可変オパシティ 解離平衡を解き、H2, H2O, OH, C2, CN, CO に よるオパシティを計算する方式を作った。次に、ドレッジアップを伴う合成 TP-AGB モデルを新しいオパシティ計算方式とスケール太陽方式とで計算して較べた。C/O > 1 で大きな差が生じることが明らかになった。新方式によるモデルは太陽近傍炭素星の 有効温度、質量放出率の範囲を上手くカバーすることが判った。 |
新モデルによる結果 また、このモデルで以下の結果が得られた (1)超星風の開始が早くなるため、炭素星寿命が極めて短くなる。 (2)炭素放出量の減少 (3)炭素星近赤外カラーの再現 |
炭素星とO-リッチ星 炭素星がC/O比が大きいために生じることを指摘したのは Russell 1934 である。 CO 形成後余った O か C が、異なる分子種を形成し、また非晶質シリケイトか非 晶質カーボン(Ivezic,Elitzur 1995, Habing 1996) ダストを作る。その差はM-型 星とC-型星との赤外カラーにも大きな違いを産み出す。例えば、炭素星の近赤外 カラーは系統的に O-リッチ星より赤い。IRAS 2色図で炭素星の [25-60] カラー は O-リッチ星より赤い。 分子オパシティ 辻は 1966 年に AGB 星の大気構造を調べる上で分子オパシティが重要であること を示した。一方、分子オパシティを入れた大気構造の研究も進んだ。しかし、恒星 進化計算に用いられる低温度星オパシティは不十分なものであった。実際通常 用いられる Alexander, Ferguson 1994 のオパシティテーブルでは組成はスケール 太陽組成に限定されており、常に C/O = 0.48 である。このオパシティは炭素星 にもそのまま使用された。 |
これまでの研究 我々が知る限り、文献で様々な C/O に対するオパシティが表として与えられている のは、Alexander et al 1983, Lucy et al 1986 くらいである。分子組成の変化を 恒星進化計算と組み合わせた例はほとんどない。Scalo, Ulrich 1975 は 2 本の AGB 進化系列を計算した。炭素組成が増加するに連れてのモデル有効温度は分子組成と オパシティが変化して行くにつれ大気積分を行って、決められた。その結果、C/O が 1 以下から 1 以上に変化すると CN 組成が突然増加し、オパシティが増大するため、 星の有効温度が大きく低下することが示された。Lucy et al 1986 は炭素星のハヤシ リミットを分子オパシティの変化との関係で研究した。その目的はダスト駆動星風 の発達を解析することであった。Bessell et al 1989, 1991 は Alexander 1983 の 分子オパシティを C/O の関数として内挿式にした。 論文の構成 この論文では以前より現実的な分子オパシティを用いて AGB 進化への効果を 調べた。第2章ではオパシティの計算法を述べる。これは Scalo,Ulrich 1975 と 類似している。第3章ではそれを使って合成 TP-AGB 進化を計算する。Teff と C/O の関係は進化経路に沿って調べられる。その結果はスケール太陽オパシティを 用いた結果と比較した。第5章ではその他の進化効果について議論する。 |
計算の概略 質量吸収係数 κ(cm2grsup>-1) は Keeley 1970 による、ガス密度、温度、元素組成でパラメター化された解析的関係を使う。 このフィッティング式は原子と分子の寄与を考慮している。考えられている 分子は H2, H2O, OH, CO である。元々の H2O 項は最近の研究結果に合うよう改められた。これに Scalo, Ulrich 1975 の CN 多項式フィットを加えた。最後に C2 の寄与を CN と大体同じくらいと して加えた。(Querci et al 1971) ロスランド平均 総ロスランド平均 κ を求める式は以下の通りである。 κ = κC + ΣXiκ i (1) ここに、 κC は連続吸収、 κi は i-種分子 の単位質量当たりロスランド平均オパシティである。ロスランド平均は調和平均 なので、この式は本当は正確でない。しかし、実際の場合はどれか一つが独占的 なので、誤差は大きくならない。 2.1.分子密度化学平衡の定数与えられた密度、温度、元素組成の下での原子、分子の割合は化学平衡の 式を連立させて求められる。