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東京大学アタカマ天文台 (TAO) 計画

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国際光工学会SPIEにて発表を行いました

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SPIE-The International Society for Optical Engineering*は光学設計、光電子光学、リモートセンシング、情報通信、機械光学など多岐にわたる国際学会で、様々な分科会が世界各地で開催されています。そのうちの一つであるAstronomical Telescopes + Instrumentationは2年に一度、主に欧米を中心に交互に開催されており、前回は2016年の英国・エディンバラで、そして本年は米国・オースティンのAustin Convention Centerで行われました。参加者は2000人を超える大きな学会であり、望遠鏡や装置開発に関する多くの最新情報や世界各所の天文関係の技術進捗を知ることができると言う点で非常に重要かつ有益な場となっています。
一般講演の他、多くの企業・業者が参加する展示会場では、光学、制御に関する最新の技術を見ることができ、今後の開発研究に対する重要な知見を得ることに役立っています。

*1955年の設立当時は Society of Photo-Optical Instrumentation Engineers の頭文字をとってSPIEと称したが、1981年にSPIEを残して上記に名称変更した。

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▲展示会場の様子

TAOに関する講演・発表

TAOプロジェクトでは毎回この研究会において数編の発表を行なっています(SPIE2008SPIE2014)。今回はTAOプロジェクトの進捗をはじめ、第1期搭載機器であるSWIMSとMIMIZUKUの報告、さらには各装置に用いられている技術要素の発表も行いました。TAOに関する発表は今回で通算6回目になりますが、今年は実際に現地での建設が始まりつつある年であり、質問や議論の多くは具体的な進捗に関してのものでした。

SPIEの特徴は、ポスター発表での議論が非常に活発であることが挙げられます。毎日夕方に各々好みの飲み物を片手にちなみにアルコールも公認です!)、様々なポスターの前で熱い議論が交わされます。残念ながらポスターを貼っておくことができるのは各発表1日のみ、議論の時間は2時間しかありません。しかしその短い中でもできるだけ多くの情報を得て新たな知識とし、今後の開発の糧にするべく様々な会話が交わされるのです。

今回のSPIEではSWIMSチームの河野志洋君(M2)のポスター発表がBest Student Presentation Awardを獲得しました!これまでの開発研究の努力が認められた結果であり、今後の更なる成果が期待されます(詳細は後述)。

TAOに関係する発表は講演とポスターを合わせて以下の5件です。

  • The University of Tokyo Atacama Observatory 6.5m telescope: project overview and current status (Invited Paper)
    TAO計画全体の概要と進捗についての報告。(土居 守)
  • Development status of the simultaneous two-color near-infrared multi-object spectrograph SWIMS for the TAO 6.5m telescope
    TAO望遠鏡に搭載する近赤外線観測装置SWIMSの開発とすばる望遠鏡でのファーストライトについて。(小西 真広)
  • Laboratory performance evaluation of the mid-infrared camera and spectrograph MIMIZUKU for the TAO 6.5-m telescope
    TAO望遠鏡に搭載する中間赤外線観測装置MIMIZUKUの開発について。(上塚 貴史)
  • Photometric error in mid-infrared observations at the TAO site caused by short-term variation of atmospheric water vapor
    中間赤外測光観測における大気の水蒸気量の影響についての発表。(内山 允史)
  • Design of an integral field unit for SWIMS and its milling process fabrication with an ultra-high precision machine tool
    SWIMSの赤外線面分光ユニットの開発における技術要素について報告。(河野 志洋)

なお、次回2020年のSPIEは6月17-21日に日本の横浜で開催される予定です。

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▲(左)ポスター発表会場の様子/(右)自分のポスターの解説をする河野君

サテライトワークショップ

SPIEでは分科会に付随してテクニカルイベントとして技術的なトピックをテーマにしたワークショップが開催されます。今回のSPIEではEnclosure Shutter Systems WorkshopとOptical Coatings Workshopの2つのワークショップが開かれました。

Enclosure Shutter Systems Workshopには本原准教授が参加し、様々な天文台におけるドームの制御機構および不具合の状況報告と対処方法などの議論を聴講しました。どの天文台でも少なからず不具合は起きているようで、現在製作が進んでいるTAOのドームエンクロージャーの製作に対して有用な情報を得ることができました。

Optical Coatings Workshopは高橋特任助教の講演を含め、11の講演、50名を超える研究者が参加して、世界中の大口径望遠鏡での成膜、洗浄に関する技術的な議論が行われました。興味深いトピックとしてはCO2クリーニングの具体的な方法、成膜後の反射率などの測定をどのように行うか、どの程度精度が得られるかなどで、どの天文台でも大口径化する望遠鏡への対応に苦慮している様子がうかがえて有益でした。

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▲Optical Coating Workshopの様子

SPIEに参加して(学生渡航報告)

初めて参加したSPIEでは多くの経験ができました。様々な国から参加される方がおり、開催期間中毎日、どの発表を聞きに行くか迷うほど多種多様な分野の発表があり、広い範囲で興味深い話を聴くことができました。また、自分の研究に関したポスター発表では、英語での説明が大変でしたが多くの方に見て頂くことができ、光栄にも発表を行ったセッションから “Best Student Presentation Award” を頂きました。非常に実りある学会参加になったと感じています。 学会の合間にオースティン散策も行いました。至る所にいるリスやコロラド川のコウモリに自然を感じるとともに、テキサス州会議事堂などの巨大な建築物に都会であることも感じる、“Keep Austin Weird” というスローガン通りの少し奇妙な街でした。

修士2年 河野志洋

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▲(左)Best Student Presentation Award受賞の記念楯。多くの聴衆の前で表彰がありました。/(右)テキサス州会議事堂。全米50州の州会議事堂の中では最大(高さではアメリカ国内の議事堂で最大のアメリカ合衆国議会議事堂(ワシントンD.C.)よりも高い)。1888年完成。

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Coffee Brake
image9.png 〜オースティンってどんなところ?〜

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オースティン(Austin)は米国・テキサス州の中央部にある州都で、州内ではダラス、ヒューストン、サンアントニオに次ぐ人口65万人(2000年現在)の中核都市です。IT産業が盛んで、サムスン電子が全米最大の拠点としているほか、デル、インテルなどの企業の拠点となっています。
オースティンと言えば有名なのは、タウンレイク(Lady Bird Lake)にかかるコングレスアベニュー橋のコウモリです。コウモリたちは橋の下の窪みを各々の住処にしており、その数は100万匹!とも言われ、都会に住むコロニーとしては世界最大級です。夕暮れになると、オースティン周辺の虫の駆除という夜のお仕事のため、一斉に飛び立って行きます。その光景は圧巻で、橋からコウモリが止め処なく出てくる状況が、日が沈み辺りが暗くなるまで続きます。このコウモリを見るために橋の上や下に群がっている人々を見るのも違った楽しみ方の一つです。

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