銀河学校2011

 銀河学校2011は2011/8/9-12の4日間にわたって開催されました。当初、2011年3月に開催の予定でしたが、東日本大震災による混乱を避けて開催を延期しておりました。日程の変更にもかかわらず、参加を予定していたほとんどの高校生が全国から木曽観測所を訪れ、27名の参加者が集まりました。
 高校生たちは3つの班に分かれ、 「かみのけ座銀河団ー巨大銀河集団にひそむダークマター」、「散開星団の観測で探る天の川銀河系の回転」、「変光星で探る銀河系の構造」というテーマに挑戦しました。シュミット望遠鏡を用いた観測と天文学の本格的な研究を行い、それぞれの班が優れた結果を出すことができました。3泊4日のハードなスケジュールをこなしながら、高校生同士やスタッフ・TAとの交流を深めていました。
 各班のテーマはこちらをご覧ください。


銀河学校2011 スナップショット

各班のテーマ

A班: かみのけ座銀河団ー巨大銀河集団にひそむダークマター

数千億個の星からなる集団を銀河と呼びます。私たちの太陽も天の川銀河と呼ばれる銀河の一員です。銀河はこの宇宙にパラパラと散在しているのではなく、その多くは「銀河団」と呼ばれる大集団を形成しています。この班では私達から比較的近い距離(3億光年)に位置し1000個以上の銀河からなるかみのけ座銀河団について調べます。これまで銀河や銀河団から発せられる光を観測することで、そこに含まれる多くの星やその材料であるガスと塵について研究が進められてきました。そうした中、近年になって、銀河や銀河団に「重力には反応するが、光をまったく発さない(光に反応しない)物質」が存在するようだと言うことがわかってきました。この不思議な物質は光を発さないことからダークマターと呼ばれており、その正体は未だに不明で現代天文学の最大の謎とされています。この班ではシュミット望遠鏡を使って観測することで、かみのけ座銀河団にひそむダークマターの検出にいどみます。

B班: 散開星団の観測で探る天の川銀河系の回転

わたしたちが住む地球は太陽のまわりを公転しています。このことは、16世紀から17世紀にかけてコペルニクスやケプラーの研究で明らかにされました。特に、地球とその他の惑星が太陽のまわりを回転する様子を数学的に表すことに成功したケプラーの法則は、その後の天文学・物理学の基礎を築きました。20世紀に入ってからは、太陽も宇宙にある多くの星のひとつにすぎず、約2千億個もの星が集まった天の川銀河系の中に存在していることがわかってきました。そして、天の川銀河系の中では、やはり多くの星が銀河系共通の中心のまわりを回転しているのです。この回転も、太陽系と同じようにケプラーの法則が成り立つのでしょうか。この班では、散開星団とよばれる星の集団を手がかりにして、その回転の様子を調べます。コペルニクスやケプラーが予想だにしなかった天の川銀河系の真実の姿を探ってみませんか。

C班: 変光星で探る銀河系の構造

変光星とは、明るさを変える星のことです。変光星の中には、その明るさを数100日かけて変化させる星から、数時間で変化させる星まで、たくさんの種類があります。変光星からわかる重要なことは、変光星までの距離がわかることです。わたしたちは普通、ものまでの距離は簡単にもとめられると思いがちです。しかし、星の場合はそうではありません。巻き尺で測ることはもちろんできません。みかけの大きさからもとめることもできません。星はいくら倍率の高い望遠鏡を使っても点にしか見えないからです。そういうわけで、変光星の距離がもとめられるという性質は、天文学で大変貴重なのです。
1923年、アメリカの天文学者ハッブルはアンドロメダ銀河のなかの変光星を観測し、アンドロメダ銀河までの距離をもとめました。それは、それまでの宇宙観を塗りかえる大発見でした。そして、88年後の2011年3月、この班では、われわれの銀河系にある変光星を観測し、銀河系の構造をさぐります。はたして、みなさんの宇宙観はかわるでしょうか。


『銀河学校2011』は、東京大学木曽観測所とNPO法人「サイエンスステーション」が共催しました。
サイエンスステーションのページに 当日のレポートがありますので、合わせてご覧ください。
また、『銀河学校2011』は、「子どもゆめ基金」の助成を受けて活動しました。


銀河学校HPへもどる

Last modified 2011/08/20