The Dominant Epoch of Star Formation in the Milky Way Formed the Thick Disk


Snaith, Haywood, Di Matteo, Lehnert, Combes, Katz, Gomez
2014 ApJL 781, L31 - L35




 アブストラクト 

 古い星の化学組成を使い、天の川の星形成史を初めて確実に測定した。厚い 円盤の形成は 9.0(z=1.5) - 12.5(z=4.5) Ga に起こり、その後 z = 1.1 に約 1 Gyr 続く星形成停止期を迎えた。厚い円盤の質量は薄い円盤と同程度に大 きい。  この結果は、この時期の銀河系内に大量のガスが存在したことを意味する。 これは過去20年間化学進化モデルで仮定されてきた、長期にわたる降着に 対立する。これらの結果は早期宇宙における円盤銀河の進化で最近現れて きた特徴とも良く合う。


 1.イントロダクション 

 早期宇宙の銀河 

 早期宇宙の銀河はむらむらで乱流が強くガスが支配的な円盤を持ち Elmegreen07, Genzel08. 活発に星を生み出している。その高い星形成率を支 えるのは中心領域に伸びるフィラメントに沿った冷たいガスの降着 Keres05,09, Dekel09 であると信じられている。星形成が最も活発なのは z = 1 - 5 の期間 Hopkins06 でその後は速やかに低下する Madau96. 
 天の川の星形成史 

 天の川銀河がこの一般的描像と合うのかどうか、現在不明である。この論文 の目的は、新しい方法で天の川の星形成史を調べることである。標準的な手法 では体積限界サンプルの星全ての年齢を調べる。  我々はサンプル星の年齢と組成のみでよく、数密度を求めるという手続き を必要としない。Gaia データをもってしても古い星を十分な数十分な精度で 求めることは非現実的である。


 2.観測 

 サンプル星 

 サンプル星は太陽近傍の 1111 G, G, K-型矮星 Adibekyan12 である。 年齢は各星の年齢確率密度関数をベイズ推定する Haywood et al. (2013) ことで得られる。更に、この研究では外側円盤星を省く。これらの星は [α/Fe] < -0.2 dex であるが、それらの星は別の化学進化 経路を辿たからである。上の条件と精度の高い観測星ということで残った のは 281 星であった。

 [α/Fe] - 年齢関係 

 図1にはサンプル星の [α/Fe] - 年齢関係を示す。勾配が途中で 急変し、組成変化史が二つに分かれることが明白に見て取れる。 Haywood et al. (2013) に従い、我々は厚い円盤と薄い円盤とをこの二つの時期に対応すると考える。 その変換時期は 8 - 9 Ga である。これから出発して、この特徴を再現する 星形成史を探すのである。

図1.太陽近傍星の [Si/Fe] - 年齢関係. 丸の大きさとカラーは どちらも [Fe/H] を表す。2本の [Si/Fe] 進化が見える。厚い円盤 (年齢>8Ga) と薄い円盤(年齢<8Ga) である。 Haywood et al. (2013) より。


 3.モデル 

 仮定 

 我々の方法は次の仮定に基づく。

1.全てのガスは初めに系内にあり、流入も流出もない。これは閉箱モデル Tinsley80 と似るが、内側円盤 R < 10 kpc では降着の大部分が初期に起こ ったという考えと同等である。

2.星間物質は当初メタルなしで、進化の全期間を通じ混ぜ合わされ続ける。

3.星形成率 SFR とガス量の間に関係を仮定しない。星形成史はモデルをデー タにフィットして得る。

 使用した道具 

 化学進化モデルに使用した道具は標準的なもので、

イールド  Iwamoto99, Nomoto06, Karakas06

IMF    Kroupa01

寿命   Raiteri96
 フィッティング 

  &alpha:/Fe] - 年齢関係のベストフィットを探す。ここで α 元素とし て Si を使用する。通常行われる [α/Fe]-[Fe/H] 関係へのフィットは 異なる星形成史が同じ [α/Fe]-[Fe/H] 関係を与えるからである。つまり、 年齢情報がないと解が縮退するのである。

 計算 I 

 t = 0 で系は始原ガスが 1 あるとする各時間ごとにコードは与えられた星 形成率を見て、星間物質から星に変換される量を計算し、その量を星間物質か ら差し引く。星間物質の組成に応じた O, Mg, Fe, Si, H もまた差し引かれ、 星種族のメタル量を計算するために使われる。

