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東京大学アタカマ天文台 (TAO) 計画

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2008年2月
東広島天文台にてANIRファーストライト、MAX38試験観測

2008年12月17日発行

東広島天文台かなた望遠鏡にて、近赤外線観測装置 ANIR がファーストライト観測に成功しました。この観測により、ANIR が設計どおりの光学・電気性能を持つことが確認されました。また、中間赤外線観測装置 MAX38 の2回目となる試験観測も実施されました。システムの改修により、前回の観測で見つかった問題点が改善されていることが確かめられました。

# メンバー : 本原、内一、三谷、宮田、酒向、中村、峰崎、土居
# 日程 : ANIR 2008/2/22-26、MAX38 2008/2/27-3/2

東広島天文台1.5mかなた望遠鏡のカセグレン焦点に搭載されたANIRとANIR開発メンバー
図1: 東広島天文台1.5mかなた望遠鏡のカセグレン焦点に搭載されたANIR と ANIR開発メンバー

1. ANIRの性能評価と機能試験

今回の観測では、近赤外線検出器の代わりに試験用回路 (MUX) を搭載して試験をおこないました。MUX 回路は可視光線に対して感度を持つため、ANIR の電気系の試験に加えて、光学系の試験をおこなうことができます。実施した試験の内容と結果は以下のとおりです。

  • 光学性能
    • 半値幅2秒角 (当夜のシーイングサイズに相当) の点源星像の取得に成功しました。
    • ピクセルスケール、視野が設計値に一致することが確かめられました。
    • 像面の歪み、光線のけられが無いことが確認されました。
    • 観測装置を傾けることによる、像への影響が無いことが確かめられました。

  • 検出器試験
    • MUX 回路の信号を低ノイズで読み出すことに成功しました。
    • 突発的にノイズが増大する現象がみられました。より強固なノイズ対策が求められます。

  • 真空、冷却性能
    • 光学系デュアー内を高真空 (10-6torr以下)・極低温 (40K以下) に維持したまま観測をおこなえることが確認されました。
    • 冷凍機の振動が天体像に影響を与えないことが確認されました。

  • 望遠鏡インターフェース
    • ANIR を望遠鏡カセグレン焦点に問題なく取り付けられることが確認されました。

2. ANIRファーストライト画像

今回の観測では、MUX 回路を用いて可視光の天体像を取得する試験をおこないました。視野全域に渡り良好な像が得られていることがわかります。ANIR は反射光学系で構成されているため、近赤外線でも同様に高い撮像性能を発揮すると期待されます。

ANIR のMUX 回路で取得した土星(可視光) 同装置で取得した月面のモザイク画像 (可視光)
図2: ANIRのMUX回路で取得した土星 (可視光) 図3: 同装置で取得した月面のモザイク画像 (可視光)

3.MAX38の性能評価と機能試験

MAX38の2回目となる試験観測をおこないました。今回は、本番用の中間赤外線検出器と7種の光学フィルタ、グリズム分光素子を新たに搭載して試験をおこないました。また、改良を加えたフィルタ交換機構、冷却チョッピングシステムの性能評価にも重点が置かれました。

  • 光学試験
    • 7種の光学フィルタ (8.9μm、 9.8μm、 10.6μm、 12.2μm、 13.1μm、 24.5μm、 29μm) で星像と背景光の取得試験をおこない、設計に一致する性能が得られました。
    • グリズム素子を用いて10μm帯にて天体を分光することに成功しました。スリット外から背景光が漏れ込む現象があきらかになりました。対策が必要となります。
    • チョッピング+ノッディング法による背景光の差し引きむらの原因が、望遠鏡の副鏡スパイダーにあることがわかりました。スパイダーからの熱放射を低減する対策が必要となります。

  • 検出器試験
    • 中間赤外線検出器Si:Sb BIB 128x128を低ノイズで読み出すことに成功しました。

  • 駆動系試験
    • 約10Kの極低温下でフィルタ交換機構を正常に駆動することに成功しました。

  • 冷却チョッピングシステム
    • 最大ストローク17秒角のチョッピング観測に成功しました。
    • 望遠鏡の姿勢によらず、安定してチョッピング観測をおこなえることが確認されました。

オリオンBN/KL天体
図4: MAX38で取得したオリオンBN/KL天体の12.2μm画像。東西方向にチョッピング (17秒角)、南北方向にノッディング (40秒角) して取得。チョッピング周波数は1.9Hz。チョッピングストロークが17秒角まで拡大したため、広がった天体の観測が可能になりました。

(酒向重行)
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