LMC バー中心からの様々な距離の 28 領域からの約 1000 個の赤色巨星に対し、 Ca 三重線の分光からメタル量を決定した。これらから、中心距離・メタル量、 年齢・メタル量関係を調べた。その応用として HST CMDs の解析がある。CMD からの星形成史を確実に求める力は主系列ターンオフと準巨星枝から来た。 生じる年齢・メタル量縮退は赤色巨星枝カラーで破れる。しかし、モデル RGB カラーの不定性は残る。 | 観測されるメタル量分布をモデルに組み込んで、星形成史の精度が大きく 向上した。我々は LMC バーの観測メタル量分布をバー CMD の最尤法解析に 組み入れて、バーの新しい星形成史と年齢メタル量関係を提示する。全体と してバーは円盤より若く、最も信頼できる年齢巾は 5 - 6 Gyr である。この時期 には LMC の平均ガス組成は [Fe/H] ≥ -0.6 であった。LMC 円盤には メタル量勾配は R = 8 - 10 kpc まで見えない。バーは円盤より 0.1 - 0.2 dex 高メタルである。これはバーが円盤より若いためであろう。円盤とバーで、 赤色巨星の 95 % は [Fe/H] > -1.2 である。 |
最近分光データが急増 LMC においてはフィールドと星団は異なる形成史を経てきたという見解 ( Holtzman et al 1999, Smecker-Hane et al 2002) が強まってきている。 特に分光データの集積が著しい。 Olszewski et al 1991 の LMC 星団の元素組成 の研究後は Olszewski 1993 だけで、Cole, Smecker-Hane, Gallagher 2000 の 39 円盤星の研究まで何もなかった。しかし、その後は Cole et al (2005), Carrera et al 2008 を含め、データ量は何百倍に増えた。これには特に Ca 三重線の高分解能分光観測の成果が大きい。 観測プロジェクト 1.星団年齢ギャップにあるフィールド星の化学組成 2.LMC の場所による元素組成の変化 3.バーは円盤の構成要素なのか、独立の天体なのか? を知るために、 LMC 13 Gyr の歴史を通した星の研究。赤色巨星は I = 14.8 で最適な明るさ である。 |
Ca II 三重線 0.86 μm の Ca II 三重線が手早く結果が得られる。その較正には Rutledge et al 1997 が球状星団で行った広範な観測が用いられた。較正は Cole et al 2004 によって散開星団へと拡大された。Ca II 三重線の LMC 星団 への応用は Olszewski et al 1991 が最初で、 Da Costa, hatzidimitrion 1998 が次ぐ。 星形成史 CMDから星形成史を導くための最も強力な方法は、主系列ターンオフ星の 分布が次第に暗くなっていく様子である。光度関数を用いた Butcher 1977、 CMD を用いた Smecker-Hane et al 2002 がある。 LMC のバーと円盤を比較 した Holtzman et al 1999 と Smecker-Hane et al 2002 の研究はバーにおいて、 若い星種族のターンオフ星に超過があることを示した。しかし、その年齢、 メタル量、の分布はモデル依存性が大きい。 |
年齢・メタル量縮退 年齢・メタル量縮退は星形成史における不確定さの最大の原因である。図1に その様子を示す。そこでは年齢が3倍になった結果赤くなるはずの赤色巨星枝 が半減したメタル量で相殺されて、同じ位置に留まることが示されている。た だし、測光が十分深く主系列ターンオフまで達するなら、そこで縮退は解ける。 しかし、連続した星種族の混合を解きほどくことは容易でない。 メタル量、年齢と赤色巨星の数 しかし、図1の右側に示すようにメタル量分布が分かると縮退が解ける。 注意すべきは、生まれた星の一定量に対する赤色巨星の数は年齢が増加し、メ タル量が減ると少なくなる。 MDF と CMD の合体 MDF と CMD の合体から SFH を解くことが出来る。LMCはその実験場となる。 |
![]() 図1.左:パドヴァ等時線。年齢が3倍違い、メタル量で 1.5 倍違うと同じ 赤色巨星枝カラーを持つ。この例では主系列ターンオフまで観測が深ければ 差は見えてくる。右:左図のバックス内からランダムに選んだ赤色巨星が 示すであろうメタル量分布。等時線メタル量は [Fe/H] に変換され、観測 エラーで広げられた。メタル量の知識が与えられていれば、 RGB カラー に必要以上に頼らなくて済む。 |
