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東京大学アタカマ天文台 (TAO) 計画

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TAO望遠鏡の観測装置開発に関わる修士が誕生しました!

現在開発中のTAO6.5m望遠鏡に搭載する観測装置「近赤外線多天体分光カメラSWIMS」の主要開発メンバーとして活躍されていた、東京大学理学系研究科天文学専攻の河野さんが修士号を獲得しました。二年間の努力が詰まった研究成果をご紹介します。

近赤外線面分光装置SWIMS-IFUの開発


東京大学大学院理学系研究科天文学専攻 修士課程
河野 志洋

 私たちの研究室で開発を行っている近赤外線撮像分光装置SWIMSでは、撮像とスリット分光に加えて面分光観測機能を付加することを計画しています。従来から行われているスリット分光では一度の観測で空間一次元の波長情報を取得するため、銀河のように広がった天体に対しては、少しずつスリットをずらしながら何度も観測することで全体の波長情報を取得することができます。ですが、この方法では観測に長い時間がかかってしまうため、時間効率が非常に悪くなってしまいます。これを解決する一つの方法が面分光観測です。面分光観測では特殊な光学系により、空間二次元に広がる天体からの光に対して分散をかけることができるため、高効率な観測を行うことができます。

 開発を進めている面分光装置SWIMS-IFUではイメージスライサーと呼ばれる方式を採用しています。この方式ではミラーアレイを用いて天体像を複数の短冊状に切り出し、一列に並べ直すことによって疑似的なスリット像を構成し、分散をかけることで空間二次元からの波長情報の取得を可能にします。このような方式を実現するためには非常に複雑な構造をもった光学素子が必要となるため、光学素子の製作可能性を実証することを目標に研究を行いました。

 私の研究ではSWIMS-IFUを構成するミラーアレイの一つであるスリットミラーアレイと呼ばれる26面の球面鏡がアーチ状に並んだ光学素子の製作を超精密加工を用いて試みました。これまでに私たちの研究室では、超精密加工により26面の平面鏡で構成されたスライスミラーアレイを製作可能であることを実証していましたが、スリットミラーアレイのような曲面鏡を持つミラーアレイを製作可能であるかは実証されていませんでした。そこで刃先が円形であり、自由度の高い加工が可能な工具であるボールエンドミルに注目し、試験加工を行いました。結果として、SWIMS-IFUの要求精度(形状誤差:<100nm P-V, 表面粗さ:<10nm RMS)を満たす鏡面が得られ、ミラー間の相対位置についても高い精度で加工可能であることが示唆されました。また、ミラーアレイの鏡面母材として特殊なアルミ合金であるRSA6061が使用可能であることを実証しました。これにより、単一種類の金属でSWIMS-IFUを製作できるため、低温下で生じる歪みを抑えられることが期待されます。

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▲加工したスリットミラーアレイ(右)と超精密加工機

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▲SWIMSチームとして作業を行う筆者(左)

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