 称で、冷たいガス流出を示唆している。VDL 位置は水素燃焼殻が外側に進化して 平均分子量の不連続を通過する時期に一致する。  低質量星ではその結果進化経路に折れ曲がり("kink")が生じる。星団では光度関数の コブ(bump") として現れる。「折れ曲がり」または「コブ」の通過は冷たい星風発現と 関連があるらしい。

Salaris, Cassisi, Weiss (2002)
赤色巨星(レビュー)
 RGB 星の有効温度、カラー、光度、表面組成の予言は個々星に分解できない 天体からの放射光、星団や銀河の CMD, を天体物理的に解釈する際に必要な道具である。 一方、観測との比較は赤色巨星モデルの正確さに対する厳しい試験となる。  銀河系球状星団の赤色巨星モデルの現状を紹介し、モデルに入力する物理量の 不確定性と、モデル計算での物理的仮定の妥当性をを詳細に議論する。観測と理論との 比較には、RGB "bump", TRGB 光度、外層組成を使用する。

Marigo (2002)
Asymptotic Giant Branch Evolution at Varying Surface C/O
Effects of Changes in Molecular Opacithies
解離平衡を解き、H2, H2O, OH, C2, CN, CO に よるオパシティを計算するプログラムを合成 TP-AGB 進化モデルに組み込んだ。モデ ルは、(1)太陽近傍炭素星の有効温度、質量放出率の範囲を上手くカバーする。 (2)超星風の開始が早くなるため、炭素星寿命が極めて短くなる。 (3)炭素放出量の減少。 (4)炭素星近赤外カラーの再現

Hawkins, Mattei, Foster (2001) (2001)
R Cen: ヘリウムシェルフラッシュの最中にあるミラ型星 
 ミラ型変光星 R Cen の 1918 - 2000 AAVSO 可視観測を解析した。支配モー ドの周期は 1951 年の P = 550 d から 2000 年の P = 505 - 510 d まで一貫 して下がり続けている。その間に振幅は V = 5.5 - 11.8 mag から V = 6.3 - 9.1 mag へと 3 mag. も小さくなった。周期低下は He フラッシュ星として 知られている R Hya, R Aql, T UMi と似ているので、R Cen もヘリウムフラッ シュ星ではないか? この周期変化は 2 - 3 Mo の星でヘリウムフラッシュ直後 に期待される光度低下に伴うと看做される。  変光曲線にはおなじみの深い極小と浅い極小が交互に現れる現象が見られ、 二重極大のように見える。過去50年間に、主モードの振幅は 3 mag 小さく なったが、周期約 274 d の第2モードの振幅は変わらない。このために最近では 二重極大の様子がはっきりしなくなってきた。 1930 - 1966 のパワースペクトル から、主振動数 1/548 cycle/day の 8 倍までの倍音が見られる。二重極大変光 曲線の説明としては二つのモードの共鳴がある。

Olivier, Whitelock, Marang (2001)
ダストに埋もれた太陽近傍 AGB 星
 ダストに埋もれた 58 個の AGB 星、内二つは post-AGBs の可能性がある、 を調べた。27 個は C-リッチ、21 個は O-リッチである。これらは、 Jura, Kleinmann (1989) の太陽近傍高マスロス AGB 星(dM/dt > 10-6Mo/yr)に載って いる星である。NIR 地上測光、IRAS、視線速度と流出速度データを合わせてこ れらの星の性質を解析した。NIR 変光振幅は周期と相関し、波長と共に減少す る。P < 1000 日での統計テストからは C-リッチと O-リッチで周期分布に 差があると考える根拠はない。  周期 1000 日を越える炭素星はない。PLR を用いて光度と距離を決めた。 F60 から決めたマスロス率は赤外カラーと周期に相関する。 相関が強いのはマスロス率と k-[12] カラーの関係である。サンプルの運動と スケール高は周期 1000 日以下の星は低主系列質量星であることが判る。 O-リッチで周期が 1000 日を超す3つの星は中間質量星かも知れない。他の 星の平均質量は 1.3 Mo で白色矮星質量は 0.6 Moであろう。高マスロス率期 間は 4 104 年と見積もられ、これらの星が AGB を離れる前に TP を経験するとしても精々1回である。

Lewis (2000)
|b| ≥ 10° OH/IR 星シェルの一過性について I. 基本統計
 アレシボから見える |b| ≥ 10°, |l| < 10° 範囲には F25 ≥ 2 Jy の IRAS カラーで選択され た OH/IR 星が 62 個存在する。そこには 4 つの O-リッチ PPNs も含まれる。その一つ 18095+2704 の膨張年齢 103 年を使って、高銀緯星の 1612 MHz 放射期間を平均 1670 年と較正できた。サンプル内の 118 OH/IR 疑似 天体=OH/IR 星と同じ星周カラーを持つが 1612 MHz メーザーナシ、に対応する OH メーザーナシの PPN はしかし、一つしか存在しない。  もし OH/IR 疑似天体=ミミックが独立に PPN 期を通過するなら 8 ≒ 118 x (4/58) PPNs が想定されるのにである。したがって、疑似天体の大部 分は前駆 OH/IR 星である可能性が高い。超星風期の長さは赤外天体全体の数と PPN の数とから 103 x (58+117)/(4+1) = 3605 ≒ 3700 年である。 一方、反銀河中心方向では OH/IR 星と疑似天体=ミミック に対応すべき O-リッチ PPN が 一つもないという事実に、二つの炭素星と 4 つの C-リッチ PPN があることを 合わせて考えると、反中心方向の OH/IR 星の大部分は AGB 期を C-リッチ PPN として離れることが強く示唆される。これは高銀緯星の超星風は循環的であること を直接に意味する。(全然意味が通らない!)

Wood + MACHO Team (1999)
LMC 赤色巨星の MACHO 観測:ミラ、セミレギュラー、接触連星、半接触連星
 MACHO データベースを使い、LMC バー 0.5°x0.5° 領域内の Mbol -2 等より明るい赤色巨星全ての変光曲線を調べた。全ての星で周期、しばしば 多重、を求めた。はっきりした周期 - 光度系列が M ≤ 2.5 Mo の低質量星 巨星領域で、5本見つかった。周期、光度、周期比を理論モデルと比較した結果、 ミラは基本振動脈動星で、一方、セミレギュラーは第1,2,3倍音、星によ っては基本モードの、振動星であることが明らかになった。ミラとセミレギュ ラーは全て5本の系列の内の3本上に乗る。これ等の星は全て AGB 星である。  第4系列は第1巨星枝(FGB) 上の赤色巨星とコアヘリウム燃焼ループの赤い 端にある中間質量星 (M > 2.5 Mo)を含む。これ等の星は接触型連星である と強く示唆され、 FGB 先端から 1 等以内の星の 0.5 % を占める。第5系列 の変光曲線は半接触型連星でロシュローブ放出流または星風により主星から 不可視の伴星へと質量移送中である。それらは AGB 星の 25 % を占める。 これ等の赤色巨星接触連星または半接触型連星の存在が確認されたら、現在の 連星系進化モデルは大幅な変更を余儀なくされるだろう。

Schroeder, Winters, Arndt, Sedlmayr (1998)
分離シェルを作る短期間質量放出のモデル。
  AGB 末期、超星風が起こる時期の進化モデルを示す。計算は炭素星に対する脈動星風モデルに ダスト形成、輻射輸達、星風加速を組み入れた。
 1.2 Mo 付近、0.2 Mo 巾の領域では、特別に強い間歇的な質量放出が起きた。これは明るい 炭素星の周りで見つかった 分離CO シェルの性質、つまり運動学年齢 1 - 2 × 104  年、数 0.01 Mo, 放出期間数千年以下、とよく合致する。
 他の超星風モデルと違う点は、我々のダストで引き起こされる質量放出は恒星温度に 敏感 ∝ Teff-8 で、かつ最低光度が存在する。これらは、質量放出が 後の方ほど強力になっていくことを意味する。特に我々のモデルでは、AGB 先端最後の 2 - 6 × 104 年の間に、もし光度が log Lc ∼ 3.5 - 3.7 (Teff に依存)に近ければ、 CO シェルが作られ、その時期星の外層質量は 0.2 Mo 以下である。

Bedding, Zijlstra (1998)
ヒッパルコスミラ、セミレギュラー星の周期・光度関係。
 近傍のミラとセミレギュラーで年周視差精度が 20 % 以下、周期が良く定ま っている物を選んで周期光度関係を求めた。 K 等級を用いて、二本のよく決 まった P - L 系列を発見した。その一つは通常のミラ型星 P - L 関係。 もう一本はファクター 1.9 短周期側にずれている。ミラ系列にはミラ型星と セミレギュラーが混在するが、第2系列にはセミレギュラーのみ存在する。  セミレギュラーの幾つかは二重周期を示す。そのそれぞれが二つの関係に乗る。 ホワイトロックの進化経路がデータに合うことが示される。これはセミレギュラー がミラの前駆天体であることを示唆する。二つの系列間の遷移は脈動モードの 遷移かまたは恒星内部構造の変化に対応する。ミラの大振幅脈動は AGB 先端光度 に達するあたりで起こる。

Wood, Sebo (1996)
On the Pulsation Mode of Mira Variables: Evidence from the LMC
 ミラ型変光星の視直径測定はこれらの星が非常に大きくて、基本振動よりは 第1倍音振動と合致することを示している。一方では、ミラ型星の非線形脈動 モデルは、少なくとも M ≤ 2 Mo 星に関しては、観測されるような大きな 速度振幅を達成できるのは基本振動だけであることを示す。ここでは、LMC の LPV が二本の (K, log P) 系列に乗ることを示す。一本は良く知られたミラ 系列で、もう一本はそれと平行する Δlog P = 0.35 の系列である。 ミラ系列上の LPV 振幅は ΔI = [0.1, 3] という大きな散らばりを持つ。 第2系列の振幅は ΔI < 0.5 と小さい。ΔI > 0.5 の 既知 LPV は全て第1系列に乗る。
 LPV の理論モデルは基本振動周期の第1、第2倍音周期に対する比として、 Δlog P = 0.3 - 0.4 を予想し、かつ倍音振幅は基本振動よりも小さな 極限振幅を持つことを予想する。もし、第1系列が基本振動で、第2系列が 倍音ならば、観測結果は自然に理解できる。第2のテストとして、 LMC の 古い巨星枝にある星に対して振動モデルを計算し、計算された周期を観測と 比較した。基本振動脈動星の周期は観測されたミラ型星と一致した。倍音周期 はミラ型星周期には短すぎた。これらの結果はミラ型星が基本振動という説を を強く支持する。

Lepine, Ortiz, Epchtein (1995)
OH/IR 星:近赤外測光とミラ-OH/IR 系列の検討
 約400 OH/IR 星の JHKL'M 測光+IRAS の検討。K-L' に沿って、データが 一次元系列を成す。13 K-L' 区分での平均 OH/IR 星のモデルフィットから、 光度、半径、温度、シェル光学的深さ、マスロス率の系列に沿った変化を調べた。 この系列は質量系列である。

Vassiliadis, Wood (1994)
低-, 中間-質量星の post-AGB 進化
 主系列から AGB 期を経て、惑星状星雲と白色矮星に至るまでの進化の中で post-AGB 進化を示す。質量放出は惑星状星雲中心星の質量放出の観測結果の 文献値および輻射圧駆動の星風モデルとから導いた質量放出の経験式を用いた。 初期質量 0.89, 0.95, 1.0, 1.5, 2.0, 2.5, 3.5, 5.0 Mo、メタル量 0.016, 0.008, 0.004, 0.001 に対するモデル計算を行った。post-AGB 進化系列は 惑星状星雲中心星が AGB からいつ離れるかによって、二つのはっきりした グループに分かれる。
 第1グループはヘリウムシェル燃焼が支配的な時、第2グループは水素シェル 燃焼が支配的な時である。計算した27進化系列中、 17 系列は水素燃焼期、 10 はヘリウム燃焼期に AGB から離れた。低質量モデルはヘリウム燃焼期に離 れることが多く、それはそれ以前の AGB 進化でヘリウムシェルフラッシュ直前 に質量放出が最大となるからである。計算結果を LMC の観測データと較べた。 これ等の計算は惑星状星雲の光度関数を決めるのに有用である。また、楕円星 雲の紫外超過の研究にも役立つ。

Vassiliadis, Wood (1993)
AGB 終端までの質量放出を伴う低-, 中間-質量星の進化
 初期質量 [0.89, 5.0] Mo の星は主系列から AGB 先端まで進化する。Z = 0.016, 0.008, 0.004, 0.001 の星の進化を計算して、銀河系とマゼラン雲の 星の比較をした。計算の新しい点はマスロス率と周期の経験式を AGB での マスロスに組み込んだ点である。計算では超星風が自然に出現するが、それは 最後の 2 - 3 熱パルス周期の間だけである。超星風が働くのは、静謐期(水素 燃焼)の後半で光度が高い時期だけなので、AGB 星の大部分は何回かの超星風 期を経験し、その中間の時期には正常な赤色巨星として振る舞っていたのだろう。 質量とメタル量の関数として、熱パルス期 AGB 星である期間の長さ、可視 AGB 期 の長さ、OH/IR 星のようなダストに覆われた極大脈動期の長さを評価した。
 M ≤ 3 Mo の星に対する AGB 期極大光度はマゼラン雲星団星の観測と良い 一致を示した。より質量の大きな星団星の極大光度に対する現在の観測結果は 暗過ぎる点を議論した。初期-終末質量関係は、したがって、 M < 3 Mo の 星に関しては信頼できる。ただ、その関係が与える白色矮星質量は現在の観測 結果より 0.1 Mo 大きいが。 5 Mo の星ではヘリウムシェルフラッシュが弱い ので、外層質量が 1.5 Mo より大きいと、古典的な核質量・光度関係が与える より明るい進化経路を辿る。このような星は超星風で外層質量が低下すると AGB を降りて行く。最後に、我々の計算はマゼラン雲で見られる多数の低質量 炭素星の出現を再現しなかった。

Bica, Claria, Dottori, Santos, Piatti (1991)
LMC 624 星団の UBV 二色図上のヘリウムフラッシュギャップの検出
 我々は LMC 星団の積分 UBV 測光の数をこれまでの約 4 倍, 全部で 624 個 に増やした。二色図上の星団分布には SWB タイプ IV 付近にギャップが存在 する。ギャップの巾は 0.1 等である。ギャップの縁付近に存在する星団の ターンオフ年齢は赤色巨星相変化の年齢と一致する。  このカラージャンプはヘリウムフラッシュを経験する星が初めて登場する 事に起因する。その結果明るく数の多い赤色巨星枝が形成される現象に対応する。 おまけとして、 Hodge7 = SL735 は古典的な球状星団であることが判った。

Lewis, Eder, Terzian (1990)
IRAS カラーで選択した天体の OH メーザー源 II.
 アレシボでカラーで選んだ 1294 星の 1612 MHz 観測を行い、 86 星で検出、 内新発見が 79, という結果を得た。Edler et al 1988 と合わせると、 -0.7 ≤ (25-12) ≤ 0.25, 0 ≤ δ ≤ 37 (そして多分S25 > 2 Jy)でのバイアスサー ベイが行われた。検出率は (25-12) ≤ -0.5 で大きく低下した。検出天体は 全て F25 ≥ 2 Jy であった。  アレシボサーベイは高銀緯に及ぶので、小質量星の OH メーザーの特徴が 研究可能となった。我々は多くの分離または「化石」シェルを見つけた。 それらの割合から、低質量星では「超星風」時期は 1000 年で終わることが分かった。
低質量星は Ve-(12-25) 図上で系列をなすという発見。 低質量星は光学的に薄いシェルの低速マスロスからカラーと共にVe上昇。 カラーに上限。高質量星は赤い枝が伸びる。OHで新しいマスロス進化を提唱 している。話が分かりにくいのが難。

Olofsson, Carlstrom, Eriksson, Gustafsson, Willson 1990
分離星周シェルを持つ炭素星 - ヘリウムシェルの自然な帰結?
 明るい炭素星 R Scl, U Ant, S Sct, TT Cyg の CO 電波マップを示す。 各星は大きな星周外層を持つ事が分かった。。  少なくとも最後の3星では星周シェルが星から離れており、マスロスが 挿話的であることを示唆する。それがヘリウムシェルフラッシュで引き起こ された可能性を論じる。

Frogel, Mould, Blanco (1990)
マゼラン雲星団の AGB
 LMC 39 星団に属する M-, C-型 AGB 星を同定し、400 星の赤外測光を行った。 SWB 分類に基づいて AGB 星の性質を調べた。SWB I から SWB IV へと移るにつれ M-型星は赤くなって行く。これは年齢が増して行く効果である。明るい炭素星は SWB IV - VI にのみ存在する。炭素星の光度は星団年齢と相関する。M-星から C-星への転換光度は SWB 早期型ほど高い。炭素星が見つかる最も若い星団は 100 Myr である。これは Mi = 3 - 5 Mo に相当する。それより若い星団では M-星 が最大光度星となるが、古典モデルの予想最大光度より低い。対流オーバー シューティングか、または及び、激しいマスロスが明るい炭素星、明るいM-星の 不在の説明に必要かも知れない。中間年齢星団では総光度の 40 % が明るい AGB 星からの寄与である。炭素星光度関数が予想より低い方にずれているので、 AGB 星が貢献する年齢帯はかなり古い方に動く。あと相転移の変な話。

Jones et al. (1990)
Photometry of Variable AFGL Sources
赤外変光観測からAFGL天体が可視ミラとOH/IR天体のギャップを埋めることを示す。

van der Veen, Habing, Geballe (1989b)
AGB から PN への遷移天体:可視、赤外の新しい観測
 AGB から PN への遷移期にある 42 IRAS 点源の可視、赤外観測結果を示す。 それらの IRAS カラーは質量放出 AGB 星と似ているが、λ < 10 μm の SED は全然似ていない。SED により天体を 5 グループに分けた。それらは AGB から PNe への進化経路ではなく、母星質量、 C/O 比、現在の放出率 による違いである。
 (J-H, H-K) 図上の位置からは大量の高温ダストの存在が推定される。モデル (Bedijn 1987) と較べてもそれは確認される。これらの天体は現在も質量放出 を続けており、 1000 年より近い過去に AGB から離れた。  簡単なモデルから、星温度、シェル内側半径、力学年齢を導いた。年齢と星 温度をモデル(Shonberner 1988)と較べ大体合うことが分かった。しかし、 Reimers のマスロス式ではマスロス率は時間と共に減少していくはずだが、観 測は一定または逆に増加傾向を示す。これら約 10-7 Mo/yr の 大きさは AGB での 10-4 Mo/yr に比べるとずっと低いが、それは AGB から PN への変換時期を決定するので重要である。post-AGB マスロス率 は 10-8 - 10-4 Mo/yr であった。

Volk, Kwon (1988)
AGB 星のスペクトル進化
 η = 0.56*Mms の改訂レイ―マーズマスロス式とコアマス光度関係で、 AGB 星の進化を追い、そこにシェルモデルを加えて赤外スペクトルの進化 を追った。結果を IRAS 比較した。超星風は考えない。 Mms = 8 Mo は初めからシリケイト吸収で登場し、12/25/60 図で AGB 帯の 上辺を進む。1.5 Mo だと、放射帯で終始する。

Boothroyd,Sackman (1988d)
Low-Mass Stars IV.Carbon Stars
炭素星形成条件を探った。Z=0.001, α≡(l/H)=1.5, 3 にしてできた。 α≥1.5必要?

Boothroyd,Sackman (1988c)
Low-Mass Stars III. Up to the AGB and through the Final Thermal Pulses
X = 0.759 Y = 0.24 Z = 0.001  M = 1.0, 1.2, 2.0, 3.0 Mo および  X = 0.71 Y = 0.27 Z = 0.02   M = 1.2, 3.0 Mo の進化計算が、レイマースのマスロス、ロスアラモスオパシティ+分子で主系列から 熱パルスまで行われた。マスロスは熱パルス回数を厳しく制限する。Z=0.001星は Minit ≤ 2 Mo のみで炭素星になるために必要な熱パルスを経験する。Minit ≤ 1.5 Mo ではレイマースのマスロス式のみで Weidemann,Koester の Mi - Mf 関係を 再現できる。しかし、それより大きい星では追加マスロスが必要である。最初の 熱パルスは Iben-Renzini の関係から期待されるよりずっと早く起きる。

Boothroyd,Sackman (1988b)
Low-Mass Stars II. The Core-Mass Luminosity Relations
0.8 M ≤ M ≤ 3 M での Mc - L 関係。 高質量側で決めた Mc - L 関係より勾配が緩い。Minit, &alph; 依存性は小さい。 Z と μ 依存性も求めた。間パルス期の光度変化を光度の累積確率分布の形で表現。

Boothroyd,Sackman (1988a)
Low-Mass Stars I. Flash Driven Luminosity and Radius Variations
Z=0.02,0.001, M=1-3Mo 5セットを主系列から熱パルスまでレイマース星風 (η=0.4)を入れて計算(α=1.0)。1 M では パルス間隔の20-30 % はMc - L 関係の半分光度程度に落ちる。半径は α と反比例関係にあり、モデルのTeは低すぎたのでα=1.5-2が適当 であった。

Willems (1988)
炭素星の IRAS LRS IV. 炭素星進化のシナリオ
 3700 個の光学的に同定された炭素星中、明るくて LRS に載った 304 個を 調べてきた。 Willems, de Jong 1986, Willems 1987a, b. 9/304 (グループ I) はシリケイトシェルを持ち、 Willems, de Jong 1986 で扱った。 295/304 個 は SiC 帯を持つ純正炭素星である。90/295 は近赤外測光データがあり、二つの グループに分かれる。グループ II = NIRの Tcolor > 2000 K で不規則変光星. グループ III Tcolor < 1800 K で規則変光星. 各グループの IRAS 二色図上の 位置は別々。
 この結果を解釈するために、ここでは炭素星進化の新しいシナリオを提出する。 我々は、M-型星から炭素星に変換後しばらくの間通常の脈動は停止し、不規則 変光星になると考える。酸素リッチシェルはその間膨張し、薄まって行く。 その結果、星は IRAS 二色図上で大きな弧を描く。不規則変光炭素星による 新しいシェルは最初は低密度である。  その後、炭素星の脈動がミラ型に復帰す ると、再びマスロス率も回復する。モデル計算から、O-リッチミラから、 C- リッチミラに戻るまでの時間は 104 年程度、高マスロスが開始 されてから、可視で炭素星を隠すシェルが形成されるまでの時間は数 10 3 年かかる。従って、炭素星の寿命は数 104 年 で、その半分くらいの期間可視でも良く見えるだろう。
 炭素星になったばかり、グループ I と若いグループ II の炭素星は 13C が豊富な J-タイプであり、古いグループ II と グループ III の炭素星は s-元素が多い。

van der Veen, Habing (1988)
恒星晩期進化を研究する道具としての IRAS 二色図
 IRAS 二色図 を用いて DGE-star = ダストガスエンベロープ星を調べた。 O-リッチ星は二色図上で系列を成し、それは AGB 頂点においてマスロス 率を増加させながら進化する経路を示すと解釈される。ただ、DGE 星全体は ミラ型星、OH/IR 星サンプルより広い範囲に散らばる。OH/IR 星の最後には 変光が小さく、[25-60] が大きい星が存在する。それらは PNe 前駆天体だ ろう。
 熱パルスがマスロスを一時的に抑制し、二色図上経路に弧状の遠足が重なる と考えると、縦の広がりが説明できる。つまり、マスロスに不連続性が存在 することが示された。炭素星系列が高いのは 40 -80 μm 放射率の差が原因 である。

Bedijn (1987)
ミラ型星と OH/IR 星の周りのダストシェル:IRAS と他の赤外観測の解釈
 ダストシェルモデル計算により、ミラ型星、OH/IR 星、非変光 OH/IR 星の IRAS 二色図系列を説明した。フィットの向上のため、(1) ダーティシリケイト モデルの修正、(2)吸収係数の温度依存性、(3)Baud, Habing 1983 の マスロス加速を取り入れた r-3 密度分布、(4)マスロス終焉 期の有限タイムスケールでのマスロス低下を組み込んだ。

Wood, Faulkner (1986)
惑星状星雲中心核の静水平衡進化系列
 惑星状星雲中心星=PNNの進化を計算した。核の性質を次の3つの関数として 調べた:(1)核質量=0.60, 0.70, 0.76, 0.89 Mo. (2) AGB を離れる時の ヘリウムシェルフラッシュサイクルにおける位相 ψ = 等間隔で4種。(3) マスロス。AGB 核質量と PNN 質量には臨界値があり、それ以上では輻射圧が 高水素外層を全て吹き飛ばしてしまう。 Mc > 0.86 Mo となる AGB 星は 高ヘリウム核を持つ惑星状星雲を形成する。そのような中心核はヘリウムを燃 やしながら、PN 期を過ごし、その後冷えて non-DA 白色矮星となる。輻射圧 メカニズムはマゼラン雲の最近のサーベイで明らかになった高光度 AGB 星の 不足を説明する助けになるかも知れない。  それより質量が小さい星で、フラッシュ間期に AGB を離れる場合には、AGB から 惑星状星雲領域に移行するまでの遷移時間は、フラッシュサイクルのどの位相で AGBから離れるかで大きく変動する。 AGB 質量放出は星がフラッシュ後の光度 極小になった時に停止するが、その後の星雲の post-AGB 膨張期の大きな割合は この遷移期間で占められる。  我々の進化計算の結果と観測データとの比較を行った。最近の惑星状星雲中心核 の光度評価には系統的にファクター3程度の過小評価が見られるという強い証拠 がある。惑星状星雲の中心核質量は 0.6 Mo - 0.8 Mo 以上に亘る。惑星状星雲は 主にヘリウムシェルフラッシュの際に放出されるという仮説に対して、観測からは 何とも言えない。

Aaronson, Mould (1985)
マゼラン雲中間年齢星団の伸長したAGB.IV.
 この論文で、Mv < -7, B-V > 0.3 のマゼラン雲星団に含まれる AGB 星の同定と測光が完成した。それらを解析して、
(1)AGB 上端光度は Mbol = -4 から -6 に亘る。
(2)レイマーズマスロスで大体説明可能。
(3)Mi > 1,5 Mo ではより強くする必要がある。
(4)Mi < 2 Mo では炭素星ができる。
(5)Mi > 3 Mo では M-型星で終わる。
(6)Mi-Mf 関係は Weidemann とずれる。

Reid, Mould (1984)
LMC における AGB 星の進化
 LMC 15 deg2 での AGB 星の輻射光度関数を提示する。 明るい AGB 星の欠如がこの測定でも確認された。 標準的なマスロスモデルで仮定されているより激しいマスロス が起きて、あまり明るくなる前に進化が中断されるのではないか。また、 フィールドに渡って、AGB 光度関数の変動が見られた。これは LMC の場所に より星形成史が異なっているためと理解される。

Schonberner (1983)
恒星進化の最終期 II. マスロスとAGB から高温残骸星への遷移
 0.8 Mo と 1.0 Mo AGB 星がマスロスの結果約1000 年で外層を失い、 0.565, 0.533, 0.546 Mo の残骸星になる転移を計算した。残骸星は HR-図を横切り、 惑星状星雲中心星となりえる。その時間変化速度から、惑星状星雲を形成する 下限は Mc = 0.55 Mo, L = 2500 Lo であることが分かった。  計算から、最終熱パルスが進化の途中のどこで起こるか、が重要であることが 分かった。最終熱パルスが FG Sge 型星の急速な進化に関与している可能性が 強い。また最終熱パルスは中心核の付近に高濃度ヘリウムを含むガスが存在す る惑星状星雲の原因かも知れない。

Hodge 1983
マゼラン雲星団の年齢較正
 主に主系列測光に基づき、マゼラン雲 81 星団の年齢を集めた。 AGB 先端光度法は大き過ぎる年齢を与える。マスロスが小さなモデルが悪い。

Jones et al (1983)
OH/IR Masers III. Data Base
OH/IR星データ収集。ΔV-L相関はAGBとSG2グループの並び。

Frogel, Cohen 1982
マゼラン雲星団内の晩期型星種族
 NGC 419, 1651, 1652, 1783, 1841, 1844, 1846, 1978, 2173, 2193, 2209, 2257 の晩期型 48 星の JHK 測光を行った。その結果をマゼラン雲フィールド、 銀河系の炭素星、M-型星の観測結果と比べた。星団炭素星はフィールド炭素星 と似るが、同じ (J-K)o に対する Ko の散布度は星団の方がフィールドの 1/2 - 1/3 と小さい。二色図上でマゼラン雲炭素星は銀河系炭素星と少しずれる。 LMC フィールドには、LMC 星団では見つかっていないほどに、赤くて明るい M-型巨星が存在する。そのような M-星を含む星団は見つかっていない。 一つの星団内では例外が一つあるが、炭素星は M-星より明るい。その境界 光度は SWB クラス=年齢と相関する。NGC 1841 は M3 と似た球状星団と考 えられていたが、TAGB を超える AGB 星を含む点が謎である。

Iben (1982)
低質量 AGB 星の進化 I.
 以前の計算結果= 0.6 Mo より低質量ではドレッジアップが起きない、と 組み合わせてマゼラン雲組成の 0.6, 0.7 Mo AGB 星進化計算を先まで行った。 しかし、13C(α,n)16O 中性子源が小質量コアの 全てで、水素がヘリウム燃焼殻まで入り込まなくても、弱く働く。そして、 22Ne(α,n)25Mg 中性子源は 0.6 Mo 星でも働く。 どちらの中性子源の強度も CNO 組成に比例する。さらに、以前の結果と同じく、 熱パルス後の光度低下の深さと期間は、良く知られているコアマス-光度関係 が AGB 星のコアマスを推定するには不十分であるほどに影響する。  0.6 Mo 進化を白色矮星で最後の熱パルスが起きるまで追い、0.7 Mo 進化は Mc = 0.61 Mo になるところで止めた。それは、無視していた炭素再結合と 化学的拡散が、ミクシングと元素合成反応に無視できない効果を持つからである。 ヘリウム燃焼による高光度の結果生まれたシェル対流が消滅した後、外層対 流が内側に侵入して来る前に、最初のシェル対流から取り残された高炭素領域 の縁に新しい対流シェルが発生する。この新しい対流シェルは炭素が完全には 電離しない温度領域における高炭素物質の高いオパシティの結果生まれた。 それが高炭素物質を高水素層の中に押し込み、ついには外層対流で表面まで 汲み上げられるのである。この新しい対流のもう一つ新しい点は、高炭素だが 水素を含む領域で水素が点火すると、低炭素領域でより大量の 13C や 14N が作られることである。次の熱パルス時に この 13C と 14N 領域がヘリウム燃焼対流に浸食され ると、より大量の中性子が供給される。

Aaronson, Persson, Frogel (1981)
ヴァーゴとコマにおける早期型銀河の赤外カラー等級関係
 早期型銀河のカラー光度関係をバーゴとコマ銀河団で求め、等カラーでの 見かけ等級の差を求めた。意外なことに、 Δm(u-V) = 3.5, Δm(u-K) = 3.0, Δm(V-K) = 2.6 であった。 C-M 関係の勾配でなく、原点が両銀河団で異なるらしい。 局所群のバーゴへの落下を考慮すると、可視カラーでは同じ原点を持つようだ。 従って、同じ (u-V) を持つ銀河を比べたとき、バーゴ の K 等級がコマより 明るい、つまり、コマ銀河は赤い星成分を欠くと解釈できる。したがって、 早期型銀河の C-M 関係には第2パラメターとして、中間年齢星の存在の有無 が必要となる。

Flower 1981
LMC 星団中の超高光度星
 LMC の青い球状星団 NGC 1866 中心部の CMD を得た。 星団の中心付近に超光度星が 11 個集まっている。 これまで 8 星団に 40 超光度星が見つかっている。これらは post-AGB 星ではないか?

Wood, Zarro (1981)
低質量星のヘリウムシェルフラッシュとミラ型星の周期変化
 M = 0.8, 1.0, 2.0, 3.0 Mo で、Mc = 0.53 - 0.9 Mo の星でのヘリウムシ ェルフラッシュを調べた。特に注意したのはフラッシュ後の光度変動である。 というのは、フラッシュサイクル中の表面光度の極大は AGB 進化の終焉を決 めるのに重要だからである。フラッシュ期の光度ピーク LP と 静謐光度極大 LQ の双方はコア質量に比例して増加する。  LP と LQ は、大気対流層は星の内部深くまでは浸透 しないから、星質量に独立である。LP, LQ, パルス間隔、 フラッシュ期に表面光度が静謐期光度を上回る期間の長さが MC に どう依存するかを調べた。表面光度変化の近似式も与えた。ミラ型星、 R Hya, R Aql, W Dra の周期変化をモデルと比較した。その結果、光度と光度変化率の 関係から光度に制約が与えられた。 こうして求まった、R Hya, R Aql の光度を 脈動モデルから求めた光度と比較した。

Mould, Aaronson 1980
マゼラン雲中間年齢球状星団の伸長した巨星枝
 マゼラン雲の赤い球状星団の巨星枝先端近くの星にビジコンスペクトル観測と JHK 測光を行った。サンプルは Mould, Aaronson 1979 の分光サーベイを大きく 拡張した。多くの炭素星といくつかの M-型星が見出された。赤外測光によると、 炭素星の平均輻射等級は LMC で -5.02±0.10 mag, SMC で -4.69± 0.10 mag である。これらの値は、 Mould, Aaronson 1979 の値よりずっと暗い。 Mould, Aaronson 1979 が使用した可視輻射補正は不正確であった。 平均して、LMC星団炭素星はSMC星団炭素星より明るく赤い。個々星に J-K から 決めた有効温度を与えた。Vバンドはブランケッティング効果が大きいため、 V-K から決めた有効温度は信頼できない。非炭素星は掩蔽観測から得た視直径 を用いた有効温度で較正したが、炭素星は Mendoza,Johnson 1965 の Teff-(J-K) 関係を使用している。AGB進化の簡単なモデルから AGB 上端光度を用いて星団 年齢を決めた。この年齢順列は SWB 分類と合う。また、年齢・メタル量相間の ヒントらしきものが得られた。

Flower, Geisler, Hodge, Olszewski 1980
NGC 1868: LMC の低メタル中間年齢星団
 LMC の青い球状星団 NGC 1868 の CMD を得た。その基部は (B-V, Mv) = (+0.70, +1.0) で、 (+1.15, -0.5) まで伸びる。 Mv = 0.0 のブルーループは B-V = +0.50 まで伸びる。 主系列はターンオフ Mv = +0.4 の主系列を示す。 巨星枝は太陽組成でフィットするには青すぎ, Z = 0.001, MTO = 2.0 Mo, t = 0.7 Gyr でフィットした。 星団の中心付近に超光度星が 10 個集まっている。現在のモデル計算の先の 進化段階を示すのではないか?巨大星団にしか見られないことから考えると 非常に短期の進化期であろう。

Ridgway, Joyce, White, Wing (1980)
 晩期型星の有効温度
 月掩蔽観測による角直径を赤外測光と組み合わせて K0 - M6 巨星の有効温度 Teff を求めた。Teff と 色温度、MK スペクトルタイプ、 V-K, I(104)-L との 関係を導いた。  主な結果として、低温側の巨星で Teff が以前よりも高くなった。調べた範囲 内で、最近のモデル大気との一致は良かった。

Mould, Aaronson 1979
マゼラン雲球状星団中の炭素星
 マゼラン雲球状星団の中には、巨星枝先端の B-V が非常に赤いものがある。 それらの星団の巨星枝先端星の分光サーベイを行った。多数の炭素星が発見さ れた。その光度はそれらが上部 AGB 星であることを示す。そのような星ができ るのは、星団が銀河系球状星団よりずっと若い場合にのみ可能である。  星団年齢をファクター2の精度で 30 億年とした。マゼラン雲星団はその カラーにより2種類に分かれるが、赤グループに多数の中間年齢星団が存在 することはマゼラン雲において星団形成が連続的に進行してきたという描像 に合う。最近マゼラン雲のフィールドで多数の炭素星が発見されたことの 帰結も議論する。

Flower, Hodge 1975
LMC の4つの大きな星団の CMDs
 青い球状星団 NGC 2164, 2156, 2159, 2172 の CMD を得た。Iben の恒星 進化モデルと比較して、よく 合う結果を得た。しかし、巨星枝の上に中間カラーで Mv ∼ -5.7 の 超光度星が存在する。  4つの星団の年齢は 50 Myr に集中した。 Blair et al. 1974 が得た、この 領域の小星団の多くがこの年齢を持つことと合わせ、興味深い結果である。

Cannon (1970)
散開星団の赤色巨星
 星の進化計算の予言と古い散開星団中の赤色巨星の観測結果を詳しく比較した。 その目立つ特徴は Mv=+1, B-V=1.0 を中心とした赤い星の固まり(「クランプ」) である。この「クランプ」の絶対等級が一定であるのは低質量赤色巨星 の核が縮退している事を示す観測的証拠である。この「クランプ」は星団距離の 粗い見積もりと赤化評価に使える。

Hayashi, Hoshi(1961)
表面対流層を持つ巨星の外層
 Hayashi Line の論文。

Burbidge, Sandage (1958)
銀河星団 NGC 7789 の色等級図
高齢で巨大な銀河星団 NGC 7789 の色等級図。Sandage の進化観測プログラム 天体の一つらしい。
 (1)(m-M)o=11.36 D=1.87 Kpc.
 (2)ブルーストラグラーの検出。
 (3)巨星枝先端は (1.62, -2.3) [Mv=-1.57の星しか見えない?]
 (4)B-V=1.62 は M2III 相当のカラーだが、分光からは K4 だった。
 (5)CMD 上で巨星枝は M11 巨星枝と交差する。年齢・メタル量効果の実例なら面白い。

Sandage (1957)
恒星進化への観測的アプローチ
 星の進化モデルが正しいと言えるためにはクラス III の光度関数が正しく 再現されなければならない。この問題はK型星光度関数が双頭型になること、 つまり一つは主系列、もう一つはクラス III に対応するあたりでピークを 形成すること、の説明と類似する。基礎方程式は光度関数φg(SP, Mv) で 与えられる。進化の観測的行路は10星団の色等級図から与えられた。方程 式は K0 - K2 星に対して数値的に解かれた。そして、自然に双頭型の光度関 数を導く事が示された。

Salpeter (1955)
光度関数と恒星進化
太陽近傍主系列星の観測光度関数が進化にとってどう重要かを 論じた。恒星は約 10 %の水素を燃やすと主系列から離れる、 また星は過去50億年間一定の割合で生まれ続けてきたという 仮説を立てた。この仮説と観測された光度関数を用いて、星形 成率を恒星質量の関数として導いた。主系列を離れた星の総数 と総質量は白色矮星の総数と暗い星の総質量とに夫々等しい事 が判った。

Sandage (1954)
球状星団の現在の知識とその恒星進化における意義
 M3 の Mpv = +7 までの色等級図が得られた。Mbol = +3.5 のターンオフは 主系列星進化計算から初期 Mbol = +4.5 であることが判る。年齢は 5.1 Gyr である。初期 Mbol = [4.5, 7.0] 区間の主系列光度関数を外挿して、[3.9, 7] 主系列光度関数を作る。  M3 の観測光度関数をこうして作った主系列初期光度関数と対応させて、 モデル計算が不十分な主系列の先の恒星進化を観測的に導いた。M3の赤色先端 星はターンオフからそこまで 1.6 Gyr 掛かったことが判った。



マスロス

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著者 内容

Howell, Campbell, Stello, De Silva (2022)
星震学から求めた 球状星団 M4 内の進化した星からの総マスロス量
 低質量星ではマスロスは赤色巨星枝で最も著しい。様々な恒星進化段階に おける質量の直接観測はマスロスを定量化する最良の方法の一つである。 M4 は星震学データが様々な進化段階に星に対して存在する唯一の星団である。 K2 測光を用いて、M4 内の 75 赤色巨星の星震学質量を定めた。その結果 総マスロス = 0.17±0.01 Mo を得た。これは Reimers のマスロス係数 η = 0.39 に相当する。  また、 EAGB 星に太陽と似た振動を初めて検出した。それら EAGB 星の 平均質量 0.54±0.01 Mo はモデルの予言する質量より著しく低い。 これは水平枝でこれまで予想されていたより大きなマスロスを示唆する。 それでなければ、EAGBs のスケーリング関係に未知の要素が存在するのかも 知れない。RGB サンプルに質量の双峰性を見出した。複種族のためであろう。 しかし、水平枝サンプルは単一値を示す。

Tosi, Dell'Agli, Kamath, Ventura, Van Winckel, Marini (2022)
マゼラン雲 post-AGB 星を用い AGB 期のダスト形成を理解する
 post-AGBs のスペクトルを解析して、AGB 期の間に星の表面組成に起きる変 化を研究する。マゼラン雲中の双峰性 SED を輻射モデルで解析して、星の光度 とダスト成分を調べる。さらに、進化モデルと観測との比較から母星質量、メ タル量を導く。  13 サンプル中 8/13 は炭素星で母星は 1 - 2.5 Moであった。5/13 星は < 1 Mo 星から生じた。それら 5 星はシリケイトダストに覆われている。 ダスト光学的深さと星の光度との間には相関がある。現在 post-AGB 星を 覆っているダストが放出されたのは Teff = 3500 - 4000 K の時期である。

Groenewegen (2022)
WISE が見る極端 AGB 星
 WISE から大質量放出率星のサンプルを得ることを目的に、SiC 吸収帯を 持つ炭素星と、周期が 1000 日以上の O-リッチ星 の計 2000 天体を調べた。 WISE W1, W2 変光曲線を "a sinus curve" でフィットした。他の変光サーベ イの結果もダウンロードしてフィットした。特に赤い 316 天体の SED を作り、 可能なら MIR スペクトルも合わせ、輻射モデルでフィットして質量放出率を 求めた。幾つかの赤外データベースとの位置相関を調べた結果、 1/3 は合って いないと分かった。単に WISE フラッグを使っただけでは誤りを防ぐのは難しい。 非常に明るい星のクローンであり、幾つかでは既知の周期と一致する。  最近の論文に刺激を受け、多数の非変光 OH/IR 星が見つかった。振幅に基づ いた選択の結果、約 750 の LPVが見つかり、内 145 は周期が 1000 日を超す。 その多くは新発見である。極めて赤い炭素星 EROs と同じカラーを持つ天体の SEDs をフィットした結果、C-リッチと O-リッチに分かれた。質量放出炭素星の MIR スペクトルをフィットすると、 Av ≥ 2 mag での星間減光が判る。5 kpc 以内の EROs が完全に同定された。そこからのダスト還流総量が決定された。 LMC では新たに 12 の EROs が見つかった。それらは LMC 炭素星数の 0.15 % 二しか過ぎないが、それらからの質量放出は LMC での還流を 8 % 引き上げた。

Goldman, Boyer, Dalcanton, McDonald, Girardi, Williams, Srnivasan, Gordon (2022)
アンドロメダ銀河の PT-AGB 星数調査とダスト収支への寄与評価
 M31 北西部の高メタル TP-AGB 星のほぼ完全なカタログを示す。 346,623 AGB 星が検出された。内 4802 星は大量のダストを形成していた。 また年齢のわかる星団内に1356 AGB 星が見つかった。星団のいくつかでは メタル量も知られている。  スピッツアー中間帯データを用いて、ダスト 形成 AGB 星の C/M 分類を行った。LMC AGB 星のカラー対マスロス関係を使い、 PHAT 領域にある AGB 星からのダスト放出量を評価した。ダストの 97.8 % はO-リッチである。ダスト寿命を 300 Myr(MW) かずっと長いかの仮定で、 M 31 AGB 星の貢献度は 0.9 - 35.3 % である。これはマゼラン雲での以前 の評価に一致する。

Marigo et al (2021)
ガイア距離のある散開星団中の AGB 星を新しく見直す
 Gaia DR2 と EDR3 を用い、中間および若年銀河系散開星団中の AGB 星を調 べた。TRGB より明るく、星団メンバーシップが確実な 49 AGB 星が見つかった。 内 19 星は TP-AGB 星でそのスペクトル型は 4 Ms, 3 MS/Ss, 12 Cs である。 観測、進化モデル、星周ダスト層の輻射輸達計算を合わせて、各星の初期質量、 光度、マスロス率、コアマス、周期、脈動モードを決めた。  その結果、第3ドレッジアップ、炭素星の初期質量、星風、初期ー最終質量 関係(IFMR) への制限が与えられ、太陽メタルの TP-AGB 進化に光があてられた。 特に、NGC 7789 の MSB75, NGC2660 中の BM IV90 の二つの炭素星は年齢 1.2 - 1.6 Gyr, Mi = 1.2 - 1.6 Mo で似ているが、異常に大きなコアマス Mc = 0.67 - 0.7 Mo を有する。これは Maarigo et al 2020 が最近発見した IFMR の折れ曲がりを支持する結果である。Mc データの説明には二つのシナ リオ=単独星での星風と連星でのブルーストラグラーを介しての相互作用がある。

Krticka, Kubat, Krtickova (2020)
惑星状星雲中心星(CSPN)の星風モデル
 惑星状星雲の高温度中心星からの星風モデルを作った。AGB から WD までの M = 0.569 Mo 星に適用した。メタル量、星風中の塊の影響も調べた。Teff = 104 K でライン駆動型星風が現れ、WD 冷却期 1.04 105 K で消え去ることが分かった。 マスロス率は主に星光度に比例し、したがって、HR 図を水平に動く間ほぼ 一定である。  例外的な変動は、(1)2 104 K 付近でのバイスタ ビリティジャンプでは、鉄電離の変化に伴いマスロスが数分の1に減る、 (2)4 - 5 104 K における付加的極大。一方、遷移期中に星半径 が縮小する結果、最終星風速度は毎秒数百キロメートルから数千キロメートル へと増加する。星風速度はバイスタビリティ期間中にも増加する。

Velilla-Prieto, Cernicharo, Agundez, Fonfria, Quintana-Lacaci, Marcelino, Castro-Carrizo (2019)
IRC+10216 3 mm 観測によるマスロスの性質 
 ALMA と IRAM 30m による SiO,SiS, CS マップは CS で 20", SiS と SiO で 11" の広がりと、強いシェルを示す。マスロスは数百年スケールで変動している。

Dharmawardena+26 (2019)
近傍晩期進化星サーベイI.U Antliae 分離シェルの SCUBA2/JCMT サブミリ検出
 SCUBA2/JCMT 850 μm 撮像で R=40" に放射ピークが見えた。Hershell/PACS の観測と同じ位置である。シェルマスは 2 10-5 Mo で3500 年前。

Bladh (2019)
DARWIN の進化:星風モデルの現在
 AGB 星の低速で濃い風の原因は動的な大気内でのダスト形成と輻射圧との 結合に帰せられる。  DARWIN コードによる計算は、C-リッチ、O-リッチ星の両方で、観測に合う 星風を作ることに成功した。ここに DARWIN モデルの概要を示す。

Groenewegen, Sloan (2018)
局所群 AGBs, RSGs の光度とマスロス率 
 SMC, LMC, Fornax, Carina, Sculptor dSphs 内の AGBs サンプルからの マスロスを調べた。スピッツアー搭載赤外分光器で測った 225 炭素星と 171 O-リッチ星のスペクトルに可視、赤外測光観測を加え、を輻射輸達モデルで フィットした。そこから光度とマスロス率を出した。現存データの解析から 変光周期を求めた。  VMC の K-等級、IRAC 4.5 μm 多期観測、ALLWISE+NEOWISE から非常に 深い赤外天体の 1000 日を超す周期を決めることができた。サンプル星全ての マスロス率と光度を決めた。文献に載っているマスロス率は今回の値とかなり 異なることがあるが、それは適用する光学定数の違い(場合によっては数倍の差) とモデル化の手法が主な原因である。

McDonald, Zijlstra (2016)
AGB 星からの脈動駆動質量放出
 中・低質量星は赤色巨星期に大量の質量を放出する。その強い星風の物理 機構はよく分かっていない。標準モデルでは脈動が大気を押し広げ、そこに 形成されたダストに働く輻射圧が星風を駆動する。この論文ではヒッパルコス カタログから取った近傍の RGB 星を用いて、星風の発生を調べる。我々は 星の脈動周期が 60 日に達すると、ダスト形成が急激に起こることを見出した。 これは、星が第1倍音脈動モードへと転移する時期と一致する。 星のエネルギースペクトルは質量放出率がこの時に急激に増大することを 示す。それは、彩層駆動星風の約10倍に達する。  ダスト放射は周期と振幅の 双方に強く相関する。これは脈動が放出の引き金で、放出率を決定することを 示唆する。ダスト放射は光度とあまり相関が無く、ダストに働く輻射圧は 質量放出率にあまり関係ないことを示す。
(周期光度関係と矛盾? )
RGB 星は一般にはダスト形成を行わ ないようだが、 AGB 星では普通に見られるようで、TRGB より明るい AGB 星 では普遍的に見られる。我々は強い星風の発生は質量放出に段差を生み、 それは脈動で引き起こされると結論する。放出率が大きく変わる第2の遷移は 基本振動が始まる周期が 300 日の付近である。

Eriksson, Nowotny, Hofner, Aringer, Wachter (2014)
炭素星のモデル測光 IV. 動的大気と星風の大規模モデルグリッド  
 540 例の太陽メタル量炭素星の色々な振幅の脈動大気モデルを提供する。 モデルを観測と比較した結果、マスロス率対(J-K), K 等級対(J-K) の 関係に良い一致を得た。  不一致なサンプルの原因として、炭素超過が大きい、ダストオパシティに 小粒子極限を採用など、モデル仮定などが考えられる。将来微調整はある だろうが、マスロス率などの大きな変更はないだろう。

Origlia, Ferraro, Fabbri, Fusi Pecci, Dalessandro, Rich, Valenti (2014)
銀河系球状星団 Sputzer/IRAS サーベイによる種族II 巨星の観測的質量放出率  
 Spitzer IR Array Camera = IRAC により 15 GCs の 3.6 - 8 μm 測光を 行った。大部分の星は典型的な低温度星カラーを示したが、いくつかの星では MIR 超過が検出された。それらの星のマスロス率とタイムスケールを測った。 それらから観測的マスロス則を導いた。マスロスは一時的である。  ただし、 マスロス期の比率は光度と共に増加する。マスロス率はメタル量が下がると 上昇するが、マスロス期の比率はメタル量と共に上がる。結果として、総 マスロス量はメタル量と共に、 0.1 Mo/{Fe/H] 程度で緩やかに上昇する。 種族II の AGB 星に関しては総マスロス量 は 0.1 Mo 以下であり、メタル 量にあまり依らない。

Jones, Kemper, Srinivasan, McDonald, Sloan, Zijlstra (2014)
LMC O-リッチ進化した星のアルミナ量  
 O-リッチ AGBs の星周外層中ダストの成分を決めるために、ダスト成分、 マスロス率、シェル内径、星パラメターのグリッド上で MODUST 輻射輸達モデ ルを作った。モデルのカラーを SAGEーSpec LMC サンプルと比較して、良い一 致を得た。5 - 37 &mu:m Spitzer IRS スペクトルと 可視 - MIR の測光が与 えられた 37 O-リッチ AGB 星をフィットした。  モデルフィットから得たマスロス率は 8 10-8 - 5 10-6 Mo/yr である。観測スペクトルに合うダスト組成は 非晶質シリケイトが主成分 で、それに非晶質アルミナ、金属鉄が加わる。AKARI の[11-15]-[3.2-7] 二色図 からアルミナの割合を決めることも出来る。

Javadi, van Loon, Khosroshahi, Mirtorabi (2013)
 UKIRT M33 モニタリングプロジェクト III. 中心 1 kpc 平方の星風フィードバック
 この第3論文では、脈動 AGBs によるマスロス率を測る。その為、UKIRT NIR 観測に,Spitzer MIR 観測を組み合わせる。低質量星はその初期質量の 大部分を星風により失う。しかし、スーパー AGBs や RSGs でさえも質量の 40 % を星風によって失う。  ダスト還流の 3/4 以上は酸素系である。マス還流率の 2 D マップを作った。 それは動径に沿った低下を示すが、大質量星の集団があるところでは局所的 盛り上がりを示す。マスロス率は, 中心キロパーセク領域で 0.006 Mo yr-1 kpc-2 である。ここには、爆発的、例えば超新星、 のような現象も考慮した。これを現在の星形成率 0.03 Mo yr-1 kpc-2 と比べると、現在の星形成を維持するには、外側円盤からの ガス流入か、銀河間ガスの降着が必要である。

McDonald,Zijstra,Rajoelimanana,Johnson (2013)
あり得ない NGC 4372 V1, V2 : [Fe/H]=-2.2 星団の拡張 AGB
球状星団 NGC 4372 の AGB は予想外の明るさにまで伸びているらしい。固有 運動と空間運動とから、伸びたAGB が実際に星団のものであることを示した。また、 その先端に位置する低温 2600 K, 明るい 8000 Lo, でダストに 覆われた O リッチな二つの LPV V1, V2 のスペクトルを示した。特にそれらの視線速度は V1, V2 はおそらく星団メンバーである。
 この原因はおそらく脈動の欠落と高いガス/ダスト比のためマスロスが阻害され、 マスロスとダスト形成が遅れたからであろう。これは、M15 のWD Pease 1 の大きな質量 を説明するために以前考えられた説明だが今まで実証されなかった。これが正しければ、 星からの質量還流、炭素星、超新星の形成に大きな意味を持つ。

Groenewegen (2012)
 近傍赤色巨星の赤外超過とレイマース則
 ヒッパルコスサンプルの中から近傍 RGB 星を選び、その赤外超過とマスロスを調べた。 54 個の RGB 星の SED を DUSTY でフィットした。中心星は MARCS 大気モデルで合わせた。 第1ステップでは有効温度に基づいて最適 MARCS モデルを選んだ。第2ステップでは 最適のダスト光学的深さを DUSTY のフィットから決めた。
  54 個の RGB 星の内 23 星はかなりの量の赤外超過を示した。最も明るい L = 1860 Lo 星はマスロスを行っている最中であった。一方 L < 262 Lo の 5 星は どれもマスロスを示さなかった。265 Lo < L < 1500 Lo にある 48 星中 22 星は マスロスを行っている。間歇的なマスロス仮説を支持する結果である。  600 Lo より暗い星でマスロスが見つかったのはこれが初めてである。Vexp = 10 km/s, ガス/ダスト = 0.005 を仮定してマスロス率を見積もった。全天体に 1.1 Mo を 仮定しての結果は、
     log(dM/dt) = (1.4±0.4)log L + (-13.2±1.2)
     log(dM/dt) = (0.9±0.3)log (L*R/M) + (-13.4±1.3)
 球状星団の明るい星にも同じ操作を施した。その結果 SED フィットから出した マスロスと彩層活動度から導いたマスロス率の間によい一致が見られた。この彩層 輝線からのマスロス率を組み合わせると、
     log(dM/dt) = (1.0±0.3)log L + (-12.0±0.9)
     log(dM/dt) = (0.6±0.2)log (L*R/M) + (-11.9±0.9)
となる。メタル依存性は見られなかった。  この式を NGC 6791 で最近得られたマスロス率と比べた。スケーリングファクタ10が 必要だった。

Bladh (2012)
低温で明るい巨星の星風駆動ダスト種の探究 I.M-型 AGBs での選択基準と動力学モデル 
 AGBs からの質量放出は2段階の過程:(1)脈動衝撃波による大気の浮揚 と(2)形成されたダストの輻射加速、を経ると考えられる。ダストは衝突を 通して周囲のガスに運動量を転移し、ガス流出を起動する。浮揚する大気は ダスト形成温度まで冷える距離に達する必要がある。この浮揚距離は衝撃波 から大気に散逸される運動エネルギーで制限を受ける。どのようなダスト種が この条件を満たすかを調べるため、詳細な輻射流体力学にパラメター化した ダストを組み込んで、モデル計算を行った。
 ダスト凝結温度が低く、近赤外吸収係数が波長と共に急激に低下するという 組合わせだと、形成距離が星表面から遠すぎて星風を起動できない。純粋鉄 と鉄シリケイトは NIR 光学性質が星風起動には適さず、形成距離が遠すぎる。 TiO2 は Ti 量が少なすぎる。 SiO2 と Si2O3 は光学的性質と化学的性質に不明確な点が あり、一層の研究が必要である。最有力候補は粒径 0.1 - 1 μm の Mg2SiO4 である。その光散乱は輻射加速に大きく 寄与する。

Momany + 7 (2012)
 47 Tuc の VLT/VISIR 中間赤外像
 種族 II 赤色巨星の質量放出が開始される光度に関し論争が継続中である。VLT/VISIR による 47 Tuc の 8.6 μm 撮像を報告する。この天体は問題の中心として、多くの Spitzer 観測が行われてきた。VISIR 高分解能像は可視のハッブル画像ときれいな対応が付く。 特に、中心 1.15 arcmin 核部では巨星枝上部 3 等のブレンドなしのクリーンなデータが 得られた。
 我々の色等級図は暗い赤色巨星に赤外超過を認めなかった。近赤外と中間赤外 を組み合わせたグラフにもダストが存在する巨星の存在はなかった。ダスト RGB, AGB は長周期変光星に限られる。特に、RGB の場合ダスト星は先端から 1 等以内に限られる。 これは光度では 1000 Lo になり、以前からマスロス開始期として提唱されてきた値である。 この光度からは理論的等時線と実際の巨星カラーの間に差異が生じてくる。

Leitner, Kravtsov (2011)
 高燃料効率銀河:星からのマスロスで星形成を維持する
 銀河の後期進化の間進行する星形成を持続させる上で星からの継続性マスロス の役割を調べた。恒星質量 Ms 銀河に対して、観測される Ms-星形成率関係の 進化から導かれる星形成史に様々な初期質量関数を仮定して、標準的恒星進化 モデルのカスロスを合わせて用いて、全星種族からの総マスロスを計算した。  我々のモデル恒星からのマスロスによる再生ガスは現在の晩期型銀河で進行 中の星形成を維持するに十分である。星からのマスロスはしたがって、観測か ら導かれる比較的低レベルのガス落下率と円盤銀河で見られるかなり速い星形 成との間の対立を取り除くものである。冷たいガスの落下率が評価されている 銀河に対しては、星形成によるガス消費率と落下率との差を星からのマスロス が埋めることを直接に示す。

Boyer + 16 (2010)
 47 Tuc 赤色巨星枝でダストは形成されているのか?
 Spitzer の SAGE-SMC プログラムの IRAC 観測から 47 Tuc のダスト生成を調べた。 以前の研究でこの星団の星から色超過が検出された。それらのデータは星の混入や画像の 人工的効果の影響を受けており、 RGB 先端から1等以上暗い星ではダストが形成されて いないと結論した。ダストがあるように見える唯一の星は変光星で、星団中最も明るく、 最も低温であった。

Izumiura et al. (2010)
あかりによる炭素星 U Hya の広がったダストシェル
あかりのFIS、65, 90, 140, 160 μm 画像の解析の結果、内側半径 104", Halh-mass thickness = 6" - 23", であかり分解能よりも薄い。 可視外側半径、Spitzer 外側半径はあかりの外側半径より大きく出たが、これは シェル内の密度分布が外側に向かって大きくなっていることを示唆している。 シェル中のダスト質量は(0.9-1.4)×10-4(25/χ) M である。

Ita et al 2010
あかりが見た近傍星種族
 あかりの 9, 18 μm 全天サーベイ天体をヒッパルコス、2MASS と 結合して色等級図を作った。この図を Spitzer の LMC カタログにおける [24] - (8-24) 色等級図と比べ、低マスロス星の領域を LMC で定めた。

Matsuura et al (2009)
 LMC 全体でのガスとダストの収支
 LMC 星間物質のガスとダストの収支を調べた。Spitzer 中間赤外観測を用い、 LMC 全体で星間物質にガスとダストが注入される割合を調べた。AGB 炭素星候  補からの中高質量放出量は 8.5 - 21 10-3 Mo/yr である。酸素 AGB 星も含めると 27 10-3 Mo/yr となる。この数字は SFR と整合する。 LMC SNe からのガス注入は 20 - 40 10-3 Mo/yr である。  現在、LMC の SFR は AGBs と SNe からのガス還流を上回っている。現在の SFR は既  存ガス量に依存している。これは、外部からのガス降着が無ければ、星間ガスが 枯渇するにつれて SFR は低下することを意味する。高z銀河で見出されている 不明ダスト量問題は LMC にも存在する。ダスト寿命=0.4 - 0.8 Gyr 内に AGBs, SNe から蓄積されるダスト量は現在星間ダスト量より大幅に少ない。他のダスト源 が必要で、多分 SFRs に関連するであろう。

Hofner (2008)

ミクロン大ダストが駆動するM-型 AGB 星からの星風
 非灰色効果がシリケイトグレインをFe フリーにするという結論を受け入れ、 ミクロンサイズの Fe-フリーシリケイトが星風を駆動するかどうかを調べた。 ダストの単純な光学評価と詳細な動力学計算に基づいて、Fe-フリーシリケイト に掛かる輻射圧が十分大きいことを確かめた。原因は散乱である。  質量放出率、星風速度は観測値と良い一致を示す。粒子凝結と星風加速との間 に、自己調整フィードバックが働き、グレイン成長は直径 1 μm で自然に止ま る。星風駆動に最も効果的なグレイン径は 1 μm 付近のかなり狭い幅である。 これは AGB 星フラックスピークの位置で決まる値で、星間ダストのそれと近い。

Kalirai (2008)
初期ー最終質量関係:下限質量での直接拘束
 これまでの初期ー最終質量関係は散開星団中約40の Mi = 2.75 - 7 Mo 星 から導かれていた。ここでは、CFH12K/CHHT 測光器と Keck LRIS 多体分光を用 いた NGC7789 (1.4 Gyr) と NGC6819(2.5 Gyr) 中の 22 白色矮星の観測結果を 報告する。バルマー線を大気モデルに合わせることから、初期ー最終質量関係 の質量下端側に制限を付けた。Mi = 1.6 Mo からは 0.54 Mo WD が生まれる。  非常に古い散開星団 NGC 6791 の新しいデータにより、 Mi = 1.16 Mo (Mf =0.53Mo)まで初期ー最終質量関係を伸ばした。星団中の白色 矮星サンプルはまた幾つかの興味深い系を含む。DB=ヘリウム白色矮星、 磁気白色矮星、DAB =DA+DB の二重縮退か水素/ヘリウム混成大気、 それに等質量DA二重縮退連星系である。

Origlia, Rood, Fabbri, Ferraro, Pecci, Rich (2007)
 種族 II 巨星の経験的質量放出則
 Spitzer IRAC により 47 Tuc の中間赤外測光を行った。約 100 の星で中間赤外の超過が 観測された。このマスロスは水平枝まで延びている。質量放出は一時的で、各光度のある割合 でのみ生じる。簡単なモデルでマスロス率を見積もった。また質量放出則を種族II の星に対して 導いた。我々のマスロス則はレイマース則に比べると著しく平坦である。ここで述べた結果は 17個の球状星団の Spitzer サーベイの最初のものである。

Marigo, Girardi (2007)
 AGB 星の進化I.
Ostlie,Cox 1986 の線形振動成長率の結果を使い、第1倍音から基本振動への臨界 光度を決める。各振動に対し、Bowen,Willson 1991 の脈動星風モデルの結果を 適用して質量放出率を求めている。超星風は高光度、低重力の結果自然に発生する。 進化経路から、 Mi - Mf 関係も出ている。

Castro-Carrizo,Quintana-Lacaci,Bujarrabal,Alcolea (2007)
 黄色ハイパー巨星 IRC+10420 と AFGL 2343 の秒分解能 12CO マップ
 IRC+10420 と AFGL2343 の 12CO J=2-1, 1-0 マップ を作った。共に大体円形である。IRC+10420 シェルは明るい中心領域の周りに 広がったハローを示す。中心は輝度の極小を示す。  AFGL2343 のシェルは分離型である。シェルは 35 km/s で膨張している。これ は AGB 星の典型値の 2 - 3 倍の速度である。IRC+10420 の最内側部温度は 200 K という高温であった。一方 AFGL2343 ではより濃くて冷たい T=30K ガス が検出された。

Jackson, Skillman, Gherz, Polomski, Woodward (2007)
局所群矮小銀河内 AGB 星の スピッツアー IRAC センサスI: WLM
 LGGS = Local Group Galaxy Surbey の Spitzer 3.6, 4.5 μm と可視観測 データから WLM の分を示す。観測は AGB 星の全てをカバーしている。 可視の限界等級は TRGB より 3 等低いにも拘わ らず、赤外で検出された AGB 星の 39 % は可視で検出されなかった。さらに、 赤外検出天体の 4 % が 可視で誤同定された。
 我々の結果を可視狭帯炭素星サーベイの結果と比べた。それらは全 AGB 星の 18 % しか検出していないことが判った。 AGB 星マスロスは総計で (0.7 - 2.4) 10-3 Mo/yr となった。AGBs と RSGs のマスロス率と Mbol の分布は LMC, SMC とよく似ている。
(マスロスは Groenewegen05 使用だが、 詳しく書いていない.赤外 AGB 星の大部分は C/M 分類がハッキリしないままである。 そのため結論はあいまいで物足りない。)

Valcheva, Ivanov, Ovcharov, Nedialkov (2007)
WLM の炭素星とC/M 比
 マゼラン型矮小不規則 WLM 銀河(Wolf-Lundmark-Melotte) の豊富な炭素星 種族を同定した。深い NIR 観測でそれらの測光的性質を調べた。C/M = 0.56 である。  WLM 内の AGBs 分布は数百パーセクの大きさの恒星集団が二つある可能性がある。 WLM の HI 分布から N(HI)/E(B-V) = 60 1021 cm-2 mag-1 である。セファイド4つから出した距離指標 (m-M)o = 24.84 である。円盤の J バンドスケール長は 0.75 kpc である。
(青い方に制限は掛けていないので、 TRGB の上の星はOB 星から M6 まで皆 M に含まれる分類法。RGBより赤い方に すれば合理性はある。進化経路はどう重なるのか?)

Werner, Herwig
惑星状星雲前駆星の元素組成と AGB 星のシェル燃焼
 スペクトル型=[WC] と PG1159 型で極度に高温、かつ水素欠乏の post-AGB 星の観測的性質をまとめて解説する。その水素欠乏性はおそらく非常に遅れた ヘリウムシェルフラッシュまたは AGB 最終熱パルスが、通常は水素層の下に 隠されている星の内層をさらけ出した結果であろう。  これらの星の光球元素組成は、前駆 AGB 星内の核反応と混合の詳細を明らかにする。 AGB 進化と遅れたヘリウムシェルフラッシュを計算するモデルをまとめ、予想される 元素分布をスペクトル解析の結果と比べる。

Blum + 沢山 2006
LMC のスピツアーサーベイ(SAGE) II
進化した星と赤外 CMD
SAGE IRAC, MIPS に 2MASS を組み合わせ、CMD 分析を行った。TRGB の上に約 3万星を検出した。内訳は、O-リッチ AGBs = 17,500、C-リッチ AGBs = 7000、 晩期型超巨星(または明るい O-リッチ星)= 1200、極端 AGB 星 = 1200 である。 これらの 10 % にダストシェルがついている。 MIPS により IRAC では赤外超過が検出されてこなかった、比較的暗い O-リッチ AGB 星に赤外超過が検出された。

Groenewegen 2006
AGB, post-AGB 星の MIR, FIR カラー
最近の宇宙空間ミッションの結果局所群銀河内の AGB 星を個々に観測できる ようになった。Spitzer, あかり、Bessell V, I, 2MASS J, H, K のバンド フィルターを用いたマスロス AGB, post-AGB 星のカラーと観測カラーを比較 する。モデルは C-, O-リッチ組成に対し、様々な Teff, τ, L = 3000 Lo で計算された。変換はマスロス ∝ V L1/2 Z -1 で行う。

Woitke (2006)
 酸素過多 AGB 星のダストに働く輻射圧は弱すぎる
 AGB 星からの大規模星風はダスト駆動で脈動がそれを増幅していると考えら れている。しかし、振動数毎の輻射輸達式を組み入れた力学モデルで観測され る大きさの質量放出を説明できたのは炭素星のみである。このレターでは、酸 素過多 AGB 星に対しての同様なモデルの報告である。
 モデルでは Mg2SiO4, SiO2, Al2O3, TiO2, Fe の 非一様混合ダストダストの核形成、成長、蒸発を時間依存で扱う。 波長毎のモンテカルロ輻射輸達を組み込んだ酸素過多ダスト駆動力学モデルの 計算では、 R = 1.5 - 2 R でガス温度が 700 - 900 K と冷たく、核形成を助成する。ダスト温度は組成により大きく変わり、温度 差にして 1000 K にまで達する。動力学モデルでは二つのダスト層が形成され た。星表面近く R ≥ 1.5 R ではほぼ純粋なガラス Al2O3 粒子が、それより遠くではもっと吸収の強い Fe の少ない Mg-Fe シリケイトが出来る。
 固体 Fe と Fe の多いシリケイト だけが星からの近赤外光を効果的に吸収できるダストである。従って、それら は星風駆動機構の中心要因であり、かつガス温度の調節機構ともなっている。 少量の Fe しかグレイン内に組み込めない。というのはそうでないとダスト 温度が高くなる過ぎるからである。こうして、結果として、質量放出率がほぼ ゼロで、ダストシェルもないモデルが誕生した。
 質量放出率が上がるに連れ、出現するダストが Al2O3 &rarrow; 低 Fe の Mg-Fe シリケイトになるという観測事実は我々のモデルと 一致する。 Al2O3 は星の広がった外層大気中、 星風加速領域の下か、あるいは星風なしの星に存在する。 Mg-Fe シリケイト はもっと外側で形成され、その量は放出率に依存する。酸素過多 AGB 星の 星風駆動機構は依然として謎である。

Suh (2005)
LMOA = 低マスロス O-リッチ AGB 星のダストシェルモデル
 ISO などの観測から得た LMOA 星の SED を調べた 通常のシェルモデルとの比較では、ダスト形成温度は 1000 K よりずっと低い 必要があることが分かった。  しかし、超星風による密度超過領域を繰り入れると、高いダスト家星温度で 観測 SED にフィット可能となる。

van Loon, Marshall, Zijlstra (2005)
マゼラン雲星団のダスト星
 VLT/ESO で行ったマゼラン雲星団の L'(3.8μm) 観測に、J,H,Ks(ESO, 2MASS ), MIR 測光(TIMM2at ESO, ISOCAM on ISO, IRAS, MSX) を加え、post-MS 星か らのマスロスを調べた。中間年齢星団の AGB 炭素星は、母星質量 1.3 - 5 Mo である。若い星団には星周ダスト層を持つ赤色超巨星が見いだされ、母星質量 は 13 - 20 Mo である。星団 IR 星の SED をモデルフィットして、輻射光度と マスロス率を決めた。赤外天体は星団内で最も明るい星であり、その光度は初 期質量とメタル量から予想される値と一致する。赤外星のマスロス率は数 10^-6 から 10--4 Mo/yr に渡り、その広がりは主に進化効果であり、母星質量 やメタル量の依存性は弱い。 1.3 - 3 Mo 星からの総マスロス量の約半分は超 星風期= 10^5 年程度、に放出される。分離シェルを持つ星は最高のマスロス量

議論の数字が粗いので結論の数字に要注意

Lebzelter, Wood 2005
47 Tuc 内の長周期変光星:マスロスの直接的証拠
 47 Tuc の中に 22 個の新しい変光赤色巨星を発見し、また既知の変光星8個 の周期を定めた。V-Ic ≥ 1.8 の赤色巨星は δV の検出限界で全て変光 星であった。このカラー限界値は log L/Lo = 3.15 に相当し、それは TRGB の 光度 log L/Lo = 3.35 よりかなり下である。 線形非断熱モデルは巨星枝上でのマスロスなしの場合、観測される低振幅脈動星 の PL 関係を再現できない。マスロスを入れると再現可能であるが、赤色巨星枝 とAGBで 0.3 Mo のマスロスが必要である。  大振幅の基本振動するミラ型星に対して、線形脈動周期は観測と合わない。 この問題への回答は、このように小質量の脈動星に対しては非線形モデルの 与える周期は線形モデルよりかなり短いというものである。非線形効果が 脈動の間に構造の再構築がその原因である。理論と観測の双方が RGB を上がり、 AGB 下部に進化した星は初め倍音振動をして、次に基本モードに移ることを示す。

Schultheis, Glass, Cioni (2004)

NGC 6522, LMC, SMC 領域での晩期型変光星
 2MASS から NGC 6522, LMC, SMC 3領域の完全サンプルを抽出し、MACHO, ISO データと同定した。各 MK ヒストグラム上で、TRGB の上で数が減る。 TRGB 光度はメタル量と共に増大する。また、与えられた MK に対す る (J-K)o もメタル量と共に大きくなる。これらのデータを Ferraro et al 2000 の銀河系球状星団と比較した。(J-H, H-K) 二色図上、低メタル星ほど多くの星が H-K 大になる傾向が著しい。これは、炭素星の割合が増加することによる。 全ての領域で主な変光星は、周期数十日の短周期変光星、長周期大振幅のミラ的 変光星、二重周期星であった。  低メタルになると、変光星の割合が小さくなり、与えられた振幅に対する最短 周期は長くなる。各領域で、 K - log P 図上の様々な傾向が見られた。LMC では 各領域間は類似しているがバルジ領域は異なる。バルジ領域では、K - log P 図 の "A" 系列は MK,0Tip をほとんど越えない。他のグル ープも LMC の対応系列と較べ途中で止まっている。マゼラン雲では 200 - 300 日周期の星が多数あり、 "C" 系列に従う。  ISOCAM で検出された MIR サンプルは MK < -7 星に対しては 完全である。様々な TCD, CMD には低メタルになると炭素星が増加する効果が 反映されている。ミラ型星の 等級・周期関係は少なくとも 7 μm までは 存在する。長周期変光星と二重周期 SRV からの質量放出はメタル量の差に 拘わらず、領域間で類似している。

Gautschy-Loidl, Hofner, Jorgensen, Hron (2004)
AGB 星の動力学モデル IV. 炭素星合成スペクトルと観測の比較
 論文シリーズIIIで紹介した動流体力学と周波数依存輻射方程式を結合した 動的大気モデルに基づいて、 C-AGB モデルスペクトルを計算した。分子 CO, CH, CN, C2, CS, HCN, C2H2, C3 を大気構造と合成スペクトルの計算に含めた。  0.5 - 25 μm における合成スペクトルと観測スペクトル、カラーとの比 較を、TX Psc, WZ Cas, V460 Cyg, T Lyr, S Cep について行った。 変光の様々な位相で集められた観測結果と、単位相でのモデルスペクトルとの 一致は 0.5 - 5 μm では良い。より長波長では我々のマスロスモデルは 初めて、これまでの疑問=なぜ全ての静水大気モデルとマスロス無しの流体 動力学モデルが予想していた 14 μm 付近の強い吸収帯が観測では存在し ないか、の説明に成功した。
("molsphere に反対" )

Mullan, MacDonald (2003)
赤色巨星マスロスの開始:進化上の事件との関連
 Stencel, Mullan 1980 はMg II k 輝線輪郭から、HR 図上に "velocity dividing line" = VDL の位置を決定した。VDL の右上にある星は線輪郭が非対 称で、冷たいガス流出を示唆している。VDL 位置は水素燃焼殻が外側に進化して 平均分子量の不連続を通過する時期に一致する。  低質量星ではその結果進化経路に折れ曲がり("kink")が生じる。星団では光度関数の コブ(bump") として現れる。「折れ曲がり」または「コブ」の通過は冷たい星風発現と 関連があるらしい。

Hofner, Gautschy-Loidl, Aringer, Jorgensen (2003)
AGB 星の動力学モデル大気 III. 波長依存輻射方程式の効果
 動力学方程式と輻射方程式を合体して、AGB 星大気の新しいモデルを作った。 脈動による衝撃波、星風も組み込めた。炭素星の場合、モデルは自己整合なダ スト形成の時間変化も表された。  周波数依存輻射方程式の効果を灰色輻射方程式の結果と比較して調べた。非 灰色方程式は適正な密度分布を得るに重要であることが判った。合成スペク トルも示す。

Alard + ISOGAL Collaboration + MACHO Collaboration (2001)
バーデ窓の質量放出セミレギュラー変光星 
 ISOGAL (7, 15 μm)と MACHO (V, R) の天体同定からセミレギュラー変光 星の一般的性質を決めた。バーデの窓で約 300 のセミレギュラー星を集めた。 これらは主に M-型巨星で、AGB に沿って進化している。それらの log P - Mbol 関係を調べた。ISOGAL から質量放出率は 1 10-8 - 5 10-7 Mo/yr となった。
 質量放出率は光度と周期に依存する。いくつかのセミレギュラー星は短周期 ミラと同程度の質量放出を示すが、ミラ程の振幅は持たない。周期 70 日は 質量放出の必要条件であるが、十分条件ではない。放出率を dM/dt ∝ TαLβ で近似すると、 α = -8.80, β = +1.74 である。これはモデル予想と合う。 もし LMC の極端に大きな質量放出星を加え、 T = 一定とすると、 dM/dt ∝ L2.7 となる。この式は [10-8, 10-4] Mo/yr にあてはまる。

Olivier, Whitelock, Marang (2001)
ダストに埋もれた太陽近傍 AGB 星
 ダストに埋もれた 58 個の AGB 星、内二つは post-AGBs の可能性がある、 を調べた。27 個は C-リッチ、21 個は O-リッチである。これらは、 Jura, Kleinmann (1989) の太陽近傍高マスロス AGB 星(dM/dt > 10-6Mo/yr)に載って いる星である。NIR 地上測光、IRAS、視線速度と流出速度データを合わせてこ れらの星の性質を解析した。NIR 変光振幅は周期と相関し、波長と共に減少す る。P < 1000 日での統計テストからは C-リッチと O-リッチで周期分布に 差があると考える根拠はない。  周期 1000 日を越える炭素星はない。PLR を用いて光度と距離を決めた。 F60 から決めたマスロス率は赤外カラーと周期に相関する。 相関が強いのはマスロス率と k-[12] カラーの関係である。サンプルの運動と スケール高は周期 1000 日以下の星は低主系列質量星であることが判る。 O-リッチで周期が 1000 日を超す3つの星は中間質量星かも知れない。他の 星の平均質量は 1.3 Mo で白色矮星質量は 0.6 Moであろう。高マスロス率期 間は 4 104 年と見積もられ、これらの星が AGB を離れる前に TP を経験するとしても精々1回である。

Balick, Wilson, Hajian (2001)
NGC 6543 : キャッツアイ周りのリング
 NGC 6543 の HST アーカイブ画像を見ると、コア="Cat's Eye" 星雲の周りに 9つの同心リングが見える。このリングが周期的なマスロスの増加による球形の 泡であることはほぼ確かである。この泡は Hα, [OIII], [NII] のライン でのみ見える。コアと泡は同じ、温度、電離、化学組成を示す。距離を 1 kpc と 仮定し、膨張速度を 10 km/s とすると、Hα 表面輝度分布へのフィットか ら、1500 年毎に 0.01 Mo で厚さ 1000 AU の泡が噴き出たことがわかる。泡の 総量 0.1 Mo はコアの質量 0.05 Mo とほぼ等しい。  泡のライン巾 30 km/s は、泡が厚さを増しつつあり、≤ 数百年の間に合体 することを示す。泡の放出間隔は準周期的なシェルが数百年間隔で放出される という考えに合う。この間隔は熱パルス間隔 105 年とも脈動周期 とも合わない。規則的な放出パルスが PN 中心コアの形成に先立って起こるら しい。コア形成はマスロスのモードに大きな変化が起きるためであろう。
(Hα と [NII] 分離?)

Cioni et al 2001
LMC 巨星の変光と分類:DENIS と EROS の結果
 EROS から LMC Optical Center 0.5 deg2 で 800 変光星の 光度曲線を得た。SRa, SRb, ミラの進化段階とマスロス強度について考察した。

Winters, Le Bertre, Jeong, Helling, Sedlmayr (2000)
ダスト形成 LPVs におけるマスロス機構の体系的研究
 主に炭素星に関して、  ダスト形成を含めた時間依存流体方程式を解き、マスロスを調べた。モデル グリッドは二つの領域に分かれた。(A) 領域は、5 km/s を超す星風領域である。 星風はダストに働く輻射圧で駆動される。  (B)領域では、星風速度は小さく、 マスロス率は 3 10-7 Mo/yr を越えない。輻射圧の役割は副次的で ある。(A) から(B) への転換は急である。O-リッチ星の超低マスロスモデル はバルジで見つかった天体の説明になる可能性がある。

Schroeder, Winters, Arndt, Sedlmayr (1998)
分離シェルを作る短期間質量放出のモデル。
  AGB 末期、超星風が起こる時期の進化モデルを示す。計算は炭素星に対する脈動星風モデルに ダスト形成、輻射輸達、星風加速を組み入れた。
 1.2 Mo 付近、0.2 Mo 巾の領域では、特別に強い間歇的な質量放出が起きた。これは明るい 炭素星の周りで見つかった 分離CO シェルの性質、つまり運動学年齢 1 - 2 × 104  年、数 0.01 Mo, 放出期間数千年以下、とよく合致する。
 他の超星風モデルと違う点は、我々のダストで引き起こされる質量放出は恒星温度に 敏感 ∝ Teff-8 で、かつ最低光度が存在する。これらは、質量放出が 後の方ほど強力になっていくことを意味する。特に我々のモデルでは、AGB 先端最後の 2 - 6 × 104 年の間に、もし光度が log Lc ∼ 3.5 - 3.7 (Teff に依存)に近ければ、 CO シェルが作られ、その時期星の外層質量は 0.2 Mo 以下である。

Massey et al. 1998
NGC6822, M33, M31 とメタル量が高くなるに連れ、普通の赤色超巨星に比べ、 明るい赤色超巨星の比率が下がって行く。マスロスのメタル量効果が大質量星の 進化に影響したためでないか?

Lopez, Danchi, Bester, Hale, Lipman, Monnier, Tuthill, Townes 1997
11 ミクロンでの長基線干渉計観測による ο Ceti のダストシェル 非球対称構造とその時間変化
 1988 - 1995 年に UC Berkley 赤外干渉計 (ISI) により ο Ceti の観測が 行われた。観測されたビジビリティは観測時により大きく変わり、位相による 光度変化でダストが暖められたり冷やされたりするという単純な図式に当ては まらない。その代わり、 ο Ceti の光球から数恒星半径内のダスト 密度が激しく時間変化していた。二つのダストシェル、一つは光球から3恒星 半径以内、もう一つは星から約10恒星半径、というモデルが観測をうまく説 明する。
 4種類の軸対称な輻射輸達モデルをも、データと比べた。それらは、 (1)球対称なシェルの内側に楕円体空洞、(2)円盤、(3)一つか二つの 固まりをつけた球対称シェル、(4)相互に等間隔な薄い不完全シェルの群れ、 である。ビジビリティの時間変化を説明するため、全てのモデルには星光球に近い 距離でのダスト密度の時間変化が必要である。軸対称モデルは、球対称モデルの 距離に対応するところに、塊を持つ。観測された広帯スペクトルとの良い一致が これらのモデルで得られた。

Lepine, Ortiz, Epchtein (1995)
OH/IR 星:近赤外測光とミラ-OH/IR 系列の検討
 約400 OH/IR 星の JHKL'M 測光+IRAS の検討。K-L' に沿って、データが 一次元系列を成す。13 K-L' 区分での平均 OH/IR 星のモデルフィットから、 光度、半径、温度、シェル光学的深さ、マスロス率の系列に沿った変化を調べた。 この系列は質量系列である。

Sloan, Price 1995
AGB 変光星の 10 ミクロン放射帯
 シリケート10ミクロン放射の形は、ピーク位置が10ミクロンの古典的な細い シリケート放射帯から、ピーク位置が11ミクロンより先の太いはっきりしない 放射帯への系列を成す事を示す。この系列シリケイト放射帯の分類の基礎に用い、 AGB 変光星の IRAS LRS スペクトルに応用して、これまでの分類と対比した。 我々の結果は AGB 星が多重シェルを産み出しているか、O-リッチ星のスペクトルは 広い放射帯から細い放射帯へは進化しないことを示唆する。

Vassiliadis, Wood (1993)
AGB 終端までの質量放出を伴う低-, 中間-質量星の進化
 初期質量 [0.89, 5.0] Mo の星は主系列から AGB 先端まで進化する。Z = 0.016, 0.008, 0.004, 0.001 の星の進化を計算して、銀河系とマゼラン雲の 星の比較をした。計算の新しい点はマスロス率と周期の経験式を AGB での マスロスに組み込んだ点である。計算では超星風が自然に出現するが、それは 最後の 2 - 3 熱パルス周期の間だけである。超星風が働くのは、静謐期(水素 燃焼)の後半で光度が高い時期だけなので、AGB 星の大部分は何回かの超星風 期を経験し、その中間の時期には正常な赤色巨星として振る舞っていたのだろう。 質量とメタル量の関数として、熱パルス期 AGB 星である期間の長さ、可視 AGB 期 の長さ、OH/IR 星のようなダストに覆われた極大脈動期の長さを評価した。
 M ≤ 3 Mo の星に対する AGB 期極大光度はマゼラン雲星団星の観測と良い 一致を示した。より質量の大きな星団星の極大光度に対する現在の観測結果は 暗過ぎる点を議論した。初期-終末質量関係は、したがって、 M < 3 Mo の 星に関しては信頼できる。ただ、その関係が与える白色矮星質量は現在の観測 結果より 0.1 Mo 大きいが。 5 Mo の星ではヘリウムシェルフラッシュが弱い ので、外層質量が 1.5 Mo より大きいと、古典的な核質量・光度関係が与える より明るい進化経路を辿る。このような星は超星風で外層質量が低下すると AGB を降りて行く。最後に、我々の計算はマゼラン雲で見られる多数の低質量 炭素星の出現を再現しなかった。

Jura, Kleinmann (1992a)
短周期、中周期酸素リッチミラ
 |b| > 30° の 酸素過多ミラを、赤外測光と周期・赤外光度関係とを 用いて解析した。過去の運動学的解析結果と一致して、周期 300 日以下と以上 とで、空間分布に大きな違いがあった。我々が定義する中間周期ミラ、P= 300 - 400 d、では指数関数スケール高が 240 pc で、投影面密度= 100 kpc -2, 太陽近傍空間密度= 210 kpc-3 である。短周期 ミラ、P < 300 d, ではスケール高 500 - 600 pc, となる。この値は周期・ 光度関係のゼロ点によるがおそらくメタル量に依存する。これ等の短周期ミラ は薄い円盤種族、最大スケール高= 100 pc、には属さない。  短周期ミラの投影表面密度は 40 - 60 kpc-2, 太陽近傍空間密度 = 35 - 60 kpc-3 である。
( 中間ミラでは 210*0.24/100=0.5, 短期ミラでは 35*0.6/40=0.53 または 60*0.5/60=0.5 か、なるほど)
 P > 300 d ミラの母星は主系列質量 1 - 1.2 Mo の円盤矮星らしい。短周 期ミラの母星質量は < 1.1 Mo であろう。 1 Mo 星からのミラは年齢 10 Gyr 以上を意味する。しかし、その場合には 10-4 Lo より暗い白色矮星 を観測されているよりもずっと多く生み出すこととなる。短周期ミラの星周ダス トの量は大きいことから、それらの星のメタル量は太陽の 1/3 より大きい。
 中間周期ミラの期間を 2 105 と見積もった。この値は最近の他の 見積もりより長い。短周期と中間周期酸素過多ミラは大体 10-7 Mo /yr の質量を放出している。

Balick, Gonzalez, Frank, Jacoby (1992)
星風の古生物学 2. 淡いハローと惑星状星雲の質量放出の歴史
 惑星状星雲の周りに広がる、大きくて暗く、大抵は円形の、縁が光っている 構造はハローと呼ばれる。深い CCD 観測から新しいハローが見つかった。  ハローは早期マスロスを表すと考えられている。検出されたハローは全て縁 が明るく光っていて、その半径は 0.3 - 0.5 pc であった。また、その形は 中心にある惑星状星雲本体よりも丸い。全てのハローは Frank90 に述べられた 流体力学効果から予想される密度分布を持つ。

Zijlstra, Loup, Waters, de Jong (1992)
AGB 星の中断マスロス 
 IRAS 二色図の F60 超過星は 炭素星で既に知られている低マスロス率現象が O-リッチ星にも現れている として理解できる。つまり、 これは一般的な現象なのである。マスロス率は熱パルスの位相に依存する のではないか。  マスロス率は熱パルスの際にピークに達し、間パルス期に低下し、停止する。 低マスロス期は脈動の低下または停止と一致するのかも知れない。

Bowen, Willson (1991)
星風から超星風へ:ミラ型星マスロスの進化
 ミラ型変光星の大きなグリッドに対して動力学的大気モデルを計算した。星は 太陽組成で、M = 0.7 - 2.4 Mo, P = 150 -800 d をカバーしている。振動は 基本モードであると言っても大気の底をサイン関数で揺らしているだけ。 超星風は大気が拡大し、高度スケールが増大して星風発生 領域に入っても高密度のままになると発生する。 非常に低メタルな星でもこの超星風は起きる。しかし、その場合は高い光度である。これは、銀河初期の 低メタル種族での超新星にとって大きな意味を持つ。

Lewis, Eder, Terzian (1990)
IRAS カラーで選択した天体の OH メーザー源 II.
 アレシボでカラーで選んだ 1294 星の 1612 MHz 観測を行い、 86 星で検出、 内新発見が 79, という結果を得た。Edler et al 1988 と合わせると、 -0.7 ≤ (25-12) ≤ 0.25, 0 ≤ δ ≤ 37 (そして多分S25 > 2 Jy)でのバイアスサー ベイが行われた。検出率は (25-12) ≤ -0.5 で大きく低下した。検出天体は 全て F25 ≥ 2 Jy であった。  アレシボサーベイは高銀緯に及ぶので、小質量星の OH メーザーの特徴が 研究可能となった。我々は多くの分離または「化石」シェルを見つけた。 それらの割合から、低質量星では「超星風」時期は 1000 年で終わることが分かった。
低質量星は Ve-(12-25) 図上で系列をなすという発見。 低質量星は光学的に薄いシェルの低速マスロスからカラーと共にVe上昇。 カラーに上限。高質量星は赤い枝が伸びる。OHで新しいマスロス進化を提唱 している。話が分かりにくいのが難。

Olofsson, Carlstrom, Eriksson, Gustafsson, Willson 1990
分離星周シェルを持つ炭素星 - ヘリウムシェルの自然な帰結?
 明るい炭素星 R Scl, U Ant, S Sct, TT Cyg の CO 電波マップを示す。 各星は大きな星周外層を持つ事が分かった。。  少なくとも最後の3星では星周シェルが星から離れており、マスロスが 挿話的であることを示唆する。それがヘリウムシェルフラッシュで引き起こ された可能性を論じる。

Jura, Kleinmann (1990)
 太陽近傍の質量放出赤色超巨星 
 太陽から 2.5 kpc 以内にあるマスロス中の赤色超巨星 21 個(20 個は M-型、 1個は G-型 L > 105 Lo)のリストを作成した。これらは初期 質量 20 Mo の主系列星から進化したものである。それらの表面密度は 1 - 2 stars/kpc2 であった。 これらの星は WR-星に比べ、GC方向への集中 が少ない。  M型超巨星からの質量返還は 1 - 3 10-5 Mo kpc-2yr-1 である。GCに向いた半球側では W-R 星に較べ、RSGs からのマスロスはずっと少ない。しかし、半銀河中心方向では それが逆転する。M 超巨星の期間は 2 - 4 105 yr 程度である。 この期間に 20 Mo の星は 3 - 10 Mo のガスを星間空間に戻す。

Jones +6 (1990)
AFGL 星の変光
 63 AFGL 天体の赤外測光を 9 年間行った。  脈動モードのスウィッチのような、突然の切り替え現象は見られなかった。 それより、これらのサンプルからは速くて連続的な進化、弱いマスロスを 伴う短周期ミラから大規模マスロスの長周期ミラへの進化である。

van der Veen (1989a)
O-リッチ AGB 星のマスロス進化とその恒星進化への影響
 O-リッチ AGB 星の半経験的マスロス式を与えた。基礎となるのは、ミラ型星 と OH/IR 星の OH-, CO-観測である。AGB 星はミラ型星から OH/IR 星へと進化 すると仮定する。これは IRAS 観測で支持される (van der Veen, Habing 1988) 見方である。IRAS 12-25-60 2色図上で星は系列を成し、それは個々の AGB 星 のマスロス率が次第に増加していくためと解釈された。  観測量=光度、膨張速度、F25/F12 の関数としてマスロス式が導かれる。 その結果を以前の式と較べた。ガス/ダスト比を光度 L* と膨張速度 v の 関数として表せることが分かった。IRAS-PSC からマスロス率の時間変化=進化 を導いた。F25/F12 区間内のサンプル数は F25/F12 と AGB 上での相対滞在 時間との関係を与える。マスロス式を試すために AGB 上で失われる総質量を 求めた。初期質量と到達最高光度との間に簡単な関係が導かれた。マスロス式 の時間変化をミラ型星と OH/IR 星のサンプルで調べた。周期、光度、外層質量 関係が得られた。それは球状星団、LMC の観測と良く合う。

Gehrz (1989)
銀河系内恒星ダストの発生源
 銀河系星種族の分布とそれらに観測されたマスロス率を用いて、星間物質内に 放出される固体ダストの量を推定した。M-型星と LROH/IR 星はシリケイト ダストの大部分を生み出している。炭素と炭化ケイ素ダストの大部分は炭素星 から生じている。WR-星、新星、超新星は特異な組成のダストを放出する。  炭化水素グレイン の放出源に関しては観測的証拠が殆どない。恒星からのダストの注入と星形成 と超新星による消滅を比較して、銀河系ダストの生態学を研究すると、ダスト グレインは分子雲中での降着により恒星からの放出に比べ 1 - 5 倍の割合で 形成されていることが示唆される。暗黒雲が有望。
(何だ?分子雲に降参? )

Jura, Joyce, Kleinmann (1989)
銀河系反中心方向の明るい炭素星
 銀河系反中心方向の 211 炭素星の K 等級を測った。炭素星の K 等級と I-K カラーがほぼ一定という仮定を用いて、表面密度、見かけ等級とカラーの分布は、 (1) 反中心方向では K バンド星間減光は 0.15 - 0.3 mag/kpc, (2) 高光度炭素 星の密度は反中心方向 3 kpc でも、太陽近傍とあまり変わらない。  通常の円盤星は太陽円を超すと急速に密度が低下するので、炭素星の密度変化は 異常である。その説明としては、(1) 反中心方向でメタル量が低下し、(2) 太陽近 傍での炭素星寿命 105 年より長い 2-3 105 年となるの ではないか?反中心方向炭素星の平均マスロス率 1.2 10-7 Mo/yr は 太陽近傍の 1/1.7 で低い。
(何だ?暗黒雲に降参? )

Schild (1989)
AGB 星進化と共生星
 ミラ型星と OH/IR 星のマスロス率と周期の公刊データを集めた。マスロス 率と周期の間には良い相関が見つかった。 P < 600 d ではマスロスは指数 関数的に増大するが、その先では一定値を取る。ミラ型星が短周期から長周期 へ進化するに連れ、そのマスロス率は劇的に増加する。現象学的には天体は古 典的ミラから OH/IR 星へと進化する。
 シンビオティック星はミラ型星と OH/IR 星の遷移域で、マスロスが極大になる あたりに集中している。シンビオティック系の赤い星は短周期 OH/IR 星と同じ 進化段階にある。OH メーザーを放射する星周シェルを作ったのと同じ物理過程 が連星系ではシンビオティック星雲を作った可能性が大きい。シンビオティック 星の一部は超星風開始間際にあり、それは惑星状星雲形成につながる。
(何だ?分子雲に降参? )

Jura, Kleinmann (1989)
太陽近傍のダストまみれ AGB 星
 赤外カタログを使い、太陽から 1 kpc 以内にあり、マスロス大 > 2 10-6 Mo/yr の星のリストを作った。それらの銀河円盤表面密度は 25 kpc-2 である。O-リッチと C-リッチ星は半々である。  総マスロス量は 3 - 6 10-4 Mo kpc-2 yr-1 である。主系列質量 1 - 5 Mo の星が白色矮星に進化する際に失う質量 8 10-4 Mo kpc-2 yr-1 とほぼ合う。 太陽近傍では 1.2 Mo 付近の星の半数は > 3 104 年を炭素星と して過ごし、1 - 2 10-5 Mo/yr のマスロスを行い 0.7 Mo WD となる。

