The Nuclear Stellar Disk in Andromeda : A Fossil from the Era of Black Hole Growth

  Hopkins, Quataert   2010 MN 405, L41 - L45

 銀河スケール (10 - 100 pc) からもっと小さい半径への角運動量輸送は超大質量 ブラックホールの形成と進化を理解する際の極めて重要な問題の一つである。一見 無関係に見える観測から M31 ブラックホールを回る起源不明の片寄った(?)恒星 円盤が発見された。

 我々はこれらの互いに独立な謎は実は関連していることを示す。銀河からブラック ホールに至るガスの流れを複スケールのシミュレーションで調べた結果、ブラック ホールへの流量が大きいと重力不安定により大きなスケールから内側へと、偏心した 細長い円盤が形成されることが判った。




図1.多スケールシミュレーションの例。赤=投影恒星密度。青/緑= 投影ガス密度。緑から青にかけて単位質量当たり星形成率が高くなる。 各パネルは円盤を正面から見ている。
上:銀河スケール。二つの等質量円盤銀河 (1011Mo) の中心核融合直後。
  マージャー開始時には円盤のガス比率 fgas = 0.4, バルジの質量比
   B/T = 0.2. マージャーは大量のガスを中心 1 kpc 領域に落とし込む。その
  結果、中心領域で爆発的星形成が起こる。
中:0.1 - 1 kpc 領域の再計算。爆発的星形成円盤は自己重力系で、渦状腕と
  棒モードを発達させ、それがガスを 10 pc にまで落とす。その付近でバー
  はブラックホールの重力で弱くなる。
下:30 pc 領域の再計算。この大きさでの流入ガスは偏心した細長い円盤を形
  成する。これはより大きな距離では一本腕の渦巻となる。円盤は < 0.1 pc
   への降着率を 1 - 10 Mo/yr に上げ、図 2, 3 の恒星円盤を残す。


図3.恒星円盤の左=平均視線速度 V と、右=速度分散 σ 分布。
(上)シミュレーション結果。ガスが消えたずっと後。実線=真横から54°
  傾いて見た例。点線=10°づつ傾けた例。
(下)黒四角= M31 HST 観測(Bender et al 2005)。
   マゼンタ丸=地上観測(Kormendy,Bender 1999)。

 偏心恒星円盤は残りのガスに強いトルクをかけ、ブラックホールを成長させる ガス流入を促す。この同じ円盤は多方向に対して強い減光を産み出す。それは 隠された活動銀河核を説明するために引き合いに出されるトーラスの実体であ ろう。

 ガスが消えた後に残った恒星円盤は寿命が長く、細長い形状を維持する。 クエサー程度の降着率だと、M31 観測と合う表面密度プロファイル、歳差運動、 扁平率、運動を持つ恒星円盤を残す。中心核恒星円盤の観測はこの様に 超大質量ブラックホールの形成史に拘束を掛けるのである。




図2.幾つかの計算での中心核円盤の例。左下パネルのスケールは全パネル
  で共通。各行は異なる中心 50 pc の計算例。上から下へ、h/R = 0.16,
   0.08, 0.28, 0.25, 0.15, MBH = 3 × 107 Mo,
  初期10pc内円盤質量 = 1.2, 1.7, 3.0, 8.1, 0.25 × 107 Mo,
  偏心円盤はどの例にも出現する。
(左) ガス表面密度。青から赤/黄にかけて星形成率が大きくなる。図のエッジ
  はショックで、エネルギーの消散が起きて、急速なガス流入を引き起こす。
(中央左) 左の図を横から見たもの。 
(中央右) 星の分布。ショックが立たないのでエッジはぼやける。  
(右)   横から見た星密度。二つの核が見える例がある。M 31 の離心円盤
      P1/P2 を思わせる。


図4.モデル恒星円盤の性質。実線は図3と同じ計算。灰斜線=観測
(左上)=恒星表面密度。(右上)=主軸に沿った円盤の離心率。?
(左下)=円盤のパターン角速度(歳差運動)。個々の星の角速度は点線
(右下)=ガス流入率。円盤形成時の活動期。