東京大学木曽観測所トモエゴゼンによる地球接近小惑星2019 SU10の発見について

東京大学木曽観測所はトモエゴゼンを用いて地球接近小惑星の発見に成功し、国際天文学連合より「2019 SU10」の仮符号が与えられました。この小惑星は直径15メートル程度と小さく、地球から月までの約1.9倍の距離を通過したと推定されます。以下では時刻を日本時間で表記します。


科学的背景とトモエゴゼンによる地球接近小惑星の広域動画観測


トモエゴゼンが発見した地球接近小惑星2019 SU10

地球接近小惑星候補(後の2019 SU10)の検出

トモエゴゼンが取得した広域動画観測のデータを、AIを搭載した移動天体検出ソフトウエアが解析した結果、空を高速に移動する未カタログの天体の検出に成功しました。以下に発見時の諸情報を示します。



図1. 発見時の地球接近小惑星2019 SU10の動画データ。0.5秒露光 x12連続フレーム。2倍速で再生。動画の上が北。7分角 x 4分角の領域をトリミング。中央付近を左下へ動く白い点が地球接近小惑星2019 SU10。周囲の白い点は恒星。

トモエゴゼンによる追観測

2019年9月27日にトモエゴゼンで地球接近小惑星候補(後の2019 SU10)を複数回にわたり追観測しました。最初の追観測の結果を以下に示します。

軌道の決定と仮符号の授与

一連の観測によりトモエゴゼンが検出した移動天体が地球接近小惑星である可能性が高まりました。これを受け、 2019年10月4日に国際天文学連合(IAU)小惑星センター(MPC)より小惑星仮符号†「2019 SU10」が与えられました。

導出された軌道要素を以下に示します。

   
図2. 最接近時の軌道


図3. 最接近時の軌道 (地球周辺を拡大)

†正式な認定を意味する「小惑星番号」が2019 SU10に授与されるためには、今後の地球再接近時に複数回の再検出がなされる必要があります。

本成果の意義と今後

 トモエゴゼンは地球の近傍を通過する小惑星をターゲットとしたサーベイ観測を進めています。2019 SU10はトモエゴゼンとして2件目の発見になります。現在、「月軌道より内側に入ってくる10-数10メートルサイズの地球接近小惑星」の発見数は世界で年間10-数10件程度です。今後のトモエゴゼンによる広域動画観測により10-数10メートルサイズの発見数が飛躍的に増えることで小惑星や太陽系の形成過程の研究が前進することが期待できます。また、プラネタリー・ディフェンスにおいても危険度の高い天体の早期発見に多大な貢献が期待できます。




クレジット

本サイトの画像、動画を使用する場合は「東京大学木曽観測所」と併記してください。
例)画像提供: 東京大学木曽観測所



  • トモエゴゼンは以下の研究機関との共同研究です。
    東京大学大学院理学系研究科附属ビッグバン宇宙国際研究センター、東京大学大学院理学系研究科天文学専攻、国立天文台、宇宙航空研究開発機構、統計数理研究所、東北大学、京都大学、京都産業大学、甲南大学、神戸大学、日本スペースガード協会、日本流星研究会、 東京大学宇宙線研究所、東京大学国際高等研究所カブリ数物連携宇宙研究機構、日本大学、中央大学、一橋大学、電気通信大学、静岡大学、 信州大学、広島大学、山口大学、ロチェスター工科大学
  • トモエゴゼン計画は以下の機関より予算補助を受けています。
    日本学術振興会科学研究費、科学技術振興機構さきがけ、国立天文台共同開発研究