The Distribution of Color Excesses and Interstellar Reddening Material in the Solar Neighborhood


Lucke
1978 AA 64, 367 - 377




 アブストラクト

 色超過マップの作成 
 4,000 個の O-, B- 星の UBV 測光を最近の測光、分光カタログから探し、 色超過を求めた。色超過と距離から銀河面上に色超過の等高線マップを描いた。 マップ半径は 500 pc, 1000 pc, 2000 pc の三種である。さらに、銀河面に 垂直な面6つの面上に色超過分布を描いた。1 kpc 当たりの色超過率も 銀河面上と天空上に描いた。

 赤化物質の分布 
 赤化物質の分布はグールドベルトと強い相関を示し、 l = 210° - 255 ° では 500 pc まで低赤化領域が広がり、それは l = 240° 付近では 2 kpc まで伸びる。l = 10° から 80° では非常に赤化が強い。 ダスト雲と反射星雲の位置との比較は非常に良い相関を示した。また、過去の 結果とも一致が良い。ダストの分布は不規則で、他の銀河のダスト腕の局在領域 で見られる分布に似ている。

 1.イントロ 

色超過マップの意味 
  2000 pc までの色超過マップはある領域の星を観測する際に平均赤化量 を与えるので便利である。様々な方法から、大きなダスト複合体の3次元 像を得ることが可能である。本研究では 1966 年以降の O-, B- 型星データ に対象を限った。

以前の仕事 
 過去の研究、特に FitzGerald 1968、 Neckel 1966, Fernie 1962 はダスト分布の一般的な特徴を明らかにした。 この特徴は今回の研究でも得られた。しかし、本研究は等高線図という より使いやすい形で結果を示した。特に分布の3次元が特長である。



 2.データ 

 スペクトルカタログと測光カタログ 
 最新の3つのスペクトル分類カタログをまとめ、重なりあいは評価して 最良のものを選び、一つにまとめた。 54,000 星が載っている。UBV 測光は Naval Obs. と Mermilliod のカタログを合わせた。

 O-, B- 型星
 4932 個の O-, B- 型星が抽出された。表1には光度クラスごとの星数 を示した。光度クラスを欠く 359 星は主系列と看做した。輝線を持つ Of, Be 型星は固有赤化の影響を避けるため外した。変光の Bnn 星も外した。しかし、 Bn や Bp 星は残した。表2に言及のある星の数を示す。

 等級 
 見かけ等級に特に上限値は設けなかった。表3には各等級ごとの星の数を 示す。色超過は 2000 pc 以内の星に限定したので、それらの星の数も 示した。








表1.光度クラスごとの星数

表2.クラス・タイプ以外の言及の数。



表3.等級(見かけ、絶対)毎の星数分布



 3.色超過の計算 

 色超過の決め方 
(1)固有 (U-B) カラー(FitzGerald 1970)を仮定して、光度クラスと合わせ て表から固有 (B-V) カラーを決める。
(2)この固有 (B-V) カラーから決めた減光ベクトルで新しい固有 (U-B) カラーを求める。
(3)赤化ベクトルは FitzGerald 1968 を使用。266 星で赤化ベクトルは 固有カラーラインと交差せず、廃棄された。実際にはそれらの多くは Of, Be 星であった。
(4)この逐次近似を収束するまで繰り返す。

 エラー 
 この方法の精度は何よりも光度クラスの分類に依存する。エラーチェック のよい方法は、星団の主系列フィットから決めた色超過と、星団 OB 星の本論文 の方法で決めた個々星色超過平均値とを比較することである。図1にその結果 を示す。概してよい一致が見られる。 OB 星法は主系列法に比べ、減光が弱い 場合にはやや強めに、減光が強い場合には弱めに出るようである。










図1.星団の主系列フィットから決めた色超過と、星団 OB 星の本論文 の方法で決めた個々星色超過平均値との比較。(1点が1星団)。星団は 少なくとも5個の O-, B-星を含む。実線=比較用の等価線




 4.測光距離 

 (U-B)o の関数としての絶対等級 
  Schmidt-Kaler 1965 が与えたスペクトルタイプ、光度クラスと絶対等級 の関係に FitzGerald 1970 の与えた (U-B) カラーの表を合わせて、 光度クラスごとに (U-B)o の関数として絶対等級が与えられる。 減光は色超過から R = Av/E(B-V) を仮定して得られる。

