TAO Project Website Top

東京大学アタカマ天文台 (TAO) 計画

SolarTAO Project Website Top

惑星状星雲NGC6302を30um帯で撮像することに成功しました!

mini-TAO 中間赤外線観測装置MAX38のメンバーである修士2年の浅野健太朗さんが、惑星状星雲NGC6302の31umでの撮像に成功し、 チャナントールが想定されていた以上の観測に適したサイトである事を 明らかにしました。その結果を修士論文としてまとめました。 また、2011年2月3日、東大小柴ホールで行われた修士論文発表会で この結果の発表を行い、修士号を取得しました。

浅野さん
(図1) 山頂で、赤外線観測装置MAX38のメンテナンスを行う浅野さん

惑星状星雲NGC6302の31um画像

本研究で初めて惑星状星雲NGC6302の中心星付近に存在している、 低温でかつ非常に濃いダストから放射されている31umの光を、 中間赤外線観測装置MAX38で観測する事に成功しました。 この観測結果は、私達の天の川銀河のダストの起源を探る上で 重要な手がかりとなると思われています。 青色で示されているのが近赤外線観測装置ANIRで撮像されたPa-βの画像であり、 赤色で示されているのが中間赤外線観測装置MAX38で撮像された31umの画像です(図2)。

NGC6302
(図2)惑星状星雲NGC6302(ANIR:Pa-β、MAX38:31um 二色合成)

チャナントール山頂の大気透過率

大気の影響を強く受ける30um帯の地上観測は簡単ではありません。 mini-TAO望遠鏡は標高5,640mの高さにあり、大気の影響を大幅に減らすこと ができます。今回の研究から、チャナントール山頂における30um帯の大気の 透明度が、短い時間の内に大きく変化する事が分かりました。 そして大気透明度の時間変動の要因が、可降水量の変動によるものである事が 突き止められました。最も大気の状態が良い時の31umの大気透過率は80%であり、 これを可降水量に直すと0.05mm以下である事が示されました。

この値は、飛行機に望遠鏡を搭載したNASAの遠赤外線天文学成層圏天文台SOFIA が観測を行っている高度10,000mでの可降水量0.01mmに迫る、驚くべき値です。 また、すばる望遠鏡等があるハワイ・マウナケアの年間平均可降水量が 1.5mm程度である事を考えると、チャナントール山頂が非常に乾燥した、 赤外線観測に適しているサイトである事が分かります。

図3は、31umの空の明るさ(横軸)と、天体のみかけの明るさ(縦軸)の関係から、 31umの大気透過率(桃色線軸)を求め、可降水量(水色線軸)を導出したグラフです。 大気透過率が10〜30%と、80%のあたりに広く分布している赤色の十字が、 同じ日の3時間以内に観測を行った値になっています。 この図より、3時間という短時間のうちに31umの大気透過率が非常に激しい変動を する事が分かります。

大気透過率
(図3) チャントール山頂の31umの大気透過率の変化を示した図
Copyright(c) 2011 東京大学大学院理学系研究科 TAO計画推進グループ
当サイトについて