The Distribution of Interstellar Reddening Material


FitzGerald,M.P.
1968 AJ 73, 983-994




アブストラクト

 色超過対距離図を基に、太陽から数 kpc 以内の星間赤化物質の分布を 調べた。用いた星は Blanco, FitzGerald の光電測光カタログから採った。 大部分の方向では赤化物質は銀河面に集中しており、半値幅は 40 - 100 pc である。それらは直径 100 - 1000 pc の星間雲複合体の中に横たわっている。 太陽は、局所腕に属するそのような複合体の一つの南の縁に位置する。赤化は また内側の渦状腕に付随している。Gould's Belt に付随する局所的な赤化 物質には銀河面から数百 pc 銀河中心方向では上に、反中心方向では下に、 離れた雲が含まれる。

1.イントロ 

 太陽から数 kpc 以内の赤化物質の分布には多くの研究がある。それらは 光電測光で決めた色超過と分光視差に基づいているが、互いに矛盾する 結果が得られている。Eggen は太陽が直径 150 pc の空っぽな領域の中に いると主張し、Fernie は直径 500 pc のダスト雲の南端にいると言っている。 Issersted, Schmidt-Kaler はダスト域がいくつもの雲に分裂しておりそれらが 渦状雲をなぞっていることを見出した。しかし、Neckel はダスト領域が 100 - 1000 pc 直径の集団を成し、必ずしも渦状構造に付随してはいないと言って いる。

 この論文の目的は、光電測光カタログにより、赤化物質の分布を再検討する ことであり、特に太陽の近傍に注意を払う。カタログには 17,000 星が載って いるが、使えたのは、7835 = 2808 O,B + 1900 A,F + 3127 G,K,M で、それら は色と距離が決められた。208 銀河星団も使った。個々の星までの距離は スペクトル・光度クラスから決められた絶対等級と固有カラーから求めた。 R = Av/E(B-V) = 3 とした。


2.太陽近傍での減光分布 

箱内の平均色超過 (color excess) 

 太陽近傍の減光分布を調べるため、距離 200 pc 以内、銀河面高度 40 pc 以内の 星を 20 × 20 × 80 pc の箱に区分けした。その箱の星の加重平均減光 Ey を箱毎に求めた。荷重は O, B, A, F, G, K, M 型星に対し、4, 4, 3, 3, 1, 1 とした。荷重の和が 24 に達しなかった箱は隣の箱と合体させた。

 箱の中の全ての星が同じ赤化を受けているなら平均色超過は(なぜ平均か?)固有 カラーの標準偏差( ± 0.025 mag )が与える平均エラーを有する。荷重和が 24 の場合、平均値の標準エラーは ± 0.01 mag である。個々の色超過から の平均の標準エラーは ± 0.015 mag である。
全然判らない

太陽近傍 100 pc の色超過マップ (color excess) 

 箱内の平均色超過の分布を図1に示した。Eggen 1963 が述べたかなり透明な領域が 太陽の周り、銀河反中心方向に 100 pc、その他の方向では 50 pc に渡って、 存在 することが確かめられた。太陽付近には直径約 40 pc の雲が散在し、各雲の 色超過は 0.03 - 0.05 等である。雲間の空間は殆ど透明である。

図1の数字は箱内の減光なのか、箱までの減光なのか? 太陽からは重なって見える箱同士で、後ろ側の数字の方が小さい組がある。



図1 色超過の分布。単位は 0.01 等。色超過 ≤ 0.01 は黒点で示した。
   実線で括った領域は減光が急に上がる方向。


 3.太陽近傍での減光分布 

太陽近傍 100 pc の色超過マップ (color excess) 

 天球を銀経に沿って11ゾーンに分割し、ぞれぞれを銀緯で26の帯に分けた。 帯の大きさは赤道で 15 °、極で 1 ° である。各ゾーン内で星毎に 色超過を距離に対してプロットし、平均色超過を距離に対して得た。。


 こうして得られた E(l, b, r) を円筒座標系 E(l,R,z) に変換する。R は平行 距離である。この E(l, R, z) を与えられた l, z に対し、減光の強い適当な R 範囲で平均して、 1 kpc あたりの等級で表わしたのがθ で、図2に載せた。表1はそれらの 領域の境界と半値幅を示す。

