アタカマ望遠鏡  波長38ミクロンの赤外線を地上から世界初観測


2009.12.03
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2 TAO計画について
3 中間赤外線カメラMAX38
4 今回の観測結果
5 今後の展望

■ 銀河中心領域の38ミクロン中間赤外線観測

我々の太陽系は天の川銀河の中にあり、その中心は太陽系からおおよそ2.4万光年離れた 場所にあります。ここには巨大なブラックホールがあり、それに向かって伸びる うずまき状の腕やリング構造など、非常に複雑かつ興味深い現象が存在します。 しかし中心付近は深い塵に覆われており、また中心のごく僅かの領域を除けば 温度が低いため、普通の可視光ではまったく見ることができません。 我々はminiTAO 1.0m望遠鏡に搭載した中間赤外線カメラMAX38を用いることで、 天の川銀河中心領域の38ミクロン中間赤外線の画像を 撮影することに成功しました。


天の川銀河中心領域の38ミクロン中間赤外線画像 (右側は左の画像にコントアを重ねたもの)
天体名 : 天の川銀河中心 銀河中心星団領域
天体までの距離 : およそ2.4万光年
画角 : 40秒角 x 80秒角 (1秒角=1/3600度)
撮影日: 2009年11月11日(チリ時間)



可視光で見た天の川の全天写真と今回の観測天体の位置


画像で一番明るい部分には 「いて座A(エースター)」と呼ばれる超大質量ブラックホールが 存在します。その質量は太陽の200-300万倍だと推定されています。 そこから北側(画像の上側)に向かってフィラメント状の構造が 画面の端までつながって見えています。 これはミニスパイラルと呼ばれる腕構造で、ブラックホールに向かう質量の流れ ではないかと推測されます。中心付近を除くとこのような流れは非常に低温に なっているため、波長30ミクロンの中間赤外線でしか長く伸びた構造は見られません。 (18ミクロンの画像と比較した下の図を参照)。 画面端部分での温度は-170度かそれ以下であろうと推測できます。 中心の左側(東に相当)には同様の腕構造がもう一つ見られます。 東側の腕が暗く見えるのは、北側よりも質量が小さいためではないかと 考えられます。 中心の南西方向(画面右下)に見えているのは、超巨大質量ブラックホール を中心に回っているリング構造の一部分です。この部分だけが見える原因としては 密度が大きい、あるいは温度が少し高い、などが考えられますが、詳細は 分かっていません。



より温度が高い部分を見る18.8ミクロン画像(右)と37ミクロン画像(左)の比較。ともにminiTAO1m望遠鏡+MAX38カメラで撮影。


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