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東京大学アタカマ天文台 (TAO) 計画

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TAOファーストライト観測装置NICEの準備が進む

NICE(Near-Infrared Cross dispersed Echelle spectrograph)はTAO望遠鏡にファーストライト観測装置として搭載される近赤外線エシェル分光観測装置(PI:田中培生准教授)で、2000年に天文学教育研究センターで開発されました。0.9から2.5ミクロンの近赤外線帯を観測波長とし、分光素子としてエシェル回折格子+クロスディスパーザーを採用した、波長分解能2,600の分光装置です。天体から放射された近赤外線を分光して、天体の物理状態の詳細を明らかにすることができます。

開発当初、国立天文台1.5m赤外シミュレータに搭載され観測を開始したNICEは、銀河系内のOB型星・Wolf-Rayet星・黄色極超巨星・高光度青色変光星などの大質量星やAGB星、炭素星等の中小質量星の近赤外スペクトルを取得し、恒星の質量放出現象について多くの成果をあげました。その後NICEは2010年10月北海道大学1.6mピリカ望遠鏡に移設され、太陽系内天体をも対象にした観測が精力的に行われました。取得データは詳細解析中ですが、特に金星大気の構造や物理状態の解明に貢献しています。

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▲(左) 国立天文台1.5m赤外シミュレータに搭載時のNICE(2000-2004)。(右) 北海道大学名寄1.6mピリカ望遠鏡に搭載時のNICE(2010-2018)。
現在は天文学教育研究センターに移され、TAOファーストライト観測装置として改修中。
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▲国立天文台1.5m赤外シミュレータに搭載時に取得した様々な恒星の近赤外線中分散スペクトル(Yamamuro et al. 2007, PASJ, 59, 387)。0.9から2.5ミクロンまでの連続スペクトルの取得が可能だが、三鷹構内での観測のため、グレーハッチの波長帯の光は地球大気によって吸収されている。

ところで、NICEを優れた大気条件のTAOサイト(標高5640m)で運用することで、上図のグレーハッチの波長帯での大気吸収の影響は大きく軽減され、近赤外線全波長域にわたるスペクトルを取得することが可能になります。またTAO6.5mという大口径望遠鏡に搭載することで、遠方の銀河やクエーサーなど、より幅広い分野での研究が進むことが期待されます。そこでNICEは2018年9月に8年間のピリカ望遠鏡での運用を終え、天文学教育研究センターの実験室に帰還、その後TAO搭載に必要な改修と特性評価、ソフトウェア開発などの準備を進めています。

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▲NICEクライオスタットの内部 ▲内部をリファービッシュ
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▲冷凍機を新しいタイプに交換 ▲フィルター周りをリファービッシュ

TAO運用開始後すみやかに、優れた研究成果をあげるべく、現在、開発チーム一丸となって準備作業に取り組んでいます。今後の続報にご期待ください。

Copyright(c) 2019 東京大学大学院理学系研究科 TAO計画推進グループ
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