HST/STIS Spectroscopy of the Triple Nucleus of M31: Two Nested Disks in Keplerian Rotation around a Suppermassive Black Hole

  Bender, Kormendy, Bower, Green, Thoms, Danks, Gull, Huchings, Joseph, Kaiser, Lauer, Nelson, Richstone, Weistrop, Woodgate
   2005 ApJ 631, 280 - 300

 ST Imaging Spectrograph (STIS) による M31 中心核の分光観測を報告する。CaII 三重線 (∼ 8500 A) を含むスペクトルは P1, P2 内の赤色巨星しか見えない。 一方、λ ≈ 3600 - 5100 A スペクトルは P2 に埋まった小さな青い 核に敏感である。P2 は K-型スペクトルを持つが、青い核は A-型スペクトル、 すなわち強いバルマー系列、を示す。このように、 P2 の核が青いのは AGN 光の ためでなく、比較的高温の星が集まっているためである。スペクトルは A0 巨星、 A0 矮星、または 200 Myr 以前に爆発的星形成を起こした星種族で説明できる。 最後の星形成モデルが最もよさそうな説明と思われる。白色矮星ではうまく説明 できない。この核は星構成、サイズ、速度分散の点で P1, P2 と全く異なっている ので P3 と名付け、M31 の中心核は3重系であると考える。

 P2 と P3 のスペクトルが大きく違うので、赤い星と青い星を分離して各成分の 空間分布と速度を互いの光が混入せずに測ることができる。P2 の赤い星の視線速度 分布は Tremaine の高離心率円盤モデルを支持する。そのウイングは P2 の P1 と 反対側では 1000 km/s の星が存在することを裏付けている。  P3 が薄い円盤と考えるとその傾斜角 i ≈ 55° は誤差の範囲で Peiris/Tremaine, Salow/Statler の高離心率円盤モデルに一致する。

P3 の速度は超大質量ブラックホールの周りを廻るケプラー運動と整合する。P3 の 速度分散は回転速度が混ざって観測されたためであり、それは最大で σ = 1183 ±201 km/s である。これは赤い星の同方向での速度分散 σ = 250 km/s に比べるとずっと大きく、銀河で観測された積分速度分散としては 最大である。P3 の回転曲線は中心に関して対称で、半径 0".05 = 0.19 pc で極大 618 ±81 km/s に達する。観測された速度分散は σ = 674 ±95 km/s である。対応する回転速度は 1700 km/s である。したがって、 以前に示唆された P3 位置にある暗黒天体が超質量ブラックホールという仮説が 確認された。

 固有軸比 b/a ≤ 0.26 の薄い円盤とシュワルツシルドモデルは傾斜角 55° と 58° の間で観測と一致する。薄い円盤モデルでのベストフィットは Mbh = 1.8 × 108 Mo である。厚みと系統誤差を考慮 して出した質量は (1.1 - 2.3) × 108 Mo となる。 P3 から出したブラックホール質量は Peris/Tremaine の質量とは独立に決まった が良く合っている。それはバルジ速度分散とブラックホール質量との相関に対して 2倍大きい。他の良く決まっているブラックホール質量、天の川銀河や M32 と 合わせて考えると、バルジ速度分散とブラックホール質量関係はかなり大きな 固有分散を含むと考えられる。 




図1.(左)CaII スペクトル用の STIS 0".1 スリット位置。背景は Lauer et al 1998 の WFCP2 F555W 像。
(右)青スペクトル用 STIS 0".2 スリット位置。背景は Lauer et al 1998 の WFCP2 F300W 像。




図2.(1)図1を時計回りに 185° 回転した二重中心核。図は I + V + 3000 A の合成。Kormendy/Bender 1999 より。赤い波長では P1 の方が P2 より明るい。 P3 は P2 の中に埋もれていて、 I では見えないが UV では P1 より明るい。
(2) V + 3000 A 合成図。等級プロファイルは P1 - P2 ラインに 沿って(上) V-バンド、(下)I-バンド。点=STIS スリット上の明るさ。
(3)P1 - P2 ライン上の速度分散。(4)同じく回転曲線。SIS = Subarcsecond Imaging Spectrograph は CFHT(?) Kormendy/Bender 1999 による。


図5.図4と大体同じ。違いは P3 スペクトルを Bruzual/Charlot 2003 の SSP モデルスペクトルと比較したところ。赤い方の連続光は 510 Myr が良く合う。しかし、 バルマー線 Hn (n ≥ 5) の強度がよく合わない。この点はより古い SSP ではもっと 悪くなる。 200 Myr より若い SSP は全体に青く成り過ぎる。バルマー切断が小さすぎる。


図7.白色矮星の観測(Kleinmann et al 2004 http://www.sdss.org)及びモデルス ペクトルとの比較。白色矮星はラインが強過ぎ、バルマー切断が弱い。




図3.P1 - P2 カットに沿った表面輝度の変化。青い聖断 P3 と背後の赤い 核 P2 との対比が鮮明である。P3 が 3600 - 3750 A で暗くなるのは強い バルマー低減を受けるからである。左側の2本の破線は背景スペクトルの 導出領域。右側2本の破線の間で図4、5、6の背景除去スペクトルを作った。


図4.(上)黒線= P3 中心 0".2 内のスペクトル。重なるバルジ+中心核スペクトルは 除いた。色つき= A0V, A0III, SSP(t=200Myr) の参考スペクトル。
(下)多項式フィットした連続光 cλ で規格化したスペクトル。


図6.200 Myr SSP (Z = Zo) の色等級図。総光度を Mv = -5.7 とした。 スペクトルは 10,000 K 星で支配されている。 図は Aparicio/Gallart 2004 の CMD アルゴリズムで作成した。


図8.白色矮星 T = 7000, 8000, 10,000, 12,000 K によるフィット。



図9.左から順に、(1)P1, P2 に重なる P3 の F300W 像、(2)F555W 像強度 を合わせてから引いた F300W 像、(3)PSF をたたみ込みした傾いた円盤像、(4) (2)から(3)を引いた残差。一辺=2".5。図1と同様、北は 55°.7 反時計方向。




図10.観測の とその PSF 脱たたみ込み。モデルとそのたたみ込み。


図12.P3 モデル、ブラックホールと PLummer モデル、の χ2 変化。


図14.シュワルツシルドモデル(1979) との比較。


図16. X センター


図18.星団モデルのトラブルタイムスケール。




図11.上の図は円盤モデルの PSF たたみ込み 0".5 像。(左)P3 表面輝度。 (中)回転速度。分光スリットとビンが重ねてある。(右)速度分散。
赤丸と赤白丸は中心の反対側の観測点。(中)速度分散。(下)回転速度。 (上)破線=ケプラー回転のベストフィット。Mbh = 1.4 × 10 8 Mo。これに PSF をたたみ込み、ピクセルサイズとスリット巾で積分した のが(中)と(下)の点線。


図13.シュワルツシルドモデル(1979) との比較。


図15.シュワルツシルドモデル(1979) との比較。


図17.Plummer モデルの χ2 等高線。