アタカマ望遠鏡  波長38ミクロンの赤外線を地上から世界初観測


2009.12.03
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2 TAO計画について
3 中間赤外線カメラMAX38
4 今回の観測結果
5 今後の展望

■ 低温の宇宙を見る中間赤外線

我々の宇宙には様々な温度の領域があります。例えば太陽のような恒星表面は 6,000度もの高温ですし、暗黒星雲の中は-265度にもなるような極低温の世界です。 これまで天体観測がもっともよく行われている可視光(人間の目で見える光)は この中でも温度が1000度を越えるような、活発な領域から主に放射されています。 これは星自身を見るのには都合がよいのですが、星のまわりで何が起きているか、 を観測するには不向きです。例えば星のまわりで惑星が生まれてくる現場を 捉えるには、より低温のものからでも発せられる光を見る必要があります。 中間赤外線、得に波長30ミクロンを越えるような中間赤外線は、-200度程度のもの からも放射されるため、このような低温領域を調べるのに非常に適しています。 しかしながらこの波長の赤外線は、地球の大気中にある水蒸気に強く吸収されるため 地上から観測するのは不可能とされてきました。

大気吸収の標高による違い。横軸が波長、縦軸が大気の透明度を表す。 下のパネルは南米にある大型望遠鏡施設の標高(2,600m)、上のパネルは miniTAO望遠鏡のあるアタカマサイトの標高(5,640m)をそれぞれ 示す。標高2,600mでは26-38ミクロンの中間赤外線波長域は大気がほぼ 不透明であるのに対し 5,640mでは一部透明になっていることが分かる。

■ 中間赤外線カメラMAX38

地上からは観測不可能とされてきた30ミクロン帯の中間赤外線も、 標高5,640mのTAOサイトでは地球大気による 吸収の影響が低減されるために観測が可能になります。 miniTAO望遠鏡用の中間赤外線カメラMAX38は、この波長での 天体観測を世界で始めて実現すべく開発された装置です。

天体からの微弱な30ミクロン帯の中間赤外線を精度よく捉えるため、 MAX38には様々な工夫がなされています。 光を電気信号に変える検出器部分にはSi:Sbという特殊な物質を用いた 素子を用い、赤外線を高効率で検出します。また極低温(<265K)に冷やした 光学系内に角度制御可能な鏡を設置、 地球大気からの膨大な 赤外線を精度よく差し引きます。さらに一般的に用いられる光学フィルター に加え、30ミクロン帯の光を選択するためのメッシュフィルターも新規に 開発・搭載しています。これらの開発は主に東京大学天文学教育研究センターで 行われました。実験室での組み上げ・性能評価を終えた装置は2009年9月に チリ・アタカマへと輸送されました。現地での経て2009年11月8日にminiTAO望遠鏡に 搭載、38ミクロンでの天体観測に成功しました.

miniTAO 1m望遠鏡に取り付けられた中間赤外線カメラMAX38


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