 計算 II 

 コードは以前の各時間段階で形成された星を眺め、星から星間物質への還流 を計算する。これには寿命を迎えた星のイールドを内挿して用いる。還流ガス は星間物質に加えられる。こうして与えられた星形成史に対する化学軌跡が得 られる。[Si/Fe] - 年齢関係への χ2 法でフィッティングが実 行される。

 計算 III 

 計算にはスタート星形成史と収束基準が必要である。こうしてベストフィッ トがいくつか得られその平均から平滑化された SFH が決まる。





図2.(a) 黒線=内側円盤データ(Adibekyan12, Haywood13)へのベストフィット。 (b) 星形成史。星形成率は過去に形成された星の総量が 5 1010 Mo になるよう規格化した。赤領域=1σ エラー。水平赤線=星年齢エラー。 黒線(van Dokkum13)=天の川型銀河のハロー組成マッチングと z から求めた 星形成率の時間変化。 (c) 黄線=天の川の累積星質量。黒線=天の川型銀河の累積星質量。 (d) [Si/Fe] - [Fe/H] 関係。線=天の川の累積星質量。

 4.結果 

 フィットの結果 

図2a にフィットで得られた [Si/H] - 年齢関係を示す。2b には対応する SFH を示す。その結果、

1.銀河系は 9 - 13 Ga に強い星形成活動を経験し、厚い円盤を形成した。 この時期の星形成率はその後に続く薄い円盤形成期に比べ 3 - 4 倍の強さで あった。

2.この強い星形成期は 4 Gyr 継続し、その後の薄い円盤形成期 8 Gyr とほ ぼ等量の星を生み出した。

3.星形成史には 8 - 9 Ga に星形成活動の著しい低迷期が存在する。この 星形成の低下が厚い円盤形成の終末である。



 注意点 

 サンプルは < 100 pc で太陽近傍に限られているが、大きな離心率軌道 を持つ星に基づく解析であるので、結果は近傍についてのみではなく、種族 全体に及ぶ。 (盛りすぎ? )
 注意点 



これは厚い円盤に対しては正しいが、円軌道の若い星に対しては妥当氏性は下 がる。その意味で、7 - 9 Ga の星形成低下が局所的な現象かどうかを確定ででも することは難しい。太陽円を避ける軌道の星は年齢-組成図上に現れないため、 星形成史の再現の際に考慮外となる。その点からは、外側円盤と内側円盤の 境界にあるという、太陽の位置は近傍星で円盤の全種族星を集められるという 利点がある。内側円盤は低メタルの薄い円盤星を欠き、外側円盤は高メタル, 低α元素薄い円盤星も低メタル高α厚い円盤星も含まない。

 [Si/Fe] - [Fe/H] 関係 

 図2d は、再現 SFH が [Si/Fe] - [Fe/H] 系列によくフィットすることを 示す。この関係は SFH 決定には用いられていないので、厚い円盤系列に良く フィットしたのは印象的である。それに対し薄い円盤へのフィットはあまりよ くない。これは薄い円盤期には [α/Fe] も [Fe/H] もほとんど変化しな いのに、どの年齢でも(またはどの [α/Fe] ででも)太陽が内側円盤と 外側円盤の切り替わり位置にあるため、メタル量の散布度が大きいからである。


 5.議論 

 5.1.厚い円盤の質量 

 質量配分の見直し 

 Bernkopf01, Fuhrmann11, 12 は銀河系進化上での厚い円盤の役割が大きい と述べた。最近では中心楕円体成分の質量比は大きくとも 10 % Shen10, Kunder12, Do Matteo13 と言われ、厚い円盤成分はほぼ間違いなく古い銀河系 種族の中では支配的な位置を占めている。

 スケール長 

 厚い円盤のスケール長の測定 Bovy12, Bensby11 は依然考えられていたより ずっと短く、 2.0 kpc を示す。一方、薄い円盤の方は 3.6 kpc である。 厚い円盤成分と薄い円盤成分の境界を [α/Fe = 0.25 に置き、 SEGUE サーベイ Bovy12 を使うと、薄い円盤の太陽付近での表面密度は 21 Mo pc-2 となる。厚い円盤の値は 8 Mo pc-2 で ある。スケール長の効果を入れると、 Rgc < 10 kpc で厚い円盤の比率は 47 % となる。この値は我々の SFH からの結果と合う。

