ACS Nearby Galaxy Survey Treasury (ANGST) は D ≤ 4 Mpc の銀河体積 限界サンプルの星に対し一様精度の多色測光を行う。サーベイ体積内には 69 銀河が含まれ、それらは様々な環境、近接二重銀河、大小の銀河群、フィラメ ント、孤立系を成している。その形態型は光度, 星形成率でファクター 104 に亘る。サーベイデータは Advanced Camera for Surveys (ACS/HST) で撮られ、ACS が故障した後はアーカイブデータと WFPC2 観測で 補った。 | ANGST のメジアン 50 % 完全度を、 mF475W = 28.0 mag, mF606W = 27.3 mag, mF814W = 27.3mag で達成した。 これは tip of the red giant branch (TRGB) の数等下である。深い観測を行 った領域ではその限界等級はレッドクランプの構造を分解できる。得られた測光 カタログは公開され、 1400万以上の星に対する 3400 万測光から成る。 この論文ではサンプル選択、撮像、データ整約、エラー、カタログを記述 する。また、 TRGB から決めた相対距離も述べる。 |
過去の HST による近傍銀河観測には一様性が欠如していた。ANGST は局所 宇宙の完全で無バイアスサンプルを提供する。ANGST は新しいデータだけでなく 古いアーカイブデータにも均質のデータ処理を施した。 | このサーベイは VLA-ANGST サーベイ、Spitzer Local Volume Legacy Survey などをの今後の研究のターゲットを与えるだろう。 |
2.1.サンプル選択初期選択Karachentsev et al 2004 は彼自身が集めた距離に基づいて Catalog of Neighboring Galaxies (CNG) を発表した。我々は局所群のゼロ速度面 (van den Bergh 2000) を超え、 2 Mpc 以内の銀河にカタログを限定した。さらに |b| > 20° としてサンプルの完全性を保った。 (ここは良く理解してない。 ) 拡張 当初、最遠距離を 3.5 Mpc としたが、フィールド銀河ばかりになってしまう。 M 81 群は 3.6 Mpc, Cen A 群が 3.7 Mpc にある。比較の結果、高銀緯・ 低減光の利点から M 81 群が選ばれた。さらに、第2の高密度環境としてスカ ルプターフィラメント中の NGC 253 クランプを含めた。この拡張により、 また高光度銀河サンプルも取り込むことが出来た。 表1=サンプル 表1にサンプル 69 銀河を示す。元々の CNG カタログとの違いは、 UGC 8638, E059-01, KKH 60 の距離が伸びてサンプルから外したこと、 NGC 4163 と DDO 183 の距離を小さくしてサンプルに組み入れたこと、 星が検出されない HIJASS を消したことである。NGC 247, NGC 55, DDO 187, UGC 8833, HS 117, KKH 37 の距離も Karachentsev 2005 に従って変更した。 |
2.2.サンプルの性質表1の項目角直径は, 大きな銀河に対して D25, 小さな銀河に対して D26.5 を適用した。 W50 は HI 線巾である。Karachentsev et al 2004 への追加は K 等級。 光度と形態 ANGST 体積内銀河の 90 % は LMC より暗い。たった、17 % が 1 ≤ T ≤ 9 で渦状銀河である。58 % は不規則矮小銀河、 25 % が矮小楕円銀河である。 矮小楕円銀河がこれほどあるのに、大きな楕円銀河はサンプル中に存在しない。 NGC 404 は S0 に分類されるが、低光度で広がったガス円盤を持つ。最も 早期型の巨大渦状銀河は M81 で Sab である。 群 はっきりした銀河群が4つある。それらは、矮小銀河が多い NGC 3109 群、 スカルプターフィラメント内の二つのクランプ NGC 55/NGC 300 群と NGC 253/NGC 247 群、大きな M 81 群である。Tully et al 2006 の言う "矮小群" が ANGST サーベイに含まれる。それらは 14+12, 14+13 14+07, 14+08 である。初めの二つは先に述べた NGC 31109 群と NGC 55/ NGC 300 群である。表1には群への帰属も載せた。 |
![]() ![]() 図7.上= NGC 300 でACSで重なった2領域の ACS F814W 露出での、 &Deruta;m = 1 区分内での等級差の累積分布。右= M 81 の深い測光領域で、 連続した2回の軌道での測光の差の累積分布。 暗い区間ほど太い線になる。赤線は完全なガウス型エラー 分布からの予想。横軸の等級差は各区間での測光エラーで規格化されている。 観測等級差はエラー分布の予想(赤線)からそう離れていない。 下= M 81 の深い領域。 |
![]() 図8. NGC 300 の WIDE-1 重なり領域での人工星の真の等級と計測等級との 差の累積分布。上:横軸=測光エラーで規格化した等級差。分布は1等巾の 区分で計算された。赤線=ガウス型エラー分布の場合の予測。暗い区分ほど 太い線。下:観測した等級差と等級の関係。計測等級はモデル等級より 少し明るい。未分解の暗い星が加わるためであろう。 |
観測領域の色等級図 図9−22は表2,3に示したフィールドの色等級図を示す。プロットした のは高精度測光カタログ *.gat.fits である。この精度カットは色等級図の 副構造をはっきり示す。ただし、混み合った領域では測光完全度が犠牲になる。 色等級図上で高密度になる個所では等高線ヘス図を用いた。そのレベルは 1, 1.5, 2, 2.5, 3, 4, 6, 8, 12, 16, 20 × 104 mag -2 である。図の左側には典型エラーを示す。 |
シミュレイション 図23には比較用のモデル色等級図を示す。図中には若い主系列、青色 ヘリウム燃焼星、赤色ヘリウム燃焼星、AGB星の経路を示す線を描き込んだ。 これらの構造の中で、青色、赤色ヘリウム燃焼星は良く知られていない。という のはこれは色等級図中の星が十分な数ないと見えないからである。青色ヘリウム 燃焼星系列の上端は二重主系列と見誤られる可能性がある。さらに、 青色ヘリウム 核燃焼星が不安定帯を横切る際に変光星の一回観測による等級分散が縦系列と して現れる。 |
端線検出フィルター 表5には各銀河の TRGB 等級を示す。その検出には Mendez et al. 2003 に よる端線検出フィルターを用いた。もっと洗練された方法も存在するが、 我々のサンプル銀河は星の数が多く、これまで数多く使用されてきたこの 手法で十分である。表の値は 500 - 750 回のモンテカルロ計算を行って 決めた TRGB 等級と不定性である。前面の銀河系減光は Schlegel et al. (1998) を採用した。 ![]() 図25.KDG 63 の TRGB フィット。説明は図24と同じ。星数が少ないので モンテカルロの結果は図24より複雑になった。 |
![]() 図24.NGC 2403 の TRGB フィット結果。左上= F814W 光度関数。 左下=端点検出応答。右上=モンテカルロからの TRGB 等級分布。右下= 用いた CMD. 図中の縦点線=採用 TRGB 等級。 ![]() 図26.新しい TRGB 距離指数と 表1に載せたこれまでの値との差。左:横軸 を表5(距離順に並べた)の位置にした。右:横軸を絶対等級。 散布度は 0.05 mag である。 |