Broad-Band Photometry of G and K Stars: The C, M, T1, T2 Photometric System


Canterna
1976 AJ 81, 228 - 244




 アブストラクト 

 G, K 型星の温度、メタル量、CN 指数を得るための特別な測光システム C, M, T1, T2 を開発した。このシステムは UBVRI システムより効率が良い。温度指数 T1 - T2 は R-I と線形関係にある。Δ(M-T1) 指数から導かれるメタル量は ファクター2の不定性がある。このシステムは CN 分子バンドによるブラン ケッティング効果を、紫外域における金属吸収線によるブランケッティング から分離することが出来る。シアノジェンバンド指数 ΔI(CV) は [Fe/H] ≥ -1.0 の巨星に対して、強 CN 星 (CN, +3, +2) と弱 CN 星 (CN, -3, -2) とを区別できる。  ΔI(CV) は DDO CN バンド強度指数 δCm と線形の 関係にあることが判った。 M67 中の巨星及びいくつかの SMR 巨星の観測 から、
(i) M67 は通常よりやや低メタルで、 SMR ではない。
(ii) SMR 星での大きな UV 欠乏はメタルがやや多く、 CN バンドが異常に 強い結果である。
M, T1, T2 を G型矮星の組成研究に応用できる可能性 がある。Δ(M-T1) と Δ(C-M) は G 型星の δ (U-B) と単調な関係にあり、温度指数は B-V, V-r よりブランケッティングの 影響が小さい。Δ(M-T1) と ΔI(CN) への赤化と光度 の影響も論じた。


 1.C, M. T1, T2 システム 

 C, M. T1, T2 システム  

 C, M, T1, T2 システムは Wallerstein が提唱し、 Canterna が発展させた。その目的は G, K 型星の測光温度、金属量、CN ブランケッティング指数を決めることである。

(a). G, K 型星で温度指数となる R-I と類似の温度指数が欲しい。

(b). 温度バンド T1, T2 は CN バンド [6800, 7500] を避ける。

(c). メタルバンド M は金属吸収線が重なる、しかし CN 3595, 3883, 4215 と 4300 G バンドを避けて [4500, 5500] に選んだ。

(d).CN バンド [3500, 4500] は CN のブランケッティング効果を見る。 この波長帯は強過ぎて飽和した金属線が多い。その成分は M バンドから 考慮する。

(e).青で S-20 と同程度の感度を有し、赤で S-1 より高感度の RCA C31034 Ga-As 光電子増倍管を使用する。


表1.C, M, T1, T2 システム


表2.G9 III 型星に必要な観測時間。
 有効波長等 

 感度 φ を ∫ φ(λ)dλ = 1 で規格化すると、 有効波長 λeff は次の式で定義される。

     λeff = ∫ λdλ

C, M, T1, T2 システムは観測時間の点で効率が 良い。表2には観測時間を載せた。




図1.C, M, T1, T2 システムの相対感度曲線。 感度はフィルター透過率、 RCA Ga-As 管感度、鏡の反射率から計算した。




表3.大気減光係数。



表4.主な減光係数




表5.C, M, T1, T2 システム標準星(カラー)の観測



 1.2.標準システムの定義 

 1次標準星 

 C, M, T1, T2 システムは主に、 G, K 型星を狙っ ている。しかし、より広い光度クラスとスペクトルタイプの星を含めた標準 系列は有用である。そのための1次標準星は Johnson 1964 の1次、2次 標準星から選んだ。1次標準星には様々なメタル量の G 型の巨星と矮星を 含めた。

 カラーの定義 

 カラーのゼロ点は B-V = U-B = R-I = 0 の星に対して、 C-M = M-T1 = T1-T2 として決めた。表5には標準星の HD 番号、 カラーが載せてある。1次標準星はアステリスクで示した。




図3.KPNO と MRO 観測の差とカラーの関係。

図2.3回以上の観測がある表1の星の1回観測の平均エラーとカラーの関係。  



図4.表5の2回以上観測がある全ての星の (U-B) 対 (C-M) 関係。 C-M ≥ 0.60 で大きな紫外超過のある星は炭素星か CH 星。


図6.(V-r) 対 (T1-T2) 関係。[Fe/H] ≤ -0.7 の巨星(四角印)は [Fe/H] > -0.7 の星よりも、系統的に (V-r) 超過 がある。

図5.表5の全ての星の (B-V) 対 (M-T1) 関係。


図7.(V-R) 対 (T1-T2) 関係。


 標準星のカラー間の関係 

 図4−8には色々なカラー間の関係を示した。

図8.(R-I) - (T1-T2) 関係。  



表6.G, K型星のデータ




表7.ヒアデス、プレセペ、M67 のカラー



 2.元素量解析 

 G, K 型星の色超過 

 元素量を分光で決めた G, K 巨星から色超過と [Fe/H] の関係を決めること が出来る。表6にはそれらの星を載せた。表には赤化補正したカラー、[Fe/H], 色超過を載せた。

