(第2回目)銀河学校1999


開催期間:1999年3月22日-24日
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  • 実習タイトル: 「赤外線による星団の性質研究」

  • 解 説: 10万個から100万個の恒星が球状に密集した集団を球状星団といいます。球状星団は銀河系の外側に多く分布しており、そこに存在する恒星は銀河系形成時に誕生した古い恒星たちであると考えられています。球状星団に属する恒星はほぼ同時に誕生したと考えられるので、この星々がヘルツシュプルング・ラッセル図(天体の等級vsカラー関係の図、以下HR図)上にどのように分布するかを調べることによって、球状星団の年齢を見積もることが出来ます。

    恒星の寿命は、その質量、明るさ、カラー、温度などと密接に関係しています。一般に質量の大きな重い恒星は温度が高く、カラーは青く、そして寿命は短いものになります。反対に質量の小さな軽い恒星は温度が低く、カラーは赤く、寿命は長くなります。恒星が生まれる時には、様々な質量の恒星がほぼ同時に生まれる、と考えられていますので、若い集団ほど、寿命の短い青い星が生き残っていることになります。逆に古い集団ほど青い星は死に絶えて、赤い星ばかりになっていることが容易にわかります。そこでどのようなカラーの星がどのような明るさで輝いているかを調べることによって、星団の年齢を見積もることが可能となります。

  • 実 習: 実習では「105cmシュミット望遠鏡+近赤外線カメラ(通称KONIC)」を用いたM3の近赤外線Jバンド(波長1.25ミクロン)とHバンド(波長1.65ミクロン)の撮像観測を行ないました。M3はりょうけん座に存在する球状星団です。図1は球状星団M3の近赤外線疑似カラーイメージです。


    (図1:105cmシュミット望遠鏡+近赤外線カメラで観測された
    球状星団M3。色は疑似カラー。)
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    実習ではさらに図1のデータを元にして、M3に属する恒星の等級とカラーが測定され、HR図が作成されました(図2参照)。


    (図2:球状星団M3のHR図。縦軸が等級、横軸がカラーです。)
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    M3に属する恒星全てがほぼ同時に誕生したと仮定し(この仮定は様々な研究によってかなり妥当なものとされています)、このHR図と恒星の進化理論を比較することによって、球状星団M3の年齢は130億年から200億年と計算されます。これは宇宙年齢に匹敵するほどの年齢で、球状星団M3に属する恒星たちが宇宙形成の初期の頃に誕生した可能性を示しています。


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2001/12/28 04:56 revised by Nishiura, S.