北銀河系低銀緯の炭素星データを提示する。特に透明な 9 領域を選び、 そこの炭素星の位置、同定を調べた。その内 142 個は新発見であった。480 星に対し、 538 JHK 測光を示す。 | 620 視線速度観測を 424 星に行った。既知炭素星の多くに改善された位置 を与えた。平均 JHK 測光と速度を 400 星に対して与えた。 |
炭素星の利点 マゼラン雲炭素星に関する Blanco, McCarthy, Blanco 1980 の研究によると、炭素星の絶対等級巾はかなり狭い。炭素星は明るく、銀河系の縁 で Av が数等あってさえ観測可能である。炭素星の同定は低銀緯でも対物プリズムで たやすく同定できる (Nassau, Velghe 1964) 。.Aaronson 1983 はその豊富なスペクトル 線を使い、低 S/N データでも視線速度を得られることを示した。 Claussen et al 1987 によると、炭素星は十分に高齢であり、それらが誕生した際の 速度記憶は失われている。それらの数は多い Westerlund 1971 ので研究に都合が良い。 |
観測領域 研究の目的は北銀河の回転速度を測ることである。サンプルは我々の南銀河サンプル (Aaronson et al 1989) を補完するように選んだ。対物プリズム乾板が低銀緯の 特に透明な9領域で採られた。我々の観測に 前原・征矢野 1987, 1988, Nassau, Blanco 1954, 1957, Fuenmayor 1981 を加えてサンプル数を増やした。 観測の理由 予備解析の結果は Schechter et al 1987, 1988 に載せた。しかし、そこでは 減光と炭素星の銀河系距離による光度変化の二つを無視していた。以前の 南銀河の研究から北銀河の炭素星は銀河系の非軸対称性を研究するには不可欠で あることが分かった。この論文ではデータの提示に重みを置き、解析は 今後の論文で示す。 |
2a.観測と位置測定観測領域の選定観測はキットピークの Warner and Swasey Obs. の Burrell Schmidt 望遠鏡で行った。予め マサチューセッツ・ストニーブルック CO マップ、 IRAS マップ、 Nassau-Blanco の以前の炭素星探査を調べて観測領域を決定 した。CO が弱く、IRAS も弱い 7 領域が選ばれ、1985 年に多数の炭素星が観測された。 さらに、Maffei 1 を含む2領域が 1986 年に観測された。 領域名 表1に対物プリズム観測の中心座標を示す。領域名の意味は、"cad" は カシオペア座の D 領域という風である。ただ "maa" だけは Maffei 1 の 意味なので注意が要る。 プリズムの分散度 3° と 4° の二つのプリズムを同時に使用した。その頂点の向きは 133° 離れている。二つが合わさった結果、分散 1900 A/mm の 3deg; プリズムに相当する スペクトルが得られた。IV-N 乾板に RG 695 フィルターを装着して 5°× 5° のスペクトル撮像が行われた。 検出と位置決定 乾板の調査は Nassau, Velghe 1964 の指針に従い、ブランコが行った。大部分 の領域では、 IV-N/RG695 と IIIa-J/nofilter による直接画像も撮られた。 研究の間に 前原と征矢野 1987, 1988 は新しい炭素星検出を素晴らしい位置の 値と共に発表した。McCarthy 1960 は白鳥座炭素星の位置を与え直した。それらを 参考に位置のエラーを評価すると "cyb" で 4″ から "cab" での 6″ に渡る。 観測結果の表 結果は表2から9に与えた。3桁の数字が各天体に与えられた。最初の桁は表12 で何回の測光観測が行われたかを示す。第2の数字は表14にある分光観測が何回 行われたかを示す。第3の数字は表の下にいくつのノートがあるかを示す。 2b.同定ミスと記帳エラー間違いの色々この研究は4年間に渡ったので、その間にプロジェクトの展望にかなりの進化が 起きた。最も大きな問題は同定ミスである。それらは、 (1)スペクトルの分類間違え。 (2)画像上で違った星が炭素星とされた。 (3)ファインディングチャートが間違っている。 (4)フィールド間違い(?) (5)観測のタイプミス (こういう愚痴は普通書くか? ) |
![]() 表1.観測領域の中心座標 2c.クロス同定以前の探査観測の結果との対照は略号で示した。それらは、 nb = Nassau,Blanco 1954, 1957mcc = McCarthy 1960 1n, 2n, 3n = Nikolashvili 1987a,b, 1988 ms, mscy = Maehara, Soyano 1987a, 1988 css = Catalog of Cool carbon Stars (1973) Stephenson 2d.新発見と再発見新発見の条件表2−20中、クロス同定のない星の内 142 星は新発見であった。それらが 炭素星と確認されるには、確実なスペクトルがあったか、隣り合う対物プリズムで 確認されたという条件を課した。クロス同定の条件は公表された位置と我々の 測定位置が 2″ 以内であることを注意する。新発見とした 内の幾つかは公表位置が不正確であったためかも知れない。 クロス同定なしの星について クロス同定なしの星の多くは観測時間の不足のため分光観測が行えなかったが 多分本当に炭素星である。いくつかの星に対しては観測を行ったが炭素星のカラー またはスペクトルが得られなかった。それらには表にノートを付した。 子ぎつね座とカシオペア座 最も新発見が多かったのは子ぎつね座である。そこは Nassau, Blanco 1954, 1957 の 探査しか行われていなかった。最も少なかったのはカシオペア D 領域で、 前原、征矢野 1987a や Nikolashvili 1987c が探査した後であったからだ。 |