方法は辻 1966 を見よ。 電子は H, He, C, N, O と他の主なメタルの電離を考慮して求められる。 原子の分配関数は Irwin 1981, Sauval, Tatum 1984 から取った。解離 平衡定数は Rossi, Maciel 1983 の解析的表現の助けを借りて評価した。 解離平衡 CO の結合エネルギーは強いため、CO を作った残りの原子から他の分子が 作られる。これは Russell 1934 が指摘した特徴である。図1を見ると、 C/O が 1 を越えた途端に CN と C2 が増加し、 H2O が減少する。同じ効果は図2にもはっきり表れている。また、 2000 K 以下 では H 原子が減り、H2 分子が支配的になることも注意したい。 | ![]() 図1.Pgas = 103dyne cm-2, T = 2500 K での 分圧と C/O 比との関係。縦線は太陽組成 C/O = 0.48 を表わす。 |
2.2.他のオパシティデータとの比較C/O = 0.48 (スケール太陽組成) での比較図3では、良く引用されている ALexander,Ferguson 1994 の結果と比較した。 そこでは、C/O = 0.48 が固定されたすけーる太陽組成が採用されている。図では 二つの例、[Y=0.273, Z=0.019] と [Y=0.240, Z=0.004]、が示されている。どちらも 付随する密度は log R = log ρ + 3(6-log T) = -3 で与えられている。ここで R はオパシティテーブルの内挿が滑らかに進むよう良く使われる量である。 本論文と ALexander,Ferguson 1994 との一致は良い。特に、 T ≤ 2500 K に 現れる水蒸気によるオパシティのこぶがうまく表現されている。 ALexander,Ferguson 1994 ではこの論文には含まれていない TiO による寄与も示されている。 とにかく、 Keeley 1970 の式では水蒸気のオパシティが小さく見積もられ過ぎている。 我々はこの項を修正した。T ≤ 1500 K の第2のこぶはダストによるもので、我々の 計算には入っていない。 ![]() 図3.Z = 0.019, 0.004 で C/O = 0.48 のロスランド平均オパシティ温度変化。 各温度に対応する密度は、log R = log ρ + 3(6 - log T) = -3 で決定。 実線=この論文。破線= Alexanderm Ferguson 1994 |
C/O = 1, 2 での比較 図4は C/O = 1 Alexander et al 1983、C/O = 2 Lucy et al 1986 との比較である。 O-組成は太陽とした。どちらも、T < 4500 K でスケール太陽(C/O=0.48) から ずれていく。この原因は C/O = 1 では水蒸気がなくなることであり、C/O = 2 では CN が出現するためである。我々のカーブもいくらかの差はあるがこの基本的な 特徴は再現している。 我々の方法の有用性 このように、我々の方法は C/O が変化する場合に一貫して使用可能なオパシティ を与えることが判った。 TiO は効かないのか? κC はどう与える? ![]() 図4.幾つかの C/O 比で、オパシティの温度変化。log ρ = -9 仮定。 上:C/O = 1.0 実線=この論文。点線=Alexander et al 1983. 下:C/O = 2.0 実線=この論文。点線=Lucy et al 1986. 比較のため C/O=0.48 Alexander,Ferguson 1994 破線。 |
2.3.C/O が変化した時の分子オパシティ図5は、従来のスケール太陽オパシティと今回の変動オパシティがどんなに 違うかを示すものである。図を見ると分かるように、大きな変動が C/O = 1 を越える際に生じる。T ≤ 3000 K では水蒸気コブは C/O の増加に伴って 低下し、C/O = 1 で消失する。これは殆ど全ての C, O 原子が CO 形成に消費 されるからである。C/O = 1 を超すや否や CN + C2 オパシティが 急激に大きくなり、 | T = 2000 - 3000 K では支配的となる。このオパシティ のコブはO-リッチ組成では極小となる温度領域に極大域を形作る。 したがって、図5の結果を較べると、炭素星にスケール太陽のオパシティを 適用することが大きな誤りであることが判る。しかしながら、それが現在行われ ている AGB 星進化の計算なのである。 |
