2010年7月5日

SolarTAOの舞台、アタカマ砂漠の現地視察

2010年7月5日、SolarTAO計画のメンバーが南米チリのアタカマ砂漠を訪問し、 太陽電池パネルの敷設予定地や、発電したクリーンエネルギーで運用する 東京大学アタカマ天文台(TAO) のあるチャナントール山付近 (標高5000m)、電力を供給予定の近隣の町サンペドロ・デ・アタカマを視察しました。 また、TAOサイトの近くに建設中の国際天文観測プロジェクトALMAの見学も行いました。

チャナントール山麓、標高5000m地帯の見学
ALMAアンテナのある標高5000mより、正面にそびえるチャナントール山頂のTAOサイトを臨む。 左手に見えるのがALMAのアンテナ。

現地視察に参加した方からお寄せいただいた感想をご紹介します。

SSB計画イメージ画像

沙漠に初めて足を踏み入れることになったアタカマは、 沙漠に対して抱いていた荒涼とした地帯というイメージを変えた。 まず、砂質の土壌、“砂漠”ではなく、起伏もほとんどなく、風も穏やかで、 空気が実に澄んでいる。 このため、東側のアンデス山脈の中腹からは沙漠を挟んではるか 200 km先にそびえる山々がくっきり見える。 幅が狭いこともあって果てしなく広がるという畏怖感も抱かない。 そのなかの街、サンペドロは毎日天気が良い少し不便な高原の避暑地のようであった。
Solar TAO計画に向けては太陽電池設置の適地が広がっていることが確認でき、 また、既設の送電網がなく、 この計画だけでなく街の発展にも電力環境の整備が必要であることも感じた。 思ったより穏やかな気候で、治安もよく、技術面以外の不安な要素が少ないことも心強い。 しかし、もともと海底であった土地のためか、水も草も塩辛い。 本計画の実施に向けても甘く考えずに、地道にまず基板技術の検討を進めていきたい。

下山 淳一 (東京大学大学院工学系研究科 准教授)

SSB計画イメージ画像

2010年7月に行われた「東京大学ミニTAO望遠鏡」 完成記念式典とチャナントール山見学ツアーに参加させていただきました。 南米へ渡るのは初めてで、30時間以上飛行機に乗らなくてはならず、 「なんて遠いところだろう」と腰痛になりながら思いました。 しかし、これまでに見たことのない満天の星空に頭上の半球すべてが覆い尽くされたのを見たとき、 「これを見られるなら辛い思いをしてもまた来たいな」と感じました。 私は地球物理学者で大気中のCO2などの温室効果気体を研究しています。 南米にはCO2の観測施設がなく、地球温暖化を引き起こす物質の研究において大きな妨げとなっています。 そこで、地上からのリモートセンシングに期待が寄せられています。 天体観測用の望遠鏡で観測された中間赤外スペクトルからCO2濃度などを求める試みを、 TAOプロジェクトの皆さんと始めました。 まずは類似した“すばる”のデータ解析から入ったのですが、そこで分かったことは、 天体観測では「邪魔者の地球大気は徹底的に排除する仕組みができている」ということ。 特にバンドパスフィルターで大気のCO2バンドがマスクされて情報がほとんどないことが分かりました。 しかし、この波長帯を少しずらして観測するだけで、 かなりの情報を取り出せるであろうことも分かってきました。 この後は、最適なフィルターの選定などプロジェクトの皆さんと協力して研究を進めていきたいと考えています。

今須 良一(東京大学大気海洋研究所 准教授)