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東京大学アタカマ天文台 (TAO) 計画

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レーザートラッカートレーニング〜TAO望遠鏡測定にむけて〜

レーザートラッカーを使った望遠鏡形状の測定の意義

天体望遠鏡は、天体を捕捉し、日周運動に従う移動に合わせて時事刻々と動かす必要があります。一般的に望遠鏡が大きくなればなるほど視野が小さくなるので、捕捉や追尾の精度が必要になります。理想的には望遠鏡は剛体で、設計値通りの精度で加工・組み上げがされ、温度による伸び縮みもなければ、望遠鏡の制御は簡単になります。しかし現実的には、望遠鏡は撓みますし、加工・製作・設置にも誤差が生じます。さらに外気温の温度に応じて自身が伸縮します。実際の運用では、これら理想的な状態からの「ずれ」を反映させた制御を行うことになります。そのため事前に望遠鏡の向きや角度の違いによる撓み測定する必要があり、これを基に望遠鏡の光学調整を行うことになります。

測定機器 〜FARO®

このような測定のために、TAOプロジェクトでは専用の光学測定機器を購入しました。それはFARO®社の3Dレーザー測距計で、本体から発射されたレーザーが対象物に設置されたコーナーキューブ状のターゲットに反射した後、本体に戻ってくるレーザーを捕捉することで、ターゲットまでの距離を測定します。ターゲットを移動させる、或いは複数箇所に設置して測定することで、3次元的な形状・構造も知ることができます。実用として、建設・工事現場や製造物、自動車や航空機、船舶の測定など、幅広いアプリケーションに利用されています。

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▲ FARO本体

FAROトレーニング

FAROを使用するには、FARO社による特別なトレーニング(講習)を受ける必要があります。FAROは高機能故に細かな設定があり、それらの最適設定をすることで、正確な測定を行うことができます。さらにソフト的な機能も充実しており、実際の測定では最適な条件・パラメータを選択・指定することで、必要な情報を得ることができます。TAOでは2022年2月に天文センター(三鷹)で開催されたトレーニングに峰崎、高橋、浅野、堀内の4名が参加し、セッティングや実際の使い方のトレーニングを受講しました。トレーニングでは設置から起動、初期設定から始め、各種デモ測定、測定値の処理・理解などに到るまで、3日間に渡って行われました。

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▲ キャリブレーションの様子。 ▲ デモの測定結果。

木曽シュミット望遠鏡を使った実践的な測定

その後、5月には木曽観測所シュミット望遠鏡を用いて、実践的な測定を行いました。これは、大きな望遠鏡ならではの精密な動きを測定する技術の習得の他、TAO望遠鏡で測定を想定し、どのようなセッティングでどのように測定を行うべきかの今後の検討の意味合いがあります。実際の測定では、望遠鏡鏡筒の先端にターゲットを設置し、天体の追尾動作を行い、望遠鏡の微細振動を計測しました。さらに、TAO望遠鏡では光軸を正確に決めるために、まずナスミスフランジの回転軸を知る必要があります。今回はシュミット望遠鏡の赤緯方向回転軸フランジにターゲットを設置し、望遠鏡を赤緯方向に動かすことで、TAOでの測定を模擬しました。この測定によって、ターゲットの設置位置や測距計本体の位置、どのような設定で測定を行うのがよいかなどの検討材料を得ることができました。

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▲ シュミット望遠鏡での測定の様子。鏡筒先端近くにターゲットが見える。 ▲ ナスミス回転フランジ測定を模擬した試験の様子。

測定機器は今後、望遠鏡の組み立てに利用するため、チリに輸送されます。今回のトレーニングの成果が発揮されるのは、山頂5640mでの測定になります。

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