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東京大学アタカマ天文台 (TAO) 計画

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チャナントール山頂へのアクセス道路拡張が完了しました

道路拡張までの経緯

miniTAO望遠鏡の建設前にはチャナントール山頂にアクセスする道はありませんでした。そのため実地調査の登頂にも徒歩で行くしかありませんでした。(因みに現在作業はすべて酸素吸入をしながら行なっていますが、当時はそのような知識もなく、無酸素での登頂でした。)その後miniTAO望遠鏡の建設にあたり新規道路の建設を進め、2006年4月に山頂までのアクセス道路が開通しました。それからはその道路を使い、観測・運用を行ってきました。

しかし、この道路は道幅が狭く、また斜度も急なため、望遠鏡や運用規模が格段に大きくなる6.5m望遠鏡建設に必要な物資を上げるには不十分でした。特に望遠鏡の心臓部ともいえる主鏡(口径6.5mのガラス材)を輸送するには、安全性を確保する十分な道幅と平坦性を持った道路が不可欠です。

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▲(左)山肌に見える白いギザギザの線がチャナントール山の麓から山頂へのアクセス道路(右)2006年に建設したminiTAO望遠鏡を設置するための山頂アクセス道路の様子

道路の設計

そこで、TAO6.5m望遠鏡建設の現地での初期工事として、山頂アクセス道路の拡張工事を実施しました。拡張工事に先立ち、輸送物の大きさや重量などを基に道路幅や斜度を検討し、またこの区間の積雪状況などを加味して、TAO望遠鏡建設に必要な物資が輸送可能な道路の設計を行いました。

まず、最大の輸送物である蒸着チャンバー上窯(直径8m、重量30トン以上)を輸送する想定で、道路線形の解析により必要な道路幅と勾配、ヘアピンカーブ半径等の設計条件を決めました。その後、崖など地形上の問題から条件をクリアするのが難しいカーブについては、地盤改良、輸送方法をスイッチバックへ変更、道幅を広げて輸送時に牽引車を増やすといった細かい調整を行う前提で設計変更を行いました。さらに調査で明らかになった永久凍土の存在も考慮し、拡張幅などの設計調整も行っています。

道路拡張工事

現地工事は2018年から始まりましたが、前述の通り工事途中で地中から永久凍土が見つかりました。アタカマのような低緯度で永久凍土があるのはチャナントール山がいかに高標高であるかを示しています。道路工事によって局所的でも地形が変わり、熱環境に変化が起こるとこの永久凍土が融解し、道路の崩壊に繋がる恐れがあります。それを避けるため、凍土の分布や大きさを考慮して、道路の工事を慎重に進めました。

一方で、チリ政府より、標高5500m以上の高地の作業においては、これまで以上に厳しい安全基準を新たに設定すると通告されました。その基準を満たす工事体制構築に相当な時間をかけることを余儀なくされるという予想外の出来事もありました。さらに世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)のまん延で工事が断続的に停止になったりするなど様々な困難がありましたが、2020年12月末にはついに全区間が開通し、最後の仕上げをして2021年3月末までに工事会社からTAOに引き渡されました。因みにこの道路は今後山頂工事の加速のみならず、工事関係者の安全度の格段の向上にも寄与しています。

現在はその道路を使って、資材の輸送が行われ、山頂観測運用棟やエンクロージャーの建設が進められています。さらに蒸着上窯と同寸法・同重量のダミー貨物を載せての試走も行う予定です。世界的にも類を見ない永久凍土の上に建設される世界最高標高の天文台は、完成時には陽の目を見ることのないこのような文字通り地道な作業の上に成り立っています。アクセス道路の完成によって、間近に迫ったTAO望遠鏡の設置、そして観測運用に向けて、TAOプロジェクトはまた新たな一歩を踏み出しました。

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▲(左)ヘアピンカーブ部分の拡張工事の様子(右)拡張工事の様子。作業員は背中に酸素ボンベを背負い、酸素吸入しながら安全に配慮して業務にあたった
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▲ 拡張工事が完成した山頂アクセス道路。眼下にALMAなどがあるパンパラボラ平原が広がる
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▲(左)道路拡張工事完成を祝う工事チーム(右)全区間が開通し、チリの工事関係者の多くが現場を離れる際に贈呈した感謝状
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