2.4.このオパシティの利点と欠点個々の計算法ここで用いられた手法の良い点と悪い点を簡単にまとめておこう。明らかな 制限としては、ロスランド平均オパシティ(RMO)の計算に際して、個々の分子の RMO を計算した後、全体の RMO としてただの和を取ったことがある。もう一つの 問題は考慮した分子の数が少ないことである。この論文で抜けて いて重要な分子は TiO, VO, HCN, C2H2 である。 しかし、式(1)は実際の AGB では大体許容できる近似である。いっぽう、 主要な利点は進化の途中で、どんな組成にでもオパシティを計算できることである。 |
表の内挿法 明らかにより正確な別法は、詳細なオパシティ計算に基づく他次元の表を用いた 内挿法であろう。しかし、 AGB 大気の条件の広範な範囲をカバーするには、現在では 得られないほど大きな表が必要となる。パラメターとしては、密度、温度、メタル量、 水素、炭素、窒素、酸素量の七つがある。 というわけで このようなわけで、本論文の方法は近似的な性格があるにも拘らず、計算量と 有用性の間の妥協が図られていると言える。 |
3.合成 TP-AGB モデル合成 TP-AGB 法の概略第2章で述べた新しいオパシティ計算法は、Marigo et al 1996, 1998, Marigo 2001 で述べた合成 TP-AGB モデルに従う外層構造計算に組み込まれた。このモデル は以下の2たつの成分からなる。 解析的関係 完全なモデル計算から導かれた解析的関係。つまり、Mcore - L 関係、 Mcore - 熱パルス間隔関係、質量放出率、ドレッジアップ則、など 外層モデル 各ステップ毎の、水素燃焼層までの対流層、大気を含む完全な外層モデル。 外層モデルに関しては解法は次のようである。総質量、コア質量、表面化学組成を 与えると、星の構造方程式を積分して、r,Pr,Tr,Lr を求める。ただし、外側境界条件 が光球で二つと内側境界条件がコアの表面で二つ満たされなくてはならない。特に、 外側境界条件は大気パラメター、L、Teff と関連する。静的で灰色近似の大気が 仮定される。対流は混合距離理論で扱われ、混合距離パラメター α = Λ/ HP = 1.68 が仮定された。 外層積分は熱パルスと熱パルスの間の静謐期 における TP-AGB の外層進化と表面の性質を決めるために行われる。この時期は水素 燃焼が支配的で、ヘリウム燃焼は低下している。時間的には熱パルスの期間より、 この静謐期の方がはるかに長い。 | 外層計算で考慮された点 外層モデルは第3ドレッジアップの発生をテストするためにも使われる。それは 熱パルス後の光度極大期の対流層基部温度のクライテリオンに関することである。 ドレッジアップ発生に必要な最低基底温度は log Tbdred = 6.4 (Marigo et al 1999)で、観測されるマゼラン雲炭素星光度関数に基づいて 決定された。第3ドレッジアップの古典的効率 λ = 0.55 - 0.7 はフリー パラメターとされた。M ≥ 3 - 4 Mo でのホットボトムバーニング (HBB) も 考慮された。マスロスにより外層が消失するまで TP-AGB 進化が追跡された。マス ロスの半経験式は Vassiliadis, Wood 1993 によった。 計算セット この研究のために X = 0.019, M = 1.2 - 3 Mo で何個かの TP-AGB モデルセット を計算した。計算は最初の熱パルスから出発し、パドヴァグループの恒星進化経路を たどった。何だかはっきりしない。 オパシティ オパシティに関してはスケール太陽とその場計算の二つのグループがある。どちらも、 log T > 4 では Iglesias, Rogers 1993, 3.7 < log T ≤ 4 では Alexander, Ferguson 1994 の表を用いる。違いが見えるのは log T ≤ 3.7 である。 |