 図を見ると、減光が銀河面に強く集中していることが分かる。

E(l, R, z) は太陽(z=0)から見ての E を円筒座標に 直すという変なことをやっている。それから θ を出す手続きが全然 判らない。だから、第2図の意味も判らない。






図2 1 kpc あたりの色超過 θ 対 銀河面高度 Z



 4.銀河面での減光分布 

銀河面の星の選択 

 赤化層が薄いので、ダスト分布を調べるには銀河面上の星のみを使う 必要がある。このため、以下の条件で星を選択した。

(1)銀河面から 10° 以内の星は全て。

(2)銀河面から 20° 以内で、 銀河面から 110 pc 以内の星は、
     (a) 銀河面から 55 pc 以内の星
     (b) 銀河面から 55 - 110 pc にある星
     (b) 銀河面から 110 pc より遠くにある星

銀経を74領域に分割して距離-減光関係をプロット 

図3のマークの意味   図3ではそれらは 74 領域に分割されている。マークの意味は、
黒丸=銀河面から 55 pc 以内の星、大三角=銀河面から 55 pc 以内の星団
白丸= 55 - 110 pc の星、 小三角= 55 - 110 pc の星団、 点= >110 pc

 分割が不規則なのは、分散が小さくなるようにしたからである。領域境界は表2 にまとめてある。角度が少し変わる だけで減光が大きく変化するので、分割は難しい作業であった。さらに銀河面の上下で 減光が大きく変わる場合もあった。

 図3には、銀河面から 55 pc 以内の星の平均を表現するように、色超過ー距離 関係が引かれている。太陽付近でデータがない方向には隣のデータを使っている。

2.5 kpc 以内の減光マップとその特徴 

 減光の全体的な様子は図4に示されている。パターンは Neckel 1966 と似ている。 しかし、いくつか違うところもある。減光領域の大きさは J の 100 pc から A の 1 kpc にまで渡っている。Scheffler 1966, 1967 の研究、および 図の大きな分散から これらの減光領域は実際には星間雲複合体であることは確かである。

l = 300° から 170° に伸びる星間雲   強い減光領域、A, B, C, D, E, F, H は l = 300° から 170° に渡る、 一つの星間雲複合体らしい。この複合体には多くの窓がある。これらの窓を 太陽だけに向かって開けられた隙間と考える理由はない。この大きな吸収領域は FErnie 1962 にも似た領域があり、Neckel 1966 の l = 90° - 170° 吸収 領域とも似ている。

太陽近傍 l = 300° - 90° の透明領域   l = 300° - 90° では Neckel 1966 との一致はあまり良くない。Neckel では、太陽のすぐ近くから吸収領域が始まるが、我々のマップでは 200 pc 離れて からである。


図4 太陽から 2.5 kpc 以内の吸収領域。影が吸収率を表わす。


l = 170° - 300° もかなり透明   この他に、目立つ特徴として、南半球の l = 170° - 300° では太陽近傍 がかなり透明である。そこにも、J, H のような吸収域が存在する。これらは Neckel にも見られる。

l = 270° 雲と l = 90° - 140° 透明帯  l =270° 距離 1 kpc の強い吸収域Iと、 l = 90° - 140° で 1.2 kpc から先の殆ど吸収のない領域の存在は Neckel が見出したが、今回の マップにも現れている。l = 150° - 190° には、距離 2 - 3 kpc に 弱い吸収があるようだ。


 5.渦状腕との比較 

内側渦状腕と局所腕 

 太陽から見て銀河中心側、約 1 kpc に位置する雲複合体は、O - B2 星団で 示された内側渦状腕にフィットする。 同様に、雲 A, R は腕にまあ合っている。 これは判らん。 反中心側に横たわる 吸収領域は局所渦状腕と合致する。太陽のすぐ傍、銀河中心側にある吸収物質は 局所腕に付随する B3 - B6 型星団 とつながりがあるようだ。

ペルセウス腕 

 よく知られているように、星の腕(ペルセウス腕)は l = 140° で終わっている。この 研究からは、この腕には赤化が見られない。しかし、腕よりもっと離れて、 l = 140° から吸収帯が始まっているらしい。O - B2 星団の位置を図4に 重ねて見ると、l = 155° 方向、太陽から 2 kpc を中心とする直径 1.4 kpc のダストも星団もない円形の領域が見出される。これが本当なら、銀河でも Hayward 1964 が見出した現象と同じかも知れない。

