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東京大学アタカマ天文台 (TAO) 計画

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大型観測装置を自由自在。観測装置台車の開発。

TAO望遠鏡では、観測装置を望遠鏡に取り付けて観測します。TAO望遠鏡には観測装置を取り付けられる位置(焦点と呼びます)として、二か所のベントカセグレン焦点と二か所のナスミス焦点が設けられており(図1)、ベントカセグレン焦点には比較的小型の観測装置を、ナスミス焦点にはSWIMS・MIMIZUKUといった主力となる観測装置を搭載します。

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▲図1: TAO望遠鏡のナスミス焦点とベントカセグレン焦点。それぞれ逆サイドにも設けられている。

この主力観測装置は、サイズが一辺およそ2m、重量が最大2.6トンにもなる大型の機器となるため、その扱いは容易ではありません。このような大型主力装置を安全に扱うために開発したのが、「移動台車」「回転台車」「取付台車」の三つの「観測装置台車」です。

台車名用途
移動台車観測装置を安全に移動させる
回転台車観測装置の姿勢を90度回転させる
取付台車観測装置を望遠鏡の焦点に取り付ける
▲表1:「移動台車」「回転台車」「取付台車」の三つの台車の違い

移動台車は観測装置を搭載し、観測装置のメンテナンスを行う観測運用棟と、観測運用を行うエンクロージャ棟の間を移動するための台車です(図2)。観測装置は台車上部の四隅にある台座の上に搭載されます。台車下部にはレールを走行するための車輪が四隅に配置されており、観測運用棟とエンクロージャ棟の間に敷設されたレールを走行することでスムーズな移動が可能となっています。

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▲図2: 観測装置移動台車。

SWIMS・MIMIZUKUは、移動台車搭載時の観測装置の姿勢を縦向きとすると、望遠鏡搭載時の姿勢はこれを90度回転させた横向きの姿勢となります。このため、これらの大型装置は取り付けの前に、安全に90度回転させる必要があります。回転台車はこの回転動作を安全に実現します。図3は観測装置の重量とサイズを模擬した観測装置ダミーを回転させている途中(約45度回転させた状態)の回転台車の様子で、このような動作によって観測装置を縦向きから横向きに、あるいはその逆に姿勢変更を行います。この操作は望遠鏡の周りの床で実施し、望遠鏡搭載に向けては、観測装置を横向きにした後にクレーンで観測装置を吊り上げ、取付台車に搭載します(図4)。

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▲図3: 観測装置のダミー(黒い立方体構造)を回転させる回転台車。

取付台車はナスミス焦点の前にあるナスミス台(図1のナスミス焦点の前にある柵に囲まれた領域)に設置されます。図4左はナスミス焦点前に設置された取付台車の様子です。観測装置は横向きの状態で、台車上部の三角形のフレームに搭載されます。この三角フレームは三本のリニアアクチュエータで押すことができ、さらに台車全体は三本のリニアジャッキを使って、高さ方向に駆動することができます。これにより観測装置の姿勢を六軸制御することが可能となり、観測装置の向きと位置をナスミス焦点に合わせこむことで、装置の安全な取り付けを円滑に実現します。

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▲図4:(左)ナスミス焦点の前に設置された取付台車。(右)取付台車を使ってナスミス焦点に取り付けられた観測装置のダミー。

以上三台の観測装置台車は日本での開発を完了し、2021年8月にチリに向けて出荷を行いました(図5)。チリには2021年11月に無事到着し、現在は現地の倉庫で出番を待っています。

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▲図5: チリへ向けた輸送のためにトラックに積み込まれる取付台車。
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