Schutte, Tielens 1989

星周シリケイトの赤外特性とマスロス率
 簡単な準解析的な式でダストシェルからの赤外放射を特性付けた。輻射輸達の 数値解をダストシェルについて得た。モデルの自由パラメタ―は、ダストの吸 収特性と密度分布である。輻射圧で吹き出されるダストの密度分布に近似的 解析表現を与えた。フリーパラメタ―がスペクトルに与える影響を見るために、 大きなモデルグリッドを計算した。
 観測から、Tc = 近赤外カラー温度 と A10 = 10 μm の放射 または吸収強度の相関が知られている。この関係は本質的には近赤外光学的 深さと 10 μm 光学的深さの関係である。理論的 A10 - Tc 関係を計算し、観測と較べた。その結果、この関係は近赤外と 10 μm との 星周シリケイト吸収効率の比を決める鋭敏な方法であることが判った。
 これ等の結果と、以前に得られた結果とは、星周シリケイトグレインの近赤外 吸収効率は地上鉱物から予想されるよりもずっと大きいことが判った。我々は その原因は星周シリケイトに含まれる鉄イオン F2+ によるカラー センターと考える。近赤外と 10 μm との吸収効率の比を用いて、観測された A10 - Tc 関係をダストシェルのコラム密度として較正し、そう することで、マスロス率を容易に導けるようにした。
  R Cas, IRC 10011, OH 26.5+0.6 の3天体の赤外放射の詳細モデルを作った。 特に、 10 μm 放射または吸収の形に注意した。その結果、 10 μm 共鳴帯 の本来の形が天体毎に違い、 R Cas では太く、 OH 26.5+0.6 では狭く、IRC 10011 が中間になることが判った。この差の原因を考察した。マスロス率は、 3 10-7 Mo/yr (R Cas), 2 10-5 Mo/yr (IRC 10011), 2 10-4 Mo/yr (OH 26.5+0.6) である。
( パラメタ―が違うモデルを同じ コラム密度同士で較べている。しかし、コラム密度は観測量でないから、 観測の解釈に役立たないのが残念。)

Volk, Kwon (1988)
AGB 星のスペクトル進化
 η = 0.56*Mms の改訂レイ―マーズマスロス式とコアマス光度関係で、 AGB 星の進化を追い、そこにシェルモデルを加えて赤外スペクトルの進化 を追った。結果を IRAS 比較した。超星風は考えない。 Mms = 8 Mo は初めからシリケイト吸収で登場し、12/25/60 図で AGB 帯の 上辺を進む。1.5 Mo だと、放射帯で終始する。

Boothroyd,Sackman (1988c)
低質量星 III.一定マスロスでの低質量星進化
レイマース星風マスロスの低質量星進化への影響。特に低質量星ではマスロスにより 熱パルスの回数が制限される。Minit ≤ 1.5 M ではレイマース 星風のみでWeidemann の Mi - Mf 関係を再現できる。

Mould, Da Costa (1988)
マゼラン雲星団の年齢
 Mv < -6, (B-V) > 0.25 (SWB IV 以上)の LMC/SMC 星団を観測した。 ここでは Kron 3 (1Mo), NGC 1978 (1.3 Mo), NGC 2134 (3 Mo) において とり、星団 CMD から恒星進化の研究を行う例を示す。  AGB先端光度や組成と年齢の関係も調べた。さらに、距離に無関係な年齢指標 としてターンオフ等級と水平枝等級との差を調べた。t = [4, 10] Gyr のギャッ プを埋める星団は見つからなかった。 DM(LMC)=18.2, DM(SMC)=18.8 を採用。

van der Veen, Habing (1988)
恒星晩期進化を研究する道具としての IRAS 二色図
 IRAS 二色図 を用いて DGE-star = ダストガスエンベロープ星を調べた。 O-リッチ星は二色図上で系列を成し、それは AGB 頂点においてマスロス 率を増加させながら進化する経路を示すと解釈される。ただ、DGE 星全体は ミラ型星、OH/IR 星サンプルより広い範囲に散らばる。OH/IR 星の最後には 変光が小さく、[25-60] が大きい星が存在する。それらは PNe 前駆天体だ ろう。
 熱パルスがマスロスを一時的に抑制し、二色図上経路に弧状の遠足が重なる と考えると、縦の広がりが説明できる。つまり、マスロスに不連続性が存在 することが示された。炭素星系列が高いのは 40 -80 μm 放射率の差が原因 である。

Willems (1988)
炭素星の IRAS LRS IV. 炭素星進化のシナリオ
 3700 個の光学的に同定された炭素星中、明るくて LRS に載った 304 個を 調べてきた。 Willems, de Jong 1986, Willems 1987a, b. 9/304 (グループ I) はシリケイトシェルを持ち、 Willems, de Jong 1986 で扱った。 295/304 個 は SiC 帯を持つ純正炭素星である。90/295 は近赤外測光データがあり、二つの グループに分かれる。グループ II = NIRの Tcolor > 2000 K で不規則変光星. グループ III Tcolor < 1800 K で規則変光星. 各グループの IRAS 二色図上の 位置は別々。
 この結果を解釈するために、ここでは炭素星進化の新しいシナリオを提出する。 我々は、M-型星から炭素星に変換後しばらくの間通常の脈動は停止し、不規則 変光星になると考える。酸素リッチシェルはその間膨張し、薄まって行く。 その結果、星は IRAS 二色図上で大きな弧を描く。不規則変光炭素星による 新しいシェルは最初は低密度である。  その後、炭素星の脈動がミラ型に復帰す ると、再びマスロス率も回復する。モデル計算から、O-リッチミラから、 C- リッチミラに戻るまでの時間は 104 年程度、高マスロスが開始 されてから、可視で炭素星を隠すシェルが形成されるまでの時間は数 10 3 年かかる。従って、炭素星の寿命は数 104 年 で、その半分くらいの期間可視でも良く見えるだろう。
 炭素星になったばかり、グループ I と若いグループ II の炭素星は 13C が豊富な J-タイプであり、古いグループ II と グループ III の炭素星は s-元素が多い。

Thronson, Latter, Black, Bally 1987
マスロス星の性質と星間ダスト構成の変化
 IRAS PSC からフラックスリミッテッドサンプルを調べた。IR 炭素星は 5.2 kpc-2、炭素星全体では 38 kpc-2となった。炭素星の 総数は 28,000(R/15kpc)2, R=銀河円盤半径 である。炭素星の数は 銀河中心距離に依存しない。一方 赤外 M-星は 47 kpc-2 である。 マスロス O-リッチ星は銀河系全体で 48,000 個である。進化した O-リッチ星 の数密度はスケール長 4 kpc の指数関数型の変化を示す。C-星と M-星の密度 分布のこの差は銀河面上での [C]/[O] 比の勾配が原因である。マスロス星の 種族構成が銀河中心距離により変化するため、星間空間に注入されるダストの 性質が変わり、その結果分子雲の加熱、化学、減光、初期質量関数など全てが 場所により変化する。  中間質量星からの総質量放出は 0.35 Mo/yr で、その内炭素星からの寄与は 10 - 50 % である。この値は銀河系のサイズによる。総マスロスは少数の 極端に激しいマスロスを行う星からの寄与が大きい。それらの星の多くは O- リッチである。サンプル中の炭素星の寿命は 2 105 yr である。 M-星も似たような値であろう。これは太陽近傍での炭素星誕生率= 5 10 -13 pc-3yr-1 を意味する。これは 3 - 5 Mo 星が主系列を離れる割合に等しい。それらの星が炭素星の母星であろう。 銀河系全体で炭素星が生まれる割合は 0.14 (R/15kpc)2yr -1 である。現存の mm-波輝線サーベイから得られる炭素星の 赤外二色図は炭素星全体からは偏っている。
( IRAS 2色図から(不思議なことに)隔離シェル炭素星ボックスを赤外炭素星 領域として定め、そこにある星のCO観測(KnappMorris 1985)を使って、炭素 星の分布とマスロスを出して、銀河系全体の総数、マスロス総量、炭素星寿命 ...と話を広げている。どうも不思議な論文。吹きすぎ? )

Aaronson, Mould (1985)
マゼラン雲中間年齢星団の伸長したAGB.IV.
 この論文で、Mv < -7, B-V > 0.3 のマゼラン雲星団に含まれる AGB 星の同定と測光が完成した。それらを解析して、
(1)AGB 上端光度は Mbol = -4 から -6 に亘る。
(2)レイマーズマスロスで大体説明可能。
(3)Mi > 1,5 Mo ではより強くする必要がある。
(4)Mi < 2 Mo では炭素星ができる。
(5)Mi > 3 Mo では M-型星で終わる。
(6)Mi-Mf 関係は Weidemann とずれる。

Herman, Isaacman, Sargent, Habing (1984)
OH/IR 星の 赤外観測
 λ = 3.8 - 20 μm での 8 バンドでの OH/IR 星測光を報告する。 他の観測結果も足して、これら非常に長周期の変光星光度を決めた。 10,000 Lo を越す星の割合は小さい。多くの OH/IR 星は可視ミラ型星と同じ くらいの光度を有する。  9.7 μm シリケイト帯の深さ、赤外カラー温度、マスロス率は OH メーザー強度の指標となる。いくつかの天体は通常の OH/IR 星と非常に 異なる特徴を持つ。それらは変光せず、近傍にある非常に大きなマスロス率 を持つ星らしい。

Weidemann (1984)
低中質量星の初期ー最終質量関係
LMC 内の散開星団, 特に NGC 1866 中に明るい巨星が存在しないことから、 平坦な Mi - Mf 関係を再確認する。ただし、この Mi - Mf 関係だと、 5 M の星は TP-AGB に到達できない。質量放出率には Mi 以外の要因もあり、Mi - Mf 関係は一意ではないらしいが、多くの星で TP-AGB に到達しない可能性がある。

Schonberner (1983)
恒星進化の最終期 II. マスロスとAGB から高温残骸星への遷移
 0.8 Mo と 1.0 Mo AGB 星がマスロスの結果約1000 年で外層を失い、 0.565, 0.533, 0.546 Mo の残骸星になる転移を計算した。残骸星は HR-図を横切り、 惑星状星雲中心星となりえる。その時間変化速度から、惑星状星雲を形成する 下限は Mc = 0.55 Mo, L = 2500 Lo であることが分かった。  計算から、最終熱パルスが進化の途中のどこで起こるか、が重要であることが 分かった。最終熱パルスが FG Sge 型星の急速な進化に関与している可能性が 強い。また最終熱パルスは中心核の付近に高濃度ヘリウムを含むガスが存在す る惑星状星雲の原因かも知れない。

Weidemann, Koester (1983)
低中質量星の初期ー最終質量関係
散開星団中の白色矮星から、新しい Mi - Mf 関係を提唱する。関係は平坦で WD 母星の上限は 約 8 M である。この Mi - Mf 関係は WD の質量分布が 0.58 M ± 0.3 M に全体の 2/3 が入るという事実をうまく説明する。 Shonberner による NPN 質量分布が M > 0.55 M であることから、M < 0.55 M の白色矮星 (全体の約半数)は PN を経てない可能性が高い。フィールドWD, NPN の観測データは 直接扱っていない点に注意。

Baud, Habing 1983
OH/IR 星のメーザー強度、マスロス進化と超星風の発生 
(1) OH 表面輝度一定なので、LOH ∝ ROH2 ∝ [(dM/dt)/Ve]2
(2) OH 光度関数 ψ(LOH)∝ LOH-2

から、 LOH = 1/(to-t), dM/dt = 1/(to-t)1/2, Me = Mc,o + Me,o (to-t)1/2

を導く。さらに, Ve-Mms 関係を使い、 その他の Mms に依存するAGB 進化の諸関係を導出する。 気になるのは、L 一定、R 一定でMe がゼロに向かうにつれ平均密度低下 と脈動周期増加。周期光度関係を壊す。

Hodge 1983
マゼラン雲星団の年齢較正
 主に主系列測光に基づき、マゼラン雲 81 星団の年齢を集めた。 AGB 先端光度法は大き過ぎる年齢を与える。マスロスが小さなモデルが悪い。

Linsky, Haisch (1979)
低温度星の外川大気 I. 太陽型と非太陽型への鋭い分割
 Mg II, Ca II 輝線の存在から、晩期型星に太陽と似た彩層があると考えら れている。一方、晩期型超巨星の青色遷移した非対称な吸収線輪郭、赤外超過、 光球リム外側からの KI 輝線(αOri)などは、広がった冷たい星周外層 の存在を示す。  紫外スペクトルには一万度以上のプラズマからの輝線が多い。 ここでは IUE による晩期型星のスペクトル観測の結果を示す。

Tuchman et al (1979)
ミラと惑星状星雲の形成
脈動計算から、基本振動になると発散して大放出、PN形成。 低質量星では熱パルスで大放出し、ミラの前にPN化。小周期ミラが少ない原因。

Forrest+9 (1978)
OH/IR 26.6+0.6 の 2 - 40 μm 分光測光観測
 航空機と地上からの観測で OH 26.5+0.6 に強い 10 μm 吸収と弱い 18 μm 吸収が示された。フラックスレベル、カラー温度、吸収深さ は 2 年間の観測の間変化した。  天体を晩期型変光星が光学的に厚いダストシェルを放出したモデルが 示唆される。マスロス率は 10-5 Mo/yr 以上に達する。 4 - 7 μm 区間での放射フラックスが高いことは高酸素ダストはこの 波長帯で高いオパシティを持つ証拠である。

Wood,Cahn (1977)
ミラ、マスロス、赤色巨星の運命
Mc-L関係とレイマース星風でLの時間変化、HR図上のAGB位置で R変化、Q を加えて、周期変化を出す。基本振動で大放出、星風でM=Mc になったら上がり、 Mc=1.4で超新星というスキームを提案。主系列星終了率から、ミラ誕生率を求めると、 小周期ミラが観測を1桁上回る。低質量星はミラを経ずPN化なので観測小周期 ミラは少ないことが原因である。星風PNと大放出PNの2種類ある。

Deutsch (1960)
恒星大気の球対称流C:準定常マスロス
 D, H, K 線に現れる星周層の速度は 8 km/s 程度で、超巨星表面の脱出速度 が 100 km/s であるから、また落下するのではないかと考えられていた。しか し α Her の観測から伴星スペクトルにも同じ星周層ラインが発見され、 星周層が 1,000 au まで広がることが判った。 そこからなら、 8 km/s でも脱出できる。今では、100 以上の赤色巨星で 流出流が検出されている。M0 より晩期では必ず膨張流が見つかる。それより 早期では見つからない。また、晩期型ほど速度は大きく、流出層ラインの強度 は強くなる。しかし、マスロス率の評価は難しい。

Adams, McCormack (1935)
明るい星のスペクトル線に見出される系統的な速度のズレ
 ウィルソン山 100 インチ鏡クーデ分光器による、 β Ori, α Cyg, α Ori, α Sco, α1 Her, β Peg, ε Peg の D1, D2 スペクトルは系統的に 正常なラインより負速度にずれている。幾つかの星の D 線は非対称で、二つの 成分を示唆する。その片方が正常速度であろう。  H, K 線も D 線と同じ現象を示し、M 型星の場合には H と K の間にある Al の2本も同様であった。それらの線の平均のズレは -5 km/s であった。
 これ等の星は太陽に近く、星間吸収は考えにくい。少なくとも M 型星では、 ゆっくりと膨張する外層という仮説が尤もらしい。 β Ori と α Cyg の場合は星間ラインの効果が大きいだろう。 γ Cyg では Fe ライン は Fe、Ti イオンより大きな負速度を示す。 CeII はさらに大きな負速度を 持つ。同様の現象は α CMa と α Cyg でも見られた。それらの 結果は縦方向の対流が異なるレベルのラインに影響を与えるという仮説が それらに合う。



初期最終質量関係

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著者 内容

Kalirai (2008)
初期ー最終質量関係:下限質量での直接拘束
 これまでの初期ー最終質量関係は散開星団中約40の Mi = 2.75 - 7 Mo 星 から導かれていた。ここでは、CFH12K/CHHT 測光器と Keck LRIS 多体分光を用 いた NGC7789 (1.4 Gyr) と NGC6819(2.5 Gyr) 中の 22 白色矮星の観測結果を 報告する。バルマー線を大気モデルに合わせることから、初期ー最終質量関係 の質量下端側に制限を付けた。Mi = 1.6 Mo からは 0.54 Mo WD が生まれる。  非常に古い散開星団 NGC 6791 の新しいデータにより、 Mi = 1.16 Mo (Mf =0.53Mo)まで初期ー最終質量関係を伸ばした。星団中の白色 矮星サンプルはまた幾つかの興味深い系を含む。DB=ヘリウム白色矮星、 磁気白色矮星、DAB =DA+DB の二重縮退か水素/ヘリウム混成大気、 それに等質量DA二重縮退連星系である。

Weidemann (1984)
低中質量星の初期ー最終質量関係
LMC 内の散開星団, 特に NGC 1866 中に明るい巨星が存在しないことから、 平坦な Mi - Mf 関係を再確認する。ただし、この Mi - Mf 関係だと、 5 M の星は TP-AGB に到達できない。質量放出率には Mi 以外の要因もあり、Mi - Mf 関係は一意ではないらしいが、多くの星で TP-AGB に到達しない可能性がある。



初期質量関数

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著者 内容

Hopkins 2018
恒星質量関数を測る
 IMF を測る様々な方法を紹介し、比較する。  特にそれが普遍的であるかどうかに注意を払った。



輻射補正

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著者 内容

板 その他 2015
SMC の長周期変光星(原稿)
 SMC 長周期変光星の可視と近赤外時系列データを解析し、その光度変化を調べた。脈動周期 の間、光度変化は小さいことが判った。カラーに応じた輻射補正の値を求めた。光度変化と 可視および近赤外変光との位相遅れが O-リッチミラに検出された。しかし、炭素星ミラと SRs には系統的な位相遅れは検出されなかった。
 明るいミラ型星にカラー位相の逆転が見出された。それらは長周期で、振幅が大きく、 O-リッチである。その原因は J バンドにおける TiO and/or VO 吸収帯が原因と思われる。 周期・光度関係と周期・カラー関係を導き、示す。

Kerschbaum, Lebzelter, Mekul (2010)
近赤外測光に基づく低温巨星の輻射補正
 低温の巨星に対する輻射補正式をNIR カラーの関数として求めた。恒星の 区分にJHK のみでは不十分で L' が不可欠であることが分かった。 K-L' で3つに分けた O-リッチ星と C-星の4つのグループに輻射補正式 を与えた。そしてそれらを以前に得られた式と比べた。

Whitelock et al (2009)
フォルナックス矮小楕円銀河中の AGB 星
フォルナックス42'×42'でのIRSFモニタリングの結果、7ミラ、10 SR, P = 215 - 470 d が見つかった。AGB星の大部分は Marigo et al 2008 の Z=0.0025, t = 2 Gyr と 10 Gyr の線に囲い込まれる。ただ、マリゴの等時線は 2色図を再現しない。ダストの性質が適していないのではないか?また、マリゴ モデルが与える周期は観測と合わない。
Whitelock et al 2006 の輻射補正を用いて mbol を求めた。LMC の JHKsも同じ補正式を適用して新しく炭素星ミラのPLR を決め直した。ミラ、SR で は Optical - NIR - MIR で平均等級を用いて、または同一時期の観測値を用いて モデルフィットしないと、Mbol, マスロス率に大きな誤りが起きる。

Olivier, Whitelock, Marang (2001)
ダストに埋もれた太陽近傍 AGB 星
 ダストに埋もれた 58 個の AGB 星、内二つは post-AGBs の可能性がある、 を調べた。27 個は C-リッチ、21 個は O-リッチである。これらは、 Jura, Kleinmann (1989) の太陽近傍高マスロス AGB 星(dM/dt > 10-6Mo/yr)に載って いる星である。NIR 地上測光、IRAS、視線速度と流出速度データを合わせてこ れらの星の性質を解析した。NIR 変光振幅は周期と相関し、波長と共に減少す る。P < 1000 日での統計テストからは C-リッチと O-リッチで周期分布に 差があると考える根拠はない。  周期 1000 日を越える炭素星はない。PLR を用いて光度と距離を決めた。 F60 から決めたマスロス率は赤外カラーと周期に相関する。 相関が強いのはマスロス率と k-[12] カラーの関係である。サンプルの運動と スケール高は周期 1000 日以下の星は低主系列質量星であることが判る。 O-リッチで周期が 1000 日を超す3つの星は中間質量星かも知れない。他の 星の平均質量は 1.3 Mo で白色矮星質量は 0.6 Moであろう。高マスロス率期 間は 4 104 年と見積もられ、これらの星が AGB を離れる前に TP を経験するとしても精々1回である。

Massey, Waterhouse, DeGiola-Eastwood (2000)
LMC/SMC アソシエイションのターンオフから決めた W-Rs, LBVs 母星質量
 自分たちと文献データを合わせて、ウォルフ・ライエ星と他の進化した大質量星 を含むマゼラン雲の 19 OB アソシエイションを調べた。分光から多数の天体、 例えば O-型超巨星、SMC 中の大質量連星、LMC の新しく確認された LBV (LBV R 86)、 新しく発見されたウォルフ・ライエ星 (Sk-69°194)、新発見の Be 星 LH 85-10 などを同定した。
 これ等のデータから赤化の決定、物理的 HR 図の作成を行った。約半数のアソシ エイションは共時的(coeval) で、大質量星の年齢差 Δτ < 1 Myr で あった。未進化系列の星の最大質量から、進化した星の母星質量を決めた。また、 未進化系列の最大質量星の総輻射光度から、進化した星の輻射補正 BC を決めた。 これらの星の複雑な大気をモデル化する際に BC の制約は大変有用であった。
 こうして我々は以下を見出した。
(1)SMC の WR 星は最大質量 (> 70 Mo) から来た。これは、低メタル環境では 最も質量の大きい星のみが十分なマスロスが出来、従って W-R 星に成れるという シナリオに合致する結果である。
(2) LMC では早期型 WN (WNE) 星がターンオフ質量 30 - 100 Mo またはもっと大 のアソシエイションで見られる。これは、 LMC メタル量の場合、M > 30 Mo の 星は全て WNE 期を経ることを意味する
(3)SMC でただ一つ見つかった WC 星はターンオフ質量 70 Mo のアソシエイションに 属する。このターンオフ質量は SMC WN 星の場合に等しい。LMC では WC 星が見つかる のはターンオフ質量 45 Mo かそれ以上のアソシエイションである。これは WN 星 と同じ区間である。つまり、 WC 星は基本的には WN 星と同じ質量区間の星から 生まれる。それがしばしば同じ星団中で両者が見つかる理由であろう。これは 局所群銀河内での WC/WN 比を解釈する際に重要な意味がある。
(4)我々のサンプルでは LBV は最も大質量 M > 85 Mo のグループから 出てくる。最近 Ofpe/WN9 星の一つが LBV 的な燃え上がりを示した。これから Ofpe/WN9 星は LBV の一種ではないかという議論があった。しかし、今回の サンプル中に合った二つの Ofpe/WN9 星, BE 381 と Br 18 はターンオフ質量 が 25 - 30 Mo のアソシエイションに属していた。したがって、Ofpe/WN7 星は LBV とは関係がなく、LBV 的に見える変光の全てが同じ原因ではないことに 注意すべきである。
(5)WN, WC 星の輻射補正 BC は極端な大きさで、例えば平均 BC(WNE) = -6, BC(WC4) = -5.5 である。これらの値は最も高温の O-型星と比べてさえ、絶対値 でずっと大きい。しかし、WNE 星に Hillier の「標準モデル」を適用した結果 では類似の BC を得ている。BC(Ofpe/WN9) = -2 to -9 でより穏やかである。 これらの値を銀河星団に適用すれば異なるメタル量での大質量星進化を理解 するのに役立つだろう。

Bessell 1998
O - M 星のモデル大気
Johnson-Cousins-Glassシステムでの広帯域カラーと輻射補正を合成のスペクトルを 使って計算した。理論上のカラー-温度関係を赤外フラックス法、月掩蔽、 巨星半径、食連星と比較した。カラー・カラー関係とカラー輻射関係に理論と 観測の一致を確認した。理論的な輻射補正と温度-カラー関係は観測カラー等級図 から HR 図への変換を可能にする。

Weinberg 1992
銀河系の大規模恒星バーの発見
 AGB 星を探索子に使い、太陽円の内側の恒星円盤の構造を調べた。銀河中心の 周りの恒星分布の最低調和関数項を決定することから出発し、長半径 5 kpc, 位置角 -36±10 のバーが存在する証拠を発見した。  バーの存在は、輻射補正の不確定性、減光強度、AGB 星の光度分散に対して 確実に言える結論のようである。また、マップはバーの端末から渦状腕が発生している 様子を示す。この方法はもっと広範なサーベイに適用可能である。

van der Hucht, Hidayat, Admiranto, Supelli, Doom 1988
ウォルフ・ライエ星の銀河系内分布とサブタイプ進化
 "6th Galactic WR Catalog" (1981) 以来多くのデータが集積したので、 WR 星の固有パラメターを決め直した。太陽から D < 2.5 kpc での WN/WC 比 は 0.55 となった。これはマスロスとオーバーシューティングの影響が現在の 進化モデルで考えられているよりも大きいことを示唆している。観測された範 囲では WR 星の密度は一定である。  散開星団内の WR 星連星に対して、理論的 M-L 関係を比較して輻射補正の 平均値 -4.2±1.2 を得た。O 型星分布との比較から、WR 星は M > 25 Mo 星に由来し、WN 星は 28 - 35 Mo 星、WC 星は 25 - 60 Mo 星だが M > 35 Mo に集中するという結果を得たWNL, WCE, WCL 星の分布に関しても新しい知見 を得た。

Herman, Burger, Penninx (1986)
OH/IR 星の IRAS 観測。光度とマスロス率の決定
 良く調べられている OH/IR 星で、距離が分かっている星の IRAS 観測を示す。 輻射補正を F12/F25 の関数として定め、輻射等級を求めた。電波で周期の助け を借りて、平均光度を決めた。 AGB 上の光度関数を作り、主系列星の分布と 寿命とからの予測と比較した。
しかし、議論が粗い。例えば AGB 等級を 主系列の 2.5 等上と決めてしまうとか。OH26.5+0.6 の位相による吸収深さ変化の 話し、図13は面白い。最後のマスロスの話は議論に値て行けないので中断。  長波長放射からマスロス率、ダストシェルの光学的深さ、ガス/ダスト比を 導いた。

Mould, Aaronson 1980
マゼラン雲中間年齢球状星団の伸長した巨星枝
 マゼラン雲の赤い球状星団の巨星枝先端近くの星にビジコンスペクトル観測と JHK 測光を行った。サンプルは Mould, Aaronson 1979 の分光サーベイを大きく 拡張した。多くの炭素星といくつかの M-型星が見出された。赤外測光によると、 炭素星の平均輻射等級は LMC で -5.02±0.10 mag, SMC で -4.69± 0.10 mag である。これらの値は、 Mould, Aaronson 1979 の値よりずっと暗い。 Mould, Aaronson 1979 が使用した可視輻射補正は不正確であった。 平均して、LMC星団炭素星はSMC星団炭素星より明るく赤い。個々星に J-K から 決めた有効温度を与えた。Vバンドはブランケッティング効果が大きいため、 V-K から決めた有効温度は信頼できない。非炭素星は掩蔽観測から得た視直径 を用いた有効温度で較正したが、炭素星は Mendoza,Johnson 1965 の Teff-(J-K) 関係を使用している。AGB進化の簡単なモデルから AGB 上端光度を用いて星団 年齢を決めた。この年齢順列は SWB 分類と合う。また、年齢・メタル量相間の ヒントらしきものが得られた。



恒星分類

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著者 内容

Andrae et al. (2023)
GAIA DR3:GSP-Phot を用いた BP/RP スペクトルの解析  
 GSP-Phot = General Stellar Parametrizer from Photometry は Apsis = astrophysical parameters inference system の一部で、天体距離、測光、BP/RP 分光に基づいて、数億の星のパラメター= Teff, log g, [Fe/H], MG, Rs, D, AG をカタログにする。その為に Bayesian forward-modeling を採用して、 BP/RP スペクトル、視差、G を同時にフィットする。  GP-Phot は G < 19 の 471 M 天体を解析した。結果の精度は視差に影響 される。ω/σω > 20 つまり大体 2 kpc 以内 の天体の信頼度は高い。文献値と較べるとメタル量には大きなバイアスが認めら れ、定性的な意味合いしか持たない。我々は経験的な補正を加え、その結果 バイアスは大幅に下がった。

Lebzelter, Nowlavi, Lecoeur-Taibi, Trabucci, Audard, Garcia-Lario, Gavras, Holl, Jevardat de Fombelle, Nienartowicz, Rimoldini, Eyer (2023)
Gaia DR3: LPV 候補星の第2ガイアカタログ
 セカンド Gaia LPVs カタログは G の変光巾が 0.1 mag ( 5 - 95 quantile range) の 1,720,558 LPVs を含む。他種変光星の混入を種々のファイルターで 防いだ。周期と振幅は G-バンド変光曲線へのモデルフィットから決めた。C-星 は RP スペクトルの分子吸収帯から決めた。  392,240 LPVs には周期 P が与えられた。 546,468 星が C-星と分類された。 OGLE と ASAS-SN データとの比較から完全性は 80 % と評価された。リカバリー 率はミラ型で 90 %, SR と Irr で 60 % である。同時に LPVs 数は既知数の何 倍にもなった。特に混んだ領域でそうである。混入率は 2 % 以下である。しっか りした理論的議論に基づく C-星分類は文献にある分光で同定された炭素星と矛盾 しない。しかし、混んだ領域や赤化の強い場合注意が必要である。

Loup, Allen, Lancon, Oberto (2019)
赤外サーベイにおける OH/IR 星対 YSO 天体
 主な MIR, FIR サーベイ = IRAS, MSX, AKARI, WISE, GLIMPSE, Hi-Gal 中から OH/IRs 1500 星、メタノールメーザーが検出され YSOs 500 星を同定した。MIR 測光のみでは AGBs と YSOs を解きほごすことは不可能で、FIR 測光が不可欠である。  GLIMPSE 領域の過去の研究は AGB 星の割合を大分低く見積もっていたことを明らかに する。GLIMPSE で「固有カラーが赤い」天体の 70 % は YSOs ではなく、AGBs である。

Lebzelter, Mowlavi, Marigo, Pastorelli, Trabucchi, Wood, Lecoeur-Taibi (2018)
ガイアと 2MASS を用いた AGB 星分類の新手法
 ガイア BP, RP と MASS J, Ks から二つの Wesenheit 関数 WRP, BP-RP, WKs, J-Ks を作り、次に、 (WRP, BP-RP-WKs, J-Ks) - Ks を作った。 この図上では様々な LPVs が異なる位置を占める。  O-リッチ星と C-リッチ星が分離することを示す。また、低質量、中質量、 大質量 O-リッチ赤色巨星、さらに極端 C-リッチ星を同定した。進化モデル を援用して、この図の天体分類力を示す。

Mohr-Smith, Drew, Barentsen, Wright, Napiwotzki, Corradi, Wisloffel, Groot, Kawari, Parker, Sale, Uhruh Vink, Wesson (2013)
カリーナ腕 Wd 2 とその周囲の新しい OB-型星候補の発見
 O-, 早期 B- 型星は銀河系でまだあまり多く登録されていない。南銀河系で g = 20 等まで OB-星候補を探した。探査領域はカリーナ腕の方向、若い大 質量星団 Westerlund 2 の周り 2 平方度である。この星団内にある OB 星を 我々の手法の確認に用いた。この方法は (u-g, g-r) 図を用いる。  マルコフ鎖モンテカルロ法により VPHAS+ u,g,r,i 等級と公表されている J, H, K 等級を組み合わせ、星のパラメタ― log Teff, DM と減光パラメタ― Ao, Rv を導いた。
 星のパラメタ―は OB 星を確定するに十分であり、一方減光パラメターの 誤差は σ(Ao)≈0.09, σ(Rv)≈0.08 の精度であった。 B2 より早期と判定された星が 489 個見つかった。この中には大質量 O-型星と 考えられる星が 74 個、青色超巨星候補が 5 個、赤化を受けた準矮星が 32 個 含まれる。この結果、領域内の OB 星及び候補星の数が 10 倍に増えた。新候補 星の大部分は 3 - 6 kpc にある。また以前から指摘されていた、弧の視線方向 では赤化則が Rv = [3.5, 4] で非標準的であるという事実が再確認された。

Schultheis + 21 (2015)
GAIA-ESO サーベイ:星間減光の追跡  
 Gaia-ESO 高分散分光サーベイ第2データ公表と十分に精度の高い距離と組み合わせて 星間減光とその銀河系内での位置による依存性を調べることである。   5000 以上の星の大気パラメタ―を使い、SDSS, VISTA、理論モデルと組み合わせて、 距離と減光量を求める。減光係数を文献値と比較して星の性質と銀河系内位置に対する 依存度を論じる。  減光係数が大気パラメタ―や銀河系中心距離に依存する証拠はなかった。これは SDSS ugroz バンド、NIR JHKs バンドでは減光則が一様であることを意味する。従って 平均色超過に一定の減光係数を適用して求めた減光マップは付加的な系統誤差を考慮 せずに使用できる。

Boyer et al 2013
M 31 内側円盤での炭素星の欠乏
 WFC3/HST 中帯域近赤外測光を AGB 星近赤外モデルスペクトルと組み合わせ、 AGB 星を M-型と C-型に効率よく分けた。この方法を M 31 内側円盤でテストし、 M 31 他領域での観測に反して驚くほどに C-星が欠乏していることを見出した。 我々はそこにただ一個の炭素星とやや不確かな6個の候補星しか見出さなかった。
 C-型星と M-型星の比、 C/M = (3.3+20-0.1) × 10-4 は M 31 の他領域での値に比べ、一桁から二桁小さい。この 小ささは内側円盤のメタル量が大きいために C/M > 1 になることが妨げられ るからであろう。
 この観測は高メタル AGB 星の進化モデルに強い制限をつけ、あるメタル量以上では 炭素星への変換が起きないことを示唆する。これは AGB 星の質量放出に劇的な変化を もたらし、ダスト形成に影響し、最終的には高メタル銀河の全体的な性質に 影響するだろう。

Messineo et al 2012
Q1, Q2 パラメターによる進化した星の分類
 マスロスを行っている進化した星= WR, RGB, AGB 星を測光分類する。そして それらを銀河系構造のトレーサーに使いたい。既知の WR, LBV, RSG, O-リッチ AGB 星を 2MASS, GLIMPSE, MSX カタログで同定した。それらの性質を NIR, MIR 二色図で調べた。Q1(J,H,Ks) と Q2(J,Ks,8.0) パラメターを作製した。Q2 を用 いると星間と星周減光を分離することができる。これにより、星周外層を持つ星 を探し出せた。  WR 星とマスロス AGB, RSG 星とは Q1 - [Ks-8.0] 面上で異なる場所を占める。 変光巾の増加と共に [3.6-4.5], [3.6-8.0] カラーが赤くなっていく系列 (SR, ミラ、OH/IR 星)が見出された。ミラと OH/IR 星は 3.0 μm に強い水 の吸収を持つ事で SRs, RSGs から区別される。メーザーミラは SiO(4μm), CO(4.24μm) に強い吸収があるので区別される。これはメーザーミラの [3.6-4/5] が非メーザー星より青いことからも想像される。

Kordopatis + 7, 2011
Ca II 三重線領域スペクトルによる自動分類
 銀河系の化学、運動学的性質を探るには数万の星、将来は数百万、の分光 サーベイが必要となる。それには自動解析が必須である。いくつかの現在 進行中の分光サーベイは Ca II 三重線 ∼ 8500 A を含む波長帯を 選択している。本論文はそのようなスペクトルの自動解析を目指す。
 スペクトルから、Teff, log g, [M/H] を得る方法を開発する。パラメタ―空間 での縮退を研究し、得られたパラメタ―に誤差を評価する。  二つのアルゴリズムを研究する。両方とも、観測スペクトルを人工スペクトル のグリッドと比較するのだが、数学的手法が違う。
(1)第1の方法は MATTISSE と呼ばれ、スペクトルの局所的なフィットから パラメタ―を導く。波長空間の各ピクセルは独立に扱われ、与えられたスペクトル の値に対する各波長でのフラックスの敏感度を人工スペクトルから決定する。 この敏感度ベクトルを使って、観測スペクトルを投影して星のパラメタ―を得る。
 第2の方法 DEGAS はパターン認識法を採用し、当然ながらパラメタ―空間全体 を見渡す。観測と人口スペクトルを比較して行き、波長帯全ピクセルで総計し、 追加の補正を加えて、決定ツリーを辿る。
 HR 図上の様々な個所で、パラメタ―の縮退が見つかった. 高温の矮星と巨星 は同じスペクトルの特徴を持つ。低温矮星では log g を決めることが難しい。 実験から、局所法は S/N 比が高い場合有効と分かった。決定ツリー法は S/N 比が低くなると有利になる。そこで、二つを組み合わせ、薄い、厚い円盤星なら S/N = 20 まで、ハロー星なら S/N = 50 なら銀河系考古学に十分な精度の結果が得られることを示した。  パラメタ―縮退は距離や空間速度のような量に系統的な誤差を生む原因となる。

石原, 金田、尾中、板、松浦、松永 2011
AKARI MIR 全天探査による C-, O-リッチ AGB 星の銀河系内分布
 あかりの IRC 全天サーベイデータを用いて AGB 星を分類した。二色図上で 既知天体の占拠する領域を定めた。次に、マスロスー光度関係を用いて、C-リッチ 星と O-リッチ星の空間配置を定めた。O-リッチ星は銀河中心に集中していることが 分かった。一方、C-リッチ星は太陽から 8 kpc 以内では一様な分布を示した。

Bell et al 2010
銀河系ハロー内星種族組成の変動
 ハローが矮小銀河の破砕でできたなら、ハローの星種族にその構造が残っている はずである。それを調べるため、SDSS を用い、ハローでの青色水平枝星と主系列 ターンオフ星の比を調べた。ugr カラーのみから青色水平枝星を選別する方法を 開発し、 g < 18 の 9000 候補を選び出した。その 70 % が青色水平枝星である。

 青色水平枝星と主系列ターンオフ星の比 
 全天の 1/4 にあたる区域で青色水平枝星と主系列ターンオフ星の比をマップにした。 ハロー内に比の大きな変動が見出された。以前に見出された星流では比が周囲とはっきり 異なる。これはそこでの年齢・メタル量が異なることを示唆する。
 ハローのある個所、低銀緯構造、では青色水平枝星がほとんど存在しない。ところが 別の構造では青色水平枝星に富んでいる。サジタリウス潮汐星流に沿って比の変化が 見られる。これは母銀河内の種族勾配を表していると考えられる。これらの発見は ハロー成長に重要である。

Ita et al 2010
あかりが見た近傍星種族
 あかりの 9, 18 μm 全天サーベイ天体をヒッパルコス、2MASS と 結合して色等級図を作った。(L-L18W) - (S9W-L18W) 二色図は 幾つかの天体分類に有効であった。この図上で炭素星と OH/IR 星は 独自の系列を形成した。

Buchholz, Schodel, Eckart, 2009
銀河中心星団の星種族:狭帯フィルターによる種族解析
 狭帯フィルターを用いて、混んだ星団中で晩期型星と早期型星を分離する新しい方法を 開発した。それを銀河系中心核星団に適用し、この領域の種族解析を行った。 観測は AO 支援の VLT/H+ K バンド内 7 狭帯フィルター撮像である。CO 吸収を早期型 と晩期型の分離に用いた。
 その結果、中心パーセク領域で、K < 15.5 の K-型より晩期の巨星と B2-型より 早期の主系列星を分類できた。以前の分光法が K = 13 - 14 等までだったのに比べると、 観測が深く、短時間で済むようになった。極端に赤い天体と前景星も除去できた。 スペクトル分類が既知の星と比較すると、今回の方法は信頼度 87 % である。早期型星は 312/5914 星であった。
 K-光度関数の形、晩期型星、早期型星の空間分布は以前の結果を 確認した。早期型星の分布はべき乗則、β1″ = -1.49±0.12, β1″-10″ = -1.08±0.12, β10″-20″ = -3.46±0.58 で表される。今回初めて 0.5 pc より遠くに多数の早期型星候補を発見した。晩期型星 分布は内側 6″ で反転し、β<6″ = +0.17±0.09 である。晩期型星の K-光度関数はべき指数 0.30±0.01 を持ち、バルジと近い。 早期型星の K-光度関数はべき指数 0.14±0.02 でもっと平坦である。これらは 現地星形成シナリオに合致する。

Massey et al 2009
アンドロメダ銀河の赤色超巨星
同じ V-R で比べると低重力超巨星の B-V は矮星より十分の数等赤い。 これを利用し M31 RSG 候補を決め, 中分散分光とV-K 測光を行った。

Rayner et al 2009
IRTF スペクトルライブラリー:低温度星
低温度の 210 星の 0.8 - 5 μm R= 2000 スペクトルを IRTF SpeX で撮った。観測星は はっきりした MK 分類を持ち、大部分は太陽メタル量に近い。サンプル星は F,G,K,M 型で 光度クラス I - V, にいくつかの AGB N-, S-型星を加えた。連続光の強さも較正されている。 スペクトルは 2MASS 測光で絶対較正した。

Garcia, Herrero, Vicente, Castro, Corral, Rosenberg, Monelli (2009)
IC 1613 の若い星種族
 Isaac Newton Telescope の Wide Field Camera を使い、IC 1613 星の カタログを作成した。赤化フリー指数 Q とカラーにより青い星候補を選んだ。”feiends-of-friends” アルゴリズムにより、銀河内の集団を見つけた。OB アソシエイションのカタログ は中心集中を示す。

Maness, Martins, Trippe, Genzel, Graham, Sheehy. Salaris, Gillessen, Alexannder, Paumard, Ott, Abuter
銀河中心パーセクにおける頭でっかち初期質量関数の証拠
 Sgr A* から 1 pc 以内の 329 晩期型巨星を分類した。観測は AO 面分光 SINFONI/VLT を使用。銀河中心で得られた最も深い分光データである。レッドクランプ (Ks ∼ 15.5 )での完全度は 50 % である。
 分光の結果を NACO H, K 測光と結合して、 HR 図を作った。これを様々な星形成史に 対するモデル HR 図と比較した。ベストフィットは過去 12 Gyr の間連続的に星形成が 起きてきたモデルであった。ただし、その IMF の形は頭でっかち型の必要がある。この  IMF とごく最近に起きた星形成で観測された IMF とが似ていることは、最近の星形成と 銀河中心の全期間を通じての星形成が通じていることを示唆する。

Suarez, Garcia-Lario, Manchado, Manteiga, Ulla, Pottasch (2006)
IRAS PSC からの post-AGBs と PNe のスペクトルアトラス
 PNe と似た FIR カラーを持つ星の可視スペクトルを調べた。計画スタート は 15 年前で、当時サンプルの大部分は未同定であった。可視スペクトルと ファインディングチャート、それに改良された位置座標を 253 IRAS 天体に与 える。  post-AGBs = 103, 21 = transition sources, 36 = PNe, 38 YSOs, 5 = peculiar stars, 2 = Seufert gals. 49 = 可視天体無しで、post-AGBs では ないか。それらの統計的性質を調べた。

Ivezic et al 2005
一回観測のデータで RR Lyr 星を選別する方法
 QEST サーベイで発見された RR Lyr 星を SDSS カラーで調べた。 u-g が 重力に敏感で、g-r が有効温度に敏感と言う性質から、 一回観測 データからRR Lyr 星を選択することができる。  RR Lyr を 100 % 含むカラー選択サンプルでは、最大で RR Lyr 星が 6 % 含まれていた。カラー選択を厳しくして、 RR Lyr が 80 % しか含まれない サンプルで調べると、その中に RR Lyr が 10 %, 28 % しか含まないサンプル ではその中に RR Lyr が 60 % 検出されることが可能である。  

Wozniak, Williams, Vestrand, Gupta (2004)
Northern Sky Variability Survey での赤色変光星の同定
 北天変光星サーベイ(NSVS) は δ > -38° をノーフィルター、 V 相当 8 - 15.5 mag を探査している。そこから AGB カラーを持つ 8678 星 を引き出した。我々の分類は、周期、振幅、 それに NSVS, 2MASS からの 3 カラーである。サンプルには GCVS に含まれていない 変光星が 6474 個ある。自動学習アルゴリズムを用いて、炭素星 の占めるパラメター空間の存在が明らかとなった。ミラ型星も抽出された。

Sloan et al 2003
ISO/SWS 2.4 - 45.4 μm スペクトルの一様データベース
 ISO/SWS 2.4 - 45.4 μm スペクトルの完全セットを示す。スペクトルは 288 区分の細片スペクトルを一様な処理でまとめた。  スペクトルと作成ソフトはオンラインで天文界に公開される。

Battinelli et al. (2003)
CN/TiO フィルターによる M31 円盤の炭素星探査。

Palma et al 2003
ワシントン M, T2, DDO51 フィルターを用い、UMi 銀河の巨星を 分離し、メンバー星の分布を調べた。

Cioni,Habing (2003)
マゼラン雲 AGB 星 I. C/M 比
 DENIS I,J,Ks 二色図と (Ks, J-Ks)色等級図で M-型星と炭素星を 区分して C/M 比の空間分布を調べた。

Heras et al 2002
通常星の赤外スペクトル分類
 ISO SWS により、ダストのない星の 2.38 - 45.2 μm, R = 400 の スペクトルを撮った。この観測は赤外スペクトルの分類法を向上させる 計画の一部である。特に、Kraemer et al 2002 の 1.N - 1.NO 天体 (O- リッチのダストシェルなしの通常星)の詳細な分析に向いている。
 連続光は Engelke 関数 (Engelke 1992) でフィットされた。この連続光 から決めた恒星角直径は他の方法による値とよく合った。
 CO, SiO, H2O 吸収線等値幅の解析は、それらから、熱い B, A, F 型星を冷たい星から区別できる事を示した。等値幅間の相関が強い事も 判った。

Kraemer, Sloan, Price, Walker (2002)
ISO/SWS 2.4 - 45.2 μ スペクトルの分類
ISO/SWS 2.4 - 45.2 μ, 900 星の スペクトルの総合的分類を作った。 まず、天体は全体の SED に応じてグループに分けられる。それらの グループは、裸の星、チリのある星、温かいダストシェル、冷たいダスト シェル、非常に赤い星、輝線のみで連続光を欠く星である。グループは SED に附属する特徴、シリケイト放射、炭素質放射、シリケイト吸収、 氷吸収、細かい特徴、再結合線によりサブグループに分けられる。
 分類と進化の関係を論じ、この分類法が以前の体系とどう関係するか を調べた。

Vandenbussche et al 2002
ISO/SWS による星の近赤外スペクトル
 2.36 - 4.1 μm, λ/δλ ∼ 1500 の ISO/SWS スペクトル 300 星を示す。 観測の目的は MK 分類を近赤外波長域に拡張することと、 銀河の種族合成モデル用の一様な恒星スペクトルの サンプルを提供することである。
 論文ではデータ較正と整約を述べる。さらにスペクトル全体の概観を述べる。 定量的分類は早期型星に関しては Lenorzer et al 2002, 晩期型は Vandenbussche et al in prep. で報告する。

Matsuura, Zijlstra, van Loon, Yamamura, Markwick, Woods, Waters 2002
LMC 炭素星の VLT スペクトルとそのメタル依存性
 LMC 炭素星 6 個の L-バンドスペクトルを示す。3.1 μm に HCN, C2 H2, 3.8 μm C2H2 の吸収帯がある。それらの 等値巾は系統的に太陽近傍の炭素星より大きい。二つの炭素星には 3.5 μm に HCN 吸収帯があった。EW(3.8 μm)/EW(3.1 μm) は LMC では太陽近傍星より 大きい。これは n(C2H2)/n(HCN) が高いことを示唆する。
 LMC 炭素星の吸収強度が強いことは、炭素星に関してもスケール太陽近傍炭素星が 成立して、分子組成も低いという仮定とは矛盾する。銀河系炭素星では n(C)/n(O) = 1.05 - 1.1 であるが、我々の化学モデルによれば n(C)/n(O) > 1.2 である。高い C/O 比は n(C2H2)/n(HCN) が高いこと も説明する。

Lancon, Mouhcine (2002)
中間年齢星種族のモデル化 II.上部 AGB 星の 0.5 - 2.5 μm 平均スペクトル
 上部 AGB は O-リッチと C-リッチな長周期変光星に占められている。中間年齢 星集団の近赤外光は実質的にこれらの星の光が主成分である。個々のこれ等の星の スペクトルはばらつきが大きく、それらを直接に銀河光の合成サンプルに使う訳には いかない。
 Lancon, Wood 2000 の個々星のスペクトルライブラリーを用い、種族合成に 用いるための平均スペクトルを作成した。平均スペクトルと進化経路との関係を論じる。
 LPV 星スペクトルを並べて、平均を求める区間を定めるため、分光測光的特徴 の間の相関を再検討した。可視域での特徴と I-K のような可視連続光カラーの間にはよい 相関が存在するが、可視域指数と近赤外カラーの間には大きな散らばりがある。
 この散らばりの原因の一部は、個々の星の何回かの観測を HR 図上にプロット してみると分かるが、 LPV 自体が幅広なことである。広帯域連続光のカラー温度は分類に 最も適していることを論ずる。得られた平均スペクトルの系列は、確かに規則正しい変化を示した。
(1)BC と温度スケールはスペクトルをモデル進化経路上の点と対応させるのに必要。
(2)平均スペクトル作成の際に使った簡単化の仮定。
(3)サンプルバイアス
(4)銀河の星間水素輝線への小さな寄与

Cioni et al 2001
LMC 巨星の変光と分類:DENIS と EROS の結果
 EROS から LMC Optical Center 0.5 deg2 で 800 変光星の 光度曲線を得た。SRa, SRb, ミラについて C-リッチ、O-リッチごとに存在 領域を決め、未同定星の分類に使えるかを調べた。

Wallace, Meyer, Hinkle, Edwards (2000)
MK-標準星の J-バンド分類スペクトル
 MK 標準星 88 星の J-バンド R=3000 スペクトルを示す。これは Wallace, Hinkle 1997 の K-スペクトル、Meyer et al 1998 H-スペクトルと組み合わせることを想定している。 範囲は 7400 - 9550 cm-1 (1.05 - 1.34 μm) である。

Lancon, Wood (2000)
明るい低温度星の 0.5 - 2.5 μm スペクトルライブラリー
 低温度巨星、超巨星、大部分は変光星の、0.5 - 2.5 μm デジタルスペクトル ライブラリーを提示する。これはスペクトル合成、モデルとの比較などに使える。 サンプルには、炭素星、銀河系バルジ、LMC 星、OH/IR 星が含まれる。
 星のメタル量、質量は広い範囲をカバーする。変光星の大部分は数回観測された。 星の基本的特性と変光がスペクトルに及ぼす影響を論じる。周期・光度関係と星の 進化コードに基づき、変光星の質量を推測した。

Massey, Waterhouse, DeGiola-Eastwood (2000)
LMC/SMC アソシエイションのターンオフから決めた W-Rs, LBVs 母星質量
 自分たちと文献データを合わせて、ウォルフ・ライエ星と他の進化した大質量星 を含むマゼラン雲の 19 OB アソシエイションを調べた。分光から多数の天体、 例えば O-型超巨星、SMC 中の大質量連星、LMC の新しく確認された LBV (LBV R 86)、 新しく発見されたウォルフ・ライエ星 (Sk-69°194)、新発見の Be 星 LH 85-10 などを同定した。
 これ等のデータから赤化の決定、物理的 HR 図の作成を行った。約半数のアソシ エイションは共時的(coeval) で、大質量星の年齢差 Δτ < 1 Myr で あった。未進化系列の星の最大質量から、進化した星の母星質量を決めた。また、 未進化系列の最大質量星の総輻射光度から、進化した星の輻射補正 BC を決めた。 これらの星の複雑な大気をモデル化する際に BC の制約は大変有用であった。
 こうして我々は以下を見出した。
(1)SMC の WR 星は最大質量 (> 70 Mo) から来た。これは、低メタル環境では 最も質量の大きい星のみが十分なマスロスが出来、従って W-R 星に成れるという シナリオに合致する結果である。
(2) LMC では早期型 WN (WNE) 星がターンオフ質量 30 - 100 Mo またはもっと大 のアソシエイションで見られる。これは、 LMC メタル量の場合、M > 30 Mo の 星は全て WNE 期を経ることを意味する
(3)SMC でただ一つ見つかった WC 星はターンオフ質量 70 Mo のアソシエイションに 属する。このターンオフ質量は SMC WN 星の場合に等しい。LMC では WC 星が見つかる のはターンオフ質量 45 Mo かそれ以上のアソシエイションである。これは WN 星 と同じ区間である。つまり、 WC 星は基本的には WN 星と同じ質量区間の星から 生まれる。それがしばしば同じ星団中で両者が見つかる理由であろう。これは 局所群銀河内での WC/WN 比を解釈する際に重要な意味がある。
(4)我々のサンプルでは LBV は最も大質量 M > 85 Mo のグループから 出てくる。最近 Ofpe/WN9 星の一つが LBV 的な燃え上がりを示した。これから Ofpe/WN9 星は LBV の一種ではないかという議論があった。しかし、今回の サンプル中に合った二つの Ofpe/WN9 星, BE 381 と Br 18 はターンオフ質量 が 25 - 30 Mo のアソシエイションに属していた。したがって、Ofpe/WN7 星は LBV とは関係がなく、LBV 的に見える変光の全てが同じ原因ではないことに 注意すべきである。
(5)WN, WC 星の輻射補正 BC は極端な大きさで、例えば平均 BC(WNE) = -6, BC(WC4) = -5.5 である。これらの値は最も高温の O-型星と比べてさえ、絶対値 でずっと大きい。しかし、WNE 星に Hillier の「標準モデル」を適用した結果 では類似の BC を得ている。BC(Ofpe/WN9) = -2 to -9 でより穏やかである。 これらの値を銀河星団に適用すれば異なるメタル量での大質量星進化を理解 するのに役立つだろう。

Majewski et al (2000)
巨星を用いたハロー副構造の探求 I.測光分類法
 赤色巨星を分離する方法を述べる。それは、F - K 型星では 5150 A 付近の MgI 三重線 + MgH 吸収線が表面重力に鋭敏な事を利用する。この吸収強度は DDO51 中間帯域フィルターにより測定される。この方法は、Geisler が述べた Washington/ DDO51 統合 4 フィルター法を、巨星を検出するという目的のみに絞った変形である。 ここで示すようにワシントン T1 - T2 カラーは M - T2 カラーと単調な相関にある。従って、 T1 測光を 省くことにした。
 (M-T2, M-DDO51) 二色図上で、M-DDO51 カラーは第1依存性は光度で、 第2依存性がメタル量である事が判った。この経験則は大体において Paltoglou,Bell による人工スペクトルの結果と一致する。

Piatti + 6 (1999)
LMC の新しい巨星クランプ
LMCバーの6°北、21か所、2.5deg^2、でのワシントン測光。 CMDに分離した巨星 クランプは見つからず、垂直な構造(VS)が見つかった。VSはNGC 2209フィールドにもあった。その位置と大きさはどこでも同じで、RC の底から0.45等下まで伸びている。 VSは何らかの進化効果で生まれたものである。

Massey et al (1998)
局所群内の進化した大質量星 I.赤色超巨星
同じ V-R で比べると低重力超巨星の B-V は矮星より十分の数等赤い。 これを利用し、NGC6822, M33, M31 とコントロール領域での BVR 観測から RSG 候補を決めた。メタル量と共に高光度の赤色超巨星の割合が変化する。 最も明るい RSG の質量は NGC6822 で 25 - 30 Mo, M33 で 18 Mo, M31 で 13 - 15 Mo である。

Pickles (1998)
恒星スペクトルフラックスライブラリー: 11500 - 25000 A
 恒星スペクトルフラックスライブラリーは 131 個のフラックス較正済み スペクトルから成る。太陽メタル正常星の全てのスペクトル型と光度クラス、 及び、低メタル及び高メタルの F - K 矮星と G - K 巨星をカバーした。 各スペクトルは幾つかの星の観測値を合成して得られた。SIMBAD データベース、 観測したカラー、ライン強度を調べて、入力成分が似通った恒星タイプである ことを確認した。  ライブラリー全てに 1150 - 10620 A はカバーされ、4つは 25000 A まで カバーした。赤外の欠損部は標準カラーから平滑なエネルギー分布を想定して 当てはめた。このライブラリーは将来の拡張、特に非太陽メタル量、を目指し ている。ライブラリースペクトルは Fλ と Fν の双方で表示されている。間隔は 5 A である。ライブラリースペクトルを等時 線に組み込むプログラムを開発した。その例を示す。スペクトルはテキストファ

Pickles (1998)
恒星スペクトルライブラリー:1150 -- 25000 A
 恒星スペクトルフラックスライブラリーは 131 個のフラックス較正済み スペクトルから成る。太陽メタル正常星の全てのスペクトル型と光度クラス、 及び、低メタル及び高メタルの F - K 矮星と G - K 巨星をカバーした。 各スペクトルは幾つかの星の観測値を合成して得られた。SIMBAD データベース、 観測したカラー、ライン強度を調べて、入力成分が似通った恒星タイプである ことを確認した。  ライブラリー全てに 1150 - 10620 A はカバーされ、4つは 25000 A まで カバーした。赤外の欠損部は標準カラーから平滑なエネルギー分布を想定して 当てはめた。このライブラリーは将来の拡張、特に非太陽メタル量、を目指し ている。ライブラリースペクトルは Fλ と Fν の双方で表示されている。間隔は 5 A である。ライブラリースペクトルを等時 線に組み込むプログラムを開発した。その例を示す。スペクトルはテキストファ イルで得ることが出来る。

Aoki, Tsuji, Ohnaka (1998)
炭素星の ISO/SWS スペクトル I. N-, SC-型星の分子吸収
 ISO/SWS N-, SC-型星スペクトルを調べ、 CO, CS, CH, SiS, HCN を 見出した。スペクトル型と分子吸収の間に関係がある。 N-型星の 3 - 4 μm CH 基本モードは SC-型星より強い。一方で SC-型星 WZ Cas に 見つかった SiS 6 μm 第1倍音バンドは N-型星には見つからない。 HCN (ν1, ν23 and ν12) は SC-型の方が C-型星より強い。 この事実は SC-型星では低い C/O 比のため大気が低温であると共に、 有効温度が比較した N-型星より低いためと説明される。CS 第1倍音 バンドと基本モードのバンドヘッドは我々のモデル大気からの予想より 弱かった。 TX Psc (N-型) で CS 基本モードが観測されたがバンド ヘッドは極めて弱かった。他の星では CS 基本モードは一つも見出さ れなかった。これらの結果は外側大気からの CO, CS 放射の寄与を 示唆する。

Tsuji, Ohnaka, Aoki, Yamamura (1997)
M-型星とミラ型星の温かい分子層
 ISO/SWS 観測により、M2 巨星 β Peg で既に 2.7 μm H2O が現れ、晩期 M 型星に向かい強まって行く事が判った。さらに、4.2 μm CO2 バンドが M7 巨星 SW Vir で吸収として現れ、ミラ型星 S Vir では特に強い。これら分子バンドの励起温度は M-型巨星、ミラ型のどちらも 750 - 1250 K であった。CO, SiO の 4 μm 吸収帯は低温 M-型星で弱くなり、 ミラ型星 S Vir では殆ど消失する。これは CO, SiO 自身の放射により埋められた ものと考えられる。吸収と放射は、光球上空にある比較的暖かな分子形成層で生 じていると考えられる。この分子層は以前 CO フーリエ分光で指摘された準静的 分子層と関係するに違いない

Kwok, Volk, Bidelman (1997)
LRS を持つ IRAS 天体の分類
 IRAS LRS は 5425 天体を含むが、丁寧な処理で新たに 11,224 天体を抽出した。 それら新スペクトルは連続光の形、吸収、輝線帯により 分類された。既存の可視、赤外カタログの対応天体をリストした。可視の光球 スペクトル分類と星周赤外分類との関係を論じた。

Wallace, Hinkle (1997)
通常星の K-バンド中間分解能スペクトル
 スペクトル型 O - M, 光度クラス I - V 115 星の K-バンド (2 - 4 μm) スペクトル を示す。N-型、J-型炭素星のスペクトルも一つづつ示す。スペクトル分解能は 3000 である。 吸収線なしの星のスペクトルで割り算して、大気吸収線は除去してある。主な吸収線の同定も 付けた。

Schiavon, Barbuy, Singh 1997
M-型星の FeH ウィング・フォードバンド
 M-型星の観測スペクトルにモデルスペクトルをフィットして、FeH Wing-Ford バンド、 9850 - 10200 A を調べた。FeH 線強度は表面重力の非常に鋭敏な指標である。 それはメタル量にも反応する。
 低分解能スペクトルでは、巨星で強い CN 線とのブレンドはFeH Wing-Ford バンド の表面重力への反応に影響しない。なぜなら、CN ラインはスペクトル中に遍在して いるため FWHM ≥ 3 A では溶け去ってしまうからである。このバンドは矮星と 巨星の分離に役立つ。

Schiavon, Barbuy, Singh 1997
M-型星の近赤外 Na I 二重線
 Na I 近赤外吸収線が矮星と巨星の分離に使われてきたが、その解釈に関しては まだ論争中である。このラインの特徴を理解するために低温度星のスペクトルを 観測とモデルの双方から調べた。
 我々は Na I 吸収線は実際に矮星と巨星の分離に使えると結論した。さらに、 赤連続光のレベルを 8234 A で定義し、等値幅を 8172 - 8197 A で測定して Na I 指数を定義することを提案する。λ > 8197 A を除くのは VI, ZrI, FeI, TiO ラインを避けるためである。

Roos, Boisson, Joly 1996
晩期型星の 4800 - 9000 A スペクトル
 21 星の 4800 - 9000 A スペクトルを示す。スペクトル型は G, K, M, 光度クラスは I, III である。星の半分はスーパーメタルリッチ (SMR) である。スペクトルは OHP 望遠鏡の Aurelie 分光器に CCD 的検出器を付けて、 1.25 A 分解能で撮られた。
 7 星のスペクトルが CFH 望遠鏡 Hertzberg 分光器で 8.5 A 分解能、 5000 - 9783 A スペクトルを撮られた。スペクトル型は F, G, K, M 型、 光度クラスは III, V であった。5 つは SMR であった。これらのスペクトル は種族合成のためのスペクトルライブラリーを拡充するために行われた。 SMR 星を含めたことで、銀河中心領域の種族合成の研究が進む。

Blum, Sellgren, DePoy 1996
銀河中心の本当に低温度の星
  円盤、バルジの M-巨星、超巨星と比較して、銀河中心の 19 晩期型星の K- バンドスペクトルを調べた。同じ CO 強度の星同士で較べた時、中心星は円盤 星よりも Na I(2.206 μm), Ca I (2.264 μm) 吸収が強い。K-絶対等級、 CO, H2 吸収強度を、銀河中心星および既知の円盤 M-超巨星、AGB 星と比較し、 IRS 7 のみが超巨星であると結論した。
 他にも2つの中心星が超巨星の可能性がある。残りの明るく低温の星は中質量 の AGB 星である。K-バンドスペクトルの特徴と、測光の変動から、銀河中心星の 4 つは長周期変光星と判定した。中心星の初期質量と年齢から銀河中心では、 過去 7 - 100 Myr の間に複数回の星形成が起きたと思われる。

Paltoglou, Bell 1994
合成スペクトルで調べたワシントンシステムの性質
  Teff, log g, 組成のグリッド上でMARCOS モデル大気を計算し、ワシントン システムでの指数を計算した。 C, N 量が巨星 カラーに及ぼす影響も求めた。モデルカラーを文献から集めた観測値と比較した。
 T1-T2 と M-T2) から有効温度を 推定する際の組成と重力による影響を比べた結果、後者の方がより良いことが 判った。 (C-M) と (C-T1) が組成指数として最もよいという経験則を 計算で確かめた。重力の指標としての (M-51) 指数は観測系列とよく合った。 この指数は重力と組成の双方に有用である。

Barnbaum, Stone, Keenan 1996
炭素星の中分解能スペクトルアトラス
 Keenan 1993 が提唱した炭素星の改訂 KM 分類に基づく中分解能スペクトル アトラスを示す。このアトラスの目的は太陽近傍炭素星の性質をバルジ、LMC, その他の近傍銀河中の炭素星と素早く比較できるようにすることである。  分類基準は星の進化ステージに関しては全く仮定を設けず、純粋に観測データ のみによる。39 星のスペクトルを詳細に示す。さらに炭素星の改訂 KM 分類に 基づく、119 炭素星の結果を示す。

Fluks, Plez, The, de Winter, Westerlund, Steenman 1994
M-型巨星のスペクトルと等級について
 太陽近傍の非常に明るい M-型巨星 97 個の高品質「固有」スペクトル λ = [380, 900] nm を得た。Case と MK 分類で M-型のサブタイプ 全てが含まれている。結果は λ = [99, 12500] nm の測光合成スペ クトルにフィットされて、対応連続光分布を推定した。  恒星スペクトルは固有スペクトルとも比較された。有効温度が導かれ、 数学的なスペクトル分類基準が見出された。 (UB)j, (VRI)c, (JHKLM)ESO 測光値も与えた。データは CDS で得られる。

Jones, Longmore, Jameson, Mountain 1994
M-矮星の赤外スペクトル系列
 GL 411(M2V) から GD 165B(褐色矮星候補で > M9V)に至る M-型矮星の系列の赤外 スペクトル (1 - 2.5 μm) を提示する。晩期に向かって、水蒸気の吸収が次第に 強まることが観測された。この水蒸気吸収強度を温度決定に用い、有効温度と半径を 求めた。その他の原子、分子吸収強度と温度の相関も調べた。与えられた光度に 対して、この方法で決めた有効温度はモデルとの一致が良くなった。GD 165B の温度は 1860 K ±160 K で褐色矮星かも知れない。

Kirkpatrick, Kelly, Rieke, Liebert, Allard, Wehrse 1993
M-矮星の赤外スペクトル系列
 M2 - M9 に至る M 型矮星の系列に沿って、 0.6 - 1.5 μm スペクトルを提示する。 温度に鋭敏で、スペクトル分類に使える吸収線が多数同定された。それらの形を最新の モデルと比べた。そこから温度スケールを導いた。モデルスペクトルの可視域は M6 より 早期の星で良く合う。それより晩期になると、赤外域の方が観測に良く合う。 導かれた温度は以前の結果より高い。低光度になるほどその差が著しい。その結果、 HR 図上での M 矮星の位置は理論モデルと良く合うようになった。

Keenan 1993
赤い炭素星の改訂 MK 分類
 赤い炭素星のスペクトル分類を改訂 MK システムに取り込んだ。それには山下 による旧式の R, N, C 分類の改訂版の特徴を加え、組成指数を加えた。  新しいシステムは、(1)星の属する種族を定義し、(2)個々星の詳細な大気解析 の中間を素早く内挿でき、(3)銀河系の様々な個所での炭素星の違いを示すことを 目的とした。スペクトル型の指定子を柔軟にして新しい基準も取り込めるようにした。

Torres-Dodgen, Weaver 1993
通常星の写真赤外低分散スペクトルアトラス
 スペクトル型 O - M, 光度クラス V, III, Ib の星の 5800 - 8900 A スペ クトルを示す。分解能は 15 A である。スペクトルの主な特徴を述べ、 温度と光度に従って綺麗に並ぶことを示す。  この波長域と分解能は、高感度のシリコン検出器の性能と相まって、 スペクトル分類には非常に有用である。

Walborn,Fitzpatrick 1990
OB 星の現代的分類:デジタルアトラス
 OB スペクトルの可視域分類を新しい総合的な青ー紫数値データに基づいて 見直した。観測は CTIO 1m 光子計数装置で行った。最近の発展の中には、 O3 スペクトル型、O 型星の光度基準、 OBN/OBC 変異、より高精度の 晩期 O/ 早期 B 型などがある。
 ここに集めた 75 標準天体のスペクトル・光度クラス系列には、それらの 例が含まれている。波長域は 3950 - 4750 A の O3 - B3 (-B8 at Ia) スペクトル範囲である。このアトラスは写真乾板に基づく MK アトラスの デジタル版を目指している。

Wood, Churchwell 1989b
分子雲内に埋もれた大質量星:銀河系内の数と分布
 既知の UCHIIR の IRAS 二色図 から UCHIIR のカラー選択基準を導いた。IRAS PSC にその基準を適用して、 1717 個の 埋もれた大質量星候補を見出した。

Walker, Cohen, Volk, Waincoat, Schwartz (1989)
IRAS カラーのみを使った天体分類
 IRAS 二色図上で既知の天体が占める領域をタイプ毎に調べた。タイプ間で 領域の重複があるため、IRAS 二色図のみで一意な決定は困難である。 しかし、銀緯は系内天体と系外天体の分離に役立つ。放射、吸収帯の影響も 調べた。

Sviderskiene (1988)
通常星の光度・スペクトル型別のエネルギー分布
 Straizys, Sviderskiene 1972 は 49 個の代表的な星スペクトル の 3000 - 10000 A 平均エネルギー分布を出版した。Sviderskiene 1980, Straizys, Kuriliene, Sviderskiene 1981 はそれらを 1250 - 12500 A へ拡大した。  1973 - 1986 の間に 49 星には新しいデータが加わった。また新しく 49 個の星のエネルギー分布が求まった。その結果新しいカタログには  O - M 型、光度クラス V, IV, III, II, I の 98 個の星が載っている。 それらは 1200 - 10500 A をカバーしている。また、 J バンド測光からの 12500 A での点も加わる。  表2にはそれらの星をリストした。表3には参考文献を載せた。 平均エネルギー分布は表4に載せた。平均分布を作る前に、各個の エネルギー分布は Straizys, Sviderskiene 1972 による共通の absolutization に変換される。それは Mihalas 1966 の θe = 0.525, log g = 4 の α Lyr モデルに基づいている。  このモデルは OAO-2 観測により紫外域に拡張され、カタログ値を他の システムに変換するのに使われる。早期型星は各個のの赤化 E(B-V) による 減光補正を行ってから平均エネルギー分布を求めた。幾つかの典型例を 図3-19に載せた。合成カラーと固有カラーとの差は図1と2に示す。

Schulte (1988)
写真赤外域スペクトルによるシンビオティック星の分類
 シンビオティック星16個と G, K, M-型星29個の写真赤外スペクトルを 提示する。スペクトル図を用いて、シンビオティック星の冷たい伴星を分類 した。 CN (7916+7941) バンドの等値巾は標準的な M0 - M3 巨星における 光度クラスの指標になることを示す。
 観測したシンビオティック星中6個がこの範囲の温度に入る。それらの星に ここに述べた CN 基準を適用した。その結果晩期型伴星のうち4つが正常な 巨星であることが判った。しかし残り二つの伴星の性質は不確定である。 この結果を現在のシンビオティック星モデルと対照して議論した。

Bessell, Brett 1988
JHKLM 測光:標準システム、パスバンド、固有カラー
 SAAO, ESO, CIT/CTIO, MSO, AAO, Arizona の JHKL システムのカラーの関係を 調べ、カラー変換を一次式で表わした。均質化システム、基本的には Johnson - Glass システム、を提案し、標準星の均質化カラーを用いて、 B7V - M6V と G7III - M5III の 固有カラーを定めた。 巨星と矮星の二色図の違いを図で示した。

Armandroff, Zinn 1988
球状星団積分光の CaII 三重線
 球状星団 27個の 積分光から、Ca II 三重線 (CaT) スペクトルを調べた。 等値幅はメタル量と非常に良い相関を示す。したがって、 CaT は球状星団 メタル量の指標として使える。星間減光が弱いので銀河系中心付近の星団に 役立つ。新しく決めたメタル量、視線速度を用いて円盤系球状星団のメタル 量分布、運動、空間分布を解析した。

Azzopardi 1987
SMC: Hγ線等値巾と明るく青い星の光度クラス
  2000 個の対物プリズムスペクトルから、銀河系内の OB と 超巨星 O7 - F2 標準星、 SMC の 195 O9 - F8 星 の Hγ 線等値巾を得た。銀河系の星から、等値巾と MK 分類との相関を調べた。それを用いて、SMC の 青い星 172 個の 光度クラスを 与えた。

Epchtein, Le Bertre, Lepine, Marques dos Santos, Matsuura, Picazzio (1987)
Valinhos 2ミクロンサーベイ II. MIR 測光 IRAS 同定と天体の性質
 南銀河面を走査した Valinhos 2.2 μm で検出した 630 天体を報告する。 90 % が IRAS と同定された。K, L + IRAS で SED を調べた。大部分はダストに 覆われた晩期型星であった。 K-L, L-[12], [12-25] カラーを用いて、 分類を行った。O-, C-リッチ星の分離に成功した。幾つかの特異星の性質も 論じる。

Kleinmann, Hall (1986)
晩期型標準星の 2 - 2.5 μm スペクトル
 F8 - M7、矮星 - 超巨星で太陽組成の26星 K バンドスペクトルを示す。 分解能は 1.6 cm-1 で、S/N ≥ 400, 地球大気吸収は補正した。 選択された吸収線積分強度と狭帯測光との比較から、連続光決定部にかかる H2O 吸収により矮星の測光 CO 指数はかなり減少することが わかった。
 低温度巨星における測光分光で決めた CO 指数と測光で決めた CO 指数の差 (Aaronson, Frogel, Persson 1978)は変光のためか、または 2.0 μm 付近 での何らかの付加的な幅広吸収によるものであろう。原子、分子の強い吸収線 温度と光度クラス依存性を調べた結果は、かなり大きな差が検出された。その 原因は一部は原子吸収線の高い励起状態にあり、一部は原子線、分子バンドへの 乱流の影響によるものである。CO バンドヘッドと強い原子線との比較から K-, M-型星の2次元分類の効率的な方法が得られた。

Cook, Aaronson, Norris (1986)
近傍銀河中の 炭素星と M-型星
 CN, TiO 吸収バンドに合わせた中間帯域フィルターを用い、炭素星と M 型星を 区別する方法を開発した。銀河系炭素星でこの技法を試した後、近傍銀河 M31, M33, NGC6822, IC1613, WLM を観測した。得られた C/M 比は銀河の絶対等級と良い相関 がある。

Richer, Crabtree, Prichet (1984)
NGC 205 中の 明るい晩期型星
 M31 の随伴楕円銀河 NGC 205 中心部の VRI および TiO, CN バンド CCD 撮像から M-型星と C-型星を分離した。

Jones, Alloin, Jones 1984
CaII 三重線:恒星種族合成のための光度指標
 Ca II 三重線 (CaT) のレチコン観測 62 星をしらべた。 サンプルのスペクトル型は B-型から中期 M-型まで、表面重力は 4 桁、メタル量は ファクター 10 の巾を持つ。サンプル領域に渡り、 CaT 等値幅は log g に強く 依存した。メタル量の影響は強くない。したがって、 CaT 吸収は恒星種族積分光の 矮星/巨星の比を決めるのに役立つ。M31 中心に応用した。

Claria, Lapasset 1983

ヒアデスより高齢の3星団内巨星の物理的性質
 高齢散開星団 NGC 2482, NGC 3680, IC 4651 の 広帯域 CMT1T2, 中帯域 DDO 測光を行った。独立な二つの測光 規準を用いて、フィールド星と星団星を分離した。また、赤化、距離指数、 金属量、有効温度、表面重力を導いた。質量も粗い見積もりを出した。 NGC 2482 と IC 4651 の巨星はヒアデス巨星とほぼ同じ CN 強度を有する。 NGC 3680 の方は近傍 K 型巨星よりもわずかに強い CN 強度を示す。 CMT1T2 から NGC 2482 と NGC 3680 は鉄ラインから 導かれた値として、 [Fe/H]MT = -0.1±0.1、一方 CNO-混入のある (C-M)指数は 0.4dex 高い。 CMT1T2, DDO 双方が IC 4651 は [Fe/H] = +0.2±0.1 で中間年齢、高齢星団の 金属量分布の高金属量側に位置することを支持する。NGC 3680 と IC 4651 の クランプ星はその位置でヘリウムコア燃焼を開始する以前にマスロスを受けて いたようだ。

Barbieri, Bonoli, Bortoletto, di Serego, Falano (1981)
写真赤外域における G, K, M 型星の中分散スペクトル
 G, K, M 型星の写真赤外域における中間分解能スペクトルの特徴を述べる。 観測は Cima Ekar 天文台でレチコンシステムにより行われた。  分解能 6 A のスペクトルには原子、分子吸収線が確認された。それらは スペクトル分類に有用である。同時に連続光の情報も保存された。

Goebel, Bregman, Goorvitch, Strecker, Puetter, Russell (1980)
炭素星 Y CVn の 1.2 - 30 μm 赤外スペクトル
 炭素星 Y CVn の 1.2 - 30 μm での分光測光を示す。5.2 μm に C3 バンドがある。これは、もし SiC2 が存在する なら SiC の 5.7 μm バンドは C3 で隠されることを意味 する。SiC 11.5 μm 放射も著しい。

White, Wing (1978)
M 型超巨星の二次元測光分類
 0.7 - 1.1 μm での狭帯域8バンド測光を用いて、 MK 分類で超巨星と された星の殆どを再分類した。 TiO, CN の測光バンド強度は MK 二次元分類 と同精度の二次元分類を可能とする。

Mould, McElroy (1978)
高メタル球状星団の TiO バンド強度
 球状星団巨星枝先端にある星の有効温度と TiO バンド強度の変化を観測した。 フィールド巨星ではバンドが強い温度で、中間メタル量の球状星団では TiO が検出 されなかった。この結果に赤化補正は重要でない。  高メタル星団では最も低温の星で TiO が検出された。それは同じ温度のフィールド 星と較べると弱い。赤化に関し適当な知識があると、この結果を使って星団をメタル量 で並べられる。予備的な理論較正から、 NGC 6171 と M71 のメタル量は他の研究結果 と一致する。

Humphreys 1978
銀河系内の O 型星と超巨星
 銀河系内の最も明るい星について、 HR 図、光度、赤色超巨星と青色超巨星の比 を調べた。アソシエーションと星団に属する超巨星と O 型星のカタログを付けた。 モデル HR 図では Mbol = -10 ∼ -12 の非常に明るい O 型星のグループは存在 するが、進化した超巨星ではそれほど明るい星はない。 B5 より晩期では超巨星の 最大光度は Mbol = -9.5 である。  最も明るい赤色超巨星の観測値は Mv = -8 で、Sandage, Tammann は距離指標に 使う提案をした。特に明るい Cyg OB 2 No.12 (Mv = -9.9 ) を除くと、青い星の 最大光度は Mv = -8.5 である。

Janes (1977)

DDO 測光による K 型巨星の星間赤化
 単一 K 型巨星の DDO 及び BV 測光から、星間減光と固有 (B-V)o を導く 方法を述べる。  種族 I の星に対してはこの方法はうまく働き、かつ元素組成に依らない。 しかし、種族 II の星にはうまく行かない。

Canterna 1976
G, K 型星の広帯測光:C, M, T1, T2 システム
 G, K 型星の温度、メタル量、CN 指数を得るための特別な測光システム C, M, T1, T2 を開発した。このシステムは UBVRI システムより効率が良い。温度指数 T1 - T2 は R-I と線形関係にある。Δ(M-T1) 指数から導かれるメタル量は ファクター2の不定性がある。このシステムは CN 分子バンドによるブラン ケッティング効果を、紫外域における金属吸収線によるブランケッティング から分離することが出来る。シアノジェンバンド指数 ΔI(CV) は [Fe/H] ≥ -1.0 の巨星に対して、強 CN 星 (CN, +3, +2) と弱 CN 星 (CN, -3, -2) とを区別できる。
 ΔI(CV) は DDO CN バンド強度指数 δCm と線形の 関係にあることが判った。 M67 中の巨星及びいくつかの SMR 巨星の観測 から、
(i) M67 は通常よりやや低メタルで、 SMR ではない。
(ii) SMR 星での大きな UV 欠乏はメタルがやや多く、 CN バンドが異常に 強い結果である。
M, T1, T2 を G型矮星の組成研究に応用できる可能性 がある。Δ(M-T1) と Δ(C-M) は G 型星の δ (U-B) と単調な関係にあり、温度指数は B-V, V-r よりブランケッティングの 影響が小さい。Δ(M-T1) と ΔI(CN) への赤化と光度 の影響も論じた。

Janes 1977
DDO 測光による K 型巨星の赤化
 近傍星のDDO カラー指数 C(42-45)o, C(45-48)o と (B-V)o の間の関係 (膜になる)を表にした。観測値とこの膜の間に赤化ベクトルを引いて交わらせると、 赤化とスペクトル型、光度クラスが決まる。 この方法で、種族I の K 型巨星の赤化を 0.03 等精度で決められ、δCN 指数 と組み合わせてメタル量も決定できる。しかし、球状星団で試したが種族IIの星には 上手く働かない。

Janes 1975
K 型巨星の CN 強度、光度、運動
 DDO 中間帯域測光を G, K 型の 1200 星に行い、CN 強度異常と絶対可視 等級を導いた。予想された通り、CN 強度指数 δCN は [Fe/H] と相関 していた。一方、絶対等級の方は興味深い以下の結果を得た。
(i) K 線 絶対等級のウィルソン・バップ較正には修正が必要である。
(ii) δCN と Mv(K線) の間に相関はない。つまり、Mv(K線) にメタル依存性はない。
(iii) 新しい較正から出したヒアデス距離指数は (m-M) = 3.22 である。
 DDO 絶対等級に文献からの視線速度、固有運動を加えて 799 巨星の空間 速度を計算した。Z 方向速度は予想通り、δCN と相関がある。δCN が非常に弱い星は円盤上を高速で動いている。さらに、運動学から δCN には銀河系動径方向の勾配があるらしい。この勾配は銀河面上の 窒素の勾配を反映しているのであろう。

Keenan, Garrison, Deutsch 1974
Me, Se 型ミラのスペクトル型改訂カタログ
 1966年カタログを拡張して 795 ミラ型星を含ませた。多くが極大時付近で観測された。 青領域では CaI λ4226, CrIλ4254, SrII λ4077, FeI λλ4063 - 4071 吸収線、Hδ、Hβ  輝線、 AlO と ZrO の最も強い青バンドの強度を表にした。  二つのカタログデータを用いて極大時の平均スペクトル型を改訂して与えた。 ミラ型星のスペクトル型と周期、 Ca λ4226 強度とスペクトル型の関係をグラフ にして示した。極大時に限らず、様々な位相でのデータが揃っている T Cep について スペクトル型と Ca λ4226 強度の時間変化を変光曲線と共にグラフで示した。

Fay, Stein, Warren 1974b
低温星のスキャナー観測
 スペクトル型 G0 - M5 の 9 矮星、10 巨星、6 超巨星の分解能 30 A 光電スペクトルスキャン観測を行った。すべての星は 4 A 間隔で λ 3300 - λ7000 で測定された。この分解能での吸収線が同定された。  それらは、FeI, FeII, CaI, CaII, MgI, NaI の強い分子線と、 TiO, MgH, CaH, SiH, AlH, CN, C2, OH, NH の電子遷移の振動バンドである。 FeI λ3740 ブレンドと λ3440 窪みの温度依存性を議論した。

Fay, Warren, Johnson, Honeycutt 1974a
炭素星の 5000 - 7000 A スキャナー観測
 26 N-型、11 R-型星の 5000 - 7000 A, 分解能 20 A 光電スペクトル観測を 行った。カラー指数 [0.57]-[0.68] を定義し、(V-R)カラーと [3.5-11/0] 指数 との相関を調べた。新しい測光指数を CN, C2 バンド強度を測る ために改訂した。  我々の CN 指数は 12C/13C 比の推定に用いられる。 我々の 0.56 μm C2 指数は 1 μm CN 指数と正の相関を示し、 また 2.3 μm CO 指数と逆相関を持つ。モデル大気計算と比べると、 これらの関係は C/O の変化に起因すると解釈できる。

Hyland 1974a
中分散の2ミクロン帯スペクトル
 2 μm 中分散スペクトルを調べた。12C16O, 13C16O, H2O, CN の振動回転スペクトル、 Bγ の例を示す。CO, H2O のバンド強度、カラー、光度の関 係を G5 より晩期の 100 星の観測から得た。  これ等の関係の解釈と炭素星における CO 強度のカラー依存性のような重要な 問題を議論する。2μm スペクトルを使った赤外源のスペクトル分類の例を 示す。このような観測を銀河中心核に応用する問題を簡単に論じる。

Johnson, Mendez (1970)
M-型超巨星と炭素星の赤外 CN バンド
 A0 - M7 までの 32 星赤外スペクトル 44 個を示す。炭素星も 7 つ 含まれる。CO, CN, C2, CH, TiO, H2O, それに 多分 AlH を同定した。多数の原子線も見えた。中でも Braγ は多くの K, M 型星では輝線として見える。C13O16 は C12O16 から容易に分離できる。それから C12/C13 比は多くの K-, M-型星で 4 - 5 で、炭素星 では 10 - 15 である。S-型星 χCyg では C12/C13 比が少なくとも 30 である。M-型星 βPeg, μCep の 3250 cm -1 を中心の幅広の吸収帯は炭素星に見られるものとよく似ている。 これは H2O の氷吸収帯と似ている。

Wing, Spinrad (1970)
M-型超巨星と炭素星の赤外 CN バンド
 CN レッドシステムの 1.1 - 2.5 μm バンドを公表されている M-型 超巨星と炭素星のスペクトル中に見出した。それらの強度は我々が観測 した 1 μm 領域 CN レッドシステムの観測と合致した。M-型超巨星 での > 1.1 μm バンドは以前 H2O によると考えられて いたものである。改訂されたバンドの同定はこれらの星では C/O 比が 1 に非常に近い事を意味する。炭素星においては CN バンドが広くて深い 窪みを作り、このため CO 回転振動バンドは弱く見える。炭素星の間で 観測される CO バンド強度の差は主に CN 量の差によるものであろう。 CN レッドシステムは K-型巨星、 K-, M-型超巨星、炭素星の b-b オパ シティの中で多分最も重要である。

FitzGerald 1970

星の固有カラーと二色図赤化線 
 Photoelectric Catalogue (Blanco et al 1968) を用い、 Johnson UBV と Cape UcBV システムの双方で、全ての MK クラスの星 の固有カラーを求めた。ある MK クラスの星の固有カラーを求める方法は
(1).A - M III, IV, V 星は無赤化星の平均カラー
(2).A - M I, II は2色図上系列の最も青いカラー
(3).O - B 型星は 2色図上の赤化直線
 赤化直線、Eu = αEy + β Ey2 の勾配は早期型星から決めた。UBV システムでの 値は、Cygnus 領域で α = 0.75±0.01, 残りの天域で α = 0.70±0.01 であった。曲げ率 β はどちらでも β = 0.05 であった。UcBV では α = 0.37±0.01, β = 0.00 で、スペクトル型依存はなかった。

McClure,R.D., Racine,R. 1969
フィールド星の測光からの M3, M13, M31、M33 測光
 晩期型星の星間赤化を決める新しい方法を開発した。 カラー指数 C(42-45), C(45-48), B-V に基づいてG-K型巨星の 赤化と光度クラスを決める方法を 定式化した。この方法はメタル量の影響が弱い。
しかし、ごちゃごちゃして途中で分からなくなった。Janes 1977 がやり直している(多分) のでほっておく。

McClure, van den Bergh 1968
星の中間帯域5バンド測光
 中帯域フィルターで210星、50星団、56銀河を測り、C(35-38)=バルマー不連続、 C(38-41)=4000A付近のラインブランケッティング不連続、C(41-41)=紫CN吸収、 C(42-45)=Gバンドブレークを調べた。
 このバンドシステムはUBVシステムを補完して、赤化を受けた星のスペクトル型 と光度を決めることを目的とする。さらに、個々の赤化を受けた星の紫外超過を 決めることも可能である。やり方の例も載せる。

Keenan 1966
Me, Se 型ミラのスペクトル型カタログ
カタログは二つの表から成る。第1表は個々の観測から得たスペクトル型 とライン強度を載せた。変光位相と等級は可能な限り載せるようにした。 載せた線強度は5分子のバンドヘッド、二つの原子線、Hδ輝線、光度に敏感 と考えられる3つのライン比の和である。 第2表は個々の星に対する光度極大時の平均スペクトル型を載せた。参考の ため、位置、可視等級の範囲、吸収線の視線速度も載せた。周期スペクトル 型関係をグラフにして示した。

Nassau, Velghe 1964
対物プリズムによる写真近赤外スペクトル
 M, S, C, WR 星の赤外スペクトルを示す。目的はそれらの星の 検出と分類に役立てるためである。 A-バンドでの分散は 1700A/mm で、 波長域は 6800 - 8800 A である。

Nassau, Steophenson (1960)
紫外領域を含む対物プリズムスペクトルの分類
 この論文の目的は北天の高光度星サーベイの第1ステップである。これは ハンブルグ天文台とワーナースワーゼイ天文台の合同研究である。Slettebak, Stock 1957 は対物プリズムの紫波長域スペクトルのバルマー不連続を使った 選択基準を発表した。我々も類似の研究を行った。 B6 - G0 の間で、 Ia, Ib, II の光度クラスを区別できた。B7 - A5 では光度クラス III が 認識された。
 特異星に関する結果は以下の通り。紫外スペクトルは白色矮星と ある種の A 型星の同定に特に有益である。しかし、多くの特異星は この分散度では普通の星に見える。RR Lyr 型星は通常の Ib - II クラス の普通の A 型星に見える。λ = 5900 - 6900 A での銀河系サーベイ が早期型星を高光度 OB 星から区別するために行われた。これらの乾板は 惑星状星雲や輝線星の検出に有用であり、早期 M-型、S-型星の検出にも 赤外サーベイより有用である。強い CN バンドを持つ炭素星も検出可能 である。

Burbidge, Sandage (1958)
銀河星団 NGC 7789 の色等級図
高齢で巨大な銀河星団 NGC 7789 の色等級図。Sandage の進化観測プログラム 天体の一つらしい。
 (1)(m-M)o=11.36 D=1.87 Kpc.
 (2)ブルーストラグラーの検出。
 (3)巨星枝先端は (1.62, -2.3) [Mv=-1.57の星しか見えない?]
 (4)B-V=1.62 は M2III 相当のカラーだが、分光からは K4 だった。
 (5)CMD 上で巨星枝は M11 巨星枝と交差する。年齢・メタル量効果の実例なら面白い。

Morgan (1958)
太陽から離れた距離にある青色巨星の観測
 通常の分光観測では青領域で暗過ぎる早期型星を発見し、観測する ための技法を述べる。

Halliday (1955) 
分光視差から導いた G8 - K1 星の光度関数 
 G8 - K1 型の227星に対して 33 A/mm 分光観測を行い、 MK 分類と光度を求めた。  光度関数には準巨星の付近に著しい極小が見られた。分光視差 と空間運動を全ての星に求めた。24 星では銀河面内の速度が 65 km/s を越えた。

Cameron, Nassau (1955)
近赤外低分散スペクトルによる晩期 M-型星の分類
 近赤外 (λ6800 - 8800)低分散スペクトルによる晩期 M-型星 (M6 - M10)の分類体系を提案する。これは M7 から強まる λ7400 - λ7900 VO 吸収強度と M6.5 から始まる TiO λ8300 吸収に基づく。

Nassau, Albada (1949)
シグナス領域での M-型星
 24" シュミット+2°, 4° プリズムにより M-型星を TiO バンド、 炭素星を CN バンドで分類した。S-型星は新しい λ7950 バンドで区別した。
 l = 41°.2, b = 3°.7 のシグナス領域で M-型星の探査を行った。 M0 - M4 の 627 星から密度を求めた。距離 2 kpc で 16 × 10-6 pc-3, 6 kpc で 8 × 10-6 pc-3 であった。M 2.5 - M4 の 107 星については、それぞれ、 4 × 10-6 pc-3, 0.7 × 10-6 pc-3 となる。

Nassau, van Albada (1947)

F0 - K5 星の対物プリズムスペクトルの光度クラス基準
 Warner-Swasey 天文台 24-36 インチシュミット望遠鏡対物プリズム 観測による F0 - K5 スペクトルの光度クラスを決める方法を示す。 スペクトルは λ 3706 から Hγ の間で得た。
  F0 から K5 までの 12 スペクトル型について、4つの光度クラスに対する 基準を、吸収線の強度を示す図により示す。この方法による正確なスペクトル 分類は 10 等までの星に可能で、多分それより暗くても行けるだろう。

Nassau, Seyfert (1946)

天の北極 5° 以内の BD 星のスペクトル分類
 北極から 5° 以内の BD 星全てのスペクトル型と光度クラス分類を Burrell 望遠鏡 4° 対物プリズム観測から決めた。スペクトル型分類の基準が確立 された。また G2 より晩期の星については巨星と矮星を区別する基準が作られた。 我々の分類と HD システムとの間の一致は良い。
 我々の結果による 6 - 11 等での矮星の割合は他の研究と一致する。 選択吸収は 450 pc で 0.30 等まで距離に比例して増加する。その先では 吸収量一定である。平均固有カラーを矮星のスペクトル型毎に、巨星では G0 より晩期について、求めた。



大気モデル

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著者 内容

Agundez, Martinez, de Andre, Cernicharo, Martin-Gago (2020)
AGB 星大気内の化学平衡  
 M-, S-, C-AGB 星大気の化学平衡を計算した。一般的に、化学平衡の結果は 星周外層中の組成観測結果をよく説明する。しかし、平衡予測に比べ数桁も多く 観測される分子もある。例えば、M-型星では HCN, CS, NH3, SO2, S-型星で H2O, NH3, C-型星で H2O, NH3, SiH4, PH3 などで ある。
以前の研究と同じく、C-星大気で最初に現れる凝結物質は C, TiC, SiC であり、 O-リッチ流出流中では Al2O3 である。C ダストのガス 前駆分子はアセチレン C2H2 と C 原子、それに/または、 C3 である。  SiC ダストの前駆分子は SiC2, Si2C である。TiC (タイタニウムカーバイド)ダストに関しては、大気内部で最も豊富 な原子 Ti が TiC ダストに対する主要供給源であろう。しかし、化学平衡計算は TiC 凝結が予想される領域では、原子 Ti の代わりに Ti8C12 や Ti13C22 のような タイタニウム・カーボンクラスターが Ti の貯留体となることを予想する。これは 大きな TixCy の集合が TiC ダストの最初の凝結核の 形成と関係することを示唆する。
(隕石で見つかったプレソーラー物質で ある TiC になぜか入れ込んでいる。 天体観測例は?波長は?)
Al2O3 ダストに関し ては、原子 Al と Al-O 結合を含む AlOH, AiO, Al2O が最有望な ガス前駆体である。

Ireland, Scholz 2006

M-ミラ型星動的大気内でのダスト形成
 1.2 Mo ミラ型星の色々な変光位相に整合するモデル大気中で非灰色の温度依存 オパシティを持つダストの形成を調べた。それらの測光、干渉計観測での特性を 予想した。初期形成シリケイト内の鉄成分と供給可能なグレイン核の量が決定パ ラメターとなる。  もっともらしい仮定の下で、ダストは連続平均大気半径の 2 - 3 倍の大きさで 形成される。この研究で波長1μm 以下では、ダストなし大気の基本振動モード モデルの半径よりミラ型星の半径が大きく見えることが説明された。

Bessell 1998
O - M 星のモデル大気
Johnson-Cousins-Glassシステムでの広帯域カラーと輻射補正を合成のスペクトルを 使って計算した。理論上のカラー-温度関係を赤外フラックス法、月掩蔽、 巨星半径、食連星と比較した。カラー・カラー関係とカラー輻射関係に理論と 観測の一致を確認した。理論的な輻射補正と温度-カラー関係は観測カラー等級図 から HR 図への変換を可能にする。

Bessell, Brett 1988
JHKL 測光:標準システム、パスバンド、固有カラー
 SAAO, ESO, CIT/CTIO, MSO, AAO, Arizona の JHKL システムのカラーの関係を 調べ、カラー変換を一次式で表わした。均質化システム、基本的には Johnson - Glass システム、を提案し、その絶対等級は Bell の α Lyr 大気フラックスモデルに 基づいて導いた。標準星の均質化カラーを用いて、 B7V - M6V と G7III - M5III の 固有カラーを定めた。
 MSO IR システムの JHKL パスバンドを用いて、太陽を含む幾つかの星の相対的な 絶対フラックスから合成カラーを計算した。 標準化(?)された JHKL カラーとの 一致がよいことから MSO パスバンドを均質化システムを代表するものとして採用 し、理論的または観測フラックスから赤外カラーを計算できることが判った。