HI との比較

 ダスト領域と HI 領域との比較は満足できるものではない。l = 300° の -I 腕(何だ?)は良く合うが、他の領域は合わない。

 6.全天での視線に沿った赤化 

 全天での赤化分布を調べるため、全天を253領域に分割した。140領域は 銀河面から 10° 以内である。これらの領域での距離、0.5, 1, 1.5, 2 kpc での Ey をマップにした。銀河面から 20° 以内では 2 kpc まで観測が 届かない箇所が多い。そこは N という記号でマークされている。

赤化マップの特徴

 図5−8を見ると、吸収物質の銀河面への集中は明らかである。また、l = 330 ° - 150° で最も吸収が強いことも明らかである。距離 1 kpc、 |l| > 10° では、 色超過 Ey > 0.6 等 の領域は存在しない。 0.9 等以上の色超過は全て 5° 以内である。しかし、銀河面上規則的に 分布しているわけではない。多くの箇所で、同じ銀経を持ち銀緯が異なる 隣り合った領域で全く異なる吸収が見られる。良い例は l = 335° の 雲 G と H である。

 7.グールド・ベルト 

銀河面から離れた赤化物質の分布

 割と強い (0.3 < Ey < 0.6) 吸収物質が銀河面から 10° 離れ、太陽から 300 - 400 pc 以内の距離に存在する。物質の分布傾向はグールドベルトの 6.4 等より 明るい B 型星が銀河中心方向で銀河面より高く、反中心方向で銀河面の下に来るのと 似ている。McCuskey 1965, Struve 1963 によると、このベルトは l = 355 $deg; で 最も高く、 l = 175 $deg; で最も低い。Blaauw 1956 は、12° < l < 232° では、112° < l < 232° 方向でベルト星が多いことを指摘 した。銀河面から離れた吸収物質の分布は B 型星の分布とよく対応している。

HI との関連 

HI もグールド・ベルトに対応した分布が認められ、HI が最も薄い極は銀極から 30 ° 離れている。この HI 極は HI の太陽近傍での分布とグールド・ベルト との関係を支持している(Kerr, Westerhout 1965)。

Lynd's Catalog

 図5−8にある吸収物質分布を Lynd's Catalog of Dark Nebulae 1962 と較べると、 良く似ている。特に 130° での銀河面上下の特徴が注目される。それと、 l = 205°, b = -19.5° も目立つ特徴である。これは色超過 0.4 等、厚み 100 pc, 長さ 300 pc, 巾 100 pc の雲である。

 8.結論 

 この研究で判った一般的なパターンは小さな雲が銀河面から 50 - 100 pc 以内の 高さに存在して、100 - 1000 pc の大きさに集まって星間雲複合体を作っていると いうことである。雲の分布は非一様である。

 複合体は太陽の銀河中心側の渦状腕と関連しているように見える。局所腕とも 付随している。しかし、ペルセウス腕には l = 90 - 140° の間、ダスト雲が 存在しない。そして、140° で星の腕は終わる。しかし、赤化がその辺りから 始まるように見える。

 太陽付近では最大の複合体が l = 340° - 150° の方向に存在する。 この領域で、方向に依る吸収の増減は激しい。太陽はこの複合体の南半球縁に ある直径 100 pc ほどの透明な泡の中に位置している。

 この吸収物質の分布に重なって、 B 型星のグールドベルトシステムが銀河面に 斜めに存在する。ダストと星は共に、態様から50 pc 以内に存在し、銀緯の最高 は 20° -30° である。

図3 銀河面74分割方向での、色超過 Ey 対 星の距離(< 5 kpc)。 
黒丸=銀河面から 55 pc 以内の星、大三角=銀河面から 55 pc 以内の星団
白丸= 55 - 110 pc の星、 小三角= 55 - 110 pc の星団、 点= >110 pc














図5 距離= 500 pc での星の赤化量 Ey



図6 距離= 1000 pc での星の赤化量 Ey



図7 距離= 1500 pc での星の赤化量 Ey



図8 距離= 2000 pc での星の赤化量 Ey





図5 距離= 500 pc での星の赤化量 Ey 



図7 距離= 1500 pc での星の赤化量 Ey 



図6 距離= 1000 pc での星の赤化量 Ey 



図8 距離= 2000 pc での星の赤化量 Ey