Molecular Clouds in the Carina Arm


Cohen, Grabelsky, May, Bronfman, Alvarez, Thaddeus
1985 ApJ 290, L15 - L20




 アブストラクト

 南天天の川の 2.6 mm CO サーベイから l = [282, 336] でカリーナ腕に沿っ て、 37 個の 105 Mo 以上の分子雲を同定した。雲は 25 kpc に亘り、ほぼ 700 pc 間隔で並び、そのピッチ角は約 10° であった。  分子雲総質量は 40 106 Mo、一個当たり 106 Mo, である。l = 280° に突然現れる接点と l-v 曲線の特徴的な構造はカリー ナ腕内分子雲の渦状配列の見間違えない証拠である。この腕は北天のサジタリ ウス腕につながり、全体として銀河系全周の 2/3 を 10° ピッチ角で巡る 渦を形成する。


 カリーナ腕 

 カリーナ腕は色々な追跡子で明るい腕として同定されている。可視域では、 この腕は太陽から 2 kpc から、 l = 282° で D = 4 kpc の接点   (Abraham 1970),   (Georgelin,Georgelin 1976) まで目立っている。電波熱連続波で見られる l = 282° に見られる段差 (Mathewson, Healy, Rome 1962) はやはり接点を示唆する。21 cm 観測 (Kerr 1983) は接点の向こう側に 20 kpc まで追跡できる。
(どうやって?)
 分子雲は HI 雲よりも渦状腕に緊密に捕われている。それらには、若い星や HIIRs が付随するので、電波腕を近傍の可視腕と関連付ることができる。 ニューヨークにあるコロンビア 1.2 m ミリ波望遠鏡データから我々 (Cohen,Cong,Dame,Thaddeus 1980, Dame, Elmegreen,Cohen,Thaddeus 1986) は北天の川の巨大分子雲を同定した。その結果、Rg = 12 kpc にあるペルセウス腕、Rg = 6 - 9 kpc のサジタリウス腕を同定した。カリーナ 腕付近で分子雲サーベイを試みた唯一の CO 観測 (Israel et al 1984) は腕 を見出せなかった。その原因はサンプリング間隔が 1° 以上と疎ら過ぎ、 観測が銀河面に限られ、ノイズが高かったためである。





図1.銀緯方向に積分して得た l-v 図。遠方側の腕に見える小さな塊りは全て 巨大分子雲である。点線で囲われて a, b, c, d と名付けられた領域は図2で 同じ名前の付いた領域に対応する。

 観測 

l-v 図 

 1983 年にニューヨーク望遠鏡のコピーをセロトロロに建設し、南天の川 での分子雲分布の 2.6 mm CO 観測を開始した。この観測は第4象限を大体完了 し、この論文はカリーナ腕を扱う。図1に示す l-v 図は見間違えのないカリー ナ腕の特徴を示す。接点は l = 280° である。その先は正視線速度側で l = 329° まで伸びる。
カリーナ腕接点付近 

 太陽周辺の低速度ガスを除いては、大きな空白領域が遠方腕と近傍腕の中間 に存在する。この空白域はカリーナ腕内側の腕間領域を表し、巨大分子雲が 存在しない。正視線速度遠方腕の右側からも放射が見えないが、これはカリー ナ腕の外側に雲がないことを意味する。接点からの放射は l = 280° の腕 外縁で突如始まる。そこから腕中央に掛けて v の幅が広がり、 l = 282° では 40 km/s に達する。これに対して、図2b に見えるように銀緯巾は広く、 速度巾は狭い低速度構造は太陽近傍からの放射である。特に、接点から図1の 底にかけて伸びる狭い帯状構造はおそらく単一の近傍天体であろう。





図2.速度区間別の CO 放射マップ。(a): v = [-50, -9] km/s. カリーナ腕の 太陽側。(b): v = [-9, 8] km/s. 接点付近。 (c), (d) : v = [8, 50] km/s. カリーナ腕の遠い側。図には可視 HIIRs が現れ、付随する分子雲までの距離を 決めるのに使用された。カリーナ腕の異常に低い減光は、腕方向に近傍雲の間 のすき間が存在することで説明される。図 (b) の右側縁にある近傍の巨大分子 雲は、幸運にも l = 275° で終わっている。

 カリーナ腕の分子雲 

 速度で分離したカリーナ腕 

 図2にはカリーナ腕の雲を三つの速度帯に分けて、位置表示した。 図2b の低速度雲は l = 282° 接点付近の雲と 270°-175° の近傍雲に分かれる。カリーナ腕の残りはより高銀経側に平たい輝線層として 広がる。それは太陽に近い側の腕は負の視線速度、遠い側は正の視線速度を持 つ。予想されるように、近い側は銀緯では接点方向より厚く、遠い側は接点か ら l = 329° まで離れるに連れ厚みが薄くなって行く。 l = 329° で は距離が 20 kpc 以上となる。腕の最も遠い部分では検出可能な最小の雲でも その質量は大きい。例えば、 l = 328°.5 では 3.3 105 Mo である。

