2005.09.13 
 

最も遠い「宇宙の閃光」をマグナム望遠鏡が捕えました

ハワイ大学(Paul Price 博士、Len Cowie 教授)および 東京大学(峰崎 岳夫 助手、吉井 譲 教授)の研究グループは マグナム望遠鏡(解説 3)によって これまでで最も遠いガンマ線バースト天体の赤外線残光を検出することに成功しました (関連リンク 1)

ガンマ線バーストとは遠方の宇宙からの突発的に短時間の強力な ガンマ線・X 線放射が観測される現象で、 現在では重い星がその一生を終えるときに生じる 超新星爆発現象にともなう超高速のジェットを起源とするという考えが有力です (解説 1)。 ガンマ線バーストではガンマ線、X 線だけでなく、 数日のうちに急速に暗くなっていくものの 非常に強力な可視光や赤外線の放射(残光現象)も 発生することが知られています。 このためガンマ線バーストとその残光の観測は 遠方の宇宙を探るための新しい手段として認識されるようになりました。

ガンマ線バースト観測衛星 Swift によって 2005年9月4日にまた一つ新たなガンマ線バースト(GRB050904)が発見されました。 世界各地でその残光の観測が始まるなかでマグナム望遠鏡では、 バースト発生から約 12 時間後に いちはやく可視光から赤外線にわたる多波長撮像観測を行ないました。 これは可視光から赤外線の広い波長域をカバーする同時測光観測としては バースト発生後のもっとも早い時期に行なわれたものです (解説 2)。 マグナム望遠鏡による多波長撮像観測で GRB050904 の残光は可視光では検出されず、赤外線でのみ検出することに成功しました。 このことは GRB050904 が非常に遠方にあることを意味し、 測光結果から赤方偏移が 6.08 以上であると見積もることができました (解説 3 図 1図 2図 3)。 この値は、 発生から約 3.5 日後に行なわれたすばる望遠鏡による分光観測によって 測定された赤方偏移 6.29 とおよそ一致します (関連リンク 2)。 GRB050904 はこれまでで最も遠いガンマ線バーストであり、 その距離はこれまでに知られている最も遠い銀河に匹敵することが わかりました。

今回の一連の研究により、 ガンマ線バースト発生直後に可視赤外線多波長によって残光を観測することが 遠方のガンマ線バーストを発見することに有効であることが実証されました。 今後の同様の観測によりさらに遠方のガンマ線バーストが発見され、 初期宇宙の研究の進展に寄与することが期待されます。


1* TOP
2* 解説 1: ガンマ線バーストについて
3* 解説 2: GRB050904 の発生と観測の経過
  解説 3: MAGNUM 望遠鏡が捕らえた GRB050904
4*  図 1: GRB050904 赤外線残光
5*  図 2: 可視赤外線多波長観測
6*  図 3: 赤方偏移の推定
7* 解説 4: マグナム(MAGNUM)望遠鏡


関連する GRB050904 についてのプレスリリースへのリンク:
 1. 今回の研究に関するハワイ大学のプレスリリース
 2. GRB050904 に関するすばる望遠鏡のプレスリリース
 3. GRB050904 に関する NASA のプレスリリース