 他の赤外システムのパスバンドは公表データを用いて同様に評価された。 こうして得たこれらのパスバンドは、次に、システム間の観測的な関係と一致 するように波長を調整された。こうして異なるナチュラルシステムの有効波長 を評価できた。非常に赤い星の分光測光が得られれば、有効波長の決定はさらに 改善されるであろう。



メタル量の決定法

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著者 内容

Pont, Zinn, Gallart, Hardy, Winnick (2004)
CaT から導くフォルナックス矮小楕円銀河の化学組成進化
 フォルナックス 117 赤色巨星の近赤外スペクトルを VLT/FORS1 で撮った。 これからメタル分布を求め、色等級図赤色巨星枝の年齢・メタル縮退を 分ける。メタル量は CaT 等値幅を球状星団、散開星団 M67, LMC で較正して 決めた。
これまで発表された CaT 等値幅 の理論モデルを用い、光度、メタル、年齢に対するその依存性を調べた。 I 等級と等値幅の相関は年齢によっては僅かしか影響されないので、そこで この関係をフォルナックス星のメタル量を決めるのに使った。

Idiart, Thevenin, De Freitas Pacheco 1997
恒星種族指標としての CaII 三重線
  CaII 三重線強度の役割に関して文献上ではまだ一致が見られない。 そこで、一様な恒星パラメターのサンプルに対し CaT 分光観測を行った。 年齢 1 - 16 Gyr, [Fe/H] -2.5 から +0.3 に渡る単一恒星種族に対する 合成スペクトルを計算した。モデルスペクトルを銀河系球状星団データと 比較した。モデルとの比較から導いたメタル量は Armandorff, Zinn 1988 の スケールと非常に良い一致を示した。

Armandroff, Da Costa 1991
CaII 三重線から導く古い恒星種族のメタル量
 銀河系球状星団の CaII 三重線強度を測り、メタル量との関係を調べた。 三重線の内強い二本の強度の和を V -VHB に対してプロット するとメタル量との相関が最も良い事が判った。特に [Fe/H] < -1.2 では感度が良い。それより高メタルでは感度が鈍くなり、それより 高メタルでは [Ca/Fe] が +0.3 から 0.0 に低下する可能性があり、 この方法の適用には [&alpha:/Fe] の補正を加える必要がある。

Hron (1991)
短周期ミラ型変光星のメタル量の測光による決定 
 P ≤ 200 d の短周期ミラは低メタル星と円盤星の混合集団と考えられて いる。測光観測と低質量ミラの大気と脈動モデルに基づいて、両者を分離する 方法を議論する。  球状星団のメタル組成とフィールドミラの運動学を測光データと結合して、 (Vmax - K)o が円盤星と低メタル星を分離するのに使えることを 示す。現在得られる P = [145, 200] d フィールド星の VJK 測光はこの星 集団内のメタル量の広がりとして -0.5 dex を得た。

Olszewski et al. (1991)
 LMC 80 星団に属する 150 星の Ca II 三重線の等値幅 EW(Ca) を測り、[Fe/H] と Vr を決定した。

Da Costa, Hatzidimitiou, Irwin, McMahon (1991)
セクスタンス dSph 銀河の視線速度とメタル量
 AAT/FOCAP ファイバー分光器により最近発見されたセクスタンス dSph 銀河の14星の CaT スペクトルを撮った。CaT 等値幅からメタル量 [Fe/H] = -1.7±0.25 が 得られた。この値は光度メタル量関係からの予想より高い。

Armandroff, Zinn 1988
球状星団積分光の CaII 三重線
 球状星団 27個の 積分光から、Ca II 三重線 (CaT) スペクトルを調べた。 等値幅はメタル量と非常に良い相関を示す。したがって、 CaT は球状星団 メタル量の指標として使える。

Claria, Lapasset 1983

ヒアデスより高齢の3星団内巨星の物理的性質
 高齢散開星団 NGC 2482, NGC 3680, IC 4651 の 広帯域 CMT1T2, 中帯域 DDO 測光を行った。独立な二つの測光 規準を用いて、フィールド星と星団星を分離した。また、赤化、距離指数、 金属量、有効温度、表面重力を導いた。質量も粗い見積もりを出した。 NGC 2482 と IC 4651 の巨星はヒアデス巨星とほぼ同じ CN 強度を有する。 NGC 3680 の方は近傍 K 型巨星よりもわずかに強い CN 強度を示す。 CMT1T2 から NGC 2482 と NGC 3680 は鉄ラインから 導かれた値として、 [Fe/H]MT = -0.1±0.1、一方 CNO-混入のある (C-M)指数は 0.4dex 高い。 CMT1T2, DDO 双方が IC 4651 は [Fe/H] = +0.2±0.1 で中間年齢、高齢星団の 金属量分布の高金属量側に位置することを支持する。NGC 3680 と IC 4651 の クランプ星はその位置でヘリウムコア燃焼を開始する以前にマスロスを受けて いたようだ。

Mould, McElroy (1978)
高メタル球状星団の TiO バンド強度
 球状星団巨星枝先端にある星の有効温度と TiO バンド強度の変化を観測した。 フィールド巨星ではバンドが強い温度で、中間メタル量の球状星団では TiO が検出 されなかった。この結果に赤化補正は重要でない。  高メタル星団では最も低温の星で TiO が検出された。それは同じ温度のフィールド 星と較べると弱い。赤化に関し適当な知識があると、この結果を使って星団をメタル量 で並べられる。予備的な理論較正から、 NGC 6171 と M71 のメタル量は他の研究結果 と一致する。

Canterna 1976
G, K 型星の広帯測光:C, M, T1, T2 システム
 G, K 型星の温度、メタル量、CN 指数を得るための特別な測光システム C, M, T1, T2 を開発した。このシステムは UBVRI システムより効率が良い。温度指数 T1 - T2 は R-I と線形関係にある。Δ(M-T1) 指数から導かれるメタル量は ファクター2の不定性がある。このシステムは CN 分子バンドによるブラン ケッティング効果を、紫外域における金属吸収線によるブランケッティング から分離することが出来る。シアノジェンバンド指数 ΔI(CV) は [Fe/H] ≥ -1.0 の巨星に対して、強 CN 星 (CN, +3, +2) と弱 CN 星 (CN, -3, -2) とを区別できる。
 ΔI(CV) は DDO CN バンド強度指数 δCm と線形の 関係にあることが判った。 M67 中の巨星及びいくつかの SMR 巨星の観測 から、
(i) M67 は通常よりやや低メタルで、 SMR ではない。
(ii) SMR 星での大きな UV 欠乏はメタルがやや多く、 CN バンドが異常に 強い結果である。
M, T1, T2 を G型矮星の組成研究に応用できる可能性 がある。Δ(M-T1) と Δ(C-M) は G 型星の δ (U-B) と単調な関係にあり、温度指数は B-V, V-r よりブランケッティングの 影響が小さい。Δ(M-T1) と ΔI(CN) への赤化と光度 の影響も論じた。

Janes 1975
K 型巨星の CN 強度、光度、運動
 DDO 中間帯域測光を G, K 型の 1200 星に行い、CN 強度異常と絶対可視 等級を導いた。予想された通り、CN 強度指数 δCN は [Fe/H] と相関 していた。一方、絶対等級の方は興味深い以下の結果を得た。
(i) K 線 絶対等級のウィルソン・バップ較正には修正が必要である。
(ii) δCN と Mv(K線) の間に相関はない。つまり、Mv(K線) にメタル依存性はない。
(iii) 新しい較正から出したヒアデス距離指数は (m-M) = 3.22 である。
 DDO 絶対等級に文献からの視線速度、固有運動を加えて 799 巨星の空間 速度を計算した。Z 方向速度は予想通り、δCN と相関がある。δCN が非常に弱い星は円盤上を高速で動いている。さらに、運動学から δCN には銀河系動径方向の勾配があるらしい。この勾配は銀河面上の 窒素の勾配を反映しているのであろう。



セファイド

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著者 内容

Chen, Wang, Deng, de Grijs, Yang (2018)
周期変光星の WISE カタログ  
 WISE の 5年間に亘るサーベイを基に全天変光星カタログを作製した。 100 回以上の測定を条件として注意深く選ばれた 50,282 の周期変光天体が検出 され、その内 34,769 天体 (69 %) は新発見であった。多くは銀河面と赤道の 曲付近に集中する。GCVS の既知変光星を用いて、中間赤外変光曲線に基づく 変光星の分類法を確立した。21,427 個の EW-型食連星、 5654 個の EA-型食 連星、1312 セファイド、 1231 RR Lyr が同定された。  文献中の既知変光星と比較して、短周期変光星の誤分類は 5 %、長周期では 10 % と見積もった。カタリナカタログとの比較は独立に決められた二つの変光 タイプ、周期、振幅は良い一致を見せた。この拡大変光星サンプルは、銀河系 構造と減光の研究だけでなく、恒星進化理論に制約を与え、JWST の観測候補を 提供する。

Chen, Wang, Deng, de Grijs (2018)
銀河中心方向の極度に低い中間赤外減光と 55 セファイドの距離  
  GC 方向の古典セファイド 55 個から NIR - MIR 減光則を3つの方法で導い た。我々の MIR 減光則は 極めて低く、急勾配である。7バンド最適距離の方法を用い、我々の 55 セファイドサンプル星の平均距離精度を 4 % に改善した。銀河中心セファイド 4つを用いて、銀河中心距離 Ro = 8.10±0.19±0.22 kpc とした。
(筋が怪しい気がする。最後の方で 論理を整理した。)

Rimoldini + 25 (2018)
VGaia DR2 : 振幅の大きな星の全天分類
 Gaia DR2 の 16.9 億星の内、50 万以上の星が 22ヵ月の観測期間中に測光 時間系列に変光を示した。G-バンドで 0.1 等以上の変光があった星に対し、 セファイド、超周期変光星、δ Scuti/SX Phoenicis, RR Lyrae のよう な全天球上の分類が与えられた。採用した半教師付き分類法は、第1に 文献中の変光タイプ既知の星を用いて多段階ランダムフォレスト クラスィファイア―を訓練し、第2に Gaia データを予備分類し、第3に あるタイプの表現を改善するために最初の分類から選択した結果を含んだ 第2訓練を行って、最終的な Gaia データの分類を完成させる。  専用の検証分類法を用いて公表された結果に存在する混入レベルを下げた。 星のかなりの割合はフーリエ級数の表現が十分なほどのサンプル数がないので、 分類法は G, GBP, GRP バンドの測光時系列の統計的 な特徴と幾つかの位置天学パラメタ―とに基づいて行った。その結果、 195,789 RR Lyrae, 150,757 LPVs, 8550 Cepheids, 8882 δ Scuti/SX Phoenicis を分類した。これらは全て候補であり、その完全性と混入度は変光 タイプ別に調べられた。結果は分類クラスと分類評価とで表現された。 それらは Gaia archive の vari_classifier_result から得られる。

Cioni, Ripepi, Clementini, Groenewegen, Moretti, Muraveva, Subramanian 2017
VMC における脈動変光星
 VMC = the VISTA survey of the Magellanic Clouds は 2009 年に観測を開始 した。その後、 Ks モニターと追加の Y, J 測光をマゼラン系に亘り行ってきた。  その中には脈動変光星=セファイド、RR Lyrae, AGB 星が含まれている。 それらの星はマゼラン系の幾何学を追跡する有用な天体である。

Monson (2009) Thesis
赤外カメラ開発と北天銀河系セファイドのサーベイ
ワイオミング大学レッドバッテス(Red Buttes)天文台0.6m望遠鏡 近赤外カメラ BIRCAM (Buttes InfraRed CAMera) は、ハワイー2アレイを使い、 より大きな装置のテスト用に作成された。その比較的 短い寿命の間に130領域のサーベイを行った。 北天の131セファイドの光度曲線を得た。それらから、光度重みの近赤外等級 を求めた。距離と減光が知られている19セファイドを用い、周期光度関係を作った。 この関係の分散は 0.13 等で、勾配はLMCセファイドのそれと区別がつかない。 分散の値はこれまでのサーベイと同じくらい小さい。銀河系 PLR をLMCに適用すると DM(LMC) = 18.49 ±0.06 となる。GAIA が上がると銀河系 NIR PLR の 決定版を作ることができる。


Nikolaev, Drake, Keller, Cook, Dalal, Griest, Welch, Kanbour (2004)
MACHO と 2MASS から導いた LMC 円盤の幾何学
 MACHO で得た 2000 セファイドの完全な {VR}KC 変光曲線 と 2MASS の単期 JHKs 測光から、LMC 内側 ρ<4° の傾き角 と幾何形状を調べた。

Udalski, A., Soszynski, +5 (1999)
可視重力レンズ探査。LMC のセファイド IV. カタログ
 OGLEII マイクロレンズィング探査からの、LMC 4.5 平方度内セファイド 1333 個 のカタログを提示する。カタログには周期、BVI測光、位置、Iバンド変光フーリエ分解の R21, φ21 が載せられている。
 カタログの大部分は古典セファイドである。残りは種族IIセファイドと脈動様変光 を示す赤色星である。
 レッドクランプの局所平均等級の差を星間減光によるものと考え、LMC 84 方向の 減光量を求めた。

Wood+2 1985
LMCバーの長周期変光星に見る最近の爆発的星形成
 LMCバーとその北における セファイドの周期、光度分布もやはり6 ×107 年前に星形成期があった 事を示す。

Turner (1980)
20 日セファイド RU Scuti のアソシエイションメンバーシップ
 19.7 日セファイド RU Scuti の近傍にある明るい星の UBV 測光と MK スペ クトル型を示す。二つのはっきりした集団が見えてきた:DM = 11.60 (2.09 kpc) で Trumpler 35 星団(t=25 Myr)の中にある近距離群と DM = 12.74 (3.53 kpc) で t=9 Myr の遠距離群である。  赤化量と進化段階の一致から RU Sct は Trumpler 35 群に属する。 OB 星に対する赤化 E(B-V) = 1.03 から ⟨MV⟩ = -5.19 が得られた。明るい未研究の背景アソシエイションは WC9 星 MR90 を含んで いるらしい。

Tammann (1970) 
若いセファイドの銀河面分布 
 種族 I 長周期セファイドの分布を調べた。セファイドと銀河星団の年齢の 比較から、P > 11.25 d、 年齢 ≤ 30 Myr は b 2-3 の早期型星団と同じ くらいよい渦状腕の追尾天体である。  セファイド距離は改訂された周期・光度関係と色超過から決めた。得られた分布 は若い星団から導かれる渦状腕とよい相関がある。

Fernie (1968) 
古典セファイドと銀河系構造 
 古典セファイドの空間分布に基づいて銀河系の構造を研究した。主な結果は
(i) 星間減光の銀経依存は kv=0.90+0.28sin(l+41)
(ii) 太陽はセファイドで定義される腕の外側の縁に位置する。
(iii) これは B-型星で定義される局所腕のケースと逆である。
現在のセファイドサーベイは不完全で、特に高銀緯 b > 10 での mv = 7 セファイドはまだ見つかるはずである。
 太陽は銀河面から 45±15 pc 上にあり、この面は形式的な銀河面に対し 0.8±0.2° 傾いている。この二つの面の交差点は太陽から 5.2 kpc, l = 97° 方向にあり、ノード線がこの方向に直交している。セファイドの z 方向分布は指数関数型でスケール高は 70 pc である。 Ro = 10 kpc を仮定して、 平均周期は 1 day/kpc で減少する。 

Fernie, Hube (1968) 
古典セファイドのカタログ 
 GCVS 第2版に載った 362 個のセファイドに対し、基本データを集めた。少なくとも 36 個は古典セファイドではないらしい。

Kraft (1961) 
古典セファイドと超巨星の色超過 V. 周期・カラー関係 
 最近の測光観測に合わせて、論文 III の結果を改訂した。以前のセファイド 測光結果がどれも同じような精度ではなかったことが示された。前の論文で使った 方法により 31 セファイドのカラーと周期 - 平均カラー関係が導かれた。それは、
⟨B-V⟩o = -0.101(log P)2 + 0.5385log P + 0.2644
 Johnson 1960 の星団測光視差に基づいて、星団セファイドの絶対等級が決まった。 脈動定数 Q の周期 P に対する依存性が求まった。 距離決定の方法を述べる。 36 個は古典セファイドではないらしい。

Walraven, Muller, Oosterhoff (1958) 
セファイド 184 星の光電測光等級とカラー 
 ヨハネスブルグにあるライデン観測所ロックフェラー天体測光器により、南天 セファイドの青、黄色光電測光を行った。観測は 12 等まで完全である。 ケープ S システムの固有カラーと周期の間に
     SCImax = +0.01 + 0.10 log P
色超過と減光の関係を論じた。それから決まった 184 セファイドの距離は表 13に載せた。  図12にはセファイドの銀河面上の位置をプロットした。最も興味深い特徴は 銀河中心方向約 600 pc 付近にセファイドが集積して見えることである。これは カリーナ腕の連続となっているように見え、明らかにサジタリウス腕とは異なる。 サジタリウス腕自体は多数のセファイドを含む。

Bok, Olmsted (1949) Thesis
白鳥座の4つの暗いセファイドのカラー
 シグナス中心部を 22-33 Jewett-Schmidt 望遠鏡により観測した。Baade が発見した 4つのセファイド GL, QY, V343, V336 Cygni は Oort, Oosterhoff 1942 が 距離を求めた。それらを再調査した。  それらの距離は GL Cyg で 6.0 kpc, QY Cyg 8.3 kpc, V343 Cyg 7.6 kpc, V336 Cyg 15.8 kpc であった。
注:QY, V343, V336 Cyg = W Vir Type (SIMBAD) は距離過大評価。



 RR Lyr 

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著者 内容

Matsunaga + ? (2021)
太陽近傍にある円盤軌道を持つ低メタル RR Lyr 星  
 スケール高 1 kpc の厚い円盤内にあり、軌道が厚い円盤の運動と整合する RR Lyrae を発見した。この RRL 星は太陽から 1 kpc のところにあり、V = 11.3 mag で、これまでに知られた最も明るい 100 個の RRLs に入るが、 銀河面の真ん中 b = -1° にあるためこれまで殆ど調べられてこなかった。  その 0.91 - 1.32 μ スペクトルにはパッシェン系列以外の吸収線が殆ど ない。これは [Fe/H] < -2.5 を意味する。これは軌道が厚い円盤に属する RRLs のなかでは最も低メタルである。これは内側銀河における星形成に 重要な手掛かりを与える。



レッドクランプ

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著者 内容

Howell, Campbell, Stello, De Silva (2022)
星震学から求めた 球状星団 M4 内の進化した星からの総マスロス量
 低質量星ではマスロスは赤色巨星枝で最も著しい。様々な恒星進化段階に おける質量の直接観測はマスロスを定量化する最良の方法の一つである。 M4 は星震学データが様々な進化段階に星に対して存在する唯一の星団である。 K2 測光を用いて、M4 内の 75 赤色巨星の星震学質量を定めた。その結果 総マスロス = 0.17±0.01 Mo を得た。これは Reimers のマスロス係数 η = 0.39 に相当する。  また、 EAGB 星に太陽と似た振動を初めて検出した。それら EAGB 星の 平均質量 0.54±0.01 Mo はモデルの予言する質量より著しく低い。 これは水平枝でこれまで予想されていたより大きなマスロスを示唆する。 それでなければ、EAGBs のスケーリング関係に未知の要素が存在するのかも 知れない。RGB サンプルに質量の双峰性を見出した。複種族のためであろう。 しかし、水平枝サンプルは単一値を示す。

Shan, Zhu, Tian, Zhang, Wu, Yang (2018)
レッドクランプ星から求めた SNRs 距離  
 銀河系第1象限の SNRs 距離を測定した。レッドクランプ星を標準光源と減光 探索子に用いて、個々の SNR 方向で Av - D 関係を導出した。15個の SNRs 距離が導かれた。今回求まった距離の殆どは以前の距離推定値と矛盾しない。

Girardi (2016)
レッドクランプ星  
 ヘリウム中心核燃焼段階にある低質量星は近傍銀河の色等級図上に鋭い構造 =レッドクランプを作る。この構造は、特にマゼラン雲と銀河系バルジにおい て、恒星距離と減光の分布を探る幾つかの研究を生み出した。大規模分光および 振動サーベイで、レッドクランプは容易に識別可能である。そのため、これは 銀河系円盤上で星の密度、運動、元素組成を探る絶好の探索子となる。
 レッドクランプは明るいので、矮星よりも遠方まで届く。また他の巨星よりも 精度が高い。ここで、我々はなぜレッドクランプが観測データの狭い範囲に収 まるのか、その細かい構造を論じ、さらに、年齢、メタル量、観測バンドによる 系統的変化を議論する。これらは、いくつかあるレッドクランプ法の適用に 制限を加えるものである。

Messineo, Zhu, Menten, Ivanov, Figer, Kudrizki, Chen (2016)
内側銀河における異常に多数の赤色超巨星の発見
 Q1 と Q2 を使い、2MASS と GLIMPSE North カタログから選んだ RSG 候補 94 個の H-, K-バンド R/1000 赤外分光観測を行った。水吸収が強くなく、 EW(CO) が大きい 58 個 = 61 % の RSGs を同定した。   47 個の距離をレッドクランプ法で決定した。
Mosser + 20 (2014)
赤色巨星のミックスモード:恒星進化への窓  
 準巨星と巨星における混合性の振動が検出され、中心核の物理条件が調べら れるようになった。ケプラーデータからデータを選び、星の進化段階と質量を マップした。振動進化経路を周波数と周期間隔の面上に引いた。
 進化段階の変化を定める asteroseismic な特性を定量的に示した。  特に準巨星から早期赤色巨星枝星への転移を明らかにした。恒星振動の情報は はっきりしているので、恒星モデルに関係なくヘリウム燃焼核内のエネルギー 輸送や赤色巨星枝、前近巨星枝に入る星の内部構造の研究に使える。 またヘリウムサブフラッシュの星の研究から、第2レッドクランプ星、ブルー ループ星の星が同定される。

Wang, Jiang (2014)
APOGEE に基づく近赤外減光則の普遍性  
 APOGEE H バンド分光サーベイ(SDSSIII)から多数の巨星の表面温度、そして 固有カラーが求められた。5942 個の K-型巨星を用いて NIR 減光則を再検証した。
( 個々の星毎に固有カラーを決めて 赤化を求めているのは斬新である。)
E(J-H)/E(J-Ks) には E(J-Ks) = 0.3 - 4.0 の範囲で色超過依存性が認められなかった。  これは星間空間の希薄領域と濃密領域とで減光則が一定であることを示す。その一定値 E(J-H)/E(J-Ks) = 0.64 はべき乗指数 n = 1.95 に対応する。他の比は E(H-Ks)/E(J-Ks) = 0.36 と E(J-H)/E(H-Ks) = 1.78 であった。以上の結果は MNR ダストサイズ分布に合致する。

Fourtune-Ravard, Babusiaux, Gomez (2013)
銀河系の減光マップ:モデル非依存法 
  これまでの天の川3D減光マップは全て、例えば Marshall et al. 2006 のように、モデルとデータの比較に基づいていた。ここでは モデルに依らず減光マップを作る方法を提案する。 我々は CMD 上でレッドクランプ系列を識別するアルゴリズムを開発した。 これにより、距離ー減光関係を視線に沿って導いた。2MASS と UKIDSS データを用いて詳細な 3D 減光マップを作った。

Wegg, Gerhard (2013)
 VVV レッドクランプによる銀河系バルジの3次元マップ
 内側銀河系では円盤不安定性から生じたと考えられるボクシー3軸不等バルジ が支配的である。その近さに拘わらず、我々が不透明な円盤中にあるため、その 大規模構造は未だに良く知られていない。  VVV サーベイの DR1 を用い、レッドクランプ星を用いたバルジの3次元分布 を示す。視線方向の密度分布は Ks 分布に減光と検出度の補正を行って求めた。 モデル化に当たってはバルジは8重の対称性を保持すると仮定した。
 そうして、バー主軸の傾きを (27±2)° と求めた。得られた密度 分布は非常に細長く、軸比が 10;6.3;2.6 で指数関数型スケール長= 0.70: 0.44-0.18 kpc である。銀河面から 400 pc 上でバルジの密度分布はX字構造 を示す。全体としての構造は棒銀河に特有なボクシーでピーナツ型の形を している。

Nataf+13 (2013)
バルジ方向の赤化と減光:Rv=2.5 減光則
 OGLE-III with VVV と 2MASS データの E(J-Ks) を結合して、長らく問題だった 銀河バルジ方向の非標準的可視域減光則の問題を解決した。減光は次の式でよく 表せる:AI = 0.7465E(V-I) + 1.3700E(J-Ks), または同等だが、 AI = 1.217 E(V-I)(1 + 1.126(E(J-Ks)/E(V-I) - 0.3433))。 内側銀河の可視と近赤外の減光則は Rv = 2.5 ±0.2 に従う。この値は タイプ Ia SN の起きた銀河での結果に一致する。我々の用いたフィールドの大きさ 6' という細かさでも場所による赤化の違いが検出された。
 バルジレッドクランプの固有パラメタ―は以下の通りに決まった:
(MI,RC, σ(I)RC, (V-I)RC, σ(V-I)RC, (J-Ks)RC) = (-0.12, 0.09, 1.06, 0.121, 0.66) この値から、バルジ構造のパラメタ―を決めることが できた。われわれは銀河中心距離を 8.2 kpc と定めた。この結果、以前に 存在した I バンド観測から定めたバルジ距離の矛盾が解消した。軸の傾き 角度の上限 α = 40 deg である。見かけ等級のピークは N 体計算 からの予想値 25 deg と矛盾しない。RC星の数はバルジ星総質量として 2.0 × 1010 を示す。

Hill, Babusiaux, Gomez, Haywood, Katz, Royer (2012)
内側円盤のメタル量分布とバルジ-円盤関係
 内側銀河系円盤の中間-高齢種族は探索があまり進んでいない亜集団である。 そこで、Rgc = 3 - 5 kpx, Z < 300 pc にある内側円盤レッドクランプ 200 星の高分散分光観測を行った。Rgc < 7 kpc の円盤メタル量は 0.2 dex で、明らかに太陽近傍より高い。  これは中間年齢の星には銀河円盤動径に沿ってかなりの勾配がある事を意味 する。この観測はバルジメタル量分布の高メタル部分は内側円盤の力学的不安 定性が起源であるという説を支持する。

Gonzlez, Rejkuba, Minniti, Zoccali, Velenti, Saito (2011)
 VVV から導いた銀河系内側バルジ
 VVV を用い、b = ±1 でのバーを追いかけた。これは以前に b = 1 で 調べた話の拡張である。6'x6' 区画でレッドクランプ星の J-Ks から赤化を求 める。次に 0.4 deg2 領域毎に赤化補正した光度関数を作り、 平均等級を求める。それらをバー構造を探るトレーサーに用いた。  その結果 Kso(l=-10) = 13.4, Kso(l=10) = 12.4 と分かった。バーの傾きが b = ±4, |l| < 4 では傾くことが分かった。これは他の研究で l > 0 において得られた結果に一致する。バーに内部構造が存在することを 意味する。これは半軸径 500 pc の内部バーなのかも知れない。

Gonzalez, Rejkuba, Zoccali, Valenti, Minniti (2011)
 VVV と 2MASS から導いた銀河系バルジの赤化と金属量マップ I. 方法と短軸マップ
 銀河系バルジの性質は複雑で数か所から外挿で導くわけにはいかない。  赤化マップを作る方法を示し、バルジ構造とメタル量勾配を測る。データには 最近始まった Vista Variables in the Via Lactea (VVV) を用いる。  b = [-8, -0.4], l = [0.2, 1.7] の 1835 サブフィールド内のレッドクランプ星の 平均 J - Ks カラーを求め、バーデの窓での値と比べる。バーデの窓に対しては、 E(B-V) = 0.55 を採用した。そこから微分赤化の影響がないほど小さい空間スケールで 赤化マップを作成する。赤化補正した等級を用いて 0.4° x 0.4° の大きさでバルジ光度関数を作る。それらから距離指標を求め、バルジ構造を探る。 最後に、各サブフィールドごとに導いた距離と減光から測光金属量を、赤色巨星枝カラー の内挿値を使って、求める。測光金属量分布は分光から求めた分布と比較する。
 赤化の決定は作った図から見て取れるように小さなスケールの変動に鋭敏である。 エラーの範囲で我々の結果は他の方法で決めた文献値と合致した。我々のマップは それらより高分解能で範囲も広い。光度関数は最近 2MASS, OGLEIII で発見された 二重レッドクランプを示し、従って X 字型のバルジ形態を追尾する。最後に、 測光金属量は分光値と良く合った。  VVV サーベイはここで示した方法でバルジの性質を調べるのに優秀な道具である。 多の方法との一致はこの方法をもっと広げることの安全性を保証する。

Minniti, Saito, Alonso-Garcia, Lucas, Hempel 2011
レッドクランプ星を用いた銀河系恒星円盤の縁の検出
 ヒッパルコスで較正したクランプ巨星の絶対光度を用いて、UKIDSS-GPS と VISTA Variables in the Via Lactea (VVV) の二つのサーヴェイにより、これら の星のマップを作った。クランプ星の選択範囲をいくつか試して結果を比べた。  銀河面の上下でも分布を調べて、ワープの効果も考慮した。その結果、 銀河系の恒星円盤には R = 13.9±0.5 kpc に縁が存在することを見出した。 恒星円盤の縁をマップできるので、いくつかの銀河系モデルをテストすることが 可能となった。

Bedding + 33 (2011)
水素燃焼とヘリウム燃焼赤色巨星を分ける重力モード
 ケプラーにより数百の赤色巨星に対して1年以上の高精度測光観測を行った。 その結果、それらに重力モード振動の周期間間隔の測定ができた。多くの星で は、その双極モード周期がほぼ等間隔に並んでいた。  それらの星は二つの集団にはっきりと分かれた。周期間隔が約 50 秒の星は 水素殻燃焼星で 100 - 300 秒の星は、ヘリウムも燃やしている。

Guver, Ozel, Cabrera-Lavers, Weoblewski (2010)
中性子星 4U 1806-52 の距離、質量、半径
 2MASS CMD からレッドクランプ星帯を抜き出し、各 K 区分帯毎に J-K カラー分布のピークを求めて、帯までの距離 D と減光 AK を決める。  X 線観測スペクトルから NH を求め、そこから AK を決定する。先の AK-D 関係と組み合わせて D 決定。

Koerwer (2008)
NIR RC からのマゼラン雲 距離と構造
 IRSF マゼラン雲カタログを用い RC 距離をマップした。 LMC 距離指数として 18.54±0.06 を得た。

Durant, Kerkwijk 2006

特異パルサーまでの距離をレッドクランプで決める
 2MASS レッドクランプ星を同定し、赤化と距離の関係を anomalous X-ray Pulsar (AXPs) の方向に対して決定した。この関係を X 線スペクトルから 決めた減光量と結合して、 AXP までの距離を決定した。その結果、全ての AXPs が渦状腕上にあることが判った。
 AXPs の 2 - 10 keV 光度が 1.3 1035 erg s-1 と 一定であることも分かった。さらに距離と光度から決まる黒体放射半径は パルスの割合と強い反相関関係にあり、黒体温度と弱い相関にあることが判った。

Lah, Kiss, Bedding 2005
OGLE-II データの赤色変光星 III. LMC と SMC の3次元構造への制約
 OGLE-II サンプル赤色変光星の周期光度関係を用い、平均 P-L 関係 からのズレを距離のズレと解釈することで、マゼラン雲の立体構造を 調べた。OGLE-II RC 距離との比較では興味ある 差が検出された。これは RC の赤化補正に関係するらしい。場所により RC 種族が変わる事がその差を説明するかもしれない。

Sumi 2004

銀河系中心方向の減光マップ:OGLE-IIバルジ
OGLE-II 銀河系バルジフィールド 48 個に対し、A(V), A(I) マップを作った。 測定には レッドクランプ 星の V, I 測光が用いられた。

Pietrzynski et al. 2003
レッドクランプ星 I, J, K 等級
の年齢・メタル依存性
LMC, SMC, フォルナックス、カリーナのK等級を TRGB 等級、 RR Lyr 平均 V 等級、 P=10d セファイドの平均K等級(LMC, SMC)、と比較した結果、レッドクランプの平均 K等級はメタル量依存がほとんど無いか、もしあっても非常に低いことが判った。 I, J 等級ではメタル依存が大きい。銀河星団中のレッドクランプデータを用いると レッドクランプK等級の 2 - 8 Gyr では年齢効果も小さい。太陽近傍の RC K か I 等級に 0.2 等の問題のあることが判った。ヒッパルコスによる RC 等級決定の再検討が必要である。

Lopez-Corredoira, Cabrera^Lavers, Garzon, Hammersley (2002)

2MASS による銀河面近くの古い恒星円盤:スケール、カットオフ 、フレア、ワープ
 2MASS データを用いて、銀河面近くの古い星種族を解析するのに二つの異なる 方法を調べた。第1の方法は色等級図上でレッドクランプ星を分離し、その 星計数を逆変換して、視線に沿った密度分布を求めるというものである。第2の 方法は、 820 領域で星計数を円盤モデルにフィットしてパラメタ―を定める というものである。この二つの独立な方法からの結果は互いに合致した。 定性的な結論は、円盤は動径方向にも垂直方向にも指数関数でよく表現される というものである。 R < 15 kpc では円盤の突然の終端はない。 強い円盤フレアが検出された。それは太陽円の内側で始まる。したがって スケール高は内側に向かって減少する。
 もう一つの著しい特徴は星種族にもワープが存在することである。その 振幅はガスのワープと一致する。
 R > 6 kpc で低高度、平均 |z| ∼ 300 pc, の星に関して、
(1)太陽円でのスケール高 hz(Ro) = 3.6 10-2 Ro
(2)表面密度スケール長 hR(Ro) = 0.42 Ro
(3)銀河面密度スケール長 H = 0.25 Ro

Pietrzynski et al. 2002
レッドクランプ星 K 等級に基づく LMC 距離
 LMC バーの2領域で NTT による J, K 撮像を行った。Alves による ヒッパルコスレッドクランプ星の K バンド 絶対等級の較正値を用いて、 観測領域までの距離指標を 18.487 と定めた。バーの傾きを Marel et al の 幾何学モデルから採用して補正すると、LMC 重心までの距離は 18.501 となる。 Alves et al の種族効果(本当は Girardi, Salaris 2001 計算から)を考慮すると、 18.471 になる。しかし、 現在のところ種族効果の補正エラーは 0.12 等に上る。この値を下げることが 大事である。

Olsen, Salyk 2002
LMC 円盤がウォープ?
 LMC にランダムに選んだ 50 フィールドを CTIO 0.9 m 望遠鏡で 観測し、(V-I, I) 色等級図上の RC 見かけ平均等級を求めた。 LMC 南西隅の 15 フィールドを除外した。そこは フィットした平面に比べ RC 等級が 0.1 等明るい。これは LMC 円盤の ウォープを示すものである。 この光度差を年齢やメタル量に帰することは困難である。

Grocholski 2002
WIYN 散開星団の研究X:レッドクランプ K 等級
レッドクランプの光度を距離指標として改良するため、そのKバンド絶対 等級 MK(RC) がメタル量と年齢にどう反応するかを調べた。散開星団14 個、球状星団2個の2MASSデータを用いてJ,K 等級を得た。 散開星団の距離、メタル量、年齢は全て内部無矛盾なシステムから得ら れている。一方 K(RC) は2MASSから得た。 2Gyrより若い星団ではMK(RC) はメタル量の影響は小さいが年齢 依存度が大きい。反対に、2Gyrより古い星団ではMK(RC) は主に メタル量に影響され、年齢とは殆ど関係ない。Girardi et al の恒星 モデルはこの結果とよく合う。

Girardi, Salaris (2001)

レッドクランプ絶対等級と近傍銀河距離の決定への種族効果
 最近、レッドジャイアントクランプは局所群銀河の距離指標になるという 議論がある。この方法による距離決定の精度はヒッパルコスから決まる近傍 クランプの絶対等級と、遠方銀河中のクランプ星絶対等級との系統誤差 ΔMIRC による。  この論文では、モデルから得られる平均クランプ I 等級を年齢とメタル量 の関数として表す。種族合成モデルからの簡単な式により、任意の銀河に 対する平均クランプ I 等級を与えた。このモデルを用いて、銀河内クランプ 星の質量、年齢、メタル量分布を何が決めるかを説明した。このような考察は これまで無視されてきた。我々は、最近または現在星形成が起こった銀河、例 えば渦状銀河円盤、ではクランプ星の年齢分布は 1 - 3 Gyr の若い星に強い 比重がかかり、したがって平均メタル量は高めになることが判った。楕円銀河 やバルジのような古い種族が支配的な系ではこの現象は起きない。
 太陽近傍、バルジ、マゼラン雲、カリーナのクランプ種族の詳細なモデル化 を行った。星形成史、化学進化は文献から採った。ヒッパルコスモデルは メタル量、カラー、等級分布の点で分光データからの結果に合致した。 バルジ、マゼラン雲、カリーナモデルを用いて、それらの銀河に対する ΔMIRC を与えた。
 Udalski の クランプ星 - RR Lyrae 関係がモデルから再現できることを示 した。しかし、モデルとデータの間の類似にも関わらず、Udalski, Popowski が導いたような ΔMIRC - [Fe/H] 線形関係は 一般には成立しない。事実、クランプ星の分布は年齢 - メタル量関係や、 星形成史のように、線形関係では記述しきれない要素を含んでいる。
 モデルの予測する振る舞いは Sarajedini, Twarog, et al. による散開星団 データからも支持される。 LMC, SMC 星団に対する Udalski データはクランプ 星等級のよい年齢依存性を与えない。我々は星団データの解析には 1 - 2 Gyr 年齢のクランプ星を含めるべきことを主張する。それらは最近星形成を 行った銀河の平均クランプ等級を決める際に重要だからである。
 最後に、バルジ、マゼラン雲、カリーナの改訂クランプ距離を与えた。それら の信頼度も議論した。 ΔMIRC が最大になるのは マゼラン雲とカリーナで、それらは距離指数 0.2 - 0.3 等遠方になる。バルジ は逆に多分 0.1 等程度近くなる。

Alves 2000
レッドクランプ星 K 等級の較正
 ヒッパルコスのレッドクランプ238星のK等級を導き、銀河中心までの 距離を求めた。メタル効果を調べる ため高分散分光からメタル量が既知の星のみを選んで較正を行った。サンプルの 平均メタル量は [Fe/H] = -0.18 (σ=0.17) である。データはMK と [Fe/H] の間に何の相関もないという仮説と無矛盾であった。 光度関数ピークは MK = - 1.61±0.03 だった。
 次に、バーデ窓のレッドクランプ20星、平均メタル量は[Fe/H] = -0.17 (σ=0.09), の赤外等級を集めた。銀河中心までの 距離指標は (m-M)o = 14.58+-0.11, R=8.24+-0.42 kpc である。距離不定性の 最大の原因はバーデ窓内のレッドクランプ数が小さいことである。

Twarog, Anthony-Twarog, Bricker 1999
等時線のゼロ点: 中間メタル量のレッドクランプ光度
 NGC 2420 と NGC 2506 の CMD を太陽付近とマゼラン雲の中間として調べた。 対流オーバーシュートを組み入れた、太陽組成の二組の等時線で太陽にゼロ点フィット し、またヒッパルコスカタログの [Fe/H] = -0.4 の未進化主系列に合わせた。 これは同じカラーの未進化の星の間の 0,4 mag の差を要求している。 NGC 2506 に対し E(B-V) = 0.04, [Fe/H] = -0.39 を適用し、(m-M)o = 12.70 を得た。 NGC 2420 に対しては E(B-V) = 0.04, [Fe/H] = -0.29から (m-M)o = 12.15 となった。年齢は両者ともに使用モデルにより t = 2.2±0.2 Gyr と 1.9±0.2 Gyr を得た。  二つの星団の合成巨星枝からクランプ等級を V = +0.47, I = -0.48 (-0.17, +0.14) とした。MI にメタル量補正を施すと、 Udalski の星団サンプルからは LMC で (m-M)o = 18.42 (+0.17, -0.25), SMC に対し (m-M)o = 18.91 (+0.18, -0.16) である。同じメタル量と年齢の 星団は同一であろうという考えに対する警告として、 同程度の年齢とメタル量 を持つ星団の同じ B-V カラーの星と較べ、NGC 2506 赤色巨星の V-I カラーは 著しく赤い。上に述べた距離は B-V と V-I の一般的な星団の関係から導いた。 もし NGC 2506 の CCD 測光が正しく標準システムに繋がれば、クランプの MI は 0.1 mag 下がり、距離指数は 0.1 mag 大きくなる。
( 肝心の VI 測光が不十分なので、議論が 「もし」に頼ることになる。年齢、メタルは使えるかもしれないが。 Twarog はもっと着実かと思っていたので意外。)

Sarajedini 1999
WIYN 散開星団サーベイ III. レッドクランプ光度とカラーの メタル量及び年齢による変化
 MIRC = レッドクランプ I 等級が年齢、メタル量で 変化するかについての最近の論争に刺激されて、我々は銀河星団の測光を行っ た。主系列フィットで星団距離を決め、レッドクランプの絶対等級を直接求め た。この結果とモデル計算とを比較し、次の結果を得た。
 MVRC に較べ MIRC はメタル 量の影響がずっと小さい。しかし、観測された MIRC の巾は測光エラーより有意に大きい。
 したがって、年齢、メタル量で MIRC もかなり影響 されると考えるべきである。MVRC と MIRC へのメタル量、年齢の影響はモデル計算の 予知と良く合う。これらから考えると、太陽近傍の MIRC をそのまま LMC のように異なる種族構成の系に適用することは危ない。

Udalski et al. 1999a
 LMC レッドクランプの局所平均等級の差を星間減光によるものと考え、LMC 84 方向の 減光量を求めた。

Udalski 1998b
レッドクランプ星 光度の種族効果
 レッドクランプ平均 I 等級が 2 - 10 Gyr では年齢に依らないことを示す。 LMC/SMC の t = 1.5 - 12 Gyr 15星団を観測し、色等級図を作った。レッドク ランプの平均 I 等級は一定で、平均メタル量を -0.8(LMC), -1.2(SMC) として、 減光補正後は I0 = 17.88 ± 0.05 (LMC), 18.31 ± 0.07 (SMC) であった。t > 10 Gyr ではレッドクランプは水平枝の赤い部分に 溶け込んでいき、 0.3 - 0.4 等暗くなる。  その値から決まる距離指標は m - M = 18.18 ± 0.06 (LMC), 18.65 ± 0.08 (SMC) であった。

Udalski 1998a
OGLE 距離スケール:バルジ-LMC-SMC
 OGLE で観測した RR Lyr の平均光度から dGB : dLMC : dSMC = (0.194±0.010): 1.00 : (1.30±0.08) と定め、  Gould, Popowski 1998 の統計視差に基づいて RR Lyr の距離スケールの較正を 行った。その結果、(m-M)GB = 14.35±0.15, (m-M)LMC = 18.09±0.16, (m-M)SMC = 18.66± 0.16 となった。
 次にバルジメタル量での RR Lyr 平均光度を参照等級として, レッドクランプ星の I 等級を様々な年齢とメタル量の下で調べた。メタル量への 弱い依存性が見つかった。MIRC = (0.09±0.03) × [Fe/H]RC - 0.23±0.03 である。 レッドクランプ光度の絶対較正を近傍星([Fe/H]=0 と仮定)で行い、 (m-M)GB = 14.53±0.06, (m-M)LMC = 18.13±0.07, (m-M)SMC = 18.63± 0.07, (m - M)Carina = 19.84±0.07 とした。

Paczynski, Stanek 1998
OGLE/ヒッパルコス レッドクランプによる銀河系中心距離
 ヒッパルコスから選んだ精度 10 % 以下で減光補正したレッドクランプ星を減光 補正したバーデの窓レッドクランプ星と比較した。カラー範囲 0.8 < (V-I)o < 1.4 ではレッドクランプ星の平均 I 等級がカラーに依らないことが判った。 光度関数をガウシアンで フィットして得たピークは、MIo,m = -0.28, 分散 σRC = 0.2 mag である。  これから決めた銀河系中心距離は Ro = 8.4 ±0.4 kpc である。 近傍星は ⟨(V-I)⟩ = 1.01, σ(V-I) = 0.08、 バルジ星は、⟨(V-I)o⟩ = 1.22, σ(V-I) = 0.14 である。バルジ星のメタルは近傍星より高く分布巾も大きいらしいが、分光から の結論とは反するのが問題である。

Paczynski,Stanek +4 1994
 バーデ窓方向の色等級図上バーデ窓レッドクランプから円盤レッドクランプの尾 が見えた。

Cannon (1970)
散開星団の赤色巨星
 古い散開星団中の赤色巨星の観測結果を詳しく比較した。 その目立つ特徴はMv=+1, B-V=1.0 を中心とした赤い星の固まり(「クランプ」) である。この「クランプ」は星団距離の粗い見積もりと赤化評価に使える。



ミラ

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著者 内容

Iwanek, Poleski, Kozlowski, Soszynski, Pietrukowicz, Ban, Skowron, Mroz, Wrona 2023
66,000 ミラを使った銀河系3次元マップ 
 OGLE で発見された 65,981 ミラ型星の空間分布を、 X−型ボックス成分を 含む3成分バーと非軸対称円盤から成るモデルで解析した。距離不定性は 階層的ベイズ推定法で考慮した。銀河中心までの 距離は Ro = 7.66 ±0.01(stat.)±0.39(sys.) kpc、 バルジ主軸と太陽-GC 視線方向との角度は 20.2°±0.7° である。  若い種族と中間年齢種族から成る銀河系の3次元マップを初めて提示する。 バルジの X-型成分とフレアリング円盤の独立な証拠も示す。ここに使用した ミラ型星の完全なカタログも示した。距離精度中間値は 6.6 % である。 ( 実際はバルジモデル )

Lebzelter, Nowlavi, Lecoeur-Taibi, Trabucci, Audard, Garcia-Lario, Gavras, Holl, Jevardat de Fombelle, Nienartowicz, Rimoldini, Eyer (2023)
Gaia DR3: LPV 候補星の第2ガイアカタログ
 セカンド Gaia LPVs カタログは G の変光巾が 0.1 mag ( 5 - 95 quantile range) の 1,720,558 LPVs を含む。他種変光星の混入を種々のファイルターで 防いだ。周期と振幅は G-バンド変光曲線へのモデルフィットから決めた。C-星 は RP スペクトルの分子吸収帯から決めた。  392,240 LPVs には周期 P が与えられた。 546,468 星が C-星と分類された。 OGLE と ASAS-SN データとの比較から完全性は 80 % と評価された。リカバリー 率はミラ型で 90 %, SR と Irr で 60 % である。同時に LPVs 数は既知数の何 倍にもなった。特に混んだ領域でそうである。混入率は 2 % 以下である。しっか りした理論的議論に基づく C-星分類は文献にある分光で同定された炭素星と矛盾 しない。しかし、混んだ領域や赤化の強い場合注意が必要である。

Andriantsaralaza, Ramstedt, Vlemmings, De Beck 2022
ガイア DR3 からの AGB 星距離の決定  
 Gaia DR3 視差をO-リッチの 33 AGB 星 VLBI メーザー視差と比べ、DR3 視 差に対する統計的補正ファクターを得た。次に、補正された Gaia 視差と 以前に得られた AGB 星の銀河分布からの事前確率 (prior) に対してベイズ法 を適用して、DEATHSTAR 計画からの 200 AGB 星距離を計算した。VLBI 星の SED を DUSTY モデルでフィットして、星の光度を求めた。  G < 8 mag の最も明るい星では、Gaia DR3 視差はファクター 5.44 低く 見積もられている事が判った。それより暗い 8 ≤ G < 12 ではファクター 2.74 である。Gaia DR3 視差ゼロ点オフセットは、明るい AGB 星で -0.077 mag である。より暗い AGB 星ではこのオフセット値はよりマイナス方向に振れる。 DR3 視差を補正すると、得られた距離は、我々のサンプルで、40 % 以上もの 非対称なエラーを伴うことが判った。銀河系 O-リッチミラ 型変光星の新しい周期光度関係は、
   Mbol = (-3.31±0.24)[logP-2.5] + (-4.317±0.060)
DEATHSTAR 星の新しい距離カタログを与えた。 DR3 視差の誤差が 20 % 以上の場合 AGB 事前確率に基づいて距離を求める際に は、距離がモデルに依存し、天体によりオフセットが変わるので、注意が必要 である。RUWE(re-normalised unit weight error) が 1.4 以下の場合、信頼で きる距離の保証はない。個々の AGB 星に対しては、距離の精度に RUWE のみを 使うことには問題がある。

Groenewegen (2022)
WISE が見る極端 AGB 星
 WISE から大質量放出率星のサンプルを得ることを目的に、SiC 吸収帯を 持つ炭素星と、周期が 1000 日以上の O-リッチ星 の計 2000 天体を調べた。 WISE W1, W2 変光曲線を "a sinus curve" でフィットした。他の変光サーベ イの結果もダウンロードしてフィットした。特に赤い 316 天体の SED を作り、 可能なら MIR スペクトルも合わせ、輻射モデルでフィットして質量放出率を 求めた。幾つかの赤外データベースとの位置相関を調べた結果、 1/3 は合って いないと分かった。単に WISE フラッグを使っただけでは誤りを防ぐのは難しい。 非常に明るい星のクローンであり、幾つかでは既知の周期と一致する。  最近の論文に刺激を受け、多数の非変光 OH/IR 星が見つかった。振幅に基づ いた選択の結果、約 750 の LPVが見つかり、内 145 は周期が 1000 日を超す。 その多くは新発見である。極めて赤い炭素星 EROs と同じカラーを持つ天体の SEDs をフィットした結果、C-リッチと O-リッチに分かれた。質量放出炭素星の MIR スペクトルをフィットすると、 Av ≥ 2 mag での星間減光が判る。5 kpc 以内の EROs が完全に同定された。そこからのダスト還流総量が決定された。 LMC では新たに 12 の EROs が見つかった。それらは LMC 炭素星数の 0.15 % 二しか過ぎないが、それらからの質量放出は LMC での還流を 8 % 引き上げた。

Goldman, Boyer, Dalcanton, McDonald, Girardi, Williams, Srnivasan, Gordon (2022)
アンドロメダ銀河の PT-AGB 星数調査とダスト収支への寄与評価
 M31 北西部の高メタル TP-AGB 星のほぼ完全なカタログを示す。 346,623 AGB 星が検出された。内 4802 星は大量のダストを形成していた。 また年齢のわかる星団内に1356 AGB 星が見つかった。星団のいくつかでは メタル量も知られている。  スピッツアー中間帯データを用いて、ダスト 形成 AGB 星の C/M 分類を行った。LMC AGB 星のカラー対マスロス関係を使い、 PHAT 領域にある AGB 星からのダスト放出量を評価した。ダストの 97.8 % はO-リッチである。ダスト寿命を 300 Myr(MW) かずっと長いかの仮定で、 M 31 AGB 星の貢献度は 0.9 - 35.3 % である。これはマゼラン雲での以前 の評価に一致する。

Marigo et al (2021)
ガイア距離のある散開星団中の AGB 星を新しく見直す
 Gaia DR2 と EDR3 を用い、中間および若年銀河系散開星団中の AGB 星を調 べた。TRGB より明るく、星団メンバーシップが確実な 49 AGB 星が見つかった。 内 19 星は TP-AGB 星でそのスペクトル型は 4 Ms, 3 MS/Ss, 12 Cs である。 観測、進化モデル、星周ダスト層の輻射輸達計算を合わせて、各星の初期質量、 光度、マスロス率、コアマス、周期、脈動モードを決めた。  その結果、第3ドレッジアップ、炭素星の初期質量、星風、初期ー最終質量 関係(IFMR) への制限が与えられ、太陽メタルの TP-AGB 進化に光があてられた。 特に、NGC 7789 の MSB75, NGC2660 中の BM IV90 の二つの炭素星は年齢 1.2 - 1.6 Gyr, Mi = 1.2 - 1.6 Mo で似ているが、異常に大きなコアマス Mc = 0.67 - 0.7 Mo を有する。これは Maarigo et al 2020 が最近発見した IFMR の折れ曲がりを支持する結果である。Mc データの説明には二つのシナ リオ=単独星での星風と連星でのブルーストラグラーを介しての相互作用がある。

Krticka, Kubat, Krtickova (2020)
惑星状星雲中心星(CSPN)の星風モデル
 惑星状星雲の高温度中心星からの星風モデルを作った。AGB から WD までの M = 0.569 Mo 星に適用した。メタル量、星風中の塊の影響も調べた。Teff = 104 K でライン駆動型星風が現れ、WD 冷却期 1.04 105 K で消え去ることが分かった。 マスロス率は主に星光度に比例し、したがって、HR 図を水平に動く間ほぼ 一定である。  例外的な変動は、(1)2 104 K 付近でのバイスタ ビリティジャンプでは、鉄電離の変化に伴いマスロスが数分の1に減る、 (2)4 - 5 104 K における付加的極大。一方、遷移期中に星半径 が縮小する結果、最終星風速度は毎秒数百キロメートルから数千キロメートル へと増加する。星風速度はバイスタビリティ期間中にも増加する。

Agundez, Martinez, de Andre, Cernicharo, Martin-Gago (2020)
AGB 星大気内の化学平衡  
 M-, S-, C-AGB 星大気の化学平衡を計算した。一般的に、化学平衡の結果は 星周外層中の組成観測結果をよく説明する。しかし、平衡予測に比べ数桁も多く 観測される分子もある。例えば、M-型星では HCN, CS, NH3, SO2, S-型星で H2O, NH3, C-型星で H2O, NH3, SiH4, PH3 などで ある。
以前の研究と同じく、C-星大気で最初に現れる凝結物質は C, TiC, SiC であり、 O-リッチ流出流中では Al2O3 である。C ダストのガス 前駆分子はアセチレン C2H2 と C 原子、それに/または、 C3 である。  SiC ダストの前駆分子は SiC2, Si2C である。TiC (タイタニウムカーバイド)ダストに関しては、大気内部で最も豊富 な原子 Ti が TiC ダストに対する主要供給源であろう。しかし、化学平衡計算は TiC 凝結が予想される領域では、原子 Ti の代わりに Ti8C12 や Ti13C22 のような タイタニウム・カーボンクラスターが Ti の貯留体となることを予想する。これは 大きな TixCy の集合が TiC ダストの最初の凝結核の 形成と関係することを示唆する。
(隕石で見つかったプレソーラー物質で ある TiC になぜか入れ込んでいる。 天体観測例は?波長は?)
Al2O3 ダストに関し ては、原子 Al と Al-O 結合を含む AlOH, AiO, Al2O が最有望な ガス前駆体である。

Fadeyev (2019b)
最終ヘリウムフラッシュ星の動径脈動
 FG Sge が 1990 以降光度、カラー、変光周期が安定しているのを、ボーン アゲインの LTP = late thermal pulse の膨張がピークに達し、WD へ戻る 寸前として 1.3 Mo 進化でモデル化。脈動計算を進化コードと組み合わせた のが新しい?進化速度観測と合ってる?

Loup, Allen, Lancon, Oberto (2019)
赤外サーベイにおける OH/IR 星対 YSO 天体
 主な MIR, FIR サーベイ = IRAS, MSX, AKARI, WISE, GLIMPSE, Hi-Gal 中から OH/IRs 1500 星、メタノールメーザーが検出され YSOs 500 星を同定した。MIR 測光のみでは AGBs と YSOs を解きほごすことは不可能で、FIR 測光が不可欠である。  GLIMPSE 領域の過去の研究は AGB 星の割合を大分低く見積もっていたことを明らかに する。GLIMPSE で「固有カラーが赤い」天体の 70 % は YSOs ではなく、AGBs である。

Fadeyev (2019a)
種族I AGB 星の進化と動径脈動
 Z = Zo, M = 1.0, 1.5, 2.0 Mo の MS - PPN 進化計算。Teff = [3.6, 20] 103 K のpost-AGB 星で脈動計算を行い、周期変化を求めた。 Teff = 20,000 K になるまでの時間は 1 Mo では7500年だが、1.5 Mo になる と 1000 年である。だから観測される post-AGB 星の多数は 1 Mo。

Velilla-Prieto, Cernicharo, Agundez, Fonfria, Quintana-Lacaci, Marcelino, Castro-Carrizo (2019)
IRC+10216 3 mm 観測によるマスロスの性質 
 ALMA と IRAM 30m による SiO,SiS, CS マップは CS で 20", SiS と SiO で 11" の広がりと、強いシェルを示す。マスロスは数百年スケールで変動している。

Dharmawardena,Kemper,Woulterloot,Scicluna, Marshall, Wallstrom (2019)
IRC+10216 と ο Ceti のサブミリ変光
 SCUBA2/JCMT のポインティング調整の際に取得したIRC+10216 とο Ceti の 450, 850 μm データから7年間の変光曲線取得。IRC+10216 850 μm 変光は 可視変光に対し、540 日の遅れがある。原因は不明。

Dharmawardena+26 (2019)
近傍晩期進化星サーベイI.U Antliae 分離シェルの SCUBA2/JCMT サブミリ検出
 SCUBA2/JCMT 850 μm 撮像で R=40" に放射ピークが見えた。Hershell/PACS の観測と同じ位置である。シェルマスは 2 10-5 Mo で3500 年前。

Klochkova (2019)
OH/IR 星 V1648 Aql (IRAS19386+0155) の可視スペクトル 
 BTA 6m 鏡により、V1648 Aql (IRAS19386+0155) の R 60,000 可視スペクトル を取得した。D線には 大気、シェル、星間の3成分が見える。それから膨張速度 =12.6 km/s と分かる。OI7773A 強度から Mv=-5 mag である。距離は 5 - 1.6 kpc.[O/Fe]=1.36 の超過は低質量 post-AGB を示唆する。

Bladh (2019)
DARWIN の進化:星風モデルの現在
 AGB 星の低速で濃い風の原因は動的な大気内でのダスト形成と輻射圧との 結合に帰せられる。  DARWIN コードによる計算は、C-リッチ、O-リッチ星の両方で、観測に合う 星風を作ることに成功した。ここに DARWIN モデルの概要を示す。

Hoyt, Freedman, Madore, Seibert, Beaton, Hatt, Jang, Lee, Monson, Rich (2018)
The NIR TRGB II. LMC における絶対較正
 LMC における TRGB JHK 絶対較正を行った。Near Infrared Synoptic Survey には 3500 万星のデータが含まれ、その中の 65,000 は TRGB から 1 mag 内に 入る。  IC1613 の TRGB 勾配を適用し、 LMC DM = 18.49 を用い、TRGB JHK 絶対等級を 求めた。TRGB は LMC の立体構造を露わにした。

Groenewegen, Sloan (2018)
局所群 AGBs, RSGs の光度とマスロス率 
 SMC, LMC, Fornax, Carina, Sculptor dSphs 内の AGBs サンプルからの マスロスを調べた。スピッツアー搭載赤外分光器で測った 225 炭素星と 171 O-リッチ星のスペクトルに可視、赤外測光観測を加え、を輻射輸達モデルで フィットした。そこから光度とマスロス率を出した。現存データの解析から 変光周期を求めた。  VMC の K-等級、IRAC 4.5 μm 多期観測、ALLWISE+NEOWISE から非常に 深い赤外天体の 1000 日を超す周期を決めることができた。サンプル星全ての マスロス率と光度を決めた。文献に載っているマスロス率は今回の値とかなり 異なることがあるが、それは適用する光学定数の違い(場合によっては数倍の差) とモデル化の手法が主な原因である。

Madore, Freedman, Hatt, Hoyt, Monson, Beaton, Rich, Jang, Lee, Scowcroft, Seibertr (2018)
The NIR TRGB 1. IC 1613 における較正
 Las Campanas 6.5 m Baade Magellan 望遠鏡の FourStar NIR カメラを使い、 IC1613 ハローにある星を NIR で観測した。観測 CMD に見られる J-H, J-K カラーによる TRGB による右上がり勾配を補正するメタル量不変な T-バンド等級 を作った。  IC 1613 の観測から決まったカラータームとマゼラン雲の観測との比較から 得たゼロ点等級を用い, IC 1613 の距離指数=24.32±0.03(statistical) ±0.05(systimatic) を得た。

Lebzelter, Mowlavi, Marigo, Pastorelli, Trabucchi, Wood, Lecoeur-Taibi (2018)
ガイアと 2MASS を用いた AGB 星分類の新手法
 ガイア BP, RP と MASS J, Ks から二つの Wesenheit 関数 WRP, BP-RP, WKs, J-Ks を作り、次に、 (WRP, BP-RP-WKs, J-Ks) - Ks を作った。 この図上では様々な LPVs が異なる位置を占める。  O-リッチ星と C-リッチ星が分離することを示す。また、低質量、中質量、 大質量 O-リッチ赤色巨星、さらに極端 C-リッチ星を同定した。進化モデル を援用して、この図の天体分類力を示す。

Engels, Etoka, Gerald (2018b)
AGB 進化終末期における大振幅変光の終焉
 我々は 2013 年からナンシー電波天文台を用いて 100 個以上の銀河円盤 OH/IR 星のメーザーモニターを行っている。メーザー強度の変化を用いて中心星の変化を 調べた。  我々は AGB - post-AGB 遷移の際に大振幅変光がどのように失われるかを理解 したいと考えている。振幅がゆっくりと縮小していき脈動が消えていく過程がありそう な仮定と、我々は予想している。

Engels, Etoka, West,Gerald (2018a)
プローブとしての OH メーザー: AGB - post-AGB 遷移
 ナンシー電波望遠鏡 (Nancay Radio Telescope = NRT) を用いて、 1612 MHz で数十個の OH/IR 星をモニターしている。データとしては Hartebeesthoek 電波望遠鏡(SA) における銀河中心 OH/IR 天体のモニターを加えた。メーザー 変光を中心星の変光を示すと考える。初期の成果から、既に示したように、幾 つかの星は 7 年にまで達する周期での変光を示す。他の星は小さな振幅の変光、 または無変光であった。  変光におけるこの二分は AGB 期と post-AGB 期の境界を定めるものと考え られている。現在の観測プログラムで、このような遷移天体を発見し、その変光 特性を調べたい。我々は脈動の低下消失がその表れと考える。その有力候補は 銀河円盤中の小振幅変光星 OH 138.0+7.2, OH 51.8-0.2 である。銀河中心付近 における「非変光」OH/IR 星の出現頻度は円盤と同じくらいである。

Suh (2017)
  赤外二色図を用いた AGB 星の新カタログ 
 赤外二色図に変光とスペクトル情報を加えて、AGB 星の新しいカタログを作 成した。以前のカタログから分類ミスの天体をいくつか除いた。以前のカタロ グに記載された O-リッチ、C-リッチ星がそれぞれ占める領域を赤外二色図上 に定めた。そのそれぞれの領域内の新しい天体を O-リッチ、C-リッチ星の候 補とした。  このカラー選択法により、新しく 3996 の O-リッチ候補、1487 の炭素星候 補、295 の中間領域星を見出した。470 の O-リッチ星、9 C-リッチ星は変光 しており、スペクトル型も分かっている新しく AGB 星と認定された星である。 新しいカタログには 3828 の O-リッチ AGB 星と 1168 の C-リッチ星が含ま れる。分類ミスの星は除いた。

Miller Bertolami(2016)
post-AGB 星と惑星状星雲中心星の新しい進化モデル
 現在使用されている post-AGB 進化モデルは古い物理を使用しており、互い に矛盾している。色々な星系での CSPNe = PN 中心星と post-AGB 星の観測は モデル予想と大きな違いを示す。主系列から白色矮星までの進化のグリッドを 計算した。 Mi = 0.4 - 4 Mo, Z = 0.02, 0.01, 0.001, 0.0001 である。 その結果、post-AGB 水素燃焼のタイムスケールを M = 0.5 - 0.8 Mo について 調べることが出来た。  古いモデルに比べ、今回の post-AGB タイムスケールは古いモデルの 3 - 10 倍短く、メタル依存性が小さいことが分かった。また、新しいモデルは古いモ デルより 0.1 - 0.3 dex 明るい。この短いタイムスケールは最近バルジ CSPNe から求められた post-AGB タイムスケールと整合する。新しいモデルが予想する より少数の post-AGB, CSPN 星の数はこれまでの矛盾の解消に役立つ。また それは、post-AGB 通過時間、Mf/Mi 比も異なり、星震学や分光学から予想され てきた低質量 CSPNe 形成の理解にも役立つ。

McDonald, Zijlstra (2016)
AGB 星からの脈動駆動質量放出
 中・低質量星は赤色巨星期に大量の質量を放出する。その強い星風の物理 機構はよく分かっていない。標準モデルでは脈動が大気を押し広げ、そこに 形成されたダストに働く輻射圧が星風を駆動する。この論文ではヒッパルコス カタログから取った近傍の RGB 星を用いて、星風の発生を調べる。我々は 星の脈動周期が 60 日に達すると、ダスト形成が急激に起こることを見出した。 これは、星が第1倍音脈動モードへと転移する時期と一致する。 星のエネルギースペクトルは質量放出率がこの時に急激に増大することを 示す。それは、彩層駆動星風の約10倍に達する。  ダスト放射は周期と振幅の 双方に強く相関する。これは脈動が放出の引き金で、放出率を決定することを 示唆する。ダスト放射は光度とあまり相関が無く、ダストに働く輻射圧は 質量放出率にあまり関係ないことを示す。
(周期光度関係と矛盾? )
RGB 星は一般にはダスト形成を行わ ないようだが、 AGB 星では普通に見られるようで、TRGB より明るい AGB 星 では普遍的に見られる。我々は強い星風の発生は質量放出に段差を生み、 それは脈動で引き起こされると結論する。放出率が大きく変わる第2の遷移は 基本振動が始まる周期が 300 日の付近である。

中川、倉山、松井、面高、本間、柴田、佐藤、寺家 (2016)
VERA によるミラ型星 R UMa の視差決定
 ミラ型星 R UMa の年周視差を VELA で測定した。2年間の観測から LSR 視線速度 37 - 42 km/s にH2O メーザーを検出した。年周視差 1.97 ±0.05 mas = 508±13 pc であった。VLBI マップには総計 72 個の光点が 110 au 領域に散らばっている様子が観察された。メーザー点の運動から、ヒッパル コス固有運動を引いてそれらの星周運動を求めた。  K バンドモニタリングを行い、平均等級 ⟨mK⟩ = 1.19± 0.02 mag を得た。先に求めた距離から絶対等級 MK = -7.34±0.06 を得る。これは以前 R UMa に対して得られていた値より遥かに高精度である。銀河系 ミラ型星の MK - log P 関係のゼロ点を求め、
   MK = -3.52 log P +(1.09±0.14)
を得た。赤色超巨星を含む他の長周期変光星データも集め、MK - log P 関係 の別の系列を研究した。

板 その他 2015
SMC の長周期変光星(原稿)
 SMC 長周期変光星の可視と近赤外時系列データを解析し、その光度変化を調べた。脈動周期 の間、光度変化は小さいことが判った。カラーに応じた輻射補正の値を求めた。光度変化と 可視および近赤外変光との位相遅れが O-リッチミラに検出された。しかし、炭素星ミラと SRs には系統的な位相遅れは検出されなかった。
 明るいミラ型星にカラー位相の逆転が見出された。それらは長周期で、振幅が大きく、 O-リッチである。その原因は J バンドにおける TiO and/or VO 吸収帯が原因と思われる。 周期・光度関係と周期・カラー関係を導き、示す。

Jones, Kemper, Srinivasan, McDonald, Sloan, Zijlstra (2014)
LMC O-リッチ進化した星のアルミナ量  
 O-リッチ AGBs の星周外層中ダストの成分を決めるために、ダスト成分、 マスロス率、シェル内径、星パラメターのグリッド上で MODUST 輻射輸達モデ ルを作った。モデルのカラーを SAGEーSpec LMC サンプルと比較して、良い一 致を得た。5 - 37 &mu:m Spitzer IRS スペクトルと 可視 - MIR の測光が与 えられた 37 O-リッチ AGB 星をフィットした。  モデルフィットから得たマスロス率は 8 10-8 - 5 10-6 Mo/yr である。観測スペクトルに合うダスト組成は 非晶質シリケイトが主成分 で、それに非晶質アルミナ、金属鉄が加わる。AKARI の[11-15]-[3.2-7] 二色図 からアルミナの割合を決めることも出来る。

Wolak, Szymczak, Bartkiewicz, Gerald (2014)
前駆惑星状星雲 IRAS 18276-1431 = OH 17.7-2.0 の激しいメーザーバースト
 前駆惑星状星雲 IRAS18276-1431 (OH17.702.0) のOH メーザーモニター観測 から、単調な減衰に加えて数回のフレアが観測された。  フレアの放射は強く偏光しており、外層の切り離された稠密な領域から出て いた。双極流により外層に掘りぬかれた双極ローブの軸に沿って 磁場が揃っているらしい。

Javadi, van Loon, Khosroshahi, Mirtorabi (2013)
 UKIRT M33 モニタリングプロジェクト III. 中心 1 kpc 平方の星風フィードバック
 この第3論文では、脈動 AGBs によるマスロス率を測る。その為、UKIRT NIR 観測に,Spitzer MIR 観測を組み合わせる。低質量星はその初期質量の 大部分を星風により失う。しかし、スーパー AGBs や RSGs でさえも質量の 40 % を星風によって失う。  ダスト還流の 3/4 以上は酸素系である。マス還流率の 2 D マップを作った。 それは動径に沿った低下を示すが、大質量星の集団があるところでは局所的 盛り上がりを示す。マスロス率は, 中心キロパーセク領域で 0.006 Mo yr-1 kpc-2 である。ここには、爆発的、例えば超新星、 のような現象も考慮した。これを現在の星形成率 0.03 Mo yr-1 kpc-2 と比べると、現在の星形成を維持するには、外側円盤からの ガス流入か、銀河間ガスの降着が必要である。

Bladh (2012)
低温で明るい巨星の星風駆動ダスト種の探究 I.M-型 AGBs での選択基準と動力学モデル 
 AGBs からの質量放出は2段階の過程:(1)脈動衝撃波による大気の浮揚 と(2)形成されたダストの輻射加速、を経ると考えられる。ダストは衝突を 通して周囲のガスに運動量を転移し、ガス流出を起動する。浮揚する大気は ダスト形成温度まで冷える距離に達する必要がある。この浮揚距離は衝撃波 から大気に散逸される運動エネルギーで制限を受ける。どのようなダスト種が この条件を満たすかを調べるため、詳細な輻射流体力学にパラメター化した ダストを組み込んで、モデル計算を行った。
 ダスト凝結温度が低く、近赤外吸収係数が波長と共に急激に低下するという 組合わせだと、形成距離が星表面から遠すぎて星風を起動できない。純粋鉄 と鉄シリケイトは NIR 光学性質が星風起動には適さず、形成距離が遠すぎる。 TiO2 は Ti 量が少なすぎる。 SiO2 と Si2O3 は光学的性質と化学的性質に不明確な点が あり、一層の研究が必要である。最有力候補は粒径 0.1 - 1 μm の Mg2SiO4 である。その光散乱は輻射加速に大きく 寄与する。

Javadi, van Loon, Mirtorabi (2011)
 UKIRT M33 モニタリングプロジェクト II. 中心 1 kpc 平方の星形成史
 UKIRT を用い、M 33 の NIR モニタリングを実施した。目的は進化最終期に あり、光度から初期質量が分かる星を探し出すことである。この第2論文では、 初期質量関数を求め、そこから星形成史を導く。星形成率は 0.002 から 0.007 Mo yr-1 kpc-2 の間を変動する。 SFH には二つ のピークがあった。第1は ≥ 6 Gyr 昔で 星質量の 80 % 以上がこの時に 生まれた。 もう一つは 250 Myr 昔に 200 Myr 続いた星形成で、< 6 % の 星か作られた。  画像面と銀河面の両方に、動径分布と経度分布を、古い、中間年齢、若い種族 に対して描いた。古い RGB 星は楕円体分布を、若い星は平坦な円盤状 分布をすることを見出した。中間年齢星はバルジまたはバーらしきものを示す。
Suh, Kwon (2011)
  AKARI, MSX, IRAS, NIR データを用いた赤外二色図 
 Suh, Kwon (2009a) の AGB 星カタログを改訂した。新しいカタログでは各星に対し、AKARI, MSX, 2MASS の対応番号を付けた。  2色図上で C-リッチか O-リッチかで二色図上で占める位置が異なることを 見出した。シェルモデルによりその違いを説明した。

Ita, Matsunaga (2011)
星周減光を理解するための LMC ミラ
OGLE-III ミラ型星にNIRからMIRの周期等級関係を導いた。関係には折れ曲がり が見られる。短周期側からの延長と観測等級の差を星周減光によると解釈して 減光量と赤外カラーとの間の関係式を導いた。減光関係が変化することは ダストの性質が進化して行くことを示唆する。

Kerschbaum, Lebzelter, Mekul (2010)
近赤外測光に基づく低温巨星の輻射補正
 低温の巨星に対する輻射補正式をNIR カラーの関数として求めた。恒星の 区分にJHK のみでは不十分で L' が不可欠であることが分かった。 K-L' で3つに分けた O-リッチ星と C-星の4つのグループに輻射補正式 を与えた。そしてそれらを以前に得られた式と比べた。

Madore, Mager, Freedman (2009)
赤色巨星枝先端(TRGB) を研ぐ
 TRGB 光度を測るため、合成等級 T = I - β[(V-I)o - 1.50] を導入した。 それを NGC 4258 (maser galaxy)で試した。  赤化ベクトルの方向が TRGB の勾配とほぼい位置するため、この方法は偶然に も赤化の影響を軽減する。

Ramos-Larios, Guerrero, Suarez, Miranda, Gomez (2009)
深く埋もれた post-AGBs, PNe の探索 I. 2MASS 同定された IRAS 候補
 2MASS, Spitzer GLIMPSE, MSX, IRAS を用い、ダストに覆われていると看做 される post-AGBs と PNe 候補 165 星の近赤外対応星を探した。また、DSS 赤画像からそれら近赤外同定天体を可視同定した。1 - 100 μm SED の性質 を2色図を使って解析した。その結果、 119/165 IRAS post-AGB, PNe の近赤 外同定に成功した。それらの座標が改善されたので 59/119 で可視同定が得ら れた。こうして可視で見えない post-AGB, PNe の数を 60 にまで減らした。 80/119 のみが、 2MASS PSC で紛れない同定とされる。それらは、可視で見え るかどうかに従って、MIR, FIR カラーが同じでも J-バンドを入れた二色図 では分離することが分かった。

Glass, Schultheis, Blommaert, Sahai, Stute, Uttenthaler (2009)
AGB 星の中間赤外周期等級関係
 AGB 変光星が 24 μm という中間赤外でも近赤外と同様の周期光度関係に 従うことが判った。そこではダストからの星周放射が支配的である。 LMC と HBC 6522 とは年齢もメタル量も異なるが、 M - log P 関係は同じらしい。  その傾きには波長による系統的な傾向はない。見かけ等級対 log P 関係の 差は 3.8 で、これは距離指数の差に等しい。変光星のカラーは log P > 1.85 が検出可能な質量放出の条件であることを示す。最長波長 24 μm では 多くのセミレギュラー変光星がミラと同じくらいの明るさのダストシェルを有す。 24 μ を含む LMC CMD には明白な分岐が見える。

Zechmeister, Kurster (2009)
一般化したロム・スカーグルのピリオドグラム法
 ロム・スカーグルのピリオドグラムは非一様間隔のデータの周期解析において、 サイン波の最少二乗フィットと同等な方法である。我々は、これを完全サイン波 フィットに拡張し、オフセット、重みも含むようにした。ロム・スカーグルの ピリオドグラムと比較すると、周波数精度が上がり、偽信号に強く、スペクトル 密度がよく決まる。計算上の修正は僅かで、計算時間も同じくらいである。 我々の方法は、いくつかの方法、date-compensated discrete フーリエ変換、 浮動平均ピリオドグラム、SiigSpec プログラム中で用いられるスペクトル重要性 などを合わせている。  そのうえ、我々は視線速度データにケプラー運動のベストフィット周期を求 めるためのケプラリアンピリオドグラムを評価するために、この一般化された 方法を補足するアルゴリズムも示す。系統的で、非ランダムなアルゴリズムは 離心率軌道を検出することが出来る。それを二つの例で示す。それは系外惑星 の周期を探すのに有用な武器となるであろう。

Suh (2009a)
IRAS PSC 中の AGB 星カタログ
文献探査を行い、IRAS PSC/AGB 星と確認された天体のリストをまとめた。 最近の研究結果を用い、AGB 星を O-リッチと C-リッチ星に分けた。  大部分の AGB 星に対して、NIR 観測と PSC からの二色図を示す。 二色図上にダストシュル光学的深さの増加に伴うモデル経路をプロットした。

Vijh, Meixner, Babler, Block, Bracker, Engelbracht, For, Gordon, Hora, Indebetouw, Leitherer, Meade, Misselt, Sewilo, Srinivasan, Whitney (2009)
SAGE による LMC の AGB, YSOs 変光の発見
 SAGE LMC サーベイの3か月おいた2回の測光から変光天体を探した。変光 は IRAC 4 バンドと MIPS 24 μm を組み合わせて探した。  7°x7° 領域内で両方の観測で検出された3百万の星から 2000 個の 変光天体を見つけた。その大部分は AGB 星である。極端AGB 星の >66% は 変光しており、それが炭素星では 6.1 %, O-リッチ星では 2 % である。 また、変光 YSOs も見つけた。

Whitelock et al (2009)
フォルナックス矮小楕円銀河中の AGB 星
フォルナックス42'×42'でのIRSFモニタリングの結果、7ミラ、10 SR, P = 215 - 470 d が見つかった。新しく炭素星ミラのPLR を決め直した。

Robitaille, Mead, Babler, Whitney, Johnston, Indebetouw, Cohen, Povich, Sewilo, Benjamin, Churchwell 2008
銀河中央面で Spitzer が観測した固有カラーが赤い天体
 GLIMPSE I, II 274 deg2 から選んだフラックスリミテッドの 18,949 天体を調べた。その多くは YSO と AGB 星である。場所による感度 変化、サチュレーション、込み混じりに気を付けて二つの分離基準を定めた。 天球上、色等級図、二色図上での分布を議論した。  YSO と AGB は単純な色等級図を用いて分離可能で、YSO が 50 - 70 %, AGB が 30 - 50 % であることが判った。 PNe と galaxies は 2 - 3 % である。 GLIMPSE II の 1004 天体は 4.5, 8 μm で > 0.3 mag の変光を示す。 11,000 の YSO, 7000 の AGB と加えこれはこれまで最大の一様なセンサスである。

Hofner (2008)

ミクロン大ダストが駆動するM-型 AGB 星からの星風
 非灰色効果がシリケイトグレインをFe フリーにするという結論を受け入れ、 ミクロンサイズの Fe-フリーシリケイトが星風を駆動するかどうかを調べた。 ダストの単純な光学評価と詳細な動力学計算に基づいて、Fe-フリーシリケイト に掛かる輻射圧が十分大きいことを確かめた。原因は散乱である。  質量放出率、星風速度は観測値と良い一致を示す。粒子凝結と星風加速との間 に、自己調整フィードバックが働き、グレイン成長は直径 1 μm で自然に止ま る。星風駆動に最も効果的なグレイン径は 1 μm 付近のかなり狭い幅である。 これは AGB 星フラックスピークの位置で決まる値で、星間ダストのそれと近い。

Schonberner (2008)
FG Sge, V605 Aql, Sakurai -- 事実とウソ
 TP期=10万年、post-AGB 期=1万年なので、post-AGB 期間中に熱パルス が起きる確率は 0.1 である。この理屈はめちゃくちゃな気がするが。post-AGB 熱パルスボーンアゲイン巨星を生み出す。LTP(Hリッチ星) と VLTP(Hフリー 星) の二種類がある。周囲星雲の診断から熱パルス前の様子を診断できるが、 電離平衡の扱いに注意。

Suh (2007)
AGB 星の IR 二色図
 MSX, 2MASS, IRAS から O-リッチ、C-リッチ星のデータを集め、二色図を 作った。ダストシェルの光学的厚みが増す系列をこれらの二色図と比較 した。

Marigo, Girardi (2007)
Evolution of Asymptotic Giant Branch Stars I.
Ostlie,Cox 1986 の線形振動成長率の結果を使い、第1倍音から基本振動への臨界 光度を決める。周期光度関係を LMC ミラと比較して、それらが基本振動であることを 確認。ただし、データは古く、多重系列との比較はされていない。

Castro-Carrizo,Quintana-Lacaci,Bujarrabal,Alcolea (2007)
 黄色ハイパー巨星 IRC+10420 と AFGL 2343 の秒分解能 12CO マップ
 IRC+10420 と AFGL2343 の 12CO J=2-1, 1-0 マップ を作った。共に大体円形である。IRC+10420 シェルは明るい中心領域の周りに 広がったハローを示す。中心は輝度の極小を示す。  AFGL2343 のシェルは分離型である。シェルは 35 km/s で膨張している。これ は AGB 星の典型値の 2 - 3 倍の速度である。IRC+10420 の最内側部温度は 200 K という高温であった。一方 AFGL2343 ではより濃くて冷たい T=30K ガス が検出された。

Kerschbaum, Groenewegen 2006
銀河系炭素星サンプルの NIR 変光
 IRAS カタログの赤外炭素星およびCO膨張速度大の既知炭素星から 47 星を 選び、JHKL' 多数回測光観測を行った。その結果 31 星の周期を決定した。 これまでの炭素星周期最長記録 783 日を少し上回る 840, 870 日周期の星 が含まれる。 これは OH/IR 星に比べると大分短い。  モデル計算から、炭素星周期が 900 日を超える確率が 1 % 以下なのは 2.6 - 3.1 日である。これは HBB から予想される 4 Mo 限界とも合う。

Ireland, Scholz 2006

M-ミラ型星動的大気内でのダスト形成
 1.2 Mo ミラ型星の色々な変光位相に整合するモデル大気中で非灰色の温度依存 オパシティを持つダストの形成を調べた。それらの測光、干渉計観測での特性を 予想した。初期形成シリケイト内の鉄成分と供給可能なグレイン核の量が決定パ ラメターとなる。  もっともらしい仮定の下で、ダストは連続平均大気半径の 2 - 3 倍の大きさで 形成される。この研究で波長1μm 以下では、ダストなし大気の基本振動モード モデルの半径よりミラ型星の半径が大きく見えることが説明された。

Lebzelter, Hinkle, Wood, Joyce, Fekel 2005
南天の明るい長周期変光星の研究
 AGB 変光星の視線速度曲線を提示する。それらは様々な変則性を示す。例えば、 ミラの典型的周期を持つセミレギュラー、振幅 2.4 等を越すセミレギュラー、 第2極大を持つミラ、長い二次周期を持つセミレギュラー。信頼できるヒッパ ルコス視差のある星を log P - MK 図上にプロットした。LMC と似た 図が得られた。そこから脈動モードを決めた。
全てのミラは基本振動モードに 乗る。セミレギュラーは基本振動と第1倍音に乗る。基本振動のセミレギュラーは 光度大の星も小の星もある。そのいくつかは振幅の大きなミラよりも明るい。  これは、光度以外の少なくとももう一つの パラメタ―、多分質量、が長周期変光星の不安定性に影響することを示す。
第1倍音星の速度振幅は大体 4 km/s である。基本振動星では速度振幅は光度 振幅と相関する。二つのミラ R Cen と R Nor は光度曲線に二つの極大を持つ ことが知られているが、速度曲線は互いに異なる。R Nor の速度曲線は二重 極大の証拠を持たない。これは真の脈動周期は交互の極小と極大の間である ことを意味する。R Cen 速度曲線には二つのコブがある。これらの星は質量 が 3 - 5 Mo と比較的大きいのではないか。

Lebzelter, Wood 2005
47 Tuc 内の長周期変光星:マスロスの直接的証拠
 47 Tuc の中に 22 個の新しい変光赤色巨星を発見し、また既知の変光星8個 の周期を定めた。V-Ic ≥ 1.8 の赤色巨星は δV の検出限界で全て変光 星であった。このカラー限界値は log L/Lo = 3.15 に相当し、それは TRGB の 光度 log L/Lo = 3.35 よりかなり下である。 線形非断熱モデルは巨星枝上でのマスロスなしの場合、観測される低振幅脈動星 の PL 関係を再現できない。マスロスを入れると再現可能であるが、赤色巨星枝 とAGBで 0.3 Mo のマスロスが必要である。  大振幅の基本振動するミラ型星に対して、線形脈動周期は観測と合わない。 この問題への回答は、このように小質量の脈動星に対しては非線形モデルの 与える周期は線形モデルよりかなり短いというものである。非線形効果が 脈動の間に構造の再構築がその原因である。理論と観測の双方が RGB を上がり、 AGB 下部に進化した星は初め倍音振動をして、次に基本モードに移ることを示す。

Suh (2005)
LMOA = 低マスロス O-リッチ AGB 星のダストシェルモデル
 ISO などの観測から得た LMOA 星の SED を調べた 通常のシェルモデルでは、ダスト形成温度は 1000 K よりずっと低く、 ダストシェル内半径=27-41 Rs と遠方に離す必要があり、物理的に考えにくい。  しかし、超星風による密度超過領域を重ねると、高いダスト形成温度で 内径を星に近くにおいても観測 SED にフィット可能となる。
(超星風帯が実質的に離れた内径シェルの 役を果たしている。高温内径部の貢献度は?)

Suh (2004a)
O-リッチ AGB 星の変光位相に依存したダストシェルモデル
 ISO を始めとする赤外観測データを用いて、O-リッチ AGB 星の異なる脈動 位相における SED を調べた。モデルと観測の比較から、LMOA = Low Mass-loss rate O-rich AGB 星の SED 変化の仕組みは、HMOA = High Mass-loss rate O-rich AGB 星と全く異なることが分かった。  LMOAs では Tc が 1000 K より大巾に低く、極大期に大量のダストが 形成され、 τ が増加する。 HMOAs では深いシリケイト吸収帯が 位相と共に大きく変化する。HMOA におけるダスト形成と蒸発過程を考えると、 SED 変化を説明するダストモデルに3種類が可能である。以前の研究と異なり、 極大期においてダスト蒸発を起こさないモデルが観測と合う SED 変化を与える。
結構大きい欠陥は、位相毎に独立に Tc を決め、nc(内端での密度)を決め、 そこからR逆二乗で密度を伸ばしているので、シェル全体の質量がその度に大きく 変動することだ。LMOA と HMOA で位相に伴う変化の向きが変わる可能性は面白い.