 分子雲 

 カリーナ腕からの放射をまず 38 個の雲複合体に分けた。それらは直径 100 pc 質量 105 - 106 Mo である。半数のケースではこの 複合体は孤立していて間違えようがない。他のケースでは、特に混み合いの強 い接点付近では、カタログの修正があり得る。しかし、それらは腕自体の位置 や連続性にはあまり影響しない。カタログ中の分子雲は、多く既知で可視のカ リーナ腕を象っている。例えば、図2a l = 285 - 288 にある大きな雲は三つ の可視 HIIR G30, G31, それに ηCar を伴っている。これらの HIIRs は CO ピーク近くに位置し、電波再結合線や随伴星の速度が CO 速度と数 km/s 以内 で一致する。それらの距離は 2.7 kpc に近く、これを雲の距離と考えてよい。 雲の直径は 100 pc、質量 5 105 Mo で第1象限で見つかった雲の 典型的な値と一致する。

 雲の距離 

 雲までの距離は運動学的に、又はもし距離の分かる可視星が付随していれば その星の距離で、決める。太陽円より外側では、運動距離は回転速度にあまり 依らずに、二つの例外を除いて、一意に決まる。太陽円内側(視線速度負)遠近 不定性の問題が生じる。可視星距離が五個の雲の内3つの距離を決める:エー タ・カリーナ 2.7 kpc, NGC 3576 3.3 kpc、IC 2944 2.4 kpc である。接点 付近は運動距離の精度が落ちるが、約半数の雲が可視距離を持つ。

 銀河面上の分子雲分布 

 図3にはカタログ (おそらく、 Dame, Elmegreen,Cohen,Thaddeus 1986 とこの論文。南天の解析はだからカリーナ腕のみ) にある雲の位置をプロットした。l = 270 - 300 では全ての分子雲がカリーナ 腕に載る。破線丸の雲は位置の不定性が大きい。また、 (l, v) = (271°, 52km/s) の雲はほぼ確実にカリーナ腕の向こう側に位置する。l = [300, 348] では、v gt; 0 以外は解析が未了である。ただ、正速度部の巨大分子雲は全て カリーナ腕に載る。そこでは太陽円から 2 kpc 外側になる。太陽から 22 kpc 離れて 4 104 Mo の雲が検出されていることは、カタログが非常 に遠方まで完全であることを示す。分子雲は腕上に 700 pc の間隔で並んでい るように見える。

表1.カリーナ腕の巨大分子雲





図3.左:巨大分子雲の位置。コラム密度は CO 強度に 2 10 cm-2 K-1 km-1 s を掛けて求めた。 運動距離は Rg < Ro = 10 kpc において Burton 1971 の回転曲線、Rg > Ro では Vrot = 250 km/s 一定と仮定して求めた。破線の円は距離精度が非常 に悪く、実際にはカリーナ腕の雲であろう。右:同じ雲の位置を表示を変えて、 セミログの直交座標表示で示す。直線は 10° 対数螺旋を示す。

 腕のピッチ角 

 どの腕とどの腕を繋げるか? 

 第4象限の腕を第1象限の腕に繋げることは昔からの問題であった。 Georgelin, Georgelin 1976 はサジタリウス腕とカリーナ腕が大きなピッチ角で結ばれるとした。 これに反対して、Kerr,Kerr 1970 は 11 cm 連続波と H109α が l = [292, 304] で大きくへこんでいるという観測を基に、小さなピッチ角と 第1象限のサジタリウス腕が第4象限の内側腕に繋がり、ペルセウス腕が太陽 を通って太陽円外側のカリーナ腕に繋がると提案した。

 高ピッチ角を支持 

 しかし、分子雲の配置は明らかに高ピッチ角を支持する。CO 雲には大きな 窪みは存在しない。図2a は太陽に近い側のカリーナ腕が解析の端に当たる l = 300° まで障害なく繋がっていることを示す。
腕上の雲質量密度 

 カリーナ腕では 105 Mo 以上の雲の総質量 40 106 Mo が 23 kpc の長さに分布しており、密度として 1.7 106 Mo/kpc である。これに対しサジタリウス腕では 26 106 Mo/16 kpc = 1.8 106 Mo/kpc で等しい。これがペルセウス腕では  7 106 Mo/8 kpc = 0.9 106 Mo/kpc と低下する。

 ピッチ角再び 

 図3右からサジタリウス腕とカリーナ腕の雲が単一のピッチ角 10° の 直線に集まることが判る。これは回転曲線にはあまり依らない。これからの 単純な解釈はサジタリウス腕とカリーナ腕がピッチ角 10° の一つの 渦状腕を形成しているということである。


 まとめ 

 カリーナ腕の接点は巨大分子雲で非常に良く決まる。それらの雲はカリーナ 腕を 20 kpc 以上にわたりなぞる。この長さは北銀河の長い腕、サジタリウス、 ペルセウス腕より長い。  カリーナ腕とサジタリウス腕は繋がって、単一の腕を形成し、それは銀河系 の周囲 2/3 以上も巡っている。