  [Fe/H] = 0 系列 

 ヒアデスとプレセペを [Fe/H] = 0 と定める。M67 は一時 SMR とされたが、 最近は逆にやや低メタルと考えられている。表7に、ヒアデス、プレセペ、 M67 のカラーを示す。 図9にはこれらの星の(M-T1) 対 (T1-T2) 関係を示す。矢印=赤化線である。実線は [Fe/H] = [-0.2, 0.2] の標準系列 である。M67 を加えることの利点は系列を赤い方、K2 より晩期、に拡張できる ことである。 図15には M67 が低メタルであることを考慮した標準系列の最終版を示した。

 金属量指数 Δ(M-T1) 

 ある星の金属量指数 Δ(M-T1) は、

     Δ(M-T1) = (M-T1) - (M-T1) std

で定義される。ここに、(M-T1)std は対象星と同じ (T1-T2) での標準系列の値である。 Δ(M-T1) 正が低メタルを意味する。

 図10= [Fe/H] - Δ(M-T1) 関係の較正 

 図10では分光的に金属量が定まった星を用いて、[Fe/H] - Δ (M-T1) 関係の較正を行った。この関係はスペクトル型によって 変わる。と言うのは、金属線の強度が組成だけでなく、 Teff と g により 影響されるからである。


図10.G, K 型巨星の Δ(M-T1)較正。 左:K0 より早期型の巨星。白丸= HD175305. 右側バツ= 赤化補正前の HD2665.左側バツ=赤化補正後の HD2665. 右:K0 より晩期型の巨星。
 (C-M) 対 (T1-T2) 関係 

 図11には、(C-M) 対 (T1-T2) 関係を示す。実線は 標準系列である。C フィルターは3つの CN バンドと G バンドをカバーして いるので、CN, G バンド異常がない星のウェイトを高めた。M67 の CN バンド は δCm = 0.3 (Janes 1974) でやや高い程度なので 標準系列は M67 で規格化した。ヒアデスとプレセペの CN バンドは δCm = 0.06 (Demarque, McClure 1973) で穏やかである。


図9.G, K 型巨星の (M-T1) 対 (T1-T2) 関係。矢印=赤化線。実線は [Fe/H] = [-0.2, 0.2] の標準系列。ヒアデス、 プレセペ、 M 67 の巨星は図の中でそれぞれ示されている。


図11.G, K 型巨星の (M-T1) 対 (T1-T2) 関係。矢印=赤化線。実線は [Fe/H] = [-0.2, 0.2] の標準系列。ヒアデス、 プレセペ、 M 67 の巨星は図の中でそれぞれ示されている。



表7.ヒアデス、プレセペ星団の星。




図12.Δ(C-M) と Δ(M-T1) との較正。 白丸=強 CN 星。白三角=弱 CN 星。強 CN 星は弱 CN 星に較べ、 (C-M) カラーが不足している。実線= [Fe/H] ≤ -1.0 の星全ての平均。 左:K0 より早期の巨星。右:K0 より晩期の巨星。

 図12=Δ(C-M) と Δ (M-T1)  

図12では、Δ(C-M) を Δ(M-T1) に対してプロット した。左:(T1-T2) ≤ 0.50 でも 右:(T1-T2) > 0.50 のそれぞれで平均線を 実線で示した。強 CN 星は平均線の左に、弱 CN 星は平均線の右に位置する ことが判る。これは、強 CN 星では C バンドでブランケッティングが増強 されていることを示す。

図13.G, K 型巨星の ΔI(CN) 指数 対 δCm 関係。 C カラーのブランケッティング残差と CN バンド強度の間には 強い相関がある。

 図13= ΔI(CN) 指数 対 δCm

 図13には ΔI(CN) 指数 を δCm に対して プロットした。ΔI(CN) はある星の Δ(M-T1) に対して、観測された δ(C-M) と平均 δ(C-M) との差である。 ΔI(CN) 正は CN ブランケッティングが強いことを意味する。 δCm は DDO システムにおける 4216 A CN バンドヘッド 強度指数 (McClure 1970) である。図13から両者に明白な相関が 認められる。


 いくつかのトピック 

 SMR 星と正常種族 I 巨星 




表8.SMR 星リスト

 金属欠乏星 



  

 

  

 

 G, K 型矮星 




図14.G 型矮星の (M-T1, T1-T2)関係、 (C-M, T1-T2) 関係。実線=標準系列。 点線=モデルによる延長



表9.G 型矮星のデータ

 δ(U-B)  


図15.δ(U-B) と 左:Δ(M-T1), 右:Δ(C-M) との関係。δ(U-B) - [Fe/H] 関係は Wallerstein 1962 から。

図16.ΔI(CN) と log g の関係。白丸=低メタル巨星。 黒丸=[Fe/H]>-0.5 の巨星。