Schultheis, Glass, Cioni (2004)

NGC 6522, LMC, SMC 領域での晩期型変光星
 2MASS から NGC 6522, LMC, SMC 3領域の完全サンプルを抽出し、MACHO, ISO データと同定した。各 MK ヒストグラム上で、TRGB の上で数が減る。 TRGB 光度はメタル量と共に増大する。また、与えられた MK に対す る (J-K)o もメタル量と共に大きくなる。これらのデータを Ferraro et al 2000 の銀河系球状星団と比較した。(J-H, H-K) 二色図上、低メタル星ほど多くの星が H-K 大になる傾向が著しい。これは、炭素星の割合が増加することによる。 全ての領域で主な変光星は、周期数十日の短周期変光星、長周期大振幅のミラ的 変光星、二重周期星であった。  低メタルになると、変光星の割合が小さくなり、与えられた振幅に対する最短 周期は長くなる。各領域で、 K - log P 図上の様々な傾向が見られた。LMC では 各領域間は類似しているがバルジ領域は異なる。バルジ領域では、K - log P 図 の "A" 系列は MK,0Tip をほとんど越えない。他のグル ープも LMC の対応系列と較べ途中で止まっている。マゼラン雲では 200 - 300 日周期の星が多数あり、 "C" 系列に従う。  ISOCAM で検出された MIR サンプルは MK < -7 星に対しては 完全である。様々な TCD, CMD には低メタルになると炭素星が増加する効果が 反映されている。ミラ型星の 等級・周期関係は少なくとも 7 μm までは 存在する。長周期変光星と二重周期 SRV からの質量放出はメタル量の差に 拘わらず、領域間で類似している。

Wozniak, Williams, Vestrand, Gupta (2004)
Northern Sky Variability Survey での赤色変光星の同定
 北天変光星サーベイ(NSVS) は δ > -38° をノーフィルター、 V 相当 8 - 15.5 mag を探査している。そこから AGB カラーを持つ 8678 星 を引き出した。精度の良い観測のみで観測数は 150/star、高赤緯星では 1000 回に達している。
 自動学習アルゴリズムを用いて、信頼度の高い分別が可能であることが 判った。これにより、不規則型, SR からミラ型を区別できる。また、炭素星 の占めるパラメター空間の存在が明らかとなった。我々の分類は、周期、振幅、 それに NSVS, 2MASS からの 3 カラーである。観測期間は1年分だったが、 全体の分類精度は 90 % に達した。我々のサンプルには GCVS に含まれていない 変光星が 6474 個ある。新たに同定されたミラ型星の、周期・振幅、周期・ カラー関係はこれまでの結果と一致する。

Hofner, Gautschy-Loidl, Aringer, Jorgensen (2003)
AGB 星の動力学モデル大気 III. 波長依存輻射方程式の効果
 動力学方程式と輻射方程式を合体して、AGB 星大気の新しいモデルを作った。 脈動による衝撃波、星風も組み込めた。炭素星の場合、モデルは自己整合なダ スト形成の時間変化も表された。  周波数依存輻射方程式の効果を灰色輻射方程式の結果と比較して調べた。非 灰色方程式は適正な密度分布を得るに重要であることが判った。合成スペク トルも示す。

Marigo, Girardi, Chiosi 2003
LMC 炭素星の赤い尾
 炭素星は M-型星に較べ系統的に赤いことが知られている。2MASS, DENIS の 色等級図で LMC 炭素星は印象的な赤い尾を引いている。これまでこの特徴は モデル等時線にはなかった。  その再現を目指し、TP-AGB 段階の進化を取り入れた等時線から種族合成を 2MASS j-(J-Ks) 図で試みた。シミュレーションは、2MASS データに現れる 銀河系前景と LMC O-何本かの垂直指を上手く再現した。
 その代り、炭素星の赤い尾の再現は出来なかった。通常採用される、太陽組成 相対比のまま Z を変えてオパシティを計算する方法で TP-AGB モデルを作って も炭素星の赤い尾は作れない。この失敗は炭素星の Teff - (J-K) 関係には 押し付けられない。そうではなく第3ドレッジアップで炭素が増加するに連れ 新しいオパシティを計算する必要がある。この方法で赤い尾を再現することに 成功した。

Jager, Dorschner, Mutschke, Th. Posch, Henning (2003)

星間シリケイト鉱物学の歩み VII. ゾル・ゲル法で製作したマグネシウムシリケイト の光学的性質と結晶化の振る舞い
 純粋なマグネシウムシリケイト (Mg/Si = 0.7 - 2.4) の系列を作り、波長 0.2 - 500 μm の範囲で光学定数を決めた。製作法はゾル・ゲル法であり、 マグネシウムとシリコンの水酸化物を溶液内で沈殿させる化学的手法である。 これらのマグネシウムシリケイトの著しい特徴は、シリケイト網目結合中に Si-OH 結合が非常に少ないことである。その結果、結晶化起動エネルギーが 低下し、こうして結晶化の温度障壁が下がりかつ結晶化時間も短くなる。 我々のゾル・ゲルシリケイトが天文学的に妥当であることは、モデル放射 スペクトルを AGB 星の ISO-SWS スペクトル、地上観測 10 μm スペクトル と比較して確認した。  AGB スペクトルの典型例として TY Dra 10, 20 μm バンドが細くその 間の谷が深い、を選んだ。TY Dra から得られたダスト放射率はモデルできれい に再現 され、星のダストグレインは実際純粋な非晶質マグネシウムシリケイトである ことを支持する。AGB 星と 超巨星集団の平均スペクトルも良く合う。ただし、 中間谷間部に強い放射を示す TR Cas のような星では他のダスト成分からの追加 が必要である。それは多分なんらかの酸化物だろう。そのような追加成分の 粗い光学的性質は、 R Cas スペクトルから純粋マグネシウムシリケイト成分を 差し引いたスペクトルから得られる。

Suh, Kim (2002)

OH/IR 星の様々な位相における IR スペクトルをモデル化する
 厚いダスト層を持つ OH/IR 星 OH 127.8+0.0, OH26.5+0.6,のスペクトル エネルギー分布 SED を様々な変光位相で調べた。ISO データを用い、新しい 脈動パラメタ―を定めた。深いシリケイト吸収帯は脈動位相に応じて大きな 変動を示した。この変動は主に OH/IR 星ダスト層の性質の変化に起因する。 詳細な輻射モデルを観測と比較して中心星と周辺ダスト層のパラメタ―変動を 変光位相によりどう変化するかを追った。
 その結果、中心星が極小から極大へと光度上昇する際に、シェル内側半径が 大きくなり、その変化速度はガス膨張速度より大きいことが判った。ダスト 層の光学的深さは減少する。光度が極小から極大へ向かう際には、ダスト形成 は停止し、体積差(?)の中のダストの半分が蒸発しただろう。 極大から極小への期間には内側半径が縮小するので、ダスト形成が盛んに起き ているの違いない。ダスト外側半径では一定のダスト風が容易に維持されてい る。変光により引き起こされるダスト蒸発が OH/IR 星内側ダスト層における ダストの再結晶化機構である可能性がある。

Lancon, Mouhcine (2002)
Northern Sky Variability Survey での赤色変光星の同定
 上部 AGB は O-リッチと C-リッチな長周期変光星に占められている。中間年齢 星集団の近赤外光は実質的にこれらの星の光が主成分である。個々のこれ等の星の スペクトルはばらつきが大きく、それらを直接に銀河光の合成サンプルに使う訳には いかない。
 Lancon, Wood 2000 の個々星のスペクトルライブラリーを用い、種族合成に 用いるための平均スペクトルを作成した。平均スペクトルと進化経路との関係を論じる。
 LPV 星スペクトルを並べて、平均を求める区間を定めるため、分光測光的特徴 の間の相関を再検討した。可視域での特徴と I-K のような可視連続光カラーの間にはよい 相関が存在するが、可視域指数と近赤外カラーの間には大きな散らばりがある。  この散らばりの原因の一部は、個々の星の何回かの観測を HR 図上にプロット してみると分かるが、 LPV 自体が幅広なことである。広帯域連続光のカラー温度は分類に 最も適していることを論ずる。得られた平均スペクトルの系列は、確かに規則正しい変化を示した。
(1)BC と温度スケールはスペクトルをモデル進化経路上の点と対応させるのに必要。
(2)平均スペクトル作成の際に使った簡単化の仮定。
(3)サンプルバイアス
(4)銀河の星間水素輝線への小さな寄与

Cioni et al 2001
LMC 巨星の変光と分類:DENIS と EROS の結果
 EROS から LMC Optical Center 0.5 deg2 で 800 変光星の 光度曲線を得た。SRa, SRb, ミラについて 進化段階の関係を考察した。

Alard + ISOGAL Collaboration + MACHO Collaboration (2001)
バーデ窓の質量放出セミレギュラー変光星 
 ISOGAL (7, 15 μm)と MACHO (V, R) の天体同定からセミレギュラー変光 星の一般的性質を決めた。バーデの窓で約 300 のセミレギュラー星を集めた。 これらは主に M-型巨星で、AGB に沿って進化している。それらの log P - Mbol 関係を調べた。ISOGAL から質量放出率は 1 10-8 - 5 10-7 Mo/yr となった。
 質量放出率は光度と周期に依存する。いくつかのセミレギュラー星は短周期 ミラと同程度の質量放出を示すが、ミラ程の振幅は持たない。周期 70 日は 質量放出の必要条件であるが、十分条件ではない。放出率を dM/dt ∝ TαLβ で近似すると、 α = -8.80, β = +1.74 である。これはモデル予想と合う。 もし LMC の極端に大きな質量放出星を加え、 T = 一定とすると、 dM/dt ∝ L2.7 となる。この式は [10-8, 10-4] Mo/yr にあてはまる。

Hawkins, Mattei, Foster (2001) (2001)
R Cen: ヘリウムシェルフラッシュの最中にあるミラ型星 
 ミラ型変光星 R Cen の 1918 - 2000 AAVSO 可視観測を解析した。支配モー ドの周期は 1951 年の P = 550 d から 2000 年の P = 505 - 510 d まで一貫 して下がり続けている。その間に振幅は V = 5.5 - 11.8 mag から V = 6.3 - 9.1 mag へと 3 mag. も小さくなった。周期低下は He フラッシュ星として 知られている R Hya, R Aql, T UMi と似ているので、R Cen もヘリウムフラッ シュ星ではないか? この周期変化は 2 - 3 Mo の星でヘリウムフラッシュ直後 に期待される光度低下に伴うと看做される。  変光曲線にはおなじみの深い極小と浅い極小が交互に現れる現象が見られ、 二重極大のように見える。過去50年間に、主モードの振幅は 3 mag 小さく なったが、周期約 274 d の第2モードの振幅は変わらない。このために最近では 二重極大の様子がはっきりしなくなってきた。 1930 - 1966 のパワースペクトル から、主振動数 1/548 cycle/day の 8 倍までの倍音が見られる。二重極大変光 曲線の説明としては二つのモードの共鳴がある。

Olivier, Whitelock, Marang (2001)
ダストに埋もれた太陽近傍 AGB 星
 ダストに埋もれた 58 個の AGB 星、内二つは post-AGBs の可能性がある、 を調べた。27 個は C-リッチ、21 個は O-リッチである。これらは、 Jura, Kleinmann (1989) の太陽近傍高マスロス AGB 星(dM/dt > 10-6Mo/yr)に載って いる星である。NIR 地上測光、IRAS、視線速度と流出速度データを合わせてこ れらの星の性質を解析した。NIR 変光振幅は周期と相関し、波長と共に減少す る。P < 1000 日での統計テストからは C-リッチと O-リッチで周期分布に 差があると考える根拠はない。  周期 1000 日を越える炭素星はない。PLR を用いて光度と距離を決めた。 F60 から決めたマスロス率は赤外カラーと周期に相関する。 相関が強いのはマスロス率と k-[12] カラーの関係である。サンプルの運動と スケール高は周期 1000 日以下の星は低主系列質量星であることが判る。 O-リッチで周期が 1000 日を超す3つの星は中間質量星かも知れない。他の 星の平均質量は 1.3 Mo で白色矮星質量は 0.6 Moであろう。高マスロス率期 間は 4 104 年と見積もられ、これらの星が AGB を離れる前に TP を経験するとしても精々1回である。

Feast, Whitelock 2000
ヒッパルコスデータによるミラの運動:太陽円周を越えるバー 
視線速度、ヒッパルコス固有運動、周期光度関係に基づいて、ミラ型星の 空間運動を導いた。 P = 145 ? 200 日の太陽近傍ミラは銀河系中心 からの実質外向き平均速度75+-18 km/s を有する。これは軌道が細長く、 主軸が銀経17°の方向に伸びていると解釈される。

Winters, Le Bertre, Jeong, Helling, Sedlmayr (2000)
ダスト形成 LPVs におけるマスロス機構の体系的研究
 主に炭素星に関して、  ダスト形成を含めた時間依存流体方程式を解き、マスロスを調べた。モデル グリッドは二つの領域に分かれた。(A) 領域は、5 km/s を超す星風領域である。 星風はダストに働く輻射圧で駆動される。  (B)領域では、星風速度は小さく、 マスロス率は 3 10-7 Mo/yr を越えない。輻射圧の役割は副次的で ある。(A) から(B) への転換は急である。O-リッチ星の超低マスロスモデル はバルジで見つかった天体の説明になる可能性がある。

Sevenster, Dejonghe, Van Caelenberg, Habing 2000
銀河系内側円盤における進化した星の分布
 内側銀河系の O-リッチ、進化した、中間質量星の一様なサンプルに対し、 力学分布関数を求めた。軸対称、2成分 Stackel ポテンシャルを用いた。 安定な2積分モデルは最初の3投影モーメントに関してデータを非常によく 再現する。しかし、中心部視線速度、中心スケール高、 |l|=[5, 15] でほぼ 完全に筒状の回転を再現できなかった。  これらの特徴は銀河バーを示しており、3積分モデルで良くフィットする。 2積分及び3積分分布関数を議論した。円盤の高年齢 AGB 星の観測分布を説明 するには、やや厚い円盤成分が必要である。この厚い成分は高銀緯での AGB 星 の運動を、薄い円盤より上手く説明する。AGB 星で見る限り円盤とバルジは力 学的に非常によく似ていて、同一成分と見做せる。しかし、バルジの 100 pc 以内は力学的に独立な成分である。

Whitelock, Feast (2000)
ミラ的変光星のヒッパルコス視差
ヒッパルコスで観測されたミラのうち 255 星の K 等級が観測された。 酸素過多ミラ型星のうち、周期光度関係ゼロ点を 180 星から求めた。 省かれたのは短周期で青いミラ型星と小振幅変光星である。 得られたゼロ点は 0.84+-0.14 mag で、LMC 距離指数 18.64+-0.14 を与える。 もしメタル量補正が必要であるならもう少し大きいかも知れない。この値はセ ファイドからの値と良い一致を示す。炭素星のゼロ点に関しても少し述べた。  角直径と視差から赤い変光星の直径を導き、脈動モデルの検証を行った。 大部分が同じモードで振動している証拠が示された。現在の大気モデルが正し いなら、それは第1倍音振動である。周期光度関係と周期カラー関係の系列に 関し少し検討し、脈動モデルへの意味を考察した。

Whitelock, Marang, Feast (2000)
ヒッパルコスカタログ中ミラ的変光星の赤外カラー
 ヒッパルコスで観測された 193 ミラの JHKL 測光を行った。与えられた周期 において、特に K-L は振幅と相関が良い。 大きな振幅の星は広がった大気を持ち、その結果、K-L,  H-K が赤くなり、 J-H は青くなるのである。 また非常に広がった大気の星は K− [12]が大きく、質量放出率も大きい。この発見は脈動と質量放出の間の因果 関係に対する新たな支持材料である。
Hp-K 対 log P 図上には log P < 2.35 で二つの系列が見える。 与えられた P に対して、二つのグループは同じ振幅を持つが、JHKL カラーとスペクトル型は 異なる。青い系列の短周期星は球状星団ミラと類似の近赤外カラーを示す。
変光曲線に見られる長期変動についても議論した。

Meixner, Ueta, Dayal, Hora, Fazio, Hrivnak, Hoffmann, Deutsch (1999)
PPN 候補の中間赤外撮像サーベイ
 MIRAC2 中間赤外カメラを IRTF と UKIRT につけて、PPN 候補星 66個 の撮像サーベイを行った。撮像は δλ/λ = 0.1 の狭帯 フィルターで行い、空間分解能は 1" である。17/66 個が空間分解された。 48/66 個は分解されなかった。1/66 個は検出されなかった。 幾つかの天体では、可視と赤外の位置の一致を確認した。  サンプルは PPN 以外に extreme AGB 星、若い PNe, 超巨星、 LBV 星を含む。 T = 150 K 程度に冷たく赤外で明るい天体のダストシェルは 分解しやすいことが分かった。空間分解した 17 天体のうち 11 天体は 広がっており、その中間赤外画像から二つの形態クラス=コア/楕円体と 円環(トロイダル)に分かれる。コア/楕円体クラスは未分解のコアと その周りに薄く広がる低輝度星雲とから成る。円環(トロイダル)クラスは 両端が明るく、赤道面上の密度超過を示唆する。コア/楕円体型の方が 円環型よりもシェルの光学的厚みは大きい。

Suh 1999

AGB 星周エンベロープ中シリケイトダストの光学的性質
O-リッチ AGB 星の周りにあるシリケイトダストの光学的性質を調べた。 実験室で得られたダスト候補物質の光学データと星の観測データに注意を 払った。 IRAS PSC, LRS データを含む赤外線星のSED観測を輻射輸送モデル を較べた。OH/IR 星の λ > 13 μm でのオパシティは光学的に 薄いシェルを持つ星のダストオパシティと異なることが判った。  これは、ダストの光学定数に温度依存性があるためかも知れない。オパシティ から、冷たいダスト物質と暖かいダスト物質との光学定数を導いた。 光学定数はクラマース・クロニッヒ関係を満たし、以前の研究よりフィットの よいオパシティを与える。光学定数からプランク平均光学有効係数を得た。
(λ=3-8μm の k がうんと上げてある。一種のダーティ シリケイトモデル。(n,k)の表がない。暖かいオパシティは18μm に弱い 振動子を付けている。必然性が?FIR はλ-2? )

Wood + MACHO Team (1999)
LMC 赤色巨星の MACHO 観測:ミラ、セミレギュラー、接触連星、半接触連星
 MACHO データベースを使い、LMC バー 0.5°x0.5° 領域内の Mbol -2 等より明るい赤色巨星全ての変光曲線を調べた。全ての星で周期、しばしば 多重、を求めた。はっきりした周期 - 光度系列が M ≤ 2.5 Mo の低質量星 巨星領域で、5本見つかった。周期、光度、周期比を理論モデルと比較した結果、 ミラは基本振動脈動星で、一方、セミレギュラーは第1,2,3倍音、星によ っては基本モードの、振動星であることが明らかになった。ミラとセミレギュ ラーは全て5本の系列の内の3本上に乗る。これ等の星は全て AGB 星である。  第4系列は第1巨星枝(FGB) 上の赤色巨星とコアヘリウム燃焼ループの赤い 端にある中間質量星 (M > 2.5 Mo)を含む。これ等の星は接触型連星である と強く示唆され、 FGB 先端から 1 等以内の星の 0.5 % を占める。第5系列 の変光曲線は半接触型連星でロシュローブ放出流または星風により主星から 不可視の伴星へと質量移送中である。それらは AGB 星の 25 % を占める。 これ等の赤色巨星接触連星または半接触型連星の存在が確認されたら、現在の 連星系進化モデルは大幅な変更を余儀なくされるだろう。

Bedding, Zijlstra (1998)
ヒッパルコスミラ、セミレギュラー星の周期・光度関係。
 近傍のミラとセミレギュラーで年周視差精度が 20 % 以下、周期が良く定ま っている物を選んで周期光度関係を求めた。 K 等級を用いて、二本のよく決 まった P - L 系列を発見した。その一つは通常のミラ型星 P - L 関係。 もう一本はファクター 1.9 短周期側にずれている。ミラ系列にはミラ型星と セミレギュラーが混在するが、第2系列にはセミレギュラーのみ存在する。  セミレギュラーの幾つかは二重周期を示す。そのそれぞれが二つの関係に乗る。 ホワイトロックの進化経路がデータに合うことが示される。これはセミレギュラー がミラの前駆天体であることを示唆する。二つの系列間の遷移は脈動モードの 遷移かまたは恒星内部構造の変化に対応する。ミラの大振幅脈動は AGB 先端光度 に達するあたりで起こる。

Schultheis, Ng, Hron, Kerschbaum 1998
パロマ―・グロニンゲンサーベイのフィールド3 II. セミレギュラーの近赤外測光
 パロマ―・グローニンゲンサーベイのフィールド3 (PG3, l = 0, b = 10) にある 78 SRs の近赤外測光を行い、既知の領域内ミラ型星と比較した。 PG3 SRs は PG3 Miras と P-L, P-color 関係で同一系列に並ぶことが判った。 そこでは SRs は Miras の短周期側拡張と見える。  フィールドと PG3 のミラは同じ P/(J-Ks) 関係に従う。しかし、SRsの場合は そうではない。PG3 のミラと SRs の双方共に Glass et al 1995 の Sgr I P-L 関係 に従う。それらは共に基本モードで脈動しているように見える。その金属量は intermediate から solar に分布している。

Bergeat, Knapik, Rutily 1998
銀河系内炭素星長周期変光星の周期光度関係
 ヒッパルコス観測のある炭素過多長周期変光星 115 個の (MK, log P) 関係を示す。これを大マゼラン雲の炭素星と較べた所、両者は非常に にており、3本の線が分離した。サンプル1= Feast et al. (1989) の関係に近い長周期変光星の系列。サンプル2=短周期で光度超過の変光星。 サンプル3=幾つかの光度不足の変光星。用いたデータは Knapik et al 1997 による Lutz-Kelker 効果フリーな期待値を用いた。  絶対等級の非ガウシアン分布に起因する残りのバイアスは avoid された: 72 個のサンプル1に非パラメトリック法を用いて PL 関係を調べ た結果は
  MK = -3.99 log P + 2.07
勾配は Reid et al 1995 の値と一致する。この式から得た LMC 距離指数は &mu: = 18.50 ±0.17 である。サンプル1には等級の上限が 存在する。それは銀河系で -4.85, LMC で -4.72 である。メタル量効果の 補正は加えていない。

van Leeuwen, Feast, Whitelock (1997)
ミラ型星のヒッパルコス視差
 ヒッパルコス三角視差を 16 個のミラ型星について求めた。内8個の角直径 が既知の星に対して大きさを与えた。脈動理論との比較から、周期 400 日以上 の二つは基本振動を行っており、400 日以下の二つは倍音振動であることが判った。 LMC での傾きを固定して、ミラの周期光度関係を MK と Mbol で求めた。  LMC 距離指数 18.54 が求まった。これはセファイドから得られた 18.57 に近い。 サンプル中唯一の炭素星 R Lep (P = 427 d) の絶対等級はこの星が基本振動で 脈動していることを示唆する。他のタイプの変光星も個々に論じた。

Lopez, Danchi, Bester, Hale, Lipman, Monnier, Tuthill, Townes 1997
11 ミクロンでの長基線干渉計観測による ο Ceti のダストシェル 非球対称構造とその時間変化
 1988 - 1995 年に UC Berkley 赤外干渉計 (ISI) により ο Ceti の観測が 行われた。観測されたビジビリティは観測時により大きく変わり、位相による 光度変化でダストが暖められたり冷やされたりするという単純な図式に当ては まらない。その代わり、 ο Ceti の光球から数恒星半径内のダスト 密度が激しく時間変化していた。二つのダストシェル、一つは光球から3恒星 半径以内、もう一つは星から約10恒星半径、というモデルが観測をうまく説 明する。
 4種類の軸対称な輻射輸達モデルをも、データと比べた。それらは、 (1)球対称なシェルの内側に楕円体空洞、(2)円盤、(3)一つか二つの 固まりをつけた球対称シェル、(4)相互に等間隔な薄い不完全シェルの群れ、 である。ビジビリティの時間変化を説明するため、全てのモデルには星光球に近い 距離でのダスト密度の時間変化が必要である。軸対称モデルは、球対称モデルの 距離に対応するところに、塊を持つ。観測された広帯スペクトルとの良い一致が これらのモデルで得られた。

Hinkle, Lebzelter, Scharlach (1997)
4つのミラ、5個のセミレギュラーでの CO Δv = 3 視線速度
 4 ミラと 5 セミレギュラーの時系列高分散スペクトル 1.6 - 1.8 μm を得た。この波長域にある CO Δv = 3 振動回転ラインは以前に低温度 変光星の脈動を調べるのに適当であることが示されていた。これらのラインを 用いて、ミラ、SRa, SRb 型星の間で、速度変動幅、励起温度がどう似ているか または違うかを調べた。  サンプル内のミラ型星は全て、周期に関係なく、似た速度変化と変動幅を示し た。セミレギュラーはミラよりずっと小さな変動巾しか持たない。LPVs は 全て、数 km/s のレベルのランダムな速度変動を示す。速度変動幅と可視変光巾 の間に相関のあることが判った。

Wood, Sebo (1996)
On the Pulsation Mode of Mira Variables: Evidence from the LMC
 ミラ型変光星の視直径測定はこれらの星が非常に大きくて、基本振動よりは 第1倍音振動と合致することを示している。一方では、ミラ型星の非線形脈動 モデルは、少なくとも M ≤ 2 Mo 星に関しては、観測されるような大きな 速度振幅を達成できるのは基本振動だけであることを示す。ここでは、LMC の LPV が二本の (K, log P) 系列に乗ることを示す。一本は良く知られたミラ 系列で、もう一本はそれと平行する Δlog P = 0.35 の系列である。 ミラ系列上の LPV 振幅は ΔI = [0.1, 3] という大きな散らばりを持つ。 第2系列の振幅は ΔI < 0.5 と小さい。ΔI > 0.5 の 既知 LPV は全て第1系列に乗る。
 LPV の理論モデルは基本振動周期の第1、第2倍音周期に対する比として、 Δlog P = 0.3 - 0.4 を予想し、かつ倍音振幅は基本振動よりも小さな 極限振幅を持つことを予想する。もし、第1系列が基本振動で、第2系列が 倍音ならば、観測結果は自然に理解できる。第2のテストとして、 LMC の 古い巨星枝にある星に対して振動モデルを計算し、計算された周期を観測と 比較した。基本振動脈動星の周期は観測されたミラ型星と一致した。倍音周期 はミラ型星周期には短すぎた。これらの結果はミラ型星が基本振動という説を を強く支持する。

Sarin, Jura (1996)
銀河系ハローにミラがない
 Hawkins 1983 は (l, b) = (356, -47) 方向の 16 平方度領域で変光星の 自動検出観測を行った。期待値は11だったが、ミラ型星は一つも見つからなか った。これは、銀河系ハロー星はミラ型星に進化しないことを示唆する。

Little-Marenin, Stencel, Staley (1996)
AU Cygni 赤外スペクトルの変動するダスト特性 
 IRAS 1983 年中の LRS スキャンデータに基づいて、Oリッチミラ型星 AU Cygni の星周シェルからの赤外シリケイト放射に変化が存在する証拠を示す。 AU Cyg の光学的に薄いシェルからの放射帯コントラストは可視極大で強く、 極小期で弱い。  星周シェルは微小グレインが多数を占めるモデルを提案する。それらは、 極大期により大きいグレインの蒸発により生まれ、連続光に対するバンド放射 の相対強度を増加させる。バンド形状の変化は小さい。

Feast (1996)
The Pulsation, Temperature and Metallicities of Mira and Semiregular Variables in Different Systems
角直径観測と赤外測光から Te - (J-K)関係を決定。実半径はSR,ミラが第1倍音 振動を支持する。カラー周期関係はメタル量依存がある。球状星団を較正源として、 P = 200 - 300 d のミラでは LMC が log z = -0.6, Sgr I は -0.2 を得た。 PL 関係のメタル依存の証拠はない。理論的導出は困難である。

Dorschner, Begemann, Henning, Jaeger, Mutschke 1995

Mg-Fe-シリケイトガラスの光学的性質
 MgxFe1-xSiO3 x = 0.4, 0.5, 0.6, 0.7, 0.8, 0.95, 1.0 と Mg2yFe2-2ySiO4 y = 0.4, 0.5 のシリケイトガラスを作った。反射およびエリプソメトリック測定 と透過率測定から 0.19 - 500 μm の光学定数を導いた。 シリケイトダストアナログに関して鉄分の影響が定量的に評価できた。  オリビンガラスデータを晩期型星の IRAS LRS スペクトルと比較した。 オリビン組成の非晶質シリケイトが晩期型星スペクトルと合うことが示された。 しかし、二つの何度の間の谷間ではシリケイトガラスは透明過ぎ、観測 スペクトルに必要な放射を生み出せない。ダストシェル内側端における シリケイトダスト温度は文献で想定されている温度よりかなり高い可能性が ある。したがって、昔からの疑問=観測から導かれる低い温度とそれより かなり高い凝結温度のズレ、に対し、この新しいデータは差を埋める方向で ある。

Winters, Fleischer, Gauger, Seldmayer (1995)
長周期変光星の星周ダストシェル IV. 炭素星の輝度分布と空間スペクトル
 長周期変光星ダストシェルモデルの輝度分布と空間スペクトル(?) を示す。ダストシェルの形成、振動数依存の輻射場と流体力学方程式を 結合して、ダストシェルモデルの空間輝度分布を導いた。
 輝度分布は時間に依存する星半径の数倍のスケールの構造を持つ。この モデルと類似の構造が観測されている。その時間変化も観測結果と一致する。 モデル計算によれば、極大、極小の時期は波長により異なる。

Lepine, Ortiz, Epchtein (1995)
OH/IR 星:近赤外測光とミラ-OH/IR 系列の検討
 約400 OH/IR 星の JHKL'M 測光+IRAS の検討。K-L' に沿って、データが 一次元系列を成す。13 K-L' 区分での平均 OH/IR 星のモデルフィットから、 光度、半径、温度、シェル光学的深さ、マスロス率の系列に沿った変化を調べた。 この系列は質量系列である。

Little-Marenin, Bauer (1994)
シリケイト放射の変化 - AU Cygni のモデル 
 ミラ型星 AU Cygni (P=435 d) の IRAS LRS 各回スキャンから、その F12 と 10 μm 放射帯コントラストが可視変光曲線と共に変化することが判った。  F12 はファクター 1.7 変化し、コントラストは 40 % 変わった。ダスト放射 の変化は Leung コンピュータコードでモデル化された。

Winters, Fleischer, Gauger, Seldmayer (1994)
長周期変光星の星周ダストシェル II. 炭素星の変光曲線
 時間依存の流体力学と炭素ダストの形成、成長、蒸発、波長依存の 輻射輸達を組み合わせて、ダストシェルモデルの光度曲線を合成した。
 ダスト形成が周期的に起きることにより、ダストシェルに層構造が生じ、 それは光度曲線に影響する。その結果、脈動周期より長い周期の変動が 重なる。それに似た現象が観測光度曲線に見られる。

Vassiliadis, Wood (1994)
低-, 中間-質量星の post-AGB 進化
 主系列から AGB 期を経て、惑星状星雲と白色矮星に至るまでの進化の中で post-AGB 進化を示す。質量放出は惑星状星雲中心星の質量放出の観測結果の 文献値および輻射圧駆動の星風モデルとから導いた質量放出の経験式を用いた。 初期質量 0.89, 0.95, 1.0, 1.5, 2.0, 2.5, 3.5, 5.0 Mo、メタル量 0.016, 0.008, 0.004, 0.001 に対するモデル計算を行った。post-AGB 進化系列は 惑星状星雲中心星が AGB からいつ離れるかによって、二つのはっきりした グループに分かれる。
 第1グループはヘリウムシェル燃焼が支配的な時、第2グループは水素シェル 燃焼が支配的な時である。計算した27進化系列中、 17 系列は水素燃焼期、 10 はヘリウム燃焼期に AGB から離れた。低質量モデルはヘリウム燃焼期に離 れることが多く、それはそれ以前の AGB 進化でヘリウムシェルフラッシュ直前 に質量放出が最大となるからである。計算結果を LMC の観測データと較べた。 これ等の計算は惑星状星雲の光度関数を決めるのに有用である。また、楕円星 雲の紫外超過の研究にも役立つ。

Le Bertre (1993)
酸素リッチ晩期型星の 1 - 20 μm 変光曲線 
 37 星の 1- 20 μm 測光モニターの結果を報告する。サンプルは、可視 ミラ 13 星、M-型超巨星 3 星、タイプ II OH/IR 星 20 星、未同定天体 1 星である。各天体は最低 13回、最高 42 回測光された。観測期間は最低 1250 日、最高 2150 日である。1 - 5 μm データにフーリエ解析を行い、 可視ミラ全て 13 星と OH/IR 9 星の計 22 星の変光周期 300 - 700 日が 得られた。この 22 星のサブサンプルでは OH/IR 星の周期が全て 470 日以上 であるという点を除くと、 可視ミラと OH/IR 星の間の変光の特性は同じである。  2 可視ミラ + 10 OH/IR = 12 星の周期は 800 - 1600 日で、これらの超 長周期星では変光の不規則性と変光曲線の繰り返しの悪さが見られた。 3 天体では周期が決まらなかった: VY CMa と IRSV 1540-5413 の変光は 小振幅で不規則、 OH/IR 344.93+0.01 では P > 2000 日が現在のデータ の外挿から推測されるのみである。振幅は波長と共に減少する。しかし、 M バンド振幅は L' バンドより大きい。シリケイト放射帯ピーク(9.7 μm) の振幅はその両側 8.4, 12.9 μm での振幅より大きい。OH/IR 星の 周期-光度関係を調べると少なくともその幾つかは、周期 500 日でさえ、 可視ミラの周期光度関係に従わないことが判った。
個々のデータはマイクロフィッシュで得られる。

Little-Marenin, Staley, Stencel (1993)
ミラ型変光星のダスト放射帯は変化するか?: LRS サーベイ 
 ミラ型星の LRS 個々スキャンを調べた。  10 μm シリケイト帯コントラストは可視、12μm 変光 位相と共に変化する。

Lee, Freedman, Madore (1993)
星に分解された銀河の距離指標としての TRGB 
 TRGB I 等級が低メタル( [Fe/H] < -0.7) の古い種族を含む銀河の距離指標 として有用である。その精度はセファイドや RR Lyrae に匹敵する。  様々な指標を使った距離を比較すると ±0.1 mag の範囲で一致する。  Sobel カーネル k(j) = [-2, 0, 2] を光度関数 L(i) 抱き合わせ、 G(i) = ΣjL(i+j)k(-j) のピークを探る。

Vassiliadis, Wood (1993)
AGB 終端までの質量放出を伴う低-, 中間-質量星の進化
 初期質量 [0.89, 5.0] Mo の星は主系列から AGB 先端まで進化する。Z = 0.016, 0.008, 0.004, 0.001 の星の進化を計算して、銀河系とマゼラン雲の 星の比較をした。計算の新しい点はマスロス率と周期の経験式を AGB での マスロスに組み込んだ点である。計算では超星風が自然に出現するが、それは 最後の 2 - 3 熱パルス周期の間だけである。超星風が働くのは、静謐期(水素 燃焼)の後半で光度が高い時期だけなので、AGB 星の大部分は何回かの超星風 期を経験し、その中間の時期には正常な赤色巨星として振る舞っていたのだろう。 質量とメタル量の関数として、熱パルス期 AGB 星である期間の長さ、可視 AGB 期 の長さ、OH/IR 星のようなダストに覆われた極大脈動期の長さを評価した。
 M ≤ 3 Mo の星に対する AGB 期極大光度はマゼラン雲星団星の観測と良い 一致を示した。より質量の大きな星団星の極大光度に対する現在の観測結果は 暗過ぎる点を議論した。初期-終末質量関係は、したがって、 M < 3 Mo の 星に関しては信頼できる。ただ、その関係が与える白色矮星質量は現在の観測 結果より 0.1 Mo 大きいが。 5 Mo の星ではヘリウムシェルフラッシュが弱い ので、外層質量が 1.5 Mo より大きいと、古典的な核質量・光度関係が与える より明るい進化経路を辿る。このような星は超星風で外層質量が低下すると AGB を降りて行く。最後に、我々の計算はマゼラン雲で見られる多数の低質量 炭素星の出現を再現しなかった。

Little-Marenin (1992)
ミラ型変光星のダスト放射帯は変光位相に伴って変化するか? 
 ミラ型星の変光サイクルの異なる位相で得られた個々の IRAS LRS スペク トルを見ると、幾つかの星では 10 μm 放射帯の強度が位相と共に変化 している。  放射帯強度は極大付近で強く、極小付近で弱い。 IRAS データの位相分布 は疎ら過ぎて位相遅れまでは出ない。

Jura, Kleinmann (1992a)
短周期、中周期酸素リッチミラ
 |b| > 30° の 酸素過多ミラを、赤外測光と周期・赤外光度関係とを 用いて解析した。過去の運動学的解析結果と一致して、周期 300 日以下と以上 とで、空間分布に大きな違いがあった。我々が定義する中間周期ミラ、P= 300 - 400 d、では指数関数スケール高が 240 pc で、投影面密度= 100 kpc -2, 太陽近傍空間密度= 210 kpc-3 である。短周期 ミラ、P < 300 d, ではスケール高 500 - 600 pc, となる。この値は周期・ 光度関係のゼロ点によるがおそらくメタル量に依存する。これ等の短周期ミラ は薄い円盤種族、最大スケール高= 100 pc、には属さない。  短周期ミラの投影表面密度は 40 - 60 kpc-2, 太陽近傍空間密度 = 35 - 60 kpc-3 である。
( 中間ミラでは 210*0.24/100=0.5, 短期ミラでは 35*0.6/40=0.53 または 60*0.5/60=0.5 か、なるほど)
 P > 300 d ミラの母星は主系列質量 1 - 1.2 Mo の円盤矮星らしい。短周 期ミラの母星質量は < 1.1 Mo であろう。 1 Mo 星からのミラは年齢 10 Gyr 以上を意味する。しかし、その場合には 10-4 Lo より暗い白色矮星 を観測されているよりもずっと多く生み出すこととなる。短周期ミラの星周ダス トの量は大きいことから、それらの星のメタル量は太陽の 1/3 より大きい。
 中間周期ミラの期間を 2 105 と見積もった。この値は最近の他の 見積もりより長い。短周期と中間周期酸素過多ミラは大体 10-7 Mo /yr の質量を放出している。

Zijlstra, Loup, Waters, de Jong (1992)
AGB 星の中断マスロス 
 IRAS 二色図の F60 超過星は 炭素星で既に知られている低マスロス率現象が O-リッチ星にも現れている として理解できる。つまり、 これは一般的な現象なのである。マスロス率は熱パルスの位相に依存する のではないか。  マスロス率は熱パルスの際にピークに達し、間パルス期に低下し、停止する。 低マスロス期は脈動の低下または停止と一致するのかも知れない。

Hron (1991)
短周期ミラ型変光星のメタル量の測光による決定 
 P ≤ 200 d の短周期ミラは低メタル星と円盤星の混合集団と考えられて いる。測光観測と低質量ミラの大気と脈動モデルに基づいて、両者を分離する 方法を議論する。  球状星団のメタル組成とフィールドミラの運動学を測光データと結合して、 (Vmax - K)o が円盤星と低メタル星を分離するのに使えることを 示す。現在得られる P = [145, 200] d フィールド星の VJK 測光はこの星 集団内のメタル量の広がりとして -0.5 dex を得た。

Jones +6 (1990)
AFGL 星の変光
 63 AFGL 天体の赤外測光を 9 年間行った。それらの変光周期と平均 等級を定めた。これらの星は、周期分布と測光特性の点で、可視ミラと 電波で明るい OH/IR 天体との中間に位置する。
 脈動モードのスウィッチのような、突然の切り替え現象は見られなかった。 それより、これらのサンプルからは速くて連続的な進化、弱いマスロスを 伴う短周期ミラから大規模マスロスの長周期ミラへの進化である。
 サンプル炭素星の周期分布は O-リッチ星と同じであった。炭素星の どれも電波で明るい OH/IR 星ほど長い周期は持たない。

van Langevelde, van der Heiden, van Schoonevelde (1990)
OH/IR 星の多重変光曲線の位相遅れ
 OH 1612 MHz 時系列スペクトルから位相遅れ τ0 を取り出す方法を述べる。 様々なスペクトルチャネルの組み合わせのフラックス曲線から独立に決まる位相遅れ τij から τ0 を決める。実際のアルゴリズムは複雑で ある。  Dwingeloo からの新しいデータを古い歴史的データと合わせ、 OH/IR 星のシェルの 位相遅れを決めた。位相遅れを文献から得た角半径と合わせて幾つかの星の距離を求めた。 古い値と少し異なるがこちらの方がエラーが小さい。輻射絶対等級も示す。

Lewis, Eder, Terzian (1990)
IRAS カラーで選択した天体の OH メーザー源 II.
 アレシボでカラーで選んだ 1294 星の 1612 MHz 観測を行い、 86 星で検出、 内新発見が 79, という結果を得た。Edler et al 1988 と合わせると、 -0.7 ≤ (25-12) ≤ 0.25, 0 ≤ δ ≤ 37 (そして多分S25 > 2 Jy)でのバイアスサー ベイが行われた。検出率は (25-12) ≤ -0.5 で大きく低下した。検出天体は 全て F25 ≥ 2 Jy であった。  アレシボサーベイは高銀緯に及ぶので、小質量星の OH メーザーの特徴が 研究可能となった。我々は多くの分離または「化石」シェルを見つけた。 それらの割合から、低質量星では「超星風」時期は 1000 年で終わることが分かった。
低質量星は Ve-(12-25) 図上で系列をなすという発見。 低質量星は光学的に薄いシェルの低速マスロスからカラーと共にVe上昇。 カラーに上限。高質量星は赤い枝が伸びる。OHで新しいマスロス進化を提唱 している。話が分かりにくいのが難。

Feast, Whitelock, Carter 1990
M 型巨星の種族と銀河系構造
太陽近傍, SGP のM型巨星、SR星のJHKL測光を行った。(J-H)o - (H-K)o 図上でそれらをバーデの窓のM型巨星と比べた。 SGP,SR星は 銀河バルジの高メタル成分星と同じ領域を占め、太陽近傍M型星とずれている。 バルジと拡大太陽近傍のミラ型星の母星(厚い円盤星)は似ている。

van der Veen, Habing, Geballe (1989b)
AGB から PN への遷移天体:可視、赤外の新しい観測
 AGB から PN への遷移期にある 42 IRAS 点源の可視、赤外観測結果を示す。 それらの IRAS カラーは質量放出 AGB 星と似ているが、λ < 10 μm の SED は全然似ていない。SED により天体を 5 グループに分けた。それらは AGB から PNe への進化経路ではなく、母星質量、 C/O 比、現在の放出率 による違いである。
 (J-H, H-K) 図上の位置からは大量の高温ダストの存在が推定される。モデル (Bedijn 1987) と較べてもそれは確認される。これらの天体は現在も質量放出 を続けており、 1000 年より近い過去に AGB から離れた。  簡単なモデルから、星温度、シェル内側半径、力学年齢を導いた。年齢と星 温度をモデル(Shonberner 1988)と較べ大体合うことが分かった。しかし、 Reimers のマスロス式ではマスロス率は時間と共に減少していくはずだが、観 測は一定または逆に増加傾向を示す。これら約 10-7 Mo/yr の 大きさは AGB での 10-4 Mo/yr に比べるとずっと低いが、それは AGB から PN への変換時期を決定するので重要である。post-AGB マスロス率 は 10-8 - 10-4 Mo/yr であった。

Gehrz (1989)
銀河系内恒星ダストの発生源
 銀河系星種族の分布とそれらに観測されたマスロス率を用いて、星間物質内に 放出される固体ダストの量を推定した。M-型星と LROH/IR 星はシリケイト ダストの大部分を生み出している。炭素と炭化ケイ素ダストの大部分は炭素星 から生じている。WR-星、新星、超新星は特異な組成のダストを放出する。  炭化水素グレイン の放出源に関しては観測的証拠が殆どない。恒星からのダストの注入と星形成 と超新星による消滅を比較して、銀河系ダストの生態学を研究すると、ダスト グレインは分子雲中での降着により恒星からの放出に比べ 1 - 5 倍の割合で 形成されていることが示唆される。
(何だ?暗黒雲に降参? )

Schild (1989)
AGB 星進化と共生星
 ミラ型星と OH/IR 星のマスロス率と周期の公刊データを集めた。マスロス 率と周期の間には良い相関が見つかった。 P < 600 d ではマスロスは指数 関数的に増大するが、その先では一定値を取る。ミラ型星が短周期から長周期 へ進化するに連れ、そのマスロス率は劇的に増加する。現象学的には天体は古 典的ミラから OH/IR 星へと進化する。
 シンビオティック星はミラ型星と OH/IR 星の遷移域で、マスロスが極大になる あたりに集中している。シンビオティック系の赤い星は短周期 OH/IR 星と同じ 進化段階にある。OH メーザーを放射する星周シェルを作ったのと同じ物理過程 が連星系ではシンビオティック星雲を作った可能性が大きい。シンビオティック 星の一部は超星風開始間際にあり、それは惑星状星雲形成につながる。
(何だ?分子雲に降参? )

Schutte, Tielens 1989

星周シリケイトの赤外特性とマスロス率
 簡単な準解析的な式でダストシェルからの赤外放射を特性付けた。輻射輸達の 数値解をダストシェルについて得た。モデルの自由パラメタ―は、ダストの吸 収特性と密度分布である。輻射圧で吹き出されるダストの密度分布に近似的 解析表現を与えた。フリーパラメタ―がスペクトルに与える影響を見るために、 大きなモデルグリッドを計算した。
 観測から、Tc = 近赤外カラー温度 と A10 = 10 μm の放射 または吸収強度の相関が知られている。この関係は本質的には近赤外光学的 深さと 10 μm 光学的深さの関係である。理論的 A10 - Tc 関係を計算し、観測と較べた。その結果、この関係は近赤外と 10 μm との 星周シリケイト吸収効率の比を決める鋭敏な方法であることが判った。
 これ等の結果と、以前に得られた結果とは、星周シリケイトグレインの近赤外 吸収効率は地上鉱物から予想されるよりもずっと大きいことが判った。我々は その原因は星周シリケイトに含まれる鉄イオン F2+ によるカラー センターと考える。近赤外と 10 μm との吸収効率の比を用いて、観測された A10 - Tc 関係をダストシェルのコラム密度として較正し、そう することで、マスロス率を容易に導けるようにした。
  R Cas, IRC 10011, OH 26.5+0.6 の3天体の赤外放射の詳細モデルを作った。 特に、 10 μm 放射または吸収の形に注意した。その結果、 10 μm 共鳴帯 の本来の形が天体毎に違い、 R Cas では太く、 OH 26.5+0.6 では狭く、IRC 10011 が中間になることが判った。この差の原因を考察した。マスロス率は、 3 10-7 Mo/yr (R Cas), 2 10-5 Mo/yr (IRC 10011), 2 10-4 Mo/yr (OH 26.5+0.6) である。
( パラメタ―が違うモデルを同じ コラム密度同士で較べている。しかし、コラム密度は観測量でないから、 観測の解釈に役立たないのが残念。)

Volk, Kwon (1988)
AGB 星のスペクトル進化
 η = 0.56*Mms の改訂レイ―マーズマスロス式とコアマス光度関係で、 AGB 星の進化を追い、そこにシェルモデルを加えて赤外スペクトルの進化 を追った。結果を IRAS 比較した。超星風は考えない。 Mms = 8 Mo は初めからシリケイト吸収で登場し、12/25/60 図で AGB 帯の 上辺を進む。1.5 Mo だと、放射帯で終始する。

Pottasch, Bignell, Olling, Zijlstra (1988)
銀河系中心方向の惑星状星雲
 PNe を探す方法= IRAS カラー+電波連続波 を述べる。この方法を |l| < 15 領域に適用した。新発見 36 PNe を含む結果の第一報告=天体の特性である。  新発見 PNe は一般的には既知星雲と同じであるが、発見方法により若い天体 にバイアスが掛かっている。新天体のかなりが OH/IRs と PNe の中間段階に ある。

van der Veen, Habing (1988)
恒星晩期進化を研究する道具としての IRAS 二色図
 IRAS 二色図 を用いて DGE-star = ダストガスエンベロープ星を調べた。 O-リッチ星は二色図上で系列を成し、それは AGB 頂点においてマスロス 率を増加させながら進化する経路を示すと解釈される。ただ、DGE 星全体は ミラ型星、OH/IR 星サンプルより広い範囲に散らばる。OH/IR 星の最後には 変光が小さく、[25-60] が大きい星が存在する。それらは PNe 前駆天体だ ろう。
 熱パルスがマスロスを一時的に抑制し、二色図上経路に弧状の遠足が重なる と考えると、縦の広がりが説明できる。つまり、マスロスに不連続性が存在 することが示された。炭素星系列が高いのは 40 -80 μm 放射率の差が原因 である。

Volk, Kwok (1988)
AGB 星のスペクトル進化
 時間依存輻射輸送方程式により、 AGB 星の赤外スペクトルの進化を追った。 簡単なマスロス式を使い、中間質量星の AGB 進化を計算した。結果を IRAS の 測光、分光データと比較した。  広範なデータを用い、マスロス式の妥当性を調べた。現在のマスロス式の結 果から、10 μm 吸収帯を示す AGB 星は Mms > 3 Mo であることが分かった。

LeBertre 1988

炭素星ミラ R Fornacis の可視・赤外観測:位相によるダストシェル変化
 1982 - 1987 年の間に取得した炭素星ミラ R For の可視・赤外測光データを 示す。異なる変光位相での SED を輻射モデルを用いて解釈した。極小付近に おいて、中心星が隠される現象は星周シェル内側部でのダスト凝結で説明され る。この凝結は単に光度低下に伴う温度降下の帰結であろう。  極大と極小間で総光度は 2.3 倍変化する。1 μm 光学的深さは極小期に 1.0 極大期に 0.7 である。赤外カラーの変化は質量流出が一様と云う仮定と 合う。 Feast et al 1984 が報告した 1983 年極小の異常な暗さが再確認 された。これは提出したモデル内で説明可能であり、余分の独立シェル放出 や、ダスト雲による食を考えなくてよい。 ( 光度低下の実証がポイントになる? )

Habing 1988

IRAS が見た我々の銀河系 I.
 IRAS PSC から F12 ∼ F25 の天体を選んで、銀河系の横向き像を得た。 そのほぼ全ては、大きな質量放出率を持つ長周期変光星である。星の数を銀経、 銀緯、フラックスの区分毎に数えた。どの方向でも、星の数はフラックスに対して 極めて平坦であった。星の数を、空間分布と光度関数の畳み込みとして解釈する。
 その結果、二つの種族が含まれていることが判った。同じ光度関数を持つが異なる 空間分布をする二つの種族か、同じ平均光度を持つが空間分布が異なる二つか。 私が好むのは後者で、4/5 は薄い円盤に属す。その厚みは FWHM = 440 pc、動径 方向のスケール長 = 4.5 kpc, カットオフ = 9.5 kpc である。そのピーク光度は 4000 Lo である。  残りの 1/5 はもっと厚い成分で、厚みは 1.2 - 2.8 kpc, スケール長 6.5 kpc, カットオフ = 18 kpc である。この成分も平均光度 = 4000 Lo である。この厚い 種族はおそらく Gilmore, Reid 1983 が提唱した厚い円盤に属する。
 この他の結論は
(i)薄い円盤種族の光度分布はバルジと似ている。
(ii)光度から導いた星のコア質量分布は白色矮星のそれとよく似ている。

Thronson, Latter, Black, Bally 1987
マスロス星の性質と星間ダスト構成の変化
 IRAS PSC からフラックスリミッテッドサンプルを調べた。IR 炭素星は 5.2 kpc-2、炭素星全体では 38 kpc-2となった。炭素星の 総数は 28,000(R/15kpc)2, R=銀河円盤半径 である。炭素星の数は 銀河中心距離に依存しない。一方 赤外 M-星は 47 kpc-2 である。 マスロス O-リッチ星は銀河系全体で 48,000 個である。進化した O-リッチ星 の数密度はスケール長 4 kpc の指数関数型の変化を示す。C-星と M-星の密度 分布のこの差は銀河面上での [C]/[O] 比の勾配が原因である。マスロス星の 種族構成が銀河中心距離により変化するため、星間空間に注入されるダストの 性質が変わり、その結果分子雲の加熱、化学、減光、初期質量関数など全てが 場所により変化する。  中間質量星からの総質量放出は 0.35 Mo/yr で、その内炭素星からの寄与は 10 - 50 % である。この値は銀河系のサイズによる。総マスロスは少数の 極端に激しいマスロスを行う星からの寄与が大きい。それらの星の多くは O- リッチである。サンプル中の炭素星の寿命は 2 105 yr である。 M-星も似たような値であろう。これは太陽近傍での炭素星誕生率= 5 10 -13 pc-3yr-1 を意味する。これは 3 - 5 Mo 星が主系列を離れる割合に等しい。それらの星が炭素星の母星であろう。 銀河系全体で炭素星が生まれる割合は 0.14 (R/15kpc)2yr -1 である。現存の mm-波輝線サーベイから得られる炭素星の 赤外二色図は炭素星全体からは偏っている。
( IRAS 2色図から(不思議なことに)隔離シェル炭素星ボックスを赤外炭素星領域として定め、そこにある 星のCO観測(KnappMorris 1985)を使って、炭素星の分布とマスロスを出して、銀河系全体の総数、マス ロス総量、炭素星寿命...と話を広げている。どうも不思議な論文。 吹きすぎ? )

Bedijn (1987)
ミラ型星と OH/IR 星の周りのダストシェル:IRAS と他の赤外観測の解釈
 ダストシェルモデル計算により、ミラ型星、OH/IR 星、非変光 OH/IR 星の IRAS 二色図系列を説明した。フィットの向上のため、(1) ダーティシリケイト モデルの修正、(2)吸収係数の温度依存性、(3)Baud, Habing 1983 の マスロス加速を取り入れた r-3 密度分布、(4)マスロス終焉 期の有限タイムスケールでのマスロス低下を組み込んだ。

abing, van der Veen, Geballe (1987)
非変光 OH/IR 星/ 非常に若い惑星状星雲 ?
 近赤外観測から 「変光」OH/IR 星は赤色巨星に近いが、 「非変光」OH/IR 星は赤色巨星よりは惑星状星雲に近いのでは ないかという予備的な結果を得た。  我々は「変光」OH/IR 星は進化して「非変光」OH/IR 星となると考える。 この転移は非常に短期間で起こる。

Gurtler, Henning 1986
非常に若くて大質量天体の周りのダスト
 BN 天体に代表される非常に若く、大質量の赤外源の周囲のダストの性質を調 べた。10 μm バンドと 3.1 μm 氷バンドの深さに相関がないことが判った。 シリケイトバンドの強さと 8 - 13 μm カラー温度に負の相関がある。BN型 天体のこの関係は、既にミラ型星や OH/IR 星で知られている関係をさらに拡大 する。  BN型天体の輻射輸達モデルを計算して、その性質を調べた。その結果、 非常に若い天体のダストは酸素過多の巨星や超巨星の周辺にあるダストと 異なるという結論に達した。それらは定性的にはそれぞれ、パイロキシンと オリビンに結び付けられる。

Herman, Burger, Penninx (1986)
OH/IR 星の IRAS 観測。光度とマスロス率の決定
 良く調べられている OH/IR 星で、距離が分かっている星の IRAS 観測を示す。 輻射補正を F12/F25 の関数として定め、輻射等級を求めた。電波で周期の助け を借りて、平均光度を決めた。 AGB 上の光度関数を作り、主系列星の分布と 寿命とからの予測と比較した。
しかし、議論が粗い。例えば AGB 等級を 主系列の 2.5 等上と決めてしまうとか。OH26.5+0.6 の位相による吸収深さ変化の 話し、図13は面白い。最後のマスロスの話は議論に値て行けないので中断。  長波長放射からマスロス率、ダストシェルの光学的深さ、ガス/ダスト比を 導いた。

Whitelock (1986)
球状星団低温変光星の周期光度関係と振動モード
 球状星団の赤色及び黄色変光星の周期・光度・カラー関係を調べた。その結果、 高温で、低メタルの星団変光星は基本振動であることが判った。  一方、低温で高メタルの変光星は第倍音振動をしている。それが正しいと仮定して、 基本振動周期と輻射等級を P = 1 - 300 d の間で導いた。

Herman, Habing (1985b)
晩期型星 OH メーザーの変光とシェルサイズ
 OH メーザーの変化=周期と振幅を測るための観測結果を報告する。可視周期 400 日の通常のミラ型変光星は同じ電波周期を示した。しかし、可視非同定の OH/IR 星の大部分は 2000 日を超える  OH/IR 星のかなり 25 % は小振幅か、全く変光を示さない。位相差から OH シェルの大きさが導かれる。それはミラ型星の場合 8 1015 cm, OH/IR 星では 5 1016 cm 程度である。

Herman, Baud, Habing, Winnberg (1985)
OH/IR 星のVLA 観測
 11 OH/IR 星を VLA で観測した。10 星の Vr は大きく、腕の接点付近にある と考えられる。分解できた 6 星は OH シェルの角半径と位相遅れ直径とから幾 何学距離が導き出せる。  これらの幾何学距離と運動学距離を比較して、銀河中心距離 Ro = 9.2± 1.2 kpc が得られた。OH シェルの形はかなり対称的である。完全な球対称からの ずれは 20 % 以下で、シェルの厚みは大きくとも半径の 20 % である。OH 密度は r-2 かもう少し急に落ちる。

Menzies, Whitelock 1985
球状星団ミラの周期光度関係と距離決定への影響
 15 球状星団中の 31 赤色変光星の JHKL 測光を行った。ミラ型星の測光から 絶対輻射等級を導き、さらに Mbol - log P 関係を導いた。  球状星団の周期光度関係は LMC ミラの場合と違っていた。その原因としては、 球状星団および、または、LMC の距離指数に系統誤差が含まれているか、または 球状星団ミラと LMC ミラの間に何か基本的な違いがあるか、のどちらかである。

Wood+2 1985
LMCバーの長周期変光星に見る最近の爆発的星形成
 LMCバーとその北における炭素星とM型星とでは異なる周期光度関係に従う事 が判った。
 短周期( 250日以下)M型星ミラ銀河系の種族 II ミラと類似していて恐 らく非常に古い、多分100億年以上、で比較的低メタルの種族に属するようだ。

Le Bertre, Epchtein, Nguyen-Q-Rieu (1984)
IRAS 1827-145P01: 双極流星雲か?
 IRAS 1827-145P01 =OH 17.7-2.0 の JHKLMN 測光の結果を報告する。 我々の観測と IRAS を合わせた 1 - 100 μm SED は 球対称なダストシェルでは説明が難しい。  この天体の赤外スペクトルは双極流星雲のそれと似る。この類似性と OH 放射 データとから、IRAS 1827-145P01 は OH/IR-双極星雲をエッジオンで見たものと 考える。

Herman, Isaacman, Sargent, Habing (1984)
OH/IR 星の 赤外観測
 λ = 3.8 - 20 μm での 8 バンドでの OH/IR 星測光を報告する。 他の観測結果も足して、これら非常に長周期の変光星光度を決めた。 10,000 Lo を越す星の割合は小さい。多くの OH/IR 星は可視ミラ型星と同じ くらいの光度を有する。  9.7 μm シリケイト帯の深さ、赤外カラー温度、マスロス率は OH メーザー強度の指標となる。いくつかの天体は通常の OH/IR 星と非常に 異なる特徴を持つ。それらは変光せず、近傍にある非常に大きなマスロス率 を持つ星らしい。

Olnon, Baud, Habing, de Jong, Harris, Pottasch (1984)
OH/IR 星の IRAS 観測
 始め、OH メーザーで検出された星 40 個の IRAS 結果を調べた。いくつか の星では地上観測で同定されたものに比べスペクトルが非常に赤い。  2色図上のプロットは古典的ミラ型星から非常に赤い OH/IR 星までの系列を 示している。しかし、最も赤い星はちょっと様子が異なる。それらの脈動は 非常に弱いか、全く脈動しない。それらは AGB の最後まで行き着いたのではないか。

Jones et al (1983)
OH/IR Masers IV. Evolution, Pulsation and Nature of the Sources
1-9Mo星は1stOTからFundamentalに変わり、タイプII OH/IR星になる。

Jones et al (1983)
OH/IR Masers III. The Data Base and Nature of the Sources
OH/IR 星メーザーを収集した。ΔV = 35 km/s を境に 2 グループ、VM 型 と SG 型、に分かれる。

Baud, Habing 1983
OH/IR 星のメーザー強度、マスロス進化と超星風の発生 
(1) OH 表面輝度一定なので、LOH ∝ ROH2 ∝ [(dM/dt)/Ve]2
(2) OH 光度関数 ψ(LOH)∝ LOH-2

から、 LOH = 1/(to-t), dM/dt = 1/(to-t)1/2, Me = Mc,o + Me,o (to-t)1/2

を導く。さらに, Ve-Mms 関係を使い、 その他の Mms に依存するAGB 進化の諸関係を導出する。 気になるのは、L 一定、R 一定でMe がゼロに向かうにつれ平均密度低下 と脈動周期増加。周期光度関係を壊す。

Wood et al (1983)
マゼラン雲の長周期変光星
LMC/SMCのLPVの P-Mbol図でAGBミラ分布の右縁線で1stOTからFund変換が起きる

Jones, Hyland, Caswell, Gatley (1982)
タイプ II OH メーザーの IR 対応天体の探索 II. 統計的解析
 タイプ II OH メーザー感度限界サーベイで発見されたメーザー源の赤外対 応天体を探した。
(候補選択基準が書いていない。 )
赤外源は全体として非常に赤く、多くは K-L > 7 である。 (OH 光度)/輻射光度 の比は K-L に伴って上昇する。 OH ピークの速度差 ΔV は輻射光度と相関する。光度が上がると ΔV も大きくなる。 低 ΔV 天体の光度は < 104 Lo である。  これ等の星は 1 Mo AGB 星が Teff = 2500 K で基本振動しているというモ デルと合う。M 超巨星で典型的な、低 H2O, 高 CO 吸収帯を持つ OH/IR 星は、大きな ΔV と高い L を示し、それらが極端種族 I の M 型超巨星であるという同定と合う。低 ΔV. 低 L 天体は 吸収帯強度がミラ型星の典型値を取る。 驚くべきことに、いくつかの高 ΔV と高い L 星がミラ型星のような 吸収帯強度を示す。これは、以前知られていなかったほど低温で希薄な大気 を持つ M > 5 Mo 星の存在を意味する。

Robertson, Feast (1981)
ミラ型変光星の輻射、赤外、実視絶対等級
 ミラ型星の統計視差と個々のミラ型星の距離を用いて、その輻射、赤外 絶対等級を求めた。得られた輻射等級は最近の評価より平均して 0.5 等 暗かった。脈動定数の問題を論じた。  周期が 150 日より長いミラはおそらく第一倍音で振動している。それより 周期の短いミラは特異で、基本振動かも知れない。個々に距離が決められた ミラの実視絶対等級は Clayton, Feast による統計視差と整合する。

Cohen, Frogel, Persson, Elias (1981)
マゼラン雲と銀河系の炭素星の絶対輻射光度と赤外の性質
 LMC の明るく赤い 89 星と SMC の明るく赤い 21 星を主に、Blanco, McCarthy, Blanco 1980 から選び、JHK測光及び、CO, H2O 狭帯域測光を行っ た。大部分は既知の炭素星である。それらを新しく観測した銀河系炭素星 33 個と比べた。バイアスのないマゼラン雲炭素星の光度分布を Renzini, Voli のヘリウムシェルフラッシュを起こしている最中の二重シェル燃焼星モデル計算 と比べた。観測とモデルは大きく違った。観測された星の大部分はモデル炭素 星の最も暗い星よりさらに暗かった。  さらに、Mi > 3 Mo の高光度の星の数が期待値より少なかった。その説明 として可能な一つは、初期質量関数の勾配が急であるか、無視されてきたマス ロスの効果が大きかったことなどである。それにもかかわらずヘリウムシェル フラッシュが炭素のドレッジアップを引き起こすという仮説は保持される。 LMC の晩期型 M-型巨星のカラーと指数は銀河系に似る。赤外指数は分子バンド 吸収の強度効果として説明された。それはまた、広帯域等級やカラーにも 影響する。 SMC と LMC のサンプル間の小さな差異はメタル量効果と解釈された。

Glass, Lloyd Evans (1981)
LMCミラ型変光星の周期光度関係
 LMCバー 0.3 平方度の写真乾板で見つかった 13 個のミラ型変光星の 赤外測光観測を最低3回行った。その平均 J, H, K 等級に黒体フィットして, 輻射等級を求めた。(m-M)o = 18.69 を使うと、
   Mbol = 0.56 - 2.09 log P(d)
となる。この勾配を Robertson, Feast (1981) の銀河系ミラ型星データのフィットに使って原点を定めると、
   Mbol = 0.76 - 2.09 log P(d)
となる。二つのゼロ点の差は有意でない。

Wood, Zarro (1981)
低質量星のヘリウムシェルフラッシュとミラ型星の周期変化
 M = 0.8, 1.0, 2.0, 3.0 Mo で、Mc = 0.53 - 0.9 Mo の星でのヘリウムシ ェルフラッシュを調べた。特に注意したのはフラッシュ後の光度変動である。 というのは、フラッシュサイクル中の表面光度の極大は AGB 進化の終焉を決 めるのに重要だからである。フラッシュ期の光度ピーク LP と 静謐光度極大 LQ の双方はコア質量に比例して増加する。  LP と LQ は、大気対流層は星の内部深くまでは浸透 しないから、星質量に独立である。LP, LQ, パルス間隔、 フラッシュ期に表面光度が静謐期光度を上回る期間の長さが MC に どう依存するかを調べた。表面光度変化の近似式も与えた。ミラ型星、 R Hya, R Aql, W Dra の周期変化をモデルと比較した。その結果、光度と光度変化率の 関係から光度に制約が与えられた。 こうして求まった、R Hya, R Aql の光度を 脈動モデルから求めた光度と比較した。

Forrest+9 (1978)
OH/IR 26.6+0.6 の 2 - 40 μm 分光測光観測
 航空機と地上からの観測で OH 26.5+0.6 に強い 10 μm 吸収と弱い 18 μm 吸収が示された。フラックスレベル、カラー温度、吸収深さ は 2 年間の観測の間変化した。  天体を晩期型変光星が光学的に厚いダストシェルを放出したモデルが 示唆される。マスロス率は 10-5 Mo/yr 以上に達する。 4 - 7 μm 区間での放射フラックスが高いことは高酸素ダストはこの 波長帯で高いオパシティを持つ証拠である。

Frogel, Persson, Aaronson, Mathews (1978)
複合恒星系の測光研究 I. E-銀河
 E-型銀河と球状星団の赤外積分等級を観測した。 比較用に銀河系巨星の JHK 測光も行った。

Wood,Cahn (1977)
ミラ、マスロス、赤色巨星の運命
Mc-L関係とレイマース星風でLの時間変化、HR図上のAGB位置で R変化、Q を加えて、周期変化を出す。基本振動で大放出、星風でM=Mc になったら上がり、 Mc=1.4で超新星というスキームを提案。主系列星終了率から、ミラ誕生率を求めると、 小周期ミラが観測を1桁上回る。低質量星はミラを経ずPN化なので観測小周期 ミラは少ないことが原因である。星風PNと大放出PNの2種類ある。

Jones,Merrill (1976)
晩期型星周囲のダストシェルのモデル
球対称ダストシェルモデルを、現実的なグレインオパシティを 用いて計算した。結果をグラフで表示した。  シリケイトグレイだけのシェルでは Tdust < 250 K の 光学的深さが十分に大きい時にのみ 10 μm 吸収帯が現れる。 この条件は他の種類の温かいダストが共存する場合には緩和される。  ”ダーティ”で短波長輻射を効果的に吸収するシリケイトが 混在するモデルと”純粋な”シリケイトが他のより吸収的なダスト に混ざっている場合との間にはっきりした区別がある。後者の場合 にはダスト種毎に温度を計算しなければならない。  地球上のシリケイトと比べ、星周ダストは 1 μm ≤ λ ≤ 5 μm で吸収率が高いらしい。

Flower, Hodge 1975
LMC の4つの大きな星団の CMDs
 青い球状星団 NGC 2164, 2156, 2159, 2172 の CMD を得た。Iben の恒星 進化モデルと比較して、よく 合う結果を得た。しかし、巨星枝の上に中間カラーで Mv ∼ -5.7 の 超光度星が存在する。  4つの星団の年齢は 50 Myr に集中した。 Blair et al. 1974 が得た、この 領域の小星団の多くがこの年齢を持つことと合わせ、興味深い結果である。

Hyland 1974a
中分散の2ミクロン帯スペクトル
 2 μm 中分散スペクトルを調べた。12C16O, 13C16O, H2O, CN の振動回転スペクトル、 Bγ の例を示す。CO, H2O のバンド強度、カラー、光度の関 係を G5 より晩期の 100 星の観測から得た。  これ等の関係の解釈と炭素星における CO 強度のカラー依存性のような重要な 問題を議論する。2μm スペクトルを使った赤外源のスペクトル分類の例を 示す。このような観測を銀河中心核に応用する問題を簡単に論じる。

Keenan, Garrison, Deutsch 1974
Me, Se 型ミラのスペクトル型改訂カタログ
 1966年カタログを拡張して 795 ミラ型星を含ませた。多くが極大時付近で観測された。 青領域では CaI λ4226, CrIλ4254, SrII λ4077, FeI λλ4063 - 4071 吸収線、Hδ、Hβ  輝線、 AlO と ZrO の最も強い青バンドの強度を表にした。  二つのカタログデータを用いて極大時の平均スペクトル型を改訂して与えた。 ミラ型星のスペクトル型と周期、 Ca λ4226 強度とスペクトル型の関係をグラフ にして示した。極大時に限らず、様々な位相でのデータが揃っている T Cep について スペクトル型と Ca λ4226 強度の時間変化を変光曲線と共にグラフで示した。

Hyland (1974)
OH/IR および H2O/IR 星の赤外特性
 OH, H2O メーザーを出す M 型超巨星、ミラ型変光星の赤外スペ クトルはそれらの星の大気条件は OH 密度が極大であることを示す。 H2O メーザー星の H2O 1.9 μm 吸収は強い。OH サーベイで発見されたが、対応赤外天体の未同定な星の数は多い。TV撮像 による探査の予備的結果を報告する。  赤外カラー、周期、赤外振幅、OH ピーク間速度差の間に興味深い相関が見 つかった。メーザー放射は赤外放射によるポンピングが原因と考えられる。 ミラ型星における OH, H2O 放射と赤外連続光の関係は、赤外 ポンピング説を支持する。

Feast, Woolley,Yilmaz (1972)
太陽近傍セミレギュラー変光星の運動学
 Kottamia Obs で撮った北天の 67 M-型 SRs と Radcliffe Obs での南天 53 M-型 SRs の視線速度を得た。それに既存データを加えて SRs の運動を調べた。 運動の平均が周期により変化する証拠はなかった。ただし P = 60 - 140 d の 範囲で弱い輝線を示す星は他より速度分散が大きい。ただこれは高速のサンプル を加えるか外すかで結果が変わる。  203 個のデータから得た平均は、
   u = -20±4,   v = -27±4,   w = -12±5
   α = 42±6,   β = 42±6,   γ = 34±9
セミレギュラーは古い円盤種族に属する。セミレギュラーに対して若い天体の 銀河系が外向きに膨張する証拠はない。密度勾配は
∂ log ν = -3.7 ±0.9
∂ log R
であった。Me に対する解析も行った。

Wilson, Barrett (1968)
赤外星からの OH 電波放射の発見
 4 赤外星, NML Cyg, CIT-3, CIT-7, NML Tau から OH ラインが検出された。 赤外星 NML Cygni からの 1612 MHz 放射は今まで検出された中で最強である。 スペクトルラインは特徴的なダブルピークが見られる。  赤外超過を示す他の 16 星、TX Cam, R Mon, T Tau, RY Tau, CIT-1,-2,-4, -6,-8,-14からは OH の検出がされなかった。

Keenan 1966
Me, Se 型ミラのスペクトル型カタログ
カタログは二つの表から成る。第1表は個々の観測から得たスペクトル型 とライン強度を載せた。変光位相と等級は可能な限り載せるようにした。 載せた線強度は5分子のバンドヘッド、二つの原子線、Hδ輝線、光度に敏感 と考えられる3つのライン比の和である。 第2表は個々の星に対する光度極大時の平均スペクトル型を載せた。参考の ため、位置、可視等級の範囲、吸収線の視線速度も載せた。周期スペクトル 型関係をグラフにして示した。

Feast 1966
銀河中心方向 Me 変光星の運動と惑星状星雲との比較
 l = [20, 355], b = [-17, -2] の 51 Me, 2 Se 変光星の視線速度を決めた。 多くは太陽から 5 kpc 以上離れている。 Me, 特に遠方の星は、銀河中心方向 (|l| < 5) で非常に急な速度勾配を示す。同様の現象が惑星状星雲でも見 られ、どちらも l = [5, 0] で内向き軌道が、l = [0, 355] で外向き軌道が 卓越するためと解釈される。  短周期変光星は銀河中心から動径方向の速度散布度 α が、銀河中心 距離のかなりの範囲に亘って一定であることを示す。これは速度楕円体理論と 一致する。惑星状星雲に見られる、α が銀河中心に近づくに連れ増大す る傾向はこれらの天体の年齢が Me 変光星と同様にかなり広い範囲に亘ること を意味する。

Ulrich, Neugebauer, McCammon, Leighton, Hughes, Becklin (1966)
極度に赤い星の更なる観測
 他の研究者の便宜のために、カルテック2ミクロンスカイサーベイ の中から K < 3, I-K &gr; 6 の星を 14 個選んだ。  それらの位置と等級、ファインディングチャートを示す。 No.3.と No.10 はシュミット乾板上に見えなかった。

Smak, Preston 1965
ミラ型変光星の運動
 リック天文台 120 インチクーデ分光器による 270 個のミラ型星の観測から これまで報告のなかった視線速度を初めて与えた。多くは mpg = 10 - 15 mag である。これらの結果を Merrill や Feast の結果に足して、 ミラ型星の運動を論じた。距離は Osvald, Risley の絶対等級を用いて決めた。 減光は指数関数型減光層モデルを使用した。  減光率には 1.5, 2.0, 2.5 p.g.mag/kpc の3種類を試した。オールト定数 A = 15 km/s/kpc が P < 350 d のミラ型星に対して得られた。P > 350 d のミラに対しては、もっと大きい A = 25 km/s/kpc が得られた。銀河 中心の周りの回転速度は銀河面から上がるにつれ低下して行く。この低下は 楕円体仮説に基づいて説明される。それによって Vθ, A, Rmax, Vθ が極大となる銀河中心距離の z-依存表現が 得られた。

Neugebauer, Martz, Leighton 1965
極度に低温の星の観測
 カルテックで進行中の赤外サーベイの予備調査を Aur-Tau 領域で見つけた 350 赤外天体について行った。内 10 個は I-K = 7.5 くらいの飛びぬけて赤 い星であった。  そのカラー温度は 1000 K で非常に低温である。それらの内 Taurusu 領域と Cygnus 領域で見つかった、最も明るい二天体のシュミット乾板上の位置を示す。

Feast 1965
球状星団と一般空間内の長周期変光星
 Stothers 1963 は球状星団中の長周期変光星は一般空間のそれらより 1.5 mag 以上明るいと主張した。そこで、新たなデータを基に再検討した。  ストザーズが用いた球状星団の距離を訂正すると、球状星団のミラ型星 3個の絶対等級は一般空間のミラ型星と観測誤差内で一致した。

Feast 1963
長周期変光星
 表1には主に南天の 114 長周期変光星に対する 281 分光観測からの視線 速度を記す。輝線と吸収線のそれぞれに、波長と速度を示す。異なる輝線間の 速度差を議論し、図1では輝線速度 - 吸収速度の周期との関係を示す。この 関係を用いて、輝線速度しか測れなかった星の吸収速度を決定した。表2には 405 長周期変光星の速度を周期に基づいて9つの集団に分けて示した。
 第6章では S Ind 1953 年サイクルの詳しい解析から極大直後に速度が急速 に変化することを示した。第7、8章では Me 変光星のスペクトル型と光度ク ラスを与えた。光度におおきな広がりが、特に短周期で、あることが示唆され る。平均結果は統計的視差と合う。CrI 4254/FeI 4250 比の異常は以前 47 Tuc で見出された結果と合う。
 353 Me 変光星は周期で 7 集団に分けられ、太陽運動を差し引いた残差速度を 解析した。K項は存在しない。銀河回転方向からのずれもない。第2章と図12 には、Me 変光星がほぼ全ての星種族タイプにまたがっている事が示される。 周期 149 日以下の星の運動の異常はこれらの星が第1倍音で振動していることを 示唆している。振動定数の比 Q0/Q1 = 2.4 は RR Lyr の 値より大きく、大きな Q0 = 0.056 と一致する。 Woolley-Eggen ク ラスのほしとの比較から、長周期の変光星がヒアデス巨星と同じ年齢と質量を持つ ことが示された。  短周期の星は高メタル球状星団の 周期 0.45 日の RR Lyr と 同じ年齢と質量を持つ。Me 変光星の大部分は円盤種族と中間種族 II に属する。
 15章では速度楕円を導いた。表5には様々な定数の平均値を示す。h/k (0.87 ±0.11) は極端種族I天体より大きい。銀河面から離れた所で、密度 勾配 ∂ν/∂R が通常星と異なる証拠はない。しかし、もし変光星 の見かけ分布から見出された高い勾配が確認されたら、それは θ c > 270 km/s という大きな回転速度を意味する。密度勾配は R が大きくなるにつれ緩くなる。h/l (0.77±0.14) は若い星の値より 大きく、Me 変光星が定常状態に近いことを示す。銀河面距離の平均は短周期 で 1500 pc, 長周期で 100 pc である。オールト定数の重み付き平均
   A = 7.8 ±3.4 km/s/kpc
が導かれた。これは極端種族Iに対するものよりずっと小さいが、平均周期 250 日の Me 変光星の速度楕円体からの予想と一致する。 Se 変光星の微分銀河回転からその Mv = -3.4 が導かれた。これは Takayanagi の値と一致する。しかし、最近の統計視差からの値より明るい。

Osvalds, Risley 1961
ミラ型星の空間速度
 ミラ型星の視線速度、周期、見かけ極大等級、極大期スペクトル、固有運動 を集めた。それらの(統計視差から?)周期グループの平均絶対等級を求めた。  絶対等級には、 TiO 吸収帯効果の補正を加えて、周期光度関係を 導いた。 また絶対極大等級から測光視差を決定した。

Wilson, Merrill 1942
長周期変光星の平均絶対等級と空間運動
 スペクトル型 Mw, Se の長周期変光星の視線速度と固有運動を用いて、その 平均絶対等級 ⟨M⟩ を求めた。全体としては ⟨M⟩ = -1 であったが、グループ間の系統変化がある。例えば、速度要素の内の3つ= 特異角速度 ⟨τ⟩ 、特異実速度 θ、実集団運動 Vo、は 周期と共に増加していく。 Me 型星の場合、それはスペクトル型の晩期への移 行を伴う。これらの相関を表す曲線、および第4の速度要素、視差運動、から 絶対等級はスペクトル型と周期とに相関することが判った。Me 星の絶対等級 ⟨M⟩ は、M1e での -2.7 から M8e での +0.3 へとほぼ線形に 変化する。
光度と周期の関係はよりタイトでおそらくはより基本的である。それは、周期 175 日で ⟨τ⟩ = -2.7 から、150 日では -2.2、450 日では +0.6 と落下する。表9には Me 型と Se 型星の周期光度関係が載っている。
 周期光度関係の助けを借りて求めた視差を使い、空間速度を定めた。予想さ れるように、空間速度はスペクトル型および周期と相関する。速度とスペクト ル型との関係はおそらく、良く規定されるスペクトル型と周期、および速度と 周期の間の相関からの付随関係であろう。平均速度は 74 km/s で、巨星とし ては非常に大きい。他の高速度星と同様に、運動向点は太陽運動の反対側の半 球面上に位置するケースが圧倒的である。太陽に相対的なグループ運動の方向 は非変光の K5 - M 型星と同じであり、その速度分散も同程度に大きい。
変光星のグループ運動は銀河系中心方向と直交し、太陽近傍の星が銀河系軌道 に沿って向かっている方向と反対向きである。より高速の星が多く向いている 方向は銀河中心方向と 10° 程度しか離れていない。従って、最大の速度 分散は銀河系動径方向にある。速度楕円体の二つの短軸の方向は決めにくいが、 銀河面と垂直な方向が、面方向より僅かに大きい。速度分散が大きいので、 長周期変光星の銀河回転で説明できる。高速度と周期の相関は恒星進化には 難しい問題を提供する。

Merrill 1941
長周期変光星の視線速度:第2論文
 マウントウィルソンで 206 長周期変光星の 618 スペクトルを撮った。 結果は表1に示した。152/206 星は初観測であった。これまでと合わせ 305 変光星の視線速度全てを表3に載せた。輝線と吸収線との速度差はかなり大 きくなるが、星の運動を調べるには吸収線を使用することを推奨する。 表3の 72 星では吸収線が直接測定された。残りの星は輝線速度に補正を 施して吸収線速度に直した。
 太陽運動の補正後の残差視線速度の平均は 36 km/s であった。この値は 短周期、早期型の星ほど大きい。周期との関係ははっきり見て取れる。 P < 300 の 152 星の内、 16 個は 100 km/s を越え、10 個は 80 - 100 km/s であった。一方、P > 300 の 152 星中 100 km/s を越すものはなく、 僅か2つが 80 - 100 km/s であった。平均速度は周期と共に下がり、P = 150 - 199 d の 27 星で 80 km/s が、P > 399 d の 35 星では 17 km/s となる。
 太陽運動の補正後、 305 星は向点 (α, δ) = (316, 50) で Vo = 31 km/s の集団運動を示す。残差速度の大きさで星を分けた時、25 km/s 以下の グループでは Vo = 4 km/s であるのに、残りのグループの Vo = 60 km/s と なある。同様の結果が星を変光周期で分けた時にも得られる。それに対して、 星を太陽からの距離で分けても Vo は同じくらいであった。集団運動と 散乱速度とのはっきり分かる関係は高速度の非対称性の良い例である。高速度星 の向点は、それらの星が太陽付近の銀河軌道上で天空上のどの方向に向かっている かを表す。この事実は速度非対称性は非常に小さい回転速度の星が示す効果である ことを示す。視線方向成分は例外的に大きい。
 1923 年に長周期変光星 133 個の視線速度を議論してから、多くの観測が現れた。 今や 282 Me + 24 Se = 305 星になったので再解析を行った。



 炭素星 

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著者 内容

Creevey et al. (2023)
GAIA DR3:天体物理パラメターの黄金サンプル  
 Gaia から導かれる天体物理パラメターが如何に高精度であるかを示す。 HR 図の様々な領域から採ったサンプル星の天体物理パラメターを作り出す。 初めに次の三グループ、(1)若い大質量円盤星 O,B,A 型の 3 M 星. (2) FGKM 型の 3M 星. (3) UCDs 20 K 星。  さらに純正炭素星を 15,740 星。太陽類似 5863 星。初の一様な SPSS サンプルを示す。これらの応用の幾つかを示す。

Lebzelter, Nowlavi, Lecoeur-Taibi, Trabucci, Audard, Garcia-Lario, Gavras, Holl, Jevardat de Fombelle, Nienartowicz, Rimoldini, Eyer (2023)
Gaia DR3: LPV 候補星の第2ガイアカタログ
 セカンド Gaia LPVs カタログは G の変光巾が 0.1 mag ( 5 - 95 quantile range) の 1,720,558 LPVs を含む。他種変光星の混入を種々のファイルターで 防いだ。周期と振幅は G-バンド変光曲線へのモデルフィットから決めた。C-星 は RP スペクトルの分子吸収帯から決めた。  392,240 LPVs には周期 P が与えられた。 546,468 星が C-星と分類された。 OGLE と ASAS-SN データとの比較から完全性は 80 % と評価された。リカバリー 率はミラ型で 90 %, SR と Irr で 60 % である。同時に LPVs 数は既知数の何 倍にもなった。特に混んだ領域でそうである。混入率は 2 % 以下である。しっか りした理論的議論に基づく C-星分類は文献にある分光で同定された炭素星と矛盾 しない。しかし、混んだ領域や赤化の強い場合注意が必要である。

Groenewegen (2022)
WISE が見る極端 AGB 星
 WISE から大質量放出率星のサンプルを得ることを目的に、SiC 吸収帯を 持つ炭素星と、周期が 1000 日以上の O-リッチ星 の計 2000 天体を調べた。 WISE W1, W2 変光曲線を "a sinus curve" でフィットした。他の変光サーベ イの結果もダウンロードしてフィットした。特に赤い 316 天体の SED を作り、 可能なら MIR スペクトルも合わせ、輻射モデルでフィットして質量放出率を 求めた。幾つかの赤外データベースとの位置相関を調べた結果、 1/3 は合って いないと分かった。単に WISE フラッグを使っただけでは誤りを防ぐのは難しい。 非常に明るい星のクローンであり、幾つかでは既知の周期と一致する。  最近の論文に刺激を受け、多数の非変光 OH/IR 星が見つかった。振幅に基づ いた選択の結果、約 750 の LPVが見つかり、内 145 は周期が 1000 日を超す。 その多くは新発見である。極めて赤い炭素星 EROs と同じカラーを持つ天体の SEDs をフィットした結果、C-リッチと O-リッチに分かれた。質量放出炭素星の MIR スペクトルをフィットすると、 Av ≥ 2 mag での星間減光が判る。5 kpc 以内の EROs が完全に同定された。そこからのダスト還流総量が決定された。 LMC では新たに 12 の EROs が見つかった。それらは LMC 炭素星数の 0.15 % 二しか過ぎないが、それらからの質量放出は LMC での還流を 8 % 引き上げた。

Abia, de Laverny, Romero-Gomez, Figueras (2022)
ガイア EDR3 による銀河系炭素星と関連天体の特性化
 前回の研究では Gaia DR2 を使い、フラックス限界の炭素星サンプルに対し、 度関数、運動学的特徴、星種族を調べた。今回は EDR3 によりサンプル数を 増やした。N, SC 型星は非常によく似た光度関数を持ち、一方 J 型星の Mbol は平均して 0.5 等暗いことが判った。R-hot 炭素星の光度は RGB 全体におよ び、これは外因性起源を示唆する。その運動特性は厚い円盤種族の物である。  N, SC 型星の運動特性は薄い円盤 種族の物である。内因性のS-型星は第3ドレッジアップより高い光度関数を 持ち、熱パルス AGB 星であることに合致する。いわゆる Gaia-2MASS 図を 用いて、 LAMOST で AGB 星と見做された炭素星の圧倒的多数が R-hot and/or CH−型星であることが判った。2MASS 等級、 Gaia 距離、 Gaia-2MASS 図 上の位置に基づき, 新しい炭素星を 2660 個発見した。

Marini, Dell'Agli, Groenewegen, Garcia-Hernandez, Mattsson, Kamath, Ventura, D'Antona, Tailo (2022)
LMC 炭素星の進化とダスト形成を理解する
 ダスト形成を星風モデルに組み込んで、マスロス進化をモデル化した。 グラファイト/非晶炭素比、 MgS 付着量を調整してIRS/Spitzer SED に フィットした。 その結果、L-τ 面内で LMC 炭素星をプロットし、進化経路と合わせるこ とで、母星質量、AGB 年齢などの情報を得ることが出来た。  大部分のマスロス炭素星は 5000 - 17,000 Lo、τ10 < 3 で炭素星モデルと合う。調べた星の約半数は < 2 Mo 母星由来で 1 Gyr より 古い。残り半数は 1 Gyr より若く、 M > 2 Mo である。  サンプル中に L < 5000 Lo の星がある。それらは TP からの回復途中星 と考える。非常にシェルが厚い炭素星が幾つかある。単独星進化の枠組み内で の説明は困難である。連星系のロシュローブ溢れ出しの可能性がある。  MgS で 20 - 30 μm 放射の説明が可能である。

Marigo et al (2021)
ガイア距離のある散開星団中の AGB 星を新しく見直す
 Gaia DR2 と EDR3 を用い、中間および若年銀河系散開星団中の AGB 星を調 べた。TRGB より明るく、星団メンバーシップが確実な 49 AGB 星が見つかった。 内 19 星は TP-AGB 星でそのスペクトル型は 4 Ms, 3 MS/Ss, 12 Cs である。 観測、進化モデル、星周ダスト層の輻射輸達計算を合わせて、各星の初期質量、 光度、マスロス率、コアマス、周期、脈動モードを決めた。  その結果、第3ドレッジアップ、炭素星の初期質量、星風、初期ー最終質量 関係(IFMR) への制限が与えられ、太陽メタルの TP-AGB 進化に光があてられた。 特に、NGC 7789 の MSB75, NGC2660 中の BM IV90 の二つの炭素星は年齢 1.2 - 1.6 Gyr, Mi = 1.2 - 1.6 Mo で似ているが、異常に大きなコアマス Mc = 0.67 - 0.7 Mo を有する。これは Maarigo et al 2020 が最近発見した IFMR の折れ曲がりを支持する結果である。Mc データの説明には二つのシナ リオ=単独星での星風と連星でのブルーストラグラーを介しての相互作用がある。

Abia, de Laverny, Cristallo, Kordopatis, Straniero 2020
ガイア DR2 による太陽近傍炭素星の性質 
 Gaia DR2 で視差の誤差 20 % 以下の炭素星 210 個を選んだ。 N-型と SC-型星の合成光度関数は Mbol = -5.2 mag をピークとするガウシアン で表現可能である。以前に得られた光度関数と比べると両側のすそ野はより長く尾を引いている。 太陽メタル量の AGB 炭素星は Mbol = -6 mag まで達する可 能性がある。これは以前に銀河系ミラ型炭素星で得られた結果と矛盾する。 J-型星は N-, Sc-型星より 0.5 mag 暗い。R-型高温炭素星は以前の値より 0.5 mag 明るくなった。  N-, SC-, J-型星の空間分布と運動特性は非常によく似ている。一方、 R-型星 の 30 % は銀河面から 500 pc 以上離れている。その速度も LSR から離れてい る。
 N-, SC-星の光度関数は 1.5 - 3 Mo の AGB 光度と合致する。暗い尾の星は 外因性の低質量炭素星からの寄与を必要とする。明るい方の尾は炭素星質量が 5 Mo まで伸びる可能性を示唆する。J-型星は化学組成のみならず、光度関数 も異なり、その起源は不明である。空間分布と運動学は N-, SC-, J-型星は 薄い円盤種族に、 R-型星は厚い円盤種族に属することを示す。

Agundez, Martinez, de Andre, Cernicharo, Martin-Gago (2020)
AGB 星大気内の化学平衡  
 M-, S-, C-AGB 星大気の化学平衡を計算した。一般的に、化学平衡の結果は 星周外層中の組成観測結果をよく説明する。しかし、平衡予測に比べ数桁も多く 観測される分子もある。例えば、M-型星では HCN, CS, NH3, SO2, S-型星で H2O, NH3, C-型星で H2O, NH3, SiH4, PH3 などで ある。
以前の研究と同じく、C-星大気で最初に現れる凝結物質は C, TiC, SiC であり、 O-リッチ流出流中では Al2O3 である。C ダストのガス 前駆分子はアセチレン C2H2 と C 原子、それに/または、 C3 である。  SiC ダストの前駆分子は SiC2, Si2C である。TiC (タイタニウムカーバイド)ダストに関しては、大気内部で最も豊富 な原子 Ti が TiC ダストに対する主要供給源であろう。しかし、化学平衡計算は TiC 凝結が予想される領域では、原子 Ti の代わりに Ti8C12 や Ti13C22 のような タイタニウム・カーボンクラスターが Ti の貯留体となることを予想する。これは 大きな TixCy の集合が TiC ダストの最初の凝結核の 形成と関係することを示唆する。
(隕石で見つかったプレソーラー物質で ある TiC になぜか入れ込んでいる。 天体観測例は?波長は?)
Al2O3 ダストに関し ては、原子 Al と Al-O 結合を含む AlOH, AiO, Al2O が最有望な ガス前駆体である。

Velilla-Prieto, Cernicharo, Agundez, Fonfria, Quintana-Lacaci, Marcelino, Castro-Carrizo (2019)
3 mm 観測による IRC+10216 マスロスの性質 
 ALMA と IRAM 30m による SiO,SiS, CS マップは CS で 20", SiS と SiO で 11" の広がりと、強いシェルを示す。マスロスは数百年スケールで変動している。

Dharmawardena,Kemper,Woulterloot,Scicluna, Marshall, Wallstrom (2019)
IRC+10216 と ο Ceti のサブミリ変光
 SCUBA2/JCMT のポインティング調整の際に取得したIRC+10216 とο Ceti の 450, 850 μm データから7年間の変光曲線取得。IRC+10216 850 μm 変光は 可視変光に対し、540 日の遅れがある。原因は不明。

Dharmawardena+26 (2019)
近傍晩期進化星サーベイI.U Antliae 分離シェルの SCUBA2/JCMT サブミリ検出
 SCUBA2/JCMT 850 μm 撮像で R=40" に放射ピークが見えた。Hershell/PACS の観測と同じ位置である。シェルマスは 2 10-5 Mo で3500 年前。

Bladh (2019)
DARWIN の進化:星風モデルの現在
 AGB 星の低速で濃い風の原因は動的な大気内でのダスト形成と輻射圧との 結合に帰せられる。  DARWIN コードによる計算は、C-リッチ、O-リッチ星の両方で、観測に合う 星風を作ることに成功した。ここに DARWIN モデルの概要を示す。

Lebzelter, Mowlavi, Marigo, Pastorelli, Trabucchi, Wood, Lecoeur-Taibi (2018)
ガイアと 2MASS を用いた AGB 星分類の新手法
 ガイア BP, RP と MASS J, Ks から二つの Wesenheit 関数 WRP, BP-RP, WKs, J-Ks を作り、次に、 (WRP, BP-RP-WKs, J-Ks) - Ks を作った。 この図上では様々な LPVs が異なる位置を占める。  O-リッチ星と C-リッチ星が分離することを示す。また、低質量、中質量、 大質量 O-リッチ赤色巨星、さらに極端 C-リッチ星を同定した。進化モデル を援用して、この図の天体分類力を示す。

Groenewegen, Sloan (2018)
局所群 AGBs, RSGs の光度とマスロス率 
 SMC, LMC, Fornax, Carina, Sculptor dSphs 内の AGBs サンプルからの マスロスを調べた。スピッツアー搭載赤外分光器で測った 225 炭素星と 171 O-リッチ星のスペクトルに可視、赤外測光観測を加え、を輻射輸達モデルで フィットした。そこから光度とマスロス率を出した。現存データの解析から 変光周期を求めた。  VMC の K-等級、IRAC 4.5 μm 多期観測、ALLWISE+NEOWISE から非常に 深い赤外天体の 1000 日を超す周期を決めることができた。サンプル星全ての マスロス率と光度を決めた。文献に載っているマスロス率は今回の値とかなり 異なることがあるが、それは適用する光学定数の違い(場合によっては数倍の差) とモデル化の手法が主な原因である。

Boyer, McQuinn, Groenewegen, Zijlstra, Whitelovk, van Loon, Sonneborg, Sloan, Skillman, Meixner, McDonald, Jones, Javadi, Gehrz, Britavskiy, Bonanos (2017)
スピツアーによる近傍銀河中ダスト星の調査(DUSTiNGS) IV. 高赤方偏移 AGB 星 類似天体の発見
 Spitzer による近傍銀河内の "DUST" 探査は近傍矮小銀河中に幾つかの AGB 星候補を見つけた。そして非常に低メタル (Z=0.008 Zo) の系でもダストが形 成されることを示した。ここでは、 HST WFC3/IR による追加観測の結果を示す。 使用フィルターは C-リッチと O-リッチを区別できるよう F127M, F139M, F153M を用いた。星形成 DUSTiNGS 銀河 NGC 147, IC 10, Peg dIrr, Sextans B, Sextans A, Sgr DIG を観測に加えた。全てマゼラン雲より低メタルで、メタル 量の散らばりは一桁に亘る。
 これ等の銀河で我々は知られていたダスティAGB 星の数を2倍に増やし、そ れらの殆どが C-リッチであることを見つけた。 IC 10 では26個の M-型ダス ティ星を発見した。それらの大きなダスト超過と空間分布が区切られているこ とから、それらは AGB 星質量分布の上部に属する。ホットボトム燃焼期にある のであろう。理論モデルは低メタル M-型星では大量のダスト形成を予測しない。 しかし、最も低メタル、12+log(O/H) = 7.26 - 7.50 の銀河でも M-型星の周りに ダスト超過を見出した。低メタルと高質量(-10 Mo) から、 AGB 星は誕生後 30 Myr という極めて早期にダストを形成可能で、おそらく高赤色変移銀河に見られる ダストの貯蔵源となっていると思われる。

Suh (2017)
  赤外二色図を用いた AGB 星の新カタログ 
 赤外二色図に変光とスペクトル情報を加えて、AGB 星の新しいカタログを作 成した。以前のカタログから分類ミスの天体をいくつか除いた。以前のカタロ グに記載された O-リッチ、C-リッチ星がそれぞれ占める領域を赤外二色図上 に定めた。そのそれぞれの領域内の新しい天体を O-リッチ、C-リッチ星の候 補とした。  このカラー選択法により、新しく 3996 の O-リッチ候補、1487 の炭素星候 補、295 の中間領域星を見出した。470 の O-リッチ星、9 C-リッチ星は変光 しており、スペクトル型も分かっている新しく AGB 星と認定された星である。 新しいカタログには 3828 の O-リッチ AGB 星と 1168 の C-リッチ星が含ま れる。分類ミスの星は除いた。

Ita + 2015
SMC の長周期変光星
 SMC 長周期変光星の可視と近赤外時系列データを解析し、その光度変化を調べた。脈動周期 の間、光度変化は小さいことが判った。カラーに応じた輻射補正の値を求めた。光度変化と 可視および近赤外変光との位相遅れが O-リッチミラに検出された。しかし、炭素星ミラと SRs には系統的な位相遅れは検出されなかった。
 明るいミラ型星にカラー位相の逆転が見出された。それらは長周期で、振幅が大きく、 O-リッチである。その原因は J バンドにおける TiO and/or VO 吸収帯が原因と思われる。 周期・光度関係と周期・カラー関係を導き、示す。

Eriksson, Nowotny, Hofner, Aringer, Wachter (2014)
炭素星のモデル測光 IV. 動的大気と星風の大規模モデルグリッド  
 540 例の太陽メタル量炭素星の色々な振幅の脈動大気モデルを提供する。 モデルを観測と比較した結果、マスロス率対(J-K), K 等級対(J-K) の 関係に良い一致を得た。  不一致なサンプルの原因として、炭素超過が大きい、ダストオパシティに 小粒子極限を採用など、モデル仮定などが考えられる。将来微調整はある だろうが、マスロス率などの大きな変更はないだろう。

Nowotny, Aringer, Hofner, Eriksson (2013)
炭素リッチ巨星のモデル等級 II. 銀河系マスロス炭素星の系列を追う
炭素星の動的大気とダスト形成による星風駆動のモデル計算から、 様々なマスロス率を持つ銀河系ミラ型炭素星の観測を再現し て Whitelock06 の観測データと比べた。 炭素リッチミラ型星の動力学大気モデルは外側の構造が静止大気と大きく 異なる。得られた大気構造に熱化学平衡と LTE 近似を仮定して、モデルスペク トルと等級を計算した。  モデル計算から、星周ダストが SED に与える影響と、光度曲線とバンドの 関係を調べた。モデル系列と観測も対照して調べた。LMC 炭素星との同異も 研究した。今回のモデルは様々なマスロス率の炭素星を再現することに成功した。

Javadi, van Loon, Khosroshahi, Mirtorabi (2013)
 UKIRT M33 モニタリングプロジェクト III. 中心 1 kpc 平方の星風フィードバック
 この第3論文では、脈動 AGBs によるマスロス率を測る。その為、UKIRT NIR 観測に,Spitzer MIR 観測を組み合わせる。低質量星はその初期質量の 大部分を星風により失う。しかし、スーパー AGBs や RSGs でさえも質量の 40 % を星風によって失う。  ダスト還流の 3/4 以上は酸素系である。マス還流率の 2 D マップを作った。 それは動径に沿った低下を示すが、大質量星の集団があるところでは局所的 盛り上がりを示す。マスロス率は, 中心キロパーセク領域で 0.006 Mo yr-1 kpc-2 である。ここには、爆発的、例えば超新星、 のような現象も考慮した。これを現在の星形成率 0.03 Mo yr-1 kpc-2 と比べると、現在の星形成を維持するには、外側円盤からの ガス流入か、銀河間ガスの降着が必要である。

Boyer et al 2013
M 31 内側円盤での炭素星の欠乏
 WFC3/HST 中帯域近赤外測光を AGB 星近赤外モデルスペクトルと組み合わせ、 AGB 星を M-型と C-型に効率よく分けた。この方法を M 31 内側円盤でテストし、 M 31 他領域での観測に反して驚くほどに C-星が欠乏していることを見出した。 我々はそこにただ一個の炭素星とやや不確かな6個の候補星しか見出さなかった。
 C-型星と M-型星の比、 C/M = (3.3+20-0.1) × 10-4 は M 31 の他領域での値に比べ、一桁から二桁小さい。この 小ささは内側円盤のメタル量が大きいために C/M > 1 になることが妨げられ るからであろう。
 この観測は高メタル AGB 星の進化モデルに強い制限をつけ、あるメタル量以上では 炭素星への変換が起きないことを示唆する。これは AGB 星の質量放出に劇的な変化を もたらし、ダスト形成に影響し、最終的には高メタル銀河の全体的な性質に 影響するだろう。

Nowotny, Aringer, Hofner, Lederer 2011
炭素リッチ巨星のモデル測光 II. 脈動と星周ダストの効果
 動力学的大気モデルを計算して、脈動で強化されたダスト駆動星風を再現し、 スペクトルに与える効果を調べた。脈動が大振幅の変光を引き起こす一方、星風 に含まれる非晶炭素ダストは強い赤化に導く。モデルスペクトルから測光等級 を計算し、観測と比べた。  星周ダストによる赤化はダストを持たない静止大気と較べ非常に赤いカラーを もたらす。炭素ミラの例として RU Vir を取り上げモデルと比較した結果、 BVRIJHKL 光度曲線の振る舞いに良い一致を得た。

石原, 金田、尾中、板、松浦、松永 2011
AKARI MIR 全天探査による C-, O-リッチ AGB 星の銀河系内分布
 あかりの IRC 全天サーベイデータを用いて AGB 星を分類した。二色図上で 既知天体の占拠する領域を定めた。次に、マスロスー光度関係を用いて、C-リッチ 星と O-リッチ星の空間配置を定めた。O-リッチ星は銀河中心に集中していることが 分かった。一方、C-リッチ星は太陽から 8 kpc 以内では一様な分布を示した。

Suh, Kwon (2011)
  AKARI, MSX, IRAS, NIR データを用いた赤外二色図 
 Suh, Kwon (2009a) の AGB 星カタログを改訂した。新しいカタログでは各星に対し、AKARI, MSX, 2MASS の対応番号を付けた。  2色図上で C-リッチか O-リッチかで二色図上で占める位置が異なることを 見出した。シェルモデルによりその違いを説明した。

Ita et al 2010
あかりが見た近傍星種族
 あかりの 9, 18 μm 全天サーベイ天体から (L-L18W) - (S9W-L18W) 二色図上で炭素星と OH/IR 星は独自の系列を形成した。

Kerschbaum, Lebzelter, Mekul (2010)
近赤外測光に基づく低温巨星の輻射補正
 低温の巨星に対する輻射補正式をNIR カラーの関数として求めた。恒星の 区分にJHK のみでは不十分で L' が不可欠であることが分かった。 K-L' で3つに分けた O-リッチ星と C-星の4つのグループに輻射補正式 を与えた。そしてそれらを以前に得られた式と比べた。

Glass, Schultheis, Blommaert, Sahai, Stute, Uttenthaler (2009)
AGB 星の中間赤外周期等級関係
 AGB 変光星が 24 μm という中間赤外でも近赤外と同様の周期光度関係に 従うことが判った。そこではダストからの星周放射が支配的である。 LMC と HBC 6522 とは年齢もメタル量も異なるが、 M - log P 関係は同じらしい。  その傾きには波長による系統的な傾向はない。見かけ等級対 log P 関係の 差は 3.8 で、これは距離指数の差に等しい。変光星のカラーは log P > 1.85 が検出可能な質量放出の条件であることを示す。最長波長 24 μm では 多くのセミレギュラー変光星がミラと同じくらいの明るさのダストシェルを有す。 24 μ を含む LMC CMD には明白な分岐が見える。

Lebzelter, Lederer, Cristallo, Straniero, Hinkle (2009)
 LMC 星団 の AGB 星 の研究
 LMC 星団は 1.5 - 2 Mo 星の最終進化段階の研究に最適である。ここでは AGB に沿ったドレッジアップの結果を報告する。  星団 AGB 星の表面組成を高分散近赤外スペクトルから求めた。 AGB に沿って C/O と 12C/13C が進化する様子を初めて確認した。

Lebzelter, Lederer, Cristallo, Hinkle, Straniero, Aringer (2008)
 中間年齢星団 NGC 1846 の AGB 星 II. AGB に沿ったドレッジアップ
 第3ドレッジアップのモデルに制約を加えることを目的として、 AGB に沿っ た進化の間の 12CO 表面組成を調べた。LMC 星団 NGC 1846 の AGB 星サンプルに対し、高分散近赤外分光観測を行った。 C/O 比と12C /13C 比を測定し、進化モデルと比較した。
 星団 AGB に沿った C/O 比と12C/13C 比の進化が初 めて示された。これにより進化モデルの信頼度を調べることが可能となり、特に 第3ドレッジアップの効率を決められる。酸素過多星での C/O 比と12C/13C 比の増加はモデルでよく再現可能で ある。しかし、ふたつの炭素星での低い12C/13C 比は ある程度の追加混合が遅く起きることを示唆する。追加混合は非常に明るい AGB 星に影響し、13C を増加させる一方で、C/O 比を一定に保つ。 C/O はそれまでの混合の累積で決まっているからである。AGB に沿って F 組成が 増加する徴候も発見した。

Chen, Yang, Zhang (2007)

