腕の縁と接点 カリーナ・ケンタウルス区域 l = [265, 305] における、 O-, B-型星、HIIR, HI, ダストの分布に関するデータをまとめた。公表データに UBV 光電測光と 新しい写真画像も加えた。結果は図9と図10にまとめた。カリーナ渦状構造は l = 282 で、また l = 295 で鋭く区切られている。その距離は 1.5 kpc - 6 kpc である。その外側縁は太陽から 8 kpc の所でほぼ接点方向となる。腕構造は 距離 9 - 10 kpc の所で曲がっている。この特徴は HI, 電波 HII データにも 現れている。 天体の分布データ 図9に現在の分布データを天体タイプ毎に図示した。O-, B-型星と HIIR は 密接に関連していて、r < 6 kpc では l = [285, 295] に集中している。 HI はその両側にはみ出て分布している。長周期セファイドは O-, B-型星、 HIIR と類似の集中を示す。 |
星間減光 l = [282, 295] 方向の星間減光は,r = 4 - 5 kpc で 0.5 mag/ kpc である。 しかし、カリーナ腕構造の外側ではもっと強い減光が観測されている。 l = [265, 280] では r = 2 kpc で Av = 3.5 mag の減光が観測されている。 r = 4 kpc ではさらに強い減光が示唆されている。このようにカリーナ腕構造の 外側で減光が強いのは一般的な現象のようである。弱い減光は腕構造の内側 でのみ見られる。 ピーク巾 図10には O-, B-型星と HIIR のピーク巾 = 0.8 kpc で、 距離 4 kpc で 12° であることを示している。一方 HI は 8° で 巾 0.6 kpc である。 |
可視渦状腕の発見 Baade, Mayall 1951 は銀河の腕に沿って放射星雲と O-、早期 B-型星が 並んでいることを発見した。 Morgan, Sharples, Osterbrock 1952 は同種の天体を天の川銀河で追跡し、腕の存在を発見した。その後、それらは ペルセウス腕、オリオン腕、サジタリウス腕と名付けられた。そのピッチ角は 約 25° であった。 電波渦状腕 Ewen, Purcell 1951 は HI 21 cm ラインを発見した。ライデン・シドニー 観測の結果は Morgan, Sharples, Osterbrock 1952 の論文の直後に公表された。 しかし、電波腕のピッチ腕は 5 - 6° であった。 Bok の提案 この矛盾を解決するため、 Bok 1959 は、カリーナの腕構造はサジタリウス腕とは別の腕で、太陽を通過して白鳥座 腕につながると提案した。その場合、オリオン腕は二次的な構造で枝腕と看做さ れる。カリーナ・シグナス腕のピッチ角は電波腕のピッチ角と同じで矛盾が 解消される。 |
O-, B-型星、 HIIR の集中 Becker 1956 と Bok (1956) はカリーナ領域、r = 1 - 4 kpc に O-, B-型星が集中していることを見出した。 Graham 1970 は O-, B-星がカリーナ方向 8 - 10 kpc まで伸びていることを発見 した。Hoffeit 1953, Rodgers et al 1960a の HII 電波カタログはこの領域に 放射星雲が多数存在することを示している。Wilson (1969) による水素再結合線 109α の観測は可視 HIIR のみでなく、可視では観測不能の遠方 HIIR の運動距離を与えた。その結果、HIIR がカリーナ腕に沿って r = 8 - 9 kpc まで接線方向に並び、r = 9 - 10 kpc で曲がることがわかった。 セファイドによるカリーナ腕の追尾 Fernie (1968) は l = [280, 290] のセファイドが r = 10 kpc まで分布していることを 見出した。彼の図2にはカリーナ腕が綺麗に現れている。 カリーナ腕の断面図 我々は OB-星、放射星雲、 HI, ダストの分布から様々な距離でカリーナ腕 の断面図を作る研究に着手した。その結果は次の9枚の図にまとめた。 |
2.A.結論天体分布の特徴OB-星と HIIR 分布は l = [283, 295] に鋭い腕構造を示す。これは Graham 1970 の l = 285 に OB-星の直線状鋭い縁が 3 - 9 kpc に亘って存在 するという発見と一致する。HIIR は OB-星と同じ分布を示す。一方 HI は HII の集中域の両脇にはみ出ている。とくに r < 4 kpc でそうである。 古典セファイドは OB-星と全く同じ分布を示す。これは Fernie 1968 の図2に 明らかである。吸収物質は腕の縁 l = 283 の外側にピークを持ち、l = [265, 275] で非常に強い。 腕の巾 図10にも示したように HI は HII よりも幅が広い分布を示す。 r = 4 kpc で HIIR,OB-星の巾は 800 pc である。 HI はその倍の巾 1.5 kpc を示す。 2.B.推薦(f) 長周期セファイド データの非一様性のため、はっきりした結論が出しにくい。 Kraft 1965 が "Galactic Structure" の中で強調したように、長周期セファイドは腕追尾天体と して非常に有望である。 |
![]() 図10.1969 時点でのカリーナ腕のスケッチ |