研究課題名: シュミット乾板のデジタル化とその公開 研究参加者: 木曽観測所員,中嶋浩一(一橋大学),宮内良子(国立天文台) 研究期間: 2015年9月〜 研究目的とその意義: 天文データの保存と公開については,近年その重要性が指摘され,いろいろな 活動が行われている.「仮想天文台(VO)」などはその一例である.特に高額の資 金を投じた観測装置の観測データなどは,その公共性に鑑み,当初から保存と公 開の方法を考慮しつつ取得されるようになっている. また保存と公開の方法についても,できるかぎりインターネット上で参照可能 な方式にすることが求められている. このような観点から,主に写真として蓄積されてきた過去の天文データを,イ ンターネット公開のためにディジタル化する必要性が指摘されてきた.また過去 の写真データをそのまま保存することも各種の困難に直面しており,データの劣 化や散逸を防ぐ意味でもディジタル化が必要であることが指摘されている. 木曽観測所においては,約7000枚のシュミット乾板が写真データとして保存さ れており,これらをディジタル化して公開することが上記のような意味で課題と なっている.本研究は,このようなディジタル化の作業の可能性とその具体的方 法を明らかにすることを第1の目的とし,さらに進んでそのアーカイブ,すなわち 乾板全体の保存と公開を実現することを次の目的とする.可能であれば,得られ た過去のデータを現在のものと比較しつつ,トランジエントな天文現象の発見・ 解明に研究を発展させることも考えられる. これまでの研究の状況: 写真データのディジタル化に関しては,日本国内ではこれまでに組織的な取り 組みは行われていなかったが,国際的にはすでにいくつかの研究が進展している. 中でも,1991年の国際天文学連合総会(ブエノスアイレス)の勧告を受けて始め られたブルガリアの天文研究所のグループの活動が重要である.(参考: http://www.skyarchive.org/ )ここでは,世界の各天文台に保存されている 「広視野写真乾板」のカタログ(CWFPA)を編纂している.またここからの呼びか けに呼応して,いくつかの天文台で写真乾板のディジタル化作業が進めれれてい る(例:ハイデルベルク天文台保存乾板のディジタル化, http://www.lsw.uni-heidelberg.de/projects/scanproject/ ). 2014年には,チェコのプラハで "Astroplate 2014" という国際ワークショップ も開催されている(参考:Proceedings - http://www.astroplate.cz/wp-content/ uploads/2014/12/astroplate_2014_proceedings_rev_2.pdf ). 2016年には,その第2回が開催された.(参考: http://www.astroplate.cz/). 研究方法: 本年度木曽観測所で購入したA3判フラットベッドスキャナを用いて,まずいくつ かのシュミット乾板をスキャンし,具体的な乾板のディジタル化について検討する. 次いで7000枚に及ぶシュミット乾板のリストを精査し,乾板の重要度・利用可能 性を判定する.そして,重要度の高い乾板から順にディジタル化の作業を試みる. また,画像データの保存ファイル形式,座標などの関連データの形式・内容など についても検討する必要がある. 画像データファイルは容量が大きくなるので,アーカイブのためのサーバーとそ の運用についても検討する必要があると考えられる. 作業計画: (略) 以上