J-タイプ炭素星の IRAS, 2MASS, ISO データに基づく赤外特性
 文献から 113 J-型星データを集めた。 2MASS, IRAS, ISO 観測から、シリケ ート炭素星を除くと、他の J-型星の赤外の性質は他の炭素星と極めて良く似て いることが判った。  この結果は J-型星の 13過多という化学的異常性は赤外領域には 反映されていないことを意味する。更に、J-型星の進化シナリオと連星との関連性 も論ずる。

Jackson, Skillman, Gherz, Polomski, Woodward (2007)
局所群矮小銀河内 AGB 星の スピッツアー IRAC センサスI: WLM
 LGGS = Local Group Galaxy Surbey の Spitzer 3.6, 4.5 μm と可視観測 データから WLM の分を示す。観測は AGB 星の全てをカバーしている。 可視の限界等級は TRGB より 3 等低いにも拘わ らず、赤外で検出された AGB 星の 39 % は可視で検出されなかった。さらに、 赤外検出天体の 4 % が 可視で誤同定された。
 我々の結果を可視狭帯炭素星サーベイの結果と比べた。それらは全 AGB 星の 18 % しか検出していないことが判った。 AGB 星マスロスは総計で (0.7 - 2.4) 10-3 Mo/yr となった。AGBs と RSGs のマスロス率と Mbol の分布は LMC, SMC とよく似ている。
(マスロスは Groenewegen05 使用だが、 詳しく書いていない.赤外 AGB 星の大部分は C/M 分類がハッキリしないままである。 そのため結論はあいまいで物足りない。)


Suh (2007)
AGB 星の IR 二色図
 MSX, 2MASS, IRAS から O-リッチ、C-リッチ星のデータを集め、二色図を 作った。ダストシェルの光学的厚みが増す系列をこれらの二色図と比較 した。

Blum + 沢山 2006
LMC のスピツアーサーベイ(SAGE) II
進化した星と赤外 CMD
SAGE IRAC, MIPS に 2MASS を組み合わせ、CMD 分析を行った。TRGB の上に約 3万星を検出した。内訳は、O-リッチ AGBs = 17,500、C-リッチ AGBs = 7000、 晩期型超巨星(または明るい O-リッチ星)= 1200、極端 AGB 星 = 1200 である。 これらの 10 % にダストシェルがついている。 MIPS により IRAC では赤外超過が検出されてこなかった、比較的暗い O-リッチ AGB 星に赤外超過が検出された。

Feast, Whitelock,Menzies 2006
炭素リッチミラ型星:運動学と光度
 銀河系炭素星ミラの絶対輻射等級と視線速度を使ってその運動学を調べる。 銀河系微分回転から周期-輻射等級関係を導き、それが LMC からの P-L 関係と 合うことを確認した。銀河系ミラに対しては
  Mbol = -2.54 log P + 2.06(±0.24)
を得た。ただし勾配は LMC 値を使用した。  速度散布度に Nordstrom et al の観測データとパドヴァモデルを合わせて 解析した結果、炭素星ミラの平均年齢 1.8±0.4 Gyr, 平均初期質量 1.8±0.2 Mo を得た。速度散布度の周期による変化が見出された。 周期が初期質量と年齢に依存することを示唆する。O-リッチと C-リッチミラ の関係を論じ、両者の比と様々な星系種族との関係を考察する。

Menzies, Feast, Whitelock 2006
炭素リッチミラ型星:速度と距離
 38炭素ミラの可視視線速度を測った。文献値と合わせて、可視光と電波 (CO)の視線速度の差を調べた。可視視線速度に対する補正項を導いた。 差が特に大きかったのは Hα 線の 30 km/s である。  推定距離と視線速度が知られている 177 炭素星のカタログを示す。 距離は輻射等級から導いた。

Whitelock, Feast, Marang, Groenewegen 2006
炭素星の近赤外測光
 銀河系 239 炭素星の JHKL 測光を行った。それらをミラ型星と非ミラ型星に 分け、変光の振幅、周期(ミラ型では 222 - 849 d) を求めた。カラー・周期 関係は LMC とほとんど変わらない。平均 JHKL 等級+IRAS+MSX から見かけ 輻射等級を決めた。周期光度関係から決めた光度と合わせて距離を決めた。  BCK を求め、他のカラーからの BC を定める処方を導いた。 マスロス率を求め、文献値と比較した。炭素星ミラの 1/3 と比率不明の 非ミラ炭素星に R CrB 星に似た不定期な減光事象が発生する。原因は不明。

Kerschbaum, Groenewegen 2006
銀河系炭素星サンプルの NIR 変光
 IRAS カタログの赤外炭素星およびCO膨張速度大の既知炭素星から 47 星を 選び、JHKL' 多数回測光観測を行った。その結果 31 星の周期を決定した。 これまでの炭素星周期最長記録 783 日を少し上回る 840, 870 日周期の星 が含まれる。 これは OH/IR 星に比べると大分短い。  モデル計算から、炭素星周期が 900 日を超える確率が 1 % 以下なのは 2.6 - 3.1 日である。これは HBB から予想される 4 Mo 限界とも合う。

Cioni, Habing (2005)
NGC 6822 の NIR 観測: AGB 星、距離、メタル量
 NGC 6822 の 20'x20"' をWHT で I, J, Ks 撮像した。NIR により銀河全体 に渡り特徴を調べた。C/M 比からメタル量の銀河内変化を導いた。  それは 1.56 dex に達する。この値はマゼラン雲で得られた値の倍である。 測光結果は DENIS (I) と 2MASS (J, Ks) で較正した。その結果、距離指標 (m-M)o = 23.34±0.12 を TRGB から得た。

Gautschy-Loidl, Hofner, Jorgensen, Hron (2004)
AGB 星の動力学モデル IV. 炭素星合成スペクトルと観測の比較
 論文シリーズIIIで紹介した動流体力学と周波数依存輻射方程式を結合した 動的大気モデルに基づいて、 C-AGB モデルスペクトルを計算した。分子 CO, CH, CN, C2, CS, HCN, C2H2, C3 を大気構造と合成スペクトルの計算に含めた。  0.5 - 25 μm における合成スペクトルと観測スペクトル、カラーとの比 較を、TX Psc, WZ Cas, V460 Cyg, T Lyr, S Cep について行った。 変光の様々な位相で集められた観測結果と、単位相でのモデルスペクトルとの 一致は 0.5 - 5 μm では良い。より長波長では我々のマスロスモデルは 初めて、これまでの疑問=なぜ全ての静水大気モデルとマスロス無しの流体 動力学モデルが予想していた 14 μm 付近の強い吸収帯が観測では存在し ないか、の説明に成功した。
("molsphere に反対" )

Schultheis, Glass, Cioni (2004)

NGC 6522, LMC, SMC 領域での晩期型変光星
 2MASS から NGC 6522, LMC, SMC 3領域の完全サンプルを抽出し、MACHO, ISO データと同定した。各 MK ヒストグラム上で、TRGB の上で数が減る。 TRGB 光度はメタル量と共に増大する。また、与えられた MK に対す る (J-K)o もメタル量と共に大きくなる。これらのデータを Ferraro et al 2000 の銀河系球状星団と比較した。(J-H, H-K) 二色図上、低メタル星ほど多くの星が H-K 大になる傾向が著しい。これは、炭素星の割合が増加することによる。 全ての領域で主な変光星は、周期数十日の短周期変光星、長周期大振幅のミラ的 変光星、二重周期星であった。  低メタルになると、変光星の割合が小さくなり、与えられた振幅に対する最短 周期は長くなる。各領域で、 K - log P 図上の様々な傾向が見られた。LMC では 各領域間は類似しているがバルジ領域は異なる。バルジ領域では、K - log P 図 の "A" 系列は MK,0Tip をほとんど越えない。他のグル ープも LMC の対応系列と較べ途中で止まっている。マゼラン雲では 200 - 300 日周期の星が多数あり、 "C" 系列に従う。  ISOCAM で検出された MIR サンプルは MK < -7 星に対しては 完全である。様々な TCD, CMD には低メタルになると炭素星が増加する効果が 反映されている。ミラ型星の 等級・周期関係は少なくとも 7 μm までは 存在する。長周期変光星と二重周期 SRV からの質量放出はメタル量の差に 拘わらず、領域間で類似している。

Marigo, Girardi, Chiosi 2003
LMC 炭素星の赤い尾
 炭素星は M-型星に較べ系統的に赤いことが知られている。2MASS, DENIS の 色等級図で LMC 炭素星は印象的な赤い尾を引いている。これまでこの特徴は モデル等時線にはなかった。  その再現を目指し、TP-AGB 段階の進化を取り入れた等時線から種族合成を 2MASS j-(J-Ks) 図で試みた。シミュレーションは、2MASS データに現れる 銀河系前景と LMC O-何本かの垂直指を上手く再現した。
 その代り、炭素星の赤い尾の再現は出来なかった。通常採用される、太陽組成 相対比のまま Z を変えてオパシティを計算する方法で TP-AGB モデルを作って も炭素星の赤い尾は作れない。この失敗は炭素星の Teff - (J-K) 関係には 押し付けられない。そうではなく第3ドレッジアップで炭素が増加するに連れ 新しいオパシティを計算する必要がある。この方法で赤い尾を再現することに 成功した。

Matsuura, Zijlstra, van Loon, Yamamura, Markwick, Woods, Waters 2002
LMC 炭素星の VLT スペクトルとそのメタル依存性
 LMC 炭素星 6 個の L-バンドスペクトルを示す。3.1 μm に HCN, C2 H2, 3.8 μm C2H2 の吸収帯がある。それらの 等値巾は系統的に太陽近傍の炭素星より大きい。二つの炭素星には 3.5 μm に HCN 吸収帯があった。EW(3.8 μm)/EW(3.1 μm) は LMC では太陽近傍星より 大きい。これは n(C2H2)/n(HCN) が高いことを示唆する。
 LMC 炭素星の吸収強度が強いことは、炭素星に関してもスケール太陽近傍炭素星が 成立して、分子組成も低いという仮定とは矛盾する。銀河系炭素星では n(C)/n(O) = 1.05 - 1.1 であるが、我々の化学モデルによれば n(C)/n(O) > 1.2 である。高い C/O 比は n(C2H2)/n(HCN) が高いこと も説明する。

Olivier, Whitelock, Marang (2001)
ダストに埋もれた太陽近傍 AGB 星
 ダストに埋もれた 58 個の AGB 星、内二つは post-AGBs の可能性がある、 を調べた。27 個は C-リッチ、21 個は O-リッチである。これらは、 Jura, Kleinmann (1989) の太陽近傍高マスロス AGB 星(dM/dt > 10-6Mo/yr)に載って いる星である。NIR 地上測光、IRAS、視線速度と流出速度データを合わせてこ れらの星の性質を解析した。NIR 変光振幅は周期と相関し、波長と共に減少す る。P < 1000 日での統計テストからは C-リッチと O-リッチで周期分布に 差があると考える根拠はない。  周期 1000 日を越える炭素星はない。PLR を用いて光度と距離を決めた。 F60 から決めたマスロス率は赤外カラーと周期に相関する。 相関が強いのはマスロス率と k-[12] カラーの関係である。サンプルの運動と スケール高は周期 1000 日以下の星は低主系列質量星であることが判る。 O-リッチで周期が 1000 日を超す3つの星は中間質量星かも知れない。他の 星の平均質量は 1.3 Mo で白色矮星質量は 0.6 Moであろう。高マスロス率期 間は 4 104 年と見積もられ、これらの星が AGB を離れる前に TP を経験するとしても精々1回である。

Winters, Le Bertre, Jeong, Helling, Sedlmayr (2000)
ダスト形成 LPVs におけるマスロス機構の体系的研究
 主に炭素星に関して、  ダスト形成を含めた時間依存流体方程式を解き、マスロスを調べた。モデル グリッドは二つの領域に分かれた。(A) 領域は、5 km/s を超す星風領域である。 星風はダストに働く輻射圧で駆動される。  (B)領域では、星風速度は小さく、 マスロス率は 3 10-7 Mo/yr を越えない。輻射圧の役割は副次的で ある。(A) から(B) への転換は急である。O-リッチ星の超低マスロスモデル はバルジで見つかった天体の説明になる可能性がある。

Bergeat, Knapik, Rutily 1998
銀河系内炭素星長周期変光星の周期光度関係
 ヒッパルコス観測のある炭素過多長周期変光星 115 個の (MK, log P) 関係を示す。これを大マゼラン雲の炭素星と較べた所、両者は非常に にており、3本の線が分離した。サンプル1= Feast et al. (1989) の関係に近い長周期変光星の系列。サンプル2=短周期で光度超過の変光星。 サンプル3=幾つかの光度不足の変光星。用いたデータは Knapik et al 1997 による Lutz-Kelker 効果フリーな期待値を用いた。  絶対等級の非ガウシアン分布に起因する残りのバイアスは avoid された: 72 個のサンプル1に非パラメトリック法を用いて PL 関係を調べ た結果は
  MK = -3.99 log P + 2.07
勾配は Reid et al 1995 の値と一致する。この式から得た LMC 距離指数は &mu: = 18.50 ±0.17 である。サンプル1には等級の上限が 存在する。それは銀河系で -4.85, LMC で -4.72 である。メタル量効果の 補正は加えていない。

Dyck, van Belle, Benson 1996
炭素星の視直径と有効温度
 15炭素星の干渉計による角直径の観測を報告する。以前の観測と合わせ、 22炭素星の有効温度を求めた。内16は山下のスペクトル分類があるので スペクトル型と有効温度との関係が調べられた。3つの例外があるが、 C5 - C9 の範囲で有効温度の散布度は小さく、3000±200 K であった。  辻の解釈と一致して、有効温度がスペクトル型と共に上昇する傾向が見ら れた。星周シェルの温度決定への影響も調べたが、 S Aur と CIT 13 だけ がダストシェルの影響があるらしかった。炭素星の半径は平均 400 Ro 程度 である。これは炭素星の有効温度と半径が晩期 M-型星よりもミラ型星に 近いことを示す。

Barnbaum, Stone, Keenan 1996
炭素星の中分解能スペクトルアトラス
 Keenan 1993 が提唱した炭素星の改訂 KM 分類に基づく中分解能スペクトル アトラスを示す。このアトラスの目的は太陽近傍炭素星の性質をバルジ、LMC, その他の近傍銀河中の炭素星と素早く比較できるようにすることである。  分類基準は星の進化ステージに関しては全く仮定を設けず、純粋に観測データ のみによる。39 星のスペクトルを詳細に示す。さらに炭素星の改訂 KM 分類に 基づく、119 炭素星の結果を示す。

Barnbaum 1994
炭素星の高分解能スペクトルアトラス
 明るい6つの炭素星 U Hya, TX Psc, RZ Peg, V Oph, Y CVn, UV Cam のスペクトルアトラスを示す。観測はリック天文台 3 m 望遠鏡に ハミルトンエシェル分光器を付けて行った。分解能は 6100 A で 0.13 A で、5080 - 7850 A に渡っている。我々は 1988 - 1991 にかけて 67 炭素星の観測を行った。それらは ADS を通じて入手可能である。
 この論文では ADS データのテンプレートとするために、6個の 炭素星のスペクトルを示す。pdfのままなので注意。

Keenan 1993
赤い炭素星の改訂 MK 分類
 赤い炭素星のスペクトル分類を改訂 MK システムに取り込んだ。それには山下 による旧式の R, N, C 分類の改訂版の特徴を加え、組成指数を加えた。  新しいシステムは、(1)星の属する種族を定義し、(2)個々星の詳細な大気解析 の中間を素早く内挿でき、(3)銀河系の様々な個所での炭素星の違いを示すことを 目的とした。スペクトル型の指定子を柔軟にして新しい基準も取り込めるようにした。

Crabtree, Rogers (1993)
可視ハローとして観測される星周外層
 深く隠された赤色巨星の星周層からの可視散乱光を検出した。 炭素星 CRL 3116 の 表面輝度プロファイルを非等方散乱も考慮した輻射輸達モデルと比べた。 星周層内のダスト分布を、光学的深さ、ダストサイズを決めた。  これらの結果は赤外放射スペクトルと整合する。また、 CRL 2688 も扱う。 これには同心状のシェルが付いている。これらのシェルは AGB 期の星周層の 残骸である。

Olofsson, Carlstrom, Eriksson, Gustafsson, Willson 1990
分離星周シェルを持つ炭素星 - ヘリウムシェルの自然な帰結?
 明るい炭素星 R Scl, U Ant, S Sct, TT Cyg の CO 電波マップを示す。 各星は大きな星周外層を持つ事が分かった。。  少なくとも最後の3星では星周シェルが星から離れており、マスロスが 挿話的であることを示唆する。それがヘリウムシェルフラッシュで引き起こ された可能性を論じる。

Aaronson, Blanco, Cook, Olzewski, Schechter 1990
北銀河系の炭素星:位置、JHK測光と視線速度
 北銀河系低銀緯の炭素星データを提示する。特に透明な 9 領域を選び、 そこの炭素星の位置、同定を調べた。その内 142 個は新発見であった。480 星に対し、 538 JHK 測光を示す。  620 視線速度観測を 424 星に行った。既知炭素星の多くに改善された位置 を与えた。平均 JHK 測光と速度を 400 星に対して与えた。

Jura, Kleinmann (1989)
太陽近傍のダストまみれ AGB 星
 赤外カタログを使い、太陽から 1 kpc 以内にあり、マスロス大 > 2 10-6 Mo/yr の星のリストを作った。それらの銀河円盤表面密度は 25 kpc-2 である。O-リッチと C-リッチ星は半々である。  総マスロス量は 3 - 6 10-4 Mo kpc-2 yr-1 である。主系列質量 1 - 5 Mo の星が白色矮星に進化する際に失う質量 8 10-4 Mo kpc-2 yr-1 とほぼ合う。 太陽近傍では 1.2 Mo 付近の星の半数は > 3 104 年を炭素星と して過ごし、1 - 2 10-5 Mo/yr のマスロスを行い 0.7 Mo WD となる。

Gehrz (1989)
銀河系内恒星ダストの発生源
 銀河系星種族の分布とそれらに観測されたマスロス率を用いて、星間物質内に 放出される固体ダストの量を推定した。M-型星と LROH/IR 星はシリケイト ダストの大部分を生み出している。炭素と炭化ケイ素ダストの大部分は炭素星 から生じている。WR-星、新星、超新星は特異な組成のダストを放出する。  炭化水素グレイン の放出源に関しては観測的証拠が殆どない。恒星からのダストの注入と星形成 と超新星による消滅を比較して、銀河系ダストの生態学を研究すると、ダスト グレインは分子雲中での降着により恒星からの放出に比べ 1 - 5 倍の割合で 形成されていることが示唆される。
(何だ?暗黒雲に降参? )

Jura, Joyce, Kleinmann (1989)
銀河系反中心方向の明るい炭素星
 銀河系反中心方向の 211 炭素星の K 等級を測った。炭素星の MK = -8.1, (I-K)o = 2.8 という仮定を用いて、 (1) 反中心方向では K バンド星間減光は 0.15 - 0.3 mag/kpc, (2) 高光度炭素 星の密度は反中心方向 3 kpc でも、太陽近傍とあまり変わらない。  通常の円盤星は太陽円を超すと急速に密度が低下するので、炭素星の密度変化は 異常である。その説明としては、(1) 反中心方向でメタル量が低下し、(2) 太陽近 傍での炭素星寿命 105 年より長い 2-3 105 年となるの ではないか?反中心方向炭素星の平均マスロス率 1.2 10-7 Mo/yr は 太陽近傍の 1/1.7 で低い。
(何だ?暗黒雲に降参? )

Pottasch, Bignell, Olling, Zijlstra (1988)
銀河系中心方向の惑星状星雲
 PNe を探す方法= IRAS カラー+電波連続波 を述べる。この方法を |l| < 15 領域に適用した。新発見 36 PNe を含む結果の第一報告=天体の特性である。  新発見 PNe は一般的には既知星雲と同じであるが、発見方法により若い天体 にバイアスが掛かっている。新天体のかなりが OH/IRs と PNe の中間段階に ある。

van der Veen, Habing (1988)
恒星晩期進化を研究する道具としての IRAS 二色図
 IRAS 二色図 を用いて DGE-star = ダストガスエンベロープ星を調べた。 O-リッチ星は二色図上で系列を成し、それは AGB 頂点においてマスロス 率を増加させながら進化する経路を示すと解釈される。ただ、DGE 星全体は ミラ型星、OH/IR 星サンプルより広い範囲に散らばる。OH/IR 星の最後には 変光が小さく、[25-60] が大きい星が存在する。それらは PNe 前駆天体だ ろう。
 熱パルスがマスロスを一時的に抑制し、二色図上経路に弧状の遠足が重なる と考えると、縦の広がりが説明できる。つまり、マスロスに不連続性が存在 することが示された。炭素星系列が高いのは 40 -80 μm 放射率の差が原因 である。

Willems (1988)
炭素星の IRAS LRS IV. 炭素星進化のシナリオ
 3700 個の光学的に同定された炭素星中、明るくて LRS に載った 304 個を 調べてきた。 Willems, de Jong 1986, Willems 1987a, b. 9/304 (グループ I) はシリケイトシェルを持ち、 Willems, de Jong 1986 で扱った。 295/304 個 は SiC 帯を持つ純正炭素星である。90/295 は近赤外測光データがあり、二つの グループに分かれる。グループ II = NIRの Tcolor > 2000 K で不規則変光星. グループ III Tcolor < 1800 K で規則変光星. 各グループの IRAS 二色図上の 位置は別々。
 この結果を解釈するために、ここでは炭素星進化の新しいシナリオを提出する。 我々は、M-型星から炭素星に変換後しばらくの間通常の脈動は停止し、不規則 変光星になると考える。酸素リッチシェルはその間膨張し、薄まって行く。 その結果、星は IRAS 二色図上で大きな弧を描く。不規則変光炭素星による 新しいシェルは最初は低密度である。  その後、炭素星の脈動がミラ型に復帰す ると、再びマスロス率も回復する。モデル計算から、O-リッチミラから、 C- リッチミラに戻るまでの時間は 104 年程度、高マスロスが開始 されてから、可視で炭素星を隠すシェルが形成されるまでの時間は数 10 3 年かかる。従って、炭素星の寿命は数 104 年 で、その半分くらいの期間可視でも良く見えるだろう。
 炭素星になったばかり、グループ I と若いグループ II の炭素星は 13C が豊富な J-タイプであり、古いグループ II と グループ III の炭素星は s-元素が多い。

LeBertre 1988

炭素星ミラ R Fornacis の可視・赤外観測:位相によるダストシェル変化
 1982 - 1987 年の間に取得した炭素星ミラ R For の可視・赤外測光データを 示す。異なる変光位相での SED を輻射モデルを用いて解釈した。極小付近に おいて、中心星が隠される現象は星周シェル内側部でのダスト凝結で説明され る。この凝結は単に光度低下に伴う温度降下の帰結であろう。  極大と極小間で総光度は 2.3 倍変化する。1 μm 光学的深さは極小期に 1.0 極大期に 0.7 である。赤外カラーの変化は質量流出が一様と云う仮定と 合う。 Feast et al 1984 が報告した 1983 年極小の異常な暗さが再確認 された。これは提出したモデル内で説明可能であり、余分の独立シェル放出 や、ダスト雲による食を考えなくてよい。 ( 光度低下の実証がポイントになる? )

Willems (1988)
炭素星の IRAS LRS II. 光学的に薄いダストシェル炭素星
 Tcolor(NIR) > 2000 K + LRS の 72 炭素星の SED を調べた。7 星は LRS にバンドが見えない。 4 星は R-タイプで RGB 星であろう。残り 3 星は AGB で 長期マスロスがあった痕跡がある。星の大部分は 11.5 μm SiC と 8.6 μm 不明の放射帯を示す。近赤外では 3 μm に強い吸収帯を持つ。多くの星では C2H2 の吸収を 7.5, 14 μm に、さらに HCN の吸収 も見られる。3 星では LRS SED に寄与する非晶質炭素の放射が観測された。 F60 の超過の度合いは星毎に異なる。スペクトル型としては C4, C5, C6 が多く、 変光タイプは Lb と SRb が主である。  J-タイプ炭素星は全て不規則変光星で、少量の炭素系ダストに囲まれている。 高温の J-型星はスペクトルが S-型星と似る。残り 9 個の J-型星中 3 星は R-型である。炭素リッチ大気で最初に凝結するのは SiC である。今回のデータ では 8.6 μm バンド物質と多原子炭素系分子の HCN や C2H2 からのダスト形成への寄与を分解できなかった。N-型星は s-元素に富んでいる。 一方 J-型星からは s-元素が検出されない。これらから、 J-型星が "若い" 炭素星であるか、s-元素を作らない別種の炭素星であるかのどちらかであろう。 二つのシリケート炭素星が J-型星であり、また J-型星の幾つかが少量のダスト から成るシェルに囲まれていることから、おそらく J-型星は炭素星進化の初期で その後 "正常な" s-元素に富んだ炭素星に進化するのであろう。

Thronson, Latter, Black, Bally 1987
マスロス星の性質と星間ダスト構成の変化
 IRAS PSC からフラックスリミッテッドサンプルを調べた。IR 炭素星は 5.2 kpc-2、炭素星全体では 38 kpc-2となった。炭素星の 総数は 28,000(R/15kpc)2, R=銀河円盤半径 である。炭素星の数は 銀河中心距離に依存しない。一方 赤外 M-星は 47 kpc-2 である。 マスロス O-リッチ星は銀河系全体で 48,000 個である。進化した O-リッチ星 の数密度はスケール長 4 kpc の指数関数型の変化を示す。C-星と M-星の密度 分布のこの差は銀河面上での [C]/[O] 比の勾配が原因である。マスロス星の 種族構成が銀河中心距離により変化するため、星間空間に注入されるダストの 性質が変わり、その結果分子雲の加熱、化学、減光、初期質量関数など全てが 場所により変化する。  中間質量星からの総質量放出は 0.35 Mo/yr で、その内炭素星からの寄与は 10 - 50 % である。この値は銀河系のサイズによる。総マスロスは少数の 極端に激しいマスロスを行う星からの寄与が大きい。それらの星の多くは O- リッチである。サンプル中の炭素星の寿命は 2 105 yr である。 M-星も似たような値であろう。これは太陽近傍での炭素星誕生率= 5 10 -13 pc-3yr-1 を意味する。これは 3 - 5 Mo 星が主系列を離れる割合に等しい。それらの星が炭素星の母星であろう。 銀河系全体で炭素星が生まれる割合は 0.14 (R/15kpc)2yr -1 である。現存の mm-波輝線サーベイから得られる炭素星の 赤外二色図は炭素星全体からは偏っている。
( IRAS 2色図から(不思議なことに)隔離シェル炭素星ボックスを赤外炭素星領域として定め、そこにある 星のCO観測(KnappMorris 1985)を使って、炭素星の分布とマスロスを出して、銀河系全体の総数、マス ロス総量、炭素星寿命...と話を広げている。どうも不思議な論文。 吹きすぎ? )

Claussen, Kleinman, Joyce, Jura
銀河系炭素星のフラックス限界サンプル
 2ミクロンサーベイ(TMSS)から銀河系炭素星のフラックス限界サンプルを作り、 その赤外データをまとめて、空間分布と質量放出率分布を調べた。サンプルの 88 % は 可視変光星だったが、 2.2 μm 振幅が 0.5 等を越す星は数個であった。この等級 安定性と、銀河系炭素星もマゼラン雲炭素星の狭い 2.2 μm 等級幅に収まるという仮定 の二つから、TMSS 炭素星が半径 1.5 kpc 内に分布することを導いた。赤外カラーを用い て、以前用いられた多波長でも絶対等級が一定と言う仮定を調べた。炭素星の局所密度は log ρ(kpc-3) = 2.0 ±0.4 である。スケール高は log z(pc) = 2.3±0.1である。従って表面密度は log N(kpc-2) = 1.6±0.2 である。
 IRAS F60 を用いて決めた質量放出率は 2.7 10-7 Mo yr-1 に ピークを持つ。銀河全体では 0.013 Mo yr-1 となる。その大部分は 非常に赤いダストの厚い星から来ている。もしもっと赤い星が存在するなら、 それらの星からの寄与はここで調べたサンプルを上回るだろう。ここで調べた スケール高と平均マスロス率から炭素星の寿命は 105 - 106 yr である。主系列母星質量は 1.2 - 1.6 Mo で F-型星である。主系列 F型星の 少なくとも 10 % が炭素星を経る。

Cook, Aaronson, Norris (1986)
近傍銀河中の 炭素星と M-型星
 CN, TiO 吸収バンドに合わせた中間帯域フィルターを用い、炭素星と M 型星を 区別する方法を開発した。銀河系炭素星でこの技法を試した後、近傍銀河 M31, M33, NGC6822, IC1613, WLM を観測した。得られた C/M 比は銀河の絶対等級と良い相関 がある。これは絶対等級とメタル量の間に存在する関係を反映していると考えられる。

Stryker, Da Costa, Mould (1985)
SMC の古い球状星団 NGC 121 の主系列ターンオフ
 主系列等時線フィットから、SMC 球状星団 NGC 121 の年齢を 12±2 Gyr とした。これには, フィールド RR Lyr の Mv = +0.6 mag とした [(m-M)o=18.85] ことが効いている。そうでなく (m-M)o = 19.3 とすると、 年齢は 9±2 Gyr となる。星団は RR Lyr を含むが青色水平枝は持たない。 この星団はまた炭素星ギリギリの星を含む。このようにこの星団は色々な 進化ステージの星の境界にあるので、年令決定は非常に興味深い。  星団近傍も暗い主系列ターンオフを示し、以前のマゼラン雲フィールド研究 と異なり、中間年齢星が多いという証拠がない。SMC の化学進化を見直すと、 銀河系では初期以降はほぼ一定のメタル量増加が続いてきたのと異なり、SMC のメタル量は長期にわたり低レベルにあり、ここ 1 - 2 Gyr に急増している。
(この頃銀河系球状星団の年齢 14 - 16 Gyr )

Aaronson, Mould (1985)
マゼラン雲中間年齢星団の伸長したAGB.IV.
 この論文で、Mv < -7, B-V > 0.3 のマゼラン雲星団に含まれる AGB 星の同定と測光が完成した。それらを解析して、
(1)AGB 上端光度は Mbol = -4 から -6 に亘る。
(2)レイマーズマスロスで大体説明可能。
(3)Mi > 1,5 Mo ではより強くする必要がある。
(4)Mi < 2 Mo では炭素星ができる。
(5)Mi > 3 Mo では M-型星で終わる。
(6)Mi-Mf 関係は Weidemann とずれる。

Feast, Whitelock, Catchpole, Roberts, Overbeek (1984)

炭素星 R For の変化する星周遮蔽
 1983 年に炭素星 R For は可視、赤外で異常に暗くなった。  これは星周遮光の変化と解釈される。グラファイト粒子による吸光 には粒子半径 0.15 μm が必要である。

Baud, Habing 1983
OH/IR 星のメーザー強度、マスロス進化と超星風の発生 
(1) OH 表面輝度一定なので、LOH ∝ ROH2 ∝ [(dM/dt)/Ve]2
(2) OH 光度関数 ψ(LOH)∝ LOH-2

から、 LOH = 1/(to-t), dM/dt = 1/(to-t)1/2, Me = Mc,o + Me,o (to-t)1/2

を導く。さらに, Ve-Mms 関係を使い、 その他の Mms に依存するAGB 進化の諸関係を導出する。 気になるのは、L 一定、R 一定でMe がゼロに向かうにつれ平均密度低下 と脈動周期増加。周期光度関係を壊す。

Frogel, Cohen 1982
マゼラン雲星団内の晩期型星種族
 NGC 419, 1651, 1652, 1783, 1841, 1844, 1846, 1978, 2173, 2193, 2209, 2257 の晩期型 48 星の JHK 測光を行った。その結果をマゼラン雲フィールド、 銀河系の炭素星、M-型星の観測結果と比べた。星団炭素星はフィールド炭素星 と似るが、同じ (J-K)o に対する Ko の散布度は星団の方がフィールドの 1/2 - 1/3 と小さい。二色図上でマゼラン雲炭素星は銀河系炭素星と少しずれる。 LMC フィールドには、LMC 星団では見つかっていないほどに、赤くて明るい M-型巨星が存在する。そのような M-星を含む星団は見つかっていない。 一つの星団内では例外が一つあるが、炭素星は M-星より明るい。その境界 光度は SWB クラス=年齢と相関する。NGC 1841 は M3 と似た球状星団と考 えられていたが、TAGB を超える AGB 星を含む点が謎である。

Iben (1982)
低質量 AGB 星の進化 I.
 以前の計算結果= 0.6 Mo より低質量ではドレッジアップが起きない、と 組み合わせてマゼラン雲組成の 0.6, 0.7 Mo AGB 星進化計算を先まで行った。 しかし、13C(α,n)16O 中性子源が小質量コアの 全てで、水素がヘリウム燃焼殻まで入り込まなくても、弱く働く。そして、 22Ne(α,n)25Mg 中性子源は 0.6 Mo 星でも働く。 どちらの中性子源の強度も CNO 組成に比例する。さらに、以前の結果と同じく、 熱パルス後の光度低下の深さと期間は、良く知られているコアマス-光度関係 が AGB 星のコアマスを推定するには不十分であるほどに影響する。  0.6 Mo 進化を白色矮星で最後の熱パルスが起きるまで追い、0.7 Mo 進化は Mc = 0.61 Mo になるところで止めた。それは、無視していた炭素再結合と 化学的拡散が、ミクシングと元素合成反応に無視できない効果を持つからである。 ヘリウム燃焼による高光度の結果生まれたシェル対流が消滅した後、外層対 流が内側に侵入して来る前に、最初のシェル対流から取り残された高炭素領域 の縁に新しい対流シェルが発生する。この新しい対流シェルは炭素が完全には 電離しない温度領域における高炭素物質の高いオパシティの結果生まれた。 それが高炭素物質を高水素層の中に押し込み、ついには外層対流で表面まで 汲み上げられるのである。この新しい対流のもう一つ新しい点は、高炭素だが 水素を含む領域で水素が点火すると、低炭素領域でより大量の 13C や 14N が作られることである。次の熱パルス時に この 13C と 14N 領域がヘリウム燃焼対流に浸食され ると、より大量の中性子が供給される。

Fuenmayor 1981
銀河系中心、反中心方向での炭素星の深い対物プリズム探査
 銀河系中心方向と反中心方向での対物プリズムを使った炭素星探査観測を行 った。各領域は 322 平方度で、北半球と南半球にある二つのシュミット望遠鏡 が用いられた。限界等級は I = 11 mag である。 その結果 283 炭素星が検出された。 123/283 は新発見である。表面及び空 間分布の統計解析が行われた。  (1) 反中心方向の炭素星は中心方向に比べ3倍 である。(2) この非対称性はリアルで距離 8 kpc にまで及ぶ。(3) 銀河中心方向 の炭素星は太陽から 5.5 kpc 付近に集中し、反中心方向では 0.5 と 5 kpc に 集中する。その密度は各箇所で 15, 20, 50 stars/kpc3 である。 過去の研究でも炭素星が銀河中心距離 2 kpc から増加し始める証拠がある。 炭素星の集中と腕の位置とには相関がある。

Cohen, Frogel, Persson, Elias (1981)
マゼラン雲と銀河系の炭素星の絶対輻射光度と赤外の性質
 LMC の明るく赤い 89 星と SMC の明るく赤い 21 星を主に、Blanco, McCarthy, Blanco 1980 から選び、JHK測光及び、CO, H2O 狭帯域測光を行っ た。大部分は既知の炭素星である。それらを新しく観測した銀河系炭素星 33 個と比べた。バイアスのないマゼラン雲炭素星の光度分布を Renzini, Voli のヘリウムシェルフラッシュを起こしている最中の二重シェル燃焼星モデル計算 と比べた。観測とモデルは大きく違った。観測された星の大部分はモデル炭素 星の最も暗い星よりさらに暗かった。  さらに、Mi > 3 Mo の高光度の星の数が期待値より少なかった。その説明 として可能な一つは、初期質量関数の勾配が急であるか、無視されてきたマス ロスの効果が大きかったことなどである。それにもかかわらずヘリウムシェル フラッシュが炭素のドレッジアップを引き起こすという仮説は保持される。 LMC の晩期型 M-型巨星のカラーと指数は銀河系に似る。赤外指数は分子バンド 吸収の強度効果として説明された。それはまた、広帯域等級やカラーにも 影響する。 SMC と LMC のサンプル間の小さな差異はメタル量効果と解釈された。

Blanco,McCarthy, Blanco 1980
マゼラン雲の炭素星と M-型星
 マゼラン雲 5 領域、各 0.12 deg2、での 320 炭素星と 107 M5+ 星 のチャート、座標、R, I 等級表を示す。 M 型巨星に比べての炭素星の数は SMC の方が LMC よりはるかに多い。 炭素星の光度分布は単ピーク型で、⟨I⟩ = -4.6 である。 ピークの差は距離指標の差にして 0.51±-.03 である。

Mould, Aaronson 1980
マゼラン雲中間年齢球状星団の伸長した巨星枝
 マゼラン雲の赤い球状星団の巨星枝先端近くの星にビジコンスペクトル観測と JHK 測光を行った。サンプルは Mould, Aaronson 1979 の分光サーベイを大きく 拡張した。多くの炭素星といくつかの M-型星が見出された。赤外測光によると、 炭素星の平均輻射等級は LMC で -5.02±0.10 mag, SMC で -4.69± 0.10 mag である。これらの値は、 Mould, Aaronson 1979 の値よりずっと暗い。 Mould, Aaronson 1979 が使用した可視輻射補正は不正確であった。 平均して、LMC星団炭素星はSMC星団炭素星より明るく赤い。個々星に J-K から 決めた有効温度を与えた。Vバンドはブランケッティング効果が大きいため、 V-K から決めた有効温度は信頼できない。非炭素星は掩蔽観測から得た視直径 を用いた有効温度で較正したが、炭素星は Mendoza,Johnson 1965 の Teff-(J-K) 関係を使用している。AGB進化の簡単なモデルから AGB 上端光度を用いて星団 年齢を決めた。この年齢順列は SWB 分類と合う。また、年齢・メタル量相間の ヒントらしきものが得られた。

Frogel, Persson, Cohen 1980
LMC 三つの球状星団内の非常に赤い星
 LMC 星団 NGC 1783, 1846, 1978 中の最も赤い星 12 個に対し、 JHK測光観測を行った。 7/12 は炭素星で、LMC フィールド炭素星 と測光上区別できない。銀河系星の赤外データから輻射等級と温度 を導いた。炭素星の平均輻射等級は -4.9 であった。これは Mould, Aaronson 1979 の炭素星光度より 2 等暗い。 M-型星赤巨星枝は青くて先端光度は銀河系球状星団と同じくらいである。 47 Tuc と同じメタル量として、星団間の ΔlogTe = 0.06 を出す にはMto = 2 Mo まで上げる必要があり、その場合巨星枝が観測される 光度に達しないという矛盾が生じる。星団年齢とメタル量の調整および モデルの修正が必要でないか。

Mould, Aaronson 1979
マゼラン雲球状星団中の炭素星
 マゼラン雲球状星団の中には、巨星枝先端の B-V が非常に赤いものがある。 それらの星団の巨星枝先端星の分光サーベイを行った。多数の炭素星が発見さ れた。その光度はそれらが上部 AGB 星であることを示す。そのような星ができ るのは、星団が銀河系球状星団よりずっと若い場合にのみ可能である。  星団年齢をファクター2の精度で 30 億年とした。マゼラン雲星団はその カラーにより2種類に分かれるが、赤グループに多数の中間年齢星団が存在 することはマゼラン雲において星団形成が連続的に進行してきたという描像 に合う。最近マゼラン雲のフィールドで多数の炭素星が発見されたことの 帰結も議論する。

Scalo, Miller (1979)
特異赤色巨星の進化に対する拘束II.:質量と空間密度
 様々な進化段階にある赤色巨星の理論的空間密度と初期質量分布を特異赤色 巨星 Ba, R, S, N(P giants) のに関する観測データと比較した。理論モデルは 半観測的な IMF と文献にある主系列星寿命、半観測的なマスロス率を合わせて 得た。星質量の観測データは変光タイプ、空間密度、運動学、連星、星団から 得た。Ba 星の空間密度はダブルシェルモデルで説明するには多すぎ、ヘリウム シェルフラッシュと何の関係もないことを示す。より冷たい P 型巨星の空間 密度は良く分からないが、ダブルシェル期の星の予期数は超えないだろう。 連星系と星団のP巨星データは 1 - 10 Mo と大きな広がりを示す。運動学から P 型巨星の平均質量は 1 - 1.5 Mo 辺りである。
 光度、空間密度、質量からの拘束を合わせると、(1) R-星の性質はヘリウム コアフラッシュ期のミクシングと合う、(2)Ba 星の大部分はヘリウムコア フラッシュと考えられる。ただ、ξ Cap, HD 65662 のような星は別のメカニズム が必要である。(3)ヘリウムコアフラッシュだけでは N, S 星のミクシングは 説明できない。(4)ヘリウムシェルフラッシュはぎりぎり低温 P 巨星の観測 制約をクリアする。(5)もし、ヘリウムシェルフラッシュが低温P巨星の 原因であるなら、観測される平均質量はコアマスが ≤ 0.7 Mo と小さい時に 起こるという制約を課すが、これは恒星進化計算では実現されない。

Alksnis, Alksne 1975
散開星団中の低温炭素星
 炭素星リストと散開星団リスト(Alter et al. 1970) を比較して、星団メン バーらしい炭素変光星を選び出した。星の数が少ないので統計的にメンバーシ ップを決めることができない。  視線速度データは殆ど得られていない。また測光データも不足している。 Baumert(1974) により λ = 1.04 μm での絶対等級が求められた。 (なぜ変光星か? )

Fay, Warren, Johnson, Honeycutt 1974a
炭素星の 5000 - 7000 A スキャナー観測
 26 N-型、11 R-型星の 5000 - 7000 A, 分解能 20 A 光電スペクトル観測を 行った。カラー指数 [0.57]-[0.68] を定義し、(V-R)カラーと [3.5-11/0] 指数 との相関を調べた。新しい測光指数を CN, C2 バンド強度を測る ために改訂した。  我々の CN 指数は 12C/13C 比の推定に用いられる。 我々の 0.56 μm C2 指数は 1 μm CN 指数と正の相関を示し、 また 2.3 μm CO 指数と逆相関を持つ。モデル大気計算と比べると、 これらの関係は C/O の変化に起因すると解釈できる。

Hyland 1974a
中分散の2ミクロン帯スペクトル
 2 μm 中分散スペクトルを調べた。12C16O, 13C16O, H2O, CN の振動回転スペクトル、 Bγ の例を示す。CO, H2O のバンド強度、カラー、光度の関 係を G5 より晩期の 100 星の観測から得た。  これ等の関係の解釈と炭素星における CO 強度のカラー依存性のような重要な 問題を議論する。2μm スペクトルを使った赤外源のスペクトル分類の例を 示す。このような観測を銀河中心核に応用する問題を簡単に論じる。

Hartwick, Hesser 1973
NGC 2660 とその近傍炭素星
 散開星団 NGC 2660 の写真 B, V 測光観測を行い、以下の結果を得た。
(1)星団の赤化は EB-V = 0.38±0.05 
(2)(m-M)o = 12.3±0.3, D = 2.9 kpc 
(3)進化した主系列上 V = 15.9 mag にギャップがある。
(4)t = 1.2 Gyr, [Fe/H]≤[Fe/H]Hyades 
(5)星団中心から 1' 以内に Mv=-2.0, Mms=1.8 Mo の N-型星が存在。

Gaustad, Conti 1971
NGC 7789 内の炭素星
NGC 7789 (l, b)= (116, -5), D = 1.9 kpc 近くの炭素星 MSB 75 の吸収 線視線速度 -46 km/s は星団視線速度 -45 km/s と近い。固有運動はまだ得ら れていないが、メンバーシップは確実であろう。  炭素星距離が星団距離と同じなら、 Mv = -2.1 である。Burbidge, Sandage (1958) の星団 CMD と考え合わせると、炭素星は M-型星のさらに進んだ進化段階に あるのでないか。



メーザー

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著者 内容

Andriantsaralaza, Ramstedt, Vlemmings, De Beck 2022
ガイア DR3 からの AGB 星距離の決定  
 Gaia DR3 視差をO-リッチの 33 AGB 星 VLBI メーザー視差と比べ、DR3 視 差に対する統計的補正ファクターを得た。次に、補正された Gaia 視差と 以前に得られた AGB 星の銀河分布からの事前確率 (prior) に対してベイズ法 を適用して、DEATHSTAR 計画からの 200 AGB 星距離を計算した。VLBI 星の SED を DUSTY モデルでフィットして、星の光度を求めた。  G < 8 mag の最も明るい星では、Gaia DR3 視差はファクター 5.44 低く 見積もられている事が判った。それより暗い 8 ≤ G < 12 ではファクター 2.74 である。Gaia DR3 視差ゼロ点オフセットは、明るい AGB 星で -0.077 mag である。より暗い AGB 星ではこのオフセット値はよりマイナス方向に振れる。 DR3 視差を補正すると、得られた距離は、我々のサンプルで、40 % 以上もの 非対称なエラーを伴うことが判った。銀河系 O-リッチミラ 型変光星の新しい周期光度関係は、
   Mbol = (-3.31±0.24)[logP-2.5] + (-4.317±0.060)
DEATHSTAR 星の新しい距離カタログを与えた。 DR3 視差の誤差が 20 % 以上の場合 AGB 事前確率に基づいて距離を求める際に は、距離がモデルに依存し、天体によりオフセットが変わるので、注意が必要 である。RUWE(re-normalised unit weight error) が 1.4 以下の場合、信頼で きる距離の保証はない。個々の AGB 星に対しては、距離の精度に RUWE のみを 使うことには問題がある。

Groenewegen (2022)
WISE が見る極端 AGB 星
 WISE から大質量放出率星のサンプルを得ることを目的に、SiC 吸収帯を 持つ炭素星と、周期が 1000 日以上の O-リッチ星 の計 2000 天体を調べた。 WISE W1, W2 変光曲線を "a sinus curve" でフィットした。他の変光サーベ イの結果もダウンロードしてフィットした。特に赤い 316 天体の SED を作り、 可能なら MIR スペクトルも合わせ、輻射モデルでフィットして質量放出率を 求めた。幾つかの赤外データベースとの位置相関を調べた結果、 1/3 は合って いないと分かった。単に WISE フラッグを使っただけでは誤りを防ぐのは難しい。 非常に明るい星のクローンであり、幾つかでは既知の周期と一致する。  最近の論文に刺激を受け、多数の非変光 OH/IR 星が見つかった。振幅に基づ いた選択の結果、約 750 の LPVが見つかり、内 145 は周期が 1000 日を超す。 その多くは新発見である。極めて赤い炭素星 EROs と同じカラーを持つ天体の SEDs をフィットした結果、C-リッチと O-リッチに分かれた。質量放出炭素星の MIR スペクトルをフィットすると、 Av ≥ 2 mag での星間減光が判る。5 kpc 以内の EROs が完全に同定された。そこからのダスト還流総量が決定された。 LMC では新たに 12 の EROs が見つかった。それらは LMC 炭素星数の 0.15 % 二しか過ぎないが、それらからの質量放出は LMC での還流を 8 % 引き上げた。

Gorski, Barmby (2020)
進化星大気と天の川渦状腕の相関
 HOPS 水メーザーサーベイとGaia DR2 をクロスマッチさせて、水メーザー 源の位置分布を調べた。同時にカラーから C, M 分類も行った。C-リッチが 半数以上という変な結果だが、特にコメントはない。Gaia データの非対称 距離確率分布に対し、モンテカルロ法で実現距離(と位置)の分布を実験し、 Valee08腕モデルにより決めた腕領域か腕間領域かを判定した結果、水メー ザーの配置は腕間領域に多いという結果を得た。

Beuther + 15 (2019)
THOR : 北銀河系 OH サーベイ
 VLA による l[14, 67]の OH1612, 1665, 1667, 1720 MHz 同時観測。ATCA による南銀河系サーベイと合わせ、内側銀河の完全無バイアスサーベイ。 特に結果はないが、今後の糧?

Engels, Etoka, Gerald (2018b)
AGB 進化終末期における大振幅変光の終焉
 我々は 2013 年からナンシー電波天文台を用いて 100 個以上の銀河円盤 OH/IR 星のメーザーモニターを行っている。メーザー強度の変化を用いて中心星の変化を 調べた。  我々は AGB - post-AGB 遷移の際に大振幅変光がどのように失われるかを理解 したいと考えている。振幅がゆっくりと縮小していき脈動が消えていく過程がありそう な仮定と、我々は予想している。

Engels, Etoka, West,Gerald (2018a)
プローブとしての OH メーザー: AGB - post-AGB 遷移
 ナンシー電波望遠鏡 (Nancay Radio Telescope = NRT) を用いて、 1612 MHz で数十個の OH/IR 星をモニターしている。データとしては Hartebeesthoek 電波望遠鏡(SA) における銀河中心 OH/IR 天体のモニターを加えた。メーザー 変光を中心星の変光を示すと考える。初期の成果から、既に示したように、幾 つかの星は 7 年にまで達する周期での変光を示す。他の星は小さな振幅の変光、 または無変光であった。  変光におけるこの二分は AGB 期と post-AGB 期の境界を定めるものと考え られている。現在の観測プログラムで、このような遷移天体を発見し、その変光 特性を調べたい。我々は脈動の低下消失がその表れと考える。その有力候補は 銀河円盤中の小振幅変光星 OH 138.0+7.2, OH 51.8-0.2 である。銀河中心付近 における「非変光」OH/IR 星の出現頻度は円盤と同じくらいである。

Liu, Jiang (2017)
進化した星におけるシリケイトと SiO メーザーの関係  
 SiO 分子は星周エンベロープ中でのシリケイトダストの種候補の一つである。 しかしこの考えには疑問が持たれている。ここでは SiO メーザー強度とシリケ イト放射強度の関係を調べる。PMO/Delingha 13.7 m 望遠鏡での観測と文献 データから、 SiO v = 1, J = 2 - 1 の 21 天体と SiO v = 1, J = 1 - 0 28 天体のサンプルを集めた。  それらの天体は ISO/SWS の SiO 放射も示している。SiO メーザーとシリケ イト放射の間には明白な相関があった。これは SiO 分子がシリケイトダストの 種であるという仮説に反しない。一方、 SiO メーザーとシリケイト結晶性の 間には相関がみられない。これは結晶性が質量放出率と関係ないことを 意味するのかも知れない。

中川、倉山、松井、面高、本間、柴田、佐藤、寺家 (2016)
VERA によるミラ型星 R UMa の視差決定
 ミラ型星 R UMa の年周視差を VELA で測定した。2年間の観測から LSR 視線速度 37 - 42 km/s にH2O メーザーを検出した。年周視差 1.97 ±0.05 mas = 508±13 pc であった。VLBI マップには総計 72 個の光点が 110 au 領域に散らばっている様子が観察された。メーザー点の運動から、ヒッパル コス固有運動を引いてそれらの星周運動を求めた。  K バンドモニタリングを行い、平均等級 ⟨mK⟩ = 1.19± 0.02 mag を得た。先に求めた距離から絶対等級 MK = -7.34±0.06 を得る。これは以前 R UMa に対して得られていた値より遥かに高精度である。銀河系 ミラ型星の MK - log P 関係のゼロ点を求め、
   MK = -3.52 log P +(1.09±0.14)
を得た。赤色超巨星を含む他の長周期変光星データも集め、MK - log P 関係 の別の系列を研究した。

Kim, Cho, Kim 2014
進化した星の SiO, H2O 同時観測に基づく統計解析
 進化した星 401 個の SiO と H2O メーザー同時観測に基づいた 統計解析を行った。アンテナ温度強度の T(H2O)/T(SiO) は OH/IR 星の方がミラ型星より大きい。この比は可視変光位相 0 - 0.4 で 大きいことが判った。H2O フォトン光度は SiO メーザーに較べると 位相依存度が大きい。これらから推測すると、H2O メーザーは 星周層の膨張運動と脈動で生じる衝撃波に SiO より鋭敏らしい。この結果は また両者の発生距離の違いにも関係する。  FWZP = ゼロパワーでの全巾は SiO メーザーではほぼ一定値であるが、 H2O メーザーでは OH/IR 星の方がミラ型星より大きい。 この違いはマスロス率の違いと、メーザー発生箇所の違いに起因する。 星本体視線速度に対する SiO と H2O メーザー速度の平均を 位相に分けて調べた。H2O メーザー速度は位相 0.3 - 0.6 で は赤方遷移しているが、位相 0.6 で青色遷移のピークが現れてきて、 赤と共存する。これは CO Δv = 3 視線速度曲線と似ている。 SiO v = 2 メーザーは H2O メーザーと少し似た振る舞いを 示すが、 SiO v = 1 メーザーは似ていない。最後に IRAS 二色図上の 位置から進化との関係を調べた。

Wolak, Szymczak, Bartkiewicz, Gerald (2014)
前駆惑星状星雲 IRAS 18276-1431 = OH 17.7-2.0 の激しいメーザーバースト
 前駆惑星状星雲 IRAS18276-1431 (OH17.702.0) のOH メーザーモニター観測 から、単調な減衰に加えて数回のフレアが観測された。  フレアの放射は強く偏光しており、外層の切り離された稠密な領域から出て いた。双極流により外層に掘りぬかれた双極ローブの軸に沿って 磁場が揃っているらしい。

Sato, Wu, Immer, Zhang, Sanna, Reid, Dame, Brunthaler Mnten (2014)
スキュータム腕内大質量星形成領域の三角視差 
 スキュータム腕内の HMSFRs 6個の三角視差を測った。その結果 l = [5, 32] の視差付き HMSFRs の総数は 16 になった。全て BeSSel サーベイの結果である。 対数螺旋を仮定したピッチ角=19.8°±3.1° である。  このピッチ角は他の腕より大きい。これはバーの力学効果のためかも知れない。 平均特異速度は銀河回転より 4 km/s 遅く、銀河中心方向に 8 km/s 向かっている。 この日線形運動の方向は他種天体で得られたものと同じであるが、GC 向きの速度 が大きい。

Wu, Sato, Reid, Moscadelli, Zhang, Xu, Brunthaler, Mentel, Dame, Zheng (2014)
サジタリウス腕内大質量星形成領域の三角視差 
 VLBA による BeSSeL サーベイの一環としてサジタリウス腕の 10 大質量星 形成域の三角視差と固有運動を測った。これらのデータを文献から採った他の 8天体データと合わせて、銀河中心経度 β = [-2, 65] 区間での腕の構造 と運動を調べた。  腕のピッチ角= 7.3° ±1.5°, フィットした腕からのズレの rms 偏差として決めた腕の半巾=0.2 kpc, サジタリウス腕の太陽からの最短距離 = 1.4±0.2 kpc である。隣あう腕と異なり、サジタリウス腕の天体には 銀河回転に対し反対向きの大きな特異運動はなく、逆に銀河回転より 10 km/s 速い。

Kim, Cho, Kim 2013
既知 H2O メーザーの SiO, H2O 同時観測
 水メーザー検出 152 天体で、 SiO v = 1, 2 J = 1-0, 29SiO v = 9 J = 1-0, H2O 616-523 の4本のメーザーライン同時観測を行った。 観測は KVN Yunsei 21 m 鏡を用い、2009 年 6 月から 2011 年 1 月にかけて 行った。 SiO と H2O の双方が検出されたのは 62/152 = 40.8 % 天体である。 22 天体で SiO メーザーは検出失敗だったが H2O が検出された。 27/83 では SiO のみが検出された。合計すると 89/152 = 58.6 % で SiO が 検出された。  SiO の新検出は 70 であった。  SiO, H2O 双方検出天体では、ミラ、OH/IR で SiO のピーク 温度、積分温度のどちらも 水メーザーより強かった。また、 OH/IR の方が ミラよりも H2O/SiO が大きかった。152 天体の IRAS 二色図上の 分布も調べた。

Cho, Kim 2012
SiO 既知天体での SiO と H2O メーザーの同時観測
 SiO メーザーは検出されているが水メーザーの検出報告のない 83 天体で、 SiO v = 1, 2 J = 1-0, 29SiO v = 9 J = 1-0, H2O 616-523 の4本のメーザーライン同時観測を行った。 SiO と H2O の双方が検出されたのは 14/83 = 16.9 % 天体である。 1 天体で SiO メーザーは検出失敗だったが H2O が検出された。 55/83 では SiO のみが検出された。合計すると 69/83 = 83.1 % で SiO が 検出された。  SiO v = 2 メーザーが検出され、v = 1 では検出できなかったのは 9 天体で ある。これらの天体はダストシェルの発達との関係でさらに詳しく調べる必要 がある。SiO, H2O 双方検出 14 天体で二つの比を較べた。 ピーク温度は H2O/SiO = 0.44, フラックスは H2O/SiO = 0.28 であった。

Kim, Cho, Oh, Byun 2010
SiO と H2O メーザーの同時観測 I.
 SiO と H2 メーザーが既知の 166 天体に対し、Yonsei 21 m 鏡 を使い 2009 年 6 月に両者の同時観測を行った。どちらも受かったのは 112 天体、 SiO のみは 42 天体、H2O のみは 4 天体であった。 SiO メーザーの大部分は星本体視線速度の周りに現れたが、H2O は異なる現れ方を示した。  20 以上の天体で、片側だけのピーク、または恒星 速度と SiO 速度を挟んだ双ピーク H2O メーザーが観測された。 ピーク値と積分フラックスの H2O/SiO(v=1) 比はミラから OH/IR, セミレギュラーに掛けて増加する。さらに IRAS 2色図上でのメーザーの 位置を議論した。

Reid + 13 (2009)
大質量星形成域の三角視差 VI. 銀河系構造、基本パラメタ―、非円運動
 VLBA と VERA を用いて星形成領域内メーザーの固有運動と視差を測っている。 18個のメーザーに対する初期結果はそれらを幾つかの渦状腕の上に位置させた。 ペルセウス腕のピッチ角=16°±3° は2本腕よりは4本腕に 合う。星形成域が円運動から予想されていたよりも、平均して 15 km/s 遅い 速度であることを見出した。また、 Ro = 8.4±0.6 kpc, Θo = 254±16 km/s, Θo/Ro = 30.3±0.9 km/s/kpc である。  データは回転曲線がほぼ平坦かやや上向きであることを示す。一般に運動距離 は大き過ぎる。いくつかの例ではファクター2以上となる。Θo/Ro を IAU 推奨値の 25.9 km/s/kpc から 30 に変えると運動距離と視差との一致は 向上する。運動距離を更新する処方を示す。回転曲線はM31のものと似ており、 二つのダークマターハローの質量が同じくらいであることを示唆する。

Reipurth, Schneider 2008
シグナスの星形成と若い星団
 シグナスリフトには、現在または最近の活発な星形成域が多数含まれている。 この領域は渦状腕を見下ろす(縦に貫いて見る?)ので、数百 pc から 数 kpc まで様々な距離にある星形成域が重なっている。巨大な HIIR の一部である北 アメリカ星雲とペリカン星雲は白鳥座星形成域の中では最も有名であるが、これら は僅かに 600 pc の位置にある。
 その隣に見えるのはシグナスXであるが、距離は 1.7 kpc である。この天体 は直径 10° に及ぶ活発な星形成分子雲と若い星団の複合体である。それら の星団の中で最も大きいのは、年齢 3 - 4 Myr の Cyg OB2 アソシエイション である。それには数千の OB-星が属し、 LMC の若い球状星団とよく似ている。 白鳥座の分子雲複合に属する若くて大質量または低質量の星や原始星は未だに 研究が不十分であり、系統的な研究に値する。

Sevenster, Dejonghe, Van Caelenberg, Habing 2000
銀河系内側円盤における進化した星の分布
 内側銀河系の O-リッチ、進化した、中間質量星の一様なサンプルに対し、 力学分布関数を求めた。軸対称、2成分 Stackel ポテンシャルを用いた。 安定な2積分モデルは最初の3投影モーメントに関してデータを非常によく 再現する。しかし、中心部視線速度、中心スケール高、 |l|=[5, 15] でほぼ 完全に筒状の回転を再現できなかった。  これらの特徴は銀河バーを示しており、3積分モデルで良くフィットする。 2積分及び3積分分布関数を議論した。円盤の高年齢 AGB 星の観測分布を説明 するには、やや厚い円盤成分が必要である。この厚い成分は高銀緯での AGB 星 の運動を、薄い円盤より上手く説明する。AGB 星で見る限り円盤とバルジは力 学的に非常によく似ていて、同一成分と見做せる。しかし、バルジの 100 pc 以内は力学的に独立な成分である。

Lewis (2000)
|b| ≥ 10° OH/IR 星シェルの一過性について I. 基本統計
 アレシボから見える |b| ≥ 10°, |l| < 10° 範囲には F25 ≥ 2 Jy の IRAS カラーで選択され た OH/IR 星が 62 個存在する。そこには 4 つの O-リッチ PPNs も含まれる。その一つ 18095+2704 の膨張年齢 103 年を使って、高銀緯星の 1612 MHz 放射期間を平均 1670 年と較正できた。サンプル内の 118 OH/IR 疑似 天体=OH/IR 星と同じ星周カラーを持つが 1612 MHz メーザーナシ、に対応する OH メーザーナシの PPN はしかし、一つしか存在しない。  もし OH/IR 疑似天体=ミミックが独立に PPN 期を通過するなら 8 ≒ 118 x (4/58) PPNs が想定されるのにである。したがって、疑似天体の大部 分は前駆 OH/IR 星である可能性が高い。超星風期の長さは赤外天体全体の数と PPN の数とから 103 x (58+117)/(4+1) = 3605 ≒ 3700 年である。 一方、反銀河中心方向では OH/IR 星と疑似天体=ミミック に対応すべき O-リッチ PPN が 一つもないという事実に、二つの炭素星と 4 つの C-リッチ PPN があることを 合わせて考えると、反中心方向の OH/IR 星の大部分は AGB 期を C-リッチ PPN として離れることが強く示唆される。これは高銀緯星の超星風は循環的であること を直接に意味する。(全然意味が通らない!)

Frail et al. 1994
IRAS 点源の 1612 MHz OH サーベイ I. 観測
 2703 IRAS 天体を 1612 MHz OH ラインで観測した。738 個で 検出し、うち 597 個が新発見であった。観測天体の選択は 12-25-60 μm カラーで行った。log(f25/f12) > -0.2, log(f60/f25) < 0.6, f12 > 3 Jy, δ < -10° の天体の 70 % が観測された。大部分の 検出天体で、OH ラインのプロファイルは二本のピークを持ち、膨張星周 シェルからの放射である事を示している。サーベイの検出統計を論じた。 OH/IR 天体の詳細な議論は続編に書く。

te Lintel, Caswell, Habing, Haynes, Norris 1991
球状星団中の OH メーザー
δ ≥ -42° の球状星団すべてで OH メーザー探査を行った。視線速度 の一致から NGC 6171 中心から 9'離れた V720 Oph が唯一の候補として残った。 このように検出数が少ない理由は、AGB寿命、星の総数、低メタルなどいくつか 考えられる。低フラックスのメーザーが残っている可能性もあり、低メタル星進化 を考える上で高感度観測が望まれる。

van Langevelde, van der Heiden, van Schoonevelde (1990)
OH/IR 星の多重変光曲線の位相遅れ
 OH 1612 MHz 時系列スペクトルから位相遅れ τ0 を取り出す方法を述べる。 様々なスペクトルチャネルの組み合わせのフラックス曲線から独立に決まる位相遅れ τij から τ0 を決める。実際のアルゴリズムは複雑で ある。  Dwingeloo からの新しいデータを古い歴史的データと合わせ、 OH/IR 星のシェルの 位相遅れを決めた。位相遅れを文献から得た角半径と合わせて幾つかの星の距離を求めた。 古い値と少し異なるがこちらの方がエラーが小さい。輻射絶対等級も示す。

Lewis, Eder, Terzian (1990)
IRAS カラーで選択した天体の OH メーザー源 II.
 アレシボでカラーで選んだ 1294 星の 1612 MHz 観測を行い、 86 星で検出、 内新発見が 79, という結果を得た。Edler et al 1988 と合わせると、 -0.7 ≤ (25-12) ≤ 0.25, 0 ≤ δ ≤ 37 (そして多分S25 > 2 Jy)でのバイアスサー ベイが行われた。検出率は (25-12) ≤ -0.5 で大きく低下した。検出天体は 全て F25 ≥ 2 Jy であった。  アレシボサーベイは高銀緯に及ぶので、小質量星の OH メーザーの特徴が 研究可能となった。我々は多くの分離または「化石」シェルを見つけた。 それらの割合から、低質量星では「超星風」時期は 1000 年で終わることが分かった。
低質量星は Ve-(12-25) 図上で系列をなすという発見。 低質量星は光学的に薄いシェルの低速マスロスからカラーと共にVe上昇。 カラーに上限。高質量星は赤い枝が伸びる。OHで新しいマスロス進化を提唱 している。話が分かりにくいのが難。

Lewis (1989)
星周メーザーの時間系列:PPN を同定する
 ゆっくり上昇するマスロス率の下で星周シェルは緩やかに進化する。シェル が厚くなるにつれ、始めに SiO, それから 水、OH メインライン、最後に 1612 MHz ラインが加わる。進化が続くと、メーザーが消えて行く。最初はメ インラインである。その後に水が続き、ついに SiO が消える。SiO メーザーは 定常マスロスが停止するやいなや消失する。その後、メインラインが再出現し、 分離シェル中でシェルの拡大希薄化により OH メーザーがなくなるまで、 1612 に対する相対強度を強めて行く。  メインラインのこの振る舞いは、それらがシェル内で最初に出現して以来、 「連続的に存在する」という性質と合致する。通常のタイプII OH/IR 星では 1612 MHz 放射を産む、ぶ厚いシェル内の輻射場がメインラインの生産を抑制 する。原理的には O-リッチ PPNs は水と SiO メーザーのない星でメインライ ンが存在することで簡単に発見できる。

Eder, Lewis, Terzian (1988)
IRAS カラーで選択した天体の OH メーザー源
 アレシボ OH メーザーサーベイの途中解析。 RA = 16h - 22h, Dec = 0° - 37° で、高い感度 25 mJy で行い、 184/474 の検出を得た。log(F60/F25) > -0.4 では検出天体が銀河面 5° 以内に限定され、それらのピーク速度間隔は大きい。それらは 若い高質量星であろう。高感度に拘わらず、F25 < 1 Jy の天体からは 一つも検出されなかった。理由は不明である。

Pottasch, Bignelli, Zijlstra (1987)
OH メーザーを放射する二つの若い惑星状星雲 
 OH/IR 星からの電波連続波の検出を試みた。OH 0.9+1.3 とOH 349.2-0.2 で検出に成功した。 この二つの 天体は可視同定がないが強い赤外源である。 この結果は OH/IR 星と PN との遷移天体の数を 3 に増やした。  どちらもバルジに属し、中心星は平均より大きく、より低温で半径が大きい。 その一つはこれまで知られたPNsで最低温度と最大半径を有する。この星は 現在急速に高温化しているらしい。

abing, van der Veen, Geballe (1987)
非変光 OH/IR 星/ 非常に若い惑星状星雲 ?
 近赤外観測から 「変光」OH/IR 星は赤色巨星に近いが、 「非変光」OH/IR 星は赤色巨星よりは惑星状星雲に近いのでは ないかという予備的な結果を得た。  我々は「変光」OH/IR 星は進化して「非変光」OH/IR 星となると考える。 この転移は非常に短期間で起こる。

Bedijn (1987)
ミラ型星と OH/IR 星の周りのダストシェル:IRAS と他の赤外観測の解釈
 ダストシェルモデル計算により、ミラ型星、OH/IR 星、非変光 OH/IR 星の IRAS 二色図系列を説明した。フィットの向上のため、(1) ダーティシリケイト モデルの修正、(2)吸収係数の温度依存性、(3)Baud, Habing 1983 の マスロス加速を取り入れた r-3 密度分布、(4)マスロス終焉 期の有限タイムスケールでのマスロス低下を組み込んだ。

Herman, Burger, Penninx (1986)
OH/IR 星の IRAS 観測。光度とマスロス率の決定
 良く調べられている OH/IR 星で、距離が分かっている星の IRAS 観測を示す。 輻射補正を F12/F25 の関数として定め、輻射等級を求めた。電波で周期の助け を借りて、平均光度を決めた。 AGB 上の光度関数を作り、主系列星の分布と 寿命とからの予測と比較した。
しかし、議論が粗い。例えば AGB 等級を 主系列の 2.5 等上と決めてしまうとか。OH26.5+0.6 の位相による吸収深さ変化の 話し、図13は面白い。最後のマスロスの話は議論に値て行けないので中断。  長波長放射からマスロス率、ダストシェルの光学的深さ、ガス/ダスト比を 導いた。

Nyman, Olofsson 1986
進化した星からの SiO v=1, J=2-1 メーザー 長期観測 
 8 星の SiO v=1, J=2-1 メーザーを 4 年以上継続観測した。5/8 星で赤外 変光とよく相関した周期的なメーザー強度変化が見られた。SiO メーザーの 極大強度 Fmax と Fmax/Fmin は周期毎にまた、星毎に大きく変動する。 メーザースペクトルの個々の成分 (ピーク) の速度は変光周期の時間巾では 安定している。恒星中心速度で強いピークが現れることは稀である。 幾つかの星ではメーザーピーク速度に変光周期を越す長期間に亘る変動が 観察された。&omikron;Cet では速度変化は連星の公転によるのかも知れない。
 個々の星毎に全観測スペクトルを重ねたグランド平均スペクトルを用いて 速度構造を調べた。中心速度は星本体の視線速度に近い。これは SiO メーザー を星の視線速度決定に使用できることを意味する。グランド平均のスペクトル 巾は星同士で似た値となり、星周ダストシェルの膨張速度にあまり相関しない。 幾つかの例ではメーザー視線速度が膨張速度を上回る例もあった。ミラ型 変光星の全体平均スペクトルは、最高ピークが星本体速度に対し青色シフトし ていることを示す。一方、速度の広がりは赤色シフト側の方が大きい。 これがメーザー増幅機構とどう関係するかを議論した。
 オリオンAメーザーの周期変化が初めて検出された。

Wouterloot, Walmsley 1986
星形成領域内 IRAS 天体に付随する 水メーザー
 ボン 100-m 望遠鏡により、 分子雲中の IRAS 点源での H2O メーザー探査を行った。CO, OH マッピングデータをガイドに、オリオン L1630, L1641, ケフェウス分子雲の中にあり、S(12) < S(25) 天体を観測した。 その結果、ケフェウスで 11, オリオンで 2 個のメーザー源を発見した。 それらの メーザー源で OH 1665/1667 MHz 観測を実施したがゼロ検出であった。メーザー源 方向の H2CO 観測から、新たに見つかったメーザー源は分子雲に付随 すると結論した。
 また、メーザー源に付随する FIR 天体は IRAS 二色図上で特定の領域を占めて いることを見出した。100/60 - 60/25 図上でそれらは黒体ラインの近くに現れる。 そのカラー温度は T100/60 = 45 K, T60/25 = 55 K, T25/12 = 130 K であった。 20 < LFIR < 106 Lo の間で H2O 光度は LFIR に比例する。この研究の 副産物として、オリオン、ケフェウス方向の IRAS 天体の光度関数は IMF から 期待されるそれと一致することが分かった。

Herman, Habing (1985b)
晩期型星 OH メーザーの変光とシェルサイズ
 OH メーザーの変化=周期と振幅を測るための観測結果を報告する。可視周期 400 日の通常のミラ型変光星は同じ電波周期を示した。しかし、可視非同定の OH/IR 星の大部分は 2000 日を超える  OH/IR 星のかなり 25 % は小振幅か、全く変光を示さない。位相差から OH シェルの大きさが導かれる。それはミラ型星の場合 8 1015 cm, OH/IR 星では 5 1016 cm 程度である。

Herman, Baud, Habing, Winnberg (1985)
OH/IR 星の VLA 観測
 11 OH/IR 星を VLA で観測した。10 星の Vr は大きく、腕の接点付近にある と考えられる。分解できた 6 星は OH シェルの角半径と位相遅れ直径とから幾 何学距離が導き出せる。  これらの幾何学距離と運動学距離を比較して、銀河中心距離 Ro = 9.2± 1.2 kpc が得られた。OH シェルの形はかなり対称的である。完全な球対称からの ずれは 20 % 以下で、シェルの厚みは大きくとも半径の 20 % である。OH 密度は r-2 かもう少し急に落ちる。

Herman, Isaacman, Sargent, Habing (1984)
OH/IR 星の 赤外観測
 λ = 3.8 - 20 μm での 8 バンドでの OH/IR 星測光を報告する。 他の観測結果も足して、これら非常に長周期の変光星光度を決めた。 10,000 Lo を越す星の割合は小さい。多くの OH/IR 星は可視ミラ型星と同じ くらいの光度を有する。  9.7 μm シリケイト帯の深さ、赤外カラー温度、マスロス率は OH メーザー強度の指標となる。いくつかの天体は通常の OH/IR 星と非常に 異なる特徴を持つ。それらは変光せず、近傍にある非常に大きなマスロス率 を持つ星らしい。

Le Bertre, Epchtein, Nguyen-Q-Rieu (1984)
IRAS 1827-145P01: 双極流天体?
 IRAS 1827-145P01 の JHKLMN 測光の結果を報告する。この星は OH 17.7-2.0 の赤外対応天体である。我々の観測と IRAS を合わせた 1 - 100 μm SED は 球対称なダストシェルでは説明が難しい。  この天体の赤外スペクトルは双極流星雲のそれと似る。この類似性と OH 放射 データとから、IRAS 1827-145P01 は OH/IR-双極星雲をエッジオンで見たものと 考える。

Olnon, Baud, Habing, de Jong, Harris, Pottasch (1984)
OH/IR 星の IRAS 観測
 始め、OH メーザーで検出された星 40 個の IRAS 結果を調べた。いくつか の星では地上観測で同定されたものに比べスペクトルが非常に赤い。  2色図上のプロットは古典的ミラ型星から非常に赤い OH/IR 星までの系列を 示している。しかし、最も赤い星はちょっと様子が異なる。それらの脈動は 非常に弱いか、全く脈動しない。それらは AGB の最後まで行き着いたのではないか。

Baud, Habing 1983
OH/IR 星のメーザー強度、マスロス進化と超星風の発生 
(1) OH 表面輝度一定なので、LOH ∝ ROH2 ∝ [(dM/dt)/Ve]2
(2) OH 光度関数 ψ(LOH)∝ LOH-2

から、 LOH = 1/(to-t), dM/dt = 1/(to-t)1/2, Me = Mc,o + Me,o (to-t)1/2

を導く。さらに, Ve-Mms 関係を使い、 その他の Mms に依存するAGB 進化の諸関係を導出する。 気になるのは、L 一定、R 一定でMe がゼロに向かうにつれ平均密度低下 と脈動周期増加。周期光度関係を壊す。

Seaquist, Davis (1983)
Vy 2-2 の VLA 連続波及び OH ライン観測
 連続電波 1.465, 4.885, 14.965 GHz と OH ライン 1.612 GHz で Vy 2-2 の VLA 観測を行った。連続光の観測結果をモデルフィットした結果、熱電波 は比較的薄い電離ガスの球殻、半径 0".2, Te = 1.4 104 K, ne > 106 cm-3 から来ることが分かった。  OH ラインはシェルの縁に重なって見える。これらの観測を合わせると、電離は 中心星を囲む分子雲の内側の縁に位置する、薄い電離限界シェルで起きていると 考えられる。中性性ガス雲内のダストが IR 放射の原因であろう。Vy 2-2 は まだ電離が不完全な若い PN で、電波放射の著しい進化が今後期待できる。

Jones et al (1983)
OH/IR Masers III. The Data Base and Nature of the Sources
OH/IR 星メーザーを収集した。ΔV = 35 km/s を境に 2 グループ、VM 型 と SG 型、に分かれる。

Jones, Hyland, Caswell, Gatley (1982)
タイプ II OH メーザーの IR 対応天体の探索 II. 統計的解析
 タイプ II OH メーザー感度限界サーベイで発見されたメーザー源の赤外対 応天体を探した。
(候補選択基準が書いていない。 )
赤外源は全体として非常に赤く、多くは K-L > 7 である。 (OH 光度)/輻射光度 の比は K-L に伴って上昇する。 OH ピークの速度差 ΔV は輻射光度と相関する。光度が上がると ΔV も大きくなる。 低 ΔV 天体の光度は < 104 Lo である。  これ等の星は 1 Mo AGB 星が Teff = 2500 K で基本振動しているというモ デルと合う。M 超巨星で典型的な、低 H2O, 高 CO 吸収帯を持つ OH/IR 星は、大きな ΔV と高い L を示し、それらが極端種族 I の M 型超巨星であるという同定と合う。低 ΔV. 低 L 天体は 吸収帯強度がミラ型星の典型値を取る。 驚くべきことに、いくつかの高 ΔV と高い L 星がミラ型星のような 吸収帯強度を示す。これは、以前知られていなかったほど低温で希薄な大気 を持つ M > 5 Mo 星の存在を意味する。

Genzel, Downes Schneps, Reid, Moran, Kogan, Kostenko, Matveyenko, Ronnamg (1981)
水 メーザー源の固有運動と距離 II. W51 Main
 W51 Main 内 H2O メーザーの相対固有運動を VLBI で測った。 相対位置精度 100 マイクロ秒角を達成した。観測された固有運動は大体 1 ミリ秒/年程度で、メーザー雲の運動を示す。横向き運動の様子はでたらめ で、強い星風が周囲の分子雲内の非一様な分布と相互作用する結果生じる 乱流運動と理解される。  横向き速度と視線速度の比較から、 W51 Main までの距離(統計視差)を 7 ±1.5 kpc とした。この値は運動遠距離と一致するが我々の方法は 銀河系のモデルに独立に求められた。

Baud, Habing, Matthews,Winnberg 1981
1612 MHz OH メーザー源の系統的探索 III.タイプII OH/IR 星の 銀河系内分布、 運動と放射の特性
 3つの 1612 MHz OH サーベイの結果をまとめた。サンプルは l = [10,150], |b| ≤ 4 の 114 天体である。大部分に可視対応天体は見えないが、我々は 進化した赤色巨星か超巨星が中心にあると考える。銀河回転曲線と視線速度を 比較して、電波源は二つのグループに分かれた。便利なパラメタ―は ΔV = 二つのピーク間の速度差、である。ΔV > 29 km/s 天体 は銀河回転に対し小さな速度分散(<10 km/s)を持ち、ΔV < 29 km/s では 30-40 km/s という大きな分散を示す。  第1グループは ≤ 107 yr の M-型超巨星で、第2グループは 109 yr のミラ型星である。銀河面分布はどちらも銀河中心距離 R = 4.5 kpc に極大を示す。これは種族 I 天体の特徴でもある。R < 4.5 kpc の星形成率はしたがって、過去 109 低かった。タイプ II OH/IR 天体は惑星状星雲の大部分の先駆天体ではない。以前の研究と異なり、 固有 1612 MHz はファクター 10 - 100 の範囲にまたがる。そしてその数は OH 光度が上がると急激に減る。これが近傍の電波源は L(OH) が低く、 非同定源が遠く明るい理由である。

Caswell, Haynes, Goss, Mebold (1981)
南天での 1612 MHz OH メーザーサーベイ
 銀河面 l = 340 - 0 の 1612 MHz OH サーベイを行った。それより低感度の サーベイを l = 270 - 326 で行い、5天体を検出した。55/83 で OH/IR 星に 特徴的なダブルピークが見えた。これら新しい、可視、赤外未同定の OH/IR 星の速度と位置分布を議論した。  特にそれらの運動学的特徴と所属種族に気を払った。まだそれらが晩期ミラ型 星なのか超巨星なのかはっきりしないからである。残りの28個は、11個が 広がった 1612 MHz ピークと 1720 MHz 吸収を伴うタイプ IIc 型星、4つが 主ラインを持つタイプ I 型 OH メーザー、13個は分類不能である。

Bowers, Johnston, Spencer (1981)
晩期型星星周層でのマイクロ波 OH メーザー
 VLA を用いて、赤色巨星と超巨星の 20 個を取り巻く OH メーザー雲の絶対 位置(±1 arcsec) と広がり形状を測った。多くの天体で、系統的膨張 星周シェルモデルと合致する結果を得た。しかし、約半数は arcsec レベルで はより複雑な構造を示した。  1612 MHz メーザー領域のサイズ、膨張速度、とマスロス率の間に相関が 見出された。 U Ori では、大規模マスロスの開始がごく最近であり、 OH スペクトルの激しい変化は進化した星において OH メーザーが始まる 時期を表現しているのかも知れない。

Davis, Seaquist, Purton (1979)
大きな赤外超過を持つ早期型輝線星からの OH メーザー
 アレシボ望遠鏡で、アレンのD-タイプ=赤外超過が大きな早期型輝線星 23 個の OH 1612, 1665, 1667 MHz 観測を行った。Vy 2-2 で新しく OH 検出に成功した。また、Fix, Mutel による M 1-92 における OH 検出を確認した。Vy 2-2 の 1612 MHz は 10 km/s 幅の単一ピークであった。これは OH が検出された最初の PN である。 双極型星雲 M 1-92 の強度は 1973 年以来 変化していない。その進化段階は不明である。

Forrest+9 (1978)
OH/IR 26.6+0.6 の 2 - 40 μm 分光測光観測
 航空機と地上からの観測で OH 26.5+0.6 に強い 10 μm 吸収と弱い 18 μm 吸収が示された。フラックスレベル、カラー温度、吸収深さ は 2 年間の観測の間変化した。  天体を晩期型変光星が光学的に厚いダストシェルを放出したモデルが 示唆される。マスロス率は 10-5 Mo/yr 以上に達する。 4 - 7 μm 区間での放射フラックスが高いことは高酸素ダストはこの 波長帯で高いオパシティを持つ証拠である。

Caswell, Haynes (1975)
l = [326, 340] での新しい 1612 MHz OH 放射源
 l = [326, 340], |b| < 0.4° で OH 1612 MHz 遷移の探査を行った。 27 放射源が検出された。内 20 は新発見である。 14/20 天体は OH/IR 星の 特徴を持っている。残りの多くは新しいクラスの天体らしい。  我々が新発見した天体の内 2 天体から 1665 MHz 放射を検出した。又、 1612 MHz 源でない所で 3 つの独立 1665 源を発見した。多くの方向で 1612 MHz OH 吸収が観測された。また観測領域外にある 1612 MHz 源の 位置を正確に決めた。

Hyland (1974)
OH/IR および H2O/IR 星の赤外特性
 OH, H2O メーザーを出す M 型超巨星、ミラ型変光星の赤外スペ クトルはそれらの星の大気条件は OH 密度が極大であることを示す。 H2O メーザー星の H2O 1.9 μm 吸収は強い。OH サーベイで発見されたが、対応赤外天体の未同定な星の数は多い。TV撮像 による探査の予備的結果を報告する。  赤外カラー、周期、赤外振幅、OH ピーク間速度差の間に興味深い相関が見 つかった。メーザー放射は赤外放射によるポンピングが原因と考えられる。 ミラ型星における OH, H2O 放射と赤外連続光の関係は、赤外 ポンピング説を支持する。

Wilson, Barrett (1972)
赤外線星 OH ラインの特性
 晩期型変光星からの OH 放射の性質を調べた。 456 赤外線星と他のタイプの 18 天体を調べ、 25 天体から OH を検出した。他の観測者により既に発見さ れている4つを加え、赤外天体からの OH 源は29となった。さらに8 OH 源 では未だに対応赤外星が発見されていない。  OH, IR, 可視の性質から OH/IR 星は次の3つに分類される。1612 MHz OH 放射が最強になり、スペクトルに二つのピークを持つグループには 19 天体が 含まれる。それらは M-型長期変光星でおそらく星周ダストシェルからの 5 - 10 μm 超過を持つ星であろう。OH 放射は赤外光により励起され、OH 雲は非対称的な膨張を行っているのではないか。

Turner (1970)
宇宙空間からのメーザー
 星間空間から電波で検出された 7 種の分子の内、 OH と H2O は メーザーアクションによる強い放射を示す。OH 放射は3クラスに分類される。 それらは別々の励起メカニズムが原因である。ダスト雲の異常 OH 線に関して 遠赤外励起が適用された。  水の衝突解離による OH 励起が最近の OH 観測に適用された。これはタイプ I OH 線がなぜ H2O 異常放射に伴うかを説明する。 H2O の励起 メカニズムに関しても説明する

Wilson, Barrett (1968)
赤外星からの OH 電波放射の発見
 4 赤外星, NML Cyg, CIT-3, CIT-7, NML Tau から OH ラインが検出された。 赤外星 NML Cygni からの 1612 MHz 放射は今まで検出された中で最強である。 スペクトルラインは特徴的なダブルピークが見られる。  赤外超過を示す他の 16 星、TX Cam, R Mon, T Tau, RY Tau, CIT-1,-2,-4, -6,-8,-14からは OH の検出がされなかった。

Raimond, Eliasson (1967)
オリオン星雲内の赤外線星と OH 源の関係
 オーエンスバレイ2素子干渉計でオリオン OH 源の位置を決めた。 BN 天体付近から出ていることが分かった。  収縮している星間雲が OH ライン源らしい。



R CrB

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著者 内容

Whitelock, Feast, Marang, Groenewegen 2006
炭素星の近赤外測光
 銀河系 239 炭素星の JHKL 測光を行った。それらをミラ型星と非ミラ型星に 分け、変光の振幅、周期(ミラ型では 222 - 849 d) を求めた。カラー・周期 関係は LMC とほとんど変わらない。平均 JHKL 等級+IRAS+MSX から見かけ 輻射等級を決めた。周期光度関係から決めた光度と合わせて距離を決めた。  BCK を求め、他のカラーからの BC を定める処方を導いた。 マスロス率を求め、文献値と比較した。炭素星ミラの 1/3 と比率不明の 非ミラ炭素星に R CrB 星に似た不定期な減光事象が発生する。原因は不明。

Werner, Herwig
惑星状星雲前駆星の元素組成と AGB 星のシェル燃焼
 スペクトル型=[WC] と PG1159 型で極度に高温、かつ水素欠乏の post-AGB 星の観測的性質をまとめて解説する。その水素欠乏性はおそらく非常に遅れた ヘリウムシェルフラッシュまたは AGB 最終熱パルスが、通常は水素層の下に 隠されている星の内層をさらけ出した結果であろう。  これらの星の光球元素組成は、前駆 AGB 星内の核反応と混合の詳細を明らかにする。 AGB 進化と遅れたヘリウムシェルフラッシュを計算するモデルをまとめ、予想される 元素分布をスペクトル解析の結果と比べる。

Feast 1997b
RCB 星 II. 赤外データからの研究
 論文I の RCB 星 JHKL 観測結果をさらに議論する。重点はダストの温度と 形成である。ランダム雲モデルと適合する様々なダスト温度の証拠が見つかっ た。ダストフラックスが増大中はダスト平均温度が高く、減少中は低いことが わかったが、これも雲モデルに合う。 1500 K 以上のダストが存在する観測的な証拠は見つからなかった。  準定常なエディントン駆動星風中の大きく低温の対流セルの上方で温度が 1500 K になるとダストの形成が起きるのではないか。その場合、ダスト形成 は星表面のかなり近くで起きる。それは RCB 遮光の細かい点を説明するのに 必要な条件でもある。このモデルでは極大期の RCB 星のいくつかで見られる 強い C2 バンドも自然に説明可能である。HdC 星も論ずる。

Feast, Carter, Roberts, Marang, Catchpole 1997a
R CrB 星 I. 赤外測光と長期変動
 12個の R CrB 星の JHKL 測光を最長 23 年間行った。他の RCB 星 数個と5個の HdC 星についての限られた赤外測光の結果も報告する。 それらから J バンドにおける長期変動とLバンドでの星周ダストの 性質を調べた。全ての RCB 星は数百日から数千日のタイムスケールで ダストからの放射に変動を示す。Lバンドでのダストフラックスの幅は 3 等にまで達する。変動幅が大きいほどタイムスケールは長くなる。 時には 10,000 日を超す永年変化が見られる。
 R CrB それ自体は周期 1260 日のセミレギュラー変動を示す点で 典型的である。減光による極小とダスト放射量変化との間には直接の 関係は認められない。しかし、ダスト放射と遮光頻度との間に統計的な 関係はありそうである。 ダスト放出に固定幾何学を考えるモデルは排除されそうで、観測は ダストがランダムに噴き出すモデルを支持する。大きな赤外超過と 高い遮光活動は水素存在比が普通より高いことを示唆する。

Feast 1996
R CrB 入門: いくつかの問題の解説
 RCB 星の特徴は低速の「彩層」流である。これはエディントン限界を超える 光度による輻射駆動性流で質量放出の主原因であろう。この流れの中に生じる 不安定性によってダスト形成が起こり、その結果発生した小雲は直ちに星から 外へ噴出する。そうであるなら、ダスト形成による彩層の質量欠損を補充する 時間が赤外放射の長期変化に自然なスケールを与える。赤外データは少なく とも幾つかの RCB 星の「脈動」は星全体のものでないことを示す。  RY Sgr の深い極小時における見かけ上の巨星脈動が記述され、 その説明が与えられる。RCB 星は双極性であり、ダストは星周環という説を 議論する。観測は球対称分布を支持する。 低温低密度の RCB 星周辺ガスの中を,急速に膨張するダストとガスの小雲が 突き抜けていくのであり、RCB 星は高温ガスに包まれてはいないというモデル を提案する。RCB 星と HdC 星の元素存在比効果について述べ、UW Cen の周り の反射星雲が RCB 星小雲モデルを検証するのに役立つ可能性を指摘する。

Pugach, Kovalchuck 1988
On the Photometric Features of R CrB Dust Envelope
R CrB の UBVR 測光を R CrB の光度回復期 1977 - 1978, 1982, 1983 - 1984 に行った。観測はコーカサスの Terskol Peak 0.5 m 鏡で 行われた。 ΔV = 3.81Δ(V-R), ΔV = 3.20Δ(B-V), ΔV = 2.12Δ(U-B) である。R CrB のダストの光学的性質は星間物質とよく 似ている。

Feast 1986
RCB 星と星周物質
 RCB 星は約 200 km/s で星から放出される星周ダストとガスに囲まれている。 星周シェルは小雲の集合で、個々の小雲はシェル全体の領域の 0.03 を占める。 平均して小雲は 40 日に1回放出される。それは既知の RCB 星の脈動周期と大 体同じである。  ダストの赤化則からそれらは a = 100 A の小炭素粒からなることが分かる。 シェルからの L バンドフラックスは 1000 - 2000 日の間に 1 - 3 等の変光 を示す。平均質量放出率は 10-6 Mo/yr である。

Holm, Wu, Doherty 1982
RY Sgr の星周減光
 RY Sgr は 1977 - 1978 に極小を示した。1979 - 1980 年の回復期に IUE による紫外分光観測が行われた。異なる時期であるが、 ほぼ同じ脈動位相での観測を比較して、この RCrB 星の減光が求められた。  減光の波長依存性は、半径 0.043 μm のグラファイト球の理論モデル、 から予想される減光曲線、および非晶質炭素煙で計測した減光 とほぼ同じである。

Humphreys, Ney 1974
連星中の赤外星
 特異 A-, F-型超巨星 HD 101584, 89 Her, υ Sgr, R CrB は大きな 赤外超過を持つ。HD 101584 (F2e Iap)では可視よりも赤外放射の方が強い。 我々は、赤外エネルギーが M-型超巨星から放射されるのであり、星周ダスト 起源ではないと考える。HD 101584 は振幅 20 km/s の視線速度の変動をも示 す。Hδ は P Cyg 型線輪郭を持ち、2年間の観測期間の間、 H, K 線の 視線速度は他の線に比べ 30 km/s マイナスであった。  89 Her (F2e Ia) と υ Sgr (cApe) は HD 101584 と似た赤外超過を持ち、やはり非常に 低温の星からの赤外光であろう。特異炭素星 R CrB (F8pep) は Cydnid 型赤外 星と似た赤外超過を示す。 R CrB は 3.5 μm で長周期変光星と似た変光を 示す。この星の可視域での乱れた振る舞いには赤外伴星が関与しているのかも 知れない。

Humphreys, Ney 1974
超巨星連星
 F-型超巨星 HD 101584 は赤外放射が可視放射の2倍あり、可視スペクトル に赤化が見られないので、赤外放射を星周ダストからの熱放射で説明する のは困難である。  F-型超巨星が伴星に M-型超巨星を持つのではないか? 89 Her, υ Sgr, R CrB も同様の超巨星連星なのであろう。

Alexander,Andrews, Catchpole, Feast, Loyd Evans, Menzies, Wisse, Wisse 1972
脈動 R CrB 星 RY Sgr の分光・測光研究
 1967 - 1970 年の RY Sgr 観測の結果を報告する。この間には初めに急速な 光度落下があり、続いて緩やかな回復と極大光度到達が起きた。382 本の輝線 とCN- の b−f スペクトルに起因する連続光が初めの光度落下期に 見えた。これら彩層輝線スペクトルの時間変化は励起度の低下と自己吸収の 減少を示す。彩層の低下タイムは 22 日であった。光球輻射の初期減光タイム は 5 日かそれ以下であった。[FeII] 輝線の不在から、衝突励起が支配的と するなら、輝線領域の密度は 1014 atoms cm-3 以上 と推定される。減光期にシェル速度は 200 km/s の CaII 輝線が見えた。
 増光期と極大期には可視等級とカラーは ΔV = 0.5 mag, Δ(B-V) = 0.3 mag, &Delta:(U-B) = 0.5 mag、周期 38.6 日の滑らかな変動を示す。 同様の周期性は視線速度 Δv = 30 km/s でも見え、RY Sgr は RCrB 星 であると同時に脈動変光星でもあることが判った。増光期のある時期には星 のスペクトルは極大期と同じで正常であるが、星の等級は暗く、カラーは 赤かった。Lee, Feast の赤-赤外観測と合わせると、星周減光が起きている と考えられる。Av/E(B-V) = 4.3, E(U-B)/E(B-V) = 1.3 が星周シェルに対し て導かれた。増光期中の光度低下に続いて異常なスペクトルとカラーが観測 された。それらは明らかに、光球吸収線が彩層輝線で埋められた結果である。 この現象の主原因は光球輻射光の減少で、それは新しいダスト層が光球付近に 形成されたためであろう。シェル吸収線 CaII, NaI のずれた速度がこの時期に 観測された。RY Sgr の脈動は概して言えば Trimble のヘリウム星振動モデル と合う。

de Kock 1969
RY Sgr
 不規則変光星 RY Sgr の 1967 - 1968 の可視変光観測の報告 を行う。過去3年間極大で安定していたが、 1967 年 7 月に急速に暗くなり 始めた。  9 月末には 11.7 mag となり以降 6-インチ鏡では見えなくなった。その後 1068 年 3 月に 11.8 mag まで回復し、再び観測可能となった。



post-AGB

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著者 内容

Kamath, Dell'Agli, Ventura, Van Winckel, Karakas, Tosi (2022)
AGB 進化と核合成を理解する道具としての post-AGB 星の新しいモデル
 表面組成、 s-元素超過、ガイア視差の分かった post-AGBs を現在得られる AGB 進化計算の結果を使って研究する。それにより、個々の天体の質量、組成、 年齢を得る。  表面炭素組成と光度の情報は星の過去の歴史を推測する際に最も貴重である。 それにより、AGB進化に関する新しい見方が得られる。

Oudmaijer, Jones, Vioque (2022)
ガイア DR3 における post-AGB 星の調査:多数の post-RGB 星の発見 
 Gaia DR3 視差と赤化補正したフラックスから 185 post-AGB 候補星の光度 を求めた。それらを HR 図上にプロットした。かなりの天体がこれまでの post-AGB モデル進化経路と観測された PNe 範囲の外側に位置した。  それらには高質量の進化した超巨星と低光度天体が含まれる。post-AGB 候 補星の 1/3 が光度不足であり、それらは最近知られるようになった連星進化 の結果生まれたpost-RGB 天体の種族であると考える。

Tosi, Dell'Agli, Kamath, Ventura, Van Winckel, Marini (2022)
マゼラン雲 post-AGB 星を用い AGB 期のダスト形成を理解する
 post-AGBs のスペクトルを解析して、AGB 期の間に星の表面組成に起きる変 化を研究する。マゼラン雲中の双峰性 SED を輻射モデルで解析して、星の光度 とダスト成分を調べる。さらに、進化モデルと観測との比較から母星質量、メ タル量を導く。  13 サンプル中 8/13 は炭素星で母星は 1 - 2.5 Moであった。5/13 星は < 1 Mo 星から生じた。それら 5 星はシリケイトダストに覆われている。 ダスト光学的深さと星の光度との間には相関がある。現在 post-AGB 星を 覆っているダストが放出されたのは Teff = 3500 - 4000 K の時期である。

Kamath, Van Winckel, Ventura, Mohorian, Hrivnak, Dell'Agli, Karakas (2022)
ガイア EDR3 距離のある銀河系単独 post-AGB 星の光度と質量:明らかにされた s-過程の多様性
 元素組成とガイア距離の分かった post-AGB 星の SED 解析を行った。それら の HR 図をモデル AGB 進化経路と較べた。大部分は post-AGB 進化経路上に あったが、一つだけは post-HB 経路にある。 HR 図上のその位置は球状星団の AGB-manque=AGB不到達星と似る。   Teff とメタル量が似た post-AGB 星に見られる s-元素超過分布の双峰性を調べた。 この双峰性はある光度の星はAGB 上で進化が奥まで進むので s-リッチになると 考えられていた。しかし、s-元素リッチと非リッチ天体は似た光度を持ち、つ まり同じ初期質量を持つ事が判った。初期質量とメタル量が同じでも、AGB 元素 形成過程は多様で、おそらく他のパラメター、例えば対流混合のあるなしなど、 に敏感に反応するのであろう。

Krticka, Kubat, Krtickova (2020)
惑星状星雲中心星(CSPN)の星風モデル
 惑星状星雲の高温度中心星からの星風モデルを作った。AGB から WD までの M = 0.569 Mo 星に適用した。メタル量、星風中の塊の影響も調べた。Teff = 104 K でライン駆動型星風が現れ、WD 冷却期 1.04 105 K で消え去ることが分かった。 マスロス率は主に星光度に比例し、したがって、HR 図を水平に動く間ほぼ 一定である。  例外的な変動は、(1)2 104 K 付近でのバイスタ ビリティジャンプでは、鉄電離の変化に伴いマスロスが数分の1に減る、 (2)4 - 5 104 K における付加的極大。一方、遷移期中に星半径 が縮小する結果、最終星風速度は毎秒数百キロメートルから数千キロメートル へと増加する。星風速度はバイスタビリティ期間中にも増加する。

Fadeyev (2019b)
最終ヘリウムフラッシュ星の動径脈動
 FG Sge が 1990 以降光度、カラー、変光周期が安定しているのを、ボーン アゲインの LTP = late thermal pulse の膨張がピークに達し、WD へ戻る 寸前として 1.3 Mo 進化でモデル化。脈動計算を進化コードと組み合わせた のが新しい?進化速度観測と合ってる?

