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■ 低温の宇宙を見る中間赤外線
我々の宇宙には様々な温度の領域があります。例えば太陽のような恒星表面は
6,000度もの高温ですし、暗黒星雲の中は-265度にもなるような極低温の世界です。
これまで天体観測がもっともよく行われている可視光(人間の目で見える光)は
この中でも温度が1000度を越えるような、活発な領域から主に放射されています。
これは星自身を見るのには都合がよいのですが、星のまわりで何が起きているか、
を観測するには不向きです。例えば星のまわりで惑星が生まれてくる現場を
捉えるには、より低温のものからでも発せられる光を見る必要があります。
中間赤外線、得に波長30ミクロンを越えるような中間赤外線は、-200度程度のもの
からも放射されるため、このような低温領域を調べるのに非常に適しています。
しかしながらこの波長の赤外線は、地球の大気中にある水蒸気に強く吸収されるため
地上から観測するのは不可能とされてきました。
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大気吸収の標高による違い。横軸が波長、縦軸が大気の透明度を表す。
下のパネルは南米にある大型望遠鏡施設の標高(2,600m)、上のパネルは
miniTAO望遠鏡のあるアタカマサイトの標高(5,640m)をそれぞれ
示す。標高2,600mでは26-38ミクロンの中間赤外線波長域は大気がほぼ
不透明であるのに対し
5,640mでは一部透明になっていることが分かる。
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■ 中間赤外線カメラMAX38
地上からは観測不可能とされてきた30ミクロン帯の中間赤外線も、
標高5,640mのTAOサイトでは地球大気による
吸収の影響が低減されるために観測が可能になります。
miniTAO望遠鏡用の中間赤外線カメラMAX38は、この波長での
天体観測を世界で始めて実現すべく開発された装置です。
天体からの微弱な30ミクロン帯の中間赤外線を精度よく捉えるため、
MAX38には様々な工夫がなされています。
光を電気信号に変える検出器部分にはSi:Sbという特殊な物質を用いた
素子を用い、赤外線を高効率で検出します。また極低温(<265K)に冷やした
光学系内に角度制御可能な鏡を設置、 地球大気からの膨大な
赤外線を精度よく差し引きます。さらに一般的に用いられる光学フィルター
に加え、30ミクロン帯の光を選択するためのメッシュフィルターも新規に
開発・搭載しています。これらの開発は主に東京大学天文学教育研究センターで
行われました。実験室での組み上げ・性能評価を終えた装置は2009年9月に
チリ・アタカマへと輸送されました。現地での経て2009年11月8日にminiTAO望遠鏡に
搭載、38ミクロンでの天体観測に成功しました.
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miniTAO 1m望遠鏡に取り付けられた中間赤外線カメラMAX38
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