Z=0.019 等時線の特徴

主な進化ステージの開始と終了時の質量 

 右の図1を見ると、後主系列期が案外長いことに気付く。M>1.2Moでは主系列期に対し 無視できない割合である。それも主に準巨星とレッドクランプが占めていて、図の分解能 ではRGBとAGB期の長さは読み取れない。
 図2は時間tをそのまま縦軸に取った。準巨星期間の長さ、M=2Mo付近でRC開始 時期が伸びることなどが見て取れる。この変化を拡大して見たのが図3である。

 図3を注意して見ると、前に述べた dMs/dt を用いて等時線の質量幅から寿命を導く 方法は傾きが変化する所では不適切であることが分かる。そこで、この方法をとらず、 Mi-t ダイアグラムから直接個々の Mi に対する寿命を読み取ることにした。
 Mi=1.9-2 Mo、t= 1.47-1.5 Gyr の狭い範囲は RC終了以降の Mi-t 線がフラットになる 時期でその前後と傾きが大きく違う。等時線で考えると、この期間は RC 開始tがあまり 変わらないのに RC 終了tが大きく変わる、つまりRC期間が大きく変化する時期である。 また、AGB 期間の長さもこの折れ目付近では高いピークを示す。それらの様子は次に示す。


図1 進化ステージの開始・終了質量

図2 図1と同じだが縦軸をtにとった。

図3 図1の拡大図。質量ー時間曲線の傾き変化が良く分かる。
主な進化ステージの等時線上質量幅 

 下の図は等時線上で各進化ステージが持つ質量幅を示したものである。t=1.5Gyr 前後でRCのΔMが大きく変わることと、同じくその付近でAGBがピークを示すこと が目立つ特徴である。AGBピーク付近の拡大を図5に示す。


 図ではAGBをRGB先端より下と上、RGBをAGB開始Lより下と上で分けて ある。従って「下AGB」と「上RGB」がLで重なる。AGBは上も下も同じよう な単純ピークを示す。対して、RGBはピーク付近で「下RGB」のΔMが窪み、逆 に「上RGB」は少し幅広のピークを示す。この現象の詳しい説明は不明。
図4 等時線上の質量幅

図5 等時線上の質量幅(拡大)

 下に示すのは上で見た質量幅同士の比を取ったものである。RCのΔM が t=1.5 Gyr を境に急変したが、それを反映し、ΔM(AGB)/ΔM(RC)にはt=1.5Gyrの前後で段 差が生じている。大雑把に言うと、t<1.4Gyr ではΔM(AGB)/ΔM(RC)=0.08, 1.4 -1.5GyrでΔM(AGB)/ΔM(RC)=0.5に達する鋭いピークを示し、t>1.5Gyr でΔM(A GB)/ΔM(RC)=0.12 に落ち着く。  一方、右のΔM(下AGB)/ΔM(上RGB)はAGB開始とRGB先端の間でAGB, RGB 両者が重な り合う所での比を見ている。こちらも t=1.5Gyr 付近に細いピークを持つが、その中に ある溝などの構造がリアルかどうか疑問である。その他には、t=0.1Gyrから1.4Gyrに かけて、時間と共にΔM(下AGB)/ΔM(上RGB)は次第に上昇して0.2 から 1.2 まで 達するが、つまりt=0.7ー1.3 Gyr では下AGBと上RGBの数はほぼ等しい、1.5 Gyr を 越すとこの比は0.3くらいになることも大きな特徴である。
図6 ΔM(AGB)/ΔM(RC)

図7 ΔM(下AGB)/ΔM(上RGB)


主な進化ステージの寿命 

 先に示した等時線上のΔMを決めているのは一定のマスの星が進化の過程で 各ステージにどのくらい長く滞在すのか、つまり寿命、である。前に述べたように 得られるデータは等時線であり、進化パスではない。そこで様々な等時線をならべ、 マス一定での寿命をグラフの内挿から求めた。

 右図8はそうして求めたAGBとRCの寿命の比である。等時線でのΔMの比、図6、 に対応するものだが、あちらに見えた鋭いピークは見当たらない。この違いは下の 図9にも現れていて、図5にあるΔMの細いピークは姿を消している。図3を見る と、Mi-t曲線が階段状になるとΔtが変化しなくてもΔMが高いピークを持つこと が了解される。

図8 Δt(AGB)/Δt(RC)

図9 AGB寿命

図10 RC寿命