 距離エラー 
 色超過と同様、エラーは主に光度クラスの決定にかかっている。この エラーが大きいと星団、アソシエーション所属星の空間分布はしばしば 太陽から引き伸ばされた形状をとる。その結果、銀河面上の色超過分布 には超過が一定値になる領域が現れる。図2には、図1と同様星団に 対して、主系列法と OB 星法を比較した。分散は大きいがエラーに系統的な 傾向は見られない。










図2.星団の主系列フィットから決めた距離指数と、星団 OB 星の本論文 の方法で決めた個々星距離指数平均値との比較。(1点が1星団)。星団は 少なくとも5個の O-, B-星を含む。実線=比較用の等価線


図3.エイトフ図法による、太陽から 2 kpc 以内での平均 E(B-V)/kpc。 銀系は左に増加する。四角は 30° × 20° である。等高線は 0.2 mag/kpc 間隔。
(上)銀河系中心が図の中心。(下)銀河系反中心が図の中心。



 5.色超過図の説明 

 太陽から 2 kpc 以内での平均 E(B-V)/kpc。
図3はエイトフ図法による、太陽から 2 kpc 以内での平均 E(B-V)/kpc の分布 を示す。 平均値の算出には Δl = 5°, Δb = 5° のグリッド点から 25° 以内の星の距離に依存する重み、WAHM = 10° の ガウシャン、で加算した。

 銀河面上の色超過 E(B-V) 分布 
 図4,5,6には銀河面上の色超過 E(B-V) 分布を、半径 500 pc, 1000 pc, 2000 pc で示した。図のグリッド点は Δl = 5°, Δr = R Max/25 で分布し、|z|< 50 pc (図4)、100 pc (図5)、200 pc (図6) の星を用いた。平均値の計算には各グリッド点から面上で RMax /10 以内の星が使われた。重みは WAHM = RMax/20 のガウシャンとした。 つまり、平均値はグリッド点に立てた円筒状の空間で行われる。

 銀河面に垂直な断面上の色超過 E(B-V) 分布 
 図7には、銀河面に垂直な断面上、太陽から 1000 pc 以内の色超過分布を示す。 断面は 30° 刻み、計 6 枚である。

 近距離で銀河面から離れたダスト雲の効果 
 一般には色超過は距離と共に増加する。しかし、銀河面から浮いているダスト雲が あると太陽に比較的近い星の色超過が大きくなる。一方遠くの星はこの雲の 下に見えるので色超過は小さくなる。また、当然ながら強い減光のダスト雲の背後は 星が欠ける。その結果の空白帯は 2000 pc 図6c で明白である。
( それほどはっきり見えないが。)
また、図6 a, b, c で選ばれた星が異なるため、図の詳細な点が異なっている。


図5.銀河面上の色超過分布。r ≤ 1000 pc. |z| ≤ 100 pc の星を使用。

図4.銀河面上の色超過 E(B-V) 分布。r ≤ 500 pc. 点= O-,B-星。 等高線は 0.1 等間隔。|z| < 50 pc の星のみ使用。格子点から 50 pc 以内の星の平均を格子点での値とした。


図6.銀河面上の色超過分布。r ≤ 2000 pc. |z| ≤ 200 pc の星を使用。



 6.色超過分布図について 

 全天分布図の性格 
 図3の全天図を見る際、二つのことが重要である。
(1)OB 星は銀河面に密着するため、高銀緯の OB 星は太陽に近い星が多い。 その結果、高銀緯星自身の赤化が穏やかでも
( 多分、銀河面上投影距離が小さいため?)
単位距離当たりの赤化は大きな値となり、しかも近傍に星が少ないため平均化で ならされる機会も少ない。
(2)石炭袋のような小さな特徴では背後に星が少なくマップに現れない。周囲の より少ない赤化の多数の星との平均で消されてしまう。