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表5.白鳥座 C 領域の炭素星![]() |
表6.ケフェウス座領域の炭素星![]() |
表7.カシオペア座 A 領域の炭素星![]() |
表8.カシオペア座 B 領域の炭素星![]() |
表9.カシオペア座 D 領域の炭素星![]() |
表10.マフェイI 領域の炭素星![]() |
他観測データの利用 我々のサーベイ領域以外からも、Nassau,Blanco 1955, 1957, Fuenmayor 1981, Maehara,Soyano 1987a,b, 1988 の測光、分光観測の 結果を集めた。それらは主に銀河面から 2°.5 以内で選ばれており、銀河回転の 研究には特に有用である。それらを表11に示す。第2列の二桁の数字は測光 回数と視線速度測定回数である。 |
測光等級と視線速度を表に載せる際にはなるべく表2−10の名前を使う ようにした。表2−10に載っていない星は、 nb = Nassau,Blanco 1954, 1957 fue = Fuenmayor 1981 ms = 前原、征矢野 1987a |
観測 表2−10と表11にある星の内 900 星の JHK 測光を行った。測光は全て パロマ―5m鏡で 1986 - 1988 に行った。測光システムは Caltech JHK システム (Elias et al 1982) である。 色補正は難しい 色補正は炭素星に対しては難しい。その理由は (1)Elias et al 1982 標準星は大部分 A 型星で、炭素星ほど赤いものは含まれ ていない。 (2)近赤外大気減光は可視よりも速く変動する。 それで、測光のデータ処理に際し、カラータームは含めなかった。大気吸収が非常に 速く変動する夜には2時間ごとに採った標準星の結果を内挿した。 |
ゼロ点補正 ゼロ点補正を必要とせざるを得なかったのはガッカリである。と言うのは そもそもの研究動機が南銀河と北銀河とで銀河回転曲線に差があるか どうかを探すことであったからである。それには測光に基づいて距離を 決める作業が含まれていたからである。しかし、多少救われるのは、 1987 年 観測、これはそんなに多くない、のみが K での補正を必要とするのみである。 我々が計画している回転の解析には K 等級が非常に重要である。しかし、 北銀河と南銀河の間に系統誤差がある可能性が残る。 |
5a.観測と予備的結果MMT 観測とパロマ―観測表2−10と表11から 424 星の視線速度を測った。観測は MMT とパロマ― 5-m 鏡で行った。MMT データは 5636 A 中心に巾 50 A でスワンバンドを測定 した。エシェル分光の分解能は 10 A である。パロマ―データは 7600 - 8200 A でダブル分光器により 0.82 A 分解能を有する。 パロマ―データの問題1 明るい同じ星の露出時間を順に短くして撮ったスペクトルの視線速度はだんだん 青い方へシフトしていく。移動巾は 6 km/s である。視線速度を MMT システムに 統一する際にこのシフトの補正は問題になる。視線速度が見かけ等級に影響される 可能性がある。 パロマ―データの問題2 観測中の裏ジョブとしてデータ整約が行われているが、スペクトルがプロットされ ている最中に露光が終了すると、余計なラインがスペクトルに付け加わることが 分かった。 5b.共通速度系へのデータ整約エラーの1パロマ―スペクトルは 60 km/s FWHM と低分解能で, 標準星と 観測星のスペクトルの僅かなズレや、波長較正の小さなエラーから 分解能の幾分かのエラーが発生する。 次に、星の幾つかでは変光に伴い、視線速度が変動する。これは 5 km/s 程度 であろう。 |
MMT システム このような状況なので、なるべく多数の標準星の観測と共に複数回の 観測を行った。 MMT スペクトルは高分解能で、かつ CCD 荷電転送問題もないし、 もともと我々の南天データは MMT システムで整約されているのだから、全体 も MMT システムに統一するのが合理的である。 下駄をはかせる 各観測ランごとに 20 星くらいが観測された。そこで、 89 星の観測視線速度 を 7 × 89 マトリクスに書き込み、そこに6個の加算定数 を付け加えて、 MMT 1985 Dec 速度との残差二乗和が最小になるよう調整した。 その加算値を表13に示す。 視線速度は表14に載せた。補正なしと表13の補正値と二つ書いた。 ![]() 表13.視線速度加算値 |
表15には 400 星の位置、等級、視線速度を統合して載せた。JHK は表12の 単純平均、速度は表14にある 1985 Dec MMT システム値の単純平均である。 このデータの解析はこれからの論文で行う。 |