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東京大学アタカマ天文台 (TAO) 計画

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SWIMSがすばる望遠鏡での共同利用観測運用を終了

TAO6.5m望遠鏡の第1期観測装置である近赤外線多天体分光撮像装置SWIMSが2021年から2年間にわたって行ってきた、国立天文台ハワイ観測所すばる望遠鏡での共同利用観測運用期間を終了しました。

SWIMSは2009年に設計・製造を開始した装置で、国内での各種機能試験や機能強化を経て、TAO望遠鏡での本格観測に向けた準備・訓練のため、2018年からすばる望遠鏡で性能評価と調整を実施してきました。そして設計通りの観測性能を確認できたことで、2021年4月からTAO望遠鏡搭載までの間すばる望遠鏡において共同利用観測装置として供されることが認められました。

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▲図1: すばる望遠鏡で持ち込み装置として共同利用観測運用中のSWIMS
SWIMSのこれまでの歩み
2009年開発開始、サイエンスワークショップ開催(第一回)
2010年多天体分光スリットマスクのロボットアーム完成
2011年実験棟建設
実験棟に装置を納入
2012年装置傾き試験
2013年サイエンスワークショップ開催(第二回)
2015年サイエンスワークショップ開催(第三回)
2017年ハワイに輸送
2018年すばる望遠鏡でファーストライト
2020年サイエンスワークショップ開催(第四回)
2021年すばる望遠鏡での共同利用観測開始
2022年すばる望遠鏡での共同利用観測完了

すばる望遠鏡に搭載される観測装置には2種類あります。一つは観測所が主体となり(大学等の研究機関と共同で)開発される装置です。もう一つは大学等の研究機関が独自に開発した装置で「持ち込み装置」と呼ばれ、SWIMSはこちらに該当します。

SWIMSが持ち込み装置として共同利用に初めて公開された2021年前半期の観測提案の公募において、2波長域同時観測というSWIMSならではのユニークな能力を活かした数多くの観測提案が国内外の研究者から応募され、SWIMSに対する期待の大きさがはっきりと示されました。提案の中にはTAO望遠鏡での本格的な観測に備えてすばる望遠鏡でパイロット的観測を行うというものや、南半球のTAO望遠鏡からは見えなくなってしまう北半球の天体をSWIMSがすばる望遠鏡に搭載されている今のうちに観測したいというものもありました。

2021年4月以降本記事執筆時点でSWIMSは銀河系内天体から遠方銀河に至るまで様々な天体を対象に共同利用観測を実施し、総観測時間はおよそ600時間、取得した観測データは合わせて2TB近くに上ります。そのうちのいくつかの観測成果は既に査読論文として発表されています。 共同利用運用中、冷却能力の低下により2021年11月に冷凍機の交換作業を行いましたが、それ以外に大きなトラブルに見舞われること無くSWIMSは安定して稼働しました。SWIMSで撮像・分光観測を行った研究者らからは、2波長域の同時観測はとても観測効率が高く、多くのデータをどんどん取得できてとても素晴らしい、と高く評価されています。
・Asano, T. et al. 2020, ApJ 899, 64.
・Bouy, H. et al. 2022, A&A 664, A111.
・Matsumoto, A. et al. 2022, ApJ, 941, 167M.
・Terao, Y. et al. 2022, ApJ 941, 70.
・Uno, K. et al. 2022, ApJ in press (arXiv:2301.09901)

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▲図2: ハワイ観測所所員(右)の支援を受けながら山頂で観測を進める一幕

現在のSWIMSには撮像モードと多天体スリット分光モードがありますが、それらに加えて新たに第3の観測モードとして理化学研究所との共同研究により2010年から開発してきた面分光機能も、2022年3月に遂にファーストライト観測に成功し、2022年後半期の共同利用に公開されました。SWIMSの面分光機能は従来の近赤外線面分光観測装置と比べて広い視野を確保することで、空間的に大きく広がった天体の分光情報を一挙に観測できることが最大の特長です。残念ながらマウナロア山噴火の影響により、面分光を用いた共同利用観測データはほとんど取得出来ませんでしたが、TAOでの観測に向けた技術実証としては十分な成果が得られました。

2022年後半期をもってSWIMSのすばる望遠鏡での共同利用運用は終了となります。今後SWIMSは一旦天文学教育研究センター(東京・三鷹市)に移送され、いよいよTAO望遠鏡への搭載に向けての最終調整段階に入ります。2024年前半には三鷹からチリへ輸送され、早ければ同年後半からTAO望遠鏡での本格的な科学運用が始まる見込みです。TAO望遠鏡での本格的な観測に向けて、皆様の期待に応えられる装置となるよう最大限努めていきます。

SWIMSのすばる望遠鏡での成果、そして今後のTAO望遠鏡での活躍にどうぞご期待ください。

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▲図3: SWIMSとチームリーダーの本原

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