 グールドベルト 
 グールドベルトの星は図3で最も著しい特徴である。これは l = 180° - 360° で最もはっきり見える。そこには Scorpius と Orion があるか らだ。また、カリーナ腕の星を尻から透かし見るためもある。赤化の分布も グールドベルトとやや相関している。銀河中心方向に、さそり座から銀経が 増加する方向に b = 18° 付近の強い赤化領域がある。l = 15° の先で この高赤化域は銀河面へと下降し始める。広視野写真では星の欠けた領域として 極めて明確に指摘される。一方、半中心方向には相補的な高赤化域がオリオン アソシエーションの方向に、含まれないにせよ、ある。これら二つの方向の 傾斜角は大体グールドベルトと同じである。さらに、それらは天球上でほぼ 反対の方向にある。Turon, Mennessier 1975 は Rho Ophiuchus と Taurus 暗黒雲との間に関連があると指摘した。赤化物質の分布に傾きがあるもう一つの 証拠は図3の最も低レベルの等高線が、銀河中心方向では高銀緯まで上がって、 それに対応して l = 60° から反中心までは銀河面の下に沈んでいくこと である。Lynds 1962 の暗黒雲分布も同様の傾向を見せている。
 とも座(Puppis)低赤化領域 
 l = 210° - 255° では赤化がはっきりと低くなっている。これは、 銀河面上の赤化分布にも、Lynds 1962 の図2にも見える。面白いことに、 この区画はグールドベルトの星の分布が最も目立つ方向である。その 反対方向 l = 70 ° にもこの空隙領域が伸びているのが見える。 Wilson, FitzGerald 1972, Havlen 1972 は Puppis とも座の方向 l = 245° で OB 星の分布と赤化を調べ、5 - 6 kpc に至るまで赤化が低いことを見出した。 Havlen 1972 によると、 色超過は非常に入り乱れており、Puppis OB2 (4.2 kpc) の方向では色超過(E(B-V)=0.5)は Puppis OB1(2.5 kpc) での値 E(B-V) = 0.61 より低い。Wilson, FitzGerald 1972 はこの方向が腕間空間と考えた。本論文の 図 6 はこの方向の低赤化が少なくとも 2 kpc までつながっていることを示す。

  l = 40° のダスト雲 
 l = 10° - 90° のいて座から白鳥座に掛けては、非常に赤化が 大きい領域がある。これは図4、5、6通して見え、特に図6では l = 25° - 50° で星がないのが目立つ。その両側には赤化の大きな星がある。 Sherwood 1974 は l = 40° で非常に赤化の強いことを見出した。かれはそれを r = 300 pc にあるダスト雲とした。確かに、図4、5ではその方向 r = 300 pc で赤化が急に大きくなっている。ただ、方向は l = 20° - 25° で少し 異なる。おそらく、OB 星カタログには Sherwood のダスト雲の背後にある星が 載っていないための選択効果が原因であろう。

 カリーナからケンタウロス 
  500 pc, 1000 pc マップでは 260° 付近に赤化の増加が見える。 2000 pc マップではこの増加は 2 kpc の先まで続いている。Stegman, Sherwood 1972 は l = 268.5° 方向、 r = 1 kpc を中心とする 高赤化領域を見出した。ところが、Moore, FitzGerald 1973 が l = 277° 方向 r = 150 - 600 pc で見つけたダスト雲は図4、5に現れてこない。  Loden, Sundman 1972 は l = 285° - 315° カリーナからケンタウルス にかけて銀経の増加と共に減光が上がり、早期型星の数が少なくなることを 発見した。これは図6には、l が上がるにつれ、等高線が太陽に近づくという形で 表れている。




  l = 0° - 180° 断面 
 図7には6枚の半径 1 kpc の断面図を示した。 l = 0° - 180° 断面 にはグールドベルトの効果が見えている。銀河中心方向、銀河面の上には高赤化が 領域が存在する。一方反中心方向では銀河面下側が高赤化になっている。反中心 方向に関してはこれは幾分かは星の分布にも関係する。反中心方向、銀河面の上 領域には星が殆ど見られないからである。

  l = 30° - 210° 断面 
 この断面にも l = 210° 方向にグールドベルトの効果が表れている。500 pc を越えるとオリオンアソシエーションに沿って赤化が始まる。しかし、 l = 30° 方向にはグールドベルトの証拠は殆ど見えない。この方向の赤化は 銀河面に集中している。

  l = 60° - 240° 断面 
 グールドベルトの証拠は良く見えない。それでも l = 240° 方向では星の 多くが銀河面の下である。 l = 60° 方向のダストは多かれ少なかれ面に集中 している。この断面は l = 70° 方向の低赤化の延長になっている。


  l = 90° - 270° 断面 
 l = 90° - 270° 断面は白鳥座と帆座をむすび、グールドベルトの様子が 少し窺える。つまり、帆座方向の星の大部分は銀河面の下側にある。この断面には NGC 2516 の星が E(B-V) = 0.11 で b = -16° に連なっている。この星団星に 与えた r = 407 pc の値は Becker, Fenkart 1971 の E(B-V) = 0.1, r = 365 pc と非常によく一致する。銀河面下側、帆座の赤化分布は殆ど全てが NGC 2516 星 によるものである。白鳥座方向では銀河面の上で赤化が強い傾向が見られる。

  l = 120° - 300° 断面 
 カシオペアと南十字座(Crux) の断面も上と似て、カシオペア方向では銀河 面の上側で赤化が強く、南十字側では下側が強い。この傾向は少数の星からの データに基づいているが、全天赤化マップからもこれを確認できる。

  l = 150° - 330° 断面 
 ペルセウスと定規座(Norma) 断面の赤化は銀河面に集まっている。II Per アソシエーションは比較的一定の赤化を持つ細長い領域を形成する。反対側では さそり座のアソシエーションが銀河面上側に赤化を表し始めている。

