W 50 方向の 6 平方度を CO 115 GHz でマップした。 W 50 は広がった SNR で SS 433 (l, b) = (39.7, -2.3) を取り囲んでいる。W 50 は POSS 上で目立つ 長さ 4° 巾 1° の暗黒帯に重なる分子雲の端に位置することが分かった。 雲の運動距離は 2.2±0.7 kpc で、SNR 距離 2 - 3.3 kpc と合致する。 雲の質量は 1.2 × 105 Mo である。 | 分子フィラメントには星形成の兆候は見られない。また、フィラメントと W 50 (または SS 433) との相互作用もないが、両者(暗黒雲とCO雲?)の方向が一致 し、距離も近く、両者ともに銀河面から分子スケール高の2倍離れていることを 考慮すると、両者は物理的につながっていると判断できる。一つの可能性は 分子フィラメントと W 50 の母星は共に、l = 40 ° にある活動的な分子雲 複合体から放出されたと考えることである。 |
SNRと分子雲 タイプ II 超新星の位置と、残存しているなら母分子雲の位置には相関が 期待される。表1には、 4 kpc 以内にあるそのような 7 例を示す。 我々はここにその第8例を提案したい。それは SS 433 を囲む W 50 SNR と その方向に見つかった分子雲である。 W 50 SNR と SS 433 図1に示す 2.7 GHz 連続波マップには W 50 SNR がほぼ球形で、東西に 取っ手の付いたシェルとして現れている。SS 433 はその中心にある。 余りにきれいに中心位置にあるので、Ryle et al 1978 はこの星を超新星爆発 の残存星であると考えた。 ![]() 表1. 4 kpc 以内にある超新星残骸と分子雲の随伴例 |
![]() 図1. 超新星残骸 W 50 の 2.7 GHz マップ(Downes et al 1981)。斜線は 可視光フィラメント( van den Bergh 1980, Zealey, Dopita, Malin 1980, )。電波源 110+052 は系外銀河。 HIIR S 74 は無関係な背景天体であろう。 |
>![]() 図2.CO 27 - 36 km/s ピーク温度マップ。点は観測位置。 観測概要 CO 115 GHz 観測はコロンビア大学 1.2 m ミリ波望遠鏡で行われた。 6 平方度を 304 点でカバーした結果が図2である。ダストレーンではビーム巾の 間隔で行われた。図3には積分強度でのマップを載せた。 |
![]() 図3.上:POSS レッドプリント。下:速度積分した CO 強度。等高線間隔は 2 K km/s. 銀河面近くの濃い吸収帯には局所速度の CO 対応天体があるが、 この観測での速度範囲外なので図から省いた。 |
![]() 表2.W 50 距離の推定値。 距離 Burton, Shane 1970 の回転曲線を用いると、近運動距離は 2.2 kpc となる。 それはサジタリウス腕のこちら側に一致する。 W 50 と分子雲との作用 W 50 と分子雲との作用の証拠はない。しかし、W 50 の母星と SS 433 が この分子雲と関連する可能性は高い。W 50 までの距離が大きいことを考えると、 可視暗黒雲と CO 雲の一致は珍しい。この分子雲は可視暗黒雲として見える最も 遠い雲であろう。W 50 はタイプ II 超新星であろうが、大質量星の証拠は見当た らない。遠方のせいかもしれないので、より詳しい研究が必要である。低分解 1° の Dame, Thaddeus 1983 CO サーベイによると、W 50 雲は明らかに V = 32 km/s CO 複合体の成分である。 Weaver, Williams 1973 の H I 21 cm サーベイ もこの付近での放射の増加を示しており、より大きな HI ハローの中に CO 複合体 が埋もれているように見える。図4にその概略をスケッチした。 速度 図5に速度構造を示す。特に著しい速度勾配は見られない。短軸沿いに 4 km/s/deg の勾配があるから、葉巻状の雲が長軸の周りにゆっくり回っているように見える。 |
![]() 図4.l = 40° サジタリウス腕付近での CO, HI 27 - 36 km/s 速度積分 マップ。等高線は共に、8 × 1020 H/cm2 間隔。 青枠はこの研究で CO 観測した範囲。 ![]() 図5.W 50 の 速度マップ。等高線は CO 平均速度。点線は図3の最低等高線に相当。 |
1.闇黒雲と分子雲が対応 POSS 上で W 50, SS 433 方向に存在する暗黒帯は CO 糸状雲に対応している。 その糸は銀河面上の大きな分子雲複合体から銀河面下に垂れ下がっている。 2.距離 分子雲の運動近距離は 2.2 ±0.7 kpc である。これはこちら側サジ タリウス腕の距離である。この値は不定性の範囲内で W 50, SS 433 と合う。 |
3.相互作用 相互作用の直接証拠はないが、統計的に見て W 50 と分子雲が無関係とは 考えにくい。 4.質量 W 50 分子雲の質量は 1.2 × 105 Mo である。 |