発表概要

形成途上にある銀河(爆発的星形成銀河)は、活発に星を生み出しながら強い赤外線を出すことが知られています。しかしながらその活動の詳細は、星形成活動によって大量に生成される塵の雲に隠され、よく分かっていませんでした。そこで、我々東京大学大学院理学系研究科附属天文学教育研究センターを中心とする研究グループは、こうした塵の雲を見通す事ができる水素パッシェンα(Paα)輝線に注目しました。

これまで、Paα輝線は地球大気中の水蒸気に吸収されてしまうため、地上望遠鏡による観測は不可能であると考えられていました。 しかしこの問題は十分に高い標高まで上がれば解決されます。 そこで、我々研究グループは、天文台としては世界最高地点である標高5,640mのチャナントール山山頂(南米・チリ)の東京大学アタカマ天文台に口径1mの光学赤外線望遠鏡(通称miniTAO:ミニタオ)を建設し、数多くの爆発的星形成銀河をPaαで撮像観測するプロジェクトを進めています。高い標高と乾燥した気候のおかげで地球大気中の水蒸気影響を抑えることができ、これまでに38の爆発的星形成銀河をPaαで捉えることに成功しました。これは、銀河のPaαの撮像観測プロジェクトとして最大のものとなります。

その結果、これらの銀河は、星形成が活発な領域が銀河の中心部に集中している「楕円銀河に似たタイプ」と、銀河全体に広がっている「渦巻銀河に似たタイプ」の2種類に、明確に分離することが明らかになりました。これは、現在の宇宙に普遍的に見られる楕円銀河と渦巻銀河という2種類の銀河がその形成段階ですでに2つにわかれていた可能性を示唆し、銀河の形がどのように作られてきたかという銀河形成・進化の大問題に大きな手がかりを与える重要な結果です。

(図1)星形成が活発な領域が楕円銀河に似たタイプ(左)と渦巻銀河に似たタイプ(右)の爆発的星形成銀河。上段が疑似カラー画像,中段が連続光画像、下段が水素パッシェンα輝線画像。