図7.銀河面に垂直な断面上、太陽から 1000 pc 以内の色超過分布。




 7.ダスト雲複合体の分布 

 E(B-V) の動径方向勾配の分布 
 図8,9,10には E(B-V) の動径方向勾配の分布を示す。この図は 赤化物質の存在により色超過が急速に増加する領域を示している。星間 物質の不規則分布などにより勾配が負になった領域ではゼロとした。 等高線は 0.5, 1.0, 2.0, 4.0 mag/kpc である。基となるデータは E(B-V) 分布を作る時と同じ星であった。
( 勾配を実際にどう求めるのか これだけでは分からない。)
等高線の他に、図には R-アソシエーションの位置も示した。 R-アソシエー ションは反射星雲中の星の集まりであるが、ダスト雲との相関が非常に良い ことが分かった。また、Bok, Cordwell 1971 によるさらに大きなダスト複合体 との相関もある。

 図8=500 pc マップ 
図8で、l = 305° にあるダスト複合体はその方向で 距離 150 - 175 pc の南の石炭袋の位置と良く合う。l = 174° 距離 175 pc にある牡牛座暗黒雲は図8上の大きなダスト複合体と Herbst が記録した反射星雲の位置と良く合う。l = 10° - 55° には r = 50 pc から 375 pc に渡る大きな複合体がある。これは多分 Aquila rift に付随するものであろう。

 図9= 1000 pc マップ 
 図9 l = 260°, r = 600 pc にダスト雲があるが、これはおそらく Bok, Cordwell が帆座(Vela) で 500 - 750 pc と登録した暗黒雲であろう。 かなりインパクトのある様子としては、 (110°, 650 pc) から  (210°, 750 pc) まで延びるかなり連続したダスト複合体である。これが オリオン腕に関係がある構造なのかどうかはまだ未解決である。Humphreys 1976 が最近出した渦状腕のモデルによると、 1 - 2 kpc スケールでは渦巻き構造を 検出することは困難である。NGC 5194 や NGC 5457 を見ると、大きなスケールでは 渦構造が確かに見えるが、より小さなスケールになるとダストレーンは沢山の 支線や塊が腕を横切っている。

  図10= 2000 pc マップ 
 彼らはまた定規座(Norma) l = 324° に r > 500 pc の暗黒雲を記録 しているが、この方向で立派なダスト雲複合体は r = 1400 pc になる。 図10を FitzGerald 1968 と比べると、主要なところはよく一致している。






図9.図8と同じだが、 投影距離 1000 pc 以内で、銀河面から 100 pc 以内。平均サンプル半径= 200 pc。

図8.E(B-V) の動径方向勾配の分布。r < 500 pc。銀河面から 50 pc の星のみを 用いた。図4では平均に格子点から 25 pc 内の星を用いたが、スムーズに するためここでは 50 pc 以内になっている。等高線は E(B-V) で 0.5, 1.0, 2.0, 4.0 mag/kpc である。勾配が負になる個所はゼロとした。黒丸は Herbst 1975 による反射星雲アソシエーション。


図10.図8と同じだが、 投影距離 2000 pc 以内で、銀河面から 200 pc 以内。平均サンプル半径= 200 pc。



 8.結論 

 太陽近傍での赤化物質分布の一般的特徴は、 l = 210° - 255° で 500 pc まで赤化物質が存在しないことである。この欠落は l = 240° - 245° では 2 kpc かそれ以上遠くまで続いている。 赤化は l = 280° - 360° で増加する。 l = 10° - 65° では r = 300 pc の先に非常に強い減光天体が存在する。その背後の 星の光はほぼ完全に吸収されている。赤化の様子はグールドベルトと 相関する。また、他の近傍暗黒雲、 Aquila rift, Coalsack, Vela, Taurus, Ophuichi 暗黒雲、とも相関する。比較的不規則なダスト物質の分布は このような小スケールでは当然期待されることである。