Fadeyev (2019a)
種族I AGB 星の進化と動径脈動
 Z = Zo, M = 1.0, 1.5, 2.0 Mo の MS - PPN 進化計算。Teff = [3.6, 20] 103 K のpost-AGB 星で脈動計算を行い、周期変化を求めた。 Teff = 20,000 K になるまでの時間は 1 Mo では7500年だが、1.5 Mo になる と 1000 年である。だから観測される post-AGB 星の多数は 1 Mo。

Engels, Etoka, Gerald (2018b)
AGB 進化終末期における大振幅変光の終焉
 我々は 2013 年からナンシー電波天文台を用いて 100 個以上の銀河円盤 OH/IR 星のメーザーモニターを行っている。メーザー強度の変化を用いて中心星の変化を 調べた。  我々は AGB - post-AGB 遷移の際に大振幅変光がどのように失われるかを理解 したいと考えている。振幅がゆっくりと縮小していき脈動が消えていく過程がありそう な仮定と、我々は予想している。

Engels, Etoka, West,Gerald (2018a)
プローブとしての OH メーザー: AGB - post-AGB 遷移
 ナンシー電波望遠鏡 (Nancay Radio Telescope = NRT) を用いて、 1612 MHz で数十個の OH/IR 星をモニターしている。データとしては Hartebeesthoek 電波望遠鏡(SA) における銀河中心 OH/IR 天体のモニターを加えた。メーザー 変光を中心星の変光を示すと考える。初期の成果から、既に示したように、幾 つかの星は 7 年にまで達する周期での変光を示す。他の星は小さな振幅の変光、 または無変光であった。  変光におけるこの二分は AGB 期と post-AGB 期の境界を定めるものと考え られている。現在の観測プログラムで、このような遷移天体を発見し、その変光 特性を調べたい。我々は脈動の低下消失がその表れと考える。その有力候補は 銀河円盤中の小振幅変光星 OH 138.0+7.2, OH 51.8-0.2 である。銀河中心付近 における「非変光」OH/IR 星の出現頻度は円盤と同じくらいである。

Miller Bertolami(2016)
post-AGB 星と惑星状星雲中心星の新しい進化モデル
 現在使用されている post-AGB 進化モデルは古い物理を使用しており、互い に矛盾している。色々な星系での CSPNe = PN 中心星と post-AGB 星の観測は モデル予想と大きな違いを示す。主系列から白色矮星までの進化のグリッドを 計算した。 Mi = 0.4 - 4 Mo, Z = 0.02, 0.01, 0.001, 0.0001 である。 その結果、post-AGB 水素燃焼のタイムスケールを M = 0.5 - 0.8 Mo について 調べることが出来た。  古いモデルに比べ、今回の post-AGB タイムスケールは古いモデルの 3 - 10 倍短く、メタル依存性が小さいことが分かった。また、新しいモデルは古いモ デルより 0.1 - 0.3 dex 明るい。この短いタイムスケールは最近バルジ CSPNe から求められた post-AGB タイムスケールと整合する。新しいモデルが予想する より少数の post-AGB, CSPN 星の数はこれまでの矛盾の解消に役立つ。また それは、post-AGB 通過時間、Mf/Mi 比も異なり、星震学や分光学から予想され てきた低質量 CSPNe 形成の理解にも役立つ。

Kamath, Wood, Nie (2016)
新しいタイプの星:ダスティで低光度の LMC post-RGB 星
 マゼラン雲中に低光度のダスティな進化した星の種族を発見した。それらは ダスティな post-AGBs と似た SEDs を持つ。しかし、光度は低い。 それらは連星相互作用の結果 AGB の手前 RGB 段階でそこから離れた星ではな いか?  それらは系列 E の RGB 変光星と関係がある。それらの数は予想される post-ERGB 星の誕生率とオーダーで合う。観測の完全性と post-RGB 進化速度 の不定性が問題である。マージャーの議論もある。

Vickers, Frew, Parker, Bojicic (2015)
銀河系 post-AGB 星への新しい光ー1.第1距離カタログ
 トルンカタログ中の 208 "likely" と 87 "possible" post-AGB 天体に一様 な方法で距離を与えた。光度を仮定して総フラックスから距離を決定した。 薄い銀河円盤天体には 3500 - 12000 Lo の間に3区間を設けた。バルジ天体 には 4000 Lo, 熱い円盤とハローには 1700 Lo とした。  現在のトルンカタログに収められていない 54 星雲に対しても上述の方法を 適用して距離を決定した。

Wolak, Szymczak, Bartkiewicz, Gerald (2014)
前駆惑星状星雲 IRAS 18276-1431 = OH 17.7-2.0 の激しいメーザーバースト
 前駆惑星状星雲 IRAS18276-1431 (OH17.702.0) のOH メーザーモニター観測 から、単調な減衰に加えて数回のフレアが観測された。  フレアの放射は強く偏光しており、外層の切り離された稠密な領域から出て いた。双極流により外層に掘りぬかれた双極ローブの軸に沿って 磁場が揃っているらしい。

Rosenfield et al 2012
PHAT I. M 31 バルジ内側での明るい UV 星
 PHAT の過程で M31 バルジ 12'x6'.5 領域を F275W と F336W で撮った。 そこから約 4000 の古くて UV で明るい星を見つけた。パドヴァ進化経路と の比較からそれらを post-AGB, post-Early AGB, AGB-manque 星に分類した。 後2者はまとめて hot post horizntal branch = HP-HB 星と呼ばれる。 それらは AGB 進化には外層質量が不足した星で、RGB 星のマスロスが高い時 の高いヘリウムとα元素量を示すと思われる。  データからバルジの UV で明るい星は高温の極端水平枝星であるという 主張が支持される。しかし、UV で明るい星種族はバルジの UV 光の主役 ではない。というのは我々が検出したのは極端水平枝星の後継者のみであ るからである。計算に依れば、中心バルジ主系列星の数パーセントだけが HP-HB 期を経ることができる。そしてこの割合は中心距離に従って低下 する。また、高温の UV で明るい星の表面密度は低質量 X-線連星と同じ 密度変化を示す。

Siodmiak, Szczerba, Borkowski 2011
銀河系 post-AGB 星の Torun カタログ第2リリース
 Torun catalogue の second release を紹介する。  M-型 post-AGB 星を "transition objects" と名付ける。

Ramos-Larios, Guerrero, Suarez, Miranda, Gomez (2009)
深く埋もれた post-AGBs, PNe の探索 I. 2MASS 同定された IRAS 候補
 2MASS, Spitzer GLIMPSE, MSX, IRAS を用い、ダストに覆われていると看做 される post-AGBs と PNe 候補 165 星の近赤外対応星を探した。また、DSS 赤画像からそれら近赤外同定天体を可視同定した。1 - 100 μm SED の性質 を2色図を使って解析した。その結果、 119/165 IRAS post-AGB, PNe の近赤 外同定に成功した。それらの座標が改善されたので 59/119 で可視同定が得ら れた。こうして可視で見えない post-AGB, PNe の数を 60 にまで減らした。 80/119 のみが、 2MASS PSC で紛れない同定とされる。それらは、可視で見え るかどうかに従って、MIR, FIR カラーが同じでも J-バンドを入れた二色図 では分離することが分かった。

Schonberner (2008)
FG Sge, V605 Aql, Sakurai -- 事実とウソ
 TP期=10万年、post-AGB 期=1万年なので、post-AGB 期間中に熱パルス が起きる確率は 0.1 である。この理屈はめちゃくちゃな気がするが。post-AGB 熱パルスボーンアゲイン巨星を生み出す。LTP(Hリッチ星) と VLTP(Hフリー 星) の二種類がある。周囲星雲の診断から熱パルス前の様子を診断できるが、 電離平衡の扱いに注意。

Szczerba, Siodmiak, Stasinska, Borkowski (2007)
post-AGB およびそれに関連する天体の「進化する」カタログ
 1 October 2006 までに NASA/ADS に載った post-AGB 候補星の文献サーチ を行った。それらを "very likely", "possible", "disqualified" の3群 に分けた。 "very likely" はさらにいくつかのクラスに分けた。  Galactic post-AGBs の「進化する」、オンラインカタログを作成した。 名前は "Torun catalogue of Galactic post-AGB and related objects" とする。現在の版では、326 very likely, 107 possible, 64 disqualified 天体を含む。very likely 天体に対しては、可視赤外測光、赤外分光、スペク トル型を与える。

Siodmiak, Meixner, Ueta, Sugerman, van de Steen, Szczerba (2007)
post-AGB 天体の形態とカラーの関連
  post-AGBs の19 ACS/HST 画像にアーカイブからの未公開 14 画像を加えて 調べた。更に過去に出版された 33 画像、主に Ueta et al 2000, も加えた。  星雲が検出された天体の形は Ueta, Meixner, Bobrowsky (2000) が提唱した "SOLE" と "DUPLEX" の二つに分かれる。(J-K)-(K-25)二色図は 画像が得られない場合の分類に有用である。

Suarez, Garcia-Lario, Manchado, Manteiga, Ulla, Pottasch (2006)
IRAS PSC からの post-AGBs と PNe のスペクトルアトラス
 PNe と似た FIR カラーを持つ星の可視スペクトルを調べた。計画スタート は 15 年前で、当時サンプルの大部分は未同定であった。可視スペクトルと ファインディングチャート、それに改良された位置座標を 253 IRAS 天体に与 える。  post-AGBs = 103, 21 = transition sources, 36 = PNe, 38 YSOs, 5 = peculiar stars, 2 = Seufert gals. 49 = 可視天体無しで、post-AGBs では ないか。それらの統計的性質を調べた。

De Ruyter, Van Winckel, Maas, Lloyd-WEvans, Waters, Dejonghe (2006)
post-AGBs 周りのケプラー円盤
 post-AGBs の SEDS は、星周ダストが星の周りのケプラー円盤に蓄積されてい る、と考えると最も自然に説明される。サンプルの選択は既知post-AGB 連星で、 測光データがSED を得るのに十分あるという基準に基づいた。サンプル数は 51 で そのうち 20 は RV Taus である。 SEDsは全て似通っていて、中心星温度に無関係にサブミリから立ち上がる。  その上、長波長側の SED 勾配は mm サイズダストの存在を示唆する。 全システムで重力に拘束されたダスト円盤が存在する。円盤は膨れ上がり、YSO 円盤と似た大きな中心星からの開口角を持つ。我々はこの円盤を連星 post-AGBs の標しと考える。確認には長期にわたる視線速度観測が必要である。
(SED フィットの際 J で観測=モデルと したため、総フラックスが一致していない。 )
F(FIR) が大きいのに E(B-V) が小さいのは円盤幾何学形状の効果だろう。

Lewis (2000)
|b| ≥ 10° OH/IR 星シェルの一過性について I. 基本統計
 アレシボから見える |b| ≥ 10°, |l| < 10° 範囲には F25 ≥ 2 Jy の IRAS カラーで選択され た OH/IR 星が 62 個存在する。そこには 4 つの O-リッチ PPNs も含まれる。その一つ 18095+2704 の膨張年齢 103 年を使って、高銀緯星の 1612 MHz 放射期間を平均 1670 年と較正できた。サンプル内の 118 OH/IR 疑似 天体=OH/IR 星と同じ星周カラーを持つが 1612 MHz メーザーナシ、に対応する OH メーザーナシの PPN はしかし、一つしか存在しない。  もし OH/IR 疑似天体が独立に PPN 期を通過するなら 8 ≒ 118 x (4/58) PPNs が想定されるのにである。したがって、疑似天体の大部 分は前駆 OH/IR 星である可能性が高い。超星風期の長さは赤外天体全体の数と PPN の数とから 103 x (58+117)/(4+1) = 3605 ≒ 3700 年である。 一方、反銀河中心方向では OH/IR 星と疑似天体に対応すべき O-リッチ PPN が 一つもないという事実に、二つの炭素星と 4 つの C-リッチ PPN があることを 合わせて考えると、反中心方向の OH/IR 星の大部分は AGB 期を C-リッチ PPN として離れることが強く示唆される。これは高銀緯星の超星風は循環的であること を直接に意味する。(全然意味が通らない!)

Su, Volk, Kwok (2000)
PNNs 非対称シェルの 2-D 輻射輸送モデル
 3つの PPNs の HST 画像と SEDS を 2-D 輻射輸送モデルでフィットした。 これら天体の幾何学的配置とマスロスの性質も導いた。

Ueta, Meixner, Bobrowsky (2000)
PPNe の HST 画像サーベイ:反射星雲の二つのタイプ
 HST を用い、 PPN 候補天体の可視撮像サーベイを行った。21/27 天体で星雲を検出した。検出された全ての星雲は細長かった。星雲の形態は中 心星の隠され度に依り、二分される。"SOLE" = star obvious low-level- elongated タイプは淡く広がった星雲中に中心星が埋もれている。  "DUPLEX" = dust-prominent longitudinally extedded タイプは双極構造を 持ち、中心星は完全に、または不完全にダスト雲に隠されている。 これらの PPNe に現れる軸対称性は PNe で見出される軸対称性の前駆現象 と考えられる。我々は PPNe の軸対称性は赤道方向に強められた超星風により 産み出されると考える。その結果生じる赤道/極密度比の違いによる光学的深 さの差が PPN 形態の二分化の原因であろう。この二分化は見かけではなく、 実際の形状の違いであり、高質量 AGB 星からは DUPLEX PPNe が生まれ易い。
SOLE タイプで見える 二つ目玉が DUPLEX タイプで見えないのは何故か?


Meixner, Ueta, Dayal, Hora, Fazio, Hrivnak, Hoffmann, Deutsch (1999)
PPN 候補の中間赤外撮像サーベイ
 MIRAC2 中間赤外カメラを IRTF と UKIRT につけて、PPN 候補星 66個 の撮像サーベイを行った。撮像は δλ/λ = 0.1 の狭帯 フィルターで行い、空間分解能は 1" である。17/66 個が空間分解された。 48/66 個は分解されなかった。1/66 個は検出されなかった。 幾つかの天体では、可視と赤外の位置の一致を確認した。  サンプルは PPN 以外に extreme AGB 星、若い PNe, 超巨星、 LBV 星を含む。 T = 150 K 程度に冷たく赤外で明るい天体のダストシェルは 分解しやすいことが分かった。空間分解した 17 天体のうち 11 天体は 広がっており、その中間赤外画像から二つの形態クラス=コア/楕円体と 円環(トロイダル)に分かれる。コア/楕円体クラスは未分解のコアと その周りに薄く広がる低輝度星雲とから成る。円環(トロイダル)クラスは 両端が明るく、赤道面上の密度超過を示唆する。コア/楕円体型の方が 円環型よりもシェルの光学的厚みは大きい。

Su, Volk, Kwok, Hrivnak (1998)
双極型 PPN IRAS 17441-2411 の HST V バンド撮像
 双極型 PPN IRAS 17441-2411 (Silkworm Nebula) を HST で観測した。2 次元輻射輸送モデルで SED と V-画像をフィットした結果、星周風と星周「円盤」 の性質が導かれた。  同じような双極構造を持っていても、天球面との傾きで単なる星に見える場 合があるので、双極構造は観測されているより実際には多いのではないか?

Kwok, Su, Hrivnak (1998)
双極型 PPN IRAS 17150-3224 の HST V バンド撮像
 双極型原始惑星状星雲 IRAS 17250-3224 の WFPC3/HST 撮像を行った。二つ の反射耳たぶ状星雲の上に同心形状で重なる複数弧状構造を発見した。外見は AFDL 2688 と似る。AGB 期には繰り返しマスロスが一般的な現象ではないか?  弧の形が円弧に近いのは AGB マスロスが球対称であり、双極構造が AGB 期 が終了した後に発達したことを予想させる。

Sahai + 15 (1998b)
WFPC2/HST による CRL 2688 の撮像:GB^Post-AGB マスロス史
 CRL 2688 の F606W/WFPC2/HST 撮像を行った。2対の「サーチライトビーム 」がダスト繭から上下に伸びているのを見つけた。ビームは想定される中心星 位置で交差している。アークの形は現行モデルで想定される極方向に伸びた形 でなく、ほぼ円形であった。
画像から過去 13000 年のマスロス史が導き出せる。表面輝度は r-3.7 で落ちて行く。これはマスロス率が r-0.7 で 低下することを意味する。  マスロスには 150 - 450 年間隔でファクター2の 盛り上がりが 75 - 200 年続く。「サーチライトビーム」の縁と、星雲内側 1".5 < r < 6" の奇妙な構造を分解できた。今回のデータは新しい モデルを必要とする。ビームはダスト繭内にある一対の非直線状の環状の穴を 通って、放射される。穴は 200 年以内に高速流により作られ、その穴を抜け た高速流が周囲の濃い AGB 星風と相互作用して内側星雲を作った。コクーンの ダストは 0.6 &mu:m で広がった星雲内のダストよりずっと大きい。

Sahai, Hines, Kastner, Weintraub, Trauger, Rieke, Thompson, Schneider (1998a)
CRL 2688: NICMOS/HST による NIR 及び H2 輝線撮像
 CRL 2688 の NICMOS/HST NIR, H2, 2 μm 偏光画像から 同心円状のアーク群と二対の「サーチライトビーム」が検出された。  画像には鋭く縁取られた二つの紡錘状の空洞が極軸上に並んで見える。 H2 2.122 μm 輝線画像はそれらの空洞を作り出す高速流とその 外側の低速流との間の鋭い境界面を分解した。ダークレーン内に赤い天体を 見出した。偏光画像はこの天体が星雲を照らす post-AFGB でなく、 伴星であることを示す。

Garcia-Lario, Manchado, Pych, Pottasch (1997)
PN 的カラーを持つ IRAS 天体の NIR 測光 III.
 その多くがこれまで未同定であり、 IRAS カラーが既知 PNe と似る 225 IRAS 天体の NIR 測光を行った。それらの中に PNe は少なかった。多くは 遷移段階にある天体と判定された。  NIR 観測のみでサンプル星の性質を決定するのは難しい。しかし、可視光で 隠されている天体を扱うには有用である。

Kwok, Hvrivnak, Zhang, Langill (1996)
二つの双極型 PPN の高分解能撮像
 二つの双極型 PPNs IRAS 17441-2411 と IRAS 17150-3224 のサブ秒分解能 V, I 画像を撮った。どちらも明らかな 双極型形状を示す。V-I カラー画像から星周円盤の存在がはっきりと見える。  双極型の突起は、極方向開口部に散乱された星の光であろう。これは双極形 状が PN 進化早期、光電離以前にすら、に発達することを示す。

Oudmaijer (1996)
熱い post-AGB 星の探索
 AGB を離れてから時間が経った熱い popst-AGB 星を IRAS PSC で探した。 このため 12 μm では検出されない星を選んだ。こうして得た 15 星中 12 星は B 型である。  残る3天体は純粋の post-AGB 星らしい。それらの SED をフィットして AGB を離れたのは 1000 年昔であることが判った。
(このフィットは間違い。 )
その一つ SAO243756 は 過去 20 年の間に輝線が現れたらしい。

Hrivnak, Kwok, Geballel (1994)
PPNs の近赤外分光
 16 PPNs の H, K 低分散分光を行った。 4 つは L でも。 H バンドでは大部分が水素ブラケット n = 10-4 から n = 2--4 系列吸収線を 示す。K では CO Δv = 2 吸収バンドが v = 6-4 の高さまで見える。  3天体では CO が輝線で見えた。22272+5435 の CO スペクトルは3か月の 間に輝線から吸収線に転じた。CO 輝線は最近のマスロスによる衝突励起である らしい。弱い 3.3 μm 放射帯が一つの天体で観測された。

Vassiliadis, Wood (1994)
低-, 中間-質量星の post-AGB 進化
 主系列から AGB 期を経て、惑星状星雲と白色矮星に至るまでの進化の中で post-AGB 進化を示す。質量放出は惑星状星雲中心星の質量放出の観測結果の 文献値および輻射圧駆動の星風モデルとから導いた質量放出の経験式を用いた。 初期質量 0.89, 0.95, 1.0, 1.5, 2.0, 2.5, 3.5, 5.0 Mo、メタル量 0.016, 0.008, 0.004, 0.001 に対するモデル計算を行った。post-AGB 進化系列は 惑星状星雲中心星が AGB からいつ離れるかによって、二つのはっきりした グループに分かれる。
 第1グループはヘリウムシェル燃焼が支配的な時、第2グループは水素シェル 燃焼が支配的な時である。計算した27進化系列中、 17 系列は水素燃焼期、 10 はヘリウム燃焼期に AGB から離れた。低質量モデルはヘリウム燃焼期に離 れることが多く、それはそれ以前の AGB 進化でヘリウムシェルフラッシュ直前 に質量放出が最大となるからである。計算結果を LMC の観測データと較べた。 これ等の計算は惑星状星雲の光度関数を決めるのに有用である。また、楕円星 雲の紫外超過の研究にも役立つ。

Latter, Hora, Kelly, Deutsch, Maloney (1993)
AFGL 2688 の近赤外撮像研究
 AFGL 2688 の I,J, H, K 画像を撮った。北ローブは滑らかでなくむくむく している。I-バンド画像にはマスロスが周期的増減を繰り返す証拠が見えた。 さらに、水素分子 2.12 μm 狭帯バンドとその脇の連続光バンドの画像も撮 った。ローブからの水素分子放射が見つかった。K-画像には赤道帯からの R = 7 1016 cm のリングまたは円環状の放射が検出された。  双極軸は天空面に対し i = 5° 傾いている。 散乱光を産むダスト密度は緯度に対し急激に減少し、極方向にはほとんど存在 しない。光学的深さが波長によりかわらない。これは AFGL 2688 ダストが星間 ダストと異なる性質を持つ事を示す。偏光研究からは、散乱ダストが大きな グラファイトと推定される。

Oudmaijer, Waters, Pottasch (1993)
ゆっくり進化する post-AGB 星
 AGB から PN への遷移期にあると考えられる多数の F-型超巨星を調べた。  それらが post-AGBs であると仮定すると、HR 図上の左方向への進化が遅い。 シェル拡大と温度低下の影響で、中心星が高温化した時には IRAS 検出限界 を下回ってしまうので、初期 post-AGB しか見つからないことを示す。

Crabtree, Rogers (1993)
可視ハローとして観測される星周外層
 深く隠された赤色巨星の星周層からの可視散乱光を検出した。 炭素星 CRL 3116 の 表面輝度プロファイルを非等方散乱も考慮した輻射輸達モデルと比べた。 星周層内のダスト分布を、光学的深さ、ダストサイズを決めた。  これらの結果は赤外放射スペクトルと整合する。また、 CRL 2688 も扱う。 これには同心状のシェルが付いている。これらのシェルは AGB 期の星周層の 残骸である。

Hu, Slijkhuis, de Jong, Jiang (1993)
IRAS から選んだ PPN 候補星の体系的研究
 IRAS から選んだ 62 PPN 候補星を調べた。南天 42 星には可視、近 赤外測光観測と可視分光観測を行った。  26/42 で可視同定に成功した。12/42 は可視で見えなかった。 4/42 は複数候補があった。18 天体の分光をおこなった。スペクトル型 は主に M, G, F であった。

Kwok (1993)
PPN
 ARAA での PPN レビュー

Oudmaijer,van der Veen, Waters, Trams, Waelkens, Engelsman (1992)
IRAS PSC の赤外超過を持つ SAO 星
 IRAS PSC で IR 超過のある SAO 星を探した。以前の探索と違い、IRAS [12]-[25]-[60] 全二色図を用いた。その結果、462 星が見つかった。その かなりは星周物質を伴う星である。多くの Be 星が含まれることが判った。 多数が連星である。特性温度、赤外超過を計算し、それらとスペクトル型との 関係を調べた。

Trams, Waters, Lamers, Waelkens, Geballe, The (1991)
post-AGB 星: 選択と赤外の特徴
 既知の2post-AGBs HR 4049 と HD 213985 の性質に基づき、類似の星を 探した。それらは全て 赤外超過を持つpost-AGBs であると考えられる。その 超過はT = 1000 K の熱いダスト、300 K の冷たいダスト、又はそれらの混合 に起因する。  熱いダストを持つ星は全て、冷たいダストの星よりも大きなマスロスを 示す。これは AGB 後も 10-7 Mo/yr 程度の大きなマスロスが 続いていることを示唆する。

Garcia-Lario, Manchado, Pottasch, Suso, Olling (1990)
PN 的カラーを持つ IRAS 天体の NIR 測光 II.
 IRAS カラーが既知 PNe と似る 38 IRAS 天体の J, H, K, L, M 測光を行った。  それらを SED で分類した。多くは AGB - post-AGB - PPN - PN の進化の途 中にあるようだ。

Lewis, Eder, Terzian (1990)
IRAS カラーで選択した天体の OH メーザー源 II.
 アレシボでカラーで選んだ 1294 星の 1612 MHz 観測を行い、 86 星で検出、 内新発見が 79, という結果を得た。Edler et al 1988 と合わせると、 -0.7 ≤ (25-12) ≤ 0.25, 0 ≤ δ ≤ 37 (そして多分S25 > 2 Jy)でのバイアスサー ベイが行われた。検出率は (25-12) ≤ -0.5 で大きく低下した。検出天体は 全て F25 ≥ 2 Jy であった。  アレシボサーベイは高銀緯に及ぶので、小質量星の OH メーザーの特徴が 研究可能となった。我々は多くの分離または「化石」シェルを見つけた。 それらの割合から、低質量星では「超星風」時期は 1000 年で終わることが分かった。
低質量星は Ve-(12-25) 図上で系列をなすという発見。 低質量星は光学的に薄いシェルの低速マスロスからカラーと共にVe上昇。 カラーに上限。高質量星は赤い枝が伸びる。OHで新しいマスロス進化を提唱 している。話が分かりにくいのが難。

van der Veen, Habing, Geballe (1989b)
AGB から PN への遷移天体:可視、赤外の新しい観測
 AGB から PN への遷移期にある 42 IRAS 点源の可視、赤外観測結果を示す。 それらの IRAS カラーは質量放出 AGB 星と似ているが、λ < 10 μm の SED は全然似ていない。SED により天体を 5 グループに分けた。それらは AGB から PNe への進化経路ではなく、母星質量、 C/O 比、現在の放出率 による違いである。
 (J-H, H-K) 図上の位置からは大量の高温ダストの存在が推定される。モデル (Bedijn 1987) と較べてもそれは確認される。これらの天体は現在も質量放出 を続けており、 1000 年より近い過去に AGB から離れた。  簡単なモデルから、星温度、シェル内側半径、力学年齢を導いた。年齢と星 温度をモデル(Shonberner 1988)と較べ大体合うことが分かった。しかし、 Reimers のマスロス式ではマスロス率は時間と共に減少していくはずだが、観 測は一定または逆に増加傾向を示す。これら約 10-7 Mo/yr の 大きさは AGB での 10-4 Mo/yr に比べるとずっと低いが、それは AGB から PN への変換時期を決定するので重要である。post-AGB マスロス率 は 10-8 - 10-4 Mo/yr であった。

Hrivnak, Kwok, Volk (1989)
赤外超過をもつ、いくつかの G-, F-型超巨星的天体の研究
 赤外超過が大きな F, G 型超巨星 8 個の地上観測を行った。それと IRAS データを組み合わせると SED が双極型であることが分かった。それらの可視 と赤外の放射エネルギーはほぼ等しい。赤外光を放つ冷たいダストシェルは それ以前に放出された残骸を示す。  それらは IRAS 18095+2704 と似た天体で、post-AGB 期にある中間質量星と 考えられる。0.4 - 100 μm SED のモデルフィットから、それらの星は 過去 1000 年以内に AGB を離れたと考えられる。

Manchado, Pottasch, Garcia-Lario, Estyeban, Mampaso (1989)
PN 的カラーを持つ IRAS 天体の NIR 測光
 PNe と似た FIR カラーを持つ未同定 IRAS 源 38 個の NIR 測光観測を行 った。NIR, IRAS 測光および LRS からそれらの性質を調べた。  post-AGB 候補が6星、ミラまたは OH/IRs が5個、PN 候補が15個で、 残り 12 天体は減光が大きい。PPNe か YSOs ではないか。

Volk, Kwok (1989)
PPNe の進化
 マスロス停止後のスペクトル変化をモデル計算した。このモデルをIRAS LRS と比較して、PPN の候補を探し、IRAS 10216-5916, 18095+2704, 2004+2955 が新しく見つかった。PPN 候補の赤外カラーを用い, PPNs のカラー領域を定め、 この領域内の天体を約 100 個見つけた、内 20 星は可視で明るい。

Lewis (1989)
星周メーザーの時間系列:PPN を同定する
 ゆっくり上昇するマスロス率の下で星周シェルは緩やかに進化する。シェル が厚くなるにつれ、始めに SiO, それから 水、OH メインライン、最後に 1612 MHz ラインが加わる。進化が続くと、メーザーが消えて行く。最初はメ インラインである。その後に水が続き、ついに SiO が消える。SiO メーザーは 定常マスロスが停止するやいなや消失する。その後、メインラインが再出現し、 分離シェル中でシェルの拡大希薄化により OH メーザーがなくなるまで、 1612 に対する相対強度を強めて行く。  メインラインのこの振る舞いは、それらがシェル内で最初に出現して以来、 「連続的に存在する」という性質と合致する。通常のタイプII OH/IR 星では 1612 MHz 放射を産む、ぶ厚いシェル内の輻射場がメインラインの生産を抑制 する。原理的には O-リッチ PPNs は水と SiO メーザーのない星でメーンライ ンが存在することで簡単に発見できる。

Pottasch, Bignell, Olling, Zijlstra (1988)
銀河系中心方向の惑星状星雲
 PNe を探す方法= IRAS カラー+電波連続波 を述べる。この方法を |l| < 15 領域に適用した。新発見 36 PNe を含む結果の第一報告=天体の特性である。  新発見 PNe は一般的には既知星雲と同じであるが、発見方法により若い天体 にバイアスが掛かっている。新天体のかなりが OH/IRs と PNe の中間段階に ある。

Hrivnak, Kwok, Volk (1988)
高銀緯 F-型超巨星 IRAS 18095+2704: PPN
 高銀緯 F 型超巨星 IRAS 18095+2704 に大きな FIR 超過を発見した。 地上観測によりこの星が V = 10.4 の F3 Ib 星であり、光度と視線速度が変化 することが分かった。  Volk, Kwok の post-AGB 進化モデルと比べると、有望な PPN 候補である。 λ = 0.35 - 100 μm モデルフィットから、シェル内径=400 au, OH メーザーから膨張速度 = 7 km/s なので、 この星は 350 年前に AGB から離れ、AGB 最終期にはマスロス率 3 10-5 Mo/yr と分かった。

van der Veen, Habing (1988)
恒星晩期進化を研究する道具としての IRAS 二色図
 IRAS 二色図 を用いて DGE-star = ダストガスエンベロープ星を調べた。 O-リッチ星は二色図上で系列を成し、それは AGB 頂点においてマスロス 率を増加させながら進化する経路を示すと解釈される。ただ、DGE 星全体は ミラ型星、OH/IR 星サンプルより広い範囲に散らばる。OH/IR 星の最後には 変光が小さく、[25-60] が大きい星が存在する。それらは PNe 前駆天体だ ろう。
 熱パルスがマスロスを一時的に抑制し、二色図上経路に弧状の遠足が重なる と考えると、縦の広がりが説明できる。つまり、マスロスに不連続性が存在 することが示された。炭素星系列が高いのは 40 -80 μm 放射率の差が原因 である。

Pottasch, Parthasathy (1988)
明るい F-, G-型超巨星の FIR 超過 
 10の明るい F - G 型星にIRAS 超過が見つかった。それらは星の周りのダ ストからの遠赤外放射光である。遠赤外光分布、遠赤外光度、ダスト質量は進 化した PNs と似る。  HD 187885 と HD 179821 の周りのダスト質量は 10-2 Mo 程度で ある。これら 10 星はおそらく、 AGB-post-AGB 進化段階にあるのであろう。

Volk, Kwok (1988)
AGB 星のスペクトル進化
 時間依存輻射輸送方程式により、 AGB 星の赤外スペクトルの進化を追った。 簡単なマスロス式を使い、中間質量星の AGB 進化を計算した。結果を IRAS の 測光、分光データと比較した。  広範なデータを用い、マスロス式の妥当性を調べた。現在のマスロス式の結 果から、10 μm 吸収帯を示す AGB 星は Mms > 3 Mo であることが分かった。

Pottasch, Bignelli, Zijlstra (1987)
OH メーザーを放射する二つの若い惑星状星雲 ?
 OH/IR 星からの電波連続波の検出を試みた。OH 0.9+1.3 とOH 349.2-0.2 で検出に成功した。 この二つの 天体は可視同定がないが強い赤外源である。 この結果は OH/IR 星と PN との遷移天体の数を 3 に増やした。  どちらもバルジに属し、中心星は平均より大きく、より低温で半径が大きい。 その一つはこれまで知られたPNsで最低温度と最大半径を有する。この星は 現在急速に高温化しているらしい。

Habing, van der Veen, Geballe (1987)
非変光 OH/IR 星/ 非常に若い惑星状星雲 ?
 近赤外観測から 「変光」OH/IR 星は赤色巨星に近いが、 「非変光」OH/IR 星は赤色巨星よりは惑星状星雲に近いのでは ないかという予備的な結果を得た。  我々は「変光」OH/IR 星は進化して「非変光」OH/IR 星となると考える。 この転移は非常に短期間で起こる。

Parthasarathy, Pottasch (1986)
HD 161796 とその類似星の FIR 超過 /b>
 高銀緯 F-超巨星 HD 161796 及び類似天体が強い FIR 超過を示す。 それは星の周りに大量のダストが存在するからである。 HD 161796 の場合、 ダスト量は 10-3 - 10-2 Mo 程度である。  この結果は、HD 161796 及び類似の高銀緯 F-超巨星 天体が過去に強い マスロスを経験したことを示唆する。その原因は AGB 期の超星風であろう。

Wood, Faulkner (1986)
惑星状星雲中心核の静水平衡進化系列
 惑星状星雲中心星=PNNの進化を計算した。核の性質を次の3つの関数として 調べた:(1)核質量=0.60, 0.70, 0.76, 0.89 Mo. (2) AGB を離れる時の ヘリウムシェルフラッシュサイクルにおける位相 ψ = 等間隔で4種。(3) マスロス。AGB 核質量と PNN 質量には臨界値があり、それ以上では輻射圧が 高水素外層を全て吹き飛ばしてしまう。 Mc > 0.86 Mo となる AGB 星は 高ヘリウム核を持つ惑星状星雲を形成する。そのような中心核はヘリウムを燃 やしながら、PN 期を過ごし、その後冷えて non-DA 白色矮星となる。輻射圧 メカニズムはマゼラン雲の最近のサーベイで明らかになった高光度 AGB 星の 不足を説明する助けになるかも知れない。  それより質量が小さい星で、フラッシュ間期に AGB を離れる場合には、AGB から 惑星状星雲領域に移行するまでの遷移時間は、フラッシュサイクルのどの位相で AGBから離れるかで大きく変動する。 AGB 質量放出は星がフラッシュ後の光度 極小になった時に停止するが、その後の星雲の post-AGB 膨張期の大きな割合は この遷移期間で占められる。  我々の進化計算の結果と観測データとの比較を行った。最近の惑星状星雲中心核 の光度評価には系統的にファクター3程度の過小評価が見られるという強い証拠 がある。惑星状星雲の中心核質量は 0.6 Mo - 0.8 Mo 以上に亘る。惑星状星雲は 主にヘリウムシェルフラッシュの際に放出されるという仮説に対して、観測からは 何とも言えない。

Odenwald (1986)
G-型星における赤外超過の IRAS サーベイ
 IRAS PSC を用いて G-型星の赤外超過を調べた。こうして得た 3803 IRAS 天体中で 28 天体に λ ≥ 25 μm の超過を見出した。赤外超過の ある星の大部分は超巨星であった。  その一つ、IRAS 11059-7721 は G-型の主系列星でその光学的深さはベガの 星周層の 20,000 倍である。

Herman, Habing (1985b)
晩期型星 OH メーザーのシェルサイズと時間変化
 OH メーザーの変化=周期と振幅を測るための観測結果を報告する。可視周期 400 日の通常のミラ型変光星は同じ電波周期を示した。しかし、可視非同定の OH/IR 星の大部分は 2000 日を超える  OH/IR 星のかなり 25 % は小振幅か、全く変光を示さない。位相差から OH シェルの大きさが導かれる。それはミラ型星の場合 8 1015 cm, OH/IR 星では 5 1016 cm 程度である。

Le Bertre, Epchtein, Nguyen-Q-Rieu (1984)
IRAS 1827-145P01: 双極流星雲か?
 IRAS 1827-145P01 =OH 17.7-2.0 の JHKLMN 測光の結果を報告する。 我々の観測と IRAS を合わせた 1 - 100 μm SED は 球対称なダストシェルでは説明が難しい。  この天体の赤外スペクトルは双極流星雲のそれと似る。この類似性と OH 放射 データとから、IRAS 1827-145P01 は OH/IR-双極星雲をエッジオンで見たものと 考える。

Herman, Isaacman, Sargent, Habing (1984)
OH/IR 星の 赤外観測
 λ = 3.8 - 20 μm での 8 バンドでの OH/IR 星測光を報告する。 他の観測結果も足して、これら非常に長周期の変光星光度を決めた。 10,000 Lo を越す星の割合は小さい。多くの OH/IR 星は可視ミラ型星と同じ くらいの光度を有する。  9.7 μm シリケイト帯の深さ、赤外カラー温度、マスロス率は OH メーザー強度の指標となる。いくつかの天体は通常の OH/IR 星と非常に 異なる特徴を持つ。それらは変光せず、近傍にある非常に大きなマスロス率 を持つ星らしい。

Olnon, Baud, Habing, de Jong, Harris, Pottasch (1984)
OH/IR 星の IRAS 観測
 始め、OH メーザーで検出された星 40 個の IRAS 結果を調べた。いくつか の星では地上観測で同定されたものに比べスペクトルが非常に赤い。  2色図上のプロットは古典的ミラ型星から非常に赤い OH/IR 星までの系列を 示している。しかし、最も赤い星はちょっと様子が異なる。それらの脈動は 非常に弱いか、全く脈動しない。それらは AGB の最後まで行き着いたのではないか。

Seaquist, Davis (1983)
Vy 2-2 の VLA 連続波及び OH ライン観測
 連続電波 1.465, 4.885, 14.965 GHz と OH ライン 1.612 GHz で Vy 2-2 の VLA 観測を行った。連続光の観測結果をモデルフィットした結果、熱電波 は比較的薄い電離ガスの球殻、半径 0".2, Te = 1.4 104 K, ne > 106 cm-3 から来ることが分かった。  OH ラインはシェルの縁に重なって見える。これらの観測を合わせると、電離は 中心星を囲む分子雲の内側の縁に位置する、薄い電離限界シェルで起きていると 考えられる。中性性ガス雲内のダストが IR 放射の原因であろう。Vy 2-2 は まだ電離が不完全な若い PN で、電波放射の著しい進化が今後期待できる。

Schonberner (1983)
恒星進化の最終期 II. マスロスとAGB から高温残骸星への遷移
 0.8 Mo と 1.0 Mo AGB 星がマスロスの結果約1000 年で外層を失い、 0.565, 0.533, 0.546 Mo の残骸星になる転移を計算した。残骸星は HR-図を横切り、 惑星状星雲中心星となりえる。その時間変化速度から、惑星状星雲を形成する 下限は Mc = 0.55 Mo, L = 2500 Lo であることが分かった。  計算から、最終熱パルスが進化の途中のどこで起こるか、が重要であることが 分かった。最終熱パルスが FG Sge 型星の急速な進化に関与している可能性が 強い。また最終熱パルスは中心核の付近に高濃度ヘリウムを含むガスが存在す る惑星状星雲の原因かも知れない。

Davis, Seaquist, Purton (1979)
大きな赤外超過を持つ早期型輝線星からの OH メーザー
 アレシボ望遠鏡で、アレンのD-タイプ=赤外超過が大きな早期型輝線星 23 個の OH 1612, 1665, 1667 MHz 観測を行った。Vy 2-2 で新しく OH 検出に成功した。また、Fix, Mutel による M 1-92 における OH 検出を確認した。Vy 2-2 の 1612 MHz は 10 km/s 幅の単一ピークであった。これは OH が検出された最初の PN である。 双極型星雲 M 1-92 の強度は 1973 年以来 変化していない。その進化段階は不明である。

Humphreys, Ney 1974
連星中の赤外星
 特異 A-, F-型超巨星 HD 101584, 89 Her, υ Sgr, R CrB は大きな 赤外超過を持つ。HD 101584 (F2e Iap)では可視よりも赤外放射の方が強い。 我々は、赤外エネルギーが M-型超巨星から放射されるのであり、星周ダスト 起源ではないと考える。HD 101584 は振幅 20 km/s の視線速度の変動をも示 す。Hδ は P Cyg 型線輪郭を持ち、2年間の観測期間の間、 H, K 線の 視線速度は他の線に比べ 30 km/s マイナスであった。  89 Her (F2e Ia) と υ Sgr (cApe) は HD 101584 と似た赤外超過を持ち、やはり非常に 低温の星からの赤外光であろう。特異炭素星 R CrB (F8pep) は Cydnid 型赤外 星と似た赤外超過を示す。 R CrB は 3.5 μm で長周期変光星と似た変光を 示す。この星の可視域での乱れた振る舞いには赤外伴星が関与しているのかも 知れない。

Humphreys, Ney 1974
超巨星連星
 F-型超巨星 HD 101584 は赤外放射が可視放射の2倍あり、可視スペクトル に赤化が見られないので、赤外放射を星周ダストからの熱放射で説明する のは困難である。  F-型超巨星が伴星に M-型超巨星を持つのではないか? 89 Her, υ Sgr, R CrB も同様の超巨星連星なのであろう。

Bidelman 1951
Payne の c-star カタログに載った星のスペクトル分類
 ヤーキスシステムによるスペクトル型を 102 星に対し定めた。中に Payne が 1930 年に出したカタログに含まれる星もある。この論文では A3 - K5 の 星をを調べるが、変光星は除く。 36 星は光度クラス Ia, Ib に属するが、 他の 30 星は通常の巨星より暗く、金属線星が 9 星含まれる。 研究目的の一つは Wilson 1941 が述べている 「c-star カタログ中のかなり の星は実際には高光度ではない」を確認することであった。c-star の Payne c-star カタログ 1930 高銀緯に位置する星の大部分は低光度である。 102 星から 3 星が高銀緯高光度星として残されたが、理由は不明。



PNe

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著者 内容

Gonzalez-Santamaria, Manteiga, Manchado, Ulla, Dafonte (2020)
PNe の Gaia DR2 距離
 Gaia DR2 からの距離を使い、 PNe の性質を調べた。1571 PNe の距離が得 られた。それらはベイズ推定で決められた。  それらから精度の高いサンプルをえらび GAPN = Golden Astrometry PNe と 名付ける。GAPN リストを付す。

Suarez, Garcia-Lario, Manchado, Manteiga, Ulla, Pottasch (2006)
IRAS PSC からの post-AGBs と PNe のスペクトルアトラス
 PNe と似た FIR カラーを持つ星の可視スペクトルを調べた。計画スタート は 15 年前で、当時サンプルの大部分は未同定であった。可視スペクトルと ファインディングチャート、それに改良された位置座標を 253 IRAS 天体に与 える。  post-AGBs = 103, 21 = transition sources, 36 = PNe, 38 YSOs, 5 = peculiar stars, 2 = Seufert gals. 49 = 可視天体無しで、post-AGBs では ないか。それらの統計的性質を調べた。

Balick, Wilson, Hajian (2001)
NGC 6543 : キャッツアイ周りのリング
 NGC 6543 の HST アーカイブ画像を見ると、コア="Cat's Eye" 星雲の周りに 9つの同心リングが見える。このリングが周期的なマスロスの増加による球形の 泡であることはほぼ確かである。この泡は Hα, [OIII], [NII] のライン でのみ見える。コアと泡は同じ、温度、電離、化学組成を示す。距離を 1 kpc と 仮定し、膨張速度を 10 km/s とすると、Hα 表面輝度分布へのフィットか ら、1500 年毎に 0.01 Mo で厚さ 1000 AU の泡が噴き出たことがわかる。泡の 総量 0.1 Mo はコアの質量 0.05 Mo とほぼ等しい。  泡のライン巾 30 km/s は、泡が厚さを増しつつあり、≤ 数百年の間に合体 することを示す。泡の放出間隔は準周期的なシェルが数百年間隔で放出される という考えに合う。この間隔は熱パルス間隔 105 年とも脈動周期 とも合わない。規則的な放出パルスが PN 中心コアの形成に先立って起こるら しい。コア形成はマスロスのモードに大きな変化が起きるためであろう。
(Hα と [NII] 分離?)

Guerrero, Manchado (1999)
ハローを持つ多重シェル惑星状星雲の化学組成
 多重シェル惑星状星雲 NGC 2438 と NGC 5882 の画像とスペクトルを示す。 NGC 5882 中心領域の N/O と He/H はハローより僅かに高い。O 組成は星雲 内で一定である。公表されている M1-46, NGC 6543, NGC 6720, NGC 6751, NGC 6826, NGC 7662 のデータと合わせると、ハローに対し主星雲 で強い元素増加があるという証拠はなかった。第3ドレッジアップはなかった か、あったとしても弱い。  サンプル星雲は全てタイプII惑星状星雲の化学組成を示し、小質量星起源 を示唆する。また、主星雲を抜けた紫外光がハローのガをが電離している 証拠が得られた。

Sahai, Trauger (1998c)
低励起惑星状星雲の多極泡構造とジェット:PNs の構造と形態理解の新しい 枠組み
 WFPC2/HST を用いた, 若い PNs の Hα 撮像観測の第1結果を示す。 全ての画像に高度に非球対称な形状が見られた。その多くは、中心星の周りに ほぼ球対称に分布する複数の泡で特徴付けられる。幾つかの PNs では、双極 性光点や向きの揃った動径構造が見られ、ジェットの存在を示唆する。他の 天体では、短軸付近の明るい構造が円盤又は円環の存在を示唆する。  これらの構造の複雑さ、組織性、対称性から、PN の形状を決めるの は主に、AGB 末期または post-AGB 早期に起きる、高速で向きの揃ったガス流 又はジェットであり、現在広く信じられているような元々あった赤道方向の密 度超過ではないと我々は考える。これらの流出流は元来球対称であったAGB 星 周層内部を抉り、複雑な痕跡を作り出す。引き続いて、その抉られた内部に post-AGB 星からの高温で希薄な星風が現在みられる PN を作り出す。その形 状や構造はジェットの特性がどう時間変化するかに依存する。

Stanghellini, Pasquali (1995)
多重シェル PNe の 進化経路
 Schwarz,Corradi,Melnick1992 の Hα画像から選んだ楕円形多重シェル惑星 状星雲 24 個の立体プロットと等高線図を示す。楕円形多重シェル惑星状星雲 を分離ハローと接続ハローに分けた。観測とモデルを比較して調べた進化経路は、
(a) 熱パルス AGB 期に起きる数回の噴出。星風、超星風を含む。(b) post-AGB 冷却期のシェル放出。(c) 非対称シェル膨張である。解析の結果、
1.分離ハローと接続ハローとは固有性質も銀河系内分布も異なる。どうも異 なる進化経路を辿ってきたらしい。分離ハローは丸く、接続ハローはしばしば 著しい楕円形状を示す。
2.分離ハローは TP-AGB 期の繰り返しシェル放出、または "born again" 事象(中心星のスペクトル型から推定)から生まれた。
3.接続ハローは非球対称星風の動力学効果により形作られる。
4.接続/不規則ハローの一つと分離ハローの二つは元素組成から双極型星雲 の投影効果による。

Balick, Gonzalez, Frank, Jacoby (1992)
星風の古生物学 2. 淡いハローと惑星状星雲の質量放出の歴史
 惑星状星雲の周りに広がる、大きくて暗く、大抵は円形の、縁が光っている 構造はハローと呼ばれる。深い CCD 観測から新しいハローが見つかった。  ハローは早期マスロスを表すと考えられている。検出されたハローは全て縁 が明るく光っていて、その半径は 0.3 - 0.5 pc であった。また、その形は 中心にある惑星状星雲本体よりも丸い。全てのハローは Frank90 に述べられた 流体力学効果から予想される密度分布を持つ。

Frank, Balick, Reley (1990)
星風の古生物学: 惑星状星雲のシェルとハロー
 PNs のシェルとハローは通常、高速星風の発生以前のマスロスに付託されて いる。それらはまだ高速風による直接、間接の衝撃を受けていないので、密度 分布は r-2 の形と考えられている。このような訳で表面輝度 は θ-3 で落ちて行く。しかしながら、CCD表面輝度分布 を6 PNs で測った結果、θ-1 で落下する ことが分かった。  AGB 上昇期の希薄で「赤色巨星風」に、前惑星状星雲からの「超星風」 が作用するという「二星風」モデルを仮定して、流体力学シミュレイションを 行った。前方衝撃波と後方衝撃波のため密度の再分布が起き、θ-1 の輝度分布になるというのだが、よく分からなかった。

Pottasch, Bignell, Olling, Zijlstra (1988)
銀河系中心方向の惑星状星雲
 PNe を探す方法= IRAS カラー+電波連続波 を述べる。この方法を |l| < 15 領域に適用した。新発見 36 PNe を含む結果の第一報告=天体の特性である。  新発見 PNe は一般的には既知星雲と同じであるが、発見方法により若い天体 にバイアスが掛かっている。新天体のかなりが OH/IRs と PNe の中間段階に ある。

Pottasch, Bignelli, Zijlstra (1987)
OH メーザーを放射する二つの若い惑星状星雲 ?
 OH/IR 星からの電波連続波の検出を試みた。OH 0.9+1.3 とOH 349.2-0.2 で検出に成功した。 この二つの 天体は可視同定がないが強い赤外源である。 この結果は OH/IR 星と PN との遷移天体の数を 3 に増やした。  どちらもバルジに属し、中心星は平均より大きく、より低温で半径が大きい。 その一つはこれまで知られたPNsで最低温度と最大半径を有する。この星は 現在急速に高温化しているらしい。

Habing, van der Veen, Geballe (1987)
非変光 OH/IR 星/ 非常に若い惑星状星雲 ?
 近赤外観測から 「変光」OH/IR 星は赤色巨星に近いが、 「非変光」OH/IR 星は赤色巨星よりは惑星状星雲に近いのでは ないかという予備的な結果を得た。  我々は「変光」OH/IR 星は進化して「非変光」OH/IR 星となると考える。 この転移は非常に短期間で起こる。

Chu, Jacoby, Arendt (1987)
多重シェル惑星状星雲 I. 形態学と頻度
 我々の新しい CCD 画像、パロマースカイサーベイ、 ESO/SRC 南天スカイア トラス、その他文献中から採った 126 PN サンプルの中に多重シェル PNs を探 した。距離と星雲進化のバイアスを補正すると、PNs の多重シェル形成率は 0.5 となる。  知られている 41 の多重シェル PNs は二つに分類される。タイプI =暗く て分離したシェル、タイプII = 明るく、接続した外側シェルである。 この二つは、外径、外径/内径、外側輝度/内側輝度が違う。ただ、この二つは 完全に分離しているわけでもなく、4天体では外側がタイプI二重シェルで 内側がタイプII ダブルシェルである。Kaler が "giant halo nebulae" と呼 んだ星雲は大部分タイプI で、特に他のタイプI 多重シェル PNs と異なるわ けではなく、進化段階の差である。

Balick (1987)
惑星状星雲の進化 I. 構造と形態進化
 低、中間、高励起の放射線で撮った 51 PNs の CCD 画像アトラスを示す。 PNs の形を、円形、楕円形、双極型、蝶々形に分けた。高輝度 PNs 例えば、 NGC 2392, 3242, 6543, 6826, 7662, は高電離基層中に異常に低電離の 薄い含有域を持つ。  PN の形態は星風の相互作用という考えに合う。このアイデアと画像の一致 は PNs が現在も流体力学作用で形が作られる過程にあるという考えを支持す る。

Jewitt, Danielson, Kupferman (1986)
惑星状星雲の周りのハロー
 パロマー 1.5 m 鏡カセグレン焦点で 44 PNs の深い CCD Hα 撮像を 行った。分解能は 1" - 2", 視野は 400" である。観測した PN の 2/3 で ハローが撮れた。  電離硫黄電子密度測定から幾つかのハローの質量は主電離領域と同じくらい の質量を有することが分かった。

Seaquist, Davis (1983)
Vy 2-2 の VLA 連続波及び OH ライン観測
 連続電波 1.465, 4.885, 14.965 GHz と OH ライン 1.612 GHz で Vy 2-2 の VLA 観測を行った。連続光の観測結果をモデルフィットした結果、熱電波 は比較的薄い電離ガスの球殻、半径 0".2, Te = 1.4 104 K, ne > 106 cm-3 から来ることが分かった。  OH ラインはシェルの縁に重なって見える。これらの観測を合わせると、電離は 中心星を囲む分子雲の内側の縁に位置する、薄い電離限界シェルで起きていると 考えられる。中性性ガス雲内のダストが IR 放射の原因であろう。Vy 2-2 は まだ電離が不完全な若い PN で、電波放射の著しい進化が今後期待できる。

Schonberner (1983)
恒星進化の最終期 II. マスロスとAGB から高温残骸星への遷移
 0.8 Mo と 1.0 Mo AGB 星がマスロスの結果約1000 年で外層を失い、 0.565, 0.533, 0.546 Mo の残骸星になる転移を計算した。残骸星は HR-図を横切り、 惑星状星雲中心星となりえる。その時間変化速度から、惑星状星雲を形成する 下限は Mc = 0.55 Mo, L = 2500 Lo であることが分かった。  計算から、最終熱パルスが進化の途中のどこで起こるか、が重要であることが 分かった。最終熱パルスが FG Sge 型星の急速な進化に関与している可能性が 強い。また最終熱パルスは中心核の付近に高濃度ヘリウムを含むガスが存在す る惑星状星雲の原因かも知れない。

Davis, Seaquist, Purton (1979)
大きな赤外超過を持つ早期型輝線星からの OH メーザー
 アレシボ望遠鏡で、アレンのD-タイプ=赤外超過が大きな早期型輝線星 23 個の OH 1612, 1665, 1667 MHz 観測を行った。Vy 2-2 で新しく OH 検出に成功した。また、Fix, Mutel による M 1-92 における OH 検出を確認した。Vy 2-2 の 1612 MHz は 10 km/s 幅の単一ピークであった。これは OH が検出された最初の PN である。 双極型星雲 M 1-92 の強度は 1973 年以来 変化していない。その進化段階は不明である。



YSO

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著者 内容

Loup, Allen, Lancon, Oberto (2019)
赤外サーベイにおける OH/IR 星対 YSO 天体
 主な MIR, FIR サーベイ = IRAS, MSX, AKARI, WISE, GLIMPSE, Hi-Gal 中から OH/IRs 1500 星、メタノールメーザーが検出され YSOs 500 星を同定した。MIR 測光のみでは AGBs と YSOs を解きほごすことは不可能で、FIR 測光が不可欠である。  GLIMPSE 領域の過去の研究は AGB 星の割合を大分低く見積もっていたことを明らかに する。GLIMPSE で「固有カラーが赤い」天体の 70 % は YSOs ではなく、AGBs である。

Uchiyama, Ichikawa (2019)
MYSOs MIR 変光の WISE による発見
 Red MSX Source (RMS) サーベイから一様に選ばれた 800 MYSOs の WISE 変光を調べた。331/800 天体は 9 年間の W1, W2 データが得られた。変光 検査の結果、5つの MIR 変光を検出した。変光曲線は様々である。  (W1-W2) - W1 CMD 上で明るくなると青くなる傾向が分かった。これは減光 の変化か、降着率の変化のどちらかが原因であろう。 G335.9960-00.8532 は 周期 690 日の変光を示す。SED フィットからこの天体は進化した MYSO で ある。UCHIIR の極めて初期を見ているのかも知れない。

Teixeira, Kumar, Smith, Lucas, Morris, Borissova, Monteiro, Caratti o Garatti, Cntreras Pena, Froecrich, Gameiro (2019)
MYSOs の測光変光
 Extended Green Objects = EGOs の駆動源と推定される 270 天体と ATLASGAL (870μm) ピークに一致する MIPS 24 μm 448 天体を合わせ、718 天体の 変光をVVV を用いて調べた。IQR > > 0.05, ΔKs > 0.15 を変光 基準として、190 天体 = 139 EGOs + 51 non-EGOs = 111 周期変光 + 79 非周期変光=eruptive + dipper + fader short-term variable * long-term variable を検出した。  変光天体に対しロム・スカーグル ピリオドグラム解析と、SED の YSO モデ ルフィットを行い、変光源の一般的性質を導いた。変光星の 41 % は > 4 Mo で、> 8 Mo モデルに合致したのは 6 % しかなかった。高質量星は 大部分 non-EGOs で、 EGOs と比べ 2 倍の減光を被っている。HR-図上にプロ ットすると、低質量 EGO-型星は誕生推定線上に集まり、明るい non-EGOs は ZAMS 線近くに来る。一様なサンプル選択法を採用したために、大質量の塊り 内にある最大に明るい FIR 源や、赤外で暗い EGO 駆動源は扱われなかった。 EGOs は 139/153 の高変光率を示し、MYSOs の近赤外変光が降着現象と放出流 活動に関連することを示す。
(変光星内での議論で、非変光星との 比較が欲しい。 )

Contreras Pena, Lucas, Minniti, Kurtev, Stimson, Navarro Molinam Borrisova, Kumar, Thompson, Gledhill, Terzi, Froebrich, Caratti o Garatti (2017a)
 VVV が見出した噴火型変光原始星種族
 VVV 119 deg2 サーベイから ΔKs > 1 mag の大振幅 変光星を検出した。ほぼ全ては新発見であり、約 50 % は YSOs である。 これは銀河面内にあっては、 YSOs が高振幅変光星の中でもっともありふれた 種族であることを証明する。YSO と思われる天体の 2010 - 2014 年データを 用い、進化の若い段階、クラス I と平坦スペクトル天体、へ行くほど、 変光振幅が増大することを見出した。ただし、短時間 (< 25 d) 事象に 関してはこの傾向が逆転する。  変光曲線を分類し、 106 噴火型、45 ディッパー、 39 フェイダー、24 食 連星、 65 長周期変光星 (P > 100d)、162 短周期変光星を見出した。 噴火型とフェイダーは振幅が大きく、噴火型は SED が最も赤い。続く論文で、 噴火型の降着率が最大であることを示す。今回の観測で噴火型 YSOs の数が 5 倍に増えた。それらは既知の FUors や EXors より進化早期にあり、 クラス I での存在率はクラス II より一桁高い。噴火の継続期間は 1 - 4 年 で、 EXors と FUors の中間である。4 年間という期間中にはクラスI YSOs の 3 - 6 % で噴火が観測された。

Veneziani + 22, 2016
ハーシェル Hi-GAL サーベイによる星形成の解析 II.
銀河系長いバーの先端
 Hi-GAL による l = [19, 33], [340, 350], b = [-1, +1] サーベイからの、 長い銀河系バーの先端領域における星形成クランプの性質を調べた。新しく生 まれた大質量星と大質量原始星を同定した、それらの性質を調べた。 遠い側のバー先端で NANTEN CO(1-0) で見つかった5つの巨大分子雲複合体を 研究した。
 大質量の乱流塊が星団へと陥落する時期に形成されると予想される原始星の 数から星形成率を評価した。そして、与えられた初期乱流塊の可能な最終配置 から原始星の数を予想した。乱流核にモンテカルロ法を適用する新しい方法を 開発し、陥落の間に作られる天体の多重性も配慮した。
 第1象限先端での星形成率は 1.2 10-3 Mo yr-1 kpc-3、第4象限先端での星形成率は 1.5 10-3 Mo yr-1 kpc-3 である。視野全体での平均値は 0.9 10-3 Mo yr-1 kpc-3 と 0.8 10-3 Mo yr-1 kpc-3 と である。変換効率は第1象限で 0.8 %, 第4象限で 0.5 % であり、特に バーの近くで変化しない。CO 等高線から決まった、第4象限バー先端での 星形成域は周囲領域より高い星形成と星形成率を示す。しかし、その変換 効率は似たような値である。
 バー先端部は前景、背景部に比べて高い星形成率を持つ。しかし、変換 効率は観測領域全体で変化がなく、バーにおける星形成活動はダストと分 子量が多いためであり、特別な加速機構が働いているわけではないことを 示す。

Toth et al 2014
あかり FIS による YSO カタログ
 FIS Bright Source Catalogue/WISE catalog から YSO を抜き出した。 選択には quadratic discriminant analysis (QDA) 法を用いた。 トレイニングサンプルは既知の YSO を SIMBAD から選んだ。  FIS YSO 候補は 44001 天体あり、分類の信頼度は 90 % を超える。 76 % は以前に未登録であった。  新発見 YSO の大部分はクラス I と II である。その方向分布は 銀河系星間物質の分布と良い相関がある。局所的密度超過は赤外ループ の上と、Planck で発見された冷たい塊方向で見られる。

Urquhart, Figura, Moore +5 2014
RMS サーベイ: 銀河面分布と大質量星形成
 Red MSX (RMS) 天体探査で同定された 1750 個の埋もれた若い大質量星 を用いて、最近の大質量星形成域の銀河面内分布を求めた。視線速度データ のない 800 天体の分子線観測を行った。文献にある距離決定で用いられた 方法を検討し、既存 HI データを用いて、太陽円内の約 200 天体の距離に 関する不定性を解消した。
 距離から絶対輻射等級(∼ 104 Lo)を計算し、サーベイの 完全度を評価した。全部で 1650 天体の距離と光度を求めた。その 1/3 は サーベイの完全度限界より上である。サンプルの銀経、銀緯、視線速度、 中間赤外画像を調べた結果、 120 の集団が同定された。それらの位置は 既知の有名な星形成複合体、 G305, G333, W41, W43, W49, W51 に付随 していた。
 天体位置と銀河系の腕との相関を調べた結果、若い大質量星の分布 は渦状腕に沿っていることが明らかになった。全体としての天体表面密度 と表面輝度は分子雲の表面密度と良い相関がある。これは分子雲の単位 体積当たりの大質量星形成率がほぼ一定であることを示す。
 他銀河での大質量星と分子ガスの比較も類似の中心距離関係を示す。 埋もれた大質量星からの総光度は &sim: 0.76×108 Lo でその 30 % は最も大きな星形成域 10 個に含まれている。スケール高を 銀河中心距離の関数として求めた結果、4 kpc - 8 kpc の間では 20 - 30 pc からゆっくり増加するだけだが、その先は急速に大きくなる。

Contreras Pena, Lucas, Froebrich, Kumar, Goldstein, Drew, Adamson, Davis, Barentsen, Wright (2014)
UKIDSS で発見された大振幅赤外変光 - I. SFRs への集中
 UKIDSS の DR5 と DR7 からの2回 K-測光を調べ、高振幅 NIR 変光星を銀 河面内で調べた。 ΔK > 1 の星が 45 個見つかった。中には、既知 の OH/IR 星が二つ、新星が一つ含まれていた。銀河面中心線近傍はデータ にまだ含まれていないが、大部分= 66 % の変光天体が既知の星形成域で 見つかった。中でも Serpens OB2 アソシエイションからは 11 星、Cygnus-X 複合からは 12 星と多い。  SEDs も 多くが YSOs であることを示す。銀河面内の高振幅変光天体の中で 低光度 YSOs が主要成分ではないか。DR5 サンプル星の分光を行い、少なくと も4星は噴火型 PMS 星の特徴を持つ事が分かった。この結果は、噴火型変光 が色々な継続時間と大きさをもつ噴火の連続からなるという最近の考えを支持 する。

Vijh, Meixner, Babler, Block, Bracker, Engelbracht, For, Gordon, Hora, Indebetouw, Leitherer, Meade, Misselt, Sewilo, Srinivasan, Whitney (2009)
SAGE による LMC の AGB, YSOs 変光の発見
 SAGE LMC サーベイの3か月おいた2回の測光から変光天体を探した。変光 は IRAC 4 バンドと MIPS 24 μm を組み合わせて探した。  7°x7° 領域内で両方の観測で検出された3百万の星から 2000 個の 変光天体を見つけた。その大部分は AGB 星である。極端AGB 星の >66% は 変光しており、それが炭素星では 6.1 %, O-リッチ星では 2 % である。 また、変光 YSOs も見つけた。

Reid + 13 (2009)
大質量星形成域の三角視差 VI. 銀河系構造、基本パラメタ―、非円運動
 VLBA と VERA を用いて星形成領域内メーザーの固有運動と視差を測っている。 18個のメーザーに対する初期結果はそれらを幾つかの渦状腕の上に位置させた。 ペルセウス腕のピッチ角=16°±3° は2本腕よりは4本腕に 合う。星形成域が円運動から予想されていたよりも、平均して 15 km/s 遅い 速度であることを見出した。また、 Ro = 8.4±0.6 kpc, Θo = 254±16 km/s, Θo/Ro = 30.3±0.9 km/s/kpc である。  データは回転曲線がほぼ平坦かやや上向きであることを示す。一般に運動距離 は大き過ぎる。いくつかの例ではファクター2以上となる。Θo/Ro を IAU 推奨値の 25.9 km/s/kpc から 30 に変えると運動距離と視差との一致は 向上する。運動距離を更新する処方を示す。回転曲線はM31のものと似ており、 二つのダークマターハローの質量が同じくらいであることを示唆する。

Reipurth, Schneider 2008
シグナスの星形成と若い星団
 シグナスリフトには、現在または最近の活発な星形成域が多数含まれている。 この領域は渦状腕を見下ろす(縦に貫いて見る?)ので、数百 pc から 数 kpc まで様々な距離にある星形成域が重なっている。巨大な HIIR の一部である北 アメリカ星雲とペリカン星雲は白鳥座星形成域の中では最も有名であるが、これら は僅かに 600 pc の位置にある。
 その隣に見えるのはシグナスXであるが、距離は 1.7 kpc である。この天体 は直径 10° に及ぶ活発な星形成分子雲と若い星団の複合体である。それら の星団の中で最も大きいのは、年齢 3 - 4 Myr の Cyg OB2 アソシエイション である。それには数千の OB-星が属し、 LMC の若い球状星団とよく似ている。 白鳥座の分子雲複合に属する若くて大質量または低質量の星や原始星は未だに 研究が不十分であり、系統的な研究に値する。

Robitaille, Mead, Babler, Whitney, Johnston, Indebetouw, Cohen, Povich, Sewilo, Benjamin, Churchwell 2008
銀河中央面で Spitzer が観測した固有カラーが赤い天体
 GLIMPSE I, II 274 deg2 から選んだフラックスリミテッドの 18,949 天体を調べた。その多くは YSO と AGB 星である。場所による感度 変化、サチュレーション、込み混じりに気を付けて二つの分離基準を定めた。 天球上、色等級図、二色図上での分布を議論した。  YSO と AGB は単純な色等級図を用いて分離可能で、YSO が 50 - 70 %, AGB が 30 - 50 % であることが判った。 PNe と galaxies は 2 - 3 % である。 GLIMPSE II の 1004 天体は 4.5, 8 μm で > 0.3 mag の変光を示す。 11,000 の YSO, 7000 の AGB と加えこれはこれまで最大の一様なセンサスである。

Lucas + 30 2008
UKIDSS 銀河面サーベイ
 UKIDSS Galactic Plane Survey (GPS) は UKIDSS コンソーシアムが行っている 5つの公開サーベイの一つである。これは b = [-5, 5] の 1868 deg2 を J, H, K フィルターで、牡牛座ー御者座ーペルセウス座分子雲複合体の 200 deg2 を J, H, K と 2.12 μm H2O (1-0) 線 で撮った。その総計は 2 109 天体となる。ここではデータセットの 性質とユーザーのためにその応用を述べる。 また、DR2 を用いた科学成果も 簡単に述べる。
(1)GPS-GLIMPSE クロス対象から星形成域 G28.983-0.603 の YSO 同定。
(2)M17 の広域像に減光マップを提供。星混同が光度関数に及ぼす効果。
(3)ρ Oph 暗黒雲の H2 放射。ジェットの根元に原始星。
(4)中心バルジ核の X-線源。近傍の主系列星軟X源とバルジ巨星硬X源。
(5)排除帯における銀河。l > 90 で星と明確に区別できる。
(6)(i-J, J-H) 二色図で A-F 矮星、G-矮星、K-矮星区別

Urquhart, Busfield, Hoare +9 2008
RMS サーベイ: 北銀河面の大質量 YSO 候補の13CO 観測
 南銀河面に対する 大質量 YSO 候補天体の観測に次いでこの論文では 北銀河面の観測を報告する。   JCMT, PMO, Onsala, Mopra 望遠鏡を用いて 508 MYSO 候補の観測を行った。 空間分解能は 20" - 50" である。それに、銀河系リングサーベイ (GRS) を 使い、さらに 403 天体を補充した。  911 MYSO 候補天体のうち、 780 RMS 天体に 13CO を検出した。 これは 84 % である。520 天体 (56 %) には複数の速度成分 が見られた。単成分 の天体と合わせ、CO が検出された 638/780 MYSO 候補について運動速度を 決定でき、それらの運動距離を決定した。 近距離と遠距離のどちらかは決められなかった。

Urquhart, Busfield, Hoare +9 2007
RMS サーベイ: 南銀河面の大質量 YSO 候補の13CO 観測
MSX, 2MASS からカラーで、約 2000 の 大質量 YSO (MYSO)候補 を選び出した。  JCMT, Onsala, Mopra 望遠鏡を用いて 854 MYSO 候補の 13CO 観測の結果、752 RMS 天体 に CO を検出した。これは 84 % である。461 天体 (60 %) には複数の速度成分 が見られた。文献から CS(J=2-1) とメーザー速度を探し、 複数成分を 82 天体については分解できた。そしてそこで決めた最も確からしい 成分の基準を適用してさらに 218 天体についても固有速度成分を定めた。単成分 の天体と合わせ、CO が検出された 591/752 MYSO 候補について運動速度を 決定できた。Brand, Blitz 1993 の回転曲線を用いてそれらの運動距離を決定した。 近距離と遠距離のどちらが正しいかは不明。

Beltran, Testi, Nolinari 2006
南半球における大質量原始星候補 II. ダスト連続光
 IRAS δ < -30° から大質量原始星候補 235 星を選び、SEST で観測した。サンプルは 142 Low 天体と 93 High 天体を含んでいた。 8 天体を除いてダストの大質量の塊りが見つかった。通常1領域あたり 複数の塊りがあった。ダスト放射は様々な形態を示した。それらは、 複数の塊りが糸状につながったり、集団を成していたりした。
 塊りの平均サイズは 0.5 pc, 質量は Td = 30 K として 320 Mo, H 2 密度 106 cm-3, 表面密度 0.4 g cm-2 である。L/Mo = 99 Lo/Mo で天体は若く、pre-UCHIIR 期 にある事を示す。
 ミリ波マップを MSX MIR 画像と較べた結果、非 MSX 源のミリ波の塊り 95 個を見つけた。それらは MSX 天体と較べ質量が 1/3 以下であった。 それらは恒星になる前の核かも知れない。 100 Mo 以上でのマス分布は、 dN/dM ∼ M, α = 2.1 で表わされる。 これはサルピーターのマス分布 α = 2.35 と合致する結果である。 一方で、10 Mo ≤ M ≤ 120 Mo は α = 1.5 とより良く合う。 これはガス観測から導いた分子雲質量分布に近い。

Lumsden, Hoare, Oudmaijer, Richards 2002
MSX が見た銀河面内の種族
 MSX の MIR, 地上の NIR データを結合し、銀河面 MIR 種族の特性を 調べた。分子雲中の YSO のカラーは星周雲内の晩期型星のカラーと異なる。 MSX により大質量 YSO (MYSO) 約 1000 個の無バイアスサーベイを目標と した。簡単な解析から MSX には銀河系内の全ての MYSO が含まれている ことが判った。
カラー選択から銀河系中心領域を除き、 MYSO 候補 3071 個が選ばれた。CHIIR や他の種類の混入を除くための追尾観測について 簡単に述べる。また、 MSX + NIR から O-リッチと C-リッチ星を区別する 基準も見つかった。また、このデータから主系列星の周りの星周塵、 つまり低質量前主系列星やベガ型星を区別するのにも使えるかも知れない。

Carpenter 2000
ペルセウス、オリオンA, オリオンB,モノセロス R2 分子雲の 2MASS 観測
 2MASS 2nd Incremental Release PSC を用い、ペルセウス、オリオンA, オリオンB, モノセロス R2 分子雲内の若い星の分布を調べた。フィールド星 分布の半解析表現を観測された星分布から差し引き、残差の空間分布を 星のコンパクトな集団とより一様に広がった種族とに分けた。  各分子雲には 2 - 7 個の星団があり、うち最大の星団1つが星団星の半数 以上を含む。また、フィールド星差し引きの確度内で、 0.013 - 0.083 arcmin-2 の広がった星種族がオリオン A とモノセロス R2 に 推定される。  10 Myr より長期間一定の割で Milar-Scalo IMF の星形成が進行していたなら、 感度計算からは広がった種族の星数をファクター2以上過小に見積もっている 可能性がある。  広がった種族星の進化状態を考慮すると、4つの雲での星団種族と 広がった種族の星総数から推定される星形成効率は 1 % - 9 % である。  名目的な減光(?)での、星団星数が総星数に占める割合は、もし広がった 種族が 10 Myr より若ければ 50 % - 100 %、もし 10 Myr 程度に古ければ 25 % - 70 % である。分子雲に埋もれた星団の年齢が通常若いことと一緒に 考えると、星の大部分が数百万年内に生まれたことになる。  つまり、雲の年齢を 10 Myr より古いと考えるなら、星形成率は最近 ピークを迎えたことになる。逆に雲が若いなら星形成率は時間的に 一定であった。

Hodapp 1994
分子流天体の K 画像サーベイ
 Fukui 1989 の CO 分子流天体リストの全領域を 8'×3' 視野の K' 撮像 した。各天体の画像を示し、付随する星雲、星団について述べる。K' は 中心 2.11 μm, 半感度波長 1.94, 2.29 μm である。  放出流天体の大部分は K' で星雲を伴っている。そのような星雲は若い星を 探す助けになるだろう。 放出流天体の約 1/3 は若い星の集団に含まれるか 傍にある。若い星団の大部分は K' にピークを持つ埋もれた天体である。これは それらの年齢が < 1 × 106 yr であることを示唆する。

Jaeger, Mutschke, Begemann, Dorschner, Henning 1994

星間シリケイト鉱物学への歩み I. 平均宇宙組成シリケイトガラスの実験結果
 宇宙の主要4元素の平均組成を反映するパイロキシンガラスを用意し、その 特性を調べた。それらは YSO からのシリケイトスペクトルを説明する有力な 候補と期待されている。パイロキシンガラスの光学定数を 250 nm - 500 μm で決めた。レイリー限界内の粒径を持つ粒子は 9.5, 18.8 μm に幅広の吸収 帯を示した。比較のため、同一組成の結晶サンプルも測った。その細いバンド は 9.4, 10.5, 11.1, 13.7, 15.6, 18.1, 19.5, 26.5, 29.5, 37.5, 49 μm に存在した。それらはハイパーシーンに対応する組成に期待される波長と一致 する。この他に、Fe2+ に起因する弱い結晶場バンドが 1, 2 μm にあった。これが観測で検出出来たら、パイロキシン型グラスとオリビン型から 区別する強力な証拠になる。遠赤外でのガラスの吸収は λ-2 に比例した。
 パイロキシンガラスの 10, 19 μm バンドの中心はトラペジウム、大質量 YSO での観測と一致した。パイロキシンガラスの光学定数でレイリー粒子の 吸収を計算したものは YSO 6個の平均 10 μm プロファイルと一致したが、 トラペジウムとは合わなかった。オリオンで放射帯の巾が広い原因を論じた。 また、以前の結論と異なり、パイロキシンガラスは低質量 YSO (Herbig Ae/Be, T Taus) の放射帯プロファイルと合致しない。これは YSO シリケイトの組成が 質量により変化することを示唆する。 最後に、今回の結果を以前の組成が異な るパイロキシンガラスの結果と較べた。試料を用意する方法が光学定数の決定 に影響することを示す。

Gomez, Hartmann, Kenyon, Hewett 1993
牡牛座前駆主系列星の空間分布
 数種の統計手法を用いて、Taurus-Airiga 分子雲内の前駆主系列星の非乱雑配置の性質を 導いた。0.3° スケールで指数 -1.2 のべき乗型二点角度相関関数が観測分布をよく 再現することがわかった。これは T Tau 分布に集団が実在することを意味する。  また、最近接距離分布からは投影間隔の中間値が 0.3 pc であることが判った。この間隔は 分子雲コアのサイズ(∼0.1 pc)より少し大きいだけである。これは Taurus のような 低密度星形成領域では孤立した単独星の形成は生じないことを示す。
 狼座、カメレオン T1, ヘビツカイ座 ρ 星、オリオン、 NGC700/IC5070, NGC2264 領域の最近接距離分布からも似た性質が得られた。我々の解析は終局的には孤立星 となる場合でも通常は比較的近接して生まれることを示す。細長く伸びた分子雲コア内部での 多重性の星形成がそのような結果をもたらす機構を提供している。
 牡牛座に投影半径 0.5 - 1 pc の統計的に有意な星集団を 6 個見出した。これらの小集団は 夫々が 15 個程度の星を含み、分子雲全体に分布している。集団間の内部運動は 0.5 - 1 km/s で ある。

Prusti, Adorf, Meurs 1992
IRAS PSC の YSO 種族
 IRAS PSC 中に低質量 YSO を探した。3種類の統計的方法を 69,436/245,889 天体に試した。分類法の性能は失敗アラームと 成功率で測った。Beichman et al 1986, Myers et al 1987 の YSO サンプルを結合したものに対する赤外の性質への近親度が二つの単純な 分類法では YSO 候補天体のランク分けされたリストに使われた。 第3の手法では赤外の性質と天空上の集合度とから2段階の分類法が 適用された。
 この結合は YSO と他種天体との分離を著しく改善し、 5825 個の YSO 候補を摘出できた。性能評価では その 87 % = 5068 個は本当に YSO であろう。カメレオン座 I 星形成領域でのサンプルを調べて それが真である事を確認した。それから推定すると最初のサンプルには 5962 個の YSO が混雑領域の外にあると思われる。この分類の質は カメレオン I 星形成領域内の最初のサンプルから IRAS PSC を調べる ことで実証された。

Whittet, Prusti, Wesselius 1991
カメレオン I 暗黒雲 と T-アソシエイションの研究
 カメレオン I 内にあり、前駆主系列星とされていなかった IRAS 天体 28 個の JHKL 測光を行った。非常に強い赤化を受けている背景星を 探す試みは不成功に終わった。しかし、新たに4つの若い埋もれた星が 見つかった。その内の一つは降着期にあるらしい。
 可視光で確認された T-アソシエイションの近赤外観測も行った。 カメレオン I で IRAS 点源として検出された若い天体の数は 36 となった。 驚くべきことにこれは可視 T Tau 星の僅か 57 % に過ぎない。IRAS は 近傍暗黒雲でさえも若い星の完全なサーベイを成し遂げていない。

Kenyon, Hartmann, Strom, Strom 1990
牡牛座-御者座分子雲の IRAS 探査
 IRAS から以前 Taurus-Auriga 分子雲コアに随伴していると知られていな かった早期型前駆主系列星を探した。6個の埋もれた天体は T Tau 型星の 平均的な明るさを持っていた。これらから、 L ≥ 0.5 Lo では探査が 完全と考えられる。
 埋もれた星と T Tau 星の数の比から、寿命を求めると、T Tau を τTTS ∼ 106 yr として、 τemb ∼ 1.2×105 yr となる。  τemb から導かれる降着率と Lbol との矛盾は、もし 降着が τemb に比べ短期間に生じた、または、T Tau 星 の年齢が過小評価されているならば、解消する。
 もし、そのどちらかが正しいなら、埋もれた前駆主系列星の降着率は 単純に母分子雲からの落下率に結びつかない。というのは多分落下がまず 周星円盤に対して起こるからである。

Strom, Newton, Strom, Seaman, Carrasco, Cruz-Gonzalez, Serrano 1989
Lynds 1641 暗黒雲内の星種族 I. IRAS 天体
 他波長での測光 
 Lynds 1641 (d ≈ 480pc) 範囲内の 63 IRAS 点源カタログ天体 123 個を同定した。パロマーシュミット乾板 B, R, I 乾板上で探した 結果、63 候補天体が見つかった。IRAS 点源の位置を近赤外測光した結果、 40 個に赤外天体が見つかった。内 16 個は可視では見えない。30 天体は IRAS バンドでのみ観測可能であった。個々の天体の SED を作った。

 クラス分類 
 SED の傾きから次の3クラス分類を行った:
クラス I : 平坦又は右上がり。
クラス II: クラス I, III の中間勾配
クラス III:黒体輻射と似る。
L 1641 には近くの Taurus-Auriga 星形成複合よりもずっと多くのクラス I 天体が含まれる。L 1641 天体を特徴付ける赤外スペクトルの急な傾きは それらが高い光学的深さの「コア」に存在した結果と考えられる。

Wilking, Lada, Young 1989
ρ Ophiuchi 赤外星団の IRAS 観測
 IRAS co-added データと PSC をヘビツカイ座分子雲複合体 4.3 pc2 で 調べた。 NIR Hα 観測を併用して、44/64 IRAS 12 μm 点源を若い天体に 同定した。これまでの結果と合わせ、計 78 個の若い天体がダストに隠された星団の メンバーとなった。
 可視、近赤外データと IRAS を合わせ、SED を作り、光度を推定した。2.2 - 25 μm SED 勾配を用いて SED を分類した。SED の形はクラス I からクラス II へと連続的に 並んだ。これは降着原始星から星周円盤を伴う前駆主系列星への進化を表していると 解釈される。
 各ステージ毎の数の分布から、降着期の寿命、降着率、ヘビツカイ座星形成活動の継続時間 を見積もった。過去数百万年の爆発的星形成活動の結果分子雲コアでの星形成効率は SFE ≥ 22 % という高い数値を出していることが判った。
 埋もれた星団の光度関数を作った結果、SED の形により光度が分離することが判った。 クラス I 天体が中間光度を占有していることから、クラス I から II へ進化する際に 光度が変化するか、雲内の星質量が順に増えていくかと考えられる。

Wilking, Mundy, Blackwell, Howe 1989
冷たい IRAS 天体のミリ波輝線と連続波の観測
 IRAS 天体で光学対応天体がなく、冷たい SED を持つ 50 個を選び、 電波の CO 及び連続光観測を行った。大部分は強い CO 強度と高いガス コラム密度から、最近の星形成とのつながりを表わす。24/50 天体では CO のラインプロファイルにウイングがあり、放出流を伴っていることが 判った。
2.7 mm 干渉計観測から 16/39 天体の放射域は < 35" であった。 この放射は、3天体を除いては、冷たい(Td = 35 - 60 K)ダストから のものである。ダストの 2.7 mm 光学的深さは非常に大きく、遠赤外で ダストは光学的に厚い事が想像される。その質量は 0.6 - 270 Mo に 渡る。
 ダスト放射域を二つのクラスに分ける事が出来る。(1)d = 500 - 5000 AU と、小さくて空間的に分解できない。n(H3) > 107-9 cm-3 と大きく、光学深さが大。 近傍分子雲中の低質量(< 4 Mo) で、星形成に深くかかわっているダスト。 (2)大きく広がり(0.1 - 0.3 pc)低密度 105-6 cm-3 で、光学的に薄い。遠方の高光度天体に属し、多分、分子雲コアの内側領域 で、中に若い若い大質量が住んでいる。

Wood, Churchwell 1989b
分子雲内に埋もれた大質量星:銀河系内の数と分布
 UCHIIR は特徴的な FIR SED を持つ。既知の UCHIIR の IRAS 二色図 からそのカラー選択基準を導いた。IRAS PSC にその基準を適用して、 1717 個の 埋もれた大質量星候補を見出した。内 1646 個は銀河面に へばりつき、71 個はマゼラン雲に属する。IRAS の感度だと、全銀河面 上の O 型星を見つけたはずである。大部分は第1、第4象限にある。 可視で見える近傍 O 型星との比較から O 型星の 10 - 20 % は分子雲 に埋もれている。これは、O 型星の主系列寿命の内 10 - 20 % は 分子雲に埋もれている事を意味する。現在の大質量星形成率は 3 × 10-3 O stars yr-1 であり、 発見された IRAS 天体の数は超新星発生率 1 SN/25 yr と合う。

Wood, Churchwell 1989a
UCHIIR の形態と性質
 UCHIIR 75 個を VLA により、波長 2, 6 cm, 分解能 0.4" で観測した。 電離ガスの形態は、球形または未分解 = 43 %, 彗星状 = 20 %, コア ハロー = 16 %, シェル = 4 %, 不規則または複数源 = 17 % であった。 大きな遠赤外フラックスと複数放射源の存在は UCHIIR を 形成する O-, B-星には低質量星の集団が付随する事を示唆する。  UCHIIR 期は大質量星の主系列寿命のかなりの割合を占めるという証拠 がある。膨張を抑える何らかのメカニズム が働いている。したがって、UCHIIR が小さいからと言ってそれは 天体が非常に若い事を意味しない。

Dorschner, Friedemann, Gurtler, Henning 1988

ガラスブロンザイトの光学的性質と星間シリケイト帯
 ブロンザイト=隕石や惑星間塵に豊富に存在するパイロキシンからガラス基板 を作った。ミクロン以下のサイズの粒子を KBr に埋め込んで透過曲線を得て、 それに分散関係式を適用して 7 - 40 μm での複素屈折率を求めた。  吸収及び減光効率をミーモデルで計算した。観測との比較はブロンザイトガ ラスが、例えば T Tau 星や BN 天体のような、若い天体に付随する赤外源 の中間赤外スペクトルのモデル化に良い候補物質であることを示す。

Lada 1987
OB アソシエイションから原始星まで
 分子雲内での星形成効率が 0.3 % 程度と極めて低い事が OB アソシエイションのように非拘束な系を産む原因である。効率 が高い場合には拘束系の星団が生まれる。効率が何で決まるかは 不明である。原始天体の SED は3つのクラスに分かれる。クラス I は可視で見えず、右上がりSED.クラスII は円盤を持つ T Tau 天体、クラス III はZAMS に近い星が赤化を受けている。

Gurtler, Henning 1986
非常に若くて大質量天体の周りのダスト
 BN 天体に代表される非常に若く、大質量の赤外源の周囲のダストの性質を調 べた。10 μm バンドと 3.1 μm 氷バンドの深さに相関がないことが判った。 シリケイトバンドの強さと 8 - 13 μm カラー温度に負の相関がある。BN型 天体のこの関係は、既にミラ型星や OH/IR 星で知られている関係をさらに拡大 する。  BN型天体の輻射輸達モデルを計算して、その性質を調べた。その結果、 非常に若い天体のダストは酸素過多の巨星や超巨星の周辺にあるダストと 異なるという結論に達した。それらは定性的にはそれぞれ、パイロキシンと オリビンに結び付けられる。

Lada, Wilking 1984
ρ Oph 暗黒雲に埋もれた天体種族の性質
 ρ Ophiuchi 暗黒雲中に埋もれた天体の内同定されたものの 10, 20 μm 観測を提示する。その結果 44 天体中 32 個の SED を決める事ができた。 大部分はそのエネルギーを 1 - 20 μm で放射している。輻射等級を 求めた。埋もれた星団は主に低光度、 0.1 ≤ L/Lo ≤ 25, の天体から 成ることが判った。 44 % は太陽より暗く、これまでに観測された PMS 天体の 中では最も暗い。その光度関数はフィールド星のそれと比べ中質量星の数が 少ない。

Wilking, Lada 1983
ρ Oph 暗黒雲に埋もれた天体の新しい検出。重力拘束星団の形成か?
 ρ Oph 中心の mm, NIR 観測の報告。 C18O 観測から 1×2 pc の尾根が見えた。中心コアでは N18 LTE = 1.4 - 2.9 × 1016 cm-2, Av = 50 - 106 mag という大きなコラム密度を示す。マップされた領域の 雲質量は 550 Mo であった。高密度領域で K = 12 に達する 2 μm サーベイを 105 arcmin2 に渡って実施し、雲に埋もれていた 20 個の天体を発見した。恒星質量の合計は 135 - 240 Mo である。

Genzel, Downes Schneps, Reid, Moran, Kogan, Kostenko, Matveyenko, Ronnamg (1981)
水 メーザー源の固有運動と距離 II. W51 Main
 W51 Main 内 H2O メーザーの相対固有運動を VLBI で測った。 相対位置精度 100 マイクロ秒角を達成した。観測された固有運動は大体 1 ミリ秒/年程度で、メーザー雲の運動を示す。横向き運動の様子はでたらめ で、強い星風が周囲の分子雲内の非一様な分布と相互作用する結果生じる 乱流運動と理解される。  横向き速度と視線速度の比較から、 W51 Main までの距離(統計視差)を 7 ±1.5 kpc とした。この値は運動遠距離と一致するが我々の方法は 銀河系のモデルに独立に求められた。

Wynn-Williams (1969)
銀河星雲 NGC 6857 近傍からの電波放射
 ケンブリッジ1マイル望遠鏡 11 cm 観測から、これまで惑星状星雲 NGC 6857 が原因とされてきた異常に強い電波放射が実は4つに分かれた熱電波源の重ね合 わせであることが判った。  それらの一つは NGC 6857 で、もう一つは別の惑星状星雲 K3-50 である。 他には、 OB-星の星団によるコンパクト HIIRs の集団が電波源となっている。

Raimond, Eliasson (1967)
オリオン星雲内の赤外線星と OH 源の関係
 オーエンスバレイ2素子干渉計でオリオン OH 源の位置を決めた。 BN 天体付近から出ていることが分かった。  収縮している星間雲が OH ライン源らしい。

Becklin, Neugebauer 1967
オリオン星雲内の赤外線星の観測
 トラペジウム 2' 以内の 2.0 - 2.4 μm で強度マップを作った。 検出された7個の点源は可視天体と同定されたが、一つは非同定であった。  この天体が星雲内にあると仮定し、様々な減光で補正したが、Av = 15 mag でも T = 1200 K という低温であった。



早期型星

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著者 内容

Weis, , Dominik, Bomans (2020)
Luminous Blue Variables
 「真の」LBVs サンプルが少ないため、これらの天体に関する知識は限られ ている。これは LBVs を一意に定義する枠組みがまだないためである。さらに、 LBV 期が短いことは問題をさらに難しくする。  ここでは、これまでに分かったことをまとめる。LBVs は一種類ではない。

Limongi (2017)
大質量星からの超新星
 コア崩壊型超新星となる大質量星, M = 13 - 120 Mo, の進化を解説する。 [Fe/H]= [-3, 0], 初期回転速度 = 0, 150, 300 km/s である。  マスロス、ミクシング、回転の相互作用が星の最終運命をどう決めるかにつ いて重点的に調べた。初期質量、メタル量、回転速度による進化の概観を述べる。

Mohr-Smith, Drew, Barentsen, Wright, Napiwotzki, Corradi, Wisloffel, Groot, Kawari, Parker, Sale, Uhruh Vink, Wesson (2013)
カリーナ腕 Wd 2 とその周囲の新しい OB-型星候補の発見
 O-, 早期 B- 型星は銀河系でまだあまり多く登録されていない。南銀河系で g = 20 等まで OB-星候補を探した。探査領域はカリーナ腕の方向、若い大 質量星団 Westerlund 2 の周り 2 平方度である。この星団内にある OB 星を 我々の手法の確認に用いた。この方法は (u-g, g-r) 図を用いる。  マルコフ鎖モンテカルロ法により VPHAS+ u,g,r,i 等級と公表されている J, H, K 等級を組み合わせ、星のパラメタ― log Teff, DM と減光パラメタ― Ao, Rv を導いた。
 星のパラメタ―は OB 星を確定するに十分であり、一方減光パラメターの 誤差は σ(Ao)≈0.09, σ(Rv)≈0.08 の精度であった。 B2 より早期と判定された星が 489 個見つかった。この中には大質量 O-型星と 考えられる星が 74 個、青色超巨星候補が 5 個、赤化を受けた準矮星が 32 個 含まれる。この結果、領域内の OB 星及び候補星の数が 10 倍に増えた。新候補 星の大部分は 3 - 6 kpc にある。また以前から指摘されていた、弧の視線方向 では赤化則が Rv = [3.5, 4] で非標準的であるという事実が再確認された。

Maiz-Apellaniz, Sota,Morrell, Barba, Walborn, Alfaro,Gamen, Arias, Gallego (2013)
銀河系 O-型星分光カタログ(GOSC)とサーベイ(GOSSS): 全天探査の最初の結果
 Galactic O-Star Spectroscopic Survey (GOSSS) は B < 12 でかつて O-型と報告のあった星全て、および B = 12 - 14 の同様な星のかなりに対し、 R = 2500 の 青―紫領域スペクトルを撮る計画である。2013 6月時点で、 1593 星の 2653 スペクトルを得た。これで、 B < 8 mag の星は全て、 B = 8 - 10 の星の大部分がカバーされた。これだけで GOSSS はこれまでの 高精度スペクトルの3倍の大きさになった。
 O-型星とされていたが違うと分かった星の割合、数 kpc 内の O-型星の 分布、等級分布について調べた。また、サンプル内に見つかった興味深い 天体、 GOSSS データの星間空間研究への応用について論じる。最後に GOSC の新しい版を示す。これは GOSSS-DR1 データをまとめたものである。

Immer, Reid, Menten, Brunthaler, Dame 2013
大質量星形成域 G0123.88+0.48 と W33 の三角視差
 BeSSel プロジェクトの一つとして、  G012.88+0.48 と大質量星複合形成域 W33 (G012.68-0.18, G012.81-0.19, G012.90-0.24, G012.90-0.26 を含む)内の水メーザーの三角視差を測った。  全てのメーザーは距離 2.60+0.17-0.15 kpc で W33 と G012.68+0.48 の両方 がスキュータム腕にあることが分かった。W33 の運動距離 3.7 kpc は大き過ぎた。 W33 Main 内の星団星のスペクトル型は 1.5 ポイント晩期へずらす必要がある。

