|
|
■ 銀河中心領域の38ミクロン中間赤外線観測
我々の太陽系は天の川銀河の中にあり、その中心は太陽系からおおよそ2.4万光年離れた
場所にあります。ここには巨大なブラックホールがあり、それに向かって伸びる
うずまき状の腕やリング構造など、非常に複雑かつ興味深い現象が存在します。
しかし中心付近は深い塵に覆われており、また中心のごく僅かの領域を除けば
温度が低いため、普通の可視光ではまったく見ることができません。
我々はminiTAO 1.0m望遠鏡に搭載した中間赤外線カメラMAX38を用いることで、
天の川銀河中心領域の38ミクロン中間赤外線の画像を
撮影することに成功しました。
|
|
天の川銀河中心領域の38ミクロン中間赤外線画像 (右側は左の画像にコントアを重ねたもの)
天体名 | : | 天の川銀河中心 銀河中心星団領域
| 天体までの距離 | : | およそ2.4万光年
| 画角 | : | 40秒角 x 80秒角 (1秒角=1/3600度)
| 撮影日 | : | 2009年11月11日(チリ時間)
|
|
|
可視光で見た天の川の全天写真と今回の観測天体の位置
|
画像で一番明るい部分には
「いて座A*(エースター)」と呼ばれる超大質量ブラックホールが
存在します。その質量は太陽の200-300万倍だと推定されています。
そこから北側(画像の上側)に向かってフィラメント状の構造が
画面の端までつながって見えています。
これはミニスパイラルと呼ばれる腕構造で、ブラックホールに向かう質量の流れ
ではないかと推測されます。中心付近を除くとこのような流れは非常に低温に
なっているため、波長30ミクロンの中間赤外線でしか長く伸びた構造は見られません。
(18ミクロンの画像と比較した下の図を参照)。
画面端部分での温度は-170度かそれ以下であろうと推測できます。
中心の左側(東に相当)には同様の腕構造がもう一つ見られます。
東側の腕が暗く見えるのは、北側よりも質量が小さいためではないかと
考えられます。
中心の南西方向(画面右下)に見えているのは、超巨大質量ブラックホール
を中心に回っているリング構造の一部分です。この部分だけが見える原因としては
密度が大きい、あるいは温度が少し高い、などが考えられますが、詳細は
分かっていません。
|
|
より温度が高い部分を見る18.8ミクロン画像(右)と37ミクロン画像(左)の比較。ともにminiTAO1m望遠鏡+MAX38カメラで撮影。
|
>>> NEXT
|