 APOGEE 

 他の言い方では、銀河系のメタル量増加を担う種族は大質量で、内部銀河系 に集中している。これはまた、APOGEE Anders 図14 での R = [4, 7] kpc の星 の [Fe/H] 分布は -0.2 dex が中間値になるという結果からも支持される。 面白いことに彼らのデータが示す {&alpha:/Fe] - [Fe/H] 関係は、[Fe/H] = -0.2 dex 以下では大部分の星は高アルファで厚い円盤星を示唆している。

 5.2.G-型矮星問題 

 問題の消失 

 現在の銀河系化学進化モデルは長期の降着と見かけ上の中間メタル量星の不 足(G-型矮星問題 van den Bergh 1962)の仮定の上に立っている。しかし、 厚い円盤は総恒星質量のみならずメタル量増加にも貢献している。 しかし、 G-型矮星問題は以下の理由で消える。

1. 太陽近傍のメタル量分布はホントにローカルで、円盤全体の化学進化を 記述するには不適当である。

2.中間メタル量星は実は厚い円盤の中に多数含まれている。

 厚い円盤からのガス 

 厚い円盤は、内側円盤 R<10kpc に最近 8 Gyr の長期間降着ガスを供給 する必要性を軽減する。この期間、天の川は厚い円盤形成で使い残ったガスと 円盤星からの還流ガスとで星形成を支えることが出来たのである。これは ゆっくりした長期間の降着を仮定する現在の進化モデル Naab06, Schonrich09, Micali13, Fraternali13 と相容れない。

 外側降着 

 以上の結果は内側円盤のモデルであり、外側円盤には適用できない。 Haywood et al. (2013) は、厚い円盤からの放出流が純粋の始原ガスと混ざり外側円盤の進化を 内側と異なるものにしたと主張する。この描像では、第1次 (z>2) の降着 は内側円盤の建設に使われ、その後も外側円盤ではかなりの降着が続いた とする。


 5.3.系外銀河 

 星形成率の比較 

 系外銀河の観測 Leitner12, van Dokkum13, Muzzin13, Patel et al. (2013) はビッグバン 5 Gyr 内に天の川型銀河は星質量の半分を作ったことを示す。 図2 (b),(c) では天の川の星形成率と累積星質量を van Dokkun13 の結果 と較べた。年齢スケールに系統効果がある事を考えると、定性的な一致は 良い。
これらの観測結果と大きくて古い楕円成分を持たない局所宇宙の 円盤銀河の性質を一緒にすると、銀河初期に出来た星種族は厚い円盤を 形成したのではないだろうか?

 遠方銀河のガス速度散布度 

 その上、遠方銀河の分光観測はそれらの円盤のガス速度散布度が大きく、 天の川厚い円盤星の速度散布度と似ていることを示している。これらの 事から、厚い円盤の形成は天の川銀河を含む円盤銀河一般に共通する現象 と推測される。


 6.結論 

 厚い円盤の形成 

 太陽近傍の古い星に残る化学組成から天の川銀河の確実な星形成史を導い た。厚い円盤は宇宙における星形成活動のピーク時 9 - 12.5 Ga に形成され た。

 その意味は 

 これらの結論が意味する内容は、

1.全円盤のメタル分布は直接には得てはいないが、中間メタル量星の割合は 太陽近傍でのメタル量分布からの推定よりずっと大きい。最高メタル量  [Fe/H] = -0.1 dex の単純な閉箱モデルは中間値 [Fe/H] = -0.3 dex を与える。 これは厚い円盤と薄い円盤との境界である。そしてまた、二つの円盤が 同じくらいの質量を持つ事も説明する。これらの結果は閉箱が一次近似として 十分なのであろう。
2.二つの円盤の間のスケール長の差は太陽近傍のメタル量分布を円盤一般の 分布として使ってはいけないことを意味する。

3.厚い円盤を作るためには銀河系初期に大量のガスが存在しなければならな い。これは閉箱モデルへの側面支持になる。

 星からの還流 

 銀河系の極早期に強い降着時期があったのかも知れない。z = 1 からは 銀河系は厚い円盤の使い残しガスと星からの還流で進化してきたのではないか。 これらは現在の銀河系進化モデルと対立する。





図.

  

  

 

  

 

  

 
  

 

  

 

  

 





図.

  

  

 

  

 

  

 
  

 

  

 

  

 





図.

  

  

 

  

 

  

 
  

 

  

 

  

 





図.

  

  

 

  

 

  

 
  

 

  

 

  

 





図.


( )


et al. () 先頭へ