Garcia, Herrero, Castro, Corral, Rosenberg (2009)
IC 1613 の若い星種族 II. OB アソシエイションの物理的性質
Q - V 図を用いて IC 1613 の OB-アソシエイションの解析を行い、それらの年齢、 質量を定め、若い大質量星集団を確認した。  その結果、 M ≥ 50 Mo の星 10 個以上を確認した。 アソシエイションの平均直径は 40 pc で、歴史的に考えられてきた値の半分である。 アソシエイションの分布は HI, HII の分布と強い相関がある。H I が豊富な バブル領域ではアソシエイション年齢の広がりが最も大きい。これは、そこでの 星形成が銀河の他領域より長期間にわたって継続してきたことを意味する。
 最も若いアソシエイションはバブル領域から離れた銀河の西に見つかった。そこは 伝統的には星形成が起きている唯一の場所と考えられていた。  測光と分光から導かれた星の性質を比較した結果、Q 指数は測光データしか 存在しない場合に OB-星の性質を調べるのに大変有効であることが判った。

Hohle, Neuhauser, Schultz (2010)
 O-, B-型星と赤色超巨星の光度と質量
 O-, 早期 B-型と 3 kpc 内の全ての赤色超巨星を調べた。サンプルは 2MASS 観測とヒッパルコス視差があるものに限った。スペクトル型、光度クラス、 多色測光値から減光補正を行い、絶対等級を求めた。進化モデルと光度、カラー を比較して、質量、年齢を定めた。  3 kpc 以内のサンプル星全ての光度を使い、光度クラス I, III, V の平均 等級をスペクトル型に対して計算した。以前のデータは連星を分離していなか ったのと、距離を大きく見積もっていたために光度を大きく評価していたこと がわかった。質量と年齢の分布から太陽から 600 pc 以内の超新星率を 今後 10 Myr で 20 回/Myr と評価した。

Garcia, Herrero, Vicente, Castro, Corral, Rosenberg, Monelli (2009)
IC 1613 の若い星種族
 Gran Telescopio CANARIAS (GTC) に計画される新装置の準備のため、 不規則銀河 IC 1613 中の大質量星リストを用意することにした。多天体分光 に使えるためには位置精度を正確にする必要がある。
 Isaac Newton Telescope の Wide Field Camera を使い、IC 1613 星の カタログを作成した。減光フリー指数 Q とカラーにより青い星候補を選んだ。”feiends-of-friends” アルゴリズムにより、銀河内の集団を見つけた。OB アソシエイションのカタログ は中心集中を示す。

Buchholz, Schodel, Eckart, 2009
銀河中心星団の星種族:狭帯フィルターによる種族解析
 狭帯フィルターを用いて、混んだ星団中で晩期型星と早期型星を分離する新しい方法を 開発した。それを銀河系中心核星団に適用し、この領域の種族解析を行った。 観測は AO 支援の VLT/H+ K バンド内 7 狭帯フィルター撮像である。CO 吸収を早期型 と晩期型の分離に用いた。
 その結果、中心パーセク領域で、K < 15.5 の K-型より晩期の巨星と B2-型より 早期の主系列星を分類できた。以前の分光法が K = 13 - 14 等までだったのに比べると、 観測が深く、短時間で済むようになった。極端に赤い天体と前景星も除去できた。 スペクトル分類が既知の星と比較すると、今回の方法は信頼度 87 % である。早期型星は 312/5914 星であった。
 K-光度関数の形、晩期型星、早期型星の空間分布は以前の結果を 確認した。早期型星の分布はべき乗則、β1″ = -1.49±0.12, β1″-10″ = -1.08±0.12, β10″-20″ = -3.46±0.58 で表される。今回初めて 0.5 pc より遠くに多数の早期型星候補を発見した。晩期型星 分布は内側 6″ で反転し、β<6″ = +0.17±0.09 である。晩期型星の K-光度関数はべき指数 0.30±0.01 を持ち、バルジと近い。 早期型星の K-光度関数はべき指数 0.14±0.02 でもっと平坦である。これらは 現地星形成シナリオに合致する。

Bibby, Crowther, Furness, Clark (2008)
星団 1806-20 距離の下方改訂
 星団 1806-20 (G10,0-0.3) の OB-星と WR-星に H-,K-バンド分光観測を行 った。B-超巨星と WR-星の絶対等級較正と NIR 測光から、星団 DM = 14.7 (8.7 kpc)を得た。今回の距離を採用すると、 マグネター 2004 年 12 月の 巨大フレアのピーク光度はファクタ3小さくなり、系外マグネターによる BASTE short gamma ray bursts へのコンタミは数パーセントと無視できる範囲 に収まる。銀河中心から 1.8 kpc で、4 kpc 以内で不活発な星形成活動という 状況では珍しい例である。

Reipurth, Schneider 2008
シグナスの星形成と若い星団
 シグナスリフトには、現在または最近の活発な星形成域が多数含まれている。 この領域は渦状腕を見下ろす(縦に貫いて見る?)ので、数百 pc から 数 kpc まで様々な距離にある星形成域が重なっている。巨大な HIIR の一部である北 アメリカ星雲とペリカン星雲は白鳥座星形成域の中では最も有名であるが、これら は僅かに 600 pc の位置にある。
 その隣に見えるのはシグナスXであるが、距離は 1.7 kpc である。この天体 は直径 10° に及ぶ活発な星形成分子雲と若い星団の複合体である。それら の星団の中で最も大きいのは、年齢 3 - 4 Myr の Cyg OB2 アソシエイション である。それには数千の OB-星が属し、 LMC の若い球状星団とよく似ている。 白鳥座の分子雲複合に属する若くて大質量または低質量の星や原始星は未だに 研究が不十分であり、系統的な研究に値する。

Churchwell, Watson, Povich, Taylor, Babler, Meade, Benjamin, Indebetouw, Whitney (2007)

泡立つ天の川円盤 II. 内側 20° 
 GLIMPSE II 画像を視察した結果、 銀河系中心から 10° 以内に 269 個 の中間赤外の泡を発見した。泡の表面密度は 5 泡/平方度で |l| = [10,65] の3倍である。これは内側 10° 領域は外側より丁寧に小さな泡を探す検査 がされたからである。l = 2° から 10&deh; にかけて泡の数は倍になる。 この増加にはいくつかの理由があり、背景光レベルの低下、混み具合、減光 度などが関係する。  泡の離心率は 0.6 - 0.8 で > 50 % には噴出の証拠がある。これは 星間物質の密度揺らぎ、非等方星風、非等方輻射などの効果であろう。 HIIRs と星団に同定される泡の割合は |l| > 10° の泡の半分で ある。これは内側の泡カタログに小さな泡が多く含まれたためである。 少なくとも泡の 12 % には誘発性星形成を示唆する形態が見出される。 誘発性星形成の証拠がある泡の大部分は二次性の泡を持たない。おそらく まだ年齢が若すぎるためでないか。

Bresolin, Urbaneja, Gieren, Pietrzynski, Kudriyzki (2007)
IC 1613 青色超巨星の VLT 分光
 IC 1613 中の若い大質量星の多体分光の結果を示す。54 の O-,B-,A- 星を分光分類した結果をカタログにした。測光で選んだサンプルの大部分は B-, A-型超巨星であった。残りには早期 O-型矮星とこの銀河で唯一のウォルフ ライエ星が含まれる。
 早期 B-型星の中には偶然 6 個の Be 型星があった。マゼランより 遠いこのタイプの銀河の中では最大のサンプルである。早期 B-型超巨星 9 個の化学組成を測り、12 + log(O/H) = 7.0±0.08 という結果を得た。この値は我々が二つの HIIR の温度に鋭敏な [OIII] λ4363 から得た結論と一致する。

Churchwell + 21 (2006)

泡立つ天の川円盤 
 GLIMPSE 画像を視察した結果、 322 の部分的または完全なリングを発見した。 それらは部分的または完全な3次元泡を表している。泡は最初、高温の若い星 により星形成領域内に形成される。我々は平均して 1泡/平方度 発見した。 泡の 25 % は既知の電波 HIIR と一致した。13 % は既知の星団を包んでいた。 電波で検出できる HIIRs を作るには低温過ぎる B4 - B9 星が我々の泡の 3/4 を占めているようである。残りは O - B3 星でそれらは電波 HIIRs として検知 されている。  泡の幾つかは HIIR の端で PAH 放射が励起されており、星風による力学的 に作られたものではないようだ。泡の内既知の SNR と同定されたものは 3 個 だけであった。PNe や WRs と同定された泡はなかった。泡は小さい。角半径の 分布は 1' - 3' がピークで 98 % は 10' 以下、88 % は 4' 以下である。 90 % のシェル厚みはシェル外側半径の 0.2 - 0.4 である。泡の厚みは泡半径 と共に増加する。離心率分布は 0.6 -0.7 の間がピークでかなり大きい。65 % は離心率 0.55 - 0.85 にある。

Elias, Cabrera-Cano,Alfaro 2006
太陽近傍の OB 星1.空間分布
 太陽 1 kpc 内の早期型星空間分布を解析するために、新たに3次元空間分類 法を開発した。分布モデルとしてグールドベルト円盤+局所銀河円盤を考える。  B6 型より早期で光度クラス III - V で測光距離 1 kpc 以内の星 550 個を用 いて、あるスペクトルグループの星に対し、分布モデルのパラメターを決めた。

Giveon, Becker, Hefand, White (2005)

天の川の電波 CHIIRs の新しいカタログ II. 1.4 GHz データ
 新しい VLA 1.4 GHz 銀河面カタログ、l = [340, 120], b = [-0.8, 0.8], l = [350, 40], b = [-1.8, 1.8], l = [100, 105], b = [-2.5, 2.5], を MSX6C カタログとマッチさせた。これは Zoonenmatkermani et al が最初に 出版したカタログをデータを再解析した結果である。  その結果新しいカタログでは 1.4 GHz 源の数が3倍になった。新しい 1.4 GHz カタログと MSX6C カタログの比較から 556 マッチが得られた。その大部分は 「赤」MSX 天体である。スケール高は 24' - 28', 8.5 kpc で 60 - 70 pc で ある。銀緯分布は l > 40° で平らになり、マッチ数は急落する。

Giveon, Becker, Hefand, White (2005)

天の川の電波 CHIIRs の新しいカタログ
 MSX6C カタログから選んだ天体の VLA 5, 1.4 GHz, l = [350, 42], b = [-0.4, 0.4] コンパクト HIIRカタログを示す。Becker et al 1994 は以前この 領域のサーベイをしているが、今回の結果は 5 GHz 電波源の数を3倍に増やした。  新しい 5 GHz 天体と MSX5C 銀河面カタログとの比較では 687 マッチがあった。 偶然一致の予想数は 15 である。一致天体は赤い MSX カラーと熱電波源スペク トルを示した。それらの銀河内分布のスケール高は 16' = 40 pc と小さい。 これ等の性質はサンプルが、これまで未発見であった若い UCHIIR で占められて いることを示す。

Giveon, Becker, Hefand, White (2005)

天の川の電波 CHIIRs の新しいカタログ
 MSX6C カタログから選んだ天体の VLA 5, 1.4 GHz, l = [350, 42], b = [-0.4, 0.4] コンパクト HIIRカタログを示す。Becker et al 1994 は以前この 領域のサーベイをしているが、今回の結果は 5 GHz 電波源の数を3倍に増やした。  新しい 5 GHz 天体と MSX5C 銀河面カタログとの比較では 687 マッチがあった。 偶然一致の予想数は 15 である。一致天体は赤い MSX カラーと熱電波源スペク トルを示した。それらの銀河内分布のスケール高は 16' = 40 pc と小さい。 これ等の性質はサンプルが、これまで未発見であった若い UCHIIR で占められて いることを示す。

Fitzpatrick, Massa (2005)

星間減光曲線の形 IV. 標準星抜きの減光決定
 通常は赤化のない、または赤化の小さい標準星を基準に減光を測るが、この 論文では、恒星大気モデルを星の固有 SED を与えるものとして扱う。この標準 星抜きの減光測定法は減光の測定精度を大きく上げ、かつエラーの評価を確実 にする。その上、この方法は赤化を受けている星自体の固有の性質を明らかに する。ただし、モデルの物理的制約の結果、この方法が適用可能なのは主系列上 か少しだけ進化した B-型星である。しかし、この方法は、原理的には、モデル SEDがあるどんなクラスの星にも適用可能である。
 この標準星抜きの減光で次のことを明らかにする。
(1)局所空間で減光曲線の一様性を調べる。
(2)曲線の特徴の間の関係を調べる。
(3)低減光の視線から高精度の減光曲線を求める。
(4)星団内の減光を求める。
この方法を UV - IR データベースに適用して、星間グレインの性質に有益な制限 を掛ける。
(この方法だと、どんな固有スペクトル でも差を減光で説明できるのでは? )

Homeier, Alves (2005)
W49 GMC の大質量星形成
 W49 の最も濃い部分の JHKs 撮像を行った。減光から W49A に属する星 を分離した。その質量関数は傾き -1.6±0.3 である。減光限界で検出 された星から求めた総星質量は 5-7 104 Mo である。  幾つかの UCHIIRs の励起星候補を決定した。ただし候補が多く、一意では ない。

Fitzpatrick, Massa 2005
 B-型星の物理的性質の決定 II. 合成測光の較正
 B-型と早期 A-型星の UBV, ストレームグレン uvby, ジュネーブ、ジョンソン RIJHK, 2MASS 測光の新しい較正を クルツの ATLAS8 を用いて行った。サンプル星は近傍の B-, 早期 A-型星で、高精度の低分散 IUE スペクトルとヒッパルコス視差の揃ったものを 45 個選んだ。  較正が独自なのは、これが UV SED, V フィルターの絶対フラックス較正、ヒッパルコス 視差だけから、観測星の大気モデルを決めている点である。これらのモデルから合成測光 の較正を行った。結果をこれまでに受け入れられている値と較べ、ランダムエラーと 系統誤差を議論した。特に、 v sin i が表面重力に及ぼす効果をモデル大気のフィット から示した。

de Wit, Testi, Palla, Vanzi, Zinnecker 2004
フィールド O-型星の起源 1.近くの星団?
 フィールド O-型星 43 個の生誕率を求める研究を行っている。この第1論文では 観測的側面、つまり対象星の周りに星団があるかどうかを調べた。NTT, TNG 画像と 2MASS カタログから星の表面密度分布を調べた。分解能は星団の典型スケール 0.25 pc と 1 pc である。  O-型フィールド星の大部分は孤立星であった。5/43 = 12 % が小さな星団を 伴っていた。この結果の解析は第2論文で述べる。

Russeil (2003)

星形成複合体と銀河系の渦状構造
 星形成複合のカタログを作製した。含まれる観測量は Hα, H109α, CO. 電波連続波、電波吸収線 である。各複合体に、天体速度、運動距離、天体 距離を決定した。距離は同一の方法で決定し、データの一様性を高めた。 星の距離を決定する過程で回転曲線が得られ、 Brand, Blitz (1993) との良い一致が得られた。  回転曲線との残差速度は腕の領域で大きい。ワープも検出されたが、円回転 からのズレとの相関はない。節片形状が複合体分布に見られ、より大きな 背景構造を現わしているのか調べた。複合体の分布を2、3、4本腕でフィッ トした。4本腕が最も良く合う。我々の結果は Geogelin, Geogelin (1976) の研究を支持する。

Alves, Homeier (2003)
野獣を現わす:W49A の埋もれた星団の発見
 W49 GMC の最深部 5'x5'= 16x16 pc を FWHM = 0.5" JHKs 撮像した。4つの 大質量星団が見つかった。最大の星は 120 Mo である。その中で最大の 星団1 は UCHIIR から成る有名な Welch ring の 3 pc 東にある。星団1の特徴は、 (1)Av>20 mag の前景減光を受けている。 (2)非一様な内部減光は 30 mag 以上である。 (3)直径 6 pc の HIIR を形成している。  幾つかの UCHIIRs の励起星を同定した。W49A の大質量星探しは、 電波から期待される Ly 連続光と一致かやや多めである。Welch リングの 形成は星団1により誘発されたのかも知れないが、W49A 星形成域全体では 同時期に形成の種が撒かれたのであって、端から順に起きたのではない。

Reed 2003
銀河系 OB-星のカタログ
 Case-Humburg 銀河面上明るい星サーベイを拡大して、 文献から 5500 星を追加して、銀河系 OB-星の全天カタログ を作成した。 その結果総数は 16,000 星以上となった。UBVβ 測光入力 数は 30,000、 MK 分類の入力数は 20,000 を越える。

Reed 2001
太陽近傍 OB-星の光度関数
 太陽近傍 OB 星の光度関数を、mpg ≤ 10 mag の 2600 星から導いた。サンプル星の絶対等級により距離・完全性関係が変化すること と、銀河面に垂直方向の密度変化も考慮した。  得られた光度関数は Humphrey, McElroy が以前得たものと -7 > Mv > -4 で良い一致を示した。銀河面上での数密度として、 9.1 × 10-7 stars pc-3 を得た。太陽円以内では 19,000 個となる。太陽から 2.5 kpc 以内に予想される 20 Mo 以上の星の数 636 は Garmany et al が与えた 424 個にくらべ 50 % 大きい。彼らが推定に用いた サンプルは不完全だったためであろう。

Massey, Waterhouse, DeGiola-Eastwood (2000)
LMC/SMC アソシエイションのターンオフから決めた W-Rs, LBVs 母星質量
 自分たちと文献データを合わせて、ウォルフ・ライエ星と他の進化した大質量星 を含むマゼラン雲の 19 OB アソシエイションを調べた。分光から多数の天体、 例えば O-型超巨星、SMC 中の大質量連星、LMC の新しく確認された LBV (LBV R 86)、 新しく発見されたウォルフ・ライエ星 (Sk-69°194)、新発見の Be 星 LH 85-10 などを同定した。
 これ等のデータから赤化の決定、物理的 HR 図の作成を行った。約半数のアソシ エイションは共時的(coeval) で、大質量星の年齢差 Δτ < 1 Myr で あった。未進化系列の星の最大質量から、進化した星の母星質量を決めた。また、 未進化系列の最大質量星の総輻射光度から、進化した星の輻射補正 BC を決めた。 これらの星の複雑な大気をモデル化する際に BC の制約は大変有用であった。
 こうして我々は以下を見出した。
(1)SMC の WR 星は最大質量 (> 70 Mo) から来た。これは、低メタル環境では 最も質量の大きい星のみが十分なマスロスが出来、従って W-R 星に成れるという シナリオに合致する結果である。
(2) LMC では早期型 WN (WNE) 星がターンオフ質量 30 - 100 Mo またはもっと大 のアソシエイションで見られる。これは、 LMC メタル量の場合、M > 30 Mo の 星は全て WNE 期を経ることを意味する
(3)SMC でただ一つ見つかった WC 星はターンオフ質量 70 Mo のアソシエイションに 属する。このターンオフ質量は SMC WN 星の場合に等しい。LMC では WC 星が見つかる のはターンオフ質量 45 Mo かそれ以上のアソシエイションである。これは WN 星 と同じ区間である。つまり、 WC 星は基本的には WN 星と同じ質量区間の星から 生まれる。それがしばしば同じ星団中で両者が見つかる理由であろう。これは 局所群銀河内での WC/WN 比を解釈する際に重要な意味がある。
(4)我々のサンプルでは LBV は最も大質量 M > 85 Mo のグループから 出てくる。最近 Ofpe/WN9 星の一つが LBV 的な燃え上がりを示した。これから Ofpe/WN9 星は LBV の一種ではないかという議論があった。しかし、今回の サンプル中に合った二つの Ofpe/WN9 星, BE 381 と Br 18 はターンオフ質量 が 25 - 30 Mo のアソシエイションに属していた。したがって、Ofpe/WN7 星は LBV とは関係がなく、LBV 的に見える変光の全てが同じ原因ではないことに 注意すべきである。
(5)WN, WC 星の輻射補正 BC は極端な大きさで、例えば平均 BC(WNE) = -6, BC(WC4) = -5.5 である。これらの値は最も高温の O-型星と比べてさえ、絶対値 でずっと大きい。しかし、WNE 星に Hillier の「標準モデル」を適用した結果 では類似の BC を得ている。BC(Ofpe/WN9) = -2 to -9 でより穏やかである。 これらの値を銀河星団に適用すれば異なるメタル量での大質量星進化を理解 するのに役立つだろう。

Carpenter, Sanders (1998) 
W51 巨大分子雲
 W51 HIIR 複合の 1.39°x1.33° 12CO, 13CO J=1-0 輝線の 47" - 47" マップを作製した。W51 視線方向の構造を空間、運動 で分離し、(l, b, V) = (49.5, -0.2, 61) を中心に、M = 1.2 106 Mo, Δl x Δb = 83 x 114 pc の W51 GMC を確認した。W51 GMC の南側尾根に沿って M = 1.9 105 Mo, 22 x 136 pc, V = 68 km/s の細長い第2分子雲が存在する。当初 W51 を定義 していた5個の連続電波源の内、λ 6 cm で最も明るい G49.5-0.4 が 空間的にも視線速度でも W51 GMC と一致する。一方3つの電波源 G48.9-0.3. G49.1-0.4, G49.2-0.4 は第2分子雲と共にある。  文献にある吸収線データから、残りの電波源 G49.4-0.3 は W51 分子雲中に あると思える。W51 分子雲はサイズの点では円盤内分子雲中で上位 1% に入る。 質量からは上位 5 - 10 % に入る。W51 GMC は近傍分子雲のどれよりも巨大で あるが、その平均 H2 柱密度は特に高いわけではなく、また平均 空間密度も近傍分子雲と同程度である。通常の MC では外側の、希薄で星形成 活動の無い領域に質量の大部分が存在するが、 W51 GMC でも同様である。 星形成活動は、第2分子雲と W51 GMC との衝突で始まったのではないか?

Massey 1998b
局所群銀河内の最も明るい星たちの観測
 V では O型星が最も明るくはない 
 近傍銀河中、V で最も明るい星は 15 - 25 Mo の晩期 B- か早期 A-型星 である。輻射等級では最も明るい 85 - 100 Mo の主系列 O-型星は V では 数等暗い。あまりに高温の星では、観測カラーからは有効温度、輻射補正に ついての情報を得ることが出来ない。分光が必要である。大質量星の 子孫には LBV, WR, RSG が含まれる。それらを近傍銀河で検出する際の 選択効果を論じる。

 大質量側の IMF
 大質量側の IMF は, MW, LMC, SMC で同じ勾配 Γ ∼ -1.3 (Salpeter) を持ち、メタル量依存性は認められない。しかし、星形成域 からはるかに離れたフィールドにも多数の大質量星が見つかっており、 その勾配は Γ ∼ -4 である。星形成が活発な領域では大質量側 に重みがかかって星が生まれるらしい。

WC/WN 比とメタル量 
 大質量星の進化経路は LMC, SMC での星の HR 図上分布をうまく再現する。 局所群では WC/WN 比がメタル量とよく相関することが判った。”Conti" シナリオでは WC 星に進化するための光度、質量範囲は星がどのくらい 激しい質量放出を行うかに依存するが、観測された関係はこのシナリオに 合致する。例外は爆発的星形成銀河 IC 10 で、低メタルなのに WC/WN が 高い。しかし、これは激しい星形成の最中はガス温度が高く大質量星 の割合が高くなると考えると矛盾はない。

 ウォルフライエ星になる質量範囲 
 単一年齢星団の研究からは ウォルフライエ星になる初期質量が どの巾になるかを調べられる。一方、年齢が入り混じった集団では WR 星になるための質量の制限値が分かる。銀河系赤色矮星の混入 による影響が NGC 6822, M31, M33 では見られる。そこで赤色超巨星 を分離識別する方法を述べる。M31 は WR 種族が豊富であるのに あかるい RSG を欠いている。これもやはり "Conti" シナリオでは メタル量が高いために適度に高質量の星が RSG に進まず WR 星に変わる と考えると理解される。

Brand, Blitz 1993
外側銀河系の速度場
 外側銀河系の速度場を l = [90, 270], R = 17 kpc = 2 Ro まで与える。 速度場は内側銀河系に対しても太陽から 2 - 3 kpc まで与える。データセット は HIIR と反射星雲のサンプルである。それまでの距離は測光で定める。また 付随する分子雲の視線速度も利用する。それらに HI 接点データを加えた。 データ点は R = [0.2, 2] Ro に亘る。Θ = 回転速度とし、
   Θ/Θo = a1(R/Ro)a2 + a3
で近似すると、Ro = 8.5 kpc, Θo = 220 km/s とした時、 a1 = 1.00767, a2 = 0.0394, a3 = 0.00712 となる。回転曲線はほぼ平坦で あるが、最外側点は僅かに上がる傾向を示す。 R = 2Ro までの銀河系質量は 4.1 1011 Mo である。  残差視線速度=Vlsr(観測)-Vlsr(モデル) のパターンは純回転からのズレを 示唆する。そのズレは渦状密度波の流れに合致する。我々のサンプル中の 早期型星の分布に渦状構造の証拠は見られなかった。ストリーミング=残差 速度に見られる系統速度成分が見つかった。その平均速度は 12 km/s で、 2D速度としては 17 km/s である。LRS では分子ガスが l = 180° から l = 0° 方向に 3.8 km/s で流れていることを見出した。回転曲線の南側と 北側の差は小さく、20 kpc で 5 % である。 太陽から [0.7, 2] kpc にある局所分子雲サンプルから、太陽は銀河面の 13 pc 上にある。分子雲スケール高は 65 pc である。

Walborn,Fitzpatrick 1990
OB 星の現代的分類:デジタルアトラス
 OB スペクトルの可視域分類を新しい総合的な青ー紫数値データに基づいて 見直した。観測は CTIO 1m 光子計数装置で行った。最近の発展の中には、 O3 スペクトル型、O 型星の光度基準、 OBN/OBC 変異、より高精度の 晩期 O/ 早期 B 型などがある。
 ここに集めた 75 標準天体のスペクトル・光度クラス系列には、それらの 例が含まれている。波長域は 3950 - 4750 A の O3 - B3 (-B8 at Ia) スペクトル範囲である。このアトラスは写真乾板に基づく MK アトラスの デジタル版を目指している。

Wood, Churchwell 1989b
分子雲内に埋もれた大質量星:銀河系内の数と分布
 既知の UCHIIR の IRAS 二色図 から UCHIIR のカラー選択基準を導いた。IRAS PSC にその基準を適用して、 1717 個の 埋もれた大質量星候補を見出した。

van der Hucht, Hidayat, Admiranto, Supelli, Doom 1988
ウォルフ・ライエ星の銀河系内分布とサブタイプ進化
 "6th Galactic WR Catalog" (1981) 以来多くのデータが集積したので、 WR 星の固有パラメターを決め直した。太陽から D < 2.5 kpc での WN/WC 比 は 0.55 となった。これはマスロスとオーバーシューティングの影響が現在の 進化モデルで考えられているよりも大きいことを示唆している。観測された範 囲では WR 星の密度は一定である。  散開星団内の WR 星連星に対して、理論的 M-L 関係を比較して輻射補正の 平均値 -4.2±1.2 を得た。O 型星分布との比較から、WR 星は M > 25 Mo 星に由来し、WN 星は 28 - 35 Mo 星、WC 星は 25 - 60 Mo 星だが M > 35 Mo に集中するという結果を得たWNL, WCE, WCL 星の分布に関しても新しい知見 を得た。

Urasin 1987
星間減光から定めた銀河系の腕モデル
 銀河系の二本腕モデルを星間ダストの分布から作った。  モデルはピッチ角 6.5° の対数螺旋である。 二色図上で減光ベクトルで戻して主系列 O - B6 に当てる方法で減光決定。 UBV なのに(?)内側はスキュータムまで達している。二本螺旋だけで 合わせられず、スキュータムが一回りしてきて、局所腕とペルセウス腕に 分裂する。

Forbes 1984
l = [30, 70] の可視渦状腕構造 I. 遠方早期型星の新しい観測
 UBV 光電測光を写真等級 11 等より暗い 86 の早期型星に行った。位置は l = [30, 70] である。Hamburg and Warner Swasey Observatories の Luminous Star catalogues から OB+ と OB 型の星を選んだ。  それらの星でスペクトル型が B1.5 V より早期で and/or 光度クラス Iab か より明るい星の色超過と距離を求めた。いくつかは B, 又は A 型超巨星で 太陽から 8 kpc 以遠であった。

Azzopardi 1987
SMC: Hγ線等値巾と明るく青い星の光度クラス
  2000 個の対物プリズムスペクトルから、銀河系内の OB と 超巨星 O7 - F2 標準星、 SMC の 195 O9 - F8 星 の Hγ 線等値巾を得た。銀河系の星から、等値巾と MK 分類との相関を調べた。それを用いて、SMC の 青い星 172 個の 光度クラスを 与えた。

Garmany, Conti, Chiosi 1982
大質量星の初期質量関数
 カタログから 750 個の 銀河系 O-型星をまとめた。このカタログはおそらく 2.5 kpc まで完全である。この体積限界データから 20 Mo 以上の IMF を作った。その形は dN/dM = 2.3 10-3 M-3 である。この形は Miller and Scalo や Lequeux と異なる。  我々の IMF では質量の増加と共に急激な数の低下は起きない。サンプルを 太陽円の外側と内側に分けると、 IMF に大きな違いがあることが分かる。銀河中心 方向では大質量星の割合が大きい。IMF の傾きは WR 星の空間密度と 関係しているだろう。
http://heasarc.gsfc.nasa.gov/W3Browse/star-catalog/ostars.html

Turner (1980)
20 日セファイド RU Scuti のアソシエイションメンバーシップ
 19.7 日セファイド RU Scuti の近傍にある明るい星の UBV 測光と MK スペ クトル型を示す。二つのはっきりした集団が見えてきた:DM = 11.60 (2.09 kpc) で Trumpler 35 星団(t=25 Myr)の中にある近距離群と DM = 12.74 (3.53 kpc) で t=9 Myr の遠距離群である。  赤化量と進化段階の一致から RU Sct は Trumpler 35 群に属する。 OB 星に対する赤化 E(B-V) = 1.03 から ⟨MV⟩ = -5.19 が得られた。明るい未研究の背景アソシエイションは WC9 星 MR90 を含んで いるらしい。

Sitko, Savage 1980

特異 Be 星 HD 45677 の紫外、可視、赤外観測 
 特異 Be 星 HD 45677 を IUE で観測した。ほぼ同時期に可視、赤外の地上観測も 行った。それらから 0.12 - 12.6 μm SED を作り、星周ダストシェルにおける UV 光から IR 光への変換を調べた。高分解スペクトルからスペクトル型 B2 が示唆され 可視光の結論と合致する。しかし、低電離イオンのラインは予想より強く、 おそらくガス状星周シェルで生まれたものであろう。 スペクトル、特に中間紫外では、に多数の金属輝線が見える。
 星周吸収は 2150 A にピークを持つが、減光曲線の形は星間減光と大きく変わる。 HD 45677 の幅の広い赤外輻射は幾つかの炭素星、WC 星と似ており、2150 A の吸収バンドと合わせて考えると、星周グラファイトの存在を示す。 現時点、 JD 2443780、で UV, Opt での光度欠損は赤外超過の量とほぼ等しい。 観測される UV と可視の長期変動は赤外での変動を伴わず、 HD 45677 周囲の ダスト分布が斑点状であることを示す。

Humphreys 1978
銀河系内の O 型星と超巨星
 銀河系内の最も明るい星について、 HR 図、光度、赤色超巨星と青色超巨星の比 を調べた。アソシエーションと星団に属する超巨星と O 型星のカタログを付けた。 モデル HR 図では Mbol = -10 ∼ -12 の非常に明るい O 型星のグループは存在 するが、進化した超巨星ではそれほど明るい星はない。 B5 より晩期では超巨星の 最大光度は Mbol = -9.5 である。  最も明るい赤色超巨星の観測値は Mv = -8 で、Sandage, Tammann は距離指標に 使う提案をした。特に明るい Cyg OB 2 No.12 (Mv = -9.9 ) を除くと、青い星の 最大光度は Mv = -8.5 である。

Walborn 1973
太陽近傍における O-型星の分布
 O-型星の2次元分類システムに関する新しい結果を提示する。新しく追加し た南北天の星の分類が与えられ、特異な Of-的スペクトルの二つの群が述べら れる。絶対等級に関する修正を議論した。正常な O-型星の分類と分布を示す。 最も驚くべき結果は、カリーナ・サジタリウス腕が l = [285, 20] の間 全区間で局所腕から分離していることである。他の若い天体に関する以前の 結果との良い一致は O-型星の新しい光度分類を支持する。

Abraham (1970)
カリーナ領域における OB-星の分布
 新しい Hβ ライン強度とスペクトル分類から、カリーナにある 436 の OB 星までの距離を決めた。銀河系中心からから見ての OB 星の分布には 鋭い縁が存在することが判った。この縁線の向こう側には OB-星が殆ど 見出されない。 OB 星の帯は Rg < 3 kpc までは銀河面に 貼りついている。この距離までは OB星 の平均 |z| = 38.1 pc である  。Rg > 4 kpc で OB- 帯は銀河面から下方向に 2° - 3° の角度で逸れ始めその傾向は Rg = 10 kpc まで持続する。この折れ曲がりは HI 21 cm 観測で見出された折れ曲が りと類似の現象である。

Humphreys (1970)
超巨星の空間分布と運動学
 全スペクトル型に亘る超巨星の分布と運動を、特にガスとの相関を重点的に、 調べた。この研究に用いた星は表にまとめた。これら超巨星の 60 % はグループ で存在している。オールト定数 A = 14 km/s/kpc が得られた。また二次係数が -0.6 km/s/kpc2 と求まった。  星とガスの速度を比較した結果の一致は良かった。これらの超巨星は比較的 ガスの濃い箇所に多い。星の運動残差はグループの運動が非円周回転であること を示唆する。カリーナ・ケンタウルス領域では腕の両側で系統運動 10 km/s が 検出された。これは Lin の密度波理論の予想に合う。ペルセウスの運動残差は 部分的にはこのずれ運動のためかも知れない。

Klare, Neckel 1967
OB 星の空間分布
 北天、南天の 8703 OB-星までの距離を求めた。 7903 星のデータは ハンブルグ・クリーブランドカタログとハイデルベルグカタログから 採った。それ以外の 800 星の MK スペクトル型は既知であった。MK 分類が未定の星に対しては OB+, OB0, OB- グループの平均絶対等級と Neckel の星間吸収モデルを当てはめた。
 銀河面に垂直な方向の OB-星分布を研究した。 2 kpc より遠方では それは星間吸収の効果で難しい。星層の厚みは H* = 50 pc, 吸収層の厚みは 30 pc と分かった。OB-星は 3 本の渦状腕に集中している ことがこれまでより遠くにまで示された。

Sharpless 1966
アソシエイション、HIIRs、銀河星、超巨星の分布
 "Galactic Structure" の第7章。1965 年当時までの腕追跡天体、アソシエ イション、HIIRs、星団、超巨星の研究結果を解説。相互に比較して、 最終案を出す。  サジタリウス腕、オリオン腕、ペルセウス腕がほぼ確定し、サジタリウス腕の 内側にもう一つあるらしいという推測がなされている。

Morgan (1958)
太陽から離れた距離にある青色巨星の観測
 通常の分光観測では青領域で暗過ぎる早期型星を発見し、観測する ための技法を述べる。

Munch, Morgan 1953
シグナスにおける青色巨星(OB-星)集団
 (l, b)I = (47, 0) 付近に青色巨星 (OB 星)が 11 個発見された。 この領域は γ Cygni の 約2度北東にあたる。内2つは既知の OB 星 である。  それらの見かけ実視等級は 9 - 11 等である。



赤色超巨星

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著者 内容

Goldman, Boyer, Dalcanton, McDonald, Girardi, Williams, Srnivasan, Gordon (2022)
アンドロメダ銀河の PT-AGB 星数調査とダスト収支への寄与評価
 M31 北西部の高メタル TP-AGB 星のほぼ完全なカタログを示す。 346,623 AGB 星が検出された。内 4802 星は大量のダストを形成していた。 また年齢のわかる星団内に1356 AGB 星が見つかった。星団のいくつかでは メタル量も知られている。  スピッツアー中間帯データを用いて、ダスト 形成 AGB 星の C/M 分類を行った。LMC AGB 星のカラー対マスロス関係を使い、 PHAT 領域にある AGB 星からのダスト放出量を評価した。ダストの 97.8 % はO-リッチである。ダスト寿命を 300 Myr(MW) かずっと長いかの仮定で、 M 31 AGB 星の貢献度は 0.9 - 35.3 % である。これはマゼラン雲での以前 の評価に一致する。


Massey, Neugent, Levesque, Drout, Courteau (2020)
M31 と M33 の赤色超巨星種族
 log(L/Lo) = 4.0 まで完全な NIR 測光アーカイバルデータを用いて、 M31 と M33 の RSGs 探査を行った。M31 で 5 deg2, M33 で 3 deg2 である。前景星の除去には Gaia が用いられた。その後、CMD 上で RSGs を AGBs から分けた。MARCS 大気 モデルを使い、有効温度と輻射光度を定めた。得られた HR-図は Geneva 恒星 進化トラックと良い一致を示した。  M31 で 6400, M33 で 2850 の RSGs が Holmberg 半径内に見つかった。 RSGs の空間分布は渦状腕をなぞっているが、AGBs は円盤全体により一様に広 がっている。

Ren, Biwei Jiang, Yang, Wang, Jian, Ren (2020)
M31 と M33 の赤色超巨星 1. 完全データ
 M31 と M33 内の赤色超巨星の完全サンプルを得た。UKIRT/WFCAM の公開デー タを用いて、(J-H)-(H-K) 二色図上で前景の赤色矮星を除き、候補星を選んだ。  結果として、M31 には 5,498, M33 には 3,055 の赤色超巨星が見出された。 副産物として O-リッチ, C-リッチ AGB 星の完全サンプルも得られた。さらに、 TRGB も決定され、M 31, M33 距離が求められた。

Messineo, Brown (2019)
Catalog of Known Galactic K-M Stars of Class I Candidate Red Superfiants in Gaia DR2 ガイア DR2 中の既知クラス I 赤色超巨星候補のカタログ
 Gaia DR2 の信頼度が高い、π/σ > 4 で RUWE < 2.7, 赤色超巨星 889 個を調べた。サンプル星は Skiff 2014 が 集めた、これまでに分光で同定されたK-M 型でクラス I の超巨星である。  2MASS, CIO, MSX, WISE, MIPSGAL, GLIMPSE NOMAD データから星の輻射等級 を求めた。サンプル星を HR-図上で解析し 43 星が Mbol < -7 であると 分かった。サンプル星の 43 % は M > 7 Mo であり、 30 % は巨星であった。

Soraisam et al. (2018)
パロマートランジットファクトリーからの M31 赤色超巨星の変光
  Palomar Transient Factory 5年間 1500 回の R バンド観測を用いて、 M 31 で 分光 で決まった 255 RSGs の変光を調べた。MK ≤ -10 (log(L/Lo) > 4.8) の RSG は全て ΔR > 0.05 の変光星であった。周期解析の 結果、63 個にはっきりした周期が認められた。 それらから決めた PLR は他のメタル量を持つ銀河の PLRs と同じであった。  今回初めて、第一倍音振動と思われる系列を発見した。MESA 恒星進化 モデルとの比較から、この第1倍音仮説が裏付けられた。また、これらの星の 質量が 12 Mo < M < 24 Mo であることが示唆された。これらの RSGs はタイプII コア崩落型超新星の前駆天体なので、 RSGs 変光が SN 前駆天体 の初期質量の評価に影響していた可能性がある。前駆天体のアーカイバル画像 を調べた結果、その効果は測光誤差に比べ無視できる程度であることが分かった。

Messineo, Zhu, Menten, Ivanov, Figer, Kudrizki, Chen (2016)
内側銀河における異常に多数の赤色超巨星の発見
 Q1 と Q2 を使い、2MASS と GLIMPSE North カタログから選んだ RSG 候補 94 個の H-, K-バンド R/1000 赤外分光観測を行った。水吸収が強くなく、 EW(CO) が大きい 58 個 = 61 % の RSGs を同定した。   47 個の距離をレッドクランプ法で決定した。

Jones, Kemper, Srinivasan, McDonald, Sloan, Zijlstra (2014)
LMC O-リッチ進化した星のアルミナ量  
 O-リッチ AGBs の星周外層中ダストの成分を決めるために、ダスト成分、 マスロス率、シェル内径、星パラメターのグリッド上で MODUST 輻射輸達モデ ルを作った。モデルのカラーを SAGEーSpec LMC サンプルと比較して、良い一 致を得た。5 - 37 &mu:m Spitzer IRS スペクトルと 可視 - MIR の測光が与 えられた 37 O-リッチ AGB 星をフィットした。  モデルフィットから得たマスロス率は 8 10-8 - 5 10-6 Mo/yr である。観測スペクトルに合うダスト組成は 非晶質シリケイトが主成分 で、それに非晶質アルミナ、金属鉄が加わる。AKARI の[11-15]-[3.2-7] 二色図 からアルミナの割合を決めることも出来る。

Hohle, Neuhauser, Schultz (2010)
 O-, B-型星と赤色超巨星の光度と質量
 O-, 早期 B-型と 3 kpc 内の全ての赤色超巨星を調べた。サンプルは 2MASS 観測とヒッパルコス視差があるものに限った。スペクトル型、光度クラス、 多色測光値から減光補正を行い、絶対等級を求めた。進化モデルと光度、カラー を比較して、質量、年齢を定めた。  3 kpc 以内のサンプル星全ての光度を使い、光度クラス I, III, V の平均 等級をスペクトル型に対して計算した。以前のデータは連星を分離していなか ったのと、距離を大きく見積もっていたために光度を大きく評価していたこと がわかった。質量と年齢の分布から太陽から 600 pc 以内の超新星率を 今後 10 Myr で 20 回/Myr と評価した。

Jura, Kleinmann (1990)
 太陽近傍の質量放出赤色超巨星 
 太陽から 2.5 kpc 以内にあるマスロス中の赤色超巨星 21 個(20 個は M-型、 1個は G-型 L > 105 Lo)のリストを作成した。これらは初期 質量 20 Mo の主系列星から進化したものである。それらの表面密度は 1 - 2 stars/kpc2 であった。 これらの星は WR-星に比べ、GC方向への集中 が少ない。  M型超巨星からの質量返還は 1 - 3 10-5 Mo kpc-2yr-1 である。GCに向いた半球側では W-R 星に較べ、RSGs からのマスロスはずっと少ない。しかし、半銀河中心方向では それが逆転する。M 超巨星の期間は 2 - 4 105 yr 程度である。 この期間に 20 Mo の星は 3 - 10 Mo のガスを星間空間に戻す。

van der Hucht, Hidayat, Admiranto, Supelli, Doom 1988
ウォルフ・ライエ星の銀河系内分布とサブタイプ進化
 "6th Galactic WR Catalog" (1981) 以来多くのデータが集積したので、 WR 星の固有パラメターを決め直した。太陽から D < 2.5 kpc での WN/WC 比 は 0.55 となった。これはマスロスとオーバーシューティングの影響が現在の 進化モデルで考えられているよりも大きいことを示唆している。観測された範 囲では WR 星の密度は一定である。  散開星団内の WR 星連星に対して、理論的 M-L 関係を比較して輻射補正の 平均値 -4.2±1.2 を得た。O 型星分布との比較から、WR 星は M > 25 Mo 星に由来し、WN 星は 28 - 35 Mo 星、WC 星は 25 - 60 Mo 星だが M > 35 Mo に集中するという結果を得たWNL, WCE, WCL 星の分布に関しても新しい知見 を得た。

Humphreys 1978
銀河系内の O 型星と超巨星
 銀河系内の最も明るい星について、 HR 図、光度、赤色超巨星と青色超巨星の比 を調べた。アソシエーションと星団に属する超巨星と O 型星のカタログを付けた。 モデル HR 図では Mbol = -10 ∼ -12 の非常に明るい O 型星のグループは存在 するが、進化した超巨星ではそれほど明るい星はない。 B5 より晩期では超巨星の 最大光度は Mbol = -9.5 である。  最も明るい赤色超巨星の観測値は Mv = -8 で、Sandage, Tammann は距離指標に 使う提案をした。特に明るい Cyg OB 2 No.12 (Mv = -9.9 ) を除くと、青い星の 最大光度は Mv = -8.5 である。



電離領域

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著者 内容

Green (2019)
銀河系 SNRs の改訂カタログ
 銀河系 SNRs カタログの改訂版を提示する。2014 年版以降の新しい 6 SNRs が加わったが、HIIRs と判明した 6 SNRs が除去された。  カタログには 294 SNRs が登録されている。簡単な統計を取った。また、最近 提案された SNRs 候補も示す。

Anderson, Wang + 18 (2017)
THOR で発見された銀河系 SNR 候補
 銀河系で発見された SNRs の数はモデル予想値に比べ非常に少ない。その原 因は、高感度の電波連続波データの不足にあると見做されている。広がった、 低輝度電波源の探索は新しい SNRs の発見に繋がるはずだが、数の多い HIIRs との混じり合いがその探索を困難にしている。
 しかし、SNRs の中間赤外表面輝度は電波連続光強度に比べ著しく低い。この 特徴を使うと、 HIIR と区別することができる。そこで、連続電波源のうち、 MIR 対応天体のないものを SNR 候補として挙げることができる。  THOR 観測から 1 - 2 GHz 高分解能電波連続波データ、VGPS 1.4 GHz 低分解 銀河面サーベイデータ、それに GLIMPSE, MIPSGAL, WISE サーベイデータを使い、 SNR 候補を探した。事前に WISE Catalog of Galactic HIIRs と一致する天体は 省いておいた。こうして、THOR と VGPS が重なる l = [17.5, 67.4], b = [-1.25, 1.25] 領域から新しく 76 SNR 候補を選び出した。それらの分布は既知 SNRs と 似ているが、 l = 30 付近に多数存在する。そこは盾座腕の接線方向である。 既知 SNRs のサイズは 11.0'±7.8' だが、候補 SNR 天体は6.4'± 4.7' で小さく、暗い。これらの候補が偏光観測やスペクトル指数の測定から真の SNRs と認められると、この領域の SNRs の数はほぼ倍増する。しかし、それでもなお モデルとの差は大きい。

Urquhart, Figura, Moore +5 2014
RMS サーベイ: 銀河面分布と大質量星形成
 Red MSX (RMS) 天体探査で同定された 1750 個の埋もれた若い大質量星 を用いて、最近の大質量星形成域の銀河面内分布を求めた。視線速度データ のない 800 天体の分子線観測を行った。文献にある距離決定で用いられた 方法を検討し、既存 HI データを用いて、太陽円内の約 200 天体の距離に 関する不定性を解消した。
 距離から絶対輻射等級(∼ 104 Lo)を計算し、サーベイの 完全度を評価した。全部で 1650 天体の距離と光度を求めた。その 1/3 は サーベイの完全度限界より上である。サンプルの銀経、銀緯、視線速度、 中間赤外画像を調べた結果、 120 の集団が同定された。それらの位置は 既知の有名な星形成複合体、 G305, G333, W41, W43, W49, W51 に付随 していた。
 天体位置と銀河系の腕との相関を調べた結果、若い大質量星の分布 は渦状腕に沿っていることが明らかになった。全体としての天体表面密度 と表面輝度は分子雲の表面密度と良い相関がある。これは分子雲の単位 体積当たりの大質量星形成率がほぼ一定であることを示す。
 他銀河での大質量星と分子ガスの比較も類似の中心距離関係を示す。 埋もれた大質量星からの総光度は &sim: 0.76×108 Lo でその 30 % は最も大きな星形成域 10 個に含まれている。スケール高を 銀河中心距離の関数として求めた結果、4 kpc - 8 kpc の間では 20 - 30 pc からゆっくり増加するだけだが、その先は急速に大きくなる。

Messineo, Figer, Davies, Kudritzki, Rich, MacKenty (2010)
HST/NIRCam と多天体分光による GLIMPSE9 星団の観測
  GLIMPSE9 の HST/NICMOS3 と KPNO, KeckII で多体分光測光を行った。 CMD には H-Ks = 1 の星団系列が見えた。しかし2MASS で済む。これは星間減光 AKs = 1.6 に相当する。 3つの最も明るい星は深い CO 吸収を示した。M1 - M2 赤色超巨星の特徴で ある。二つの O9 - B2 超巨星が確認された。それから求まる分光距離は 4.2 kpc である。  同一年齢を仮定すると、 t = 15 - 27 Myr、 1 Mo までの星団質量 1600 Mo となる。GLIMPSE9 の周りにいくつかの HIIRs と SNRs が存在する。 幾つかの星団候補も見つかった。 それらと GLIMPSE9 は全て一つの GMC に属していたのであろう。

Giveon, Becker, White (2008)

GLIMPSE の 電波成分
 l = [350, 42], b = [-0.4, 0.4] で VLA 5 GHz - MSX6C - GLIMPSE v1.0 マッチングを行った。GLIMPSE の高解像度と高感度により、埋もれた星形成域 の同定を改善し、中心星、電離ガス、ダストの関係をより深く調べる役に立っ た。GLIMPSE カタログは数が多すぎて 5 GHz 天体との同定が困難であるが、 GLIMPSE 天体を、「赤」(m3.6-m8>2.5)と 「青」(m3.6-m8<2.5) に分けると解決した。 GLIMPSE の高い感度にも拘わらず、GLIMPSE-5GHz マッチの数は予想外に 少なかった。  双方が重なる領域=(l=[10,42],b=[-0.4,0.4])に GLIMPSE-5GHz マッチ 132 天体中 55 個が MSX とマッチした。マッチングは期待したほどでは 無かった。しかし、それでも幾つかの結果が得られた。(1) 電波位置付近 では 「青」天体数が減る。それらの平均見かけ明るさは上昇し、カラーは 著しく赤くなる。これは不透明な雲の背後で背景星が消えるという描像に 合う結果である。(2) 選ばれた天体は近赤外および中間赤外カラーの条件 を定めた。それを用い、GLIMPSE 全領域中から 849 GLIMPSE 天体を MSX マッチがあり、かつ選択天体と同じ性質の天体として同定した。 それらの 15 % のみがこれまでに HIIR, メーザー天体、YSO、MC として同定されていた。

Churchwell, Watson, Povich, Taylor, Babler, Meade, Benjamin, Indebetouw, Whitney (2007)

泡立つ天の川円盤 II. 内側 20° 
 GLIMPSE II 画像を視察した結果、 銀河系中心から 10° 以内に 269 個 の中間赤外の泡を発見した。泡の表面密度は 5 泡/平方度で |l| = [10,65] の3倍である。これは内側 10° 領域は外側より丁寧に小さな泡を探す検査 がされたからである。l = 2° から 10&deh; にかけて泡の数は倍になる。 この増加にはいくつかの理由があり、背景光レベルの低下、混み具合、減光 度などが関係する。  泡の離心率は 0.6 - 0.8 で > 50 % には噴出の証拠がある。これは 星間物質の密度揺らぎ、非等方星風、非等方輻射などの効果であろう。 HIIRs と星団に同定される泡の割合は |l| > 10° の泡の半分で ある。これは内側の泡カタログに小さな泡が多く含まれたためである。 少なくとも泡の 12 % には誘発性星形成を示唆する形態が見出される。 誘発性星形成の証拠がある泡の大部分は二次性の泡を持たない。おそらく まだ年齢が若すぎるためでないか。

Brogan, Gelfand, Gaensler, Kassim, Lazio (2006)
内側銀河系における 35 SNRs の発見
 銀河面 l = [4.5, 22] b = [-1.25, 1.25] の VLA 90 cm サーベイから、 35 の新しい SNRs を発見した。 20 cm. 11 cm. 8 cm アーカイバルデータも用い、 SNRs の性質を調べた。 90 cm 画像は、直径 2'.5 - 50' で表面限界輝度 20-21 W m-2Hz-1sr-1 までの SNRs を検出する。  今回のサーベイにより、この領域の SNRs の数は3倍になり、銀河系全体の SNRs の数を 15 % 増加させた。これらの結果は内側銀河系のより深い、低周 波サーベイが SNRs の予想数と検出数との差を解消する可能性を示す。

Churchwell + 21 (2006)

泡立つ天の川円盤 
 GLIMPSE 画像を視察した結果、 322 の部分的または完全なリングを発見した。 それらは部分的または完全な3次元泡を表している。泡は最初、高温の若い星 により星形成領域内に形成される。我々は平均して 1泡/平方度 発見した。 泡の 25 % は既知の電波 HIIR と一致した。13 % は既知の星団を包んでいた。 電波で検出できる HIIRs を作るには低温過ぎる B4 - B9 星が我々の泡の 3/4 を占めているようである。残りは O - B3 星でそれらは電波 HIIRs として検知 されている。  泡の幾つかは HIIR の端で PAH 放射が励起されており、星風による力学的 に作られたものではないようだ。泡の内既知の SNR と同定されたものは 3 個 だけであった。PNe や WRs と同定された泡はなかった。泡は小さい。角半径の 分布は 1' - 3' がピークで 98 % は 10' 以下、88 % は 4' 以下である。 90 % のシェル厚みはシェル外側半径の 0.2 - 0.4 である。泡の厚みは泡半径 と共に増加する。離心率分布は 0.6 -0.7 の間がピークでかなり大きい。65 % は離心率 0.55 - 0.85 にある。

Giveon, Becker, Hefand, White (2005)

天の川の電波 CHIIRs の新しいカタログ II. 1.4 GHz データ
 新しい VLA 1.4 GHz 銀河面カタログ、l = [340, 120], b = [-0.8, 0.8], l = [350, 40], b = [-1.8, 1.8], l = [100, 105], b = [-2.5, 2.5], を MSX6C カタログとマッチさせた。これは Zoonenmatkermani et al が最初に 出版したカタログをデータを再解析した結果である。  その結果新しいカタログでは 1.4 GHz 源の数が3倍になった。新しい 1.4 GHz カタログと MSX6C カタログの比較から 556 マッチが得られた。その大部分は 「赤」MSX 天体である。スケール高は 24' - 28', 8.5 kpc で 60 - 70 pc で ある。銀緯分布は l > 40° で平らになり、マッチ数は急落する。

Homeier, Alves (2005)
W49 GMC の大質量星形成
 W49 の最も濃い部分の JHKs 撮像を行った。減光から W49A に属する星 を分離した。その質量関数は傾き -1.6±0.3 である。減光限界で検出 された星から求めた総星質量は 5-7 104 Mo である。  幾つかの UCHIIRs の励起星候補を決定した。ただし候補が多く、一意では ない。

Russeil (2003)

星形成複合体と銀河系の渦状構造
 星形成複合のカタログを作製した。含まれる観測量は Hα, H109α, CO. 電波連続波、電波吸収線 である。各複合体に、天体速度、運動距離、天体 距離を決定した。距離は同一の方法で決定し、データの一様性を高めた。 星の距離を決定する過程で回転曲線が得られ、 Brand, Blitz (1993) との良い一致が得られた。  回転曲線との残差速度は腕の領域で大きい。ワープも検出されたが、円回転 からのズレとの相関はない。節片形状が複合体分布に見られ、より大きな 背景構造を現わしているのか調べた。複合体の分布を2、3、4本腕でフィッ トした。4本腕が最も良く合う。我々の結果は Geogelin, Geogelin (1976) の研究を支持する。

Alves, Homeier (2003)
野獣を現わす:W49A の埋もれた星団の発見
 W49 GMC の最深部 5'x5'= 16x16 pc を FWHM = 0.5" JHKs 撮像した。4つの 大質量星団が見つかった。最大の星は 120 Mo である。その中で最大の 星団1 は UCHIIR から成る有名な Welch ring の 3 pc 東にある。星団1の特徴は、 (1)Av>20 mag の前景減光を受けている。 (2)非一様な内部減光は 30 mag 以上である。 (3)直径 6 pc の HIIR を形成している。  幾つかの UCHIIRs の励起星を同定した。W49A の大質量星探しは、 電波から期待される Ly 連続光と一致かやや多めである。Welch リングの 形成は星団1により誘発されたのかも知れないが、W49A 星形成域全体では 同時期に形成の種が撒かれたのであって、端から順に起きたのではない。

Callaway, Savage, Benjamin, Haffner, Tufte 2000
GS 018-04+04 のスーパーシェル噴出の観測的証拠
 二つのスーパーシェル GS 018-04*04 と GS 034-06+65 を含む領域の HI 21 cm ラインマップを作った。今回は GS 018-04*04、以降盾座スーパーシェルと呼ぶ、 を扱う。このスーパーシェルは直径 5° で銀河面の下側 -7° まで広がる。 盾座シェルの距離は 3.3 kpc で直径 290 pc, 銀河面と垂直方向 400 pc 延び ている。壁に掃き寄せられた質量は 6.2×105 Moである。
 我々の観測ではシェルのてっぺんは破れていてかなりの量の HI が b = -11° まで達し、 3.7×104 Mo の HI 雲を銀河面からの高さ 630 pc の所に作っている。
 ROSAT によると X 線強度は HI 強度と逆相関している。この放射は盾座シェル 内部の高温ガスと関係するものであろう。1.5 keV X-線のピークはシェルの基部にあり、 0.75 keV はシェル内部と頭部でピークをしめし、0.25 keV はシェルの上の方まで広 がっていることが分かった。X-線光度は 5 × 1036 erg/s である。
 ウィスコンシン Hα マッパー(WHAM) は HI とよく似た形の Hα 分布を 示している。スペクトルは電離ガスが HI と似た視線速度を持ち、電離ガスと HI が 同じ距離にあることを示す。
 IRAS 60, 100 μm マップはダストが HI と相関して存在することを示す。 赤外輝度は 100 μm 放射の超過を示す。これは分子水素成分 2.4 × 1021 cm-2 の濃い雲が高銀緯にあることを意味する。
 HD 177989(l=17.°89, b=-11.°88) と HD175754(l=16.°40, b=-9.°92)の IUE UV スペクトルは盾座スーパーシェルからの放出ガスと 同じ速度に、高い電離度のガスによる吸収を見出した。HD 175754 の場合、 高いイオンコラム密度比は低温と高温のガスが乱流混合層を作っていることを 示唆する。
 こうして、多波長データは盾座スーパーシェル内部の熱い物質がシェルの頭から 噴き出すというモデルを支持する。

Carpenter, Sanders (1998) 
W51 巨大分子雲
 W51 HIIR 複合の 1.39°x1.33° 12CO, 13CO J=1-0 輝線の 47" - 47" マップを作製した。W51 視線方向の構造を空間、運動 で分離し、(l, b, V) = (49.5, -0.2, 61) を中心に、M = 1.2 106 Mo, Δl x Δb = 83 x 114 pc の W51 GMC を確認した。W51 GMC の南側尾根に沿って M = 1.9 105 Mo, 22 x 136 pc, V = 68 km/s の細長い第2分子雲が存在する。当初 W51 を定義 していた5個の連続電波源の内、λ 6 cm で最も明るい G49.5-0.4 が 空間的にも視線速度でも W51 GMC と一致する。一方3つの電波源 G48.9-0.3. G49.1-0.4, G49.2-0.4 は第2分子雲と共にある。  文献にある吸収線データから、残りの電波源 G49.4-0.3 は W51 分子雲中に あると思える。W51 分子雲はサイズの点では円盤内分子雲中で上位 1% に入る。 質量からは上位 5 - 10 % に入る。W51 GMC は近傍分子雲のどれよりも巨大で あるが、その平均 H2 柱密度は特に高いわけではなく、また平均 空間密度も近傍分子雲と同程度である。通常の MC では外側の、希薄で星形成 活動の無い領域に質量の大部分が存在するが、 W51 GMC でも同様である。 星形成活動は、第2分子雲と W51 GMC との衝突で始まったのではないか?

Brand, Blitz 1993
外側銀河系の速度場
 外側銀河系の速度場を l = [90, 270], R = 17 kpc = 2 Ro まで与える。 速度場は内側銀河系に対しても太陽から 2 - 3 kpc まで与える。データセット は HIIR と反射星雲のサンプルである。それまでの距離は測光で定める。また 付随する分子雲の視線速度も利用する。それらに HI 接点データを加えた。 データ点は R = [0.2, 2] Ro に亘る。Θ = 回転速度とし、
   Θ/Θo = a1(R/Ro)a2 + a3
で近似すると、Ro = 8.5 kpc, Θo = 220 km/s とした時、 a1 = 1.00767, a2 = 0.0394, a3 = 0.00712 となる。回転曲線はほぼ平坦で あるが、最外側点は僅かに上がる傾向を示す。 R = 2Ro までの銀河系質量は 4.1 1011 Mo である。  残差視線速度=Vlsr(観測)-Vlsr(モデル) のパターンは純回転からのズレを 示唆する。そのズレは渦状密度波の流れに合致する。我々のサンプル中の 早期型星の分布に渦状構造の証拠は見られなかった。ストリーミング=残差 速度に見られる系統速度成分が見つかった。その平均速度は 12 km/s で、 2D速度としては 17 km/s である。LRS では分子ガスが l = 180° から l = 0° 方向に 3.8 km/s で流れていることを見出した。回転曲線の南側と 北側の差は小さく、20 kpc で 5 % である。 太陽から [0.7, 2] kpc にある局所分子雲サンプルから、太陽は銀河面の 13 pc 上にある。分子雲スケール高は 65 pc である。


Digel, Bally, Thaddeus 1990
外側腕の巨大分子雲
 内側銀河の巨大分子雲と質量、サイズの点で同程度の分子雲が外側銀河系腕 に b = 1° を中心とした l = [65, 71] の新しい CO サーベイで検出された。 Ro = 8.5 kpc を仮定して、それらは R = 12 kpc にあり、ビリアル質量と CO 光度ーライン巾関係から定めた N(H2/WCO 比は内側銀 河の 4±2 倍大きく、CO では暗めである。
 R = 11 kpc の外側に外挿すると、銀河系全体では (1 - 7) × 108 Mo の分子質量が期待される。サーベイされた外側腕複合体の中には, R > 10 kpc で最も明るい二つの HIIR が含まれている:一つは W 58, もう一つはこれまで未同定 であった S 98 の遠方成分である。


Wouterloot, Brand 1989
太陽円外側の IRAS 天体I.CO 観測
 l = [85, 280], b = [-10, +10] にあり、星形成領域と同じ カラーを持つ IRAS 天体 1302 個の 12CO(1-0) 観測を 行った。速度成分のプロファイルは非ガウス的(自己吸収やウィング) であった。  全成分の運動距離を求めた。IRAS 天体に付随すると我々が考える 成分に対しては絶対光度を求めた。次の論文でこれらのデータを解析し、 HI データと比較する。

Lockman 1989
北天電波 HIIR のサーベイ
 Dec ≥ -37° の約 500 の銀河面電波源を電波再結合線を用いて、電離 領域なのかどうか調べた。462 天体で検出された。うち約半分は初検出である。 データは表で載せた。新たに発見された星雲の中にはライン巾が細くて、 < 4600 K と看做せるものがいくつかあった。一つでは幅がわずかに 11.6 km/s で Te ≤ 2900 K である。

Wood, Churchwell 1989b
分子雲内に埋もれた大質量星:銀河系内の数と分布
 既知の UCHIIR の IRAS 二色図 から UCHIIR のカラー選択基準を導いた。IRAS PSC にその基準を適用して、 1717 個の 埋もれた大質量星候補を見出した。

Walker, Cohen, Volk, Waincoat, Schwartz (1989)
IRAS カラーのみを使った天体分類
 IRAS 二色図上で既知の天体が占める領域をタイプ毎に調べた。タイプ間で 領域の重複があるため、IRAS 二色図のみで一意な決定は困難である。 しかし、銀緯は系内天体と系外天体の分離に役立つ。放射、吸収帯の影響も 調べた。

Caswell, Haynes 1987
南天 HIIRs: 電波再結合線の研究
 パークス 64m 鏡により 316 HIIRs の H109α, H110α を 観測した。その多くは可視では見えない。それらは l = [210, 360] での 銀河系の研究に適している。 銀河中心付近の視線速度は非常に大きい。その他 では銀河回転を表現していると考え、運動距離の計算に使う。二つの渦状腕の 軌跡が改善され、太陽円の外側に多数の HIIRs が新しく距離を決められて、 カリーナ腕の延長を指し示す。  電子温度 Te を電波の連続波とライン波のスペクトルから決めた。銀河中心 距離と共に Te の増加が見られ、以前の結果を確認した。Ro = 10 kpc, Vo = 250 km/s 採用。

Shaver, McGee, Newton, Danks, Pottasch 1983

銀河系の元素組成勾配
 可視・電波分光を合わせて、広い銀河中心距離 RG に渡る HIIR の 元素組成を測った。電波再結合線を用い、 3.5 kpc < RG < 13.7 kpc の 67 HIIR に対して正確な電子温度を定めた。この温度は用い、次に 33 HIIR の可視スペクトルから O, N, S, Ne, Ar, He+ の存在量 を定めた。
 電子温度の精度は 5 % である。電子温度と ([OIII]+[OII])/Hβ との間には 強い相関がある。異常に狭い再結合線が何本か検出され、そのライン巾のみから 出した電子温度の上限は 4000 - 5000 K である。これは低温度 HIIR の存在を明らか にした。
 温度勾配 (433±40) K/kpc が見出された。これは温度勾配が メタル量効果であるという仮説と合致する。しかし、同じ銀河中心距離でも 電子温度に 2000 K のばらつきがある。これは電子密度が HIIR 毎に異なる ためと、励起星の有効温度の違いによるのであろう。
 酸素の組成勾配は -0.07±0.015 dex/kpc である。窒素の方はそれより うんと急ではなく、-0.09±0.015 dex/kpc で、硫黄は それよりずっと平坦な -0.01±0.015 dex/kpc であった。ネオンも同様に 平坦らしいが、アルゴンは酸素と似た勾配を持つ。銀河中心距離の等しいところでの 組成のばらつきは小さく 20 % 以下である。He+/H+ 比 の勾配は認められなかった。

Blitz, Fich, Stark 1982
電離領域方向の CO 視線速度カタログ
 可視 HIIR に付随する 242 分子雲複合のカタログを載せる。Sharpless カタ ログにある HIIR に対しては 5 つを除いて全て、その他に多分 HIIR と思われる 天体 62 個、内 33 個は新観測、の CO 観測を行った。HIIR に付随すると思わ れる分子雲複合の視線速度を表にした。
 その内最も強いライン強度を持つ成分のアンテナ温度 Ta とライン巾も提示した。 以前の CO 観測結果、励起星の光学距離も加えた。F(1.4GHz) < 100 mJy の 電波で静かな HIIR は CO が付随しない天体とよく相関している。運動学的に はっきり区別できる複合体は複合体運動を調べる助けになるよう表にした。

Downes, Wilson, Bieging, Wink (1980)

H110α and H2CO による銀河電波源サーベイ
 Effelsberg 100-m 鏡により 5 GHz 帯で H110α 輝線と H2CO 吸収線を 262 個の電波源で観測した。観測天体は、l = [0,60], b = [-1,1] に ある Fpeak > 1 Jy の天体全てである。H110α 再結合線は 171 電波源で 検出された。 H2CO は合計で 388 本検出された。  以前の研究と同じく、Te が銀河中心距離 RG と共に上がる現象が RG = [4, 9] kpc で観測された。新しく HIIRs の距離を決定して それらが渦状腕をよくなぞることを再確認した。 Ro = 10 kpc 採用。

Mufson, Listz (1979)
電離領域・分子雲複合体 W51
 W51 を 2.6 mm CO, 3.1 mm CS, 2 cm H2CO 分子線と H76α 再結合線で 観測した。W51 はサジタリウス腕の接点方向に位置し、腕の構造を調べるに 適している。我々の分子線観測には3本の冷たいガス流が複合体の中を横切る という描像が一番適合する。  これらのガス流は銀河面付近の水素の構造中に位置し、HIIRs は現在ガス流 の外側付近に位置する。簡単な HIIRs モデルが多くの観測特徴と合う。

Reynolds, Ogden 1974
オリオンーエリダヌスの巨大膨張シェルの可視光観測
 オリオン座とエリダヌス座にある多数の 21 cm 電波、可視光の円弧構造を含む l = [185. 215], b = [-50, -12] 領域内で、Hα, [NII]λ6584 ライン に二重速度構造が検出された。観測から、この領域にある可視光放射ガスの大部分 は膨張シェルの内部に閉じ込められていることが示唆される。シェルの直径は 280 pc で膨張速度は 15 - 23 km/s、膨張エネルギー 1051 エルグである。 温度、電離状態、 Hαフラックスから、シェルの東端に位置する I Ori OB アソシエイション内の星からの紫外放射光が電離の原因と考えられる。
 この電離ガスは位置、速度の点で Heiles 1976 が発見した 21 cm H I 膨張 シェルに付随している。つまり、電離ガスと中性ガスは同じ構造体の二つの 成分なのである。このシェルが超新星起源ならば 2 Myr 以前に非常に強い 爆発が起きたか、一連の超新星爆発が起きたかのどちらかであろう。その総 エネルギーは ≥ 1052 エルグが必要である。暴走 OB 星の 中には I Ori アソシエイション起源と思われものがあり、それらは上に述べた 超新星爆発の時に飛び出たのかも知れない。星風もやはり重要な エネルギー源である。

Heiles 1979
HI シェルとスーパーシェル
 Weaver, Williams HI サーベイのアンテナ温度を l = [10, 250], b = [-10, 10] で狭い速度帯毎に写真分布図にした。そこには多数の糸状模様が見えた。印象と してはもしも分解能が向上すれば糸模様はもっとはっきりしそうである。糸の多くは 円弧の一部をなしている。円弧の一部は速度により大きさを変えていくが、それは 膨張シェルで期待される現象である。膨張シェル全てで観測されるのは接近側か 後退側のどちらかしか見えない。63 個のシェルを表にした。
 HI シェルは既存のいかなる種類の天体とも関連しているように見えない。 若い星団とはいくらか相関がある。シェルは最大半径 1.2 kpc, 質量 2 × 107 Mo, 運動エネルギー 1053 erg に達する。形は 球形を取る傾向を示すが、銀河面に沿ってやや扁平である。もし、シェルの 発生が爆発のようなエネルギー注入とするなら必要な量は最大 6 × 1053 erg に達する。これは超新星 100 個分にあたる。
 EE > 2 × 1052 erg のシェルをスーパー シェルと呼ぶ。その数は10個以下であり、 10 Myr に 1 個の形成率である。

Altenhoff, Downes, Pauls, Schraml 1978
4.875 GHz での銀河面サーベイ
 Effelsberg 100-m 望遠鏡により 4.875 GHz, ビーム巾 2.6' の銀河面サーベイ を l = [357.5°, 60°] b = [-1°, +1°] で行った。 1186 電波源リストと等高線マップを示す。

Georgelin, Georgelin 1976 
HIIR から定める銀河系渦状構造 
 HIIR の分布が他銀河でも見られるような渦状構造を示す。可視観測から決めた 励起星の距離、Hα線の視線速度を HIIR 電波観測による H 109α 視線速度と結合して、Bok 1971 の提案した方法で渦状腕を描き出した。
 268 個の HIIR の Hα線の視線速度観測、360 個の励起星までの距離 決定から、銀河系の回転モデルが詳細に決定された。
ある個所では円運動から のズレがわかり、星までの距離と運動学距離を一致させることが可能となった。 この回転モデルは、 109α 速度極大を使うことで、 R = 4 - 5 kpc, l = 330° - 340° 補足された。
 9 kpc という遠方 HIIR の可視光検出は可視データと銀河面全体に及ぶ電波 109α データとを重ねることを可能にした。その結果、 109α 天体を1つにまとめることができた。ただ、距離選択効果は残る。これらの 同定により、遠運動距離と近運動距離のあいまいさが 66 % 確度で解決した。 高励起 HIIR の 80 % が傾き角 12° 二対の対称腕(計4本)に沿って並 んだ。これ等の腕を接線方向に見る銀経は電波連続波と 21 cm 波の極大に 一致した。

Mezger 1976
銀河系内の O 型星形成と星形成率
 銀河系 HIIR の電波観測とそれらの平均年齢が 0.64 Myr という評価とから 星形成率を 4.2 Mo/yr と見積もった。その内 71 % は渦状腕で生まれ、 17 % は主腕の間にある分子雲複合、 12 % が中心 200 pc である。  銀河系からは 3.3 E+53 s-1 の Lyc-光子が放出されている。これは 以前の見積もりの約 4 倍である。星形成率は表面密度に比例することが分かった。これは 表面密度の二乗に比例するという以前の考えと反する

Crampton, Georgelin (1975)
我々の銀河系における可視 HIIRs の分布
 分光測光距離と運動距離を用いて、太陽から 8 kpc にまで達する HIIRsに よる渦状構造がマップ化された。分光測光距離は Balona, Crampton 1974 と Walborn 1972, 1973 による OB 星絶対等級較正に基づいている。運動距離は Georgelin 1974 が提案した南北銀河系で異なる回転速度を使用して求めた。  HIIRsの運動解析から太陽運動成分 Uo = -7.2 km/s, Vo = 14.7 km/s, それにオールト定数 A = 14.4 km/s/kpc が求まった。 太陽から数 kpc 内の HIIRs と OB-星の運動は同じで、両者は同じ回転速度を有し、さらに、星と ガスの運動に系統的速度差は検知されなかった。Ro=9kpc.

Georgelin, Georgelin, Roux 1973
新しい銀河系 HIIRs と励起星の観測
  HIIRs 45 励起星の UBV 測光と, ファブリーペロリングで得た新しい 60 HIIRs の視線速度を示す。干渉計観測はオートプロヴァンス 120 cm望遠鏡 で行われた。スペクトル分類は 193 cm 望遠鏡クーデ分光器 39 A/mm 観測 で行った。UBV 測光は 60 cm 望遠鏡で行われた。  励起星の距離を HIIRs の運動距離と比べると、17 HIIRs で dstar が dKinematic より遥かに大きかった。それらでは、視線速度を 10 - 15 km/s 修正しな いと、同じ距離にならなかった。

Harper, Low 1971
HIIRs からの遠赤外放射
 HIIRs に伴う 8 個の FIR 天体の 45 - 750 μm フラックスを測定した。 FIR 天体は熱電波源 DR 21, K3-50, M17, M42, NGC2004, W49, W51 と一致 する。 FIR 光度は 2 104 - 2 107 Lo に散らばる。M17, M42, NGC2004, W49, W51 の 測定から天体は広がりを持ち、光学的に薄く、温度 65 - 120 K である。

Felli, Churchwell 1970
M16 の 15.4 GHz マップと NGC 6611 内 OB-星の比較
 M 16 の 15.4GHz マップは 3 つの離れた成分が存在することを示す。 各成分のフラックス密度を用いて、その強さに必要なライマン連続光フラックス を計算した。星雲内の OB-星から放出されるライマン連続光と比べると、まだ 見つかっていない電離光源があることが分かる。

Courtes, Georgelin, Monnet (1970)
HIIRs から決まる銀河系構造の新しい解釈
 HIIRsからの 6000 本の視線速度から新しい渦状構造=ピッチ角 20° の 4 本腕、が見出された。  HIIRs の観測視線速度は HI 視線速度と一致した。

Mezger 1970
H II 領域の分布
 可視で見える HIIR や OB-星の銀経分布は基本的には星間減光で決められて いる。従って、可視観測はよくても太陽近傍の構造しか決められない。一方、 電波観測はダストの影響を受けない。従って、l = 17.5° にピークを持つ 電波源の分布は天の川銀河の構造と関係しているに違いない。
 二つの再結合線サーベイが運動距離を与える。もし巨大 HIIR のみを選ぶと 次のような分布が得られる。
(1)4 kpc 腕の内側には巨大 HIIR は 5 個しかない。
(2)巨大 HIIR の大部分は、 4 - 6 kpc のリングに集中している。
(3)別の巨大 HIIR の集中がサジタリウス腕とペルセウス腕の 存在を示唆する。
(4)可視光観測から太陽付近の構造として挙げられていた3つの特徴は 巨大 HIIR が描く大規模構造とはうまく合わない。
(5)13 kpc を越えると実際上巨大 HIIR は存在しない。
(6)巨大 HIIR の表面密度は 4 - 8 kpc の間でピークとなる。中性水素の 表面密度は 11 - 15 kpc で最大となる。ただし、実際の HI 空間密度としては、 4 - 8 kpc 領域でもかなり高いだろう。

Wilson,Mezger,Gardner,Milne 1970
南天銀河系内 HIIR での H109α 線サーベイ
 水素再結合線 H109α サーベイが CSIRO 210 フィート電波望遠鏡を用いて 1968 に行われた。 149 電波源を観測し、内 130 個で検出に成功した。  再結合線を検出した天体の運動距離をシュミット回転曲線を使って求めた。さらに、 電離ガス質量、電子密度なども計算した。

Reifenstein+4 1970
北天銀河系内 HIIR での H109α 線サーベイ
 水素再結合線 H109α サーベイが NRAO 140 フィート電波望遠鏡を用いて 1967 に行われた。 120 電波源を観測し、内 82 個で検出に成功した。  予想外だったのは、約 1/3 で検出に失敗したことである。

Dickel, Wendker, Bieritz 1970
シグナスX方向局所腕内での HII 領域の分布
 シグナス X 複合中の可視星雲の形と方向は局所腕内に対称性が存在すること を示唆する。その対称性は渦状腕内の局所磁場の構造と関連するのであろう。 我々はシグナスX複合内の星雲 90 個の距離を、星間減光強度を用いて、定めた。  星間減光の値は可視光と電波との強度比から決定した。明るい星雲は 1.5 kpc の距離に集中する。星雲までの距離は全体で 1 kpc から 4 kpc に亘る。星雲の 3次元分布に局所腕モデルをフィットした。

Georgelin, Georgelin (1970)
3つの遠方 HIIRs から決まるサジタリウス・カリーナ腕の延長
 カリーナの 4°.5x4°.5 領域が ラシーヤ観測所ファブリーペロリング で観測された。 l = 290 で 9 HIIRs の視線速度が得られた。  それらの運動距離は 3 - 9 kpc に亘るが、励起星の分光測光距離とよく一 致する。この銀経で渦状腕に沿って接点方向を見ていることが確認された。 その結果、サジタリウス・カリーナ腕のより完全な描像が得られた。

Goss, Shaver 1960
銀河系電波源
 5 GHz マップを南天銀河面 l = [206°, 49°] 63箇所で作成した。 HPBW=4'である。 206 電波源の位置とフラックスを与えた。

Dickel, Wendker, Bieritz 1969
シグナスX領域 V. 可視 HII 領域のカタログと距離
 シグナス X 西半分側の Hα 星雲のカタログを示す。 カタログの内容は、位置、形、Hα 表面輝度である。電波データのある 90天体については赤化データから距離を求めた。  星間減光の値は可視光と電波との強度比から決定した。星雲までの距離は 1 kpc から 4 kpc 以上に亘る。シグナスX全体を取り囲むフィラメントの 円環について短く述べる。

Wynn-Williams (1969)
銀河星雲 NGC 6857 近傍からの電波放射
 ケンブリッジ1マイル望遠鏡 11 cm 観測から、これまで惑星状星雲 NGC 6857 が原因とされてきた異常に強い電波放射が実は4つに分かれた熱電波源の重ね合 わせであることが判った。  それらの一つは NGC 6857 で、もう一つは別の惑星状星雲 K3-50 である。 他には、 OB-星の星団によるコンパクト HIIRs の集団が電波源となっている。

Mezger, Henderson 1967
銀河系 HIIRs 1. 5 GHz 観測
 NRAO 140 フィート電波望遠鏡により。銀河系電波源 13 個を λ 6 cm で観測した。HPBW = 6.45' である。観測天体の多くが二つまたはそれ以上 の電波源に分解された。  109α 再結合線の観測からこれらが HIIRs であることが確認された。

Mezger, Schraml, Yervant 1967
電波源 W49 の性質
 W49 を連続波とラインの両方で調べた。二つの成分 W49A = 熱電波源と W49B = 非熱電波源とから構成されることが分かった。W49 は Cas A より 古くて強力な SNR であろう。 W49B はさらに小さく高密度な HIIRs から 成るのかもしれない。 それら高密度域の近くから OH メーザーも見つかった。OB アソシエイショ ンが存在する可能性がある。

Sharpless 1966
アソシエイション、HIIRs、銀河星、超巨星の分布
 "Galactic Structure" の第7章。1965 年当時までの腕追跡天体、アソシエ イション、HIIRs、星団、超巨星の研究結果を解説。相互に比較して、 最終案を出す。  サジタリウス腕、オリオン腕、ペルセウス腕がほぼ確定し、サジタリウス腕の 内側にもう一つあるらしいという推測がなされている。

Rodgers, Campbell, Whiteoak 1960
南天銀河系内 Hα 輝線領域のカタログ
 Mt Stromlo で作られた南天銀河の Hα アトラスを用いて、HIIR カタログ を作成した。範囲は l= [190°, 12°], b=[-15°. +15°] である。



星間雲

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著者 内容

Rezaei, Bailer-Jones, Hogg, Schultheis (2017)
ダスト 3D マッピングから検出される天の川の渦状腕  
 測光と分光データに星距離を組み合わせると3Dダストマップが作れる。 SDSS と APOGEE DR14 を用いて、太陽から 7 kpc, 銀河面から 100 pc 以内の ダスト分布を求めた。累積物理量でなく局所物理量であるダスト分布を導く 方法にはガウシャンプロセスに基づいたノンパラメトリック法を採用した。  この方法は、3D 空間内の点の間でダスト相関(?) をモデル化し、事前に定 める関数形に拘束されず任意の形の変化を捉える。結果として得たマップは 渦状腕らしき特徴が見られた。これは何の仮定も置かずに、ダスト分布に腕 構造を見出した最初の例である。マップには既知の大きな分子雲が見え、 それらの幾つかは距離が不定であった。

Veneziani + 22, 2016
ハーシェル Hi-GAL サーベイによる星形成の解析 II.
銀河系長いバーの先端
 Hi-GAL による l = [19, 33], [340, 350], b = [-1, +1] サーベイからの、 長い銀河系バーの先端領域における星形成クランプの性質を調べた。新しく生 まれた大質量星と大質量原始星を同定した、それらの性質を調べた。 遠い側のバー先端で NANTEN CO(1-0) で見つかった5つの巨大分子雲複合体を 研究した。
 大質量の乱流塊が星団へと陥落する時期に形成されると予想される原始星の 数から星形成率を評価した。そして、与えられた初期乱流塊の可能な最終配置 から原始星の数を予想した。乱流核にモンテカルロ法を適用する新しい方法を 開発し、陥落の間に作られる天体の多重性も配慮した。
 第1象限先端での星形成率は 1.2 10-3 Mo yr-1 kpc-3、第4象限先端での星形成率は 1.5 10-3 Mo yr-1 kpc-3 である。視野全体での平均値は 0.9 10-3 Mo yr-1 kpc-3 と 0.8 10-3 Mo yr-1 kpc-3 と である。変換効率は第1象限で 0.8 %, 第4象限で 0.5 % であり、特に バーの近くで変化しない。CO 等高線から決まった、第4象限バー先端での 星形成域は周囲領域より高い星形成と星形成率を示す。しかし、その変換 効率は似たような値である。
 バー先端部は前景、背景部に比べて高い星形成率を持つ。しかし、変換 効率は観測領域全体で変化がなく、バーにおける星形成活動はダストと分 子量が多いためであり、特別な加速機構が働いているわけではないことを 示す。

Hou, Han 2013
観測から定めた天の川銀河腕構造
 銀河系渦状腕構造の研究には追跡天体の数と距離精度の向上が欠かせない。  HIIR, 巨大分子雲、6.7 GHz メタノールメーザーは良い追跡天体である。 それらの距離は三角法、測光法、運動学により決められ文献から得られる。 我々はそれらのカタログを新しくした。  我々は HIIR 2500 個、巨大分子雲 1300 個、メタノールメーザー 900 個の データを集めた。測光距離または三角視差が得られない場合には運動距離を 求めた。銀河系回転曲線には Ro = 8.5 kpc、Θo = 220 km/s の IAU 値 を使用した。 また、追跡天体の速度を太陽運動で補正した後、最新の値、 Ro = 8.3 kpc、Θo = 239 km/s で運動距離を求めた。
HIIR の励起ファクター、または巨大分子雲の質量で重みをつけて、それら追跡子 の銀河面分布を求めた。  追跡子分布は第1象限に少なくとも4本の腕の一部を示し、第4象限には 3本見い出された。ペルセウス腕と局所腕は、また多くの明るい HIIR に よってもなぞられた。大質量星形成領域と巨大分子雲で追跡された腕部分は 外側銀河系の HI 観測と合わせられた。3本と4本の対数渦状腕モデルが大 部分の渦状腕追跡子をつなげることが分かった。

Dame 2013
天の川銀河系腕構造の現在の展望
 60 年前に HI 21-cm サーベイが完成した時、皆すぐに天の川銀河の正面図 が手に入ると思った。我々は未だに待ち続けている。HI の信用できるマップ は今でも (l, v) 図だけである。30 年前に CO 観測が完了した時にはかなりの 進歩があった。しかし、運動距離の誤差の大きさのため正面図へ辿り着くことは 出来なかった。  新しい21cm干渉計が新しく発見された数百の HIIRs と母分子雲の遠近距離 分離に使われつつある。さらに VLBI による三角視差測定が数百のメーザー源に 対して行われつつある。約 100 の予備的成果がまもなく発表されるであろう。
 我々の渦状腕を選り分ける能力が向上するにつれて、構造自体が以前に 想定されていたよりは単純なのではないかという見方が浮上してきた。 近赤外観測は銀河系バーがかなり強力であり、さらに支配的な腕は二本で あることを示唆している。それらは 盾座ーケンタウルスとペルセウスである。  二本腕のより直截な証拠は遠 3 kpc 腕の発見である。これは近 3 kpc 腕 と運動、構造の点で著しい対称性を示している。  さらに、盾座ーケンタウルス腕の遠い延長として、アウターアームの外側 に、近傍ペルセウス腕の対応腕が同定された。

Sakai 2013
VERA で見えてきた銀河系ペルセウス座腕の構造と非円運動
 天文月報。2013年5月号記事。VERA によりペルセウス座腕メーザー源に 円運動からの系統的なズレが検出された。銀河系非軸対称ポテンシャルの表れである。

Immer, Reid, Menten, Brunthaler, Dame 2013
大質量星形成域 G0123.88+0.48 と W33 の三角視差
 BeSSel プロジェクトの一つとして、  G012.88+0.48 と大質量星複合形成域 W33 (G012.68-0.18, G012.81-0.19, G012.90-0.24, G012.90-0.26 を含む)内の水メーザーの三角視差を測った。  全てのメーザーは距離 2.60+0.17-0.15 kpc で W33 と G012.68+0.48 の両方 がスキュータム腕にあることが分かった。W33 の運動距離 3.7 kpc は大き過ぎた。 W33 Main 内の星団星のスペクトル型は 1.5 ポイント晩期へずらす必要がある。

Dame, Thaddeus 2011
銀河系最外側にある分子腕
 銀河系第1象限にアウターアームのさらに外側 R $sim; 15 kpc の腕を発見した。 現存する 21-cm サーベイデータ上でこの腕を追跡した後、 CfA 1.2 m 望遠鏡により、 分子雲を探し、10/220 点で CO を検出した。検出された雲は (l, v) = (13, -21) から (55, -84) に掛けて分布しており、その位置は H I の高密度部と大体一致する。
 その内の一つを完全にマップした結果、半径 47 pc, 質量 50,000 Mo の分子雲である ことが分かった。平均距離 21 kpc での検出は銀河系では最も遠方での検出である。 新しい腕は盾座ーケンタウルス座腕の延長のようである。これは、近傍のペルセウス腕の 対応物となる。

Messineo, Figer, Davies, Kudritzki, Rich, MacKenty (2010)
HST/NIRCam と多天体分光による GLIMPSE9 星団の観測
  GLIMPSE9 の HST/NICMOS3 と KPNO, KeckII で多体分光測光を行った。 CMD には H-Ks = 1 の星団系列が見えた。しかし2MASS で済む。これは星間減光 AKs = 1.6 に相当する。 3つの最も明るい星は深い CO 吸収を示した。M1 - M2 赤色超巨星の特徴で ある。二つの O9 - B2 超巨星が確認された。それから求まる分光距離は 4.2 kpc である。  同一年齢を仮定すると、 t = 15 - 27 Myr、 1 Mo までの星団質量 1600 Mo となる。GLIMPSE9 の周りにいくつかの HIIRs と SNRs が存在する。 幾つかの星団候補も見つかった。 それらと GLIMPSE9 は全て一つの GMC に属していたのであろう。

Roman-Duval, Jackson, Heyer, Johnson, Rathborne, Shah (2009)
GRS = 銀河系リングサーベイで見つかった分子雲の運動距離
 GRS = Galactic Ring Survey 13CO J = 1-0 で見つかった 750 の 分子雲の運動距離を求めた。 VLA Galactic Plane Survey で CO ピーク位置での HI 自己吸収を調べて、距離の二重性を解消した。また、GRS 雲中の 21 cm 連続 波源を検出して、その吸収線の存在から遠距離と近距離の分別を行った。
 GRS 天体の銀河面上での分布は4本腕モデルと整合する。GRS 天体で追尾した 盾座ー南十字座腕とペルセウス腕の位置は Galactic Legacy Infrared Mid-Plane Survey Extraordinaire 星計数データと一致する。結論として、分子雲は渦状腕に 沿って分布し、また、腕間空間に大質量分子雲が存在しないことからその寿命は 10 Myr 以下である。

Rathborne, Jphnson, Jackson, Shah, Simon (2009)
GRS = 銀河系リングサーベイで見つかった分子雲とガス塊
 ボストン大ー5大学電波天文台(BU-FCRAO) 銀河リングサーベイ(GRS) は 13CO J=1-0 で l = [18, 55.7], b = [-1, 1] を掃く計画で ある。受信機は FCRAO 14 m 望遠鏡に載った SWQUOIA アレイで、22" グリッド で分解能 46" のマップを作った。  829 個の分子雲と 6124 個のガス塊を見つけた。カタログの内容を紹介し、 予備解析の結果を示す。 5 kpc リングの内側と外側の雲を比べ、リング内の 雲は暖かく、高密度で大きく、ガス塊も多いことを見出した。


小林、安井, 斉藤、Tokunaga 2008
銀河系最外縁分子雲での星形成
 Digel の Cloud2 は銀河系の最外縁部にある最も銀河中心から遠い、R ∼ 20 kpc, の分子雲である。そこに活発な星形成を発見した。Cloud2 は低メタル量、低ガス密度、 渦状腕の擾乱が殆どないという点で太陽近傍の分子雲と異なる環境にある。NIR 撮像に より、雲のコア二つの中に二つの埋もれた星団を発見した。我々の NIR, CO データに HI, 電波連続波、IRAS データを足して、この特異な環境下での星形成を調べた。
 近くの巨大 SNR GSH 138-01-94 で引き起こされた連鎖的星形成の証拠が見つかった。 二つの埋もれた星団の形状には大きな差があった。一つは北側分子雲コアにあり、孤立 モード星形成との関係が緩い。もう一つの南側分子雲コアの星団は稠密で星団モード 星形成を伴っていた。南側コアではSNRシェルによる高い圧縮が稠密な星団形成を 生み出したと考える。最外側円盤部の特異な環境は星形成研究に重要である。また、 間たる量からは、厚い円盤の起源にも関係する。

Dame, Thaddeus 2008
銀河系の新しい渦状腕:遠方 3 kpc 腕
 銀河系で良く知られた 3 kpc 膨張腕の向こう側成分を CO で検出した。 b = 0° の CO (l, v) 図上で、遠方 3 kpc 腕は視線速度正の側で近方 3 kpc 腕と平行に走っている。 遠方腕は l = 0° を +56 km/s で越えている。近方膨張腕が -53 km/s で越えている ことと極めて良い対称性を示す。二つの腕の線巾は ∼21 km/s, スケール高は 113 pc FWHM, 単位長さ当たりの H2 質量は ∼ 4.3 × 10 6 Mo/kpc で 26 % 精度で一致する。
 この CO 観測に導かれて、 21 cm 高精度データに遠方腕を発見した。双方の腕での 水素分子と水素原子との比は 3 - 4 倍である。このように対称性の良い膨張腕の検出 は我々の銀河系中心にバーが存在する強力な支持を与える。バーの物理的性質の 究明にも役立つであろう。

Nagai, Tanaka, Kamegai, Oka 2007
銀河系中心分子ガスの物理状態
 ASTE による CO(3-2) 観測と野辺山 12CO(1-0), 13CO(1-0) データと合わせて解析し、銀河系の中心分子帯(CMZ) の物理条件を求めた。 速度勾配近似(LVG)法を用いた。位置と速度の関数として、CO(3-2) 観測領域での ガス密度、運動温度、CO コラム密度を求めた。
 CMZ の 69 % 以上でのデータポイントにおいて物理条件を定めることができた。 運動温度は CMZ 全体でほぼ一定であった。一方、ガス密度は 120 pc 星形成リング において外側のダストレーンより高い。CO(3-2)/CO(1-0) 比が高い領域の物理条件 も調べた。

Starl, Lee (2006)

巨大分子雲は渦状腕に封じ込まれている?
 我々は天の川分子雲カタログをベル研 13CO サーベイの結果に温度 閾値を設けて作成した。このカタログから、二つのグループを作った。
(1) 近運動距離にあったとしても M > 105 Mo の雲。
(2) 遠運動距離にあったとしても M < 105 Mo の雲。
(l, v) 面上でのそれぞれの位置と速度を渦状雲の軌跡と較べた。各雲から 最短位置にある腕までの速度差を集中統計量として導入する。ほぼ全ても GMC は腕の近くにある。
 小さい雲の密度は腕の近くで増大する。しかし 10 % くらいの雲はどの腕にも 付随していない。GMC と最近接腕との速度差中間値は 3.4±0.6 km/s で ある。一方小さい雲では 5.5±0.2 km/s であった。この差の一部は 雲集団の速度分散により、一部は銀河系回転速度場における雲と腕の位置の差 によるのであろう。簡単な評価によると、位置の違いによる速度差は重要でない。 つまり、データは GMC が渦状腕の中に封じられており、腕内での GMC の速度 分散は小さな雲より小さいという考えに整合する。

Levine, Blitz, Heiles 2006
外側銀河系 HI 円盤の垂直構造
 銀河系円盤の HI 表面密度、平均高度、厚みのマップを作り、 HI 円盤の b = 0° 面からのずれを調べた。ワープを記述するには垂直方向のズレに m = 1, 2 フーリエ成分がよいことが分かった。 m = 2 成分を加えると北側ワープと南側ワープ の非対称性がうまく表現できる。  我々は Morlet ウェイブレット変換を用い、高振動数の空間的及び振動数的な局在を 調べた。それらのモードはしばしば "scalloping" と呼ばれる。m = 10 と 15 の "scalloping" モードがノイズの上で認められた。しかし、局在しているので、scalloping は円盤全体には及んでいないと判断された。

Stark, Lee (2005)

巨大分子雲のスケール高は小さな雲のそれより低い。
 ベル研 7 m 13CO サーベイにアンテナ温度閾値を適用して、 1400 個の分子雲カタログを作った。その内 281 個を運動距離がよく決まった 雲として選択した。  スケール高、光度、内部速度分散、雲の大きさを解析した結果、M < 105.5 の雲のスケール高は 35 pc で雲の質量に無関係であること がわかった。一方、それより大きい巨大分子雲のスケール高は質量と共に 低下する。

Dutra, Bica 2002
銀河系ダスト雲のカタログ
 銀河系のダスト雲のカタログ21個を相互参照した。6500 入力から 5004 個 の全天ダスト雲カタログができた。特に高銀緯と低銀緯の境界が相互に参照された。 全天カタログには 525 個の高銀緯ダスト雲が載っている。カタログは主に可視 暗黒雲とグロビュールを扱っている。しかし、電波の情報も得ている。 以前にカタログ化されていないダスト雲が可視像と FIR マップで検出された。 最後に 2MASS で検出されたダスト雲について述べる。

Dame,Hartman, Thadeus 2001
銀河系分子雲: 新しい CO サーベイ
 銀河全体の CO 合成マップを作った。観測は (1/8)° 間隔で行われた。  マップから銀河系の骨組み構造が見える。

Dame,Hartman, Thadeus 2001
銀河系分子雲: 新しい CO サーベイ
 銀河全体の CO 合成マップを作った。観測は (1/8)° 間隔で行われた。  マップから銀河系の骨組み構造が見える。

Lee, Stark, Kim, Moon 2001
ベル研 7 m 鏡 13CO l = [-5, 117] サーベイ: (l, v)図
 13CO J=1-0 遷移の銀河面サーベイを報告する。ベル研7m鏡で 10 年に亘り 73,000 スペクトルを取った。サーベイ範囲は l = [-5, 117], b = [-1, +1] の 244 deg2 である。グリッド間隔は |b| < 0.5 では 3, |b| > 0.5 では 6 である。 ここで示したデータは再サンプルして 3 間隔になっている。  生データは FITS フォーマットに変換され、IRAF/FCRAO パケッジで処理さ れた。処理されたデータはここで (l, v) 図の形で示す。データから 103 Mo 以上の 分子雲の同定と分類が行われた。巨大分子雲の位置から渦状腕が 見えた。

Callaway, Savage, Benjamin, Haffner, Tufte 2000
GS 018-04+04 のスーパーシェル噴出の観測的証拠
 二つのスーパーシェル GS 018-04*04 と GS 034-06+65 を含む領域の HI 21 cm ラインマップを作った。今回は GS 018-04*04、以降盾座スーパーシェルと呼ぶ、 を扱う。このスーパーシェルは直径 5° で銀河面の下側 -7° まで広がる。 盾座シェルの距離は 3.3 kpc で直径 290 pc, 銀河面と垂直方向 400 pc 延び ている。壁に掃き寄せられた質量は 6.2×105 Moである。
 我々の観測ではシェルのてっぺんは破れていてかなりの量の HI が b = -11° まで達し、 3.7×104 Mo の HI 雲を銀河面からの高さ 630 pc の所に作っている。
 ROSAT によると X 線強度は HI 強度と逆相関している。この放射は盾座シェル 内部の高温ガスと関係するものであろう。1.5 keV X-線のピークはシェルの基部にあり、 0.75 keV はシェル内部と頭部でピークをしめし、0.25 keV はシェルの上の方まで広 がっていることが分かった。X-線光度は 5 × 1036 erg/s である。
 ウィスコンシン Hα マッパー(WHAM) は HI とよく似た形の Hα 分布を 示している。スペクトルは電離ガスが HI と似た視線速度を持ち、電離ガスと HI が 同じ距離にあることを示す。
 IRAS 60, 100 μm マップはダストが HI と相関して存在することを示す。 赤外輝度は 100 μm 放射の超過を示す。これは分子水素成分 2.4 × 1021 cm-2 の濃い雲が高銀緯にあることを意味する。
 HD 177989(l=17.°89, b=-11.°88) と HD175754(l=16.°40, b=-9.°92)の IUE UV スペクトルは盾座スーパーシェルからの放出ガスと 同じ速度に、高い電離度のガスによる吸収を見出した。HD 175754 の場合、 高いイオンコラム密度比は低温と高温のガスが乱流混合層を作っていることを 示唆する。
 こうして、多波長データは盾座スーパーシェル内部の熱い物質がシェルの頭から 噴き出すというモデルを支持する。

Cambresy (1999)

巨大分子雲の減光マップ
 USNO 精密測定器による可視光データにウェーブレット分解とアダプティブ グリッドを応用した星計数から導いた分子雲の減光マップを示す。

Reach, Wall, Odegard 1998
赤外超過と分子雲:高銀緯における遠赤外サーベイと HI 21 cm 放射の比較
 FIR - 21 cm 相関を領域ごとに取って、原子状星間媒質に対する赤外超過放射 の輝度分布を求めた。これは以前の IRAS/Parkes/Berkeley 研究の改定拡張 である。ここでは COBE DIRBE/Dwingeloo/Parkes の組み合わせを使う。 COBE 100, 140, 240 μm 超過放射マップは、他より暖かいダストがあるか、 星間原子に付随しないダストの存在を意味する。温かい雲、 60 μm で 明るい、は非常に少なく、例えば高銀緯 B 型星 α Vir の周りの HIIR や正体不明の雲 DIR015+54 くらいである。 F240/F100 から温度を 定めると、赤外雲は冷たいことが分かる。原子状星間媒質中のダスト温度は 19±2 K であるのに対し、分子雲中では 15.5±1 K である。

Carpenter, Sanders (1998) 
W51 巨大分子雲
 W51 HIIR 複合の 1.39°x1.33° 12CO, 13CO J=1-0 輝線の 47" - 47" マップを作製した。W51 視線方向の構造を空間、運動 で分離し、(l, b, V) = (49.5, -0.2, 61) を中心に、M = 1.2 106 Mo, Δl x Δb = 83 x 114 pc の W51 GMC を確認した。W51 GMC の南側尾根に沿って M = 1.9 105 Mo, 22 x 136 pc, V = 68 km/s の細長い第2分子雲が存在する。当初 W51 を定義 していた5個の連続電波源の内、λ 6 cm で最も明るい G49.5-0.4 が 空間的にも視線速度でも W51 GMC と一致する。一方3つの電波源 G48.9-0.3. G49.1-0.4, G49.2-0.4 は第2分子雲と共にある。  文献にある吸収線データから、残りの電波源 G49.4-0.3 は W51 分子雲中に あると思える。W51 分子雲はサイズの点では円盤内分子雲中で上位 1% に入る。 質量からは上位 5 - 10 % に入る。W51 GMC は近傍分子雲のどれよりも巨大で あるが、その平均 H2 柱密度は特に高いわけではなく、また平均 空間密度も近傍分子雲と同程度である。通常の MC では外側の、希薄で星形成 活動の無い領域に質量の大部分が存在するが、 W51 GMC でも同様である。 星形成活動は、第2分子雲と W51 GMC との衝突で始まったのではないか?