![]() 図2.LMC バー中心フィールドの星形成史。バー形成期は確実に 6 Gyr と定め られる。その時にメタル量は既に [Fe/H] = -0.6 に達していた。ここに示す 星形成史は Cole et al (2005) のメタル量分布と共に、 Pagel, Tautvaisiene (1998) の爆発的化学進化を忠実に追っている。ただし、モデルと違い爆発時期は 6 Gyr 昔である。 バーのメタル量分布 Cole 2004, Cole et al (2005) は LMC バーの 373 赤色巨星 [Fe/H] を測った。 その場所は Smecker-Hane et al 2002, Skillman, Gallart 2002 と同じである。 彼らは平均 [Fe/H] = -0.45 で、ガウシャンに 10 % の [Fe/H] < -2 部の尾 を付けると良く合うことを見出した。 フィールド星に年齢ギャップなし また、彼らは同じメタル量に対して広い 範囲のカラーが対応することを発見し、 LMC のほぼ全歴史を通じて年齢・メタル 量関係が極端に平坦であると結論した。そして、Cole et al 2000 が述べた フィールド星には星団と同じメタル量/年齢ギャップがないという結論を確認した。 図2には HST CMD とバーのメタル量分布の双方を再現する新しい星形成史を示す。 我々はまた年齢・メタル量関係を導いた。それは Cole et al (2005) の観測結果とも Pagel, Tautvaisiene (1998) の爆発的星形成モデルとも良く合う。ただし爆発時期を 3 Gyr 昔の代わりに 6 Gyr としてであるが。1 Gyr 昔の星形成率ピークはバーで発見される多数の 炭素星に反映されている。 (形成史の導出法が書いていない。特に 2-3 Gyr の星形成低下期間が CMD の薄い帯として反映されているのか? 同様に炭素星の光度関数には?) バーは円盤より高メタル星が多い 数百の赤色巨星は星団内または周辺 Grocholski et al (2006) から得られた。このサンプルには 511 星が含まれ、バーから15°遠方まで 27 箇所に亘る。円盤とバーのメタル量分布関数は大体似ている。どちらも 高メタル側で鋭く切れ込み、どちらも 5 % の星が [Fe/H] < -1.2 である。 しかし、円盤は [Fe/H] = [-1.2, -0.7] の星がバーよりはるかに多い。 この区間に円盤赤色巨星の 20 % が属するが、 バーデは僅か 5 % である。 これは、バーの方により多くの若い星が属するためと考えられる。 ( ここから先は意味が分からない文が続く) 図3は円盤サンプルのメタル量と脱投影した半径の関係をプロットした。 R = 8 - 10 kpc まで半径勾配は見られない。それより遠くの星は視線速度から 前景矮星か星団星と分かった。 |
![]() 図3.LMC 円盤とバーの 511 赤色巨星のメタル量。フィールド位置は Grocholski et al (2006) に与えられている。中心距離はフィールドが円盤面内にあると仮定して、 van der Marel et al (2001) の円盤モデルから求めた。7.5 kpc より遠方の星に関しては、それが最近の 星団メンバーであったとした場合の星団距離を白星で示した。 円盤とバーのメタル量の差? 我々の円盤サンプル中ただ一つがバーと似たメタル分布を示す。最も内側の 領域は最も高メタルである。これは、円盤とバーのメタル量の差が本当である ことを示す兆候かも知れない。 今後の課題 新たな疑問が浮かび出てくる。バーは運動学的にこんなにも重要でないのに、 なぜ形成後数 Gyr の間独立性を保っていられるのか? HST CMD とメタル量とか ら決めたバー形成時期は、最近の固有運動データから決まったより長い周期の マゼラン雲軌道と折り合えるだろうか?星形成史、化学進化、力学史が夫々 LMC に関して拘束が付いてきたが、それらを1つにまとめた整合なシナリオはこれから である。 ( 突然?バーと円盤のメタル量分布が同じ、違う、バーの安定性、とか 訳の分からない話が出てくる。 ) |