M-型星とC-型星の有効温度 星のモデル計算から、光度 L が与えられている時にオパシティが大きくなると 半径も大きくなることが判る。これは、Teff = 2000 - 4000 K で C-リッチ大気が CN コブの極大、 O-リッチ大気がオパシティ極小になり、C-リッチモデルが低温 になることを説明する。ちょっと循環論法ぽいな。 観測有効温度 この予言は C/O 比と有効温度の相関を上手く説明する。この傾向は図6に示さ れている。サンプル炭素星の有効温度のほとんどは、干渉計または月の掩蔽による 視角測定に基づいており、現在最も信頼できるデータと言える。データの収集に 関しては Bergeat et al 2001 を参照。M-型、S-型の有効温度はスペクトル解析に 基づいている。図6を見ると次の点が明らかになる: (1)O-リッチ星と C-リッチ星の有効温度が完全に分離する。 (2)C/O 比が <2 で案外小さい。 F-合成モデルと観測との比較 図6下を見るとスケール太陽モデルが観測と不一致なことが判る。F-モデルは 有効温度が高く、C/O 比が大きい領域にいて、観測点に達しない。また、 表面 C/O 比が増加するにつれ log Teff の減少はほぼ直線状に変化して行き、 ある点からはより激しく低下する特徴を示している。F-モデルでは C/O 比が 1 を越す際にも Teff の変化率に変化は見られない。これはF-モデルではそこで 分子オパシティに大きなジャンプが生じないので当然である。最後に温度低下 が急になるのは超星風で外層質量が急減することに付随している。 V-合成モデルと観測との比較 V-モデルは観測とモデルの一致が良い。F-モデルと違い、V-モデルは C/O 比 が 1 を越すや否や有効温度が大きく低下する。これは、CN と C2 の出現が原因である。そして、大気の温度低下はマスロス率の増加をもたらし、 超星風の発生に導いた。 F-、V-モデルの差 図6の温度低下曲線の平坦部分は F-型と V-型とで理由が異なる。F-型では 平坦化は外層マスの低下が原因である。そしてその発生は炭素星への転化が 済み、超星風が起きた時である。一方、モデル V ではM-リッチ星からC-リッチ 星への転化に伴う分子オパシティの大きな増加が平坦化の原因である。この 特徴は TP-AGB 進化を図7の HR-図で見ると良く分かる。モデルFに較べると、 モデルVの低温度化は低光度で起き、より低温側に伸びている。 もう少し詳しく見ると、炭素星への転化に伴う大きな温度低下の後は温度 低下スピードが緩やかになり、最後に超星風開始に伴い再び大きな温度低下 が見られる。 |
![]() 図6.銀河系巨星の C/O に対する有効温度の関係。組成と有効温度は Smith, Lambert 1985, 1986, 1990 (M-型星), Ohnaka,Tsuji 1996 (S-型星), Lambert et al 1986、Ohnaka et al 2000 (C-型星)。ただし、炭素星に関しては Bergeat et al 2001 の表を採用した。 なぜだ? 曲線はモデル。上=その場計算オパシティ。下=スケール太陽オパシティ。 Vモデルの総括 C/O < 1 では Teff の領域はせまい。C/O ∼ 1 では Teff の巾は大きくなり、 C/O > 1 になると、Teff はさらに低下する。Teff は星の色々なパラメター が効いてくるので、C/O が大きくなると同じ C/O でも Teff の分散は大きくなる。 |
種々の観測量 第4章で述べた有効温度以外にも V-モデルは他の観測量をも上手く説明する。 まず表1を見ると、V-オパシティは炭素星寿命を 1/2 - 1/3 に切り下げること が判る。既に述べた通り、これはC-リッチになった途端に低温化し、それが超星風の 発生を速めたことに起因する。 この他に AGB 終端光度と終端質量も影響を受けた。図7を見ると、同じ質量で 較べた時、V-モデルでの光度範囲はモデルFよりずっと狭い。その結果、Lf, Mf は 低くなった。図7を見ると、炭素星光度と初期質量の関係が良く決まることに 気付く。その上、初期質量 - 終端質量関係は平坦化する。しかし、この点を 調べる前に他のパラメター λ などが再較正される必要がある。基本的な 較正量はマゼラン雲の炭素星光度関数と白色矮星質量関数である。 質量放出率 図8を見ると、炭素星の質量放出率と C/O の関係が良く再現されていることが わかる。同様な関係が vexp にも成り立つことが図9から判る。 これは、Vassiliadis, Wood 1993 の処方で周期から導かれるが、この周期が 表面温度、しいては C/O と関係するのである。 