岡、長谷川、佐藤、坪井、宮崎 1998 
銀河中心 の大規模 CO サーベイ
 野辺山 45 m 電波望遠鏡 2x2 焦点検出器を用いた銀河系中心領域 CO 観測 の結果を報告する。44,000 の CO(1-0), 13,000 の 13CO スペクトルを 34(1.4 pc) 格子で得た。CO 観測は l = [3.4. -1.5], b = [-0.6, 0.6] 領域で行われた。
 CO 画像は極度に交錯した分布と運動を示す。大規模な様子は良く知られた 揃った特徴を物語る一方、多くの小さくて(d ≤ 10 pc) 速度巾が大きな (ΔV ≥ 30 km/s) 明るい CO 放射が検出された。分子ガスの小スケール 構造はフィラメント、アーク、シェル状の構造を示す。そこに見られる 激しい運動は超新星爆発またはウォルフライエ星からの星風が原因かも知れない。


Digel, De Geus, Thaddeus 1990
銀河系円盤最縁部の分子雲
 運動銀河中心距離 18 - 28 kpc の 11 分子雲を観測した。最も遠い分子雲はこれまで 知られていたものより 10 kpc 遠く、明らかに可視光円盤の縁より遠い。これらは全て より大きな HI 集合(雲?)に含まれているが、HI ピークから約 40 pc 離れている。 CfA 1.2m と NRAO 12 m 望遠鏡の CO 観測によると、雲のサイズは 20 - 40 pc, 速度 巾 1 - 3 km/s, 運動温度 10 - 25 K である。
 これ等の雲の CO 光度は太陽付近にくらべ低い。いくつかは IR 源を持つかも知れない。 しかし、遠すぎるため、星形成に関して一般的に言えるのは B1 より早期の星はない ということだけである。雲の存在数から R > 18 kpc では星間媒質中で分子雲の 寄与は大きくない。

Binney, Gerhard, Stark, Bally, Uchida 1991
銀河系中心ガスの運動学を理解する
 銀河系 |l| < 10, |b| < 0.5 の HI, CO, CS 放射に筋の通った説明を 与えるモデルを示す。銀河中心のガス流は r = 2.4±0.5 kpc で共回転 するバーのポテンシャルに支配されている。このバーを我々は主軸角度 θ incl = 16±2° で見ている。最初の(?) CO 放射は ガスが x1 軌道から x2 軌道へと切り替わる所から 生じている。軌道名は Contopoulos に従った。この切り替わりはショックを 発生させ、(l, v) 図上に明白な特徴を残す。Sgr B のような銀河系中心部の 巨大分子雲は x1 軌道にある。
 HI 終端速度の外郭の構造から、中心部密度はバーの主軸沿いに 1.2 kpc まで、ρ ∝ r-1.75 であることを導いた。このため、 単純な接線速度解析では回転速度が低下する半径領域で、回転円運動曲線が 上昇するという結果になった。r = 3.5 kpc の分子リングは多分、 バーの外側リンドブラッドレゾナンスと関係する。その共回転内側では ガス密度が低下する。


Digel, Bally, Thaddeus 1990
外側腕の巨大分子雲
 内側銀河の巨大分子雲と質量、サイズの点で同程度の分子雲が外側銀河系腕 に b = 1° を中心とした l = [65, 71] の新しい CO サーベイで検出された。 Ro = 8.5 kpc を仮定して、それらは R = 12 kpc にあり、ビリアル質量と CO 光度ーライン巾関係から定めた N(H2/WCO 比は内側銀 河の 4±2 倍大きく、CO では暗めである。
 R = 11 kpc の外側に外挿すると、銀河系全体では (1 - 7) × 108 Mo の分子質量が期待される。サーベイされた外側腕複合体の中には, R > 10 kpc で最も明るい二つの HIIR が含まれている:一つは W 58, もう一つはこれまで未同定 であった S 98 の遠方成分である。

Wouterloot, Brand, Burton, Kwee 1990
太陽円外側の IRAS 天体 II.ワープ中の分布
 外側銀河系での分子雲分布を導き、HI ガスと較べた。雲候補は IRAS 点源 カタログから、第2、第3象限にあって、カラーが埋もれた星を持つ既知の 分子雲と同じという基準で、選ばれた。選択された 1302 天体中 1077 個に CO(1-0) が検出された。それらの運動距離を求めた。外側銀河系の雲の数と 距離範囲の点で今回のサンプルは既存のどれよりも大きい。  距離エラーが調べられた。回転曲線は Brand らが求めた、 Θ = Θo (R/Ro)0.0382, Θo = 220 km/s, Ro = 8.5 kpc である。
 分子雲の銀河中心距離は R = 20 kpc にまで及んでいる。今回 CO が検出 された雲は全て埋もれた IRAS 源を含んでいるので、この結果は星形成が 非常に離れた銀河円盤で進行していることを示す。
 雲の分布は HI と同じワープを示す。IRAS 天体で追跡したワープは R = 11 kpc で始まり、サンプルが終わる R = 20 kpc まで続いた。この区間で 雲集合の厚みは増加していき、R = 17 kpc では R = 10 kpc での厚みの 2 倍になった。内側銀河系では分子雲の厚みに比べ HI 層はずっと厚いの だが、外側銀河では二つの厚みは同じくらいに接近する。R > 14 kpc で 定めた動径方向スケール長は HI ガス密度の低下は分子雲よりゆっくり している。

Wouterloot, Brand 1989
太陽円外側の IRAS 天体I.CO 観測
 l = [85, 280], b = [-10, +10] にあり、星形成領域と同じ カラーを持つ IRAS 天体 1302 個の 12CO(1-0) 観測を 行った。速度成分のプロファイルは非ガウス的(自己吸収やウィング) であった。  全成分の運動距離を求めた。IRAS 天体に付随すると我々が考える 成分に対しては絶対光度を求めた。次の論文でこれらのデータを解析し、 HI データと比較する。

Bally, Stark, Wilson, Henkel 1988
銀河系中心分子雲 II. 分布と運動
 様々なミリ波分子線で観測した銀河系中心付近の分子の運動と分布を報告する。 分子の分布は銀河系中心に対し非対称にで、 13CO, CS の 3/4 は 銀経正である。また、別の 3/4 は正の視線速度を持つ。ガスの速度場は高度に 混乱している。ある雲は円運動から予想される速度場から 100 km/s 以上逸脱 している。しかし、ガスの 70 % は銀河面上の薄いシート状に分布する。シート のスケール高から、銀河面に垂直方向の雲中心の分散速度は、個々の雲の内部分散 速度と同程度であることが推定される。
 ガスの分布と速度構造が複雑なため、銀河系 500 pc 以内の回転速度を一意に 決めることは不可能であるが、各(l, b)での最高速度から等値回転速度(?)が l の減少に伴って非常にゆっくりと、もし減少するとしても、しか減少していか ないことが分かる。回転曲線は vrot(l=5) = 200 km/s から、 vrot(l≈0) ≥ 120 km/s である。
 簡単な質量分布モデルを使い、観測されたガススケール高と比べた。その比較から マップに見られる様々な構造の銀河中心距離を定めた。それらの幾つかは 銀河面からかなり上または下にまで伸びている。それらの構造の軌道傾斜角は大きいに 違いない。
 分子構造のエッジには Sgr A から 0°.2 離れた連続波アークに付随する電波 フィラメントと看做せるものがある。電波再結合線を放射するフィラメントの視線速度 は隣接する分子雲と一致する。分子雲が雲間物質と衝突してできる衝撃波が産み出す 熱的および非熱的放射が電波フィラメントなのであろう。円回転運動からの大きな乖離と 傾き角の大きな運動から、センチメートル波放射を説明するのに必要な Δv = 50 - 150 km/s の衝撃波が生まれる。

Clemens, Barvainis 1988
可視光で選んだ小さな分子雲のカタログ
 パロマ―写真(POSS) から 248 個の小さな分子雲を見つけた。これらのサイズは 10' 以下、平均 4' で孤立しており、中央部は不透明である。これ等はもっと大きな サイズの ボク・グロビュールやバーナード天体とよく似ている。それらの 小さいメンバー 30 % は以前のカタログには載っていない。中心位置、広がり、 向き、参考文献をリストにした。内、242 天体には CO から決めた視線速度を 示した。 149 個の雲には 付随する IRAS 天体 346 個を示した。
 それらの大部分には前景の星もないことからそれらは銀河系内で最少, < 1.5 pc、で最も単純なグループを成す。見かけ楕円率 a/b の平均は 2 で、 球形の雲モデルはここのサンプルには不適切であろう。軸の向きはランダム で、銀河面に対する相関はない。
 IRAS 天体が付随する雲の遠赤外の性質は Beichman らが調べた暗黒雲コア と似ているが、F100/F60 温度はこちらが 19 K でコアの方は 28 K で少し 高温である。カタログにある雲 93 個の 12CO J=2-1 観測の 結果は 70 % はガス温度 8 K と低く、ガス運動は音速程度で静謐である。

Dame et al. 1987
全銀河面 CO 合成サーベイ
 銀河系分子雲の大規模 CO サーベイが 1.2 m 望遠鏡を用いて北半球 NY で、南半球 セロトロロで行われた。これによる5つの大きなサーベイと、特定の星形成域 に対する 11 の小サーベイとを加え合わせ、各分解能 0.5° のマップができた。   銀河系の内側渦状腕は、分子リングとも呼ばれるが、銀緯 2° 厚みで銀河中心 の両側 60° に広がっている。l, v ダイアグラムは分子リングでも他の場所でも 軸対称からの大きなズレを示している。最も大きなそれはカリーナとペルセウスの 渦状腕である。近傍の CO 放射は主にグールドベルトに沿っている。Lupus, Ophiuchus, Aquila がベルトの正銀経成分、Taurus, Orion が負銀経成分を代表している。  今回のまとめで初めて太陽周囲の分子雲の分布が明らかになった。長い間、 暗黒雲の分布とリフトの位置とから近傍分子雲は北側銀河系の方が南側銀河系 より多いのではないかと疑われてきた。 今回のサーベイ合成はその疑いが正しい ことを定量的に確認した。1 kpc 内の分子雲の質量は第1、第2象限の方が 第3,4象限の4倍多い。それに第1、第4象限にある 1 kpc 以内の分子雲は殆ど 全てが直線状に並んでいる。これは局所腕の内側エッジを追跡しているのでは ないか。銀河面の上下の分子ガスの分散 74 pc はガウス分布では半値半幅 87 pc に相当する。その平均表面中密度は 1.3 Mo pc-2、 銀河面上で ガス密度 0.0068 Mo pc-3、 0.10 H2 cm-3 である。


Wouterloot, Walmsley 1986
星形成領域内 IRAS 天体に付随する 水メーザー
 ボン 100-m 望遠鏡により、 分子雲中の IRAS 点源での H2O メーザー探査を行った。CO, OH マッピングデータをガイドに、オリオン L1630, L1641, ケフェウス分子雲の中にあり、S(12) < S(25) 天体を観測した。 その結果、ケフェウスで 11, オリオンで 2 個のメーザー源を発見した。 それらの メーザー源で OH 1665/1667 MHz 観測を実施したがゼロ検出であった。メーザー源 方向の H2CO 観測から、新たに見つかったメーザー源は分子雲に付随 すると結論した。
 また、メーザー源に付随する FIR 天体は IRAS 二色図上で特定の領域を占めて いることを見出した。100/60 - 60/25 図上でそれらは黒体ラインの近くに現れる。 そのカラー温度は T100/60 = 45 K, T60/25 = 55 K, T25/12 = 130 K であった。 20 < LFIR < 106 Lo の間で H2O 光度は LFIR に比例する。この研究の 副産物として、オリオン、ケフェウス方向の IRAS 天体の光度関数は IMF から 期待されるそれと一致することが分かった。

Stark, Bania 1986
クランプ2:内奥渦状腕?
 (l, b, v) = (3, 0.2, [+20. +150]) のクランプ2分子雲を 12CO と 13CO J=1-0 及び CS J=2-1 で観測した。分子ガスは16個の CS コア に分かれていた。その各々は n > 2 × 104 cm-3, M > 5 × 105 である。分子線の視線速度は銀河回転からの許容 範囲内にある。複合体全体での異常な線幅はバーポテンシャル中のダストレーンまたは 内部渦状腕の表明であろう。 12CO での異常な形状はコアが潮汐力で 引き裂かれている結果である。

Bania, Stark, Heiligman 1986
クランプ1:銀河中心近傍の異常な分子雲複合体
 クランプ1分子雲複合 (l, b, v) = (355, 0.4, 100) を 12CO, 13CO J = 1 - 0 で観測した。84 × 54 マップには, 個々の雲の内部に分布する禁止速度ガス が示されている。 VLSR > 20 km/s 放射の大部分は三つの大き な雲、それぞれが +68, +85, +100 km/s, から出ている。これ等の雲は銀河 系内天体の中で最も大きな非円運動を示している。
 +100 km/s 雲は HIIR G354.67+0.25 により加熱されている。他の二つは電離 ガスを含む証拠はない。クランプ1の 13CO サイズは 42pc × 72pc で、M(H2) = 2.4±1.5 × 105 Mo で ある。複合体内の雲は全て重力的に拘束されているが、外層部は潮汐力で剥され ているかも知れない。雲間の相互速度は外側銀河系の分子雲複合体での値より 大きい。付随する HIIR のエネルギーはこの相互速度を引き起こすには不足である。 おそらく、分子ガス、原子ガス、銀河ポテンシャル間の相互作用の結果であろう。

Dame, Elmergreen, Cohen, Thadeus 1986
銀河系第1象限での最大級分子雲複合体
 コロンビア CO サーベイの 第1象限を使い、内側銀河系で最大の分子雲複合の 位置と物理的性質を決定した。 l = [12, 60] で M > 5 × 105 の 26 複合が検出された。これから、太陽園内には数百の複合があると推定される。 これら複合は、種族I の多くの母天体であろう。
 複合までの距離は運動学的に決めた。随伴する HIIR, OB アソシエイション、 メーザー、他の種族I 天体を使って、遠距離・近距離縮退を解いた。複合はサジタ リウス腕をはっきりとなぞった。 17 の巨大複合が腕に沿い、 15 kpc の長さに 渡り、系外銀河で観察される HIIR の規則正しい配列と同じ程度の間隔で一様に 分布している。
 線幅と複合体のサイズの間、および密度とサイズの間にはにはそれぞれ べき乗則が成り立つ。その形は以前に我々や他の研究で見出されたものと よく一致し、今回の研究はこの関係を質量にして一桁の巾に広げた。

Cohen, Grabelsky, May, Bronfman, Alvarez, Thaddeus 1985
カリーナ腕の分子雲
 南天天の川の 2.6 mm CO サーベイから l = [282, 336] でカリーナ腕に沿っ て、 37 個の 105 Mo 以上の分子雲を同定した。雲は 25 kpc に亘り、ほぼ 700 pc 間隔で並び、そのピッチ角は約 10° であった。  分子雲総質量は 40 106 Mo、一個当たり 106 Mo, である。l = 280° に突然現れる接点と l-v 曲線の特徴的な構造はカリー ナ腕内分子雲の渦状配列の見間違えない証拠である。この腕は北天のサジタリ ウス腕につながり、全体として銀河系全周の 2/3 を 10° ピッチ角で巡る 渦を形成する。

Dame, Thadeus 1985
北銀河面での広銀緯分子雲 CO サーベイ
  l = [12, 100], b = [-5, +6] の CO サーベイを角分解 1° で行った。 l = [20, 60] では b をもっと広くした。CO 放射の約半分は Great Rift に伴う 近傍雲から、半分は R = 4 - 7 kpc の内側腕内の雲から来た。視線速度を用い、 Rift を 太陽距離 200 - 2300 pc の 10 個の分子雲に分解できた。  近傍のリフト雲は 数 104 Mo - 数 105 Mo である。そう 大きいという わけでもない。近傍雲の平均半値半径は 75±25 pc であった。銀河面上 での分子密度は 0.013 Mo pc-3 である。CO 積分強度と可視減光との 相関は殆ど全ての暗黒雲が分子雲であることを示す。

Forbes 1985
l = [30, 70] の可視渦状腕構造 II. 星間減光の分布
 新しい、及び既存の 300 OB-星の観測を基に l = 30 - 70 での星間減光の 変化を調べた。領域を 16 に分けた。各領域で Av - D 関係を調べた。一般に 減光は太陽から 500 - 1000 pc にある雲で起きていることが分かった。
 この区間を過ぎると、 D = 4, 5 kpc までは殆ど減光のない区間が続く。最も減光の 強い領域は l = 32 - 44 で、最近 Huang et al 1983 により発見された分子雲 に随伴しているように見える。

Heiles 1984
HI シェル、スーパーシェル、シェル風の天体と芋虫
 二つの HI サーベイを結合して、|b| = 10° の境界を無くした写真画像 を作成した。 また、弱い HI 模様を浮き出させるため、高コントラストの写真を特定の速度 付近で提示する。これら全ての写真は HI シェル、スーパーシェル、シェル状 天体の新しいリストを作成するために使われた。高速ガスに伴う 3 つのシェル と、電波連続波のループ I, II, III と随伴するシェル状天体について調べた。 我々は空間フィルタリングを用いて、くねくねして内側銀河の銀河面から 立ち上がる糸状のガス=芋虫(worms) を強調した。「芋虫」は多分頭頂部が 開いたシェルの壁であろう。このようなシェルは銀河系ハローの高温ガス のよい供給源である。
 シェルとスーパーシェルのこれまでの観測結果をまとめた。既知の天体とシェル との間には一意な関係は見つからない。アソシエイションの星風と超新星はシェル エネルギーとしては十分である。しかし、スーパーシェルに関しては、星形成活動 が通常よりずっと大きい必要がある。その上、いくつかの異常なシェル状天体を 説明するにはそれだけでは不十分である。その他のエネルギー源、例えば高速雲 の銀河面への衝突、のようなものは幾つかの点で観測に合う。

最後まで読み通せなかった。記述があいまいな気がする。

Huang, Dame, Thaddeus 1983
SNR W 50 と SS 433 方向の大きな分子雲
 W 50 方向の 6 平方度を CO 115 GHz でマップした。 W 50 は広がった SNR で SS 433 (l, b) = (39.7, -2.3) を取り囲んでいる。W 50 は POSS 上で目立つ 長さ 4° 巾 1° の暗黒帯に重なる分子雲の端に位置することが分かった。 雲の運動距離は 2.2±0.7 kpc で、SNR 距離 2 - 3.3 kpc と合致する。 雲の質量は 1.2 × 105 Mo である。
 分子フィラメントには星形成の兆候は見られない。また、フィラメントと W 50 (または SS 433) との相互作用もないが、両者(暗黒雲とCO雲?)の方向が一致 し、距離も近く、両者ともに銀河面から分子スケール高の2倍離れていることを 考慮すると、両者は物理的につながっていると判断できる。一つの可能性は 分子フィラメントと W 50 の母星は共に、l = 40 ° にある活動的な分子雲 複合体から放出されたと考えることである。

Neckel, Klare (1980)

星間減光の空間分布
 11,000 を超す O - F 型星、うち 7565 個は O, B 星、の UBV, MK, β データから減光と距離を求めた。 1020 個に対しては二つの独立な手法、 Mv (MK) と Mv(β) による距離を定めた。二つの距離指標の差の平均は 0.01 mag 以下であった。
 天の川の写真を手掛かりに、|b| < 7°.6 を 325 区域に分けた。この 区域内では星の表面密度、減光は一様と看做せる。Av - D 図を作り調べた。 それらから D < 3 kpc までの減光マップを作った。

Bania 1980
内側銀河系での CO: 3 kpc 腕と他の膨張構造
 内側銀河の CO 銀緯分布の観測から、濃い分子雲の多くが l で数十度に及ぶ 幾つかの大規模構造に属することが分かった。最も目立つのは回転中心円盤、 3 kpc 腕、それに +135 km/s 構造である。これらは HI でも見えるが、全体 として銀河回転から 50 - 180 km/s の速度の逸脱を示している。(l, v) で 見ると、 3 kpc 腕と +135 km/s 構造は単純な運動学的円環で記述できる。 しかし、 R = 4, 3.5 kpc にある二つの不完全円環の追加が要求される。
 後者の二つの CO 放射は雲塊状である。単純な円環距離を仮定すると、雲の サイズは 125 pc となる。
 二つの不完全円環の水素質量は 2 × 10 7 Mo である。従って内側銀河には少なくと二つの長さ 2 kpc に 伸びた雲があり、共に銀河中心核から外側に 4 × 1054 ergs で膨張速度を示している。もしそれらを 90° 角の 弧とすると 1.3 × 1055 ergs の膨張エネルギーは爆発モデル への制限となるだろう。この構造は l = 0 を -53 と +135 km/s で交差する ので、対称性爆発や軸上の棒回転(?)では観測の特徴を説明できない。爆発や 棒は強い衝撃波を形成し、それが星形成を生み出す。しかし、そこに大量の 電離ガスがある証拠はない。 Ro = 10 kpc, Vo = 250 km/s 仮定。

Colomb, Poppel, Heiles 1980
|b| ≥ 10° での銀河系 HI の速度別マップ
 南天 HI サーベイ(Instituto de Argentino de Radioastronomia) と Hat Creek の 北天サーベイを結合した。HI の全天分布を記述する。最も著しい特徴は、巨大な HI 膨張シェルである。直径は 90° に及ぶものは ループ I と付随する。

vandenBergh 1980
W 50 (SS 433) の可視残存星雲
 パロマ― 120 cm シュミットで撮った Hα, [S II] 干渉フィルター乾板 に糸状の星雲が見つかった。それは W 50 の東端と西端に位置する。赤外乾板 には、その中心付近に何の星集団もなかった。 SS 433 までの距離は過大に評価 されており、この天体は W 50 に随伴しているのではないか。

Zealey, Dopita, Malin 1980
SS 433 と星間物質との相互作用
 W 50 周辺の IIIaF 乾板に SS 433 を中心とする二つの約 20 分角の星雲が 互いに 70 分角離れて見えた。AATによるスペクトルは 40- 60 km/s の低速 ショックによる励起を示した。  これらのデータから、この可視フィラメントは SS 433 の相対論的ビームによって 励起されていると結論した。ビームの放出率は 3 × 10-6 Mo/yr, 系の年齢は 105 yr である。

Cohen, Cong, Dame, Thadeus 1980
分子雲と銀河系の渦状構造
 CO 2.6 mm サーベイ、一つは l = [12, 60], b = [-1, +1]、もう一つは l = [105, 139], b = [-3, +3]、から以前の見解に反し、渦状腕をよく再現 することが分かった。分子雲から、ペルセウス腕、局所腕(Lindblad の 局所膨張リングを含む)、サジタリウス腕、盾座腕、 4 kpc 腕が同定された。
 局所腕とペルセウス腕の間の空間には分子雲がない。内側銀河の腕間領域の 大部分にも分子雲が存在しない。CO が渦状構造を示していることからその寿命が 108 yr をそう大きくは超えないことが分かる。この時間スケールは 星間物質が腕を横切る時間である。すると、質量保存則から R = 4 - 12 kpc での 星間物質中で分子雲に含まれる割合は 1/2 を越えられないことが導出される。

Reynolds, Ogden 1974
オリオンーエリダヌスの巨大膨張シェルの可視光観測
 オリオン座とエリダヌス座にある多数の 21 cm 電波、可視光の円弧構造を含む l = [185. 215], b = [-50, -12] 領域内で、Hα, [NII]λ6584 ライン に二重速度構造が検出された。観測から、この領域にある可視光放射ガスの大部分 は膨張シェルの内部に閉じ込められていることが示唆される。シェルの直径は 280 pc で膨張速度は 15 - 23 km/s、膨張エネルギー 1051 エルグである。 温度、電離状態、 Hαフラックスから、シェルの東端に位置する I Ori OB アソシエイション内の星からの紫外放射光が電離の原因と考えられる。
 この電離ガスは位置、速度の点で Heiles 1976 が発見した 21 cm H I 膨張 シェルに付随している。つまり、電離ガスと中性ガスは同じ構造体の二つの 成分なのである。このシェルが超新星起源ならば 2 Myr 以前に非常に強い 爆発が起きたか、一連の超新星爆発が起きたかのどちらかであろう。その総 エネルギーは ≥ 1052 エルグが必要である。暴走 OB 星の 中には I Ori アソシエイション起源と思われものがあり、それらは上に述べた 超新星爆発の時に飛び出たのかも知れない。星風もやはり重要な エネルギー源である。

Heiles 1979
HI シェルとスーパーシェル
 Weaver, Williams HI サーベイのアンテナ温度を l = [10, 250], b = [-10, 10] で狭い速度帯毎に写真分布図にした。そこには多数の糸状模様が見えた。印象と してはもしも分解能が向上すれば糸模様はもっとはっきりしそうである。糸の多くは 円弧の一部をなしている。円弧の一部は速度により大きさを変えていくが、それは 膨張シェルで期待される現象である。膨張シェル全てで観測されるのは接近側か 後退側のどちらかしか見えない。63 個のシェルを表にした。
 HI シェルは既存のいかなる種類の天体とも関連しているように見えない。 若い星団とはいくらか相関がある。シェルは最大半径 1.2 kpc, 質量 2 × 107 Mo, 運動エネルギー 1053 erg に達する。形は 球形を取る傾向を示すが、銀河面に沿ってやや扁平である。もし、シェルの 発生が爆発のようなエネルギー注入とするなら必要な量は最大 6 × 1053 erg に達する。これは超新星 100 個分にあたる。
 EE > 2 × 1052 erg のシェルをスーパー シェルと呼ぶ。その数は10個以下であり、 10 Myr に 1 個の形成率である。

Bania 1977
内側銀河系での CO
 CO J = 1 - 0, b = 0, l = [352, 10], Δl = 0.2°, φ = 65 , Δv = 2.6 km/s の観測を行った。 以下 Ro = 10 kpc を仮定。 CO の積分強度 と運動は、銀河系の内側 2 kpc、 300 pc より外では N(CO) ≥ 2 × 1016 cm-2 (観測感度限界)の分子雲は数個しかない ことを示唆する。中心 3 - 4 kpc 以内の CO は R < 300 pc の中心核 領域、 M(H2 ≤ 7 × 108 Mo, に含まれている。
 3 kpc リングは、もし銀河面に大きく傾いているなら別だが、完結した 円環を成していない。腕の断片に関して言えば、H2 質量は HI 質量 より小さい。CO データには 3 kpc 腕の共鳴リングモデルを支持する証拠はない。 |l| < 3° の CO (l, v) 図は Ω = 40 km/s/kpc の剛体回転する 傾いた円盤を示す。これは HI の中心核円盤と同じである。その内部には二つの 付加的構造があり、それぞれが -135 km/s と +165 km/s で l = 0° を 横切っている。この二つは l = 359° で v = [-140, +140] km/s にかけての 尾根でつながっている。この特徴は回転膨張円環のモデルに合致するが、模様が l = 0° で不完全である。と言うのは、 l = 1° にある特徴の対応物が l = 359° にはないからである。その上、単純な回転円環も、共鳴軌道も、 銀河中心爆発も b = 0° の (l, v) 図を説明できない。

Brand, Zealey 1975
銀河面の星間雲構造:宇宙泡風呂
 天の川銀河写真を調べるとダストとガスが円弧上の構造を示していることが分かる。 多くは既に報告されているが、それらのリストを載せる。星間物質の大部分は 糸状であり、これらの糸が円弧構造に関係するのではないか?星間物質は超新星 衝撃波に曝され、そのエネルギーは観測される星間物質の運動を引き起こすに十分 である。
 超新星が原因かどうかは別として、銀河の星形成領域の周りにはダストシェルの例が 多い。これらのシェルが円盤面から外に広がると、レーリーテイラー不安定を引き起こし、 元の円盤へ降り注ぐであろう。そのストリームへのダストの拡散が糸状構造を維持している のではないか。

Weaver 1974
バークレイ低銀緯サーベイでわかった銀河系構造の幾つかの点について
 渦状構造研究の基本課題はデータから分かり易い少数の図または数字を導き出す 事である。円運動の仮定に基づいて新しいマップが作られた。しかし、動径方向の 大きな運動速度が円運動仮説の渦構造にはエラーがありそうであると示唆している。
 新しい図にはアウターアームの構造が見える。それは多くの雲状構造ガスをその 上に、場合によっては1kpc以上の高さにまで伴っている。外側銀河系の非常に弱 く、広がった構造について述べた。ホールとジェットの例が示された。

Heiles 1974
星間雲の新しい見方
 可視星間吸収線や H I 21cm 線には非常に大きな集積構造が多数見られる。 それらの性質は分子雲複合と似ている。特に、b < 0° には可視光は あるが H I 対応がない例がある。これらは低密度ガス雲の存在を物語る。
 速度巾を大きくとった H I 柱密度マップには小さいスケールの構造は現れない。 この事実は星間赤化の統計的解析結果と矛盾する。柱密度マップはしばしば糸状の 揃った大きな構造を表す。それらは星間磁場と向きが揃っている場合もある。 速度巾を狭めた柱密度マップはしばしば糸状の小さな構造が多数現れる。 糸の向きは星間磁場の方向に向いている。糸に沿ってドップラー勾配がある。

Lindblad, Grape, Sandqvist, Schober 1973
近傍星間ガスの運動は多分グールドベルトと関係する
 HI 観測の太陽近傍成分にシェルまたは雲の膨張を示す特徴が見つかった。膨張 年齢は 70 Myr である。この特徴はグールドベルトに関係する証拠がいくつかある。 この特徴の運動学的特性は渦状腕のショックモデルと関係するのではないか。

Kargert 1969
銀緯 60° 付近にある大規模爆発の痕跡
 HI 21 cm 観測から、 l = 60° 付近に奇妙な天体が存在するようである。 その天体の著しい特徴は、その視線速度がその方向の回転速度を 7 km/s も 上回っていることである。内部速度分散は 3.5 km/s で、平均柱密度は 2.6 × 1020 H cm-2 である。直径 4° の円環状構造から、 この天体は爆発現象により生じたものと考えられる。

Lindblad 1967
銀河系反中心方向の 21 cm 観測
 銀河系反中心方向の 21-cm 観測が Dwingeloo 25-m 望遠鏡で行われた。 目的は速度からこの領域の天体成分を分解することである。ラインをガウシャン で分けて、(l, v) 図上で解析した(図6)。それらの成分の(b、v)上の性質 を表2にまとめた。
 良く知られたペルセウス腕、オリオン腕、それに腕 F, 腕 I に加え、三つの細い 腕が銀河面とはずれて存在し、反中心方向でこちらに接近する速度を示す。  これ等の内、最も極端な成分は l = 180 で b = -9 まで下がり、視線速度 -29.5 km/s を示す。この腕はライデンマップ上で最も外側の腕の延長を成している。
 銀緯方向に大きく広がった二つの成分もある。一つは異常なほど速度分散が小さい。 これは近傍の年齢 70 Myr の膨張リングではないか。もう一つは微かで、速度分散は 19 km/s と大きい。これは腕間ガスかも知れないが、その性質は不明である。



星団

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著者 内容

Marigo et al (2021)
ガイア距離のある散開星団中の AGB 星を新しく見直す
 Gaia DR2 と EDR3 を用い、中間および若年銀河系散開星団中の AGB 星を調 べた。TRGB より明るく、星団メンバーシップが確実な 49 AGB 星が見つかった。 内 19 星は TP-AGB 星でそのスペクトル型は 4 Ms, 3 MS/Ss, 12 Cs である。 観測、進化モデル、星周ダスト層の輻射輸達計算を合わせて、各星の初期質量、 光度、マスロス率、コアマス、周期、脈動モードを決めた。  その結果、第3ドレッジアップ、炭素星の初期質量、星風、初期ー最終質量 関係(IFMR) への制限が与えられ、太陽メタルの TP-AGB 進化に光があてられた。 特に、NGC 7789 の MSB75, NGC2660 中の BM IV90 の二つの炭素星は年齢 1.2 - 1.6 Gyr, Mi = 1.2 - 1.6 Mo で似ているが、異常に大きなコアマス Mc = 0.67 - 0.7 Mo を有する。これは Maarigo et al 2020 が最近発見した IFMR の折れ曲がりを支持する結果である。Mc データの説明には二つのシナ リオ=単独星での星風と連星でのブルーストラグラーを介しての相互作用がある。

Mohr-Smith, Drew, Barentsen, Wright, Napiwotzki, Corradi, Wisloffel, Groot, Kawari, Parker, Sale, Uhruh Vink, Wesson (2013)
カリーナ腕 Wd 2 とその周囲の新しい OB-型星候補の発見
 O-, 早期 B- 型星は銀河系でまだあまり多く登録されていない。南銀河系で g = 20 等まで OB-星候補を探した。探査領域はカリーナ腕の方向、若い大 質量星団 Westerlund 2 の周り 2 平方度である。この星団内にある OB 星を 我々の手法の確認に用いた。この方法は (u-g, g-r) 図を用いる。  マルコフ鎖モンテカルロ法により VPHAS+ u,g,r,i 等級と公表されている J, H, K 等級を組み合わせ、星のパラメタ― log Teff, DM と減光パラメタ― Ao, Rv を導いた。
 星のパラメタ―は OB 星を確定するに十分であり、一方減光パラメターの 誤差は σ(Ao)≈0.09, σ(Rv)≈0.08 の精度であった。 B2 より早期と判定された星が 489 個見つかった。この中には大質量 O-型星と 考えられる星が 74 個、青色超巨星候補が 5 個、赤化を受けた準矮星が 32 個 含まれる。この結果、領域内の OB 星及び候補星の数が 10 倍に増えた。新候補 星の大部分は 3 - 6 kpc にある。また以前から指摘されていた、弧の視線方向 では赤化則が Rv = [3.5, 4] で非標準的であるという事実が再確認された。

Negueruela, Gonzalez-Fernandez, Marco, Clark (2011)
RSGC3 を囲む巨大アソシエイション
 スキュータム腕の根元の方向の4つの赤色超巨星星団の一つ RSGC3 の空間的 広がりは未確認である。RSGC3 の周辺で 2MASS で明るい星を探った。 Calar Alto 3.5 m 望遠鏡 TWIN 分光器で、候補星の 8000 - 9000 A 分光を 行った。  RSGC3 の 5 メンバー星の視線速度はStephenson2 と同じであった。星団の外 < 18' で 8 RSGs を見出した。それらは二つの集団に分かれる。南集団は 独立な RSGC に見える。北集団は小さい星団で類似の赤化と 年齢が示唆される。測光データの解析から RSGC3 を 30 以上の RSGs が取り巻 いていることが分かった。RSGC3 を取り巻く星の総質量は 105 Mo を超える。

Piatti, Claria, Ahumada (2010)
Hogg 12 と NGC 3590: 新たな散開連星団候補
 散開星団 Hogg 12 と NGC 3590 の UBVIc 測光を V = 22 mag まで行った。 測光、形態基準と恒星密度とから Hogg 12 が純正な星団であることが明らかに なった。NGC 3590 は規準星団として用いられた。フィールド星混入の掃除後の CMD から、この星団は太陽メタルで、 E(B-V) = 0.40±0.05, d = 2.0 ±0.5 kpc, 年齢は NGC 3590 (t = 30 Myr) と近い。  両星団共に、驚くほど小さく、半径 1 pc 程度である。双方の間隔は 3.6 pc しか離れていない。双方の年齢が近く、赤化も同じ、メタル量も同じことから、 これらは連星団ではないかと考えられる。既知の 180 連星団系の中で、内 27 系は良く研究されているが、Hogg12/NGC 3590 系は最も近接した系の一つ である。

Negueruela, Gonzalez-Fernandez, Marco, Clark, Martinez-Nunez (2010)
RSGC1 の近くに見つかったもう一つの RSG 星団
 RSGC1 から 16' 離れた所にある、以前に報告の無い、赤くて明るい星の集団 を調べた。近赤外測光から候補を選び、それらの K-バンド分光を行った。 8 個の赤色超巨星を見出した。他に異なる距離にある 5 個の候補星がある が、その一つは赤色超巨星である。これらは散開星団を形成しているので Alicante 8 と名付ける。赤化が大きく、混み合っているため、2MASS, UKIDSS では星団系列がはっきりしない。赤色超巨星の解析から AKs = 1.8, t = 20 Myr とした。星団質量は 10,000 Mo を超える。

Messineo, Figer, Davies, Kudritzki, Rich, MacKenty (2010)
HST/NIRCam と多天体分光による GLIMPSE9 星団の観測
  GLIMPSE9 の HST/NICMOS3 と KPNO, KeckII で多体分光測光を行った。 CMD には H-Ks = 1 の星団系列が見えた。しかし2MASS で済む。これは星間減光 AKs = 1.6 に相当する。 3つの最も明るい星は深い CO 吸収を示した。M1 - M2 赤色超巨星の特徴で ある。二つの O9 - B2 超巨星が確認された。それから求まる分光距離は 4.2 kpc である。  同一年齢を仮定すると、 t = 15 - 27 Myr、 1 Mo までの星団質量 1600 Mo となる。GLIMPSE9 の周りにいくつかの HIIRs と SNRs が存在する。 幾つかの星団候補も見つかった。 それらと GLIMPSE9 は全て一つの GMC に属していたのであろう。

Clark, Negueruela, Davies, Larionov, Titchie, Figer, Messineo, Crowther, Arkharov (2009)
Scutum-Crux 腕内の第3赤色超巨星星団
 NIR/MIR 測光と分光観測を用いて、赤色超巨星第3星団構成星を 分類した。統計的に星団質量を推定した。16星を星団に属すると確定し、 それらのスペクトル型 K3 - M4 Ia, 光度 log(L/Lo = 4.5 - 4.8 を決めた。 距離 6±1 kpc である。年齢 t = 16 - 20 Myr, M = 2 - 4 104 Mo となった。  Scutum-Crux 腕の根本で 10 - 20 Myr 以前に大規模な星形成爆発が起きた のであろう。この年齢の星形成複合体内部に X-線連星が見当たらないことは不思議である。
(どうやって星団を探したのか? )

Messineo, Davies, Ivanov, Figer, Schuller, Habing, Menten, Peter-Gotzens (2009)
Spitzer/GLIMPSE で見つかった星団の NIR スペクトル
 GLIMPSE 画像上に発見した星団カルテット("Quartet") と他に二つ GLIMPSE 星団リストにある "GLIMPSE 20" と "GLIMPSE 13" の H, K R=900-1320 分光を 行った。カルテットで WC と二つの Ofpe/WN9 を、 GLIMPSE 20 では WC 一つ を同定した。GLIMPSE 13 には巨星が多い。カルテットは d = 6 kpc, t = 3 - 8 Myr, GLIMPSE 20 は d = 3.5 kpc, t = 3 - 8 Myr, GLIMPSE 13 は d = 3 kpc t = 30 - 100 Myr である。

Bibby, Crowther, Furness, Clark (2008)
星団 1806-20 距離の下方改訂
 星団 1806-20 (G10,0-0.3) の OB-星と WR-星に H-,K-バンド分光観測を行 った。B-超巨星と WR-星の絶対等級較正と NIR 測光から、星団 DM = 14.7 (8.7 kpc)を得た。今回の距離を採用すると、 マグネター 2004 年 12 月の 巨大フレアのピーク光度はファクタ3小さくなり、系外マグネターによる BASTE short gamma ray bursts へのコンタミは数パーセントと無視できる範囲 に収まる。銀河中心から 1.8 kpc で、4 kpc 以内で不活発な星形成活動という 状況では珍しい例である。

Reipurth, Schneider 2008
シグナスの星形成と若い星団
 シグナスリフトには、現在または最近の活発な星形成域が多数含まれている。 この領域は渦状腕を見下ろす(縦に貫いて見る?)ので、数百 pc から 数 kpc まで様々な距離にある星形成域が重なっている。巨大な HIIR の一部である北 アメリカ星雲とペリカン星雲は白鳥座星形成域の中では最も有名であるが、これら は僅かに 600 pc の位置にある。
 その隣に見えるのはシグナスXであるが、距離は 1.7 kpc である。この天体 は直径 10° に及ぶ活発な星形成分子雲と若い星団の複合体である。それら の星団の中で最も大きいのは、年齢 3 - 4 Myr の Cyg OB2 アソシエイション である。それには数千の OB-星が属し、 LMC の若い球状星団とよく似ている。 白鳥座の分子雲複合に属する若くて大質量または低質量の星や原始星は未だに 研究が不十分であり、系統的な研究に値する。

Mermilliod, Mayor, Udry (2008)
散開星団中の赤色巨星 XIV. 1809 星と 166 星団の平均視線速度
シリーズ総決算。視線速度から 891/1309 赤色巨星のメンバーシップ, 288/1309 分光連星確認。視線速度変化があったものが27 星あったが、全て赤色超巨星で あった。距離がはっきりしないので、結果の解釈が難しい。

Mermilliod, Mayor (2007)
散開星団中の赤色巨星 XII. 高齢6星団
6 星団内の 93/123 赤色巨星のメンバーシップを視線速度から確定した。分光 連星が7つ確定。あと11星も連星の疑いが濃い。すると連星率= 19 % で少し 低い。フィールド星の混入が除かれた結果、星団 RGB がはっきり浮かび上がっ てきた。AGB 星も多数確認されたが、 CMD 上位置はモデルより青いか明るい。 赤外超過はどうかな?調べられていないのだろうか?これでないと先行き心配。

Davies, Figer, Kudritzki, MacKent, Najarro, Herrero (2007)
Scutum 腕の根元にある赤色超巨星の巨大星団
 Scutum-Crux 腕の根本にある赤色超巨星の巨大星団 RSGC2 で、 2MASS と 分光観測から RSG 候補を同定した。さらに高分散分光から CO EW を求め、 視線速度を決めた。その結果 26 RSGs を星団メンバーとして同定した。  星の速度分散、光度、進化モデルを合わせ、星団初期質量を 40,000 Mo と 推定した。この星団は Figer et al. (2006) が発見した 14 RSGs を含む星団 RSGC1 から数百パーセクしか離れていない。この二つ だけで既知 RSGs の 20 % を占める。二つの星団の年齢に差があり、 15 - 25 Mo の星の進化の研究に適している。

Figer, MacKenty, Robberto, Smith. Najarro, Kudritzki, Herrero (2006)
異常に巨大な赤色超巨星の星団
 異常に大きな若い星団を発見した。IRMOS 2MASS, Spitzer 観測から、星団中 に 14 個の赤色超巨星を発見した。 NIR スペクトルは深い CO 吸収帯を示す。 星団内の他の星と &Delta:Ks = 4 mag であった。それらの一つに付随する OH メーザーから距離を 5.8 kpc と見積もった。  G6I の黄色超巨星も一つ見つかった。サルピータ質量関数を仮定すると、年齢 7 - 12 Myr として、初期星団質量= 20,000 - 40,000 Mo となる。現在質量 でその 80 %, 星数で 99 % が残っているはずである。この星団は最近 ASCA と Einstein X-線衛星で発見された X-源や最近 INTEGRAL と HESS で見つかった 高エネルギー γ-線源と関係があると見做される。それらは最近星団内で 生じた SN と関係するだろう。特に、我々は少なくとも一つのカニ星雲的な SNR を含むと考える。

Fitzpatrick, Massa (2005)

星間減光曲線の形 IV. 標準星抜きの減光決定
 通常は赤化のない、または赤化の小さい標準星を基準に減光を測るが、この 論文では、恒星大気モデルを星の固有 SED を与えるものとして扱う。この標準 星抜きの減光測定法は減光の測定精度を大きく上げ、かつエラーの評価を確実 にする。その上、この方法は赤化を受けている星自体の固有の性質を明らかに する。ただし、モデルの物理的制約の結果、この方法が適用可能なのは主系列上 か少しだけ進化した B-型星である。しかし、この方法は、原理的には、モデル SEDがあるどんなクラスの星にも適用可能である。
 この標準星抜きの減光で次のことを明らかにする。
(1)局所空間で減光曲線の一様性を調べる。
(2)曲線の特徴の間の関係を調べる。
(3)低減光の視線から高精度の減光曲線を求める。
(4)星団内の減光を求める。
この方法を UV - IR データベースに適用して、星間グレインの性質に有益な制限 を掛ける。
(この方法だと、どんな固有スペクトル でも差を減光で説明できるのでは? )

Mercer + 15 (2005)
GLIMPSE で見つかった新しい星団
  GLIMPSE 点源カタログの密度超過を自動探査して新しく 59 星団 を検出した。さらに視察で、深く埋もれた 33 星団を加えた。総計 92 星団である。  

Homeier, Alves (2005)
W49 GMC の大質量星形成
 W49 の最も濃い部分の JHKs 撮像を行った。減光から W49A に属する星 を分離した。その質量関数は傾き -1.6±0.3 である。減光限界で検出 された星から求めた総星質量は 5-7 104 Mo である。  幾つかの UCHIIRs の励起星候補を決定した。ただし候補が多く、一意では ない。

Kumar, Kamath, Davis (2004)
W51 GMC 内の埋もれた星団
 W51 GMC 複合に沿った 6 領域でサブ秒(0.35 - 0.9 arcsec) JHK 測光観測 を行った。埋もれた星団を4つ発見し、W51 IRS2 (G49.5-0.4) 領域の高分解 像を得た。 各星団の TCD, CMD には明らかな差があり、星団間の年齢差を 示す。特に HIIRs G48.9-0.3 と G49.0-0.3 に伴う星団には YSO の割合が 高い。各星団は渦状密度波により同時に形成されたのであろう。

de Wit, Testi, Palla, Vanzi, Zinnecker 2004
フィールド O-型星の起源 1.近くの星団?
 フィールド O-型星 43 個の生誕率を求める研究を行っている。この第1論文では 観測的側面、つまり対象星の周りに星団があるかどうかを調べた。NTT, TNG 画像と 2MASS カタログから星の表面密度分布を調べた。分解能は星団の典型スケール 0.25 pc と 1 pc である。  O-型フィールド星の大部分は孤立星であった。5/43 = 12 % が小さな星団を 伴っていた。この結果の解析は第2論文で述べる。

Bica, Dutra 2003
銀河系赤外星団のカタログ
 銀河系の赤外星団のカタログを集めた。星団より密度の薄い星群(Star Group)も含めた。 それらは Taurus-Aurigga や Chamaleon 暗黒雲の中で見られる。  座標、角直径、名前を与えた。星団は 189, 星群は 87 個が載っている。雲に埋もれた星団の 25 % は二重、三重星団を形作っている。  赤外星団距離は 3 kpc 以内。サイズ分布は 3 pc 以下で 15 Myr までの古い星団のサイズ 分布が 8 pc まで延びているのと対照的である。力学進化効果か?

Alves, Homeier (2003)
野獣を現わす:W49A の埋もれた星団の発見
 W49 GMC の最深部 5'x5'= 16x16 pc を FWHM = 0.5" JHKs 撮像した。4つの 大質量星団が見つかった。最大の星は 120 Mo である。その中で最大の 星団1 は UCHIIR から成る有名な Welch ring の 3 pc 東にある。星団1の特徴は、 (1)Av>20 mag の前景減光を受けている。 (2)非一様な内部減光は 30 mag 以上である。 (3)直径 6 pc の HIIR を形成している。  幾つかの UCHIIRs の励起星を同定した。W49A の大質量星探しは、 電波から期待される Ly 連続光と一致かやや多めである。Welch リングの 形成は星団1により誘発されたのかも知れないが、W49A 星形成域全体では 同時期に形成の種が撒かれたのであって、端から順に起きたのではない。

Reyle, Robin 2002
DENIS を用いた銀河面の星団の探索
 DENIS カタログを使って、|b| < 5 における星団サーチを行った。銀河面の 44 % が観測されて調べられた。  22個の既知星団が確認され、新しい星団が2つ発見された。ただし、それらは 2MASS ウェブサイトで既に HIIR に埋もれた星団として紹介されていた。周囲の 減光と、星団前面の減光が評価された。

Nakaya, Watanabe, Nagata, Sato 2001
銀河面に埋もれた赤化のきつい星団
 可視、赤外撮像観測により、銀河面に埋もれた、早期型星の星団を発見した。 観測したのは Stephenson が遠方の散開星団の可能性があると指摘した 領域である。10 個の星を赤色超巨星とした。  さらにいくつかが新しく発見された。その上 Av = 11.2 mag の減光を受けた 25 の早期型星が様々な色等級図や二色図を用いて確認された。それらは 星団を形成しているようだ。距離 1.5 kpc, 年齢 50 Myr である。
(J,H,K がサチった!)

Carpenter, Hillenbrand, Skrutskie 2001
オリオンA 分子雲の 近赤外変光星
 南 2MASS 望遠鏡でトラペジウム周辺 0.84° × 6° を J, H, Ks で反復観測した。データから前主系列星の変光を 1 - 36 日、2か月、2年の タイムスケールで調べた。全部で 1235 個の変光星が検出され、その内 93 % は 分子雲にくっついているように見える。
 変光の様子は様々で、周期15日までにおよぶ周期的変光、非周期的な毎日の 変光、食変光、1か月またはそれ以上におよぶゆっくりした光度変化、色変化を 伴わない変光、暗くなると赤くなる変光、暗くなると青くなる変光などがある。
 等級変動の山から谷にかけての平均巾は 0.2 等で、変光星の 77 % でカラー 変化は 0.05 等以下である。極端な変動を示す星では等級で 2 等、カラーで 1 等 の変化があった。
 等級変動の典型的なタイムスケールは数日以下で、近赤外変光は主に短時間 仮定に関連していることを示唆する。低温または高温の星班の回転による変調、 内側星周円盤による遮蔽、ガス降着率の変動その他考えられる原因を検討した。 変光星の 56 - 77 % では、低温の星班のみで変光特性が説明できた。一方、 少なくとも 23 % の変光星は熱い星班または減光で説明可能である。円盤からの 降着による変光は約 1 % で起きている。
 しかし、観測とモデルとの間の細かい点での差異は、ここで考えなかった別の 機構が働いている、またはいくつかの機構が複合して作用している可能性を 示唆する。星計数の解析から、オリオン星雲星団は 0.4° × 2.4° = 3,4 pc × 20 pc におよび 14 等より明るい星を 2700 個含む大きな 表面密度超過領域の一部であることが判った。

Carpenter 2000
ペルセウス、オリオンA, オリオンB,モノセロス R2 分子雲の 2MASS 観測
 2MASS 2nd Incremental Release PSC を用い、ペルセウス、オリオンA, オリオンB, モノセロス R2 分子雲内の若い星の分布を調べた。フィールド星 分布の半解析表現を観測された星分布から差し引き、残差の空間分布を 星のコンパクトな集団とより一様に広がった種族とに分けた。  各分子雲には 2 - 7 個の星団があり、うち最大の星団1つが星団星の半数 以上を含む。また、フィールド星差し引きの確度内で、 0.013 - 0.083 arcmin-2 の広がった星種族がオリオン A とモノセロス R2 に 推定される。  10 Myr より長期間一定の割で Milar-Scalo IMF の星形成が進行していたなら、 感度計算からは広がった種族の星数をファクター2以上過小に見積もっている 可能性がある。  広がった種族星の進化状態を考慮すると、4つの雲での星団種族と 広がった種族の星総数から推定される星形成効率は 1 % - 9 % である。  名目的な減光(?)での、星団星数が総星数に占める割合は、もし広がった 種族が 10 Myr より若ければ 50 % - 100 %、もし 10 Myr 程度に古ければ 25 % - 70 % である。分子雲に埋もれた星団の年齢が通常若いことと一緒に 考えると、星の大部分が数百万年内に生まれたことになる。  つまり、雲の年齢を 10 Myr より古いと考えるなら、星形成率は最近 ピークを迎えたことになる。逆に雲が若いなら星形成率は時間的に 一定であった。

Twarog, Anthony-Twarog, Bricker 1999
等時線のゼロ点: 中間メタル量のレッドクランプ光度
 NGC 2420 と NGC 2506 の CMD を太陽付近とマゼラン雲の中間として調べた。 対流オーバーシュートを組み入れた、太陽組成の二組の等時線で太陽にゼロ点フィット し、またヒッパルコスカタログの [Fe/H] = -0.4 の未進化主系列に合わせた。 これは同じカラーの未進化の星の間の 0,4 mag の差を要求している。 NGC 2506 に対し E(B-V) = 0.04, [Fe/H] = -0.39 を適用し、(m-M)o = 12.70 を得た。 NGC 2420 に対しては E(B-V) = 0.04, [Fe/H] = -0.29から (m-M)o = 12.15 となった。年齢は両者ともに使用モデルにより t = 2.2±0.2 Gyr と 1.9±0.2 Gyr を得た。  二つの星団の合成巨星枝からクランプ等級を V = +0.47, I = -0.48 (-0.17, +0.14) とした。MI にメタル量補正を施すと、 Udalski の星団サンプルからは LMC で (m-M)o = 18.42 (+0.17, -0.25), SMC に対し (m-M)o = 18.91 (+0.18, -0.16) である。同じメタル量と年齢の 星団は同一であろうという考えに対する警告として、 同程度の年齢とメタル量 を持つ星団の同じ B-V カラーの星と較べ、NGC 2506 赤色巨星の V-I カラーは 著しく赤い。上に述べた距離は B-V と V-I の一般的な星団の関係から導いた。 もし NGC 2506 の CCD 測光が正しく標準システムに繋がれば、クランプの MI は 0.1 mag 下がり、距離指数は 0.1 mag 大きくなる。
( 肝心の VI 測光が不十分なので、議論が 「もし」に頼ることになる。年齢、メタルは使えるかもしれないが。 Twarog はもっと着実かと思っていたので意外。)

Sarajedini 1999
WIYN 散開星団サーベイ III. レッドクランプ光度とカラーの メタル量及び年齢による変化
 MIRC = レッドクランプ I 等級が年齢、メタル量で 変化するかについての最近の論争に刺激されて、我々は銀河星団の測光を行っ た。主系列フィットで星団距離を決め、レッドクランプの絶対等級を直接求め た。この結果とモデル計算とを比較し、次の結果を得た。
 MVRC に較べ MIRC はメタル 量の影響がずっと小さい。しかし、観測された MIRC の巾は測光エラーより有意に大きい。
 したがって、年齢、メタル量で MIRC もかなり影響 されると考えるべきである。MVRC と MIRC へのメタル量、年齢の影響はモデル計算の 予知と良く合う。これらから考えると、太陽近傍の MIRC をそのまま LMC のように異なる種族構成の系に適用することは危ない。

Geisler, Sarajedini (1999)
ワシントンシステムでの星団標準巨星枝
 10個の銀河系球状星団と2個の高齢散開星団をワシントンシステム C, T1 フィルターで測光した。それらはメタル量が既知で、[Fe/H] = [-2.25, +0.25] を間隔 0.2 dex でカバーしている。各星団毎に二つの 独立な観測が行われ、内部チェックを行い、外部の既存測光と比較した結果、 測光精度は ≤ 0.03 mag であった。  Da Costa, Armandroff (1990) が V, I で行った手法を真似て、Lee et al 距離指数を適用して、[MT1, (C-T1)o] 巨星枝を作った。 各巨星枝には約 350 星が含まれる。 次に、与えられた MT1 における (C-T1)o カラー のメタル量に対する感度を決めた。ワシントンシステムは V, I システムの 3倍感度が良いことが判った。MT1 = -2 (巨星枝先端の少し下、 大体 MI = -3 相当)で、47 Tuc と M 15 は (C-T1)o  では 1.16 mag 離れるが、(V-I)o ではわずか 0.38 mag しか離れない。 MT1 = -2 における (C-T1)o は Zinn スケールの メタル量と線形の関係がある。MT1 = -2.5, -1.5 においても 他の2メタル量スケールで較正した。ワシントン法は暗い等級でも同じ メタル量感度をしめし、巨星枝は水平枝の下でもよく定義される。 t ≥ 5 Gyr でこのメタル量恒星は有効であり、そこでの年齢効果は無視 出来るほどに小さい。  従来ワシントン測光で使用されていた2色図法に較べ、今回の方法は多くの 利点がある。(1)フィルターが2枚で済む。(2)赤化と測光エラーに対し 鈍い。(3)メタル量への感度が高い。(4)低メタル天体に向いている。 Geisler et al (????) が古い技法で以前決められた値よりずっと低メタル であったとした5つの低メタル球状星団は新しい技法では Zinn スケールと 良く合う結果を出した。以前に出た異常に低い値は古い方法が低メタル量 領域で感度が悪いための結果であった。しかし、古い技法も [Fe/H] ≥ -1 では有用である。
 我々は Sarajedini が開発した、赤色巨星枝の形、水平枝の T1 等級、水平枝等級での RGB (C-T1) 見かけカラー、 を用いて、赤化とメタル量を同時に決める方法を拡張した。この方法は、 E(B-V) を 0.025 mag, メタル量を 0.15 dex まで決められる。  我々は赤色巨星枝バンプの T1 等級を各較正用星団で測った。 その結果、水平枝とバンプの等級差はメタル量と密接に関連することを 見出した。この特性はまたメタル量決定に使える。メタル量は RGB の傾き からも決まる。  RGB 先端の MT1 は MI 程には年齢やメタル量に 対して一定でない。それでも [Fe/H] ≤ -1.2 の星団に対しては有用な 距離指標である。この範囲にある6つの基準星団に関して、 ⟨MT1(TRGB)⟩ = -3.22±0.11(σ) で あり、メタル依存は小さい。この結果は Bertelli et al 1994 のモデル 等時線の予想と良く合う。

Geisler, Bica, Dottori, Claria, Piatti (1997)
LMC 高齢星団を探して
  LMC には銀河系球状星団と同じくらいに古い星団は数個しかない。ここでは 25個のLMC高齢星団候補の CMD サーベイを報告する。それらは以前の UBV 積分測光と Ca II 分光から導かれたものである。測光はセロトロロの 0.9 m 望遠鏡+ C T1 フィルターで行われた、ほぼ全ての星団 でターンオフまで観測できた。また多くの星団では主系列を数等追うこと ができた。その良い例は、年齢 9 Gyr の ESO121-SC03 で、はっきりと主系列 が見えている。
 年齢の決定には δT1 = T1(TO) - T1(GBC), GBC=giant branch clump, を用いた。年齢の較正には 標準星団を用いた。 しかし、高齢星団は見つからなかった。ただし、NGC1928 と NGC1939 は バー領域にあってターンオフを決定できなかったので、高齢の可能性を 排除できない。それ以外の候補星団は 1 - 3 Gyr の中間年齢星団であった。 UBV カラーが高齢を示唆した原因はストカスティックに現れる高光度の星 の影響及び混み合った領域内の暗い星団に対する測光エラーである。CaII 三重線から導かれる [Fe/H] &sim: -1.0 という比較的低いメタル量も 中間年齢と一致する。これらの星団が円盤上遠距離に位置することは LMC 円盤の形成と進化に関して興味深い。
 文献から調べた δV, δR も調べたが、これらの併用により、 t > 1 Gyr での星団形成と破壊の歴史を詳しく知ることが出来る。 その結果、以前から言われていた, 星団形成が 3 - 8 Gyr 以前の時代 中断したこと、星団形成が 3 Gyr 前から活発となり、1.6 Gyr 昔に ピークを迎えたことを再確認した。我々の観測から、未発見の古い星団は まず残っていないと思える。

Twarog, Ashman, Anthony-Twarog 1997
銀河系円盤の形成と進化の改訂に関するある観測
 DDO 測光と中間分散分光により組成が与えられた 76 散開星団を統一した メタル量表示に変換し、銀河系円盤の局所構造と進化の研究を行った。Ro = 8.5 kpc. 星団メタル量の分布は二つのはっきり区別されるゾーンで記述される。一つは RGC = 6.5 - 10 kpc でメタル分布は平均 [Fe/H] = 0.0 で散布度 = 0.1 dex。そこではあるにしても精々弱いメタル量勾配の証拠しかない。 R > 10 kpc ではメタル量散布度は 0.10 - 0.15 dex、平均 [Fe/H] = -0.3 でメタル量には R = 10 kpc で鋭い断絶があることが予想される。この断絶を 補正した後には、面に垂直な方向のメタル量勾配の証拠は認められない。

Phelps, Janes 1996
古い散開星団 Berkley 66
 これまで未観測の Berkley 66 (Be 66) の V, I 撮像を KPNO 2.1 m 望遠鏡 で行った。Be 66 が年齢 3 - 4 Gyr であることを CMD フィットと Janes, Phelps 1994 の「形態学的年齢指数」とから見出した。銀河中心から 12.9 kpc 離れて、最も遠い高齢散開星団の一つである。  太陽からの距離 5.2 kpc で、星団は銀河面の 21 pc 上方にあり、半径 1.8 - 3.5 pc のかなり大きな星団と分かった。星団の最小質量は 750 Mo である。 ブルーストラグラーもあるのかも知れない。

Lada, Lada 1995
IC 348 の近赤外撮像と埋もれた若い星団の光度関数
  若い星団 IC 348 の JHK 画像を得た。星団は 380 星を含む。 星の半数は r < 0.5 pc 内に存在する。 K-バンド 光度関数 (KLF) は 8≤ mK ≤11 mag で mK0.4 の形をとる。このべき乗指数はオリオンの若い 4 星団で得られた 0.37 - 0.38 に近い。mK > 11 mag では KLF はべき乗型から外れ、限界等級に近い mK ∼ 14 mag で 低下に転じる。
 t < 107 yr の PMS 星を含む若い星団の KLF 進化モデルを 作った。 多数の埋もれた星団の KLF とモデル KLF の傾きは大体一致し、一様で連続的な 星形成が埋もれた星団の星形成史の特徴であることを示す。IC 348 の観測を 我々のモデルと比較して、IC 348 の星形成は 5 - 7 106 yr 継続 し、全質量範囲での星形成率も個々の質量に関する星形成率も星団年齢の期間 を通じ一定であることが分かった。さらに、質量関数もフィールド星の質量 関数と水素燃焼質量までは同じである。さらに、質量関数も、星団サイズも、 星密度も似ているに拘わらず、IC 348 に比べより若いトラペジウムは星形成 率が 20 倍高かった。 IC 348 星の 20 % には赤外超過がある。星団年齢と 合わせて考えると、暗い (proto-planetary) 円盤期の寿命は 2 - 3 106 yr で、以前の評価と一致する。

Phelps, Janes, Montgomery 1994
銀河系円盤の形成:最高齢散開星団を探して
 高齢散開星団候補の CCD 測光サーベイから、実際に高齢の星団が見つかった。 幾つかは最高齢であった。良く知られている二つの形態学的年齢指数がある。 一つは主系列ターンオフと水平枝の光度差、もう一つはターンオフと巨星枝 のカラー差である。この二つから散開星団を年齢順に並べた。
 我々のデータに以前他で発表された星団測光データを合わせると、ヒアデス と同じ又はより高齢の星団が 72 個、内19個は M67 (5Gyr) と同じか 高齢であった。特に高齢は Be 17, Cr 261, NGC 6791, Be 54, AM 2 である。 Be 17 と他の高齢星団 Lynga 7 は最も若い球状星団と同程度に高齢である。 高齢星団が多く生き残っていることは、円盤初期には星団形成が中間期より も活発であったことを意味する。

Hodapp 1994
分子流天体の K 画像サーベイ
 Fukui 1989 の CO 分子流天体リストの全領域を 8'×3' 視野の K' 撮像 した。各天体の画像を示し、付随する星雲、星団について述べる。K' は 中心 2.11 μm, 半感度波長 1.94, 2.29 μm である。  放出流天体の大部分は K' で星雲を伴っている。そのような星雲は若い星を 探す助けになるだろう。 放出流天体の約 1/3 は若い星の集団に含まれるか 傍にある。若い星団の大部分は K' にピークを持つ埋もれた天体である。これは それらの年齢が < 1 × 106 yr であることを示唆する。

Gomez, Hartmann, Kenyon, Hewett 1993
牡牛座前駆主系列星の空間分布
 数種の統計手法を用いて、Taurus-Airiga 分子雲内の前駆主系列星の非乱雑配置の性質を 導いた。0.3° スケールで指数 -1.2 のべき乗型二点角度相関関数が観測分布をよく 再現することがわかった。これは T Tau 分布に集団が実在することを意味する。  また、最近接距離分布からは投影間隔の中間値が 0.3 pc であることが判った。この間隔は 分子雲コアのサイズ(∼0.1 pc)より少し大きいだけである。これは Taurus のような 低密度星形成領域では孤立した単独星の形成は生じないことを示す。
 狼座、カメレオン T1, ヘビツカイ座 ρ 星、オリオン、 NGC700/IC5070, NGC2264 領域の最近接距離分布からも似た性質が得られた。我々の解析は終局的には孤立星 となる場合でも通常は比較的近接して生まれることを示す。細長く伸びた分子雲コア内部での 多重性の星形成がそのような結果をもたらす機構を提供している。
 牡牛座に投影半径 0.5 - 1 pc の統計的に有意な星集団を 6 個見出した。これらの小集団は 夫々が 15 個程度の星を含み、分子雲全体に分布している。集団間の内部運動は 0.5 - 1 km/s で ある。

Bica, Santos, Alloin 1990
LMC 青星団の写真赤外スペクトル進化:銀河系散開星団との比較
 若い LMC 星団の全体スペクトルの性質を Mermilliod 1981 の銀河系 散開星団の合成 HR 図と較べた。  二つのグループの進化系列の間には、恒星進化期、例えば赤色超巨星、中間 質量星を起源とする巨星、Be 星、の点で強い対応が認められた。

Wilking, Lada, Young 1989
ρ Ophiuchi 赤外星団の IRAS 観測
 IRAS co-added データと PSC をヘビツカイ座分子雲複合体 4.3 pc2 で 調べた。 NIR Hα 観測を併用して、44/64 IRAS 12 μm 点源を若い天体に 同定した。これまでの結果と合わせ、計 78 個の若い天体がダストに隠された星団の メンバーとなった。
 可視、近赤外データと IRAS を合わせ、SED を作り、光度を推定した。2.2 - 25 μm SED 勾配を用いて SED を分類した。SED の形はクラス I からクラス II へと連続的に 並んだ。これは降着原始星から星周円盤を伴う前駆主系列星への進化を表していると 解釈される。
 各ステージ毎の数の分布から、降着期の寿命、降着率、ヘビツカイ座星形成活動の継続時間 を見積もった。過去数百万年の爆発的星形成活動の結果分子雲コアでの星形成効率は SFE ≥ 22 % という高い数値を出していることが判った。
 埋もれた星団の光度関数を作った結果、SED の形により光度が分離することが判った。 クラス I 天体が中間光度を占有していることから、クラス I から II へ進化する際に 光度が変化するか、雲内の星質量が順に増えていくかと考えられる。

Claria (1986)
散開星団 NGC 2567 の基本的性質
 V = 14.6 より明るい 164 星の UBV 測光と、散開星団 NGC 2567 の赤い 5 星に対する DDO 並びに CMT1T2 測光を行った。 CMD と TCD を併用した結果、3つの赤色巨星を含む 81 星が星団メンバー、 15 星がメンバー候補とされた。  それらから、前景赤化 E(B-V) = 0.13, 距離指数 Vo-Mv = 11.05 (d = 1.62 kpc), 年齢 t = 0.29 Gyr が導かれた。赤色巨星の金属量を星団金属量と仮定 すると、NGC2567 は太陽組成に近い金属量を有する。

Claria, Lapasset 1983

ヒアデスより高齢の3星団内巨星の物理的性質
 高齢散開星団 NGC 2482, NGC 3680, IC 4651 の 広帯域 CMT1T2, 中帯域 DDO 測光を行った。独立な二つの測光 規準を用いて、フィールド星と星団星を分離した。また、赤化、距離指数、 金属量、有効温度、表面重力を導いた。質量も粗い見積もりを出した。 NGC 2482 と IC 4651 の巨星はヒアデス巨星とほぼ同じ CN 強度を有する。 NGC 3680 の方は近傍 K 型巨星よりもわずかに強い CN 強度を示す。 CMT1T2 から NGC 2482 と NGC 3680 は鉄ラインから 導かれた値として、 [Fe/H]MT = -0.1±0.1、一方 CNO-混入のある (C-M)指数は 0.4dex 高い。 CMT1T2, DDO 双方が IC 4651 は [Fe/H] = +0.2±0.1 で中間年齢、高齢星団の 金属量分布の高金属量側に位置することを支持する。NGC 3680 と IC 4651 の クランプ星はその位置でヘリウムコア燃焼を開始する以前にマスロスを受けて いたようだ。

Sandage (1982a)
Oosterhoff 周期グループと年齢 III. 球状星団系の年齢。
 約30球状星団における Oosterhoff 周期シフト=周期-変光曲線の形の関係 から決まる、は二つのはっきり分かれたグループと言うよりは連続的な変化を 示すことが判った。シフトはメタル量と相関する:長い周期は低メタル星団に 起きる。論文 I, II からの結論では、変光星周期が長い星団では RR Lyr 絶対 等級が明るいことを要求する。光度レベルを ΔMbolRR = 3 Δlog P で規格化した 8 星団の合成色等級図から、主系列ターンオフ光度 はメタル量と ∂ΔMbolRR/∂[Fe/H] = 0.29 の関係 があることが判った。低メタル星団ほどターンオフ光度が明るい。この観測 観測結果は、下田、Iben がメタル量の異なる星団は同じ年齢であるという 仮定から計算したモデルの結果と一致する。[Fe/H] = [-2.3, 0] の星団データ をイエールモデルによる下田,Iben 条件を用いての解析は、全ての星団の年齢が 決定誤差 = 10 % の範囲内で一致することを示した。
 星団が同年齢と言う独立な証拠は、水平枝等級とターンオフ等級との差を用 いても導かれる。データからは、高メタル星団 47 Tuc と NGC 6838 が低メタル 星団より若いことはあり得ない。ほぼ等年齢と言う条件からは、Oostethoff 周期シフトは正に観測されるメタル量との相関が導かれる。また、なぜ星団内の 星の周期-振幅関係がメタル量によって並ぶのかも、もし振幅が RR Lyr 不安定 帯の中の位置で一意に決まるとすれば、理解できる。
 M3 RR Lyr の絶対等級を Mv = +0.80 とするなら、球状星団の年齢は 17 ±2 Gyr である。この年齢は、球状星団年齢に宇宙開始以来球状星団が 出来るまでの時間を加えれば、 Ho = 50 km/s/Mpc から決まる宇宙年齢と合う。 今回のデータは時折示されるもっと大きなハッブル定数とは明らかに矛盾する。

Sandage (1981b)
Oosterhoff 周期グループと年齢 II.6 星団変光星の性質。
 6 球状星団の RR Lyr データを用いて、論文Iの結論=異なる Oosterhoff グループ間の変光星同士ではどの温度でも周期シフトが存在する、をテストし た。 M3, M4, M5, M15, NGC6171, NGC6891, ωCen の変光星は周期・温度 関係が周期・振幅関係と同じシフトを示した。温度・振幅関係にはシフトがない。  周期残差 Δlog P を M3 と ωCen の個々の変光星で決めると、 見かけ等級と相関があった。こうして、LRR の広がりは実際にある。  同じ星団中で、Te と A を固定すると明るい変光星は長い周期を持つ。データ は ΔMbol = 3 ΔlogP, これは質量固定で、 P⟨ρ⟩ = 一定から予想される関係、と矛盾しない。 振幅固定で周期のズレを観測される等級変化と組合すと、周期・光度・振幅関係 が、Mbol = Mbol(M315.52) - 3(log P + 0.129 AB + 0.088) という形で求まる。Mbol(M315.52) は M3 RR Lyr 星 mbol = 15.52 の絶対等級。周期・振幅関係の係数 -3 は モデルが予想するように、質 量がメタル量の関数なら、 -4.2 かもしれない。

Sandage, Katem, Sandage (1981a)
Oosterhoff 周期グループと年齢 I. M 15 星団変光星の測光。
  M15 内の 60 RR Lyr 星の3色測光から、不安定帯内でのカラー、振幅、変光 曲線の形、周期の分布を調べた。この Oosterhoff II 型星団に対する、周期- 振幅、周期-増光時間、周期-カラー、カラー-振幅関係を、Oosterhoff I 型星 団 M3 と較べた。
 M15 においては、周期を含む相関関係がすべて Δlog P = 0.055 長い 方にシフトすることが判った。一方、振幅-温度、増光時間-温度関係は両者で 一致した。Ritter の条件 P⟨ρ⟩1/2 = Q と両立する 説明は M15 水平枝が M3 より ΔLHB = 0.090 明るいという ものである。  ゼロエイジ水平枝モデルを用いて、ΔY = Y(M15)-Y(M3) = +0.05± 0.02 であることが判った。これは、Δlog Z = log Z(M15)-log Z(M3) = -0.5 とは逆センスである。
 M3 と M15 の年齢は、両者の推定年齢の 0.5 σ 内で一致する。低メタ ルほど水平枝光度増加という傾向は、同年齢でメタル量が異なる二つの星団では 低メタルほど主系列ターンオフ光度が明るく、同じである。
 M3, M15 の平均年齢はイエールモデルを用い、t = 16.4±3.3 Gyr である。

Turner (1980)
20 日セファイド RU Scuti のアソシエイションメンバーシップ
 19.7 日セファイド RU Scuti の近傍にある明るい星の UBV 測光と MK スペ クトル型を示す。二つのはっきりした集団が見えてきた:DM = 11.60 (2.09 kpc) で Trumpler 35 星団(t=25 Myr)の中にある近距離群と DM = 12.74 (3.53 kpc) で t=9 Myr の遠距離群である。  赤化量と進化段階の一致から RU Sct は Trumpler 35 群に属する。 OB 星に対する赤化 E(B-V) = 1.03 から ⟨MV⟩ = -5.19 が得られた。明るい未研究の背景アソシエイションは WC9 星 MR90 を含んで いるらしい。

Mould, McElroy (1978)
高メタル球状星団の TiO バンド強度
 球状星団巨星枝先端にある星の有効温度と TiO バンド強度の変化を観測した。 フィールド巨星ではバンドが強い温度で、中間メタル量の球状星団では TiO が検出 されなかった。この結果に赤化補正は重要でない。  高メタル星団では最も低温の星で TiO が検出された。それは同じ温度のフィールド 星と較べると弱い。赤化に関し適当な知識があると、この結果を使って星団をメタル量 で並べられる。予備的な理論較正から、 NGC 6171 と M71 のメタル量は他の研究結果 と一致する。

Moffat, Vogt 1973
若い散開星団に基づく銀河系渦状構造の改訂像
 Becker, Fenkart 1971 が3色測光した若い星団 88 個は今では 110 個に 増えた。4つの星団の改訂を与えるが、中でも Pismis 20 は特に興味深い。 この星団は 超新星残骸 G320.4-1.2、X-線源 2U1509-58 と一致する。   r = 4 kpc までの若い星団の分布を他の5種類の渦状腕追跡天体の分布と 較べた。最も面白い特徴は、l = 270 で局所腕から枝が出ること、局所腕が l = 235, r = 1.6 kpc で突然切れることである。

Becker,Fenkart (1970)
銀河星団と HII 領域
 若い星団と HIIR の観測データを文献から集めた。 それらが渦状腕に沿って並んでいることが判った。 l = [200, 250] で渦状腕が消えて行くように見える。一方、l < 95 における +I 腕(ペルセウス腕)を完成させるには観測的困難がある。 というのは星団距離が 3 kpc を超え、シグナス分岐の強い減光を 受けるからである。 l = [140, 180] には若い天体が完全にない。  最も興味深いのは、l = [300, 360] で、Bok の解釈と我々の考えとの 相違を解決する領域である。l = 50 方向、及び l = [255, 285] の 腕間領域をはっきり定義することも重要である。

Sharpless 1966
アソシエイション、HIIRs、銀河星、超巨星の分布
 "Galactic Structure" の第7章。1965 年当時までの腕追跡天体、アソシエ イション、HIIRs、星団、超巨星の研究結果を解説。相互に比較して、 最終案を出す。  サジタリウス腕、オリオン腕、ペルセウス腕がほぼ確定し、サジタリウス腕の 内側にもう一つあるらしいという推測がなされている。

Becker (1964)
156 銀河星団と 61 HIIRs の空間分布
 最早期スペクトル型の星が O - B2 の星団の 分布を示した。局所腕、ペルセウス腕、内側腕が見える。  47個の HIIR の分布3本の腕に沿って並んでいる。距離精度が星団より低い ために散らばりは大きい。星団と HIIR の腕は HI の腕と一致しない。

Sandage (1954)
球状星団の現在の知識とその恒星進化における意義
 M3 の Mpv = +7 までの色等級図が得られた。Mbol = +3.5 のターンオフは 主系列星進化計算から初期 Mbol = +4.5 であることが判る。年齢は 5.1 Gyr である。初期 Mbol = [4.5, 7.0] 区間の主系列光度関数を外挿して、[3.9, 7] 主系列光度関数を作る。  M3 の観測光度関数をこうして作った主系列初期光度関数と対応させて、 モデル計算が不十分な主系列の先の恒星進化を観測的に導いた。M3の赤色先端 星はターンオフからそこまで 1.6 Gyr 掛かったことが判った。

Munch, Morgan 1953
シグナスにおける青色巨星(OB-星)集団
 (l, b)I = (47, 0) 付近に青色巨星 (OB 星)が 11 個発見された。 この領域は γ Cygni の 約2度北東にあたる。内2つは既知の OB 星 である。  それらの見かけ実視等級は 9 - 11 等である。

Reber (1944) 
宇宙座標系で静止している特徴(Cosmic Static) 
 "cosmic static" は空から来る電波スペクトル中で、自分自身を露わにする 自然の中の擾乱である。 160 MHz でのサーベイを行い、擾乱の中心がいて座 にあることを見出した。  小さな極大が白鳥座、カシオペア座、 大犬座、とも座にある。極小がペルセウス座にある。観測可能なレベルの電波 放射が太陽から来る。

Oosterhoff 1939
球状星団内変光星に関して
 ω Cen, M3, 5, 15, 53 の変光星周期分布を見ると、各星団で 二つの周期グループに分かれる。短周期グループは Bailey タイプ c, 長周期グループはタイプ ab が多い。  ω Cem M15, M 53 では タイプ c と ab の数はほぼ等しい。一方、 M3, M5 ではタイプ c の数は非常に少ない。



反射星雲

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著者 内容

Le Bertre, Epchtein, Nguyen-Q-Rieu (1984)
IRAS 1827-145P01: 双極流天体?
 IRAS 1827-145P01 の JHKLMN 測光の結果を報告する。この星は OH 17.7-2.0 の赤外対応天体である。我々の観測と IRAS を合わせた 1 - 100 μm SED は 球対称なダストシェルでは説明が難しい。  この天体の赤外スペクトルは双極流星雲のそれと似る。この類似性と OH 放射 データとから、IRAS 1827-145P01 は OH/IR-双極星雲をエッジオンで見たものと 考える。

Herbst (1975)
R-アソシエイション III. 局所渦状腕構造
 R アソシエイションの分布は、局所 (Cygnus) 渦状腕構造が帆座 l = 265 方向、 2 kpc まで見える。この構造はカリーナ・サジタリウス腕からは明ら かに離れている。可視局所腕の内側の縁にダストが集まっているらしい証拠 がある。  これは銀河の観測にも見られる。R アソシエイションを他の種類の銀河腕 追尾天体と組み合わせて、新しい可視渦状腕のマップを作った。このマップ から、渦状腕の巻き込み角 = 13±4° が導かれた。

dvan den Bergh, Herbst (1975)
南天星雲に埋もれた星のカタログ
 セロトロロのカーティスシュミット望遠鏡を使い、南天反射星雲を観測した。 星雲に埋もれている 136 個の南天星のカタログを示す。これ等の星の測光と 分光の詳細は Herbst 1975 AJ 80, 212 に示す。

Racine (1968)
南天星雲の星
 反射星雲中の星の測光および分光観測を行った。二色図上での赤化勾配は正常で 早期型星よりも晩期型星に対して急であることが判った。  データからこれらの天体の距離と空間分布を求めた。観測からは約15の反射星雲の アソシエイションが現れた。はっきりした R-アソシエイションの帯がオリオン腕の縁

dvan den Bergh (1966)
反射星雲の研究
 パロマ―サーベイのブルーとレッドの両方に反射星雲が付随して見える δ > -31 の BD, CD 星のカタログを作った。近傍の反射星雲は圧倒 的にグールドベルトに沿って並んでいる。一方もっと遠い星雲は銀河面に集中 している。データから 13 の星雲集団が摘出された。その内の幾つかは既知の OB-アソシエイション、T-アソシエイションと一致する。銀緯が中間高度また は高高度にある反射星雲は個別の星に付随していない。
 これらの星雲は銀河系全体の光を反射しているのではないか?この銀河系全体 の光は、バルジや円盤からの光が吸収されてしまう銀河面でよりも強いのだろう。 超新星残骸の近くにある反射星雲 IC443, CTB1, 1.9° Cepheid SU Cas は 天体までの距離の決定に使えるかも知れない。 T Tau 星の周りの星雲の構造は 典型的な反射星雲とは異なるようである。



サーベイ

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著者 内容
Andrae et al. (2023)
GAIA DR3:GSP-Phot を用いた BP/RP スペクトルの解析  
 GSP-Phot = General Stellar Parametrizer from Photometry は Apsis = astrophysical parameters inference system の一部で、天体距離、測光、BP/RP 分光に基づいて、数億の星のパラメター= Teff, log g, [Fe/H], MG, Rs, D, AG をカタログにする。その為に Bayesian forward-modeling を採用して、 BP/RP スペクトル、視差、G を同時にフィットする。  GP-Phot は G < 19 の 471 M 天体を解析した。結果の精度は視差に影響 される。ω/σω > 20 つまり大体 2 kpc 以内 の天体の信頼度は高い。文献値と較べるとメタル量には大きなバイアスが認めら れ、定性的な意味合いしか持たない。我々は経験的な補正を加え、その結果 バイアスは大幅に下がった。

Drimmel et al. (2023)
GAIA DR3:天の川円盤の非対称構造をマップ化する  
 ガイアにより 33 M 星の位置と速度、470 M 星の物理量が、11 M 星の変光 が見つかった。物理量と変光情報から星をグループ分けし、天の川銀河円盤の 非軸対称な特徴を位置速度空間に見出す。高温 OB 星 580,000 個と 100 Ma より若い 988 の既知散開星団を用いて、 太陽から 4 - 5 kpc の位置にある 星形成を伴う渦状構造をマップ化した。年齢が 200 Ma より若い古典的セファ イド 2800 個の分布は外側円盤太陽から 10 kpc にある渦状構造を現わす。8.7 M の赤色巨星(RGBs)が見出されたが、その内 5.7 M 星は視線速度が得られて いる。それらから太陽から 8 kpc まで MW の速度場マップがえられた。  若い種族によって明らかになった渦状構造は EDR3 の距離測定と赤外測光 からの天体リストからの最近の結果と一致し、オリオン腕が少なくとも 8 kpc の長さを持つ事を示す。外側腕は HIIRs からの結果に合う。それはペルセウ ス腕の第3象限への延長のように見える。速度の得られた RGBs は内側円盤に おけるバーの運動学的特徴を明らかにした。また外側円盤の星流運動は渦状腕 かバーの力学共鳴かも知れない。近傍 OB 星の速度場を比較した結果は RGB サンプルと一致する点、異なる点を明らかにした。

Creevey et al. (2023)
GAIA DR3:天体物理パラメターの黄金サンプル  
 Gaia から導かれる天体物理パラメターが如何に高精度であるかを示す。 HR 図の様々な領域から採ったサンプル星の天体物理パラメターを作り出す。 初めに次の三グループ、(1)若い大質量円盤星 O,B,A 型の 3 M 星. (2) FGKM 型の 3M 星. (3) UCDs 20 K 星。  さらに純正炭素星を 15,740 星。太陽類似 5863 星。初の一様な SPSS サンプルを示す。これらの応用の幾つかを示す。

Vallenari et al. (2023)
GAIA DR3:内容の概要  
 Gaia DR3 は 34ヶ月のデータを処理した結果である。GRVS < 14 mag, Teff = [3100, 14,500] K の 33 M 星に Vrs が与えられた。平均 Gaia スペクトルが閲覧可能となった。なり 1M 星は RV 分光計のスペクトルが与え られ、200 M 星には BP/RP プリズム分光スペクトルが与えられる。  470 M 星には物理パラメターを、 1500 M 星には天体クラス確率を与えた。 アンドロメダ銀河の半径 5.5° 以内の星の測光モニターを行っている。

Schultheis + 21 (2015)
GAIA-ESO サーベイ:星間減光の追跡  
 Gaia-ESO 高分散分光サーベイ第2データ公表と十分に精度の高い距離と組み合わせて 星間減光とその銀河系内での位置による依存性を調べることである。   5000 以上の星の大気パラメタ―を使い、SDSS, VISTA、理論モデルと組み合わせて、 距離と減光量を求める。減光係数を文献値と比較して星の性質と銀河系内位置に対する 依存度を論じる。  減光係数が大気パラメタ―や銀河系中心距離に依存する証拠はなかった。これは SDSS ugroz バンド、NIR JHKs バンドでは減光則が一様であることを意味する。従って 平均色超過に一定の減光係数を適用して求めた減光マップは付加的な系統誤差を考慮 せずに使用できる。


Drew + 29 (2014)
VPHAS+ = VST Photometric Hα Survey of the Southern Galactic Plane and Bulge
 VST による銀河面とバルジの測光 Hα サーベイ (VPHAS+) は角分解能 1 秒で南天銀河を u, g, r, i, Hα でサーベイする。その範囲は赤道 より南の銀河面、 b = [-5, 5] である。l = [10, -10] のバルジでは範囲を 拡張した。この ESO 公開観測は 2011 に開始され、10σ で 20 等に達 した。全体では 3 億星の可視測光データを与えるであろう。
 観測戦略とデータ処理パイプライン、分割 Hα フィルターの評価も述 べた。モデル大気とライブラリースペクトルを用いて、主系列の (u-g), (g-r), (r-i), (r-Hα) を計算した。また、SDSS 観測と重複した 2 領域での データを用いて測光の妥当性も調べた。 
  VPHAS+ 全領域の (U-g, g-r), (r-Hα, r-i) 二色図を示す。画像の性能 から、小さくまとまった星雲と星雲形態に対する研究機会に注意が払われる。 サーベイデータから NGC 2899 中心星を発見したことで u-バンドの価値が明らか にされた。このサーベイで用いられた VLT サーベイ望遠鏡と OmegaCam との組み 合わせは赤化を受けた早期型星の自動探査に理想的であることが判った。この観測 から将来、近接連星、白色矮星、急速変光天体の発見と解析が期待される。

Dalcanton et al 2012
PHAT = Panchromatic Hubble Andromeda Treasury
 Panchromatic Hubble Andromeda Treasury は進行中の HST 多期間 観測プログラムで M 31 円盤、中心から 0 - 20 kpc の 1/3 を UV から NIR にかけての 6 フィルターで撮像する。観測には WFC3 と ACS が用いられる。 完結すると 828 軌道からの 0.5 deg2 をカバーする。 フィルターは F275, F336 を WFC3/UVIS カメラで、 F475, F814 を ACS/WFC カメラで、 F110W, F160W を WFC3/IR カメラで使用した。 この波長帯から有効温度、輻射等級、減光をほとんどのスペクトル型星に対し 求めることが出来た。mF275W = 25.1, mF336W = 24.9, mF475W = 27.9, mF814W = 27.1, mF110W = 25.5, mF160W = 24.6 で S/N = 4 であった。  しかし、内側円盤では混み合いのため限界等級は混み合いで決まる。 最も込んだところでは最大で5等くらい明るくなる。論文ではディザリング、 観測戦略、測光、天文位置、データについて述べる。また、測光安定性テスト の結果、混み合いエラー、測光バイアス、ポインティングコントロールについ て述べる。赤色巨星から導いた円盤構造の初期フィットについて報告する。 これは M/L 比の仮定に独立な方法で、減光変化に対しても安定な結果を出す。 これ等のフィットは 10 kpc リングは単に最近の星形成が活発な領域 ではなく、 t ≥ 1 Gyr の星の密度超過を示す力学的な構造であることが 分かった。

Groot et al (2009)
UVEX = 北天銀河面の UV-超過天体サーベイ
 UVEX サーベイは、2.5 m INT を用い、銀河面に沿った 10°×185° 領域を U, g, r, HeI5875 で 21 - 2 mag まで測定する。装置配置とデータ処理 を述べる。  主系列、巨星、超巨星、 DA, DB 白色矮星、AM CVn 星のシミュレーションカラー を作り、赤化の影響も加えた。現在までの全体 30 % データの初期結果を示す。

Lucas + 30 2008
UKIDSS 銀河面サーベイ
 UKIDSS Galactic Plane Survey (GPS) は UKIDSS コンソーシアムが行っている 5つの公開サーベイの一つである。これは b = [-5, 5] の 1868 deg2 を J, H, K フィルターで、牡牛座ー御者座ーペルセウス座分子雲複合体の 200 deg2 を J, H, K と 2.12 μm H2O (1-0) 線 で撮った。その総計は 2 109 天体となる。ここではデータセットの 性質とユーザーのためにその応用を述べる。 また、DR2 を用いた科学成果も 簡単に述べる。
(1)GPS-GLIMPSE クロス対象から星形成域 G28.983-0.603 の YSO 同定。
(2)M17 の広域像に減光マップを提供。星混同が光度関数に及ぼす効果。
(3)ρ Oph 暗黒雲の H2 放射。ジェットの根元に原始星。
(4)中心バルジ核の X-線源。近傍の主系列星軟X源とバルジ巨星硬X源。
(5)排除帯における銀河。l > 90 で星と明確に区別できる。
(6)(i-J, J-H) 二色図で A-F 矮星、G-矮星、K-矮星区別


Drew + 34 (2005)
The INT Photometric Hα Survey of the Northern Galactic Plane (IPHAS)
 アイザック・ニュートン望遠鏡 (INT) 測光 Hα 北銀河面サーベイ(IPHAS) は、北銀河面を b = [-5, 5] 巾で 10x180 = 1800 deg2 の CCD サーベイを行う計画である。10 σ 測光深度は r = 20 に達する。観測概略と点源測光の評価を示す。データはワイドフィールド カメラを用いた Hα 狭帯フィルター, Sloan r, g, i 広帯域画像の4種である。
 恒星スペクトルの分光測光ライブラリーとフィルター透過率曲線を用いて、 IPHAS (r-Hα, r-i) 2色図をシミュレートした。その結果、太陽メタルの星に対し、Hα 輝線星と非輝線星の期待分布が判った。わし座(Aquila) での観測結果との比較 から、シミュレーションが正常星のカラー分布を再現していることが判った。  牡牛座(Taurus) 6 天体の IPHAS 測光値とフラックス較正した分光観測と比較 した結果は IPHAS パイプライン処理の信頼性を確認した。ケフェウス座(Cepheus) の観測との追尾観測から、 (r-Hα, r-i) 図上で星の主経路より上に位置する星は輝線天体であることが判明した。 輝線を欠く白色矮星や炭素星が IPHAS 二色図上ではっきりと分離していること も分かった。
 北銀河面で空間的に識別可能な星雲の研究で IPHAS がどう使えるかを議論した。 Shajn 147 (直径 3° の超新星残骸)を例に連続光差引後の画像を作って 示した。
 IPHAS 点源カタログは 80 M 天体の測光値を載せる予定である。それ自体、 または近赤外カタログと合わせて、 IPHAS は銀河面星種族の研究で主要 データ源となるであろう。



 論文抄訳 

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マゼラン雲
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