Near-Infrared Spectral Evolution of Blue LMC Clusters: A Comparison with Galactic Open Clusters


Bica, Santos, Alloin
1990 Rev.Mex.Astron.Astrof. 21, 202 - 206




 アブストラクト

 若い LMC 星団の全体スペクトルの性質を Mermilliod 1981 の銀河系 散開星団の合成 HR 図と較べた。  二つのグループの進化系列の間には、恒星進化期、例えば赤色超巨星、中間 質量星を起源とする巨星、Be 星、の点で強い対応が認められた。


 1.イントロ 

 LMC 星団と銀河系星団 

 LMC の青くて若い星団はサイズが小さいので全体の分光に適している。銀河 散開星団は成分星のスペクトルが分かる利点があるが、構成星の数が少ないの で、グループ化して全体の数を増やす。こうして両者を比較した。
メタル量 

 Cogen 1982 によると LMC の若い星団はほぼ太陽メタルなので、比較にには Mermilliod の合成 HR 図を用いた。


 2.観測 

 分光観測 

 ラシーヤ 1.5 m 望遠鏡で LMC 星団のロングスリット分光を行った。クラス ターを 15 から 60 の巾でスキャンした。 分解能 14 A で 5600 - 10000 A である。

 年齢 

 年齢の較正にはターンオフ年齢と blue-violet カラーの関係を用いた。


表1.星団のグループ分け

図1.LMC 星団の 5 < t(Myr) < 500 スペクトル進化段階。各段階に まとめた星団のリストは表1.


 3.銀河系散開星団との比較 

 YA グループ 

 LMC の YA グループは銀河系散開星団では NGC2362 が対応する。HIIR 期 直後で、しかし赤色超巨星出現前である。進化の進んだ星が存在しないので、 集合スペクトル中の Ca II 三重線は下部主系列星からと考えられる。Be 星は 存在しない。

 YB グループ 

 M-型超巨星の強い寄与が見られ、集合スペクトルには強い TiO バンド、 Ca II 三重線と平坦な連続光が見られる。このように明るい低温度星は Mermilliod のグループでは NGC 884, NGC 457, NGC 3766 にのみ現れる。それらは図2で B-V = 1.8 付近に位置する。これらの超巨星は t = 10 Myr 付近のごく短期間 にのみ出現する。その結果、スペクトル進化系列上に「レッドフレア」が形成 されるのである。これ等の星は質量 15 Mo、質量放出率によるが、最大でも 25 Mo であろう。 M > 40 Mo の星は M-型星ほどの低温度星には進化しない。 従って、10 Myr 付近の星団に現れる M-型超巨星が 5 Myr 星団の G, K 型 超巨星と混同される心配はない。

 YC グループ

 t = 30 Myr のこのグループは IC 4665 に対応する。このグループには赤い 進化した星がない。集合スペクトルには TiO がなく、代わりに B, A 型星に よるパッシェンラインが目立つ。一方下部主系列星からの Ca II 三重線は存在 する。この青い時期は、赤色超巨星がもはや存在せず、中間質量星からの赤色 巨星は未だ登場しないために、 HR 図上に赤色星のギャップが生じる原因と なっている。Be 星は YB と YC グループに現れる輝線の原因である。

 YD, YE グループ 

 中間質量星が進化した赤色巨星により、TiO が現れ、CaII 三重線は YC より 強くなる。YE グループに対応するのはプレアデス星団である。

 YF グループ 

 LMC NGC 1866, 銀河系では NGC 2516 がそうである。YF グループでは、M-型 巨星による TiO バンドが強い。赤色端のカラーは YE グループより 0.25 等赤い。 この時期が AGB 星による第2のレッドフェイズである。

 YG グループ 

 YG グループには TiO バンドが見えない。赤色巨星端が高温のためである。 星団は NGC 2287, NGC 7475 である。これらの巨星は下部主系列星ほどでは ないが、集合スペクトルに見える Ca II 三重線に貢献している。

図2.LMC 星団と Mermilliod の散開星団グループとの対応。黒い帯=星の集中 領域。黒い線=低集中域。

 YH グループ 

 YH と YG は良く似た写真赤外スペクトルを持つ。ただし、ターンオフカラー が異なることを反映して、青スペクトルには大きな差がある。


 4.結論 

 LMC 星団の集合スペクトルから導かれる進化段階と、Mermilliod の銀河系 星団集合 HR 図との間には強い対応関係が存在する。赤い時期と青い時期が 交互に現れる。特に 10 Myr 付近での晩期型超巨星の存在は疑えない。 また 100 Myr 付近に現れる AGB 星の証拠がある。  赤色超巨星が終了し、中間質量巨星が出現する前の時期には進化した星が 存在しない。Be 星による強い H+ 輝線が 10 < t(Myr) < 30 の時期 に現れる。これらのスペクトル段階は星形成域の種族合成を考え、星形成 爆発の継続期間を研究する際に重要である。