炭素星と M-型星との比 炭素星寿命の減少は炭素星と M-型星との比 N(C)/N(M) にも影響する。表1の 結果に基づくと、τC/(τTP-AGB - τC) を Mi の関数として表わすと、それは星団の N(C)/N(M) の目安となる。 この論文の計算によると、この比は F-モデルでは 0.58 - 1.35 になるが、V- モデルでは 0.19 - 0.55 となる。その上、炭素原子の生産率が低下するので 惑星状星雲で見られるかなり低い C/H, C/O (Pottasch 2000;ISO)を説明するのに 都合が良い。実際、恒星が作る炭素量が低いことは銀河の化学進化からも 要請(Portinari et al 1998)されている。 ![]() 図8.AGB 星質量放出率の C/O による変化。白丸=観測。Loup et al 1993, Wannier et al 1990 が -(dM/dt), Lambert et al 1986, Ohnaka et al 2000 が C/O 比。実線=モデル。F-モデルは観測と一致しない。 |
![]() 図7.Z = 0.19 TP-AGB モデルの HR 図上進化。ドレッジアップ効率λ=0.5 四角=各熱パルスサイクル末の前フラッシュ光度 L 上=その場計算オパシティ。下=スケール太陽オパシティ。 ![]() 図9.AGB 星シェル膨張速度の C/O による変化。白丸=観測 Loup et al 1993. |
近赤外カラー 分子オパシティの改良は AGB 星の近赤外カラーをよく記述するのにも役立つ。 より詳細な検討は後に残すが、O-リッチ星と C-リッチ星の間での J-K 対 V-K 二色図の二分化について簡単に述べよう。 図10に見られるように、M-型星と C-型星は異なる二本の枝を形成している。 モデルはその場オパシティとスケール太陽の双方を示した。温度からカラーへの 変換には Fluks et al 1994 (M-型星)と Bergeat et al 2001 (C-型星) を用いた。 炭素星 炭素星の枝に関して、その場オパシティのモデルは観測される J-K の領域、1.3 - 2.3, を完全に通過する。一方、スケール太陽モデルは青いまく J-K < 1.7 に 留まる。 将来の方向 観測とのより詳細な比較が必要であることは明らかである。そのためにはドレッジ アップ効率とのパラメターの再較正が必要である。いずれにせよ、この試験的な 計算だけでも、新しいその場オパシティが正しい方向を目指していることは 明らかである |
![]() 図10.太陽近傍の M-型星と C-型星の近赤外2色図。黒丸=M-型星データは Fluks et al 1994、白丸=C-型星データは Bergeat et al 2001 より。実線= その場計算オパシティ(上図)とスケール太陽オパシティ(下図)モデル。 |
その場オパシティの有用性 この研究で我々は TP-AGB 進化に際し、組成変化に応じてオパシティを計算 する必要性に注意を向けた。我々はどんな組成に対しても分子オパシティを計算 出来る計算法を開発した。これは容易に進化計算コードに組み込むことが可能で ある。その結果、炭素星になった途端に星は log L - log Teff 面上で突然 低温化し、近赤外カラーが赤くなる。 メタル量の影響 このカラー赤化は星のメタル量により現れ方が異なる。一般には低メタル量の 星では炭素星化に伴う大気温度低下は弱い。非常に低メタルではほとんど目立た なくなる。これは低メタルの場合、炭素星大気の温度が高すぎて分子が形成され ないためである。 |
その他の効果 その上、その時オパシティの導入は、炭素星寿命の短縮、AGB先端光度と質量 の低下、形成炭素量の低下という副次効果を産み出した。勿論、これらは さらに丁寧に調べる必要がある。もう一つここで注意しておくべきは、モデルは 静謐期最大光度をつないだものであり、平均の傾向を表わしているに過ぎない。 実際には熱パルス、脈動により平均経路の周りに分散が生じることである。 主な結果 とにかく、予備的な計算だけでも主な結果ははっきりしたので、あとはこれを 詳しく詰めて行くことである。将来は TP-AGB から銀河内で中間、高齢種族の 寄与を分離する応用が可能になるだろう。 |
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